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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】自動倉庫用のピッキング装置、自動倉庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 59/02 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B65G59/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019122705
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021008346
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 伸二
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕輔
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047681(JP,A)
【文献】特開昭52-075770(JP,A)
【文献】特開2010-005769(JP,A)
【文献】特開平08-091579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0040450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を複数含む集合体からピッキング対象の荷を取り出すための取出ユニットを備え、
前記取出ユニットは、前記集合体と対向させる吸着部を複数有し、前記複数の吸着部の吸着力を制御して前記対象の荷を吸着する吸着範囲を変更可能に構成され、
前記対象の荷を吸着するとき、当該対象の荷の層間接着を剥がすための第1動作と、前記第1動作により前記層間接着が剥がされた前記対象の荷を持上げて移載するための第2動作と、を行うことを特徴とする自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項2】
前記取出ユニットは、取り出した前記対象の荷を上方に移動可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項3】
前記対象の荷を吸着するとき、前記複数の吸着部の平面視の配置範囲は、前記集合体の平面範囲をすべて含むことを特徴とする請求項1または2に記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項4】
前記取出ユニットは、前記対象の荷をピッキングする過程において、前記第1動作時と前記第2動作時との間で前記吸着範囲を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項5】
前記取出ユニットは、前記対象の荷の第1範囲を吸着してから、前記対象の荷の前記第1範囲より広い第2範囲を吸着することを特徴とする請求項4に記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項6】
前記第1範囲は、前記対象の荷の一端側に偏った範囲であり、
前記第2範囲は、前記第1範囲に加えて前記対象の荷の他端側を含む範囲であることを特徴とする請求項5に記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項7】
荷を複数含む集合体からピッキング対象の荷を取り出すための取出ユニットを備え、
前記取出ユニットは、前記集合体と対向させる吸着部を複数有し、前記複数の吸着部の吸着力を制御して前記対象の荷を吸着する吸着範囲を変更可能に構成され、
前記取出ユニットは、前記対象の荷をピッキングする過程において前記吸着範囲を変更し、
前記取出ユニットは、前記対象の荷の第1範囲を吸着してから、前記対象の荷の前記第1範囲より広い第2範囲を吸着し、
前記第1範囲は、前記対象の荷の一端側に偏った範囲であり、
前記第2範囲は、前記第1範囲に加えて前記対象の荷の他端側を含む範囲であり、
前記取出ユニットは、前記対象の荷の前記第1範囲を吸着した状態で上昇と下降を行ってから前記対象の荷の前記第2範囲を吸着することを特徴とする自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項8】
前記取出ユニットは、前記対象の荷の前記第1範囲を吸着した状態で上昇と下降を複数回行うことを特徴とする請求項7に記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項9】
前記集合体に関する画像情報を取得する画像情報取得部をさらに備え、
本ピッキング装置は、前記画像情報取得部の取得結果に基づき前記第1範囲を決定することを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の自動倉庫用のピッキング装置。
【請求項10】
荷を複数含む集合体を保管可能な収容部を複数有する保管棚と、
荷を複数含む集合体からピッキング対象の荷を取り出すための取出ユニットと、
前記取出ユニットによってピッキングを行うピッキング部と、
荷を含む集合体を前記ピッキング部へ移送する移送手段と、
を備え、
前記取出ユニットは、前記移送手段によって前記ピッキング部へ移送された前記集合体と対向させる吸着部を複数有し、前記複数の吸着部の吸着力を制御して前記対象の荷を吸着する吸着範囲を変更可能に構成され、
前記対象の荷をピッキングするとき、当該対象の荷の層間接着を剥がすための第1動作と、前記第1動作により前記層間接着が剥がされた前記対象の荷を持上げて移載するための第2動作と、を行うことを特徴とする自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫用のピッキング装置および自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
パレットに積層された複数の荷を分離して、個々に取り出してコンベヤラインなどの搬送路に載せるデパレタイザが知られている。例えば、特許文献1には、物品が複数段積載されたパレットから、ピックアップローラを用いて最上段の物品を取り出すデパレタイザが記載されている。このデパレタイザは、傾斜面を持ったストッパにリフター上の物品群を後方から支持させ、フレーム上を左右往復動するピックアップ本体を押し当てることにより、ピックアップローラを介して物品を搬送ベルト上に載せ搬送路側に搬出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-81058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、自動倉庫用のピッキング装置について検討し以下の認識を得た。
自動倉庫でピッキングするためのピッキング装置を、特許文献1に記載のデパレタイザを用いて構成することが考えられる。しかし、この構成では、ピックアップローラによって分離された荷を取り出すための搬送ベルトや搬送ローラを設置する必要がある。したがって、特許文献1に記載のデパレタイザを使用すると搬送ベルトや搬送ローラがスペースを占有するので、これに応じて保管棚が小さくなり保管容量が減少して、倉庫の保管効率が低下するという問題がある。
【0005】
これらから、本発明者は、自動倉庫用のピッキング装置には、ピッキング用のスペースを削減する観点で改善すべき余地があることを認識した。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ピッキング用のスペースを削減可能な自動倉庫用のピッキング装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動倉庫用のピッキング装置は、荷を複数含む集合体からピッキング対象の荷を取り出すための取出ユニットを備える。取出ユニットは、集合体との対向部に吸着部を複数有し、複数の吸着部の吸着力を個々に調整して対象の荷を吸着する吸着範囲を変更可能に構成される。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピッキング用のスペースを削減可能な自動倉庫用のピッキング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るピッキング装置を有する自動倉庫の一例を概略的に示す平面図である。
図2】複数の荷が積層された状態の集合体の一例を示す斜視図である。
図3図1の自動倉庫の第1台車の一例を概略的に示す正面図である。
図4図1の自動倉庫の第2台車の一例を概略的に示す正面図である。
図5図1のピッキング装置を拡大して示す平面図である。
図6図1のピッキング装置を拡大して示す側面図である。
図7図1のピッキング装置の取出ユニットを示す底面図である。
図8図7の取出ユニットの第1の吸着状態を示す平面図である。
図9図7の取出ユニットの第2の吸着状態を示す平面図である。
図10】第1の吸着状態で取出ユニットを上昇させた状態を示す図である。
図11】第2の吸着状態で取出ユニットを上昇させた状態を示す図である。
図12】一のパレットから他のパレットに荷を移載する過程を説明する図である。
図13】一のパレットから他のパレットに荷を移載する過程を説明する図である。
図14】一のパレットから他のパレットに荷を移載する過程を説明する図である。
図15】一のパレットから他のパレットに荷を移載する過程を説明する図である。
図16図1のピッキング装置のピッキング動作の一例を説明する説明図である。
図17】第1変形例を概略的に示すブロック図である。
図18】取出ユニットの第1の吸着状態の別の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
[実施の形態]
図面を参照して実施の形態に係る自動倉庫1の構成を説明する。図1は、実施の形態に係る自動倉庫1の一例を概略的に示す平面図である。
【0014】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX軸方向、X軸方向に直交する水平な方向をY軸方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定める。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。このような方向の表記は自動倉庫1の構成を制限するものではなく、自動倉庫1は、用途に応じて任意の構成で使用されうる。
【0015】
図2も参照する。図2は、複数の荷が積層された状態の集合体を示す斜視図である。本明細書では、1以上の物品が段ボール等のケースに収容されたものを荷10という。空荷のパレットを単に「パレット12j」という。一のパレット12j上に荷10が単数または複数載置されたものを「荷載パレット12」という。荷載パレット12は、荷を複数含む集合体を例示している。荷載パレット12はパレット12jとパレット12j上の荷10とを合わせたものを指している。荷載パレット12は、積層された複数の層から構成されてもよく、各層は複数の荷10を含んでもよい。図2の例では、荷載パレット12は、3つの層のそれぞれに8つの荷10を含んでいる。荷載パレット12は、自動倉庫1において、入庫、保管、出庫される最小単位であってもよい。荷10はピッキングを行うときに取り扱いされる最小単位であってもよい。
【0016】
荷載パレット12の荷10の層間は、搬送中の荷崩れを防ぐためにホットメルト等の接着剤10hによって接着されている。したがって、上層の荷10を単に持上げると、下層の荷10も連動して持ち上がることがあり、この場合、層間接着が途中で剥がれ、落下や荷崩れを引き起こす可能性がある。このため、事前に層間接着を剥がして層間分離してから上層の荷10を取り出すことが望ましい。
【0017】
図1に示すように、自動倉庫1は、保管棚22と、ピッキング部20と、第1台車14と、第2台車16と、ピッキング装置100と、制御部30とを備える。
【0018】
保管棚22は、多数の荷10を保管可能な保管スペースである。本実施形態の保管棚22は、第2レール44を挟んで分割された、2つの保管棚22a、22bを含む。保管棚22の構成は、複数の荷10を収容、保管可能であれば、特に限定されない。保管棚22は、X軸方向およびY軸方向に配列された複数の収容部26を含む。各収容部26は、荷載パレット12を収容可能に構成されている。
【0019】
保管棚22には、第1台車14が走行するための第1レール40と、第2台車16が走行するための第2レール44とが設けられる。第1レール40は、保管棚22a、22bおよびピッキング部20においてY軸方向に延設される。第1台車14は、各収容部26の下部を走行できる。第2レール44は、保管棚22a、22bおよびピッキング部20に隣接してX軸方向に延設される。
【0020】
図3は、第1台車14の一例を概略的に示す正面図である。第1台車14は、モータ(不図示)によって複数の車輪14fを駆動し、空荷または荷載パレット12を搭載した状態で第1レール40をY軸方向に走行する。第1台車14は、リフト機構14dによって載置台部14c上の荷載パレット12を昇降させる。図3において、上昇状態の載置台部14cを破線で示し、降下状態の載置台部14cを実線で示す。第1台車14は、荷載パレット12を収容部26に降ろすことができる。第1台車14は、荷載パレット12を収容部26から持上げて支持することができる。第1台車14は、第2台車16に乗降できる。
【0021】
図4は、第2台車16の一例を概略的に示す正面図であり、第1台車14を搭載した状態を示している。第2台車16は、モータ(不図示)によって複数の車輪16fを駆動し、第2レール44をX軸方向に走行する。第2台車16は、空荷の状態または荷載パレット12を搭載した状態の第1台車14を移送する。
【0022】
図1に戻る。制御部30は、MPU(Micro Processing Unit)などを含んで構成され、ユーザからの操作結果に基づき、入庫、出庫、搬出、移送等のために荷載パレット12の移動を制御する。一例として、制御部30は、入出庫用の領域と収容部との間や、複数の収容部間で荷載パレット12を移送するように、第1台車14および第2台車16の動作を制御する。また、制御部30は、荷10をピッキングするためにピッキング装置100の動作を制御する。
【0023】
ピッキング部20を説明する。図5は、ピッキング装置100を拡大して示す平面図である。図6は、ピッキング装置100を拡大して示す側面図である。これらの図では、一部の柱や梁などの記載を省略している。ピッキング部20は、ピッキング装置100を用いてピッキングを行うためのピッキングスペースであり、本実施形態では保管棚22内に設けられている(図1も参照)。ピッキング部20には、ピッキング前の荷載パレット12(以下、「第1荷載パレット12S」という)を載置するための第1載置部26pと、ピッキング後の荷載パレット12(以下、「第2荷載パレット12M」という)を載置するための第2載置部26sとが設けられる。
【0024】
なお、第1載置部26pおよび第2載置部26sは、ピッキングスペース内の特定の場所を指すものではなく、荷載パレット12を一時的に保管するスペースを指している。したがって、ピッキング部20における第1載置部26pおよび第2載置部26sの位置や範囲はピッキング作業ごとに変化する場合もある。本実施形態の第1載置部26pおよび第2載置部26sは、収容部26と同様の構成を有する。
【0025】
本実施形態のピッキング部20には、第1レール40がY軸方向に延設されている。第1載置部26pおよび第2載置部26sは、第1レール40上に設けられている。第1台車14は、第1載置部26pおよび第2載置部26sの下部を走行できる。ピッキング前の第1荷載パレット12Sは、第1台車14によって第1載置部26pに運び入れされる。ピッキング後の第2荷載パレット12Mは、第1台車14によって第2載置部26sから運び出される。
【0026】
(ピッキング装置)
ピッキング装置100を説明する。図6に示すように、ピッキング装置100は、ピッキング前の第1荷載パレット12Sから荷10をピッキングして第2荷載パレット12Mへ移載する。
【0027】
図6に示すように、本実施形態のピッキング装置100は、いわゆるガントリ型のクレーン機構を含んでいる。ピッキング装置100は、一対の横梁18eと、横桁18kと、クレーン台車18dと、吊下げ部18jと、取出ユニット18hとを備える。一対の横梁18eは、ピッキング部20の上部空間においてY軸方向両側に離隔して設けられる。横梁18eの両端は、縦柱18gの上端に支持される。
【0028】
横桁18kは、Y軸方向に延びるレール状の構造体で、一対の横梁18eの間に架け渡される。横桁18kは、横梁18e上をX軸方向に自走可能に構成される。横桁18kは、クレーンガータと称されることがある。クレーン台車18dは、横桁18k上をY軸方向に自走可能な台車である。クレーン台車18dは、トロリ台車と称されることがある。吊下げ部18jは、取出ユニット18hをクレーン台車18dに吊下げるとともにZ軸方向に上下動させることができる。また、吊下げ部18jは、取出ユニット18hを水平に回転させることができる。取出ユニット18hは、吊下げ部18jの先端に設けられ、荷10を持上げ可能に構成される。
【0029】
ピッキング装置100は、取出ユニット18hを水平方向(X軸方向、Y軸方向)に自在に移動可能に支持している。また、ピッキング装置100は、取出ユニット18hを上下方向(Z軸方向)に移動可能に支持している。
【0030】
取出ユニット18hを説明する。図7は、取出ユニット18hを示す底面図である。取出ユニット18hは、底面視で略矩形形状を有する。取出ユニット18hの底面には、複数の吸着部18sがX軸方向およびY軸方向にマトリックス状に配置される。複数の吸着部18sは、それぞれが吸着力の大きさを調整可能である。なお、吸着部18sは、複数の区画に分割されていてもよい。吸着部18sは、空気を吸入することによって吸着力を発生させる構成であってもよい。
【0031】
一例として、吸着部18sは、荷10を吸着可能な吸着力を発生するオン状態(図中で18s(on)と表記)と、吸着力を実質的に発生しないオフ状態(図中で18s(off)と表記)とを切替可能に構成される。なお、オフ状態は完全な不発生状態だけでなく、荷10を吸着できない程度の小さな吸着力を発生する状態を含む。取出ユニット18hは、複数の吸着部18sの吸着力を個々に調整して荷10を吸着する吸着範囲を変更可能に構成される。また、取出ユニット18hは、吸着力の発生領域を調整して、一層すべての荷10を吸着・保持できる。また、取出ユニット18hは、吸着力の発生領域を調整して、一層の荷10のうち1または複数の荷10を選択して吸着・保持できる。
【0032】
ピッキング装置100は、荷10をピッキングする過程において、荷10の層間接着を剥がすための第1動作と、荷10を持上げて移載するための第2動作とを行うことができる。取出ユニット18hは、第1動作を行うために、荷10の第1範囲A1を吸着する第1の吸着状態を作り出すことができる。また、取出ユニット18hは、第2動作を行うために、荷10の第1範囲A1より広い第2範囲A2を吸着する第2の吸着状態を作り出すことができる。図8は、取出ユニット18hの第1の吸着状態を示す平面図である。図9は、取出ユニット18hの第2の吸着状態を示す平面図である。これらの図では、オン状態の吸着部18sを黒塗りし、オフ状態の吸着部18sを白塗りし、取出ユニット18hを透視して示している。
【0033】
このように、取出ユニット18hは、荷10をピッキングする過程において吸着範囲を第1範囲A1から第2範囲A2に変更することができる。吸着範囲を変更することによって、荷10の層間分離および取出しを一つの機構によって実現できる。
【0034】
図8図9に示すように、荷10を吸着するとき、平面視において、複数の吸着部18sの配置範囲は、荷載パレット12上の荷10の範囲を含んでいる。この場合、荷10の広範囲を吸着できるので確実に荷10を取り出すことができる。
【0035】
ピッキング装置100の取出ユニット18hは、荷10の第1範囲A1を吸着して層間接着を剥がす第1動作を行った後、荷10の第1範囲A1よりも広い第2範囲A2を吸着して荷10を持ち上げる第2動作を実行できる。つまり、取出ユニット18hは、荷10の第1範囲A1を吸着した状態で上昇と下降を行ってから荷10の第2範囲A2を吸着するので、同じ空間で同じ装置によって、荷10の層間分離と、荷10の取り出しとを連続的に行うことができる。
【0036】
図8の例では、第1範囲A1は、荷10の長手方向の一端側に偏った範囲である。図9の例では、第2範囲A2は、第1範囲A1に加えて荷10の長手方向の他端側を含む範囲である。第2範囲A2は、荷10の上面全体を略覆う範囲であってもよい。図8では、長手方向がY軸方向と平行な横長の荷10と、長手方向がX軸方向と平行な縦長の荷10が混在しており、これらは、互いに第1範囲A1の位置が異なる。
【0037】
(第1動作)
荷10の層間接着を剥がす第1動作を説明する。図10は、第1の吸着状態で取出ユニット18hを上昇させた状態を示す図である。このように、一端側に偏った第1範囲A1を吸着して持上げることにより、層間接着の一端側から剥がれ始め、さらに持上げると層間接着の全体が剥がれる。このように取出ユニット18hを上昇させてから下降させることにより、第1動作は完了する。一端側に偏った範囲を持ち上げることにより、隔離力を一端側に集中して簡単に層間接着を剥がすことができる。取出ユニット18hを下降させる高さは任意に設定できる。例えば、取出ユニット18hを上昇前と同じ高さまで下降させてもよいし、取出ユニット18hを、上昇させた荷10が水平となるような高さまで下降させてもよいし、取出ユニット18hを、荷10の上面と対向するオフ状態の吸着部18sがその荷10の上面と接するようになる高さまで下降させてもよい。
【0038】
第1動作は、一層内の単一の荷10の層間接着を剥がすこともできるし、一層内の複数の荷10の層間接着を剥がすこともできる。本実施形態の第1動作では、一層内のすべての荷10の層間接着を剥がしている。なお、一回の上昇と下降とで層間接着が十分に剥がれない場合は、第1の吸着状態で取出ユニット18hの上昇と下降とを複数回繰り返してもよい。昇降動作を複数回繰り返すことにより一層容易に層間接着を剥がせる。昇降動作を複数回繰り返す場合、オン状態の吸着部18sの配置パターンを変更して昇降するようにしてもよい。
【0039】
(第2動作)
荷10を持上げて移載するための第2動作を説明する。第2動作は、荷10の層間接着が剥がされた状態で行われる。つまり、荷10の第1範囲A1を吸着した状態で取出ユニット18hを昇降させる第1動作の後に、荷10の第2範囲A2を吸着する第2動作が行われる。図11は、第2の吸着状態で取出ユニット18hを上昇させた状態を示す図である。この図に示すように、ピッキング装置100は、取出ユニット18hで第2範囲A2を吸着した状態の荷10を持上げることができる。また、ピッキング装置100は、持上げた状態の荷10を移載元のパレットから移載先のパレットに移載できる。
【0040】
ピッキング装置100の移載動作の一例を説明する。図12図15は、ピッキング装置100の移載動作を説明する図である。これらの図は、荷10を第1荷載パレット12Sから第2荷載パレット12Mに移載する過程を説明する上面視の図である。第2荷載パレット12Mは、当初空荷のパレットであってもよい。第1荷載パレット12Sには、各層に8個の荷10が積層されている。これらの図の説明では、荷10を区別するために、符号の末尾に「(1)」、「(2)」、「(3)」を付して表記する。
【0041】
図12の例では、取出ユニット18hは、単一の荷10(1)のみを吸着するように、複数の吸着部18sのうちこの荷10(1)に対応する吸着部18sをオン状態にしている。この例では、ピッキング装置100は、第1荷載パレット12Sから荷10(1)のみを取り出し、水平方向に移動させ、第2荷載パレット12Mに降ろしている。
【0042】
図13の例では、取出ユニット18hは、複数(例えば5個)の荷10(2)のみを吸着するように、複数の吸着部18sのうち複数の荷10(2)に対応する吸着部18sをオン状態にしている。この例では、ピッキング装置100は、第1荷載パレット12Sから複数の荷10(2)のみを取り出し、水平方向に移動させ、第2荷載パレット12Mに降ろしている。
【0043】
図14の例では、取出ユニット18hは、一層すべての荷10(3)を吸着するように、複数の吸着部18sのうち一層の荷10(3)に対応する吸着部18sをオン状態にしている。この場合、取出ユニット18hは、すべての吸着部18sをオン状態にしてもよい。
【0044】
図15の例では、取出ユニット18hは、単一の荷10(1)のみを吸着するように、複数の吸着部18sのうちこの荷10(1)に対応する吸着部18sをオン状態にしている。この例では、ピッキング装置100は、第1荷載パレット12Sから荷10(1)のみを取り出し、水平方向に移載するとともに水平に回転させ、荷10(1)の姿勢を変化させた状態で第2荷載パレット12Mに降ろしている。
【0045】
このように、ピッキング装置100は、一層の複数の荷10のうち所望の数の荷10を1回のピッキングで移送できる。
【0046】
次に、図16を参照して、ピッキング装置100のピッキング動作の一例を説明する。図16は、ピッキング動作の一例を説明する説明図である。この例のピッキング動作は、出荷計画に基づいて第1荷載パレット12Sから荷10を取り出し、販売店などの仕向先に出荷するための第2荷載パレット12Mを作成する動作である。なお、この説明では、荷、パレットおよび収容部を区別するために、符号の末尾に「-A」、「-B」、「-C」を付して表記する。図16では、荷10-Aを白抜きで、荷10-Bを直線ハッチングで、荷10-Cを破線ハッチングで示す。
【0047】
(1)第1台車14および第2台車16によって、保管棚22aに保管されている第1荷載パレット12Sをピッキング部20の第1載置部26pに移送する。この例では、互いに異なる種類の荷10-A、10-B、10-Cが積載された第1荷載パレット12S-A、12S-B、12S-Cを、第1載置部26p-A、26p-B、26p-Cに移送する。
【0048】
(2)ピッキング部20の第2載置部26sに、第2荷載パレット12Mを作成するための空のパレット12jを置く。
【0049】
(3)ピッキング装置100の第1動作によって、第1荷載パレット12S-Aの荷10-Aの層間接着を剥がし、第2動作によって、第1荷載パレット12S-Aから所要数の荷10-Aを取り出して、空のパレット12jに載せて第2荷載パレット12Mを作成する。
【0050】
(4)ピッキング装置100の第1動作によって、第1荷載パレット12S-Bの荷10-Bの層間接着を剥がし、第2動作によって、第1荷載パレット12S-Bから所要数の荷10-Bを取り出して、荷10-Aが置かれた第2荷載パレット12Mに載せる。
【0051】
(5)ピッキング装置100の第1動作によって、第1荷載パレット12S-Cの荷10-Cの層間接着を剥がし、第2動作によって、第1荷載パレット12S-Cから所要数の荷10-Cを取り出して、荷10-A、10-Bが置かれた第2荷載パレット12Mに載せる。
【0052】
上述の(3)~(5)において、必要に応じて取出ユニット18hを水平に回転させて荷10-A、10-B、10-Cの姿勢を変更してもよい。
【0053】
(6)第2荷載パレット12Mが完成したら、第2荷載パレット12Mを所定の領域に移送する。例えば、第2荷載パレット12Mを保管棚22bに移送して一時保管してもよいし、出庫用の領域に移送して倉庫外部に搬出してもよい。第2荷載パレット12Mの移送には第1台車14および第2台車16を使用してもよいし、フォークリフトなど別の移送手段を使用してもよい。これらの動作によりピッキング動作は終了する。
【0054】
以上のように構成された本実施形態のピッキング装置100は、吸着力によって対象の荷10を取り出すので、コンベアを使用せずにピッキング装置を構成することが可能になり、自動倉庫の省スペース化に有利である。また、吸着範囲を変更できるので、吸着範囲について異なる態様で荷10を持ち上げることができる。
【0055】
取出ユニット18hは、対象の荷10を上方に取り出しできるので、側方スペースを殆ど使用せずに作業できる。比較的余裕のある上方スペースを有効に使用できるので、取出ユニット18hを設置するための専用スペースを減らせ、省スペース化に有利である。
【0056】
取出ユニット18hは、対象の荷10の第1範囲A1を吸着して層間接着を剥がしてから、第1範囲A1より広い第2範囲A2を吸着して荷10を取り出すので、同じ空間で層間分離と荷10の取り出しとを行え、省スペース化に有利である。
【0057】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0058】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0059】
[第1変形例]
第1変形例に係るピッキング装置200を説明する。図17は、第1変形例を概略的に示すブロック図である。ピッキング装置200は、画像情報取得部202と、吸着範囲決定部204とを含む点で実施の形態と異なる。したがって、主に画像情報取得部202と、吸着範囲決定部204とを説明する。
【0060】
画像情報取得部202は、集合体(荷載パレット12)に関する画像情報Gpを取得する撮像装置である。画像情報取得部202は、荷載パレット12の上面視の画像を取得するように、取出ユニット18hに設けられる。
【0061】
吸着範囲決定部204は、画像情報取得部202の取得結果(画像情報Gp)に基づいて第1範囲A1および第2範囲A2を決定する。吸着範囲決定部204は、MPUなどを含んで構成できる。吸着範囲決定部204は、制御部30とは別体に設けられてもよいし、制御部30と一体的に設けられてもよい。
【0062】
吸着範囲決定部204は、画像情報Gpから荷10の輪郭を抽出し、抽出した輪郭から荷10の長辺、短辺の大きさと傾きとを特定する。また、吸着範囲決定部204は、長辺、短辺の位置と大きさおよび傾きから所定の情報処理により第1範囲A1と第2範囲A2とを決定する。ピッキング装置200は、吸着範囲決定部204の決定結果に基づき上述の第1動作、第2動作を行う。
【0063】
吸着範囲決定部204は、画像情報Gpと第1範囲A1、第2範囲A2との関係を自律的に学習可能に構成されてもよい。第1変形例によれば、荷10の形状が異なる場合や傾斜等している場合などにおいても、第1範囲A1、第2範囲A2を適切に決定できる。また、ピッキングの失敗ややり直しの回数を減らし、稼働効率を高めることができる。
【0064】
[その他の変形例]
実施の形態の説明では、ピッキング装置100が、第1荷載パレット12Sから取り出した荷10を第2荷載パレット12Mに移載する例を示したが、ピッキング装置100による荷10の移載先はパレットに限定されない。例えば、ピッキング装置100は、取り出した荷10をベルトコンベアなどに移載してもよいし、フォークリフトやトラックの荷台に移載してもよいし、第1台車14などの自走可能な台車上に移載してもよい。
【0065】
実施の形態の説明では、第1の吸着状態におけるオン状態の吸着部18sの配置パターンについて図8の例を示したが、本発明はこれに限定されない。オン状態の吸着部18sの配置パターンは荷10の配置に応じて変更されてもよい。図18は、取出ユニット18hの第1の吸着状態の別の例を示す平面図であり、図8に対応する。図18の例では、8つの荷10はすべて長手方向がX軸方向と平行な縦長に配置されている。このため、第1の吸着状態におけるオン状態の吸着部18sの配置パターンは図8の例と異なっている。
【0066】
実施の形態の説明では、取出ユニット18hの第2の吸着状態について、複数の吸着部18sのうち荷10と対面するすべての吸着部18sをオン状態にする例を示したが、本発明はこれに限定されず、荷10と対面する吸着部18sの一部はオフ状態にしてもよい。
【0067】
実施の形態の説明では、ピッキング部20が、保管棚22と一体的に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、ピッキング部20は、保管棚22から離隔して設けられてもよい。この場合、荷載パレット12は、フォークリフトなどの搬送機構によってピッキング部20と保管棚22との間で搬送されてもよい。
【0068】
実施の形態の説明では、ピッキング部20が保管棚22と同じ平面に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、ピッキング部20は保管棚22とは異なる平面に設けられてもよい。また、保管棚22は複数段に設けられてもよい。この場合、ピッキング部20は保管棚22の最上段に設けられてもよいし、最上段と同じ平面に設けられてもよい。
【0069】
実施の形態の説明では、第2動作において取出ユニット18hが吸着力のみによって荷10を保持する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2動作において取出ユニット18hは、アームとハンドとによって荷10を保持する構成であってもよい。
【0070】
実施の形態の説明では、ピッキング装置100が、ガントリ型のクレーン機構によって天井側から支持される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ピッキング装置は多関節ロボットや別構成の支持手段によって支持されてもよい。また、ピッキング装置は側方の横壁に取付けられ、側方から支持される構成であってもよい。
【0071】
実施の形態の説明では、ピッキング動作が同一種の荷10の集合体(第1荷載パレット12S)から荷10を取り出して複数種の荷10の集合体(第2荷載パレット12M)を作成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。ピッキング動作は、複数種の荷10の集合体から荷10を取り出す動作を含んでもよいし、取り出した荷10によって同一種の荷10の集合体を作成するものであってもよい。また、ピッキングによって作成された同一種の荷10の集合体を出庫するようにしてもよい。
【0072】
実施の形態の説明では、ピッキング動作において、複数の第1載置部26p-A、26p-B、26p-Cから単一の第2載置部26sにピッキングを行う例を示したが、本発明はこれに限定されない。複数の第1載置部26pから複数の第2載置部26sにピッキングを行うようにしてもよい。
【0073】
実施の形態の説明では、図16において、複数の第1載置部26p-A、26p-B、26p-Cが、Y軸方向に一列に配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。複数の第1載置部を一列に配置することは必須ではなく、それぞれ離隔して配置されてもよい。
【0074】
実施の形態の説明では、ピッキング装置100の全体が平面視で保管棚22と重複する例を示したが、本発明はこれに限定されない。ピッキング装置100の一部または全部は保管棚22の平面範囲から外へ張り出してもよい。
【0075】
これらの各変形例は、実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0077】
1・・・自動倉庫、A1・・・第1範囲、A2・・・第2範囲、10・・・荷、12M・・・第2荷載パレット、12S・・・第1荷載パレット、18h・・・取出ユニット、18s・・・吸着部、20・・・ピッキング部、100、200・・・ピッキング装置、202・・・画像情報取得部、204・・・吸着範囲決定部。
図1
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図3
図4
図5
図6
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