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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231129BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231129BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/043
H01M8/04858
H01M8/0432
H01M8/12 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019123777
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021009825
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-109901(JP,A)
【文献】特開2006-164541(JP,A)
【文献】特開2010-40378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/00
H01M 8/043
H01M 8/04858
H01M 8/0432
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の排熱と熱交換した熱媒を蓄える蓄熱タンクと、
前記燃料電池の動作を制御する制御装置と、
前記蓄熱タンクに蓄えられた熱を利用して出湯を行う出湯装置と、を備え、
前記制御装置は、自立運転中に発電抑制条件を満たした場合に定格よりも低い出力で発電運転を行う発電抑制運転が実行可能であり、自立運転中に前記出湯装置の動作指示があった場合、前記出湯装置の動作を実行する、出湯制御を備え、
前記発電抑制条件は、前記燃料電池の温度に関する第2条件を含み、
前記制御装置は、該第2条件を満たす場合は、前記出湯制御を実行せず、
前記出湯制御の実行中に、前記第2条件を満たした場合は、前記出湯制御を停止し、前記発電抑制運転を実行する、燃料電池装置。
【請求項2】
前記発電抑制条件は、前記蓄熱タンクに貯水された前記熱媒の温度に関する第1条件を含む、請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1条件を満たして、前記発電抑制運転を実行中である場合は、前記発電抑制運転を解除するとともに、前記出湯制御を実行する、請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記出湯装置の動作を停止した後に、前記発電抑制条件を満たしているかを判定し、前記第1条件を満たしているときには前記発電抑制運転を実行する請求項3記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記出湯装置の動作中に前記発電抑制条件が解消された場合に、前記出湯装置の動作指示の種類に応じて、前記出湯装置の動作を継続するか、停止するかを判定する継続判定制御を実行する請求項3記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1条件が満たされて、前記出湯制御を実行するにあたり、予め定められた特定の出湯装置を動作させるか使用者に選択させる報知を行う請求項2~5のいずれかに記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電を行う燃料電池と、燃料電池からの排熱を熱媒に回収して蓄積する排熱回収系とを備え、燃料電池から出力される電力と系統電源から供給される電力とを組み合わせて外部負荷に供給する燃料電池装置が知られている。また、停電など系統電源からの電力供給が停止した場合、燃料電池が発電する電力のみを外部負荷に供給する自立運転を行う燃料電池装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-098153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池装置では、自立運転時において、熱媒の温度が高くなり、燃料電池装置の耐久性および信頼性が低下することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の燃料電池装置は、発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の排熱と熱交換した熱媒を蓄える蓄熱タンクと、
前記燃料電池の動作を制御する制御装置と、
前記蓄熱タンクに蓄えられた熱を利用して出湯を行う出湯装置と、を備え、
前記制御装置は、自立運転中に発電抑制条件を満たした場合に定格よりも低い出力で発電運転を行う発電抑制運転が実行可能であり、自立運転中に前記出湯装置の動作指示があった場合、前記出湯装置の動作を実行する、出湯制御を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の燃料電池装置によれば、自立運転時において、熱媒の温度が高くなることを抑制し、燃料電池装置の耐久性および信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
図2】外装ケース内の燃料電池装置の構成を示す斜視図である。
図3】実施形態の制御の一例を示すフローチャートである。
図4】実施形態の制御の他の一例を示すフローチャートである。
図5】熱媒高温抑制制御を示すフローチャートである。
図6】実施形態の制御の他の一例を示すフローチャートである。
図7】燃料電池高温抑制制御を示すフローチャートである。
図8】継続判定制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本開示の実施形態に係る燃料電池装置について説明する。図1は、実施形態の燃料電池装置の概略構成図であり、図2は、外装ケース内の燃料電池装置の構成を示す斜視図である。
【0009】
実施形態の燃料電池装置100は、燃料電池11と、蓄熱タンク3と、制御装置30と、出湯装置60とを備える。
【0010】
燃料電池11は、燃料ガスと空気とを用いて発電を行なう。燃料電池11は、複数の燃料電池セルを含むセルスタック構造を有していてもよい。燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルであってもよい。燃料電池装置100は、収納容器10内に燃料電池11と改質器12とを収納してなる燃料電池モジュール(モジュールともいう)1を有している。
【0011】
発電に用いられる空気は、空気ブロアB2と、空気流量計AM1と、空気流路である配管Aとを含む空気供給装置14を介して燃料電池11に導入される。空気流量計AM1としては、エアフローメータなどの公知の流量計を用いることができる。発電に用いられる燃料ガスは、燃料ガスポンプB1と、原燃料ガス流路である配管Gとを含む燃料ガス供給装置15を介して、燃料ガスを改質するための改質水とともに、改質器12に導入される。
【0012】
燃料電池装置100は、燃料電池11の温度を測定する第1温度測定部TM1を有している。第1温度測定部TM1としては、熱電対など公知の温度測定装置を用いることができる。本実施形態では、燃料電池11の温度の代表値として、燃料電池11の中心位置における温度を第1温度測定部TM1で測定している。
【0013】
燃料電池装置100は、第1熱交換器2、水などの熱媒を蓄える蓄熱タンク3、ヒータ4、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる熱媒ポンプP1およびこれらを繋ぐ流路配管などを含む排熱回収システムである第1の熱循環系HC1を備えている。例えば図1に示すように、第1の熱循環系HC1における熱媒の循環方向において、第1熱交換器2、ヒータ4および蓄熱タンク3は、この順に設けられている。
【0014】
第1熱交換器2では、燃料電池11の排ガス(排熱ともいう)と熱媒とが熱交換し、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。生じた凝縮水は、凝縮水流路Cを経由して回収され、改質水タンク6に貯留される。水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、装置外部に排気される。改質水タンク6に貯水された改質水は、改質水流路Rおよび改質水ポンプP3を介して、改質器12に供給され、燃料ガスの水蒸気改質に利用される。蓄熱タンク3には、燃料電池11の排熱と熱交換した熱媒が貯留される。ヒータ4は、第1の熱循環系HC1を循環する熱媒に熱を与える。ヒータ4は、例えば図1に示すように、熱媒の循環方向における第1熱交換器2の下流かつ蓄熱タンク3の上流に位置している。
【0015】
燃料電池装置100は、蓄熱タンク3内に貯留された熱媒の温度を測定する第2温度測定部TM2を有している。第2温度測定部TM2としては、サーミスタなどの公知の温度測定装置を用いることができる。本実施形態では、蓄熱タンク3の底部における熱媒の温度を第2温度測定部TM2で測定している。
【0016】
燃料電池装置100は、第1の熱循環系HC1を循環する熱媒の温度を測定する第3温度測定部TM3および第4温度測定部TM4を有している。第3温度測定部TM3および第4温度測定部TM4としては、サーミスタなどの公知の温度測定装置を用いることができる。本実施形態では、ヒータ4の出口、すなわち熱媒の循環方向におけるヒータ4の下流かつ蓄熱タンク3の上流での熱媒の温度を第3温度測定部TM3で測定している。また、本実施形態では、熱媒の循環方向における蓄熱タンク3の下流かつ第1熱交換器2の上流での熱媒の温度を第4温度測定部TM4で測定している。
【0017】
燃料電池装置100は、第2熱交換器5、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる与熱ポンプP2およびこれらを繋ぐ流路配管などを有する排熱回収システムである第2の熱循環系HC2を備えている。第2熱交換器5では、蓄熱タンク3に蓄えられた高温の熱媒と、供給流路Kinを介して上水道から供給された低温の水道水とが熱交換する。第2熱交換器5で加温された水道水(温水ともいう)は、送給流路Koutを介して出湯装置60に送給される。供給流路Kinは、上水道から供給された水道水の温度を測定する第5温度測定部TM5を有している。第5温度測定部TM5としては、サーミスタなどの公知の温度測定装置を用いることができる。
【0018】
出湯装置60は、蓄熱タンク3に蓄えられた熱を利用して出湯を行う。出湯装置60は、送給流路Koutを介して送給される温水を、例えば家庭内の風呂、台所、洗面台などに出湯する。出湯された温水は、生活用水として使用される。
【0019】
燃料電池装置100は、発電および出湯などを行う場合に必要となる各種の構成をさらに備えていてもよい。上記に示した各構成は、一例であって、後述する各種制御に必要な構成以外は、任意の構成である。
【0020】
燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1などの他、その発電運転を補助する補機として、パワーコンディショナ20、制御装置30、表示装置や操作パネルを含む操作基板40などを備える。パワーコンディショナ20は、燃料電池11で発生した電力を、系統電源と連系して外部負荷に供給する。パワーコンディショナ20は、系統電源からの電力供給が停止した場合、そのことを検知することができる。燃料電池装置100は、例えば、図2に示すような、各フレーム51と各外装パネル52とからなるケース50の中に配設されている。
【0021】
そして、燃料電池装置100は、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサおよび記憶装置などを含む制御装置30を備える。
【0022】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0023】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0024】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0025】
制御装置30は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置30は、それに付属する記憶装置に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0026】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行う、本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、本実施形態において、制御装置30は特に、燃料電池装置に繋がる外部装置の指示、指令や、先に述べた各種センサの指示や計測値に基づいて、燃料ガスポンプB1などの各種補機を制御する。図では、制御装置30と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0027】
図示しない記憶装置は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよく、後述する熱媒高温抑制制御や燃料電池高温抑制制御で使用するフラグなどを記憶している。記憶装置は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体などの任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスクなどの可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)などの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0028】
なお、燃料電池装置の制御装置30および記憶装置は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0029】
制御装置30は、燃料電池11の発電運転を、複数の運転モードを適宜切り替えて制御する。複数の運転モードは、通常運転モードおよび自立運転モードを含んでいる。
【0030】
通常運転モードは、系統電源からの電力供給が継続している場合に、燃料電池11の発電運転を制御するものである。通常運転モードは、定格運転モードおよび部分負荷運転モードを含んでいる。定格運転モードは、定格の発電電力(第1出力ともいう)W1で発電運転を行う運転モードであり、第1出力W1で発電運転を行うために予め定められた供給量に基づいて、燃料電池11に燃料ガスおよび空気を供給し、第1出力W1の出力となるように動作させる。部分負荷運転モードは、外部負荷の変動に応じて出力を変動させる運転モードである。
【0031】
自立運転モードは、停電等により系統電源からの電力供給が停止している場合に、燃料電池11の自立運転を制御するものである。制御装置30は、パワーコンディショナ20により系統電源からの電力供給が停止したことが検知されると、外部負荷への出力が一時的に停止するが、燃料電池11の発電運転を通常運転モードから自立運転モードに切り替えることにより外部負荷への出力を再開することが可能である。
【0032】
制御装置30は、自立運転を開始すると、燃料電池装置の出力を回復させるため、モジュール1に供給する燃料ガスの流量を増加させ、内部負荷を用いて第1出力W1での発電運転を行うように燃料電池11を制御する。内部負荷としては、第1の熱循環系HC1のヒータ4が用いられる。制御装置30は、第1出力W1での発電運転を行えることを確認した後、外部負荷への出力を再開する。外部負荷へ出力するにあたっては、出湯装置60への出力が優先される。
【0033】
このように、自立運転時において、制御装置30は、モジュール1に供給する燃料ガスの流量を増加させる。それゆえ、発電に用いられない余剰の燃料ガスが生じやすく、第1熱交換器2に流れる熱量が大きくなる。さらに加えて、ヒータ4が内部負荷として用いられるため、ヒータ4から発生する熱で熱媒が加温され、熱媒の温度が高くなりやすい。また、余剰の燃料ガスは燃料電池11と改質器12との間の燃焼部において燃焼されるため、燃料電池11の温度も高くなりやすい。
【0034】
そこで、制御装置30は、自立運転時に燃料電池装置の温度を低下させるために出力を抑制する発電抑制運転が実行可能である。発電抑制運転は、所定の発電抑制条件を満たした場合に実行される。
【0035】
また、発電抑制運転は、燃料電池11を第1出力W1よりも低い第2出力W2で運転させるものである。本実施形態では、第2出力W2は出湯装置60の消費電力よりも低く設定されている。第2出力W2が出湯装置60の消費電力よりも低いことから、発電抑制運転中は、出湯装置60を出湯動作(単に、動作ともいう)させることができない場合がある。また他の実施形態において、第2出力W2が出湯装置60の消費電力よりも高い場合にも、出湯装置60に電力を出力する分、他の外部負荷に供給できる電力量が減少することとなる。そのため、出湯装置60を動作させる場合には、発電抑制運転を解除し、燃料電池11の出力を、少なくとも出湯装置60が動作可能な出力まで、好ましくは第1出力W1に回復させる必要がある。なお、第2出力W2は、第1出力W1よりも低い出力であればよく、燃料電池装置のサイズ等に伴って適宜設定することができる。本実施形態においては、発電抑制運転が解除されると、燃料電池11の出力は第2出力W2から第1出力W1に回復するように制御される。
【0036】
発電抑制条件は、熱媒の温度に関する第1条件を含んでおり、制御装置30は、熱媒高温判定制御を実行し、第1条件を満たすか否かの判定を行う。第1条件は、例えば、第3温度測定部TM3により測定される熱媒の温度hTM3が第3所定温度H3以上である、または、第4温度測定部TM4により測定される熱媒の温度hTM4が第3所定温度H3以上である。例えば、H3は70℃であり、H4は50℃である。
【0037】
第1条件は、熱媒温度に関する条件であればよく、前述以外の温度条件を有していてもよい。例えば、燃料電池装置において熱媒の貯留量が多い蓄熱タンクの温度を、第2温度測定部TM2で測定し、第5所定温度H5として温度条件に加えても良い。または、第2熱交換器5に入水する水温を、第5温度測定部TM5で測定し、第2温度測定部TM2で測定される蓄熱タンク温度と比較する温度条件を加えても良い。例えば、第5所定温度H5は50℃である。
【0038】
制御装置30は、自立運転において発電抑制運転を実行中に、出湯装置60の動作指示があった場合、出湯装置60の動作指示の内容に応じて、出湯制御を実行する。
【0039】
制御装置30は、出湯の条件を満たした場合には、発電抑制運転を解除し、燃料電池11の出力を第1出力W1に回復させた後、出湯装置60を動作させる。それにより、熱媒を水道水と入れ替える、または熱媒を水道水と熱交換する、ことによって熱媒を冷却することができる。ひいては、燃料電池装置100の耐久性および信頼性を向上させることができる。また、出湯装置60を動作させることで、燃料電池装置100の利便性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態において、制御装置30は、第1条件が満たされている状態で発電抑制運転を実行している場合、熱媒を冷却するために、風呂へ強制的に出湯(排湯)することが可能に構成されている。以下、風呂への強制的な出湯を、強制出湯という。本実施形態においては、この強制出湯も、出湯装置60の動作を実行していることに含まれる。なお、強制出湯に関する指示は、予めリモコン等にて設定されていてもよく、その都度、使用者に選択させるようにすることもできる。例えば、その都度、使用者に選択させる場合には、操作基板40は、強制出湯するか否かを選択させる報知を実行する。使用者は、強制出湯を許可する場合、操作基板40の強制出湯許可設定をオンにし、強制出湯を許可しない場合、強制出湯許可設定をオフにする。なお、使用者が一定期間、強制出湯許可設定を操作しない場合には、強制出湯設定がオフであるとみなすこともできる。
【0041】
使用者が強制出湯を許可する場合、蓄熱タンク3に蓄えられた高温の熱媒と、供給流路Kinを介して上水道から供給された低温の水道水とが、第2熱交換器5で強制的に熱交換される。よって、熱媒を冷却することができるため、燃料電池装置100の耐久性および信頼性を向上させることができる。また、熱媒高温による発電抑制運転を解除することができ、燃料電池11を第1出力W1で運転することが可能になるため、燃料電池装置100の利便性を向上させることができる。
【0042】
なお、強制出湯は、予め定められた湯量が出湯することで停止することができる。また他の停止方法として、第1条件が満たされなくなったことに基づいて停止することもできる。この場合、第2温度測定部TM2、第3温度測定部TM3、第4温度測定部TM4および第5温度測定部TM5から、単一もしくは複数の温度測定部を選択し、別途温度条件を設けることで停止させても良い。なお、出湯装置60は、風呂への出湯管および該出湯管に設けられた電磁弁(ともに図示省略)を有しており、制御装置30は、この電磁弁を開閉する電気信号を出力することにより強制出湯を開始または停止する。
【0043】
制御装置30は、出湯装置60の動作を停止した後に、発電抑制条件が満たされるか否かを判定し、第1条件が満たされる場合に、発電抑制運転を実行(再開)してもよい。これにより、熱媒の温度が高くなることを抑制でき、ひいては、燃料電池装置100の耐久性および信頼性を向上させることができる。
【0044】
また、制御装置30は、出湯装置60の動作中に発電抑制条件が解消された場合、出湯装置60の動作指示の種類に応じて、出湯装置60の動作を継続するか、停止するかを実行するための継続判定制御を実行してもよい。継続判定制御において、制御装置30は、出湯装置60の動作が強制出湯である場合、出湯装置60の動作を停止する。これにより、不要な排湯を抑制することができる。制御装置30は、出湯装置60の動作が使用者の指示によるものである場合、出湯装置60の動作を継続する。これにより、燃料電池装置100の利便性を向上させることができる。
【0045】
また、発電抑制条件として、燃料電池11の温度に関する第2条件を含むこともできる。この場合、制御装置30は、燃料電池高温判定制御を実行し、第2条件を満たすか否かの判定を行う。第2条件は、例えば、第1温度測定部TM1により測定される燃料電池11の中心温度hTM1が第1所定温度H1以上である。例えば、第1所定温度H1は720℃である。
【0046】
なお、第2条件を満たした後で、第2条件を満たさなくなったことを判定するための温度条件として第2所定温度H2を設けてもよい。例えば、第2所定温度H2は700℃である。
【0047】
第2条件は、燃料電池11の温度に関する条件であればよく、条件を複数有していてもよい。例えば、制御装置30が空気増量制御を実行中であり、かつ空気利用率Uaがその下限値Uaminに達しているとの条件をさらに含んでいてもよい。空気増量制御は、燃料電池11に供給する空気量を増量し、燃料電池11の空気利用率Uaを低下させることにより、燃料電池11の温度を低下させるものである。空気利用率Uaの下限値Uaminは、例えば、空気ブロアB2の仕様上の最大流量によって決定される。空気利用率Uaが下限値Uaminに達していない場合には、空気利用率Uaを低下させることにより、燃料電池11の温度を低下させることができる。
【0048】
本実施形態では、制御装置30は、第2条件が満たされない場合、発電抑制運転を実行し、出湯装置60の動作指示の受付を行わない。第2条件が満たされない場合に、出湯装置60の動作指示の受付を行なわず、発電抑制運転を実行することで、燃料電池11が高温になることを抑制でき、燃料電池装置100の耐久性および信頼性を向上させることができる。
【0049】
従って、この第2条件を満たすか否かの判定は、第1条件を満たすか否かの判定よりも前に実行することもできる。例えば、第2条件を満たすか否かの判定を、第1条件を満たすか否かの判定よりも前に実行する場合、制御装置30は、第2条件を満たし、かつ第1条件が満たされる場合に、出湯装置60の動作指示の受付を行うことができる。なお出湯装置60の動作については、上述の説明と同様である。
【0050】
以下、図3~7を参照して、本実施形態の発電抑制運転制御、出湯制御について説明する。
【0051】
図3は、本実施形態の一例を示すフローチャートであり、図4は、本実施形態の他の一例を示すフローチャートである。なお、図3図4に示すフローチャートにおいて、同一の制御については図3を用いて説明する。本フローチャートは、自立運転モードにおいて一旦停止した外部負荷への電力供給が再開された時点で〔スタート〕し、自立運転中は継続(ループ)して実行される。
【0052】
〔S1〕において、熱媒高温抑制制御に基づいて判定される第1条件を満たすか否かを判定する。
【0053】
〔S1〕において、第1条件を満たさない[No]場合、本フローチャートを終了する。一方、〔S1〕において、第1条件を満たす[Yes]場合、〔S2〕で発電抑制運転を実行し、燃料電池11を第1出力W1よりも低い第2出力W2にて運転する。続いて〔S3〕に進み、再度第1条件を満たすか否かを判定する。第1条件を満たさない場合は、言い換えれば、熱媒高温が解消されたことを意味するため、〔S4〕に進み発電抑制運転を解除して、燃料電池11の出力を第1出力W1に戻した上で、本フローチャートを終了する。一方、〔S3〕において、第1条件を再度満たす場合には、続いて〔S5〕に進む。なお〔S5〕以降のフローが出湯制御にかかる部分である。
【0054】
〔S5〕においては、制御装置30は、強制出湯の許可があるか否かを判定する。強制出湯が予め設定されており、〔S3〕で条件を満たす場合に強制出湯が許可されている[Yes]場合には、〔S6〕に進み、発電抑制運転を解除した上で、強制出湯(浴室排水)を実行する。所定の強制出湯が完了すれば、本フローチャートを終了する。なお、本実施形態において、強制出湯完了後に、改めて〔S1〕に戻り、第1条件を満たすか否かの判定を行なってもよい。
【0055】
〔S5〕において、強制出湯の許可がない[No]場合には、〔S7〕に進み、使用者からの給湯要求があるか否かを確認する。使用者からの給湯要求がない[No]場合には、引き続き発電抑制運転を継続しつつ、〔S3〕に戻り、再度第1条件を満たすようになったか否かを判定する。
【0056】
一方で、〔S7〕において、使用者からの給湯要求がある[Yes]場合には、〔S8〕に進み、発電抑制運転を解除し、燃料電池11の出力を第1出力W1に戻した上で、〔S9〕に進み、出湯を実行する。給湯要求に基づく出湯が完了した場合には、再度〔S1〕に戻り、熱媒が第1条件を満たすか否かを判定する。これは、使用者からの給湯要求に基づく出湯は、その要求量にばらつきがあり、熱媒高温を解消できているか判別できないため、再度第1条件を判定するものである。
【0057】
なお、図3に示すフローチャートでは、予め強制出湯が設定されている場合のフローを説明したが、強制出湯を都度使用者に確認することもできる。図4に示すフローチャートでは、〔S3〕と〔S5〕との間に、〔S10〕として、強制出湯の使用者報知が設けられている。〔S10〕の報知の後、使用者の選択結果に基づいて、〔S5〕のフローに進む。以降は、図3で示したフローチャートと同じである。
【0058】
図5は、発電抑制の条件である、第1条件を満たすか否かを判定する熱媒高温判定制御のフローチャートである。本フローチャートは、自立運転モードにおいて一旦停止した外部負荷への電力供給が再開された時点で〔スタート〕し、自立運転中は継続(ループ)して実行される。
【0059】
制御が開始されると、まず〔S21〕において、フラグF1が0(オフ)であるか否かを判定する。フラグF1は、第1条件を満たすか否かを表すフラグであり、フラグF1が0(オフ)である場合は第1条件を満たさないことを表し、フラグF1が1(オン)である場合は第1条件を満たすことを表す。また、制御開始時はフラグF1が0(オフ)である。
【0060】
〔S21〕で、フラグF1が0(オフ)である[Yes]の場合、〔S22〕~〔S23〕において、フラグF1を1(オン)に切り替える判定を行う。また、〔S21〕で、フラグF1が1(オン)である[No]の場合、〔S25〕~〔S27〕において、フラグF1を0(オフ)に切り替える判定を行う。
【0061】
〔S21〕で、フラグF1が0(オフ)である[Yes]の場合、〔S22〕において、第3温度測定部TM3により測定される熱媒の温度hTM3が第3所定温度H3以上であるか否かを判定する。〔S22〕において、hTM3がH3以上である[Yes]の場合、〔S24〕に進み、フラグF1を1(オン)に切り替えて熱媒高温抑制制御を終了する。
【0062】
〔S22〕において、hTM3がH3未満である[No]の場合、〔S23〕に進み、第4温度測定部TM4により測定される熱媒の温度hTM4が第4所定温度H4以上であるか否かを判定する。〔S23〕において、hTM4がH4以上である[Yes]の場合、〔S24〕に進み、フラグF1を1(オン)に切り替えて熱媒高温抑制制御を終了する。hTM4がH4未満である[No]の場合、フラグF1が0(オフ)の状態で熱媒高温判定制御を終了する。
【0063】
また、〔S21〕で、フラグF1が1(オン)である[No]の場合、〔S25〕において、第3温度測定部TM3により測定される熱媒の温度hTM3が第3所定温度H3未満であるか否かを判定する。hTM3がH3未満である[Yes]場合、〔S26〕へ進む。hTM3がH3以上である[No]の場合、フラグF1が1(オン)の状態で熱媒高温判定制御を終了する。
【0064】
続いて、〔S26〕において、第4温度測定部TM4により測定される熱媒の温度hTM4が第4所定温度H4未満であるか否かを判定する。hTM4がH4未満である[Yes]場合、〔S27〕へ進む。hTM4がH4以上である[No]の場合、フラグF1が1(オン)の状態で熱媒高温判定制御を終了する。
【0065】
続いて、〔S27〕において、第2温度測定部TM2により測定される熱媒の温度hTMが第5所定温度H5未満であるか否かを判定する。hTM2がH5未満である[Yes]場合、〔S28〕へ進み、フラグF1を0(オフ)に切り替えて熱媒高温抑制制御を終了する。hTM2がH5以上である[No]の場合、フラグF1が1(オン)の状態で熱媒高温判定制御を終了する。
【0066】
図6は、本実施形態の他の一例を示すフローチャートである。第1条件を満たすか否かの判定の前に、第2条件を満たすか否かの判定が追加されている点以外は、図3に示すフローチャートと同じであり、説明は割愛する。本フローチャートは、自立運転の開始後に〔スタート〕する。
【0067】
〔S11〕において、燃料電池高温抑制制御に基づいて判定される第2条件を満たすか否かを判定する。
【0068】
〔S11〕において、第2条件を満たさない[No]場合、〔S1〕へ進み、前述した熱媒高温抑制制御に基づいて判定される第1条件の判定を行う。
【0069】
〔S11〕において、第2条件を満たす[Yes]場合、〔S12〕において、燃料電池の温度を低下させることを優先させるべく、発電抑制運転を実行する。あわせて、出湯を不許可とする。なお不許可については、出湯受付を行なっても出湯を実行しない、もしくは出湯受付自体を受け付けない、のいずれかであればよい。〔S12〕において、発電抑制運転を実行し、かつ出湯不許可とした後は、再度〔S11〕に戻り、第2条件を満たすか否かの判定を繰り返す。以降のフローチャートは図3と同じである。なお、「発電抑制運転を実行」とあるのは、適宜「発電抑制運転を継続」と読み替えることもできる。また、〔S9〕において出湯実行後は、〔S11〕に戻って、第2条件を満たすか否かの判定を行なう。なお、〔S9〕において出湯実行後は、〔S1〕に戻るようにしてもよい。
【0070】
なお、〔S7〕において[No]の場合に、〔S3〕に戻ることとなるが、〔S3〕に戻る前に、再度第2条件を満たすか否かを判定しても良い。すなわち、〔S3〕に戻るまでの間に〔S11〕と同じ判定を追加しても良い。なお、この〔S11〕と同じ判定を追加した場合、この判定で[Yes]のときは、発電抑制運転は既に実行しているため、出湯を不許可とするのみとして、再びこの判定に戻るようにループし、一方[No]のとき、〔S3〕へ進むこととなる。
【0071】
図7は、発電抑制の条件である、第2条件を満たすか否かを判定する燃料電池高温抑制判定制御のフローチャートである。本フローチャートは、自立運転モードにおいて一旦停止した外部負荷への電力供給が再開された時点で〔スタート〕し、自立運転中は継続(ループ)して実行される。
【0072】
制御が開始されると、まず〔S31〕において、フラグF2が0(オフ)であるか否かを判定する。フラグF2は、第2条件を満たすか否かを表すフラグであり、フラグF2が0(オフ)である場合は第2条件を満たさないことを表し、フラグF2が1(オン)である場合は第2条件を満たすことを表す。また、制御開始時はフラグF2が0(オフ)である。
【0073】
〔S31〕で、フラグF2が0(オフ)である[Yes]場合、〔S32〕~〔S33〕において、フラグF2を1(オン)に切り替える判定を行う。また、〔S31〕で、フラグF2が1(オン)である[No]場合、〔S35〕において、フラグF2を0(オフ)に切り替える判定を行う。
【0074】
〔S31〕で、フラグF2が0(オフ)である[Yes]場合、〔S32〕において、第1温度測定部TM1により測定される燃料電池11の中心温度hTM1が第1所定温度H1以上であるか否かを判定する。hTM1がH1以上である[Yes]場合、〔S33〕へ進む。hTM1がH1未満である[No]場合、フラグF2が0(オフ)の状態で燃料電池高温判定制御を終了する。
【0075】
続いて、〔S33〕において、空気利用率Uaが空気利用率の下限値Uaminに等しいか否かを判定する。空気利用率Uaが下限値Uaminに等しい[Yes]場合、〔S34〕に進み、フラグF2を1(オン)に切り替えて燃料電池高温抑制制御を終了する。空気利用率Uaが下限値Uaminに等しくない[No]場合、フラグF2が0(オフ)の状態で燃料電池高温判定制御を終了する。
【0076】
また、〔S31〕で、フラグF2が1(オン)である[No]場合、〔S35〕において、フラグF2を0(オフ)に切り替える判定を行う。燃料電池11の中心温度hTM1が第2所定温度H2未満である[Yes]場合、〔S36〕に進み、フラグF2を0(オフ)に切り替えて燃料電池高温抑制制御を終了する。燃料電池11の中心温度hTM1が第2所定温度H2以上である[No]場合、フラグF2が1(オン)の状態で燃料電池高温判定制御を終了する。
【0077】
図8は、出湯動作の継続を判定する継続判定制御を示すフローチャートであり、出湯動作が開始した時点で〔スタート〕し、出湯動作中は継続(ループ)して実行される。
【0078】
〔S41〕において、出湯動作中に発電抑制(熱媒高温)が解消されたか否かを判定する。発電抑制が解消された[Yes]場合、〔S42〕に進んで、出湯要求の種類の判定を行う。発電抑制が解消されていない[No]場合、継続判定制御を終了する。
【0079】
〔S42〕において、実行している出湯動作が、使用者の出湯要求に基づく出湯動作か、または強制出湯かを判定する。出湯動作が強制出湯である[Yes]場合、〔S43〕において、出湯を停止して継続判定制御を終了する。出湯動作が強制出湯ではなく、使用者の出湯要求に基づく出湯動作である[No]場合、〔S44〕において、出湯を停止せず継続判定制御を終了する。
【符号の説明】
【0080】
100 燃料電池装置
3 蓄熱タンク
11 燃料電池
30 制御装置
60 出湯装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8