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特許7393155センサ装置およびセンサ装置を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】センサ装置およびセンサ装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B81B 7/02 20060101AFI20231129BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20231129BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20231129BHJP
   G01K 1/18 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
B81B7/02
B81C1/00
H01L29/84 B
H01L29/84 A
H01L29/84 Z
G01K7/16 B
G01K1/18
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019155285
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2020059116
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】10 2018 214 634.9
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・レミアー
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・ラインムート
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164057(JP,A)
【文献】特許第6341190(JP,B2)
【文献】特開2016-200534(JP,A)
【文献】特許第6070113(JP,B2)
【文献】特許第3794311(JP,B2)
【文献】特開2016-163915(JP,A)
【文献】特開2014-182170(JP,A)
【文献】特許第4947169(JP,B2)
【文献】特開2009-160728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/243003(US,A1)
【文献】国際公開第2019/82646(WO,A1)
【文献】特開2018-151310(JP,A)
【文献】特開2018-124275(JP,A)
【文献】特開2017-181196(JP,A)
【文献】特開2017-181044(JP,A)
【文献】特開2016-8953(JP,A)
【文献】特許第6432722(JP,B2)
【文献】特許第5838156(JP,B2)
【文献】特許第5734652(JP,B2)
【文献】特開平4-231831(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2075222(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007061727(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 7/02
B81C 1/00
H01L 29/84
G01K 7/16
G01K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置(1)であって、
基板(2)であって、上面(2a)と、基板(2)内に上面(2a)から形成された基板(2)内のキャビティ(3)とを有する、基板(2)と、
充填材料(MT)を含むキャリア(4)であって、基板(2)の上面(2a)に配置され、キャビティ(3)の縁部(3a)を少なくとも部分的に覆い、キャビティ(3)を少なくとも部分的に覆う、キャリア(4)と、
基板(2)に向いていない方の側でキャビティ(3)の上方でキャリア(4)上に構築された感応層(5)であって、キャビティ(3)の横方向の広がりが感応層(5)に対して少なくとも一方向にセンタリングされた、感応層(5)と、および
基板(2)に向いていない方の側で感応層(5)およびキャリア(4)を覆うパッシベーション(6)と、
を含むセンサ装置(1)において、
センサ装置(1)が、感応層(5)とパッシベーション(6)との間で、少なくとも感応層(5)の領域で感応層(5)に配置された第2の接着層(H2)を含む、
センサ装置(1)
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置(1)において、
前記充填材料(MT)が、前記キャビティ(3)の縁部(3a)を少なくとも部分的に覆う、センサ装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサ装置(1)において、前記パッシベーション(6)および前記充填材料(MT)が、それぞれ通気孔を含む、センサ装置(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか項に記載のセンサ装置(1)において、該センサ装置(1)が熱媒体センサを含み、前記感応層(5)が感熱層を含む、センサ装置(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか項に記載のセンサ装置(1)において、
該センサ装置(1)が、感応層(5)とキャリア(4)との間で少なくとも感応層(5)の領域に配置された第1の接着層(H1)を含む、センサ装置(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)において、
キャビティ(3)が、平面図において中心(M)を有し、構築した前記感応層(5)が、この中心(M)の周りに少なくとも一方向において対称的に配置された、センサ装置(1)。
【請求項7】
センサ装置(1)を製造する方法であって、
基板(2)を準備するステップ(S1)と、
基板(2)内のキャビティ(3)のための縁部(3a)として、基板(2)の上面(2a)からトレンチ構造(RB)を形成するステップ(S2)と、
トレンチ構造(RB)内に充填材料(MT)を導入するステップ(S3a)、および基板(2)の上面(2a)に充填材料(MT)を塗布するステップ(S3b)であって、これにより基板(2)の上面(2a)および少なくとも部分的に縁部(3a)にキャリア(4)を形成するステップ(S3b)と、
感応層(5)をキャリア(4)に配置するステップ(S4)、および縁部(3a)との間の領域の横方向の広がりが少なくとも横方向において感応層(5)に対してセンタリングされるように、感応層(5)を構築するステップ(S5)と、
キャリア(4)および感応層(5)の、基板(2)に向いていない方の側にパッシベーション(6)を配置するステップ(S6)と、
パッシベーション(6)およびキャリア(4)を通って基板(2)まで延在する複数のエッチング孔(7)をパッシベーション(6)およびキャリア(4)内に設けるステップ(S7)と
エッチング孔(7)を介するエッチングプロセスによって基板(2)内に、縁部(3a)内でキャビティ(3)を形成するステップ(S8)と、
を含むセンサ装置(1)を製造する方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法において、化学量論的なまたはシリコンリッチな窒化物もしくはSiOを、充填材料(MT)として使用する、方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法において、感応層(5)を配置するステップ(S4)の前に、感応層(5)の領域でキャリア(4)に第1の接着層(H1)を配置する、方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか項に記載の方法において、リソグラフィ方法およびエッチング方法によって感応層(5)を構築するステップ(S5)を行い、前側からのリソグラフィおよびエッチングによってエッチング孔および感応層を生成し、同じ前側からトレンチ構造(RB)を形成する、方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか項に記載の方法において、エッチング孔の間隔の少なくとも半分を横方向にアンダーカットする少なくとも1つの等方性エッチングステップを含むエッチング方法を用いて、キャビティ(3)を形成するステップ(S8)を行う、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置およびセンサ装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜を有するセンサ、特にマイクロメカニカルセンサは、作動時にセンサ領域の加熱(熱原理)にさらされ、通常、センサ領域で発生した熱を放出できることを必要とする。空気質量センサは、多くの場合には熱原理に基づいており、通常、感熱素子(温度センサ、機能性構造)は、センサチップの本体からできるだけ熱的に分離されて配置されている。膜センサでは、通常、センサの前面の膜は、膜、すなわち膜を作製することができるウェーハの裏面からキャビティ(空洞)を露出させることによって、エッチングプロセスによって生成される。加えて、多くの場合にはKOHエッチングが使用される。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102016203239号明細書には、裏側の空洞を有するセンサ基板を含むマイクロメカニカルセンサ装置が記載されており、前側には、裏側の空洞の上方に配置された膜領域が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102016203239号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、請求項1に記載のセンサ装置および請求項8に記載のセンサ装置を製造する方法を提供する。
【0006】
好ましい実施形態が従属請求項の対象である。
【0007】
本発明の利点
本発明の基礎をなす思想は、センサ装置ならびにセンサ装置を製造する方法であって、放熱を改善するためにセンサ膜の下方のキャビティを用いることができ、特にキャビティおよびセンサの縁部へ、定められているように例えば対称的に熱を導き、放出することができるセンサ装置ならびにセンサ装置を製造する方法を提供することである。センサ膜の前面から行うことができるエッチングプロセスによって、エッチングプロセスを短縮することができ、縁部およびキャリアによってキャビティの安定性を改善することができる。前面のエッチングにより、検出素子(空気感応層、温度センサなど)の上方のキャビティは、製作プロセス(エッチング)で自動的にセンタリングされることが有利である。
【0008】
本発明によれば、センサ装置は、基板であって、上面と、基板内に上面から形成された基板内のキャビティとを有する基板と、基板の上面に配置されており、キャビティを少なくとも部分的に覆う充填材料を含むキャリアと、基板に向いていない方の側でキャビティの上方でキャリアに構築された感応層であって、キャビティの横方向の寸法が感応層に対して少なくとも一方向にセンタリングされた感応層と、および基板に向いていない方の側で感応層およびキャリアを覆うパッシベーションと、を備える。
【0009】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、充填材料は、キャビティの縁部を少なくとも部分的に覆う。
【0010】
本発明によれば、センサ装置は、基板であって、上面と、上面から基板内に形成された基板内のキャビティとを有する基板を含む。さらにセンサ装置は、充填材料を含むキャリアであって、基板の上面に配置され、キャビティの縁部を少なくとも部分的に覆い、キャビティを少なくとも部分的に覆うキャリアと、基板に向いていない方の側でキャビティの上方でキャリアに構築された感応層であって、キャビティの横方向の広がりが感応層に対して少なくとも一方向においてセンタリングされた感応層と、および基板に向いていない方の側で感応層およびキャリアを覆うパッシベーションと、を備える。
【0011】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、パッシベーションおよび充填材料はそれぞれ通気孔を含む。
【0012】
センサ装置は、有利には、膜センサとして、例えば、微小機械素子(MEMS)として構成することができる。
【0013】
対称的な放熱によって、それぞれキャビティの縁部を介して、好ましくは少なくとも横方向の広がりにおいて同じ大きさで熱流を放出することができる。好ましくは、キャビティは、特に平面図では、横方向にさらなる対称性を有し、他の横方向にも熱を均等に放出することができる。検出層が(平面図で見て)キャビティの上方で中央に配置されていることにより、キャビティの縁部およびセンサ装置の側面において、異なる温度状態(いわゆる「ブリッジオフセット」)を低減または防止することができる。
【0014】
基板の上面は、有利には、センサ装置の前面に向いているか、または前面を形成している。キャビティを形成するためのエッチングステップは、センサ領域のための膜を形成することができるキャリアの前面から有利に行われる。エッチングは、キャビティの全領域におけるキャリアの完全なエッチングを省略できるように、エッチング孔を介して行うことができる。このようにして、有利には、(エッチング、キャビティの上方に膜を設けるために)必要な処理時間を短縮することができる。
【0015】
キャリアは、有利には膜を形成し、キャビティの縁部に少なくとも部分的に延在し、キャビティの縁部は、有利にはキャリア材料と共にキャビティの少なくとも上部でキャビティの内壁を形成することができる。キャビティを少なくとも部分的に覆う内壁およびキャリア(ストリップまたは全体のカバー)は、同じ材料からなるので、これにより、特に膜の安定性が有利に得られる。
【0016】
キャリアは、キャビティを完全に覆ってもよいし、またはストリップのみを含んでもよい。感応層の領域の下方のキャビティによって、キャビティおよび感応層の領域で基板からのキャリアの熱的分離を達成することができる。
【0017】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、パッシベーションおよびキャリアは、キャビティの領域に、キャビティ内にまで延在する複数の貫通するエッチング孔を含む。
【0018】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、センサ装置は、熱媒体センサを含み、感応層は感熱層を含む。
【0019】
媒体センサは、例えば、空気質量センサを含むことができる。
【0020】
センサ装置は、有利にはガスセンサまたは圧力センサであってもよい。
【0021】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、センサ装置は、感応層とキャリアとの間で少なくとも感応層の領域に配置された第1の接着層を含む。
【0022】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、センサ装置は、少なくとも、感応層とパッシベーションとの間で、感応層の領域で感応層に配置された第2の接着層を含む。
【0023】
パッシベーションは、堆積によって配置することができ、感応層および/または第2の接着層を環境の影響から保護することができる。
【0024】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、センサ装置は、パッシベーションに配置される追加のパッシベーションを含む。
【0025】
この場合、この追加パッシベーションを第1のパッシベーション上に配置することができる。
【0026】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、キャビティの横方向の広がりは、縁部を介して対称的に放熱できるように、少なくとも感応層に対して一方向においてセンタリングされている。
【0027】
センサ装置の好ましい実施形態によれば、キャビティは、平面図において中心を有し、構築した感応層は、この中心の周りに少なくとも一方向において対称的に配置している。
【0028】
OMM膜(表面マイクロメカニクス)の一般的な実施形態では、エッチングは、通常、キャビティの所定の縁部なしに、側面に対して等方性に行われ、これにより、横方向により広い幅の膜および不都合な膜のずれが生じる可能性がある。このことは、膜の安定性を低下させ、ブリッジオフセットを増大させる場合がある。ウェーハ裏面の解放によるキャビティの代替的な実施形態では、ウェーハを完全にエッチングする必要があることが多いので、著しく長いエッチング時間が必要とされることがある。膜のずれは、KOHを用いて十分に制御することができるが、ほとんどの場合には長方形の膜しか製造することができない。裏面トレンチの場合には、処理時間が極めて長くなり、ウェーハにわたって横方向ずれ(膜のずれおよびブリッジオフセット)が生じる可能性がある。
【0029】
対称的な整列によって、膜のずれ、すなわち、感応層に対する縁部の位置のずれを少なくとも1次元において減じるか、またはなくすことができる。
【0030】
本発明によれば、センサ装置を製造する方法において、基板を準備するステップと、基板の上面に充填材料を塗布するステップであって、これにより基板の上面にキャリアを形成するステップと、キャリアに感応層を配置するステップ、および少なくとも横方向において、キャビティのための縁部との間の領域の横方向の広がりが感応層に対してセンタリングされるように感応層を構築するステップと、キャリアを通って基板まで延在する複数のエッチング孔をキャリア内に設けるステップと、およびエッチング孔を介するエッチングプロセスによって基板内に、縁部内でキャビティを形成するステップと、を行う。
【0031】
この方法の好ましい実施形態によれば、基板内のキャビティのための縁部として基板の上面からトレンチ構造を形成し、充填材料が少なくとも部分的に縁部を形成するように、トレンチ構造に充填材料を導入する。
【0032】
本発明によれば、センサ装置を製造する方法において、基板を準備するステップと、基板内のキャビティのための縁部として基板の上面からトレンチ構造を形成するステップと、充填材料をトレンチ構造内に導入し、基板の上面に充填材料を塗布し、基板の上面および少なくとも部分的に縁部にキャリアが形成されるように、充填材料を基板の上面に塗布するステップと、感応層をキャリアに配置し、縁部との間の領域の横方向の広がりが感応層に対して少なくとも横方向においてセンタリングされるように感応層を構築するステップと、キャリアを通って基板まで延在する複数のエッチング孔をキャリア内に設けるステップと、および、エッチング孔を介するエッチングプロセスによって基板内に、縁部内でキャビティを形成するステップと、を備える。
【0033】
この方法は、有利には、センサ装置に関連して既に述べた特徴およびこれらの特徴の利点によっても優れており、逆もまた同様である。
【0034】
この方法の好ましい実施形態によれば、キャリアおよび感応層の、基板に向いていない方の側にパッシベーションを配置し、パッシベーションおよびキャリアを通って基板まで延在する複数のエッチング孔をパッシベーションおよびキャリア内に設ける。
【0035】
この方法は、例えば圧力センサ、空気質量センサまたはガスセンサにおいて、表面膜を有する他の製品を製造するためにも有利に使用することができる。
【0036】
少なくとも1つのトレンチ構造は、例えば、マスキングおよびエッチングプロセスによって形成することができる。
【0037】
縁部によって、有利にはキャビティの外形を定めることができる。
【0038】
縁部におけるキャリアの形成は、有利には、キャビティの内側から行い、したがって、有利には、キャビティの内壁を覆うように行う。これにより、後のエッチングでは、キャビティを、縁部(トレンチ)が形成されるよりも深く、または同じ深さで、またはそれよりも浅くエッチングすることができる。キャビティの底部がキャリアおよび感応層から離れているほど、(放熱時に)感応層に対する底部の熱的効果が低くなる場合もある。
【0039】
キャビティが横方向にセンタリングされている、縁部と縁部との間の領域は、有利には、このそれぞれの寸法(方向)におけるキャビティの全幅を表す。
【0040】
縁部は、真っ直ぐな、または湾曲した形状を有することができ、このことは、安定性および汚染の防止のために有利である。このようにして、有利には、キャビティの縁部境界をあらかじめ設定することができ、有利には、エッチングによって輪郭を写す必要がないので、エッチング方法は、無指向性エッチング方法を含むことができる。
【0041】
キャビティは、有利には、縁部と縁部との間にキャビティの領域を形成することができるように、縁部内に形成することができ、この部分は、平面図でキャビティの輪郭を形成することができる縁部の間に設けることができる。横方向は、有利には、基板の上面の平面寸法に対して常に平行であると理解されるべきである。
【0042】
この方法の好ましい実施形態によれば、化学量論的またはシリコンリッチな窒化物またはSiO(酸化シリコン)を充填材料として使用する。
【0043】
窒化ケイ素または酸化ケイ素は、有利には、安定性および熱伝導性に関して充填材として十分に適している。
【0044】
この方法の好ましい実施形態によれば、感応層を配置するステップの前に、第1の接着層を感応層の領域でキャリア上に配置する。
【0045】
この方法の好ましい実施形態によれば、感応層を構築するステップは、リソグラフィ方法およびエッチング方法によって行い、エッチング孔および感応層は、前側からのリソグラフィおよびエッチングによって生成し、トレンチ構造は同じ前側から形成する。
【0046】
エッチング方法はイオンビームエッチングであってもよい。
【0047】
代替的には、感応層の構築は、キャリア内に予備構造を設け、例えば感応層のためのトレンチであるこの予備構造に、感応層を充填することによって行うこともできる。感応層は、トレンチ(予備構造)内に堆積させ、次いで、キャリアの上面とほぼ平面をなすように研削プロセスによって平坦に研削することができる。研削は、例えば化学機械研磨(CMP)または他の方法(Cuダマシンプロセス)によって行うことができる。
【0048】
この方法の好ましい実施形態によれば、キャビティの形成は、エッチング孔の間隔の少なくとも半分を横方向にアンダーカットする少なくとも1つの等方性エッチングステップを含むエッチング方法を用いて行う。
【0049】
この方法の好ましい実施形態によれば、気体または真空をキャビティ内に閉じ込める。
【0050】
真空により、有利にはセンサの感度を高めることができ、熱絶縁をさらに促進することができる。後面トレンチを有するセンサ装置の従来の製造方法では、通常、安定した真空を閉じ込めることができない。
【0051】
この方法の好ましい実施形態によれば、追加のパッシベーションがパッシベーション上に配置する。
【0052】
本発明の実施形態のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の説明により明らかになる。
【0053】
概略的な図面に示す例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の一実施形態によるセンサ装置を示す概略的な側面図である。
図2】本発明の一実施形態によるセンサ装置を示す概略的な平面図である。
図3】本発明の一実施形態によるセンサ装置の製造方法を示す概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図面において、同じ符号は、同じか、または機能的に同じ要素を示す。
【0056】
図1は、本発明の一実施形態によるセンサ装置の概略的な側面図を示す。
【0057】
センサ装置1は基板2を含み、基板2は、上面2aと基板2内のキャビティ3とを有し、キャビティ3は上面2aから基板2内に成形されている。さらに、センサ装置1は充填材料MTを含むキャリア4を備え、キャリア4は、基板2の上面2aに配置されており、キャビティ3の縁部3aを少なくとも部分的に覆い、キャビティ3を少なくとも部分的に覆っている。センサ装置1は感応層5を含み、感応層5は、構造化されてキャリア4の基板2に向いていない方の側およびキャビティ3の上方に配置されており、キャビティ3の横方向の広がりは、感応層5に対して少なくとも一方向にセンタリングされており、これにより、縁部3aを介して対称的に放熱することができる。センサ装置1は、感応層5と、基板2に向いていない側でキャリア4とを覆うパッシベーション6を備える。
【0058】
感応層5は、単一の層または複数の層を含んでいてもよい。例えばキャリア4への塗布による製造プロセスによって、感応層5の断面は、例えば長方形または台形であってもよい。次に、第2の接着層H2を、感応層5の上面に配置(堆積)し、パッシベーション6との接着によって直接の接触を形成することができる。
【0059】
エッチング孔7は、有利には、パッシベーション6内およびキャリア4内に互いに間隔gをおいて設けられている。エッチング孔の間の間隔gは、有利には同じであってもよい。分かりやすくするために、1つのループの一部である一対の感応層5のみを図に示してある。しかしながら、感応層5(層5の対)を有する複数のループをキャリア4に配置することも可能である。それらループの間に、またはそれらループの隣に横方向に1つ以上の温度センサを(キャリア4に)配置することもできる。間隔gの選択により、キャビティ3の深さを有利に決定することができる。選択した間隔が大きすぎる場合には、長い時間の後にようやく、エッチング孔を介して連続的なキャビティを形成することができ、これにより、キャビティの深さをより深くすることもできる。しかしながら、深さは、間隔gが小さい場合にもエッチング時間によって制御することもできる。
【0060】
センサ装置1は、キャリア4、感応層5およびパッシベーション6を少なくとも部分的に覆うことができる追加のパッシベーション8を含むことができる。この追加パッシベーション8は、有利にはエッチング孔をさらに覆い、エッチング孔を閉じることもできる。キャビティ内には、このようにして、周囲とは異なる圧力を有するガスまたは真空を閉じ込めてもよい。閉じ込めたガスまたは真空によって、(センサの下方の基板または構造に対する)膜、すなわちキャリア4の熱絶縁を有利に改善することができる。
【0061】
基板2は、例えばSiを含むウェーハとして提供することもできる。
【0062】
キャビティ3の深さは、有利には用途に応じて異なるように形成してもよい。高い熱流が予想される場合には、放熱時にキャビティ3の底部が感応層5に対してより小さい干渉しかもたらさないかまたは全くもたらさないように、キャビティ3をより深く形成することができる。キャビティ3は、例えば、約25~100μmの深さを有することができる。キャビティ3のそれぞれの深さの選択は、有利には、感応層5の下方にキャビティをセンタリングすることと、キャビティの幅を有利には付加的に決定可能であることとを確保して、行うことができる。
【0063】
感応層5の配置および構築は、有利には、基板2内にキャビティ3の形成する前に(キャビティ3の領域でキャリア4を解放する前に)行い、これにより、有利には(構築のための)リソグラフィに必要なキャリア(膜)の平坦なトポグラフィを提供することができる。
【0064】
キャリア4の製造時には基板内にトレンチ構造を形成することができ、基板内には後にキャリア4の充填材料MTを導入することができる。この導入は、トレンチがあまり広い幅に形成されていない場合にのみその生成したトレンチの幅全体を完全に充填することができるので、トレンチ構造および結果として生じる縁部3aは、対応して肉薄に選択するか、または複数のトレンチ構造を基板内に互いに平行に設けることができる(図示しない)。次にこれらのトレンチに充填材料MTを充填することができる。キャビティ3をエッチングした後に、トレンチがキャビティの底部まで延在していない場合には、充填されたトレンチ間の基板材料を除去することもできる。その後、互いに平行な垂直方向の支持体を、例えば互いに間隔dを有することができる縁部3aとして残すことができる。この間隔dは、有利には、全ての縁部3aについて同じでもよいし、異なってもよい。
【0065】
第1の接着層H1は、キャリア4に対する感応層5の材料のための拡散バリアであってもよい。第2の接着層H2は同様に感応層のための拡散バリアであってもよい。第2の接着層H2は感応層5に堆積させることができる。
【0066】
キャビティは、例えばXeF(二フッ化キセノン)を用いて、例えば等方性で基板2内に設けることができる。XeFを用いたエッチングに加えて、またはその代わりに、SF(六フッ化硫黄)を用いてエッチングプロセスを行うこともでき、この場合、深さ方向に向けることができる。さもなければ、有利には、無指向性のエッチング方法を使用することもできる。
【0067】
追加パッシベーション8は、有利には、環境の影響(湿気、塵)に対する保護として形成してもよく、適切な材料を含んでもよい。
【0068】
エッチングはKOHによって行うこともできる。
【0069】
図2は、本発明の一実施形態によるセンサ装置の概略的な平面図を示す。
【0070】
センサ装置1の平面図に示すように、キャビティ3は、縁部3aを有する例示的な卵形(楕円)の形状を備え、その縁部は、キャビティ3の周り全体を包囲することができる。感応層5は、有利には少なくとも横方向kに沿って中心Mに対して対称的に配置している。したがって、方向kに沿って(中心から両側まで)同じ距離をおいて感応層5を配置することができるので、横方向kと交差する縁部3aへの温度流束を両側で対称的にすることができる。
【0071】
感応層5は、有利には、電気回路に接続することもでき、または感応層5自体が、測定素子を有する回路を形成することもでき、有利には、測定すべきパラメータに依存し得る感応層の電気抵抗を測定することもできる。このループは、有利にはホイートストンブリッジとすることができる。
【0072】
縁部3aの有利な任意の形状によって、有利には、平面図で縁部境界の、したがってキャビティ3の任意の設計を実現することができ、これにより、キャビティ3の安定性および汚染特性に有利に影響を及ぼすことができる。有利には、エッチング孔7は、感応層5の間に設けており、また有利には、互いに等間隔で分布させている。上面図は、例示的に感応層5の3つのループを示している。
【0073】
基板およびキャビティを有するキャリアはチップ上に配置してもよいし、またはチップとして形成してもよい。
【0074】
図3は、本発明の一実施形態によるセンサ装置の製造方法の概略的なフロー図を示す。
【0075】
本センサ装置の製造方法では、基板を準備するステップS1と、基板の上面から基板内のキャビティの縁部としてトレンチ構造を形成するステップS2と、トレンチ構造内に充填材料を導入するステップS3aと、基板の上面に充填材料を塗布するステップS3bとを備え、これにより、キャリアを、基板の上面に形成し、かつその縁部領域上に少なくとも部分的に形成する。さらに、キャリアに感応層を配置するステップS4および感応層を構築するステップS5を行い、少なくとも横方向に、縁部との間の領域の横方向の広がりが感応層にセンタリングされるように行い、有利には、感応層の、基板に向いていない方の側で、キャリアおよび感応層にパッシベーションを配置するステップS6を行う。さらに、有利には、パッシベーションおよびキャリアを通って基板まで延在することができる複数のエッチング孔を、有利にはパッシベーションおよびキャリア内に設けるステップS7、およびエッチング孔を通るエッチングプロセスによって、縁部境界内の基板内にキャビティを形成するステップS8を行う。上記方法ステップS3aおよびS3bは、同時に順番に行うことができる。
【0076】
トレンチ構造は、トレンチプロセスによって導入することができる。
【0077】
以上、好ましい実施形態に基づいて本発明を完全に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な方法で変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 センサ装置
2 基板
2a 上面
3 キャビティ
3a 縁部
4 キャリア
5 感応層
6 パッシベーション
7 エッチング孔
8 パッシベーション
d 間隔
M 中心
MT 充填材量
RB トレンチ構造
S1~S8 ステップ
図1
図2
図3