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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20231129BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C7/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165609
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021040975
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 友希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】森田 凌伍
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-167577(JP,A)
【文献】特開2000-333777(JP,A)
【文献】特開2006-239078(JP,A)
【文献】特開平04-067809(JP,A)
【文献】米国特許第05700053(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40
A47C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれと座、及び前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部とを有しており、前記前向きアーム部は、前記座よりも高い位置に配置されて、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体に後傾動可能に連結されている構成であって、
前記サイド支持体は、支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有し、前記前向きアーム部は、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態に配置されており、
前記上水平状部は、その上面から前記支柱部に向けて回り込むように中空状に形成された軟質材製の保護カバーで覆われている、
【請求項2】
背もたれ及び座と、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部と、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体とを有し、
前記サイド支持体は、前記座よりも高い高さの支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有して、前記上水平状部に、前記前向きアーム部が、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態で後傾動自在に連結されており、
かつ、少なくとも前記上水平状部の後端部と前記前向きアーム部の前端部とを一連に覆う軟質材製の保護カバーを備えている椅子であって、
前記サイド支持体の上水平状部は、前記支柱部の手前に突出した前向き露出部と、前記支柱部の後ろに突出した後ろ向き露出部とを有している一方、
前記保護カバーは前記上水平状部の全体を覆う長さであって、前記サイド支持体の支柱部に対応した基部と、前記基部から手前に突出したフロント部と、前記基部から後ろに突出したリア部とを有し、前記基部には、前記支柱部を逃がすための開口が形成されて、前記リア部は、前記前向きアーム部の取り付けを許容するために後ろ向きに開口しており、 かつ、前記フロント部とリア部とのうちいずれか一方又は両方の下部に、前記開口に連通したスリットが形成されている、
子。
【請求項3】
前記保護カバーのリア部は前記スリットが存在しない筒体になっている一方、
前記保護カバーのフロント部は前向きに開口すると共に前記スリットが形成されており、かつ、前記サイド支持体の上水平状部に、前記保護カバーのフロント部を開き不能に保持するフロントキャップが装着されている、
請求項2に記載した椅子。
【請求項4】
背もたれ及び座と、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部と、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体とを有し、
前記サイド支持体は、前記座よりも高い高さの支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有して、前記上水平状部に、前記前向きアーム部が、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態で後傾動自在に連結されており、
かつ、少なくとも前記上水平状部の後端部と前記前向きアーム部の前端部とを一連に覆う軟質材製の保護カバーを備えている椅子であって、
前記サイド支持体の上水平状部に、ロッキング支持用の弾性体を上から支持する受けブラケットが、前記上水平状部の後ろに突出する状態で固定され、
前記受けブラケットに、前記弾性体を下方から支持する押動ブラケットが、前記上水平状部の後ろに位置した支軸によって後傾動可能に連結されており、前記押動ブラケットと受けブラケットとの連結部は前記保護カバーのリア部で覆われている、
子。
【請求項5】
背もたれ及び座と、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部と、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体とを有し、
前記サイド支持体は、前記座よりも高い高さの支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有して、前記上水平状部に、前記前向きアーム部が、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態で後傾動自在に連結されており、
かつ、少なくとも前記上水平状部の後端部と前記前向きアーム部の前端部とを一連に覆う軟質材製の保護カバーを備えている椅子であって、
前記保護カバーの外面は円形に形成され、その内周面に前後長手のリブが形成されている、
子。
【請求項6】
背もたれ及び座と、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部と、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体とを有し、
前記サイド支持体は、前記座よりも高い高さの支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有して、前記上水平状部に、前記前向きアーム部が、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態で後傾動自在に連結されており、
かつ、少なくとも前記上水平状部の後端部と前記前向きアーム部の前端部とを一連に覆う軟質材製の保護カバーを備えている椅子であって、
前記上水平状部の前端に、椅子の可動部材を制御するための円形の摘みが前後長手の軸心回りに回転可能に配置されている一方、
前記保護カバーは、前記摘みと略同径の正面視円形に形成されて前記摘みの装着を許容するために前向きに開口している、
子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれがロッキング機能を有する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の構造は千差万別であって様々な基準によって分類できるが、1つの基準として、背もたれがロッキング機能を有するか否かで分類できる。パイプ椅子と呼ばれる簡単な構造の場合は、ロッキング機能を備えていないことが多い。また、座を高さ調節可能な回転椅子においても、ロッキング機能を備えていないことは多い。
【0003】
そこで、できるだけ簡単な構造で背もたれにロッキング機能を持たせることが提案されている。その例として特許文献1には、座の左右両側方に立設したサイド支柱の上端に、上部支持フレームを介して背もたれを後傾動可能に連結することが開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1において、上部支持フレームは、左右の前向きアーム部とその後端に繋がったリア部とを有していて平面視略U形になっており、リア部に背もたれを固定している一方、サイド部の前端が、サイド支持体の上端部に連結されている。特許文献1では、背もたれの後傾動に抵抗を付与する弾性体は、サイド部とサイド支持体との連結部に内蔵されていると推測される。
【0005】
他方、特許文献2に記載された椅子は、背もたれと座とが一体に連続したタイプにおいて、座の左右両側に、上端を前後長手の上水平状部と成した側面視T形のサイド支持体が配置されており、上水平状部の前部で座を前後動可能に吊支し、上水平状部の後部に、背もたれが上部支持フレームを介して後傾動可能に連結されている。
【0006】
特許文献2において、上部支持フレームは、左右の前向きアーム部とその後端に繋がったリア部とを有して背もたれを後ろから囲う形態になっており、前向きアーム部の前端に、サイド支持体の上水平状部に連結された可動ばね受けが固定されており、可動ばね受けと上水平状部との間にばねが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】意匠登録第1627516号公報
【文献】特開2007-167577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の椅子はシンプルでありながらロッキング機能を有しており、デザイン面と機能の面とで優れていると解されるが、サイド支持体は背もたれを連結する機能しか持たないため、機能的に十分とは言い難いと云える。
【0009】
他方、特許文献2の椅子は、サイド支持体の上水平状部は前後方向に長いため、これを肘当てとして使用することが可能であり、それだけ機能的に優れていると云える。また、特許文献2では、人が椅子に腰掛けたり椅子から立ち上がったりするに際して、上水平状部を手で掴んで身体を支えることが可能であり、この面でも特許文献2はユーザーフレンドリーである。
【0010】
しかし、特許文献2は、背もたれと座とが一体に繋がったタイプを前提にしているため、背座分離タイプの椅子にはそのままでは適用し難い。特に、背もたれのロッキング角度が大きくなると、前向きアーム部とサイド支持体との間に人の指や衣服などが挟まれないように対処する必要が出てくるが、特許文献2では背もたれの後傾角度は僅かであるため、指や衣服などの挟み込みの問題が現れることはなく、従って、背座分離タイプの椅子については新たに改良を加える必要がある。
【0011】
本願発明はこのような現状を契機として成されたものであり、シンプルな外観でありながらロッキング機能を備えた椅子において、安全性や使い易さ、デザイン性などについて改善された椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その構成を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「背もたれと座、及び前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部とを有しており、前記前向きアーム部は、前記座よりも高い位置に配置されて、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体に後傾動可能に連結されている」
という基本構成になっている。
【0013】
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、
「前記サイド支持体は、支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有し、前記前向きアーム部は、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態に配置されており、
前記上水平状部は、その上面から前記支柱部に向けて回り込むように中空状に形成された軟質材製の保護カバーで覆われている
という構成になっている。
【0014】
請求項2の発明は、
「背もたれ及び座と、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部と、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体とを有し、
前記サイド支持体は、前記座よりも高い高さの支柱部とその上端に設けた前後長手の上水平状部とを有して、前記上水平状部に、前記前向きアーム部が、前記上水平状部の後端から後ろ向きに延びる状態で後傾動自在に連結されており、
かつ、少なくとも前記上水平状部の後端部と前記前向きアーム部の前端部とを一連に覆う軟質材製の保護カバーを備えている」
という基本構成において、
「前記サイド支持体の上水平状部は、前記支柱部の手前に突出した前向き露出部と、前記支柱部の後ろに突出した後ろ向き露出部とを有している一方、
前記保護カバーは前記上水平状部の全体を覆う長さであって、前記サイド支持体の支柱部に対応した基部と、前記基部から手前に突出したフロント部と、前記基部から後ろに突出したリア部とを有し、前記基部には、前記支柱部を逃がすための開口が形成されて、前記リア部は、前記前向きアーム部の取り付けを許容するために後ろ向きに開口しており、
かつ、前記フロント部とリア部とのうちいずれか一方又は両方の下部に、前記開口に連通したスリットが形成されている」
という構成になっている。なお、「スリット」は、フロント部又はリア部を開き変形させ得るように割っている部分ということであり、切り込みも含んでいる。
【0015】
請求項3の発明は請求項2の発明の展開例であり、この発明は、
「前記保護カバーのリア部は前記スリットが存在しない筒体になっている一方、
前記保護カバーのフロント部は前向きに開口すると共に前記スリットが形成されており、かつ、前記サイド支持体の上水平状部に、前記保護カバーのフロント部を開き不能に保持するフロントキャップが装着されている」
という構成になっている。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2と同じ基本構成において、
「前記サイド支持体の上水平状部に、ロッキング支持用の弾性体を上から支持する受けブラケットが、前記上水平状部の後ろに突出する状態で固定され、
前記受けブラケットに、前記弾性体を下方から支持する押動ブラケットが、前記上水平状部の後ろに位置した支軸によって後傾動可能に連結されており、前記押動ブラケットと受けブラケットとの連結部は前記保護カバーのリア部で覆われている」
という構成になっている。
【0017】
請求項5の発明は、請求項2と同じ基本構成において、
「前記保護カバーの外面は円形に形成され、その内周面に前後長手のリブが形成されている」
という構成になっている。
【0018】
請求項6の発明は、請求項2と同じ基本構成において
「前記上水平状部の前端に、椅子の可動部材を制御するための円形の摘みが前後長手の軸心回りに回転可能に配置されている一方、
前記保護カバーは、前記摘みと略同径の正面視円形に形成されて前記摘みの装着を許容するために前向きに開口している」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0019】
◎請求項1の効果
請求項1の発明では、サイド支持体の上水平状部は保護カバーで覆われているため、保護カバーで上水平状部の全体を覆うことにより、使用者は、上水平状部を肘当てとして使用して腕を載せたり、上部支持フレームを手で掴んで身体を支えたりすることを問題なく行える。従って、上水平状部を肘当てとして機能させたり、着座・離席時に身体を支える掴み部材として機能させたりすることができて、椅子の機能を向上できる。
【0020】
更に、保護カバーは前向きアーム部の前端部も一連に覆えるが、かくすると、前向きアーム部の連結部に手を当てていても、連結部で手が挟まれるような不具合は発生しない。従って、上水平状部を有効利用できて機能的に優れたロッキング椅子でありながら、安全性を確保可能である。
【0021】
また、上水平状部には、前向きアーム部を連結するための部材を取り付ける必要がある一方、上水平状部は連結用部材の配置などのために様々な加工を施す必要があり、従って、上水平状部が露出したままであると体裁が悪いが、本願発明では、上水平状部やこれに設けた部材は前後方向に長い姿勢で一連に延びる保護カバーで覆うことができるため、美観においても優れている。
【0022】
◎請求項2の効果
請求項2のように、上水平状部に前向き露出部と後ろ向き露出部とを設けると、支柱部は必要最小限度の前後幅としつつ、上水平状部の前後長さを長くできる。従って、支柱部の大型化を防止してデザイン性を保持しつつ、前向きアーム部の連結機能や掴み機能などを確保できる。そして、請求項2では、保護カバーで上水平状部の全体を覆っているため、美観と安全性との両方において優れている。請求項2以下では、保護カバーは前向きアーム部の前端部も一連に覆っているため、前向きアーム部の連結部に手を当てていても、連結部で手が挟まれるような不具合は発生しない。
【0023】
さて、保護カバーはエラストマ等の軟質材を材料にして、金型を使用した射出成型法で製造することになるが、保護カバーに設けたフロント部とリア部とを完全な筒体に形成すると、成型後の型抜きを容易にするめには金型が非常に複雑化するおそれがある。これに対して請求項2の発明では、保護カバーは、フロント部とリア部とのうち少なくとも片方に開口と連通したスリットが形成されていて、保護カバーを大きく広げることができるため、金型を複雑化することなく容易に型抜きできる。
【0024】
◎請求項3の効果
請求項3では、保護カバーのうち、上水平状部と前向きアーム部との連結部を覆うリア部は筒体に形成されているため、ロッキング時に人が連結部の外側に指先を当てても指が挟まれることはない。従って、安全性を大きく向上できる。
【0025】
また、請求項3の発明では、保護カバーのフロント部は、前向きに開口していると共に下部にスリットが形成されているため、金型からの引き剥がしは更に容易になる。従って,製造の手間を大きく省くことができる。そして、保護カバーの前部は手前と下方からフロントキャップで塞がれているため、人が触れても捲れないように保持されている。従って、美観や外れの問題を生じることはない。
【0026】
◎請求項4の効果
前向きアーム部を上水平状部に直接連結することも可能であるが、この場合は、前向きアーム部の加工が複雑になったり、強度面で問題が発生したりすることが懸念される。
【0027】
これに対して請求項4のように、前向きアーム部に押動ブラケットを設けてこれを受けブラケットに連結すると、押動ブラケットは強度に優れた素材で形成できるため、加工の手間を抑制できると共に必要な強度を確保することも容易である。そして、受けブラケットと押動ブラケットとの連結部は保護カバーの筒体で全周が覆われているため、人が手先を挟むことはなくて安全性を更に向上できる。
【0028】
◎請求項5の効果
請求項5のように保護カバーの外面が円形に形成されていると、人が上水平状部を掴んで着座したり立ち上がったりするに際して、手のひらの特定部位に保護カバーが強く当たることはないため、手の平への当たりを良くすることができる。
【0029】
他方、上水平状部に前向きアーム部の連結のための部材を配置するに当たって、その上面や側面は必ずしも円形であるとは限らず、板金製品の場合など、平坦に形成せざるを得ない場合も多い。この点、請求項5のように保護カバーの内面にリブを形成すると、保護カバーの内側に空間が空いていてもその空間をリブで埋めて、保護カバーの変形を抑制できるため、連結用部材の加工の確実性を保持しつつ、保護カバーを円形にして人の手の平への当たり感を向上できる。
【0030】
◎請求項6の効果
上水平状部は、前向きアーム部を介して背もたれを取り付ける機能の他に、着座や立ち上がりに際しての掴み部として機能、或いは肘当ての機能を併有できるが、更に、ガスシリンダより成る脚柱のロックを解除するための操作部材の取り付けや、ロッキング制御用操作部材の取り付けなど、椅子の可動部材を制御するための操作部材の取り付けに使用することもできる。
【0031】
そして、操作部材は左右上水平状部のうち一方の上水平状部に設ければ足りるが、請求項6のように、ガスシリンダの操作部材として回転式の摘みを採用して、摘みと保護カバーとを略同径の円形に形成すると、キャップと保護カバーとがデザイン的に統一されていて、美観において優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は部分正面図、(C)は後ろ上方から見た斜視図、(D)は後ろ下方から見た斜視図である。
図2】(A)は脚装置を省略した平面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
図3】(A)はロッキング前の状態での部分側面図、(B)はロッキング状態での側面図である。
図4】上部支持フレームの連結構造を示す図で、(A)はカバーを分離した斜視図、(B)は上部支持フレームを分離した斜視図である。
図5】上部支持フレームの連結構造を示す図で、(A)は前上方から見た分離斜視図、(B)は後ろ上方から見た分離斜視図である。
図6図2(A)のVI-VI 視断面図である。
図7】別例を示す図である。
図8】(A)(B)は脚柱のロック解除操作部を前上方から見た分離斜視図、(C)は右側のサイド支持体を下方から見た部分斜視図である。
図9】(A)は摘みを備えていない上水平状部を図6のIX-IX 視方向から見た断面図、(B)は摘みを備えた上水平状部を図6のIX-IX 視方向から見た断面図、(C)は保護カバーを後ろから見た斜視図である。
図10】(A)は第2実施形態の縦断側面図、(B)は第3実施形態の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この方向は椅子に普通に着座した人から見た状態を基準にしている。正面視方向は、着座者と相対向した方向である。まず、図1~9に示す第1実施形態(主たる実施形態)を説明する。
【0034】
(1).椅子の概要
まず、図1~3を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は、基本的な要素として、脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。脚装置1は、複数本(5本)の枝アームを有する接地体4の中央部にガスシリンダより成る脚柱5を立設した構造であり、各アームの先端にはキャスタを設けている。従って、本実施形態は回転椅子に適用している。
【0035】
図1(D)に示すように、脚柱5の上端に、底面視(及び平面視)で略四角形のベース6が固定されている。ベース6には座受け部材7が前後スライド自在に装着されており、座受け部材7の上面に座2が取り付けられている。ベース6は例えばアルミダイキャスト品であり、座受け部材7は例えば合成樹脂の成型品である。
【0036】
座受け部材7は、ばねによって後退位置に付勢されており、ロッキングに際して着座者の身体が伸び勝手になると、座2及び座受け部材7は臀部で押されて前進し得る。図3において、座2が前進した状態を表示している。
【0037】
椅子は、座2よりも高い位置において着座者を後ろから囲うように配置された上部支持フレーム8を備えている。従って、上部支持フレーム8は、正面視で背もたれ3(及び着座者)の左右側方に位置した左右の前向きアーム部(サイド部)8aと、正面視で背もたれ3及び着座者の後ろに位置したリア部8bとを有しており、リア部8bに、背もたれ3が後傾動自在に連結されている。
【0038】
当然のことであるが、背もたれ3はリア部8bの手前に配置されている。上部支持フレーム8は、スチール管のような金属パイプで製造されているが、角形鋼管や金属製の丸棒又は角棒で製造することも可能である。
【0039】
実施形態の背もたれ3は、着座者の身体を後ろから抱持するように平面視で後ろ向きに膨れた(前向きに凹んだ)形状に湾曲しており、上部支持フレーム8のリア部8bは、背もたれ3の湾曲に倣うように湾曲している。
【0040】
すなわち、平面視において、上部支持フレーム8のリア部8bと背もたれ3の後面とは相似形になっている。更に、前向きアーム部8aもリア部8bと滑らかに連続するように湾曲しており、結果として、上部支持フレーム8は、全体として円弧に近い形態に湾曲している。そして、図2に明示するように、上部支持フレーム8と背もたれ3との間には、ある程度の間隔Eの隙間が空いている。また、上部支持フレーム8は、全体として水平姿勢になっている。
【0041】
上部支持フレーム8の左右前向きアーム部8aは、座2の左右側方に配置されたサイド支持体9に後傾動可能に連結されている。サイド支持体9は、例えばアルミダイキャスト品であり、上下長手で板状の支柱部9aと、その上端に一体に形成された前後長手で正面視略円形の上水平状部9bとを有している。そして、上水平状部9bの後部に、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aが弾性体の弾性に抗して後傾動するように連結されている。上水平状部9bは、エラストマ系の保護カバー10で覆われている。
【0042】
例えば図6から容易に理解できるように、上水平状部9bは、支柱部9aの上に位置した本体部と、本体部から(支柱部9aから)手前に突出した前向き露出部9b′と、本体部(支柱部9a)の後ろに突出した後ろ向き露出部9b″とを有している。従って、サイド支持体9は側面視でT形の形態を成している。
【0043】
サイド支持体9における支柱部9aの下端には、座2の下方に回り込んだ固定部9cが一体に形成されており、固定部9cの先端部が、ベース6に形成された係合穴11(図1(D)や図2(B)参照)に嵌め込まれており、先端部がボルト(図示せず)でベース6に固定されている。
【0044】
既述のとおり、脚柱5はガスシリンダより成っており、ガスシリンダのロックを解除すると、座2及び背もたれ3の高さを自在に調節できる。そして、例えば図1(A)(C)に明示するように、右側のサイド支持体9の上水平状部9bに、操作部材の一例として、ガスシリンダのロックを解除するための摘み(ノブ)12が、上水平状部9bの軸心回りに回転し得るように装着されている。摘み12は左右いずれの方向にも回転可能であり、いずれの方向に回転させてもガスシリンダのロックが解除される。
【0045】
図2(A)(B)に一点鎖線で示すように、サイド支持体9の上水平状部9bに肘当て13を取り付けることも可能である。図1(B)におおまかに示すように、背もたれ3は、合成樹脂製の背インナーシェル(背板)14aとその前面に張られた背クッション材14bとを備えており、かつ、全体がクロス等の表皮材14cで覆われている。従って、表皮材14cは袋状になっている。なお、背クッション材14bを背インナーシェル14aの後面まで回り込ませてもよい。
【0046】
例えば図1(C)(D)に示すように、背インナーシェル14aのうち下寄り部位でかつ左右箇所の部位に後ろ向きに開口した角形凹所15が形成されており、角形凹所15に配置した連結ユニット16により、背もたれ3が上部支持フレーム8のリア部8bに後傾動自在に連結されている。従って、連結ユニット16は、支軸やばね受けを備えており、背もたれ3は、樹脂製ゴムのような弾性体の弾性に抗して後傾動する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態では、着座者が背もたれ3にもたれ掛かると、まず、上部支持フレーム8がサイド支持体9に対して後傾することによって第1段階のロッキングが行われ、次いで、着座した人が上半身を後ろに反らせると、背もたれ3は上部支持フレーム8に対して後傾動し、第2段階のロッキングが行われる。
【0048】
従って、上部支持フレーム8の回動角度及び背もたれ3の回動角度がさほど大きくなくても、全体としての後傾角度を大きくできる。従って、簡易な構造でありながら、着座者に高い安楽性を付与できる。図3(A)及び図2(A)に示すように、背もたれ3の回動軸心Oは、背もたれ3の後面よりも手前でかつ背もたれ3の下端寄り部位に位置している。
【0049】
(2).上部支持フレームの取り付け構造
次に、サイド支持体9に対する上部支持フレーム8の連結構造を、主として図4~6を参照して説明する。既述のとおり、右側のサイド支持体9には脚柱5(ガスシリンダ)のロック解除するための操作部材を配置している。このため、左右のサイド支持体9は構造が少し相違しているが、上部支持フレーム8の連結構造は左右において共通している。ここでは、摘み12を備えていない左側の部位を取り上げて説明する。
【0050】
図5に明示するように、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに、左右の上向き側板18aを有する押動ブラケット18が固定されている。押動ブラケット18は、上向き側板18aを有するチャンネル状の部分と、その後ろに位置したボス部19とを備えており、ボス部19が、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに溶接によって固定されている。ボス部19の付け根部には、上部支持フレーム8の前端面に当たるフランジ20が一体に形成されている。押動ブラケット18は、スチールの鋳造品を使用している。
【0051】
図5に示すように、サイド支持体9の上水平状部9bのうちのその略後半部に、段落ちした状態の平坦部21が形成されており、平坦部21に、その前部に位置した角形のブロック部22と、ブロック部22の後ろに位置したタップ穴23とが形成されている。
【0052】
そして、平坦部21には、上向きの側板24aを有するチャンネル状の下部受けブラケット24が重ね配置されており、下部受けブラケット24は、タップ穴23にねじ込まれた下ビス25によって平坦部21に固定されている。下部受けブラケット24の前部には、ブロック部22との干渉を回避するための切り欠きが形成されており、下部受けブラケット24の側板24aはブロック部22の左右側方に位置している。
【0053】
下部受けブラケット24の内部には、下向き側板27aを有する上部受けブラケット27が上から嵌まり込んでいる。上部受けブラケット27はブロック部22を上から抱持しており、上下部受けブラケット27,24における側板27a,24aの前部とブロック部22とが、左右長手のフロント軸28によって連結されている。上部受けブラケット27の前端には、下向き鉤部29が折り曲げ形成されている。上下受けブラケット24,27は、鋼板で作られている。
【0054】
更に、押動ブラケット18は上部受けブラケット27の内部に入り込んでおり、上下受けブラケット27,24における側板27a,24aの後部と、押動ブラケット18における側板18aの後部とが、左右長手の支軸30によって連結されている。そして、押動ブラケット18と上部受けブラケット27との間に、ロッキングに対して抵抗を付与する部材として、発泡ウレタン系エラストマのような樹脂製ゴムより成る弾性体31を挟み込んでいる。
【0055】
図6から理解できるように、上下の受けブラケット27,24は上水平状部9bの後ろに突出しており、上下の受けブラケット27,24と押動ブラケット18とが、上水平状部9bの後ろに位置した支軸30によって連結されている。
【0056】
他方、保護カバー10は、上水平状部9bの本体部に対応した基部と、上水平状部9bの後ろ向き露出部9b″に対応したリア部10aと、上水平状部9bの前向き露出部9b′に対応したフロント部10bとを有しており、リア部10aは全周に亙って連続した筒体になっている。そして、ブラケット27,24,18の連結部は保護カバー10のリア部10aで囲われており、リア部10aの前端は、上水平状部9bにおける後ろ向き露出部9b″の後端に至って、リア部10aの後端は前向きアーム部8aの前端部を覆っている。従って、着座者が支軸30の近傍部を触っても、指を挟むようなことはない。
【0057】
上下の受けブラケット27,24は回動不能に固定されている一方、押動ブラケット18は1本の支軸30で連結されており、かつ、押動ブラケット18の左右側板18aに、手前に向けて低くなる傾斜部32を形成している。従って、上部支持フレーム8は、弾性体31を変形させて、支軸30の軸心回りに、傾斜部32と上部受けブラケット27との広がり角度θだけ後傾動し得る。弾性体31は予備圧縮されている。
【0058】
押動ブラケット18は弾性体31によって下向きに付勢されており、下部受けブラケット24によって下方から支持されている。換言すると、押動ブラケット18が弾性体31に押されて前傾することは、下部受けブラケット24によって阻止されており、これにより、弾性体31が圧縮された状態で、背もたれ3は基準姿勢に保持されている。
【0059】
図6に示すように、上部受けブラケット27とブロック部22とフロント軸28は、上方からフロント軸28にねじ込まれたフロントビス33によって固定されており、押動ブラケット18と支軸30とは、上方から支軸30にねじ込まれたリアビス34によって固定されている。
【0060】
図6に明示するように、下部受けブラケット24には、下ビス25の頭が入り込む下向き突部24bを下向きに膨出形成しており、これに対応して、上水平状部9bの平坦部21には、下向き突部24bが入り込む凹部21aを形成している。
【0061】
サイド支持体9の上水平状部9bは、既述の保護カバー10で覆われている。図5(B)に明示するように、保護カバー10の基部とフロント部10bとに、上水平状部9bに被せるための下向きの開口35が形成されている。従って、保護カバー10の基部は、上水平状部9bを囲うように、支柱部9aに向けて回り込んでいる(図9も参照)。本実施形態では、フロント部10bの前端は前板10cで塞がれている。
【0062】
保護カバー10の内部には、前後長手の多数のリブ36(図5(B)参照)が周方向に並んだ状態に形成されている。この場合、保護カバー10のリア部10aの箇所にいて下部に設けたリブ36は、下部受けブラケット24の後ろ向き張り出し部の下面に近接又は当接するように高さが高くなっている(図6及び図7(E)参照)。また、上に位置したリブ36は,上部受けブラケット27の上面に当接又は近接するように設定されている。
【0063】
(3).上部支持フレームの取り付け構造の変形例
図7では、上水平状部9bの形態や上部支持フレーム8の連結構造等の変形例を示している。この変形例では、まず、上水平状部9bは角形になっており、ブロック部22は平面視でU形になっている。また、この実施形態でも上下の受けブラケット27,24を有しているが、図5のフロント軸28は備えていない。上部受けブラケット27には、弾性体31をずれ不能に保持する上向き膨出部27bを形成している。
【0064】
また、この変形例では、保護カバー10のフロント部10bは前向きに開口しており、
開口35の手前の部位は下向きに開口したフロントスリット10dによって分断されている。そして、保護カバー10の前面は樹脂製のフロントキャップ70で塞がれている。フロントキャップ70には、後ろ向きに突出した下部リブ70aと、それよりも左右幅が大きい上部リブ70bとが一体に形成されている。
【0065】
他方、保護カバー10におけるフロント部10bの前部には、上水平状部9bにおけるフロント部9b′の前面に重なる壁10eを形成しており、保護カバー10の壁10eとサイド支持体9の上水平状部9bとに、フロントキャップ70の上部リブ70bが嵌入する凹所10f,71を形成している。フロントキャップ70における上部リブ70bの後端には、係合爪70cを形成しており、係合爪70cは、上水平状部9bの内部に形成した係合部72に係合する。これにより、フロントキャップ70は抜け不能に保持される。
【0066】
フロントキャップ70の下リブ70aは、その上半部は保護カバー10のフロントスリット10d及び上水平状部9bの切り開き溝73に嵌入する。そして、フロントキャップ70における下リブ70aの下半部は左右に広がった傘部になっており、保護カバー10におけるフロント部10bのうちフロントスリット10dの両側の部位は、下リブ70aの傘部が下方から覆われている。従って、保護カバー10の前部に下方から人の指先が当たっても、保護カバー10が捲れる(開き変形する)ことはない。
【0067】
保護カバー10は射出成型法によって製造されるが、前向き開口の形態でかつフロントスリット10dを有することにより、容易に型抜きできる状態で製造できる一方、フロントスリット10dを挟んだ両側がフロントキャップ70の下リブ70aで覆われているため、人の指先が当たることによる捲れを防止できる。なお、保護カバー10は、金型を使用して成型してから、弾性変形させて型抜きするが、フロントスリット10dの存在により、容易に型抜きできる状態に変形させることができる。
【0068】
(3).上水平状部に関連した部位のまとめ
さて、椅子が肘当て機能を有していると、ユーザーフレンドリーである。また、椅子が肘当てを有している場合、椅子に腰掛けたり立ち上がったりするに際して、肘当てに手を掛けて(肘当てを手で掴んで)着座したり離席したりすることがあるが、肘当てと云えなくとも、着座・離席に際して手を当てて体重を支えることができる部材があると便利である。
【0069】
そして、サイド支持体9の上水平状部9bは、基本的な機能として上部支持フレーム8の連結機能を有しており、上部支持フレーム8を後傾可能に連結するための上水平状部9bを利用して、肘当てとして機能させたり、使用者の着座・立ち上がりに際しての掴み部材として機能させたりすることができるため、構造が複雑化することはない。従って、コストを抑制できると共に、シンプルさを維持して美観においても優れている。
【0070】
また、上水平状部9bは前後方向に長いため、上部支持フレーム8を後傾動可能に連結するに当たって、部材の配置スペースを確保することができる。従って、上部支持フレーム8を必要な強度で上水平状部9bに連結できる。そして、上水平状部9bの全体が保護カバー10で覆われているため、上部受けブラケット27等の配置に制約がなくなって、特に好適である。
【0071】
着座した人が背もたれ3にもたれ掛かると、押動ブラケット18には、支軸30よりも手前の部分を上向き動させようとする大きなモーメントが作用する。従って、上部受けブラケット27は上向きの大きな力を受ける。
【0072】
然るに、上部受けブラケット27は、その前部は上水平状部9bのブロック部22に固定されている一方、後部は、下部受けブラケット24に支軸30で連結されているため、上向きの荷重に対して極めて高い抵抗を発揮する。従って、上水平状部9bの後半部に連結部を組み込んだコンパクトな構造でありながら、背もたれ3は極めて高い支持強度を有している。
【0073】
また、上部受けブラケット27が押動ブラケット18によって上向きに押されると、下部受けブラケット24も上向きに引かれるが、下部受けブラケット24は、弾性体31の下方に位置した下ビス25によって上水平状部9bに固定されているため、上向き移動が阻止される。結果として、上部受けブラケット27の上向き動も阻止される。この面でも、本実施形態では、上部支持フレーム8の連結部は高い強度を有している。
【0074】
そして、上水平状部9bやブラケット27,24,18は軟質材製の保護カバー10で覆われているため、人が掴んだり腕を載せたりするにおいて、柔らかい当たりで違和感なく使用できる。また、連結機能は隠れていて見えないため、美観においても優れている。
【0075】
更に、受けブラケット27,24の後部は上水平状部9bの後ろに部分的に突出しており、この後ろ向き突出部に押動ブラケット18が支軸30で連結されていることにより、上部支持フレーム8及び背もたれ3の後傾動が許容されているが、上水平状部9bの後ろに突出した部分は保護カバー10のリア部10aで覆われているため、人が連結部の箇所に手を当ててロッキングしても、手(指の手の平)を挟むことはない。従って、安全である。
【0076】
また、図6を参照して説明したように、リア部10aの箇所ではリブ36は下部受けブラケット24の下面に近接又は当接しているため、人が指先でリア部10aの下面を強く押しても、リア部10aが上水平状部9bから捲れたり、前向きアーム部8aから外れたりすることはない。従って、保護機能を確保して高い品質を維持できる。
【0077】
(4).座の昇降操作装置
次に、図8~9を参照して、座2の昇降操作装置(ガスシリンダのロック解除操作部)を説明する。図8(A)に示すように、右側のサイド支持体9の前面には、溝キャップ38で塞がれた長溝39が全長に亙って形成されており、長溝39の内部に、操作ケーブル40が配置されている。
【0078】
操作ケーブル40はよく知られたものであり、チューブ41とその内部に摺動自在に挿通されたワイヤー42とを備えており、ワイヤー42の両端部をチューブ41の外側に露出させて、露出部の先端にボール43を固定している。また、チューブ41の両端部には、環状溝を有する係止体44が固定されている一方、図8(B)に示すように、長溝39の上端部に括れリブ44aが形成されており、係止体44は括れリブ44aに嵌め込まれている。
【0079】
既述のとおり、摘み12を回転させるとワイヤー42の一端部が引っ張られて、脚柱5のロックが解除される。なお、溝キャップ38は、長溝39に嵌入した内向きの突条38aを備えており、突条38aが、長溝39に適宜間隔で配置された複数のホルダー45にスナップ係合している。
【0080】
摘み12は合成樹脂製であり、サイド支持体9における上水平状部9b(及び保護カバー10)の手前に露出した操作部48と、サイド支持体9における上水平状部9bの内部に入り込んだボス体49とを有しており、操作部48には、ゴム質等の軟質材から成るキャップ50が相対回転不能に嵌着している。
【0081】
ボス体49は操作部48よりも小径になっており、ボス体49のうち摘み12に近い部位には、摩擦が小さくて耐磨耗性に優れた樹脂より成る軸受ブッシュ52が嵌まっている。従って、ボス体49は、軸受ブッシュ52を介してサイド支持体9の上水平状部9bに回転自在に保持されている。
【0082】
ボス体49のうち軸受ブッシュ52の後ろの部位に環状溝53が形成されており、この環状溝53に、上部受けブラケット27の前端に形成した下向き鉤部29(図6及び図7(E)参照)が上から嵌入している。従って、摘み12は、上部受けブラケット27の下向き鉤部29によって、前後移動不能で回転可能に保持されている。
【0083】
摘み12のボス体49には、ボール保持溝54とこれに連通したワイヤー挿通溝(図示せず)とが後ろ向きに開口するように形成されており、かつ、ワイヤー挿通溝と連通したワイヤー保持溝55が外周面に開口するように形成されている。そして、摘み12を左右いずれかの方向に回転させると、ボール43が上向きに移動することによってワイヤー42が引かれて(巻き上げられて)、脚柱5のロックが解除される。
【0084】
図8(A)に示すように、溝キャップ38の上端には前向きに突出したヘッド部38bが形成されており、ヘッド部38bに前向き突出部38cが形成されている。一方、サイド支持体9の上水平状部9bには、溝キャップ38のヘッド部38bが嵌入する切り開き溝58形成されて、保護カバー10のフロント部10bには、溝キャップ38の前向き突出部38cが嵌入する割溝59が形成されている。
【0085】
摘み12が配置されている右側の上水平上部9bの前端には小径部9dが形成されており、これに伴って、保護カバー10の前端部にも小径部10fが形成されている。そして、保護カバー10の小径部10fにリング68を嵌着している。従って、保護カバー10の前端部は、リング68によって開き不能に保持されている。
【0086】
図9(B)に示すように、摘み12を設けた右側の上水平状部9bでは、保護カバー10の長手内側縁10gは内向きに突出している一方、サイド支持体9のうち上水平状部9bと支柱部9aとの連接部に、保護カバー10の長手内側縁10gが嵌入する係合溝9dを形成している。摘み12を設けている箇所では、保護カバー10の前端は割溝59で分断されているため、長手内側縁10gを係合溝9dに嵌入させると、捲れを防止できて好適である。
【0087】
(6).上部支持フレーム及び摘みの取り付け手順
上部支持フレーム8の連結は、例えば次の手順で行われる。すなわち、まず、前工程として、押動ブラケット18は上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに予め溶接されている一方、サイド支持体9はベース6に固定されている。また、保護カバー10は予め上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに嵌め込まれている。
【0088】
そして、上水平状部9bに下部受けブラケット24をビス25で固定してから、上下の受けブラケット27,24と押動ブラケット18とに支軸30を挿通し、押動ブラケット18と上部受けブラケット27との間に弾性体31を嵌め入れる。次いで、図7の例では、上部受けブラケット27をフロントビス33でブロック部32に固定する。フロントビス33をブロック部32にねじ込んでいくと、弾性体31が徐々に加圧されて予備圧縮が成される。
【0089】
図5の例では、下部受けブラケット24と押動ブラケット18との間に弾性体31を挟み込んでから、上部受けブラケット27を人手又は治具によって下方に押すことによって弾性体31を予備圧縮し、その状態でフロント軸28を挿通して上下受けブラケット27,24とブロック部22とを連結する。いずれにしても、上水平状部9bへの上部支持フレーム8の連結が終えてから、保護カバー10を手前に移動させて所定の状態に嵌め込む。
【0090】
摘み12の取付けは、次の手順で行われる。まず、操作ケーブル40はベース6の係合穴11から外側に引き出されており、その状態でベース6へのサイド支持体9の取り付けが行われる。そして、ワイヤー42の上端に摘み12を係止してから、サイド支持体9の長溝39に操作ケーブル40を嵌め込むと共に、摘み12を上水平状部9bに嵌め込み、次いで、溝キャップ38を長溝39及び摘み12に装着し、それから保護カバー10を装着してリング68を嵌め込み、最後に、摘み12にキャップ50を装着する。
【0091】
摘み12を設けている箇所では、摘み12を上水平状部9bに挿入してから、上下受けブラケット27,24を固定し、それから、上下受けブラケット27に設けた下向き鉤部29を摘み12の環状溝53に嵌め入れることになる。
【0092】
(5).他の実施形態
図10では他の実施形態を示している。このうち(A)に示す第2実施形態では、押動ブラケット18は例えば真鍮を材料にしたダイキャスト品であり、後ろ向き部と下向き部18bを有するL形に形成されており、コーナー部が支軸60によって上水平状部9bに連結されている。従って、サイド支持体9には、押動ブラケット18が部分的に入り込む空洞部61を後ろ向きに開口するように形成している。
【0093】
弾性体として弾性体31を使用しており、弾性体31は、押動ブラケット18の下向き部18bとサイド支持体9における空洞部61の底面との間に配置されている。空洞部61の底面には、弾性体31のずれを防止する突起62を設けている。押動ブラケット18のうちサイド支持体9の空洞部61に入り込んだ部分は断面角形になっており、ボス部19は断面円形になっている。
【0094】
この実施形態でも、押動ブラケット18は上部支持フレーム8とは別部材になっており、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aはビス34によって押動ブラケット18のボス部19に固定されている。この実施形態では、保護カバー10は、押動ブラケット18の下向き部を後ろから覆う下向き部10hを備えている。
【0095】
図10(B)に示す第3実施形態では、押動ブラケット18は水平状の姿勢を成しており、その前端部が支軸60によってサイド支持体9の上水平状部9bに連結されている。従って、弾性体31は、押動ブラケット18の回動支点である支軸60よりも後ろに配置されている。そこで、サイド支持体9に後ろ向き張り出し部63を形成して、空洞部61を後ろ向き張り出し部63まで広げることにより、弾性体31の配置スペースを確保している。
【0096】
この実施形態では、弾性体31に、その上下両面に開口した中心穴64を形成すると共に、上面には上板65を重ねており、上板65に設けたねじ筒65aを中心穴64に上から挿通している。
【0097】
そして、後ろ向き張り出し部63に、ねじ筒65aにねじ込み可能なビス66が下方から挿通される引き込み穴67を形成している。押動ブラケット18の組み付けに際しては、ビス66をねじ筒65aにねじ込んで弾性体31を圧縮させることにより、押動ブラケット18の連結を容易に行える。押動ブラケット18を連結したら、ビス66は抜き外して弾性体31を弾性力によって復元させる。この実施形態でも、保護カバー10は下向き部10hを設けている。
【0098】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、保護カバーは円形には限らないのであり、上面を平坦状に形成したり、正面視で緩い山形に形成したりすることも可能である。保護カバーの変形を容易化するために蛇腹状部を形成することも可能である。
【0099】
また、背もたれは上部支持フレームに固定されていてもよい。更に、本願発明の適用対象である椅子は脚柱をガスシリンダで構成した回転椅子には限らないのであり、4本足方式のような非回転椅子にも適用できる。或いは、固定式の椅子にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0101】
3 背もたれ
8 上部支持フレーム
8a 前向きアーム部
8b リア部
9 サイド支持体
9a 支柱部
9b 上水平状部
9b′ 上水平状部の前向き露出部
9b″ 上水平状部の後ろ向き露出部
10 保護カバー
10a リア部
10b フロント部
18 押動ブラケット
24,27 受けブラケット
28 フロント軸
30 支軸
31 樹脂製ゴムより成る弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10