(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/14 20060101AFI20231129BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231129BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20231129BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20231129BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C09D175/14
C09D5/00 D
C08G18/00 C
C08G18/67
C08G18/08 019
(21)【出願番号】P 2019179048
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 直幹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】西村 文男
(72)【発明者】
【氏名】真野 寛之
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101475679(CN,A)
【文献】国際公開第2016/047414(WO,A1)
【文献】国際公開第1997/020874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/00
C08G 18/00
C08G 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート、およびポリオールを反応させて得られるポリウレタン樹脂が水に分散しているポリウレタン水分散体を含有するプライマー組成物であって、
上記ポリオールが1以上の酸性基を有するポリオール、およびアリル基を有するポリオールを含有し、
上記ポリウレタン樹脂のアリル基に由来する二重結合量が、
0.30mol/kg以上1.00mol/kg以下であることを特徴とするプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン水分散体は、従来から、接着剤、コ-ティング剤、塗料、改質剤、バインダ-等として有用な材料であり、広範な用途で使用されている。そのため、ポリウレタン水分散体には、その使用される用途・目的等に応じて、種々の特性を備えることを要求される。
【0003】
例えば、特許文献1には、PETフィルムに耐UV性や特に、高温高湿における密着性を付与し、且つ、従来手法のようなエポキシ樹脂に起因する黄変劣化を防止できる硬化性表面コーティング組成物として、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、又は、フッ素系樹脂等の水酸基を含有する樹脂、活性メチレン系化合物、ケトオキシム、ラクタム、又は、アミン類等のブロック剤でブロックされたブロックイソシアネート、及び、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする硬化性表面コーティング組成物が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなコーティング剤に使用されるプライマー組成物は、密着性および耐候性が要求されるが、従来のプライマー組成物では、密着性および耐候性が十分では無かった。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、密着性および耐候性に優れたプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の[1]および[2]を提供するものである。
[1]ポリイソシアネート、およびポリオールを反応させて得られるポリウレタン樹脂が水に分散しているポリウレタン水分散体を含有するプライマー組成物であって、上記ポリオールが1以上の酸性基を有するポリオール、およびアリル基を有するポリオールを含有することを特徴とするプライマー組成物
[2]上記ポリウレタン樹脂のアリル基に由来する二重結合量が、0.10mol/kg以上1.00mol/kg以下であることを特徴とする[1]に記載のプライマー組成物
【発明の効果】
【0008】
本発明は、密着性および耐候性に優れたプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプライマー組成物は、ポリイソシアネート、およびポリオールを反応させて得られるポリウレタン樹脂を水に分散してなるポリウレタン水分散体を含有するプライマー組成物であって、上記ポリオールが1以上の酸性基を有するポリオール、およびアリル基を有するポリオールを含有するものである。
【0010】
上記ポリイソシアネートは特に限定されること無く当該技術分野で一般的に使用されるポリイソシアネートを使用することができる。具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0011】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0012】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0013】
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0014】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0015】
また、これらのポリイソシアネートの2量体、3量体やビュレット化イソシアネート等の変性体を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。
【0016】
上記ポリオールのうち、1以上の酸性基を有さないポリオールおよびアリル基を有さないポリオール以外のポリオールとしては、特に限定されないが具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアセタールポリオ―ル、ポリオレフィンポリオール、フッ素系ポリオール、植物油系ポリオール等を使用することができる。
【0017】
上記ポリエステルポリオールは、特に限定されないが一般的に多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応することにより得ることが出来る。
【0018】
上記多価カルボン酸としては特に限定されないが具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、シュベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ダイマー酸、ハロゲン化無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、2,6‐ナフタレンジカルボン酸、2,7‐ナフタレンジカルボン酸、2,3‐ナフタレンジカルボン酸、2,3‐ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’‐ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等の二塩基酸、もしくはこれらに対応する酸無水物等、ピロメリット酸等の多塩基酸が挙げられる。これらの多価カルボン酸を単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。α,β‐不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。
【0019】
上記多価カルボン酸において、プライマー組成物の耐候性の点から、α,β‐不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸以外の多価カルボン酸が好ましい。
【0020】
上記多価アルコールとしては特に限定されないが具体的には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0021】
上記ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシエチルテレフタレート、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、それらエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのオキシアルキレン誘導体などが挙げられる。
【0022】
上記ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素系ポリオール、植物油系ポリオール等の具体例としては、1,6-ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールのカーボネート、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,9-ノナンジオール及び2-メチル-1,8-オクタンジオールのカーボネート、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,6-ヘキサンジオールのカーボネート、1,4-シクロヘキサンジメタノールのカーボネート、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオ-ル、ポリチオエーテルポリオ-ル、ポリアセタールポリオ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリブタジエンポリオ-ル、ヒマシ油ポリオ-ル、大豆油ポリオール、フッ素ポリオール、シリコンポリオール等のポリオ-ル化合物やその変性体が挙げられる。
【0023】
上記1以上の酸性基を有するポリオールの酸性基としては、カルボキシル基及びその塩、スルホン酸基及びその塩等が挙げられる。
【0024】
上記カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6-ジオキシ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体並びにそれらの塩に加え、これらを使用して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。更に、アラニン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン等のアミノ酸類、コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸類も挙げられる。
【0025】
上記スルホン酸基およびその塩を有するポリオールとしては、例えば、2-オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5-スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3-フェニレンジアミン-4,6-ジスルホン酸、2,4-ジアミノトルエン-5-スルホン酸等のスルホン酸含有化合物及びこれらの誘導体、並びにこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリアミドポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0026】
これらのカルボキシル基又はスルホン酸基は、中和して塩にすることにより、最終的に得られるポリウレタンを水分散性にすることができる。この場合の中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基等が挙げられる。中和は、ウレタン化反前、反応中、又は反応後の何れにおいても行うことができる。
【0027】
本発明において、上記1以上の酸性基を有するポリオールは、上記カルボキシル基を有するポリオールが好ましく、ポリウレタンの構造設計の観点から、2,2-ジメチロールプロピオン酸が特に好ましい。
【0028】
上記アリル基を有するポリオールとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
本発明において、上記ポリオールに上記アリル基を有するポリオール以外の数平均分子量が400以下のポリオールを含有してもよい。
【0030】
上記数平均分子量が400以下のポリオールとしては、前述のポリオールの内、以下に記載のポリオールである。すなわち、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、又はトリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0031】
本発明のポリウレタン水分散体の製造方法は、特に限定されるものではないが、一般的には、1以上の酸性基を有するポリオールおよびアリル基を有するポリオールを含むポリオールに含まれる水酸基ならびに必要に応じて鎖伸長反応に使用するアミノ基の合計より、化学量論的に過剰のポリイソシアネートのイソシアネート基と水酸基およびアミノ基の合計量との当量比1:0.85~1.1を溶剤なしに、または活性水素基を有しない有機溶媒中で反応させてウレタンプレポリマーを合成した後、上記1以上の酸性基を有するポリオールの酸性基の中和を行ってから、水中に分散乳化を行ったのち、水または鎖伸長剤による高分子化反応を行うことにより、ポリウレタン水分散体が得られる。その後、必要に応じて使用した溶剤を除去することにより、ポリウレタン水分散体を得ることができる。
【0032】
上記活性水素基を有しない有機溶媒としては特に制限されないが具体的には、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。反応で使用したこれら親水性有機溶剤は、最終的に除去するのが好ましい。
【0033】
上記鎖伸長剤としては、特に限定されないが具体的には、例えば、ヒドラジド類、ポリアミン類があげられる。前記ヒドラジド類としては、特に限定されないが、例えば、ヒドラジン、アジピン酸ヒドラジドなどがあげられる。前記ポリアミン類としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ピペラジン、ジフェニルメタンジアミン、エチルトリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどがあげられる。これらは一種または二種以上を使用することができる。
【0034】
本発明のポリウレタン水分散体のポリウレタン樹脂のアリル基に由来する二重結合量は、0.10mol/kg以上が好ましく、0.30mol/kg以上がより好ましい。また、1.00mol/kg以下が好ましく、0.80mol/kg以下がより好ましい。二重結合量が上記範囲内である場合、密着性が良好なものとなる。
【0035】
本発明のプライマー組成物にはさらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
【0036】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されないが具体的には、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系を挙げることができる。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。より具体的には「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS-2626」及び「SANOL LS-765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」及び「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0037】
上記酸化防止剤としては特に限定されないが具体的には、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA-80」(住友化学社製)及び2,6-ジブチル-4-メチルフェノール(BHT)等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」を表す。また、下記の実施例1は、比較例である。
【0039】
[ポリエステルポリオール(1)の合成]
温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスをバブリングしながら、イソフタル酸28.27質量部、テレフタル酸14.14質量部、アジピン酸18.65質量部、ネオペンチルグリコール31.02質量部、エチレングリコール7.92質量部と、ジオクチルスズ0.1質量部とを仕込み、塔頂温度が50~60℃になるように反応温度160~170℃に設定し、酸価が2.2mgKOH/g以下になるまで反応を行い、水酸基価56.1mgKOH/g、重量平均分子量2000のポリエステルポリオール(1)を得た
【0040】
[ポリエステルポリオール(2)の合成]
温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスをバブリングしながら、無水マレイン酸16.76質量部と、ビスフェノールA-2EO付加体83.14質量部と、ジオクチルスズ0.1質量部とを仕込み、塔頂温度が50~60℃になるように反応温度160~170℃に設定し、酸価が2.6mgKOH/g以下になるまで反応を行い、水酸基価98.9mgKOH/g、重量平均分子量1100のポリエステルポリオール(1)を得た。
【0041】
[ポリエステルポリオール(3)の合成]
温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスをバブリングしながら、コハク酸17.05質量部と、ビスフェノールA-2EO付加体82.85質量部と、ジオクチルスズ0.1質量部とを仕込み、塔頂温度が50~60℃になるように反応温度160~170℃に設定し、酸価が2.6mgKOH/g以下になるまで反応を行い、水酸基価98.5mgKOH/g、重量平均分子量1100のポリエステルポリオール(3)を得た。
ポリオールの酸価及び平均水酸基価は以下の方法で測定した。
【0042】
[ポリエステルポリオール(4)]
温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器中で窒素ガスをバブリングしながら、無水マレイン酸105.2質量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール194.8質量部と、ジオクチルスズ0.1質量部とを仕込み、塔頂温度が50~60℃になるように反応温度160~170℃に設定し、酸価が2.6mgKOH/g以下になるまで反応を行い、水酸基価113mgKOH/g、重量平均分子量993のポリエステルポリオール(4)を得た。
【0043】
(ポリオールの酸価の測定方法)
JIS K 1557に準じて測定した。
【0044】
(ポリオールの平均水酸基価の測定方法)
JIS K 1557に準じて測定した。
【0045】
*1ポリエーテルポリオール:ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物、製品名:ニューポールBPE-20NK、三洋化成工業株式会社製、重量平均分子量:400、水酸基価:345mgKOH/g
【0046】
<ポリウレタン水分散体の合成>
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(1)(重量平均分子量:2000、水酸基価:56.1mgKOH/g)を64.69質量部、トリメチロールプロパンを0.50質量部、グリセリンモノアリルエーテル(製品名:ネオアリルE-10、株式会社大阪ソーダ製)を2.00質量部、ジメチロールプロピオン酸を8.4質量部、メチルエチルケトン100質量部を加え十分攪拌溶解し、次いでキシレンジイソシアネート24.41質量部を加えNCO含量が1.0%になるまで75℃で反応させた。その後、このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、中和剤として25%アンモニア水を5.9質量部、水300質量部を加えてホモミキサーを用いて乳化した後、引き続きホモミキサーによる攪拌を継続し水による鎖伸長反応を行った。この樹脂溶液を加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、固形分25%のポリウレタン水分散体を得た。
不揮発分はJIS K 6828に準じて測定した。
【0047】
[実施例2]~[実施例8]、[比較例1]~[比較例3]は、各原料の種類と仕込み量を下記表1に示すとおりに変更した以外は、[実施例1]と同様に製造を行い各ポリウレタン水分散体を得た。
下記の評価方法および評価基準により評価した。評価結果を表1に示す。
【表1】
【0048】
[密着性の評価]
<プライマー層作成> 基材(未処理PETフィルム(ルミラーT60#100)をイソプロピルアルコールで脱脂した。次に、上記実施例及び比較例で得られたポリウレタン水分散体をバーコーターで、乾燥膜厚10μmになるように塗布し、80℃で10分間乾燥したのち、120℃で10分間乾燥し一晩放置することにより基材上にプライマー層を作成した。
【0049】
<コーティング層作成>
(UV照射あり)
上記プライマー層に800mJ/cm2のUVを照射した後、UV硬化樹脂(製品名:ニューフロンティアR-1220、第一工業製薬株式会社製)を固形分70質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、理論膜厚が8μmとなるようにバーコーターで塗布し、600mJ/cm2のUVを照射しコーティング層を作成した。
(UV照射なし)
上記のプライマー層に対するUV照射を行わない以外は同様に操作しコーティング層を作成した。
【0050】
<密着性評価>
上記コーティング層に対し100マス碁盤目剥離試験(JIS-K5400)を実施し残
存マスの個数にて評価を行った。
【0051】
<耐候性評価>
カーボンアーク式サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、「S80」)を放電電圧50V、放電電流60Aに設定し、槽内温度20℃、相対湿度50%の条件下で80時間照射処理を行い、外観を目視で確認した。
〇:異常なし(透明)
×:着色(黄変)
【0052】
本発明の技術的範囲に属する実施例1ないし8のポリウレタン水分散体をプライマー層として用いた場合、UV照射の有無にかかわらず、コーティング層および基材との間で優れた密着性を有し、さらに耐候性にも優れていることがわかる。
【0053】
一方、アリル基を有さない比較例1のポリウレタン水分散体を使用した場合、UV照射の有無にかかわらず、密着性が不十分であることが分かる。また、ビニレン基を有するポリエステルポリオール(2)および(4)を含む比較例2および3のポリウレタン水分散体を使用した場合は、UV照射後の密着性が不十分であり、80時間後の耐候性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のポリウレタン水分散体はプライマー組成物として用いることができ、特にUV硬化型樹脂を用いたコーティング剤のプライマー組成物として有用である。