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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】フロスティミスト測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/14 20060101AFI20231129BHJP
   G01N 21/27 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
G01N33/14
G01N21/27 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019206462
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021081211
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】飯牟礼 隆
(72)【発明者】
【氏名】秋本 健太郎
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6328383(JP,B2)
【文献】特開2016-085572(JP,A)
【文献】特開2018-061467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性飲料の液体と泡との境界部分に生成されるフロスティミストを測定するフロスティミスト測定方法であって、
飲料容器に前記発泡性飲料を注出する工程と、
前記飲料容器に注出された前記発泡性飲料の色パラメータを取得する工程と、
前記発泡性飲料の色パラメータのうち少なくとも前記フロスティミストの色パラメータを用いて前記フロスティミストの量を算出する工程と、
を備え
前記フロスティミストの量を算出する工程では、前記液体のL*値と前記フロスティミストのL*値との差分であるΔL*値から前記フロスティミストの量を算出する、
フロスティミスト測定方法。
【請求項2】
前記色パラメータは、前記発泡性飲料の色彩のL*値、a*値及びb*値の少なくともいずれかである、
請求項1に記載のフロスティミスト測定方法。
【請求項3】
前記色パラメータは、前記発泡性飲料の色彩のL*値である、
請求項1又は2に記載のフロスティミスト測定方法。
【請求項4】
前記フロスティミストの量を算出する工程では、前記フロスティミストの色パラメータを、基準とする色パラメータと比較して前記フロスティミストの量を算出する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のフロスティミスト測定方法。
【請求項5】
前記色パラメータを取得する工程では、複数の前記発泡性飲料の色パラメータを取得し、
前記フロスティミストの量を算出する工程では、複数の前記発泡性飲料の色パラメータのそれぞれを用いて、前記発泡性飲料ごとに前記フロスティミストの量を算出する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のフロスティミスト測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡性飲料の液体と泡との間に生成されるフロスティミストを測定するフロスティミスト測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性飲料の泡の測定方法については従来から種々の方法が知られている。特許第6328383号には、容器に注出された穀類分解物含有発泡性飲料の測定方法が記載されている。この測定方法では、透明ガラス製グラスに予めビールを注ぎ、グラスの底面の下方に白熱電球を配置して、白熱電球からグラスの底面に光を照射する。
【0003】
そして、ビールの液面より鉛直上方100mmの高さからビール液面に発泡体を添加し、ビールと発泡体との境界における微細泡含有層を確認する。微細泡含有層の確認は、視力が1.0である健常なパネラーによって目視で行われる。パネラーは、前述したビールへの光の照射に伴う光散乱が確認された範囲を微細泡含有層と認定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6328383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した微細泡含有層のような液体と泡との間に生成される微小な粒状気泡は、フロスティミストと称される。フロスティミストは飲料容器に注出された発泡性飲料が飲用されるときに刺激され、フロスティミストが刺激されるときにきめ細かい泡が再生されることが知られている。フロスティミストが多く生成される場合には、きめ細かい泡が多く再生されると考えられるため、フロスティミストの量を定量化することは重要である。
【0006】
しかしながら、前述した測定方法では、フロスティミストを目視によって認定している。フロスティミストを認定するパネラーは、健常で且つ視力が良いため、フロスティミストの発生を目視によって認定することは可能である。しかしながら、フロスティミストは、微細な泡によって形成され、時間の経過と共に量が変動しやすいため、目視でフロスティミストの量を正確に測定することは困難である。また、目視でフロスティミストを測定する場合、測定したパネラーによって結果にばらつきが生じやすいので、フロスティミストの測定の精度において改善の余地がある。従って、フロスティミストの量を効率よく且つ高精度に行うことが求められる。
【0007】
本開示は、フロスティミストの量を効率よく且つ高精度に測定することができるフロスティミスト測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るフロスティミスト測定方法は、発泡性飲料の液体と泡との境界部分に生成されるフロスティミストを測定するフロスティミスト測定方法であって、飲料容器に発泡性飲料を注出する工程と、飲料容器に注出された発泡性飲料の色パラメータを取得する工程と、発泡性飲料の色パラメータのうち少なくともフロスティミストの色パラメータを用いてフロスティミストの量を算出する工程と、を備える。
【0009】
このフロスティミスト測定方法では、飲料容器に注出された発泡性飲料の色パラメータを取得する。ところで、発泡性飲料において、液体、フロスティミスト及び泡は、この順で並んでおり、発泡性飲料の液体の色彩、フロスティミストの色彩、及び泡の色彩は互いに異なっている。例えば、泡の色彩が最も明るく、液体の色彩が次に明るく、フロスティミストの色彩が最も暗い。この測定方法では、液体の色パラメータ、泡の色パラメータ、及びフロスティミストの色パラメータのそれぞれを取得する。そして、少なくともフロスティミストの色パラメータを用いてフロスティミストの量を指標値として算出する。従って、フロスティミストの色パラメータを用いることにより、フロスティミストの量を値として算出することができる。よって、目視でフロスティミストを測定しなくてもフロスティミストの量を定量化することができるので、フロスティミストの量を容易に測定することができる。更に、色パラメータを用いてフロスティミストの量を算出することにより、量の測定結果にばらつきが生じることを回避できるので、フロスティミストの量を高精度に測定することができる。
【0010】
また、色パラメータは、発泡性飲料の色彩のL*値、a*値及びb*値の少なくともいずれかであってもよい。この場合、液体の色彩、泡の色彩、及びフロスティミストの色彩のそれぞれを明度(L*値)、赤色度(a*値)及び黄色度(b*値)の少なくともいずれかで数値化することができる。従って、色彩色差計によって液体、泡及びフロスティミストのそれぞれのL*値、a*値及びb*値の少なくともいずれかを取得することによって、フロスティミストの量を自動的に算出することができる。よって、フロスティミストの量を効率よく且つ高精度に測定することができる。
【0011】
また、色パラメータは、発泡性飲料の色彩のL*値であってもよい。この場合、フロスティミストの色彩の特徴が顕著に表れる発泡性飲料の明るさの指標を用いて色パラメータの取得を行うことができるので、フロスティミストをより高精度に測定することができる。
【0012】
また、フロスティミストの量を算出する工程では、フロスティミストの色パラメータを、基準とする色パラメータと比較してフロスティミストの量を算出してもよい。この場合、基準とする色パラメータとフロスティミストの色パラメータとの比較を行ってフロスティミストの量を算出するので、より正確にフロスティミストの量を算出することができる。
【0013】
また、色パラメータを取得する工程では、複数の発泡性飲料の色パラメータを取得し、フロスティミストの量を算出する工程では、複数の発泡性飲料の色パラメータのそれぞれを用いて、発泡性飲料ごとにフロスティミストの量を算出してもよい。この場合、各発泡性飲料の色パラメータを用いて発泡性飲料ごとにフロスティミストの量を算出するので、複数の発泡性飲料の間でフロスティミストの量を比較することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、フロスティミストの量を効率よく且つ高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、液体、フロスティミスト及び泡を含む発泡性飲料を模式的に示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係る例示的なフロスティミスト測定装置を示すブロック図である。
図3図3は、図2のフロスティミスト測定装置の色パラメータの取得範囲の例を模式的に示す側面図である。
図4図4は、図2のフロスティミスト測定装置の色パラメータ取得部によって取得された色パラメータの例を示すグラフである。
図5図5は、実施形態に係るフロスティミスト測定方法の工程の例を示すフローチャートである。
図6図6(a)、図6(b),図6(c)及び図6(d)は、フロスティミストの測定結果をL*値として示した時系列変化の例示的なグラフである。
図7図7(a)は、フロスティミストの量をΔL*値として示す例示的なグラフである。図7(b)は、フロスティミストの量をΔL*積分値として示す例示的なグラフである。
図8図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は、フロスティミストの測定結果をa*値として示した時系列変化の例示的なグラフである。
図9図9(a)、図9(b)、図9(c)及び図9(d)は、フロスティミストの測定結果をb*値として示した時系列変化の例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るフロスティミスト測定方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るフロスティミスト測定方法によって測定される対象の例示的な発泡性飲料1を示す図である。発泡性飲料1は飲料容器Cに注出される。発泡性飲料1は、飲料容器Cの内部において、液体2と、液体2の上部に位置する泡3とを備える。飲料容器Cは、例えば、ジョッキ、グラス、又はコップ等、発泡性飲料1を注出することが可能とされた容器である。
【0018】
発泡性飲料1は、例えば、炭酸ガス等のガス含有発酵酒を含んでおり、飲料容器Cに注出されたときに液体2の上に泡3の層が形成される泡立ち特性と、形成された泡3が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。具体例として、発泡性飲料1は、NIBEM値が50秒以上を示す飲料である。NIBEM値は、EBC(European Brewry Convention:欧州醸造協会)法によって公定法とされた飲料の泡持ち特性を示す指標である。
【0019】
発泡性飲料1はビールテイスト飲料であってもよい。ビールテイスト飲料は、ビールのような味わいを奏する飲料、及び、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料を含む。アルコール度数が1%以上であるビールテイスト飲料は、ビールテイストアルコール飲料とも称される。更に、ビールテイスト飲料は、原料として麦芽を使用するビール、発泡酒、ノンアルコールビール、リキュール(例えば、酒税法上「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)等の麦芽発酵飲料、及び、原料として麦又は麦芽を使用しないビールテイスト飲料(例えば、酒税法上「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)を含んでいる。
【0020】
なお、発泡性飲料1は、ビールテイスト飲料ではない発泡性飲料であってもよい。発泡性飲料1は、例えば、前述した泡立ち特性及び泡持ち特性の少なくともいずれかを有するチューハイ、サワー、ハイボール、RTD(Ready To Drink)、コーラ、ソーダ又はサイダー等であってもよい。なお、本実施形態では、発泡性飲料1がビールである例について説明する。
【0021】
発泡性飲料1の泡3は、所謂きめ細かい泡を含んでおり、このきめ細かい泡は、例えば、飲料容器Cへの液体2への衝撃等によって生成する粗い泡とは異なる。きめ細かい泡は、発泡性飲料1に対する意匠性及び口当たりを良好にするクリーミーな泡であり、更に、液体2の香り又は炭酸ガスの抜け、及び液体2の酸化を防ぐ蓋としての機能を果たすため多く生成されることが好ましい。きめ細かい泡は、液体2と泡3との境界部分に現れるフロスティミスト4からも生成される。
【0022】
フロスティミスト4は、液体2と泡3との境界部分に現れる霧状の層であり、例えば、外径が20μm以下である微細な泡の集合体である。フロスティミスト4の量は、発泡性飲料1の種類(例えば銘柄)、発泡性飲料1の成分、又は発泡性飲料1の注出の方法によって異なる。フロスティミスト4は、発泡性飲料1が飲料容器Cに注出されるときにガス圧が加えられることによって発生する。なお、フロスティミスト4は、ガス圧だけでなく、超音波等、ガス圧以外の作用によって発生することもある。フロスティミスト4は、例えば、発泡性飲料1が飲用されたときに泡3を再生するため、きめ細かい泡の泡持ちを良好にする効果を奏する。
【0023】
具体的には、発泡性飲料1が飲用されると、フロスティミスト4が液体2、泡3又は飲料容器Cに接触して刺激されることにより、フロスティミスト4から新たな泡3が再生する。フロスティミスト4が鮮明に現れてフロスティミスト4が増えると泡3の再生量が増加する。従って、きめ細かい泡の泡持ちを良好にして泡3の再生を図るためにはフロスティミスト4の量を定量的に測定することが重要である。
【0024】
図2は、フロスティミスト4を定量的に測定する例示的なフロスティミスト測定装置10を示すブロック図である。なお、フロスティミスト測定装置10が備える各機能は、図2に示されるものに限られず適宜変更可能である。図2に示されるように、フロスティミスト測定装置10は、発泡性飲料1を撮影するカメラ11と、カメラ11による発泡性飲料1の撮影画像を解析してフロスティミスト4を測定する測定部12と、測定部12の測定結果を表示する表示部13とを備える。
【0025】
フロスティミスト測定装置10は、一例として、二次元色彩計によって構成されていてもよい。また、フロスティミスト測定装置10は、例えば、コンピュータを含んでいてもよく、当該コンピュータは、オペレーティングシステム又はアプリケーションプログラムを実行するプロセッサと、メモリ等の記憶部とを備えていてもよい。
【0026】
この場合、フロスティミスト測定装置10のコンピュータの各機能要素は、例えば、プロセッサ又は記憶部に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。また、カメラ11によって撮影された画像、及び測定部12による測定結果は、記憶部に記憶されてもよい。
【0027】
カメラ11は、例えば、図2及び図3に示されるように、発泡性飲料1の一部である撮影範囲Aを撮影する。一例として、撮影範囲Aは、泡3の一部、フロスティミスト4、及び液体2の一部を含む。カメラ11は、泡3の下部、フロスティミスト4、及び液体2の上部を含む撮影範囲Aを撮影してもよい。カメラ11が撮影した画像は測定部12に出力される。
【0028】
測定部12は、例えば、色パラメータ取得部12bと、フロスティミスト算出部12cとを備える。一例として、色パラメータ取得部12bは、カメラ11が撮影した撮影画像のL*値、a*値及びb*値を取得する。L*値は明度(明るさ)を示しており、a*値は赤色度を示しており、b*値は黄色度を示している。
【0029】
L*値が大きいほど色彩の明度が大きい(明るい)ことを示しており、a*値が大きいほど色彩が赤色っぽいことを示しており、b*値が大きいほど黄色っぽいことを示している。L*値が小さいほど色彩の明度が低い(暗い)ことを示しており、a*値が小さいほど色彩が緑色っぽいことを示しており、b*値が小さいほど色彩が青色っぽいことを示している。
【0030】
フロスティミスト算出部12cは、例えば、色パラメータ取得部12bによって取得されたL*値、a*値、及びb*値の少なくともいずれかからフロスティミスト4の量を算出する。例えば、図2図4に示されるように、フロスティミスト算出部12cは、液体2のL*値とフロスティミスト4のL*値との差分であるΔL*値からフロスティミスト4の量を算出する。
【0031】
図4は、撮影範囲Aの基準点Xからの変位DとL*値との関係を示すグラフである。撮影範囲Aからは、例えば、変位Dに沿った450点のデータが取得される。この場合、撮影範囲Aは変位Dに沿って450分割されている。基準点Xは、カメラ11による撮影範囲Aの液体2側の端部であってフロスティミスト4が存在しない液体2の位置を示している。
【0032】
基準点XにおけるL*値Wは、液体2のL*値に一致する。図4のグラフの横軸は、基準点Xからフロスティミスト4及び泡3(飲料容器Cの上方)に延びる変位Dを示しており、例えば、基準点Xからの液体2、フロスティミスト4又は泡3までの飲料容器Cの上下方向における距離を示している。図4のグラフの縦軸は、変位Dにおける色彩のL*値を示している。
【0033】
本実施形態では、フロスティミスト4の色彩の明度(L*値)が液体2の色彩の明度(L*値)よりも小さい(フロスティミスト4の色彩が液体2の色彩よりも暗い)という特性を用いて、液体2の基準点XのL*値Wとフロスティミスト4のL*値の最低値Yとの差分であるΔL*値としてフロスティミスト4の量の指標値を算出する。
【0034】
本実施形態の一例としては、液体2の基準点XのL*値Wを基準とする色パラメータとしており、当該基準とする色パラメータとフロスティミスト4の色パラメータ(例えばL*値の最低値Y)との差分ΔL*値としてフロスティミスト4の量を算出する。ΔL*値は、フロスティミスト4の定量的な測定を行うときの指標値の一つとなる。すなわち、ΔL*値が大きいほど多くのフロスティミスト4が存在していることが分かり、ΔL*値が小さいほどフロスティミスト4の量が少ないことが分かる。
【0035】
フロスティミスト算出部12cは、ΔL*積分値をフロスティミスト4の量として算出してもよい。ΔL*積分値は、L*値が基準点XのL*値Wから最低値Yになるまでの積分値(図4のグラフの面積B)を示している。この場合、フロスティミスト4の量をΔL*積分値(面積B)として表すことができる。基準点XにおけるL*値をW、L*値が最低値Yであるときの変位DをZ、変位Dに対するL*値の関数をf(D)とすると、一例として、面積Bは以下の式(1)で表される。
【0036】
【数1】

この面積Bの値はフロスティミスト4の量の指標値に相当するので、フロスティミスト4の量を定量的に算出することができる。なお、フロスティミスト4の量の算出の式は式(1)以外のものを用いることも可能である。
【0037】
表示部13は、一例として、パーソナルコンピュータ若しくはノートパソコン等の情報端末のディスプレイ、又は、携帯電話若しくはタブレット等の携帯端末のディスプレイであってもよい。表示部13は、フロスティミスト算出部12cによって算出されたフロスティミスト4の量を表示する。例えば、表示部13は、ΔL*値を表示してもよいし、前述したΔL*積分値(面積B)を表示してもよいし、図4のグラフのように変位DとL*値との関係をグラフ形式又は表形式で表示してもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係るフロスティミスト測定方法の例について説明する。図5は、本実施形態に係るフロスティミスト測定方法の各工程を示すフローチャートである。まず、飲料容器Cへの発泡性飲料1の注出を行う(ステップS1)。例えば、4℃の温度で押圧力を0.20MPaとして予め冷却した発泡性飲料1を380mLのタンブラーである飲料容器Cに液体2と泡3の比が7:3となるように飲料サーバーから注出する。また、氷水中で冷却した発泡性飲料1(一例としてビールサンプル)を飲料容器Cに注出してもよい。
【0039】
次に、飲料容器Cに注出された発泡性飲料1を撮影する(ステップS2)。このとき、例えば、発泡性飲料1が注出された飲料容器Cをライトからの光が照射された撮影場所に移動してカメラ11によって発泡性飲料1を飲料容器Cの側方から撮影する。カメラ11は、例えば、前述した撮影範囲Aを定めて液体2、泡3及びフロスティミスト4を撮影する。なお、撮影範囲Aの撮影は二次元色彩計によって行ってもよい。
【0040】
カメラ11によって発泡性飲料1が撮影されると、色パラメータ取得部12bが発泡性飲料1の各部の色パラメータを取得する(ステップS3)。このとき、色パラメータ取得部12bは、撮影範囲Aの変位Dに応じた色パラメータのデータを取得し、例えば、撮影範囲Aの変位Dに応じたL*値、a*値及びb*値の少なくともいずれかを取得する。
【0041】
色パラメータ取得部12bは、カメラ11によって撮影された撮影範囲Aの画像から液体2、フロスティミスト4及び泡3のそれぞれのL*値、a*値及びb*値を取得してもよい。なお、色パラメータ取得部12bが取得する色パラメータは、L*値、a*値及びb*値のうちの1つ又は2つのみであってもよい。
【0042】
以上のように色パラメータ取得部12bが撮影範囲Aの色パラメータを取得した後には、フロスティミスト算出部12cがフロスティミスト4の量を算出する(ステップS4)。具体例として、フロスティミスト算出部12cは、変位Dに対するL*値の関数f(D)を求め、前述したΔL*値及びΔL*積分値(面積B)の少なくともいずれかをフロスティミスト4の量として算出してもよい。以上のように、フロスティミスト4の量を算出した後に一連の工程を終了する。
【0043】
また、前述したステップS2、ステップS3及びステップS4は、一定時間ごとに実行されてもよい。すなわち、発泡性飲料1の撮影、発泡性飲料1の色パラメータの取得、及びフロスティミスト4の量の算出、は一定時間ごとに複数回実行されてもよい。図6(a)~図6(d)は、変位Dに対するL*値の関数の時系列データを4つのグラフとして示した例である。
【0044】
図6(a)は発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから40秒後におけるL*値の関数を示しており、図6(b)は発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから1分後におけるL*値の関数を示しており、図6(c)は発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから2分後におけるL*値の関数を示しており、図6(d)は発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから3分後におけるL*値の関数を示している。
【0045】
図6(a)~図6(d)に示されるように、例えば、発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから1分後にフロスティミスト4の量が多くなり更にフロスティミスト4の範囲が広がっていることが分かる。なお、図6(a)~図6(d)では、飲料容器Cを撮影場所に配置してから40秒後、1分後、2分後、及び3分後にいろパラメータを取得している。しかしながら、色パラメータの取得は、飲料容器Cに発泡性飲料1を注出した直後に行ってもよいし、一定時間(例えば5分)待った後に行ってもよい。
【0046】
また、互いに種類が異なる発泡性飲料A、発泡性飲料B、発泡性飲料C及び発泡性飲料Dに対して前述した撮影、色パラメータの取得、及びフロスティミスト4の算出を行う場合には、例えば、発泡性飲料Aが最も多くのフロスティミスト4を生じさせるということが分かる。このように、本実施形態では、例えば、発泡性飲料A、発泡性飲料B、発泡性飲料C及び発泡性飲料Dといった複数の発泡性飲料に対して色パラメータの取得を行い、図6(a)~図6(d)に例示されるように、発泡性飲料ごとに色パラメータの時系列データを取得する。このように、発泡性飲料ごとに色パラメータを取得することにより、複数の発泡性飲料間におけるフロスティミストの量の比較を行うことが可能となる。
【0047】
この場合、発泡性飲料Aは、発泡性飲料B,C,Dと比較してフロスティミスト4が多く泡3の再生力が強いことが分かる。以上のように複数種類の発泡性飲料に対して撮影、色パラメータの取得、及びフロスティミスト4の量の定量的な算出を行う場合、フロスティミスト4が多くて泡3の再生力が高い発泡性飲料を把握することができ、フロスティミストが多い発泡性飲料1の開発等に役立てることができる。
【0048】
図7(a)は、発泡性飲料A、発泡性飲料B、発泡性飲料C及び発泡性飲料DのそれぞれのΔL*値の時系列データを示すグラフである。図7(b)は、発泡性飲料A、発泡性飲料B、発泡性飲料C及び発泡性飲料DのそれぞれのΔL*積分値の時系列データを示すグラフである。
【0049】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、発泡性飲料A、発泡性飲料B、発泡性飲料C及び発泡性飲料Dのそれぞれに対してΔL*値又はΔL*積分値を算出することにより、フロスティミスト4の量を相対的な定量値として正確に把握することができる。図7(a)及び図7(b)の例では、発泡性飲料Aが最もフロスティミスト4が多く、発泡性飲料Cが次にフロスティミスト4が多く、発泡性飲料B,Dはフロスティミスト4が少ない、ということを把握できる。
【0050】
また、発泡性飲料AのΔL*値の最大値は、発泡性飲料CのΔL*値の最大値の2倍以上である。発泡性飲料AのΔL*積分値の最大値は、発泡性飲料CのΔL*積分値の最大値の4倍以上である。よって、発泡性飲料Aのフロスティミスト4の量は発泡性飲料Cのフロスティミスト4の量と比較して著しく多いことが分かると共に、発泡性飲料Cのフロスティミスト4の量は発泡性飲料B,Dのフロスティミスト4の量と比較してあまり変わらないということも分かる。
【0051】
このように本実施形態に係るフロスティミスト測定方法及びフロスティミスト測定装置10では、フロスティミスト4の量を定量的に且つ正確に測定することができる。これに対し、フロスティミスト4は微細であり時間と共に様態が変化するものであるため、目視ではフロスティミスト4の量を正確に測定することができない。
【0052】
次に、本実施形態に係るフロスティミスト測定方法の作用効果について説明する。本実施形態に係るフロスティミスト測定方法では、飲料容器Cに注出された発泡性飲料1の色パラメータを取得する。図3に示されるように、発泡性飲料1において、液体2、フロスティミスト4及び泡3は、この順で並んでおり、発泡性飲料1の液体2の色彩、フロスティミスト4の色彩、及び泡3の色彩は互いに異なっている。本実施形態では、泡3の色彩が最も明るく、液体2の色彩が次に明るく、フロスティミスト4の色彩が最も暗い。
【0053】
この測定方法では、液体2の色パラメータ、泡3の色パラメータ、及びフロスティミスト4の色パラメータのそれぞれを取得する。そして、フロスティミスト4の色パラメータ(例えば前述したL*値の最低値Y)を液体2の色パラメータ(例えば基準点XのL*値W)と比較する。
【0054】
従って、フロスティミスト4の色パラメータを用いることによってフロスティミスト4の量を値として算出することができる。よって、目視でフロスティミスト4の量を測定しなくてもフロスティミスト4の量を定量化することができるので、フロスティミスト4の量を容易に測定することができる。更に、フロスティミスト4の色パラメータを用いてフロスティミスト4の量を算出することにより、量の測定結果にばらつきが生じることを回避できるので、フロスティミスト4の量を高精度に測定することができる。
【0055】
更に、本実施形態では、発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを傾けたりする必要がなく、発泡性飲料1の撮影によってフロスティミスト4の量を測定することができる。従って、発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを傾ける装置等の設備を不要とすることができるので、簡易な構成でフロスティミスト4の測定を高精度に行うことができる。
【0056】
また、色パラメータは、発泡性飲料1の色彩のL*値、a*値及びb*値の少なくともいずれかであってもよい。この場合、液体2の色彩、泡3の色彩、及びフロスティミスト4の色彩のそれぞれを明度(L*値)、赤色度(a*値)及び黄色度(b*値)の少なくともいずれかで数値化することができる。
【0057】
図8(a)~図8(d)は、変位Dに対するa*値の関数の時系列データを4つのグラフとして示したものである。図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)のそれぞれは、発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから40秒後、1分後、2分後及び3分後のそれぞれにおけるa*値の関数を示している。
【0058】
また、図9(a)、図9(b)、図9(c)及び図9(d)のそれぞれは、発泡性飲料1が注出された飲料容器Cを前述した撮影場所に配置してから40秒後、1分後、2分後及び3分後のそれぞれにおけるb*値の関数を示している。図8(a)~図8(d)及び図9(a)~図9(d)に示されるように、色パラメータとしてa*値及びb*値のいずれかを用いた場合であっても、各グラフの各値が低下している部分からフロスティミスト4の量を把握することができる。
【0059】
従って、二次元色彩計を含む色彩色度計によって液体2、泡3及びフロスティミスト4のそれぞれのL*値、a*値及びb*値の少なくともいずれかを用いることによって、フロスティミスト4の量を自動的に算出することができる。よって、フロスティミスト4の量を効率よく且つ高精度に測定することができる。
【0060】
また、色パラメータは、発泡性飲料1の色彩のL*値であってもよい。この場合、図6(a)~図6(d)に示されるように、フロスティミスト4の色彩の特徴が顕著に表れる発泡性飲料1の明るさの指標を用いて色パラメータの取得を行うことができるので、フロスティミスト4をより高精度に測定することができる。
【0061】
また、フロスティミストの量を算出する工程では、フロスティミスト4の色パラメータ(例えばL*値)を、基準とする色パラメータ(例えば液体2のL*値)と比較してフロスティミスト4の量を算出してもよい。この場合、基準とする色パラメータとフロスティミスト4の色パラメータとの比較を行ってフロスティミスト4の量を算出するので、より正確にフロスティミストの量を算出することができる。
【0062】
また、色パラメータを取得する工程では、複数の発泡性飲料の色パラメータを取得し、フロスティミストの量を算出する工程では、複数の発泡性飲料の色パラメータのそれぞれを用いて、発泡性飲料ごとにフロスティミストの量を算出してもよい。この場合、各発泡性飲料の色パラメータを用いて発泡性飲料ごとにフロスティミストの量を算出するので、複数の発泡性飲料の間でフロスティミストの量を比較することができる。
【0063】
以上、本開示に係るフロスティミスト測定方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本開示は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能であり、フロスティミスト測定方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、フロスティミスト測定方法は、前述したフロスティミスト測定装置10以外のものを用いて実行されるものであってもよい。
【0064】
例えば、前述の実施形態では、フロスティミスト4の色パラメータと液体2の色パラメータとを比較する例について説明した。しかしながら、フロスティミスト測定方法では、フロスティミスト4の色パラメータ(例えば前述したL*値の最低値Y)を泡3の色パラメータ(例えば泡3の任意のL*値)と比較してもよい。すなわち、基準とする色パラメータを泡3の色パラメータとし、泡3の色パラメータとフロスティミスト4の色パラメータとを比較してもよい。
【0065】
また、フロスティミスト測定方法では、基準とする色パラメータを予め定められた色パラメータ(例えばL*値=70)としてもよい。このように、フロスティミスト4の色パラメータを予め定められた色パラメータと比較してもよい。以上のように、フロスティミスト4の色パラメータをどの色パラメータと比較するか(基準とする色パラメータ)、及びフロスティミスト4の色パラメータをどのように用いてフロスティミスト4の量を算出するかについては適宜変更可能である。
【0066】
また、前述の実施形態では、色パラメータがL*値、a*値及びb*値を含むL*a*b*表色系の色パラメータである例について説明した。しかしながら、色パラメータは、RGB表色系の色パラメータ、XYZ表色系の色パラメータ、CIE1931色空間の色パラメータ、L*C*h*色空間の色パラメータ、又はハンターLab色空間の色パラメータであってもよく、色パラメータの種類は適宜変更可能である。
【0067】
また、前述の実施形態では、発泡性飲料1がビールである例について説明した。しかしながら、本開示に係る発泡性飲料は、ビール以外のものであってもよく、例えば、所定の泡持ち特性を有する発泡酒、ノンアルコールビール、チューハイ、サワー、ハイボール、RTD(Ready To Drink)、コーラ、ソーダ又はサイダー等であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…発泡性飲料、2…液体、3…泡、4…フロスティミスト、10…フロスティミスト測定装置、11…カメラ、12…測定部、12b…色パラメータ取得部、12c…フロスティミスト算出部、13…表示部、A…撮影範囲、B…面積、C…飲料容器、D…変位、W…L*値、X…基準点、Y…最低値。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9