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  • 特許-電動式火力調節弁 図1
  • 特許-電動式火力調節弁 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電動式火力調節弁
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019222595
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092341
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雅斗
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129626(JP,A)
【文献】特開昭60-196481(JP,A)
【文献】特開平06-109163(JP,A)
【文献】特開2019-184083(JP,A)
【文献】特開2004-204872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F24C 3/12
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへのガス供給路に介設される電動式火力調節弁であって、弁筐内の弁室に、弁室の一端の弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在に設けられた主弁体と、主弁体に対し開き方向に対向する副弁体と、主弁体を開き方向に付勢する第1付勢手段と、主弁体に対し副弁体を第1付勢手段の付勢力よりも強い付勢力で開き方向に付勢する第2付勢手段と、主弁体に対する副弁体の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段と、副弁体に開き方向から当接する直動体と、直動体を連動機構を介して開き方向及び閉じ方向に駆動するステッピングモータとを備え、主弁体は、主弁体が弁座に着座した状態でも主弁体の上流側から下流側にガスを流すバイパス孔と、副弁体が着座可能で、バイパス孔が開口する副弁座とを有し、主弁体が弁座に着座すると共に副弁体が副弁座に着座する全閉状態に切換え可能としたものにおいて、
副弁体に、副弁座に対向する弾性材料製のパッキンが取付けられ、副弁体がパッキンにおいて副弁座に着座するようにし
副弁体は、硬質材料で形成される弁本体を備え、弁本体は、副弁座に対向する弁本体の先端に開口する中空部を有し、パッキンは、この中空部に、パッキンの副弁座に対向する先端部が弁本体の先端から所定の圧縮代分だけ突出するように装着され、全閉状態でステッピングモータを脱調させて原点出しを行う際に、パッキンが前記所定の圧縮代分だけ圧縮されて弁本体の先端が副弁座に当接するようにしたことを特徴とする電動式火力調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式火力調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式火力調節弁として、特許文献1により、弁筐内の弁室に、弁室の一端の弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在に設けられた主弁体と、主弁体に対し開き方向に対向する副弁体と、主弁体を開き方向に付勢する第1付勢手段と、主弁体に対し副弁体を第1付勢手段の付勢力よりも強い付勢力で開き方向に付勢する第2付勢手段と、主弁体に対する副弁体の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段と、副弁体に開き方向から当接する直動体と、直動体を連動機構を介して開き方向及び閉じ方向に駆動するステッピングモータとを備えるものが知られている。このものおいて、主弁体は、主弁体が弁座に着座した状態でも主弁体の上流側から下流側にガスを流すバイパス孔と、副弁体が着座可能で、バイパス孔が開口する副弁座とを有している。そして、主弁体が弁座に着座すると共に副弁体が副弁座に着座する全閉状態に切換え可能とし、バーナへのガス供給を停止できるようにしている。
【0003】
然し、特許文献1に記載のものでは、副弁座を硬質部材で形成される主弁体の本体部分に形成し、また、副弁体全体を硬質部材で形成している。そのため、全閉状態で副弁体を副弁座に着座させても、硬質部材同士の当接となって、バイパス孔へのガスの流れを完全には遮断できず、全閉状態でのシール不良を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-129626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、全閉状態でのシール不良を防止できるようにした電動式火力調節弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式火力調節弁であって、弁筐内の弁室に、弁室の一端の弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在に設けられた主弁体と、主弁体に対し開き方向に対向する副弁体と、主弁体を開き方向に付勢する第1付勢手段と、主弁体に対し副弁体を第1付勢手段の付勢力よりも強い付勢力で開き方向に付勢する第2付勢手段と、主弁体に対する副弁体の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段と、副弁体に開き方向から当接する直動体と、直動体を連動機構を介して開き方向及び閉じ方向に駆動するステッピングモータとを備え、主弁体は、主弁体が弁座に着座した状態でも主弁体の上流側から下流側にガスを流すバイパス孔と、副弁体が着座可能で、バイパス孔が開口する副弁座とを有し、主弁体が弁座に着座すると共に副弁体が副弁座に着座する全閉状態に切換え可能としたものにおいて、副弁体に、副弁座に対向する弾性材料製のパッキンが取付けられ、副弁体がパッキンにおいて副弁座に着座するようにし、副弁体は、硬質材料で形成される弁本体を備え、弁本体は、副弁座に対向する弁本体の先端に開口する中空部を有し、パッキンは、この中空部に、パッキンの副弁座に対向する先端部が弁本体の先端から所定の圧縮代分だけ突出するように装着され、全閉状態でステッピングモータを脱調させて原点出しを行う際に、パッキンが前記所定の圧縮代分だけ圧縮されて弁本体の先端が副弁座に当接するようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の電動式火力調節弁によれば、全閉状態で、主弁体に設けられた副弁座に副弁体に設けられた弾性材料製のパッキンが着座するため、硬質部材同士が当接する上記従来例と異なり、全閉状態でのシール不良を確実に防止することができる。
【0008】
ところで、ステッピングモータの原点出しを行う際は、全閉状態でステッピングモータを脱調させるが、全閉状態で副弁体をパッキンにおいて副弁座に着座させたのでは、脱調時のパッキンの圧縮具合のバラツキにより、ステッピングモータの原点位置が一義的に定まらなくなってしまうことがある。
【0009】
一方、本発明によれば、全閉状態でステッピングモータを脱調させて原点出しを行う際に、上記の如く弁本体の先端が副弁座に当接するため、パッキンの圧縮具合のバラツキの影響を受けずに、ステッピングモータの原点位置を一義的に定めることができ、この原点位置に基づいて正確に火力調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の電動式火力調節弁の切断側面図。
図2】実施形態の電動式火力調節弁の要部の分解状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、Aは、コンロバーナ等のバーナBへのガス供給路Gに介設する本発明の実施形態の電動式火力調節弁である。この火力調節弁Aは、ガス供給路Gの上流側部分と下流側部分とを夫々接続する流入口11と流出口12とを有する弁筐1を備えている。弁筐1内には、流入口11に連通する弁室13と、弁室13の一端の弁座14とが設けられ、弁座14に、流出口12に連通する弁孔15が開設されている。
【0012】
図2も参照して、電動式火力調節弁Aは、弁室13に、弁座14に接近する閉じ方向(図1の右方)と弁座14から離隔する開き方向(図1の左方)とに移動自在に設けられた主弁体2と、主弁体2に対し開き方向に対向する副弁体3と、主弁体2を開き方向に付勢する第1付勢手段4と、主弁体2に対し副弁体3を第1付勢手段4よりも強い付勢力で開き方向に付勢する第2付勢手段4と、主弁体2に対する副弁体3の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段5と、副弁体3に開き方向から当接する直動体6と、直動体6を連動機構7を介して開き方向及び閉じ方向に駆動するステッピングモータ8とを備えている。
【0013】
主弁体2は、硬質樹脂等の硬質材料で形成される弁本体21を備えている。この弁本体21には、弁孔15に挿入可能なニードル部22が設けられている。また、弁本体21には、ニードル部22の開き方向の端部に形成した鍔部22aにより抜け止めされる、弁座14に着座可能な、ゴム等の弾性材料で形成された環状の閉塞部23が外嵌固定されている。更に、弁本体21には、主弁体2、即ち、閉塞部23が弁座14に着座した状態でも主弁体2の上流側から下流側にガスを流すバイパス孔24と、副弁体3が着座可能で、バイパス孔24が開口する副弁座25とが形成されている。バイパス孔24には、バーナの最小火力を規定するオリフィス部24aが設けられている。また、弁本体21の開き方向の端部には、副弁体3を囲うようにして開き方向にのびる、硬質材料から成るガイド筒部26が結合されている。ガイド筒部26の外周面には、弁室13の周壁面に摺接する複数の突条26aが突設され、また、ガイド筒部26の基端部には、ガイド筒部26の内外を連通する透孔26bが形成されている。
【0014】
副弁体3には、副弁座25に対向するゴム等の弾性材料製のパッキン32が取付けられている。そして、副弁体3がパッキン32において副弁座25に着座するようにしている。より具体的に説明すれば、副弁体3は、硬質樹脂等の硬質材料で形成される弁本体31を備えている。この弁本体31は、副弁座25に対向する弁本体31の先端に開口する中空部31aを有している。上記パッキン32は、この中空部31aに装着されている。図2に明示されているように、自由状態において、パッキン32の副弁座25に対向する先端部32aは、弁本体31の副弁座25に対向する先端から所定の圧縮代分だけ突出している。尚、本実施形態では、パッキン32を、弁本体31の成形時のインサート成形で、中空部31aに装着しているが、弁本体31の成形後に、パッキン32を中空部31aに嵌め込むようにして装着することも可能である。尚、この場合、弁本体31とパッキン32とを両者間に接着剤を塗布して接合してもよい。また、副弁体3には、弁本体31と一体に、主弁体2のガイド筒部26の内周面に摺接するガイド部33が設けられている。
【0015】
ストッパ手段5は、主弁体2のガイド筒部26に形成した窓孔51と、副弁体3の外周面に突設した、窓孔51に遊びを持って挿入される爪部52とで構成されている。そして、副弁体3が主弁体2に対し開き方向に移動して、窓孔51の開き方向の端縁に爪部52が係合したところで、副弁体3が主弁体2に対しそれ以上開き方向に移動しないようにしている。
【0016】
直動体6は、閉じ方向の端面が球面状の凸面に形成されており、この凸面を、副弁体3の開き方向の端面に当接させている。連動機構7は、ステッピングモータ8の出力軸81に連結される雄ねじ71と、雄ねじ71が螺合する、回り止めされた摺動子72とから成る送りねじ機構で構成されている。摺動子72は、連動機構7の配置部を弁室13に対し仕切るダイヤフラム61に当接しており、このダイヤフラム61に直動体6を連結している。
【0017】
図1に示す如く、主弁体2(正確には、主弁体2の閉塞部23)が弁座14に着座すると共に、副弁体3が主弁体2の副弁座25に着座してバイパス孔24を閉塞する状態が、電動式火力調節弁Aの全閉状態であって、バーナBへのガス供給が停止される。この全閉状態からステッピングモータ8により連動機構7を介して直動体6を開き方向に移動させると、副弁体3が第2付勢手段4の付勢力により直動体6に追従して開き方向に移動する。主弁体2に対する副弁体3の開き方向への移動がストッパ手段5で制止されるまでは、主弁体2の開き方向への移動が第2付勢手段4の付勢力によって阻止されて、主弁体2が弁座14に着座した状態に維持されると共に、副弁体3が副弁座25から離隔して、バイパス孔24が開放され、電動式火力調節弁Aは、バーナBの火力を最小にする最小火力状態になる。主弁体2に対する副弁体3の開き方向への移動がストッパ手段5で制止された後、副弁体3を更に開き方向に移動させれば、主弁体2が第1付勢手段4の付勢力により副弁体3に追従して開き方向に移動し、主弁体2が弁座14から離隔して、バーナBの火力が次第に増加する。
【0018】
ここで、本実施形態の電動式火力調節弁Aでは、全閉状態としたときに、副弁体3がパッキン32において副弁座25に着座する。そのため、主弁体2の硬質材料で形成される副弁座25に副弁体3の硬質材料で形成される部分が当接する上記従来例と異なり、全閉状態でのシール不良を確実に防止することができる。
【0019】
また、定期的に、全閉状態でステッピングモータ8を脱調させて原点出しを行うが、本実施形態では、原点出しに際し、副弁体3のパッキン32が上記所定の圧縮代分だけ圧縮されて、図1に示す如く、副弁体3の弁本体31の先端が副弁座25に当接するようにしている。これによれば、パッキン32の圧縮具合のバラツキの影響を受けずに、ステッピングモータ8の原点位置を一義的に定めることができる。従って、この原点位置に基づいて正確に火力調節を行うことができる。尚、原点出しに際しては、主弁体2の閉塞部23も圧縮させて、鍔部22aを弁座14に当接させる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、連動機構7を送りねじ機構で構成しているが、ラックピニオン機構やカム機構等の送りねじ機構以外のもので構成してもよい。
【符号の説明】
【0021】
A…電動式火力調節弁、B…バーナ、G…ガス供給路、1…弁筐、13…弁室、14…弁座、2…主弁体、25…副弁座、3…副弁体、31…弁本体、31a…中空部、32…パッキン、32a…パッキンの先端部、41…第1付勢手段、42…第2付勢手段、5…ストッパ手段、6…直動体、7…連動機構、8…ステッピングモータ。
図1
図2