IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-内容液入りパウチ 図1
  • 特許-内容液入りパウチ 図2
  • 特許-内容液入りパウチ 図3
  • 特許-内容液入りパウチ 図4
  • 特許-内容液入りパウチ 図5
  • 特許-内容液入りパウチ 図6
  • 特許-内容液入りパウチ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】内容液入りパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B65D81/26 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019561631
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2018047178
(87)【国際公開番号】W WO2019131483
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-03-31
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2017247144
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】熱海 礼奈
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】西本 浩司
【審判官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222307(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0058391(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/32
B65D 65/40
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを熱接着した外周シール部を形成することにより袋状に形成され、前記外周シール部よりも内側の収容部に内容液を収容するパウチと、前記収容部に収容された内容液とを備える内容液入りパウチであって、
前記フィルムは、厚み方向に積層された複数層から構成され、
前記内容液が収容される前記収容部が、フィルムの最内層で囲まれて形成されており、
前記フィルムの少なくとも一側には、前記収容部に対応する位置に、香成分放出部が形成され、
前記香成分放出部は、前記フィルムの厚み方向における一部範囲に形成された材料除去部の集合から構成され、
前記香成分放出部は、前記フィルムの外面から前記フィルムを構成する複数層における最内層以外の層を厚み方向に貫通し、前記最内層を貫通しないように形成され、
前記香成分放出部を含む香成分放出エリアにおける、前記香成分放出部のパウチ平面方向における面積の割合が2~60面積%であり、
前記香成分放出部を含む香成分放出エリアにおける、前記香成分放出部のパウチ平面方向における面積の割合は、縦30mm×横30mmの正方形の任意の仮想領域を、前記材料除去部を含むよう想定し、この仮想領域における前記香成分放出部の面積の割合を算出した場合の最大値であり、
前記パウチは、スタンディングパウチとして構成され、
前記香成分放出部の少なくとも一部は、未開封状態の前記パウチを立脚させた状態で、前記内容液の液面よりも下の位置に形成されていることを特徴とする内容液入りパウチ。
【請求項2】
前記香成分放出部は、未開封状態の前記パウチを立脚させた状態で、前記内容液の液面を跨ぐ位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内容液入りパウチ。
【請求項3】
前記香成分放出部は溝状の前記材料除去部から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内容液入りパウチ。
【請求項4】
前記材料除去部のパウチ平面方向における総面積は、30~400mmで設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【請求項5】
前記香成分放出部は、溝状の前記材料除去部から少なくとも構成され、
前記フィルムの外面に形成された溝状の前記材料除去部の周縁には、周縁突出部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【請求項6】
前記複数層には、香成分の透過を抑制する香成分バリア層が含まれ、
前記香成分バリア層の少なくとも一部には、前記材料除去部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【請求項7】
前記香成分バリア層が、無機酸化物または金属の蒸着層を含むものであることを特徴とする請求項6に記載の内容液入りパウチ。
【請求項8】
前記材料除去部は、前記香成分バリア層を厚み方向に貫通するように形成されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の内容液入りパウチ。
【請求項9】
前記複数層には、他の合成樹脂層よりもガラス転移点が高い合成樹脂から成る第1合成樹脂層が含まれ、
前記第1合成樹脂層の少なくとも一部には、前記材料除去部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【請求項10】
前記複数層には、金属層が含まれ、
前記材料除去部は、前記金属層を厚み方向に貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【請求項11】
前記材料除去部は、前記複数層における最内層以外の層を厚み方向に貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のパウチ。
【請求項12】
前記フィルムには、印刷された印刷部が形成され、
前記香成分放出部は、溝状の前記材料除去部から構成され、前記印刷部に対してパウチ平面方向に位置合わせして形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【請求項13】
前記フィルムには、エンボス加工が施されたエンボス加工部が形成され、
前記香成分放出部は、溝状の前記材料除去部から構成され、前記エンボス加工部に対してパウチ平面方向に位置合わせして形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の内容液入りパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを熱接着した外周シール部を形成することにより袋状に形成され、外周シール部よりも内側の収容部に内容物を収容する内容液入りパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャンプーや洗剤等の内容物を収容する容器として、フィルムを熱接着した外周シール部を形成することにより袋状に形成され、外周シール部よりも内側の収容部に内容液を収容するパウチが広く用いられている。
【0003】
このようなパウチでは、内容物の外部漏出や品質の劣化を防ぐために、パウチを構成するフィルムにガスバリアー性や保香性等を付与する工夫が施されるのが一般的であるが、その品質を左右する一要素として香りが挙げられるシャンプーや洗剤等をパウチに収容した製品の場合には、製品の陳列状態等において、内容物に含まれる香成分を外部に放出し、消費者の購買意欲を喚起したいという要望がある。
【0004】
そして、内容物に含まれる香成分を外部に放出するための工夫としては、特許文献1に開示されるように、内容物を収容する容器に容器の内外を貫通する発香孔を設けることで、内容物に含まれる香成分が外部に放出されるようにしたものや、特許文献2に開示されるように、容器に形成された窓部を開くことで、容器に密閉された香水部を外部に露出させて内容物に含まれる香成分が外部に放出されるようにしたもの、等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-231846号公報
【文献】特許第5667461号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示される容器では、内容物に含まれる香成分を外部に放出するための発香孔が、容器の内外に貫通して形成されているため、内容物がシャンプーや洗剤等の液体である場合には、内容物が外部に漏出してしまうために使用することができず、また、容器内に外部の酸素等が侵入してしまうため、内容物の品質が劣化してしまう恐れがあるという問題があった。
【0007】
また、同様に、特許文献2に開示される容器においても、内容物がシャンプーや洗剤等の液体である場合には、容器に形成された窓部を開けると、内容物が外部に漏出してしまうために使用することができず、また、容器内に外部の酸素等が侵入してしまうため、内容物の品質が劣化してしまう恐れがあるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、内容物の外部漏出や品質の劣化を回避しつつ、パウチを開封することなく、内容物に含まれる香成分を外部に放出することが可能な内容液入りパウチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内容液入りパウチは、フィルムを熱接着した外周シール部を形成することにより袋状に形成され、前記外周シール部よりも内側の収容部に内容液を収容するパウチと、前記収容部に収容された内容液とを備える内容液入りパウチであって、
前記フィルムは、厚み方向に積層された複数層から構成され、
前記内容液が収容される前記収容部が、フィルムの最内層で囲まれて形成されており、
前記フィルムの少なくとも一側には、前記収容部に対応する位置に、香成分放出部が形成され、
前記香成分放出部は、前記フィルムの厚み方向における一部範囲に形成された材料除去部の集合から構成され、
前記香成分放出部は、前記フィルムの外面から前記フィルムを構成する複数層における最内層以外の層を厚み方向に貫通し、前記最内層を貫通しないように形成され、
前記香成分放出部を含む香成分放出エリアにおける、前記香成分放出部のパウチ平面方向における面積の割合が2~60面積%であり、
前記香成分放出部を含む香成分放出エリアにおける、前記香成分放出部のパウチ平面方向における面積の割合は、縦30mm×横30mmの正方形の任意の仮想領域を、前記材料除去部を含むよう想定し、この仮想領域における前記香成分放出部の面積の割合を算出した場合の最大値であり、
前記パウチは、スタンディングパウチとして構成され、
前記香成分放出部の少なくとも一部は、未開封状態の前記パウチを立脚させた状態で、前記内容液の液面よりも下の位置に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明によれば、フィルムの少なくとも一側に、収容部に対応する位置に香成分放出部が形成され、香成分放出部が、フィルムの厚み方向における一部範囲に形成された材料除去部または切り込み状のスコアの少なくとも一方から構成されている。このように、パウチを構成するフィルムを貫通させることなく香成分放出部を形成することで、内容物の外部漏出や、パウチの外部からの酸素等の侵入等に起因した内容物の品質の劣化を回避しつつ、パウチを開封することなく、内容物に含まれる香成分を、香成分放出部のフィルムを透過させて外部に放出させることができる。
【0011】
本発明によれば、香成分放出部が、フィルムの内面または外面の少なくとも一方からフィルムの厚み方向の途中まで形成された溝状の材料除去部またはスコアの少なくとも一方によって構成されていることにより、複雑な加工や工程を必要とすることなく、溝状の材料除去部またはスコアを形成することが可能であるため、製造負担の増加を回避することができる。
本発明によれば、香成分放出部を構成する材料除去部のパウチ平面方向における総面積が、30~400mmで設定されていることにより、香成分を過剰に放出して内容物内の香成分の残量が足りなくなること回避しつつ、内容物の香りをパウチの外部から確認可能な程度に、香成分を安定して放出することができる。
また香成分放出部が、フィルムの内面からフィルムの厚み方向の途中まで形成された溝状の材料除去部から構成されていることにより、フィルムの内面に形成された溝状の材料除去部内に、香成分を含む内容物を保持することが可能であるため、パウチが置かれた姿勢等に応じて、香成分放出部の近傍に内容物が位置しない状態になった場合であっても、香成分放出部から香成分を安定して放出することができる。
またフィルムの内面に形成された溝状の材料除去部の周縁に、周縁突出部が形成されていることにより、溝状の材料除去部内に保持される内容物の量を増やすことが可能であるため、香成分放出部から香成分を安定して放出することができる。また、レーザー照射によってフィルムの内面に溝状の材料除去部を形成することで、レーザー照射時の熱によって溝状の材料除去部および周縁突出部をまとめて形成することが可能であるため、製造負担の増加を回避することができる。
また、フィルムの外面に形成された溝状の材料除去部の周縁に、周縁突出部が形成されていることにより、周縁突出部によって溝状の材料除去部内に、外部の粉塵や水分等が入り込むことを抑制できるため、外部の粉塵や水分によって溝状の材料除去部が詰まることを回避でき、香成分を安定して放出することができ、また、消費者がフィルムの外面を触ることによって香成分放出部の存在や位置を知覚することができる。また、レーザー照射によってフィルムの外面に溝状の材料除去部を形成することで、レーザー照射時の熱によって溝状の材料除去部および周縁突出部をまとめて形成することが可能であるため、製造負担の増加を回避することができる。
また、フィルムを構成する複数層には、香成分の透過を抑制する香成分バリア層が含まれ、香成分バリア層の少なくとも一部には、材料除去部またはスコアの少なくとも一方が形成されていることにより、香成分の透過を抑制する保香性が高い香成分バリア層に材料除去部またはスコアが形成されるので、内容物の保存性を確保しながら香成分を放出することができる。
また、香成分バリア層が無機酸化物または金属の蒸着層を含むものであることにより、確実に香成分の透過を抑制する保香性が高い香成分バリア層に材料除去部またはスコアが形成されるので、内容物の保存性を確保しながら香成分を放出することができる。
また、材料除去部またはスコアが、香成分バリア層を厚み方向に貫通するように形成されていることにより、香成分の透過を抑制する保香性が高い香成分バリア層に材料除去部またはスコアが厚み方向に貫通して形成されるので、内容物の保存性を確保しながら香成分を確実に放出することができる。
また、フィルムを構成する複数層には、他の合成樹脂層よりもガラス転移点が高い合成樹脂から成る第1合成樹脂層が含まれ、第1合成樹脂層の少なくとも一部には、材料除去部またはスコアの少なくとも一方が形成されていることにより、ガラス転移点が高く保香性が高い第1合成樹脂層に材料除去部またはスコアを形成することで、香成分を安定して放出することができる。
また、フィルムを構成する複数層には金属層が含まれ、材料除去部またはスコアが、金属層を厚み方向に貫通するように形成されていることにより、保香性が高い金属層に材料除去部またはスコアを形成することで、香成分を安定して放出することができる。
また、材料除去部またはスコアが、フィルムを構成する複数層における最内層以外の層を厚み方向に貫通するように形成されていることにより、香成分を含む内容物と外部とを隔てる層が最内層のみとなるので、確実に香成分を放出することができる。
また、香成分放出部が、パウチを平面視した場合に、パウチ平面方向に線状に延びる材料除去部または切り込み状のスコアの少なくとも一方の集合から構成されていることにより、香成分放出部のパウチ平面方向における総面積の増加を抑えつつも、広範囲に亘って香成分を分散して放出することができる。
また、香成分放出部が、フィルムの外面からフィルムの厚み方向の途中まで形成された溝状の材料除去部またはスコアの少なくとも一方から構成され、フィルムに形成された印刷部に対してパウチ平面方向に位置合わせして形成されていることにより、香成分放出部を構成する材料除去部またはスコアを、フィルムの外面の意匠の一部として利用することができる。
また、香成分放出部が、フィルムの外面からフィルムの厚み方向の途中まで形成された溝状の材料除去部またはスコアの少なくとも一方から構成され、フィルムに形成されたエンボス加工部に対してパウチ平面方向に位置合わせして形成されていることにより、香成分放出部の意匠性を高めることができると共に香成分放出部の位置の視認性が向上され、また、最内層同士の貼り付きを抑制することができるので香成分放出部からの香成分の放出が阻害されることが抑制されて確実に香成分を外部に放出することができる。
また、香成分放出部の少なくとも一部が、未開封状態のパウチを立脚させた状態で、内容液の液面よりも下の位置に形成されていることにより、香成分放出部を通して内容液に含まれる香成分が放出され易くなるため、香成分を安定して放出することができる。
また、香成分放出部が、未開封状態のパウチを立脚させた状態で、内容液の液面を跨ぐ位置に形成されていることにより、液圧に起因したフィルムの破断を回避しつつ、香成分を安定して放出することができる。すなわち、フィルムに対して強い液圧がかかるパウチの下側位置を避けつつ、材料除去部またはスコアが内容液に浸かる位置に、香成分放出部を形成することにより、液圧に起因したフィルムの破断を回避しつつ、香成分を安定して放出することができる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す説明図。
図2】パウチを構成するフィルムの構成を示す説明図。
図3】パウチを構成するフィルムの他の構成を示す説明図。
図4】香成分放出部の形状の他の例を示す説明図。
図5】香成分放出部の形状のさらに他の例を示す説明図。
図6】香成分放出部の図柄の例を示す説明図。
図7】香成分放出部の図柄の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係るパウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0014】
パウチ10は、図1に示すように、表裏のフィルム11を熱接着した外周シール部20を形成することにより袋状に形成され、外周シール部20よりも内側の収容部30に内容液を収容するものである。
【0015】
表裏のフィルム11の一方には、図1に示すように、収容部30に対応する位置(すなわち、外周シール部20より内側において表裏のフィルム11が熱接着されていない位置)に、内容液に含まれる香成分をパウチ10の外部に放出するための香成分放出部40が形成されている。
【0016】
香成分放出部40は、図1に示すように、フィルム11の厚み方向における一部範囲(すなわち、フィルム11を厚み方向に貫通しない範囲)に形成された材料除去部41または切り込み状のスコアの少なくとも一方から構成され、本実施形態では、フィルム11の外面(すなわち、パウチ10の外側に面する表面)からフィルム11の厚み方向の途中まで形成された溝状の材料除去部41から構成されている。
【0017】
このように、材料除去部41(またはスコア)をフィルム11に形成することにより、内容液の外部への漏出を阻止しつつも、内容液の香成分を、薄くなったフィルム11の一部分(本実施形態では、ポリエチレン層11d)を透過させて、パウチ10の外部に放出することができる。
【0018】
また、フィルム11の外面に形成された溝状の材料除去部41の周縁には、図2に示すように、フィルム11の外面よりも外側に盛り上がった周縁突出部42が形成されている。この周縁突出部42は、レーザー照射によってフィルム11の外面に材料除去部41を形成した時に、レーザー照射時の熱によって材料除去部41の周縁に形成されるものである。
【0019】
また、フィルム11は、図2に示すように、厚み方向に積層された複数層から構成され、このフィルム11を構成する複数層には、香成分の透過を抑制する香成分バリア層が含まれている。本実施形態では、外面側から順に、PET(ポリエチレンテレフタラート)層11a、アルミ蒸着層11b、ナイロン層11c、ポリエチレン層11dが形成されている。
【0020】
香成分バリア層は、アルミ箔や金属の蒸着層、ポリエステルフィルムやポリアミドフィルムに無機蒸着層を設けた無機蒸着フィルムよりなるものとすることができる。無機蒸着層としては、酸化アルミニウム等の金属酸化物の蒸着層やケイ素酸化物等の無機酸化物の蒸着層を例示することができる。また、ポリカルボン酸系ポリマー、塩化ビニリデン、あるいはエチレンビニルアルコール共重合体からなるバリア性樹脂コーティング剤を含む塗膜層よりなるものであってもよい。
【0021】
材料除去部41は、図2に示すように、フィルム11を構成する他の合成樹脂層よりもガラス転移点が高い合成樹脂から成る第1合成樹脂層の少なくとも一部に形成され、厚み方向に貫通するように形成されていてもよい。本実施形態では、材料除去部41がPET層11aの厚み方向の全てに形成され、更に具体的には、フィルム11の厚み方向にナイロン層11cおよびアルミ蒸着層11bを貫通するように形成されている。この図2の例のように、材料除去部41は、フィルム11を構成する複数層における最内層(ポリエチレン層11d)以外の層(PET層11a、アルミ蒸着層11b、ナイロン層11c)を厚み方向に貫通するように形成される構成とすることができる。
【0022】
また、材料除去部41は、フィルム11を構成する複数層に含まれる金属層を厚み方向に貫通するように形成され、本実施形態では、図2に示すように、香成分バリア層(金属層)であるアルミ蒸着層11bを厚み方向に貫通するように形成されている。
図3は、フィルム11の他の構成を示すものであり、外面側から順に、ナイロン層11c、アルミ箔層11e、ポリエチレン層11dから形成されている。この構成の場合には材料除去部41は、香成分バリア層(金属層)であるアルミ箔層11eに当該アルミ箔層11eを貫通するように形成される。
【0023】
また、香成分放出部40は、図1に示すように、パウチ10を平面視した場合に、パウチ平面方向に線状に延びる複数の材料除去部41の集合から構成されている。
さらに香成分放出部40は、円形に形成された複数の材料除去部41の集合から構成されていてもよい。
【0024】
また、材料除去部41のパウチ平面方向における総面積(すなわち、パウチ10を平面視した場合の材料除去部41の総面積)は、30~400mmで設定されている。
【0025】
また、香成分放出部40(材料除去部41)を含む香成分放出エリアにおける、香成分放出部40のパウチ平面方向における面積の割合(材料除去部41の密集度)は、2~60面積%、好ましくは10~40面積%とされる。材料除去部41の密集度が高いほど香成分の放出の程度が高く、材料除去部41の密集度が2~60面積%であることにより、過度の香成分の放出や外部雰囲気の収容部30内への流入が抑止されて内容物の品質劣化等が防止されながら、確実にユーザーに香成分を認識させることができる。
香成分放出エリアとは、香成分放出部40およびその近傍を含む領域を言う。
また、香成分放出エリアにおける材料除去部41のパウチ平面方向における面積の割合は、以下のように算出されるものである。すなわち、縦30mm×横30mmの正方形の任意の仮想領域を、香成分放出エリアにおいて材料除去部41を含むよう想定し、この仮想領域における材料除去部41の面積の割合を算出し、その最大値を香成分放出エリアにおける材料除去部41の密集度とする。
【0026】
フィルム11には、文字や模様等を印刷された印刷部(図示しない)が形成されており、香成分放出部40は、当該印刷部に対してパウチ平面方向に位置合わせして形成されている。
また、フィルム11には、エンボス加工が施されたエンボス加工部(図示しない)が形成されており、香成分放出部40は、当該エンボス加工部に対してパウチ平面方向に位置合わせして形成されている。
【0027】
また、本実施形態では、パウチ10は、図1に示すように、自立可能なスタンディングパウチとして構成され、香成分放出部40は、収容部30内に内容液を収容した未開封状態のパウチ10を立脚させた状態で、表裏のフィルムの少なくとも一方に内容液の液面Lを跨ぐ位置に形成されている。
さらに前記スタンディングパウチとして構成した場合、香成分放出部40は、底材フィルムに形成してもよい。
【0028】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0029】
<実験例:材料除去部の面積の大きさの違い>
ポリエチレン層(内層)、ナイロン層、酸化アルミニウム蒸着層およびPET層がこの順に積層されたフィルムを2枚用意し、その1枚に対し、レーザー加工によって、材料除去部の形状が図4(m)に示すような長方形で、総面積がそれぞれ20mm、30mm、50mm、100mm、400mm、600mm、1000mmとなるよう、ポリエチレン層(内層)を除去せずにナイロン層、酸化アルミニウム蒸着層およびPET層を厚み方向に全て貫通するよう除去した材料除去部含有フィルムを作製した。この材料除去部含有フィルムと材料除去部を設けなかったフィルムとを、ポリエチレン層(内層)同士が対向するよう積層し、材料除去部の全ての領域が収容部に含まれるように三辺をヒートシールし、香成分を含有する柔軟剤を充填した後、残る一辺をヒートシールして液封し、パウチを作製した。これらをそれぞれパウチ〔1〕~〔7〕とする。
【0030】
上記のパウチ〔1〕~〔7〕について、下記の香りの識別試験および、周辺雰囲気への香りの放出度合い試験を行った。結果を表1に示す。
〔香りの識別試験〕
試験者が、パウチの材料除去領域と鼻との距離が50mmの状態において香りを確認できるかどうかを試験した。
-評価基準-
○:香りを感じる
×:香りを感じない
〔周辺雰囲気への香りの放出度合い試験〕
72Lの恒温槽内にパウチを常温環境で24時間、蓋をした状態で保管し、蓋を開けたときに試験者に恒温槽の中の香りが感じられるかどうかを試験した。
-評価基準-
○:香りを感じない
×:香りを感じる
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、材料除去部の総面積が30mm以上400mm以下であることにより、香りを識別することができながら、密閉環境で保管したときにも香り成分の過度な放出が抑制されることが確認された。
【0033】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。また、上記の実施形態の構成および下記に記載する各変形例の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、フィルム11の構造が、外面側から順に、PET層11a、アルミ蒸着層11b、ナイロン層11c、ポリエチレン層11dが形成されているものとして説明したが、フィルム11の構造の具体的構造は、外面側から順に、ナイロン層11cおよびポリエチレン層11dが形成されている等、如何なるものでもよい。
上記以外のフィルム11の構成として、外面側から順に、PET層/アルミ箔層/ナイロン層/直鎖状低密度ポリエチレン層、PET層/ナイロン層/アルミ箔層/直鎖状低密度ポリエチレン層、ナイロン層/アルミ箔層/直鎖状低密度ポリエチレン層、PET層/アルミ蒸着PET層/直鎖状低密度ポリエチレン層、ナイロン層/アルミ蒸着PET層/直鎖状低密度ポリエチレン層、酸化アルミニウム蒸着PET層/直鎖状低密度ポリエチレン層、酸化硅素蒸着PET層/直鎖状低密度ポリエチレン層、酸化アルミニウム蒸着PET層/ナイロン層/直鎖状低密度ポリエチレン層、酸化硅素蒸着PET層/ナイロン層/直鎖状低密度ポリエチレン層、等が挙げられる。ヒートシールされる層である最も内面側の最内層としては、前記のもの以外にポリプロピレン層を用いることができる。
また、上述した実施形態では、パウチ10の収容部30に収容される内容物が、シャンプー、リンス、コンディショナー、洗剤、柔軟剤等の液体であるものとして説明したが、パウチ10の内容物の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、固体および液体が混ざった流動体や、固体であってもよい。また、パウチ10の収容部30に収容される内容物は、上述のような非食品に限定されず、コーヒー豆、紅茶の茶葉、カレーなどの食品などであってもよい。さらに、パウチ10の収容部30に収容される内容物は、液体コーヒー等の飲料であってもよい。
また、上述した実施形態では、パウチ10は、スタンディングパウチタイプであるものとして説明したが、パウチ10の具体的態様としては、ピロータイプのパウチ、ガセットタイプのパウチ、サシェを含む平パウチ、角底パウチ、ジッパー付きパウチ等、様々な形態を採用することができる。
また、上述した実施形態では、表裏のフィルム11のうち一方のみに香成分放出部40が形成されているものとして説明したが、表裏のフィルム11の両方に香成分放出部40を形成してもよい。
また、上述した実施形態では、香成分放出部40が、フィルム11の一部を除去して成る材料除去部41から構成されているものとして説明したが、フィルム11の一部を除去しない切り込み状のスリットから香成分放出部40を構成してもよく、また、材料除去部41およびスリットから香成分放出部40を構成してもよい。
また、上述した実施形態では、香成分放出部40を構成する材料除去部41(またはスリット)がフィルム11の外面に形成されているものとして説明したが、香成分放出部40を構成する材料除去部41(またはスコア)の形成位置は、上記に限定されず、フィルム11の外面、フィルム11の内面(すなわち、収容部30側に面する表面)、フィルム11の内部(すなわち、内面および外面よりも厚み方向の内側の部分)の少なくとも1つに、香成分放出部40を構成する材料除去部41(またはスコア)を形成すればよい。
また、上述した実施形態では、香成分放出部40が未開封状態のパウチ10を立脚させた状態で、内容液の液面Lを跨ぐ位置に形成されているものとして説明したが、香成分放出部40の全体を内容液の液面Lよりも上の位置に形成してもよく、また、香成分放出部40の全体を内容液の液面Lよりも下の位置に形成してもよい。特に、ユーザーからの視認性を高める観点から、パウチ10を立脚させた状態の最上部の位置に形成してもよい。また、パウチが上面を有する形態のパウチである場合には、パウチの上面に形成してもよい。
また、上述した実施形態では、香成分放出部40の全体が、収容部30に対応する位置に形成されているものとして説明したが、香成分放出部40の一部を外周シール部20に対応する位置に形成してもよい。
また、上述した実施形態では、材料除去部41の加工方法として、レーザー照射を用いるものとして説明したが、材料除去部41やスコアの加工方法は上記に限定されず、例えば、刃物等の治具を利用したハーフカット加工、切削加工や研削加工等によって、材料除去部41やスコアを形成してもよい。また、パウチ10における材料除去部41やスコアの加工方法は、フィルム11が複数層より構成される場合には、フィルム11に対してレーザー加工等を行う方法に限定されず、フィルム11となるよう各層が貼り合わされる前の、香成分バリア層のみまたは香成分バリア層を含む材料層に対してレーザー照射によるレーザー加工や刃物によるカット加工を行い、その後、所定の材料層(例えば最内層)を貼り合わせることにより、フィルム11を形成し、これにより、材料除去部41やスコアを形成してもよい。
なお、レーザー照射によってフィルム11の内面に材料除去部41を形成した場合には、図2に示す周縁突出部42と同様に、材料除去部41の周縁に周縁突出部が形成される。
【0035】
また、上述した実施形態では、香成分放出部40が、パウチ平面方向に線状に延びる複数の材料除去部41の集合から構成されているとして説明したが、香成分放出部40の具体的態様は上記に限定されず、例えば、パウチ平面方向に線状に伸びるもの、面状に形成されたもの、ドット状のもの、鎖線状や破線状のものなどや、これらを組み合わせた集合体から香成分放出部40を構成してもよい。落下破袋に対する耐性が高い観点から、香成分放出部40としては、連続した線状のものから構成されているよりも、ドットや破線などの不連続な形状のものから構成されていることが好ましい。図4(a)~(f)に、香成分放出部40が線状に伸びる1本の材料除去部41から構成された例を示す。また、図4(g)~(m)に、香成分放出部40が面状に形成された材料除去部41から構成された例を示す。また、図5(a)に、香成分放出部40が破線状の材料除去部41の集合から構成された例を示す。また、図5(b)に、香成分放出部40がドット状の材料除去部41と線状に伸びる1本の材料除去部41とから構成された例を示す。また、図5(c)および(d)に、香成分放出部40が複数の線状の材料除去部41の集合から構成された他の例を示す。また、香成分放出部40は、図6(a)~(c)に示すように、材料除去部41を有意の文字や数字、記号となる形状として構成してもよく、図7に示すように、材料除去部41を意匠性を有する図柄となる形状として構成してもよい。なお、図4図7においては、黒塗りの領域が材料除去部41である。
また、内容物の香りの強さに応じて、香成分放出部40を構成する材料除去部41やスコアの、加工の形状、加工位置、面積を変えて香りの出方を調整できる。
【符号の説明】
【0036】
10 ・・・ パウチ
11 ・・・ フィルム
11a ・・・ PET層(第1合成樹脂層)
11b ・・・ アルミ蒸着層(金属層)
11c ・・・ ナイロン層
11d ・・・ ポリエチレン層
11e ・・・ アルミ箔層(金属層)
20 ・・・ 外周シール部
30 ・・・ 収容部
40 ・・・ 香成分放出部
41 ・・・ 材料除去部
42 ・・・ 周縁突出部



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7