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特許7393211フルオレン含有共重合体、硬化物ならびにそれらの原料およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】フルオレン含有共重合体、硬化物ならびにそれらの原料およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 222/40 20060101AFI20231129BHJP
   C08F 216/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08F222/40
C08F216/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020002680
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2020111744
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019003725
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】関田 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】三ノ上 渓子
(72)【発明者】
【氏名】安田 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-243606(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104295(WO,A1)
【文献】特開2004-224886(JP,A)
【文献】特開2017-137492(JP,A)
【文献】特開2016-069411(JP,A)
【文献】特開平07-238123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 222/40
C08F 216/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー単位として、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマーと、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーとを含み、かつ前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの少なくとも一方が、フルオレン骨格を有するモノマーを含む、フルオレン含有共重合体であって、
前記アリルエーテルモノマーが、下記式(1a)
【化1】
(式中、環Z およびZ は同一のまたは互いに異なるアレーン環を示し、R は置換基を示し、R およびR は同一のまたは互いに異なる置換基を示し、kは0~8の整数を示し、pおよびqは同一または互いに異なって0~4の整数を示し、A およびA は同一のまたは互いに異なるアルキレン基を示し、mおよびnは同一または互いに異なって0以上の整数を示す)
で表されるモノマーを含み、
前記マレイミドモノマーが、下記式(2)
【化2】
(式中、Z は芳香環を含む2価の有機基を示す)
で表されるモノマーを含む、フルオレン含有共重合体
【請求項2】
前記式(1a)のnが3以下である、請求項記載のフルオレン含有共重合体。
【請求項3】
前記アリルエーテルモノマーと前記マレイミドモノマーとのモル比が、前者/後者=90/10~10/90である、請求項1または2記載のフルオレン含有共重合体。
【請求項4】
前記請求項1記載のアリルエーテルモノマーと前記請求項1記載のマレイミドモノマーとをラジカル重合開始剤の存在下で重合させる、請求項1~のいずれかに記載のフルオレン含有共重合体の製造方法。
【請求項5】
加熱下で重合する、請求項記載の製造方法。
【請求項6】
2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマー、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマー、ラジカル重合開始剤および熱硬化性エポキシ樹脂を含み、かつ前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの少なくとも一方が、フルオレン骨格を有するモノマーを含む、硬化性組成物であって、
前記アリルエーテルモノマーが、前記請求項1に記載の式(1a)で表されるモノマーを含み、前記マレイミドモノマーが、前記請求項1に記載の式(2)で表されるモノマーを含む、硬化性組成物
【請求項7】
求項記載の硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリルエーテルモノマーとマレイミドモノマーとを原料とする、フルオレン骨格を有する新規な共重合体、前記共重合体を含む硬化性組成物、および前記共重合体を得るために有用な、フルオレン骨格を有するマレイミド誘導体、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気機器に用いられるプリント配線板用の積層板においては、電子機器の進歩に伴い、信号伝達速度の向上を目的として、低誘電特性を有する材料が要求されている。また、はんだ付のリフロー処理などの高熱処理に耐え得る、より高い耐熱性も求められている。
【0003】
従来、このような用途には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。また、近年では、信号伝搬遅延や伝送損失が小さく、配線板の低誘電率化、低誘電正接化が可能な材料として、ビフェニル骨格を有するポリマレイミド樹脂および不飽和二重結合基含有化合物を含むマレイミド樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-137492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エポキシ樹脂を用いた場合、ポリマーネットワーク内に水酸基を含み、分子内の分極が起きるため、信号伝搬遅延や伝送損失が大きくなる。そのため、近年の配線板に求められる要求に応えることはできない。
【0006】
また、例えば、次世代(第5世代)の移動通信システム(5G)用途の半導体電子材料には、より一層高度な低誘電特性が求められているが、特許文献1に開示のマレイミド樹脂組成物であっても、5G用途として十分な低誘電特性を実現できない。
【0007】
従って、本発明の目的は、低誘電特性および高耐熱性を有する新規な樹脂と、その原料およびそれを用いた硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、モノマー単位として、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマーと、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーとを含む共重合体において、前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーのうち、少なくとも一方にフルオレン骨格を導入することにより、低誘電特性および高耐熱性を有する新規な共重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のフルオレン含有共重合体は、モノマー単位として、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマーと、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーとを含み、かつ前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの少なくとも一方がフルオレン骨格を有するモノマーを含む。前記アリルエーテルモノマーは、下記式(1)で表されるモノマーを含み、前記マレイミドモノマーは、下記式(2)で表されるモノマーを含み、かつ前記式(1)のZおよび/または前記式(2)のZで表される二価の有機基はフルオレン骨格を有する二価の有機基であってもよい。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Zは芳香環を含む2価の有機基を示し、AおよびAは同一のまたは互いに異なるアルキレン基を示し、mおよびnは同一または互いに異なって0以上の整数を示す)。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Zは芳香環を含む2価の有機基を示す)
【0014】
前記アリルエーテルモノマーは、下記式(1a)で表されるモノマーを含んでいてもよい。
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、環ZおよびZは同一のまたは互いに異なるアレーン環を示し、Rは置換基を示し、RおよびRは同一のまたは互いに異なる置換基を示し、kは0~8の整数を示し、pおよびqは同一または互いに異なって0~4の整数を示し、AおよびAは同一のまたは互いに異なるアルキレン基を示し、mおよびnは同一または互いに異なって0以上の整数を示す)。
【0017】
前記式(1a)において、mおよびnは3以下であってもよい。
【0018】
また、前記マレイミドモノマーは、下記式(2a)で表されるモノマーを含んでいてもよい。
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、XおよびXは同一のまたは互いに異なる2価の炭化水素基を示し、Rは置換基を示し、sは0~8の整数を示す)
【0021】
前記アリルエーテルモノマーと前記マレイミドモノマーとのモル比は、前者/後者=90/10~10/90であってもよい。
【0022】
本発明には、前記アリルエーテルモノマーと前記マレイミドモノマーとをラジカル重合開始剤の存在下で重合させる前記フルオレン含有共重合体の製造方法も含まれる。この方法では、重合時にさらに熱を加えてもよい。
【0023】
本発明には、前記アリルエーテルモノマー、前記マレイミドモノマー、ラジカル重合開始剤および熱硬化性エポキシ樹脂を含み、かつ前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの少なくとも一方が、フルオレン骨格を有するモノマーを含む硬化性組成物も含まれる。また、本発明には、この硬化性組成物の硬化物であって、前記フルオレン含有共重合体を含む硬化物も含まれる。
【0024】
前記式(2a)で表されるモノマーには、下記式(2b)で表されるビスマレイミド化合物も含まれる。
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、AおよびAは同一のまたは互いに異なるアルキレン基を示し、Rは置換基を示し、sは0~8の整数を示す)。
【0027】
本発明には、フルオレン骨格を有するジアミンと無水マレイン酸とを反応させる前記ビスマレイミド化合物の製造方法も含まれる。
【0028】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【発明の効果】
【0029】
本発明により提供される、アリルエーテルモノマーとマレイミドモノマーとの共重合体によれば、誘電特性が低く、かつ耐熱性が高い樹脂を得ることができる。さらに、この共重合体は重合前の流動性が高く、取扱い性に優れていることから、樹脂製造時の成形性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[フルオレン含有共重合体]
本発明のフルオレン含有共重合体(フルオレン骨格含有共重合体)は、モノマー単位として、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマーと、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーとを含み、かつ前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの少なくとも一方が、フルオレン骨格を有するモノマーを含む。本発明によれば、前記アリルエーテルモノマーと前記マレイミドモノマーとを共重合させるだけでなく、さらにこの共重合体のモノマー単位中に、高炭素密度で剛直な構造のフルオレン骨格を含めることで、当該共重合体から得られる硬化物の誘電特性を著しく低減させることができ(より具体的には、従来のエポキシ樹脂やポリマレイミド樹脂に比べて誘電率および誘電正接がより一層低減させることができ)、かつ、硬化物の耐熱性をより一層優れたものとすることができる。
【0031】
(アリルエーテルモノマー)
本発明において、前記アリルエーテルモノマーは、分子内に2つ以上のアリルオキシ基を有するモノマー分子である。アリルエーテルモノマーの主骨格はアルキレン鎖などの脂肪族炭化水素骨格などであってもよいが、低誘電特性に優れた樹脂を得るという観点から、芳香環を含むモノマー、とりわけフルオレン骨格を有するモノマーが好ましい。このようなアリルエーテルモノマーとしては、例えば、前記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。前記式(1)で表されるモノマーは、式(1)のZで表される主骨格に芳香環を含む2価の有機基を含むモノマーであることから、樹脂の低誘電特性を向上させることができる。
【0032】
の芳香環を含む2価の有機基としては、アリーレン基、ビスフェノール残基、フルオレン骨格を有する2価の炭化水素基、これらの有機基を含む基などが挙げられる。
【0033】
アリーレン基としては、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基などのフェニレン基、1,5-ナフチレン基や2,6-ナフチレン基などのナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基などのビフェニレン基、ビナフチレン基、ターフェニレン基、フェニルナフタレン-ジイル基などが挙げられる。これらのアリーレン基は、メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。
【0034】
ビスフェノール残基(ビスフェノール類からヒドロキシル基を除いた残基)としては、ビスフェノールF残基(ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基)、ビスフェノールA残基(ジフェニルプロパン-4,4’-ジイル基)、ビスフェノールB残基、ビスフェノールC残基、ビスフェノールAD残基、ビスフェノールG残基、ビスフェノールAP残基、ビスフェノールBP残基、ビスフェノールS残基などが挙げられる。これらのビスフェノール残基は、メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。
【0035】
フルオレン骨格を有する2価の炭化水素基としては、2,7-フルオレン-ジイル基、9,9-ビスアルキルフルオレン骨格を有する2価の炭化水素基、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する2価の炭化水素基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。
【0036】
これらの有機基を含む基としては、前記アリーレン基とアルキレン基とを組み合わせた基、連結基を介して複数の前記アリーレン基を組み合わせた基、連結基を介して前記ビスフェノール残基と前記アリーレン基とを組み合わせた基などが挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチリデン基、エチレン基、イソプロピリデン基などのC1-4アルキレン基などが挙げられる。連結基としては、前記アルキレン基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(スルフィド基)、スルホニル基などが挙げられる。これらのアリーレン基も、メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。
【0037】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、アルキレン基はアルキリデン基を含む意味で用いる。
【0038】
これらの芳香環を含む2価の有機基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、フルオレン骨格を有する2価の炭化水素基が好ましく、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する2価の炭化水素基が特に好ましい。
【0039】
オキシアルキレン基を構成するAおよびAとしては、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのアルキレン基のうち、直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレン基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0040】
オキシアルキレン基(OA)および(OA)の繰り返し数(付加モル数)mおよびnは、それぞれ0または1以上の整数であればよく、例えば0~10の範囲から選択でき、低誘電特性を向上できる点から、3以下であってもよく、好ましくは0~2、さらに好ましくは0~1、最も好ましくは0である。
【0041】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様であってもよい。繰り返し数nが大きすぎると、低誘電特性が低下する虞がある。また、2つの繰り返し数mおよびnは、それぞれ同一または異なっていてもよい。mが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA)は、同一または異なっていてもよい。nについても同様である。また、オキシアルキレン基(OA)とオキシアルキレン基(OA)とも、互いに同一または異なっていてもよい。
【0042】
また、本明細書および特許請求の範囲において、前記平均値は、慣用の方法により測定でき、測定方法は特に限定されないが、例えば、式(1)で表されるフルオレン化合物の合成時において、原料となる化合物の量と、消費されたアルキレンオキシドの量との割合から、相加平均または算術平均の値として、容易に得ることができる。
【0043】
前記アリルエーテルモノマーがフルオレン骨格を有するモノマーを含む場合、フルオレン骨格を有するモノマーとしては、前記式(1)のZが9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する2価の炭化水素基であるモノマーが好ましく、前記式(1a)で表されるモノマーが特に好ましい。
【0044】
前記式(1a)において、AおよびA、mおよびnについては、好ましい態様も含めて、前記式(1)のAおよびA、mおよびnと同一である。
【0045】
環ZおよびZで表されるアレーン環には、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環が含まれる。単環式アレーン環および多環式アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0047】
縮合多環式アレーン環には、縮合二環式アレーン環、縮合二ないし四環式アレーン環が含まれる。前記縮合二環式アレーン環としては、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが例示できる。前記縮合三環式アレーンとしては、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。これらの縮合多環式アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ナフタレン環、アントラセン環が好ましく、ナフタレン環が特に好ましい。
【0048】
環集合アレーン環には、ビアレーン環、テルアレーン環などが含まれる。前記ビアレーン環としては、ビフェニル環、ビナフチル環、1-フェニルナフタレン環や2-フェニルナフタレン環などのフェニルナフタレン環などのビC6-12アレーン環などが挙げられる。テルアレーン環としては、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環などが挙げられる。これらの環集合アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ビC6-10アレーン環が好ましく、ビフェニル環が特に好ましい。
【0049】
フルオレンの9位に置換する環Zと環Zとは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zおよび環Zとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環がさらに好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0050】
なお、フルオレンの9位に置換する環Zおよび環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zおよび環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zおよび環Zに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。
【0051】
アリル基含有基[-O-(AO)-CH-CH=CHおよび-O-(AO)-CH-CH=CH]は、環Zおよび環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zおよび環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2,3,4位、好ましくは3位および/または4位、さらに好ましくは4位に置換している場合が多く、環Zおよび環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5~8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係であってもよく、2,6位の関係でアリル基含有基が置換している場合が多い。また、環集合アレーン環Zおよび環集合アレーン環Zにおいて、アリル基含有基の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に結合したアレーン環および/またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zおよびビフェニル環Zの3位または4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環Zおよびビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、アリル基含有基の置換位置は、2,4,5,6,2’,3’,4’位のいずれであってもよく、好ましくは6位に置換していてもよい。
【0052】
前記式(1a)において、置換基Rおよび置換基Rは重合反応に不活性な非反応性基であってもよい。置換基Rおよび置換基Rとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基などのシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;シクロへキシルオキシ基などのシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;メチルチオ基などのアルキルチオ基;シクロへキシルチオ基などのシクロアルキルチオ基;チオフェノキシ基などのアリールチオ基;ベンジルチオ基などのアラルキルチオ基;アセチル基などのアシル基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基などの置換アミノ基などが挙げられる。これらの置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
これらのうち、置換基Rおよび置換基Rとしては、代表的には、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基が好ましく、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基が特に好ましい。置換基Rと置換基Rとの種類は、同一または異なっていてもよい。また、置換基Rおよび置換基Rが、それぞれ複数ある場合、複数の置換基は同一または異なっていてもよい。
【0054】
置換基Rおよび置換基Rの係数pおよびqは、環Zおよび環Zの種類などに応じて適宜選択でき、それぞれ、例えば0~8程度の整数から選択でき、例えば0~4、好ましくは0~3、さらに好ましくは0~2、最も好ましくは0または1である。特に、pおよびqが1である場合、取り扱い性が好ましく、環Zおよび環Zがベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環、置換基Rおよび置換基Rがメチル基であってもよい。環Zおよび環Zがベンゼン環である場合、メチル基は、フェニル基の2,3,4位、好ましくは3位および/または4位、さらに好ましくは3位に置換している場合が多い。
【0055】
置換基Rとしては、シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;カルボキシル基;メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基などが挙げられる。置換基Rは重合反応に不活性な非反応性基であってもよい。これらの置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
これらの置換基Rのうち、カルボキシル基、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ-カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、メチル基などのC1-3アルキル基が特に好ましい。置換数kは0~8の整数から選択でき、例えば0~6、好ましくは0~4、さらに好ましくは0~2、最も好ましくは0である。なお、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一または異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一または異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、フルオレン環の2位ないし7位、例えば2位、3位および/または7位などであってもよい。
【0057】
代表的な前記式(1a)で表されるモノマーとしては、9,9-ビス(4-アリルオキシ-フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アリルオキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アリルオキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-アリルオキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-アリルオキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(アリルオキシアリール)フルオレン;9,9-ビス[4-(2-アリルオキシエトキシ)-フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-アリルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-アリルオキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-アリルオキシエトキシ)-1-ナフチル]、9,9-ビス[6-(2-アリルオキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[(アリルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシ)ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
【0058】
後述する2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーがフルオレン骨格を有するモノマーを含む場合であっても、前記アリルエーテルモノマーはフルオレン骨格を有していてもよい。また、前記アリルエーテルモノマーは、後述する2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーがフルオレン骨格を有しない場合に限り、フルオレン骨格を含むモノマーであってもよい。前記アリルエーテルモノマーと、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーとのいずれか(または双方)にフルオレン骨格を含めるか否かは、共重合体全体におけるフルオレン骨格を有する繰返し単位の含有割合等に応じて適宜設定することができる。
【0059】
フルオレン骨格を有さない代表的なアリルエーテルモノマーとしては、3-アリルオキシフェニルメタン、4-アリルオキシフェニルメタン、2,2-ビス(4-アリルオキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0060】
なかでも、諸特性のバランスに優れる点から、アリルエーテルモノマーがフルオレン骨格を有するモノマーであり、かつ後述する2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーがフルオレン骨格を有さないモノマーである組み合わせが汎用される。
【0061】
なお、前記アリルエーテルモノマーは、慣用の方法により合成でき、例えば、式(1a)で表されるモノマーは、特開2011-225644号公報に記載の方法で合成してもよい。
【0062】
式(1)で表されるモノマーの割合は、アリルエーテルモノマー中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0063】
前記アリルエーテルモノマーがフルオレン骨格を有する化合物を含む場合、前記式(1a)で表されるモノマーは、アリルエーテルモノマー中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0064】
(マレイミドモノマー)
本発明において、マレイミドモノマーは、分子内に2つ以上のマレイミジル基(あるいは、マレイミド環、マレイン酸イミド環)を有するモノマー分子である。マレイミドモノマーの主骨格はアルキレン鎖などの脂肪族炭化水素骨格などであってもよいが、低誘電特性に優れた樹脂を得るという観点から、芳香環を含むモノマー、とりわけフルオレン骨格を有するモノマーが好ましい。このようなマレイミドモノマーとしては、例えば、前記式(2)で表されるモノマーが挙げられる。前記式(2)で表されるモノマーは、式(2)のZで表される主骨格に芳香環を含む2価の炭化水素基を含むモノマー分子であることから、樹脂の低誘電特性を向上させることができる。
【0065】
の芳香環を含む2価の有機基としては、前記式(1)のZの芳香環を含む2価の有機基として例示されたアリーレン基、ビスフェノール残基、フルオレン骨格を有する2価の炭化水素基、これらの有機を含む基などが挙げられる。
【0066】
前記芳香環を含む2価の有機基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。すなわち、マレイミドモノマーは、式(2)で表されるモノマーを単独で含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。前記芳香環を含む2価の有機基のうち、フェニレン基などのアリーレン基、ビスフェノールF残基などのビスフェノール残基、ビスフェノール残基およびアリーレン基を含む有機基、フルオレン骨格を有する2価の炭化水素基が好ましい。
【0067】
前記アリルエーテルモノマーがフルオレン骨格を有するモノマーを含む場合であっても、前記マレイミドモノマーは、フルオレン骨格を有していてもよい。また、前記マレイミドモノマーは、前記アリルエーテルモノマーがフルオレン骨格を有しない場合に限り、フルオレン骨格を含むモノマーであってもよい。前記マレイミドモノマーと、前記アリルエーテルモノマーとのいずれか(または双方)にフルオレン骨格を含めるか否かは、共重合体全体におけるフルオレン骨格を有する繰返し単位の含有割合等に応じて適宜設定することができる。
【0068】
フルオレン骨格を有さない代表的なマレイミドモノマーとしては、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタンなどのビスマレイミドジフェニルC1-4アルカン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’-ビスマレイミドジフェニルスルフォン、4,4’-ビスマレイミドベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどが挙げられる。
【0069】
前記マレイミドモノマーがフルオレン骨格を有するモノマーを含む場合、フルオレン骨格を有するモノマーとしては、前記式(2a)で表されるモノマーが好ましい。
【0070】
前記式(2a)において、XおよびXの2価の炭化水素基としては、アリーレン基、アルキレン基などが挙げられる。
【0071】
アリーレン基としては、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基などのフェニレン基、1,5-ナフチレン基や2,6-ナフチレン基などのナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基などのビフェニレン基、ビナフチレン基、ターフェニレン基、フェニルナフタレン-ジイル基などが挙げられる。これらのアリーレン基は、メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。これらのうち、1,4-フェニレン基などのフェニレン基が好ましい。
【0072】
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、イソプロピリデン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキレン基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基がさらに好ましく、トリメチレン基が最も好ましい。
【0073】
2価の炭化水素基Xと2価の炭化水素基Xとは、互いに同一または異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0074】
なお、XおよびXがアルキレン基である前記式(2b)で表されるモノマーであるビスマレイミド化合物は新規化合物であり、プリント配線板用材料として、低誘電特性と取り扱い性とを両立できる樹脂原料や硬化剤などに有用である。式(2b)においても、アルキレン基AおよびAとしては、直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキレン基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基がさらに好ましく、トリメチレン基が最も好ましい。また、アルキレン基Aとアルキレン基Aとは、互いに同一または異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0075】
前記式(2a)および(2b)において、フルオレン環の置換基Rおよびその置換数sは、好ましい態様も含めて、前記式(1a)における置換基Rおよびその置換数kと同一である。
【0076】
代表的な前記式(2a)で表されるモノマーとしては、9,9-ビス(4-マレイミドフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-マレイミドプロピル)フルオレンなどが挙げられる。
【0077】
なお、前記マレイミドモノマーは、慣用の方法により、フルオレン骨格を有するジアミンと無水マレイン酸とを反応させて合成できる。
【0078】
式(2)で表されるモノマーの割合は、前記マレイミドモノマー中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0079】
前記マレイミドモノマーがフルオレン骨格を有するモノマーを含む場合、前記式(2a)で表されるモノマーは、前記マレイミドモノマー中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0080】
(フルオレン含有共重合体の特性および製造方法)
フルオレン含有共重合体において、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマーと、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマーとのモル比は、前者/後者=99/1~1/99程度の範囲から選択でき、例えば90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70、最も好ましくは60/40~40/60である。前記モル比は仕込み比であってもよい。
【0081】
本発明のフルオレン含有共重合体は、熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、アリルエーテルモノマーおよびマレイミドモノマーの少なくとも一方のモノマーとして2官能のモノマーを用いて製造でき、好ましくはアリルエーテルモノマーおよびマレイミドモノマーのいずれのモノマーも2官能のモノマーを用いて製造できる。
【0082】
フルオレン含有共重合体の重量平均分子量は、GPC(ポリスチレン換算)による測定方法において、例えば1000~20000、好ましくは5000~10000である。分子量が小さすぎると、機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
【0083】
フルオレン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば150~300℃程度の範囲から選択でき、例えば170~250℃、好ましくは180~230℃、さらに好ましくは190~220℃、最も好ましくは200~210℃である。ガラス転移温度Tgが高すぎると、取り扱い性が低下する虞があり、低すぎると耐熱性が低下する虞がある。
【0084】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0085】
本発明のフルオレン含有共重合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、前記アリルエーテルモノマーと前記マレイミドモノマーとを重合させる方法などの製造方法で製造できる。
【0086】
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合に利用される慣用の重合開始剤を利用できる。ラジカル重合開始剤は、用途に応じて、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などを選択できるが、プリント配線板用材料としてエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と併用する場合などには、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。熱ラジカル重合開始剤には、有機過酸化物、アゾ化合物などが含まれる。
【0087】
有機過酸化物としては、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;ジアルカノイルパーオキサイド、ジアロイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;過酢酸t-ブチルなどの過酸エステル類;ケトンパーオキサイド類;パーオキシカーボネート類;パーオキシケタール類などが挙げられる。前記ジアルカノイルパーオキサイドとしては、ラウロイルパーオキサイドなどが挙げられる。前記ジアロイルパーオキサイドとしては、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0088】
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾニトリル化合物;アゾアミド化合物;アゾアミジン化合物などが挙げられる。
【0089】
これらの熱ラジカル重合開始剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が汎用される。
【0090】
ラジカル重合開始剤の割合は、前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの合計100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.1~8質量部、さらに好ましくは0.5~6質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0091】
熱ラジカル重合開始剤を用いる場合、反応は加熱下で行われ、加熱温度は、例えば50~250℃、好ましくは60~200℃、さらに好ましくは70~150℃である。
【0092】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマー、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマー、ラジカル重合開始剤および熱硬化性エポキシ樹脂を含み、かつ前記アリルエーテルモノマーおよび前記マレイミドモノマーの少なくとも一方が、フルオレン骨格を有するモノマーを含む。この硬化性組成物では、加熱することにより、前記アリルエーテルモノマーと前記マレイミドモノマーとを重合させて、前述のフルオレン含有共重合体を合成できるとともに、熱硬化性エポキシ樹脂も硬化できる。特に、得られたフルオレン含有共重合体は、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0093】
硬化性組成物において、フルオレン含有共重合体を形成するためのアリルエーテルモノマー、マレイミドモノマー、ラジカル重合開始剤としては、好ましい態様も含めて、前記フルオレン含有共重合体の項で例示された2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテルモノマー、2以上のマレイミジル基を有するマレイミドモノマー、ラジカル重合開始剤と同一である。
【0094】
熱硬化性エポキシ樹脂としては、慣用の熱硬化性エポキシ樹脂を利用できる。慣用の熱硬化性エポキシ樹脂には、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが含まれる。これらのうち、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が汎用される。
【0095】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有フェノール型エポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ビフェニルアラルキル骨格含有フェノール型エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂(ビフェニルノボラック型樹脂)、ビフェニルアラルキル骨格含有フェノールノボラック樹脂(ビフェニルアラルキルノボラック型樹脂)、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂などのフェノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;1,5-ジ(グリシジルオキシ)ナフタレンなどのジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス[2,7-ジ(グリシジルオキシ)ナフチル]メタンなどのナフタレン骨格を有するグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0096】
これらの熱硬化性エポキシ樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、低誘電特性、耐熱性、取り扱い性のバランスに優れる点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型樹脂などのビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0097】
硬化性組成物は、熱硬化性エポキシ樹脂の硬化剤をさらに含んでいてもよい。硬化剤としては、アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤などが挙げられる。これらのうち、アミン系硬化剤が好ましく、第1級アミンが特に好ましい。第1級アミンには、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香脂肪族ポリアミン、芳香族アミンなどが含まれる。
【0098】
鎖状脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類が挙げられる。環状脂肪族アミンとしては、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどの単環式又はスピロ環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなどが挙げられる。芳香脂肪族ポリアミンとしては、キシリレンジアミンなどが挙げられる。芳香族アミンとしては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの硬化剤のうち、低誘電特性、耐熱性などの観点から、芳香族アミンが好ましい。
【0099】
硬化剤の割合は、熱硬化性エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば0.1~500質量部、好ましくは1~300質量部、さらに好ましくは10~150質量部である。また、硬化剤の官能基の割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、0.1~4当量、好ましくは0.3~2当量、さらに好ましくは0.5~1.5当量である。
【0100】
本発明の硬化性組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、硬化促進剤、反応性希釈剤を含む溶媒、安定剤、充填剤または補強剤、シランカップリング剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、表面改質剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、組成物中50質量%以下であってもよく、例えば0.1~30質量%、好ましくは0.5~20質量%である。
【0101】
硬化性組成物は、加熱によって硬化物を形成でき、前述のように、得られた硬化物は、前記フルオレン含有共重合体を含む。加熱温度は、前記フルオレン含有共重合体を重合するための加熱温度と同一である。
【実施例
【0102】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、用いた原料および評価方法は以下の通りである。
【0103】
[原料]
BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド:東京化成工業(株)製
熱ラジカル重合開始剤:ジクミルパーオキシド、東京化成工業(株)製、炭酸カルシウム約60%含有。
【0104】
[ガラス転移温度(DMA)および動的粘弾性]
動的粘弾性測定装置((株)ユービーエム製「Rheosol-G5000」)を用いて、周波数1Hz、4℃/分の昇温速度で測定した。そして、ガラス転移温度(Tg)は、tanδのピークとした。また、動的粘弾性測定において、10GHzおよび1GHzにおける貯蔵弾性率を測定した。
【0105】
実施例1
(BCFアリルエーテルの合成)
特開2011-190179号公報の実施例における合成例1の方法で、分子量430の9,9-ビス(4-アリルオキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(BCFアリルエーテル)を合成した。
【0106】
(フルオレン含有共重合体の重合)
BCFアリルエーテル42.7g(9.32×10―2モル)と、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド33.4g(9.32×10-2モル)とを計量し、150℃のオーブンに入れて加熱、融解させて混合した後、さらにジクミルパーオキシド(炭酸カルシウム約60%含有)0.39gを加えて撹拌した。得られた混合物を、SUS板2枚にφ2mmのシリコーンゴム紐をスペーサとして挟んだ注型用型(予め150℃に加熱しておいたもの)に流し込み、150℃のオーブンに入れて、2℃/minで180℃まで昇温し、さらに180℃で2時間保持した。注型用型をそのままオーブンに放置し、一晩徐冷した後、得られたフルオレン含有共重合体を型から取り出した。得られたフルオレン含有共重合体のガラス転移温度は206℃であった。また、得られたフルオレン含有共重合体の誘電正接(tanδ)は、周波数10GHzで0.009であり、1GHzで0.007であった。誘電率εは、周波数10GHzで2.8であり、1GHzで3.0であった。
【0107】
比較例1
4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-アリルフェノール)28.7g(9.32×10-2モル)と、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド33.4g(9.32×10-2モル)とを計量し、150℃のオーブンに入れて加熱、融解させて混合した後、さらに、ジクミルパーオキシド(炭酸カルシウム約60%含有)0.39gを加えて撹拌した。得られた混合物を、実施例1で用いた注型用型と同一の注型用型(予め150℃に加熱しておいたもの)に流し込み、150℃のオーブンに入れて、2℃/minで180℃まで昇温し、さらに180℃で2時間保持した。注型用型をそのままオーブン中に放置し、一晩徐冷した後、得られた共重合体を型から取り出した。得られた共重合体のガラス転移温度は82℃であった。また、得られた共重合体のtanδは、周波数10GHzで0.021であり、1GHzで0.018であった。誘電率εは、周波数10GHzで3.0であり、1GHzで3.2であった
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のフルオレン含有共重合体は、低誘電特性および耐熱性に優れるため、電気用積層板、絶縁ワニスなどの電気・電子分野の成形体、層間絶縁膜、異方性導電膜などの絶縁膜、透明プラスチック基板、光導波路などの光学材料、樹脂改質剤、封止剤、接着剤、フィルム、基地局アンテナ用材料などに利用でき、次世代通信である5G通信用途のプリント配線板用材料として特に有用である。