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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体製造装置部材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
C04B35/488
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020003101
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021109808
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信也
(72)【発明者】
【氏名】布目 卓也
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/001739(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057333(WO,A1)
【文献】特開2009-221074(JP,A)
【文献】特開平04-055365(JP,A)
【文献】特開2015-127294(JP,A)
【文献】特開2017-105689(JP,A)
【文献】特開2002-037666(JP,A)
【文献】特開平04-352502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/48-35/493
H01L 23/12-23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置において使用される半導体製造装置部材であって、
Ceを除く希土類元素の酸化物、および、CaOのうち1種以上である第1酸化物と、
TaおよびNbのうち1種以上である第2酸化物と、
ZrOと、
からなる焼結体により形成され、
前記第1酸化物はCaOを含み、
前記焼結体における前記第1酸化物および前記第2酸化物の含有率を、それぞれRmol%およびRmol%として、
ZrOの含有率は(100-R-R)mol%であり、
は、4以上かつ12以下であり、
/Rは、0.80以上かつ1.20以下であり、
を求める際には、CaOのモル数を2倍してRが求められ、
前記焼結体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合は90質量%以上であり、
前記焼結体の気孔率は3%以下であることを特徴とする半導体製造装置部材。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置部材であって、
前記第1酸化物はCaO単体であることを特徴とする半導体製造装置部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体製造装置部材であって、
前記焼結体の周波数1MHzにおけるtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおけるtanδは、1.0×10-3よりも小さいことを特徴とする半導体製造装置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の製造過程において、プラズマエッチング等のプラズマ処理が半導体基板に対して行われている。特許文献1では、半導体基板にプラズマ処理を施す際に用いられる真空容器の構造材として、耐食性が高いジルコニア(ZrO)製のセラミック構造材が開示されている。
【0003】
ジルコニア製の構造材は、高耐食、高強度である一方、tanδ(すなわち、誘電正接)が大きく、誘電損失が大きいことが知られている。また、ジルコニア製の構造材では、安定化のため、イットリア(Y)等の安定化剤が添加される。非特許文献1では、ジルコニアにおける高い誘電損失は、ジルコニアにイットリアを添加することにより酸素空孔が形成され、酸素空孔とイットリウム(Y)イオンとが近接して双極子のような状態を形成することによる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/203369号
【非特許文献】
【0005】
【文献】M. WELLER and H. SCHUBERT、「Internal Friction, Dielectric Loss, and Ionic Conductivity of Tetragonal ZrO2-3%Y2O3 (Y-TZP)」、Journal of American Ceramic Society, 69 [7]、p. 573-577 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体基板に対してプラズマ処理を施す装置では、プラズマ励起のための高周波電界近傍に誘電損失が大きい構造材が用いられると、当該電界のエネルギーが減衰するおそれがある。
【0007】
本発明は、半導体製造装置において使用される半導体製造装置部材に向けられており、ZrOを主成分とする半導体製造装置部材のtanδを小さくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい一の形態に係る半導体製造装置部材は、Ceを除く希土類元素の酸化物、および、CaOのうち1種以上である第1酸化物と、TaおよびNbのうち1種以上である第2酸化物と、ZrOと、からなる焼結体により形成される。前記第1酸化物はCaOを含む。前記焼結体における前記第1酸化物および前記第2酸化物の含有率を、それぞれRmol%およびRmol%として、ZrOの含有率は(100-R-R)mol%であり、Rは、4以上かつ12以下であり、R/Rは、0.80以上かつ1.20以下である。 を求める際には、CaOのモル数を2倍してRが求められる。前記焼結体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合は90質量%以上である。前記焼結体の気孔率は3%以下である。
好ましくは、前記第1酸化物はCaO単体である。
【0009】
好ましくは、前記焼結体の周波数1MHzにおけるtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおけるtanδは、1.0×10-3よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、半導体製造装置部材のtanδを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体製造装置の断面図である。
図2】蓋部の製造の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る半導体製造装置部材が使用される半導体製造装置1の断面図である。半導体製造装置1は、例えば、半導体基板9(以下、単に「基板9」と呼ぶ。)に対してプラズマエッチング等のプラズマ処理を行う装置である。
【0013】
半導体製造装置1は、チャンバ本体21と、蓋部22と、サセプター23と、電極24と、を備える。チャンバ本体21は、有底略円筒状の部材である。蓋部22は、後述する焼結体を用いて作成された略円板状の部材である。蓋部22は、チャンバ本体21の図1中における上端部に取り付けられる。半導体製造装置1では、蓋部22によりチャンバ本体21の上部開口が閉塞されることにより、内部に密閉空間を有するチャンバ20が形成される。以下の説明では、図1中の上側および下側を、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。また、図1中の上下方向を、単に「上下方向」と呼ぶ。図1中の上下方向は、実際の上下方向と必ずしも一致する必要はない。
【0014】
サセプター23は、チャンバ20の内部空間に収容される。サセプター23は、略円板状の部材である。サセプター23の上面上には、略円板状の基板9が載置される。サセプター23は、基板9を下側から支持する。サセプター23の内部には、バイアス電源に接続される内部電極(図示省略)が設けられている。電極24は、蓋部22の上面上に配置される。電極24は、図示省略の高周波電源に接続される。半導体製造装置1では、電極24に高周波が印可されることにより、チャンバ20内のガスがプラズマ化され、当該プラズマによる基板9に対する処理が行われる。蓋部22は、電極24と、プラズマ処理が行われるチャンバ20の内部空間とを隔てる隔壁である。
【0015】
蓋部22は、ジルコニア(二酸化ジルコニウム(ZrO))と、後述する第1酸化物および第2酸化物とを含む焼結体を用いて形成される。当該焼結体の主成分は、ZrOである。以下の説明では、蓋部22の全体が当該焼結体を用いて形成されるものとして説明する。
【0016】
第1酸化物は、セリウム(Ce)を除く希土類元素の酸化物、および、酸化カルシウム(CaO)のうち1種以上の酸化物である。換言すれば、第1酸化物は、Ceを除く1種類の希土類元素の酸化物であってもよく、CaO単体であってもよい。また、第1酸化物は、Ceを除く2種類以上の希土類元素の酸化物であってもよい。第1酸化物は、Ceを除く1種類または2種類以上の希土類元素の酸化物、および、CaOであってもよい。
【0017】
「Ceを除く希土類元素」とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、および、Ceを除くランタノイドである。「Ceを除くランタノイド」とは、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)である。
【0018】
第2酸化物は、五酸化タンタル(Ta)および五酸化ニオブ(Nb)のうち1種以上である。換言すれば、第2酸化物は、Ta単体であってもよく、Nb単体であってもよく、TaおよびNbであってもよい。
【0019】
以下では、上述の焼結体における第1酸化物の含有率をRmol%とし、当該焼結体における第2酸化物の含有率をRmol%として説明する。焼結体におけるZrOの含有率は、(100-R-R)mol%である。なお、焼結体では、これらの含有率に実質的に影響しない程度の微量の焼結助剤や不可避化合物を含んでいてもよい。
【0020】
上記含有率の算出では、第1酸化物にCaOが含まれる場合、Rを求める際にCaOのモル数が2倍される。換言すれば、Rを求める際には、CaOのモル数として、焼結体に含まれるCa0.50.5のモル数が用いられる。例えば、第1酸化物がCaOと上述の希土類元素の酸化物(以下、「希土類酸化物」とも呼ぶ。)とを含む場合、CaOのモル数を2倍した値と、希土類酸化物のモル数とを合計して第1酸化物の見かけ上のモル数とし、第1酸化物の当該見かけ上のモル数を、焼結体のモル数によって除算することによりRが求められる。この場合、焼結体のモル数とは、第1酸化物の上記見かけ上のモル数と、第2酸化物のモル数と、ZrOのモル数との合計である。また、第1酸化物がCaOのみを含む場合、CaOのモル数を2倍した値を、焼結体のモル数によって除算することによりRが求められる。なお、第1酸化物がCaOを含まず、希土類酸化物のみを含む場合、希土類酸化物のモル数を焼結体のモル数によって除算することによりRが求められる。
【0021】
上述の焼結体では、Rは、4以上かつ12以下であり、好ましくは、4以上かつ6以下である。また、第2酸化物の含有率に対する第1酸化物の含有率の割合R/Rは、0.80以上かつ1.20以下である。
【0022】
焼結体の結晶相は、主に、正方晶および/または立方晶(すなわち、正方晶ジルコニアおよび/または立方晶ジルコニアと同じ結晶構造)である。焼結体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合(以下、「正方・立方割合」とも呼ぶ。)は、90質量%以上である。正方・立方割合は、焼結体の結晶中に含まれる正方晶の質量と立方晶の質量との和を、焼結体中の結晶の合計質量によって除算したものである。焼結体中の結晶の合計質量とは、正方晶の質量と、立方晶の質量と、斜方晶等の他の結晶の質量との和である。正方・立方割合は、リートベルト法により求めることが可能である。
【0023】
焼結体の気孔率は、3%以下であり、好ましくは1%以下である。当該気孔には、開気孔および閉気孔が含まれる。当該気孔率は、アルキメデス法により求めることが可能である。
【0024】
周波数1MHz~20MHzの範囲における焼結体の室温(例えば、25℃)でのtanδ(すなわち、誘電正接)は、好ましくは、周波数1MHzで0.5×10-3以下であり、周波数20MHzで1.0×10-3よりも小さい。当該tanδは、「JIS C 2141:1992」および「JIS C 2138:2007」に準じた試験により求めることが可能である。
【0025】
次に、図2を参照しつつ蓋部22の製造方法の一例について説明する。蓋部22を製造する際には、まず、第1酸化物と第2酸化物とZrOとを混合した混合粉末が準備される(ステップS11)。ステップS11では、第1酸化物、第2酸化物およびZrOの粉末が、所定の組成となるように秤量され、ボールミル等により湿式混合される。そして、湿式混合により得られたスラリーを乾燥させ、篩により整粒することにより、上述の混合粉末(すなわち、調合粉末)が得られる。なお、第1酸化物、第2酸化物およびZrOの粉末は、湿式混合ではなく、乾式混合により混合されてもよい。また、混合粉末を生成する際に、焼結助剤の粉末が必要に応じて添加されてもよい。
【0026】
続いて、ステップS11にて準備された混合粉末を、所定形状の成形体に成形する(ステップS12)。ステップS12では、例えば、一軸加圧成形用の粉末プレス機により成形体が成形される。当該成形体の成形は、形状を保持できるのであれば、他の様々な方法により行われてもよい。また、前述のスラリーのように、流動性のある状態のままモールドに流し込んだ後に溶媒成分を除去し、所定形状の成形体としてもよい。その後、当該成形体が焼成され、焼結体である蓋部22が生成される(ステップS13)。
【0027】
蓋部22は、上記以外の製造方法により製造されてもよい。例えば、ステップS11において、上述のスラリーを乾燥させた後、仮焼成することにより、結晶相が主に正方晶および/または立方晶である仮焼体を得る。そして、当該仮焼体を必要に応じて粉砕した後、ステップS12において仮焼体を成形して成形体が得られる。なお、成形前の仮焼体に、必要に応じて焼結助剤の粉末が添加されてもよい。
【0028】
次に、表1~表2を参照しつつ本発明に係る焼結体の実施例1~11、および、当該焼結体と比較するための比較例1~6の焼結体について説明する。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1では、焼結体の組成(mol%)および焼成温度を示す。表2では、実施例1~11および比較例1~6の焼結体について、結晶相の種類および正方・立方割合、気孔率、並びに、周波数1MHz,20MHzにおける室温でのtanδ(すなわち、誘電正接)を示す。
【0032】
実施例1~11および比較例1~6の焼結体は、上述のステップS11~S13に示す製造方法により製造した。実施例1~11および比較例1~6では、上述のステップS11において、混合前の第1酸化物の粉末の平均粒子径は0.3μmであり、第2酸化物の粉末の平均粒子径は0.2μmであり、ZrOの平均粒子径は0.1μmであった。また、ボールミルによる湿式混合では、φ5mmのジルコニア(3YZ)製の玉石を用い、ポリビニルアルコール(PVA)溶液を溶媒として用い、16時間粉砕混合を行った。ボールミルのポット容積は1L(リットル)であり、当該ポットにおいて、第1酸化物、第2酸化物およびZrOの粉末を合計100g、PVA0.5g、および、水300mLを混合した。湿式混合により得られたスラリーの乾燥は、大気雰囲気下で行った。また、篩は、100メッシュのものを用いた。
【0033】
ステップS12では、一軸加圧成形用の粉末プレス機により、圧力20MPaにて混合粉末をプレスし、縦80mm、横80mm、厚さ10mmの略平板状の試験用成形体を成形した。ステップS13の焼成時の昇温速度は100℃/hであり、最高温度は1400℃~1500℃であった。また、最高温度での保持時間は5時間であった。
【0034】
表1に示すように、焼結体の製造に用いられる第1酸化物は、実施例1~7および実施例10、並びに、比較例1~6ではYであり、実施例8ではErであり、実施例9ではYbであり、実施例11ではCaOである。第1酸化物の含有率Rmol%は、実施例1~11および比較例2~5では、4~12mol%である。一方、比較例1および比較例6では、第1酸化物の含有率Rmol%は、3mol%と低い。なお、第1酸化物にCaOが含まれる場合、上述のように、Rは、Ca0.50.5のモル数を用いて求められる。
【0035】
また、第2酸化物は、実施例1~9および実施例11、並びに、比較例1~5ではTaであり、実施例10ではNbである。第2酸化物の含有率に対する第1酸化物の含有率の割合R/Rは、実施例1~11、比較例1および比較例4~5では、0.80以上かつ1.20以下である。一方、比較例2ではR/Rは0.76と小さく、比較例3ではR/Rは1.23と大きい。なお、比較例6では、第2酸化物は添加されておらず、第2酸化物の含有率Rmol%は0mol%である。
【0036】
ステップS13における焼成温度(すなわち、焼成時の最高温度)は、実施例1~11、比較例1~3および比較例6では1500℃である。一方、比較例4および比較例5ではそれぞれ、焼成温度は1400℃および1450℃と低い。
【0037】
表2に示すように、実施例1~11の焼結体では、結晶相は正方晶または立方晶であり、正方・立方割合は90質量%以上であった。また、当該焼結体の気孔率は3%以下であった。当該焼結体の周波数1MHzにおける当該焼結体の室温でのtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおける当該焼結体の室温でのtanδは、1.0×10-3よりも小さかった(すなわち、1.0×10-3未満であった)。
【0038】
一方、第1酸化物の含有率Rmol%が3mol%と低い比較例1では、焼結体は安定せず崩壊した。なお、比較例1の崩壊した焼結体では、結晶相は斜方晶であった。R/Rが0.80未満である比較例2、および、R/Rが1.20よりも大きい比較例3では、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該焼結体の室温でのtanδはそれぞれ、0.8×10-3および1.5×10-3と大きかった。
【0039】
焼成温度が1400℃と低い比較例4では、正方・立方割合が90%未満と低く、気孔率も10%と高かった。また、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該焼結体の室温でのtanδはそれぞれ、2.2×10-3および2.5×10-3と大きかった。焼成温度が1450℃と低い比較例5では、気孔率は5%と高く、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該焼結体の室温でのtanδはそれぞれ、1.2×10-3および1.3×10-3と大きかった。比較例4および比較例5のように気孔率が高い場合、焼結体の気孔内に存在する雰囲気に含まれる水分量が多くなるため、tanδが大きくなると考えられる。
【0040】
第1酸化物の含有率Rmol%が3mol%と低く、第2酸化物を含まない比較例6では、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該焼結体の室温でのtanδはそれぞれ、2.0×10-3および1.5×10-3と大きかった。
【0041】
以上に説明したように、半導体製造装置において使用される上述の半導体製造装置部材(上記例では、蓋部22)は、第1酸化物と、第2酸化物と、ZrOとからなる焼結体により形成される。第1酸化物は、Ceを除く希土類元素の酸化物、および、CaOのうち1種以上である。第2酸化物は、TaおよびNbのうち1種以上である。焼結体における第1酸化物および第2酸化物の含有率を、それぞれRmol%およびRmol%として、ZrOの含有率は(100-R-R)mol%であり、Rは、4以上かつ12以下であり、R/Rは、0.80以上かつ1.20以下である。第1酸化物にCaOが含まれる場合、CaOのモル数を2倍してRが求められる。焼結体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合(すなわち、正方・立方割合)は90質量%以上である。焼結体の気孔率は3%以下である。
【0042】
当該焼結体では、ZrOの4価のZrイオンに対して、第1酸化物に由来する3価の希土類元素イオン(Caイオンは2価であるためモル数を2倍する。)と、第2酸化物に由来する5価のTaイオンおよびまたはNbイオンとが、およそ等モル添加されている。このため、価数のアンバランスによる酸素空孔の形成が抑制される。これにより、表1の実施例1~11に示すように、上述の焼結体のtanδを小さくし、誘電損失を小さくすることができる。その結果、基板9に対してプラズマ処理を行う半導体製造装置1において蓋部22が使用される場合、プラズマ励起のための高周波電界のエネルギー減衰を抑制することができる。
【0043】
好ましくは、上記焼結体の周波数1MHzにおけるtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおけるtanδは、1.0×10-3よりも小さい。これにより、上述の高周波電界のエネルギー減衰を、好適に抑制することができる。
【0044】
上述の焼結体および半導体製造装置部材では、様々な変更が可能である。
【0045】
上述の焼結体により形成される半導体製造装置部材は、必ずしもチャンバ20の蓋部22である必要はなく、例えば、雰囲気に曝したくない高周波電極とプラズマ室との隔壁および当該隔壁に類する部位に使用される。
【0046】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、半導体製造装置に関する分野、例えば、半導体基板にプラズマ処理を施す半導体製造装置において半導体基板を収容するチャンバの製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体製造装置
22 蓋部
図1
図2