IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7393222水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム
<>
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図1
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図2
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図3
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図4
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図5
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図6
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図7
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図8
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図9
  • 特許-水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20231129BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
H02K5/20
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04029
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020009572
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021118590
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】川本 祐大
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157644(JP,A)
【文献】特開2018-207673(JP,A)
【文献】実開昭64-030663(JP,U)
【文献】特表2015-535677(JP,A)
【文献】特開2017-172444(JP,A)
【文献】特開2003-118396(JP,A)
【文献】中国実用新案第203206039(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H01M 8/04
H01M 8/04029
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体と、
前記モータ本体の一端側に取り付けられる蓋部材と、
前記モータ本体の外周面を覆っており、ウォータージャケット本体と、前記ウォータージャケット本体の外周面にそれぞれ設けられている冷却水流入部と、冷却水流出部とを有するウォータージャケットと、
を備え、
前記モータ本体は、前記外周面の鉛直上方向の位置に設けられ、前記モータ本体の回転軸方向に沿って延びている隔壁を有し、
前記ウォータージャケット本体は、前記モータ本体の回転軸方向に平行に形成された内周面が設けられており、前記内周面と前記モータ本体の外周面との間に筒状冷却水路を形成している筒状本体部と、
前記筒状本体部に隣接する縮径部と、を有し、
前記冷却水流入部と、前記冷却水流出部とは、前記モータ本体の回転軸方向において、それぞれ少なくとも一部が前記筒状冷却水路と重なって配置され、
前記冷却水流入部と、前記冷却水流出部とは、前記隔壁を挟んで配置され
前記隔壁と、前記ウォータージャケット本体の前記筒状本体部の前記内周面との間には 、隙間が設けられている、水冷モータ。
【請求項5】
前記燃料電池システムは、ラジエータと、前記燃料電池スタックと前記ラジエータとに冷却水を循環させる冷却水流路と、を備え、
前記水冷モータに接続される冷却水流路は、前記ラジエータの下流、かつ前記燃料電池スタックの上流の前記冷却水流路に接続されている、請求項4に記載の水冷モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに空気を送風するコンプレッサを駆動する水冷モータと、この水冷モータを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素により発電した電力で走行する車両が利用されている。そのような車両は、燃料電池スタックを備え、水素と酸素を燃料電池スタック内で化学反応させることにより得られる電気で走行している。化学反応に用いる酸素は、エアコンプレッサで空気を燃料電池スタックに供給している。エアコンプレッサを駆動するモータには、モータ作動に伴う熱を冷却するために、モータケースの外周部に冷却機構が設けられているものがある。出力が大きいモータほど発熱量が増加するため、冷却性の向上が必要となる。特許文献1には、冷却水路が設けられているモータが開示されている。
【0003】
既存のモータを利用して冷却機構を設ける場合、モータケースの外周に両端が開口された筒状のウォータージャケットを取り付ける方法が考えられる。この方法には、既存のモータの部品を活用して低コストで水冷モータを実現できるという利点がある。既存のモータに円筒形状のウォータージャケットを取り付ける場合、モータケースには、ウォータージャケット固定用の新たな固定部、及び冷却水の漏れを防ぐシール部材が設けられる。筒状のウォータージャケットは、中空の内部にモータケースを通して組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-247085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シール部材が配置される部位における、モータケースとウォータージャケットとの間の隙間寸法は極めて小さい寸法である。したがって、モータケースとウォータージャケットとを組み立てる際に、モータケースに設けられたシール部材がウォータージャケットの角部とあたって損傷する可能性があり、組み立て性に改善の余地が見込まれていた。一方、組み立て性を向上させるために構造変更すると、冷却水路の形状に悪影響されて冷却効率が低下する可能性があった。すなわち、組み立て性と、冷却性と、を両立させるには困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、容易に組み立てられ、効率よく冷却できる水冷モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水冷モータは、モータ本体と、モータ本体の一端側に取り付けられる蓋部材と、モータ本体の外周面を覆っており、ウォータージャケット本体と、ウォータージャケット本体の外周面にそれぞれ設けられている冷却水流入部と、冷却水流出部とを有するウォータージャケットと、を備え、モータ本体は、外周面の鉛直上方向の位置に設けられ、モータ本体の回転軸方向に沿って延びている隔壁を有し、ウォータージャケット本体は、モータ本体の回転軸方向に平行に形成された内周面が設けられており、内周面とモータ本体の外周面との間に筒状冷却水路を形成している筒状本体部と、筒状本体部に隣接する縮径部と、を有し、冷却水流入部と、冷却水流出部とは、モータ本体の回転軸方向において、それぞれ少なくとも一部が筒状冷却水路と重なって配置され、冷却水流入部と、冷却水流出部とは、隔壁を挟んで配置され、隔壁と、ウォータージャケット本体の筒状本体部 の内周面との間には、隙間が設けられている。
【0008】
また、本発明の水冷モータは、冷却水流入部と、冷却水流出部とは、モータ本体の回転軸方向において、互いにずれて配置されていてもよい。
【0009】
また、本発明の水冷モータは、モータ本体と、蓋部材と、ウォータージャケットとは、共通の締結部材で共締めされていてもよい。
【0010】
また、本発明の燃料電池システムは、水冷モータと、水冷モータによって駆動され、燃料電池スタックに空気を送風するコンプレッサと、を備えていてもよい。
【0011】
また、本発明の燃料電池システムは、ラジエータと、燃料電池スタックとラジエータとに冷却水を循環させる冷却水流路と、を備え、水冷モータに接続される冷却水流路は、ラジエータの下流、かつ燃料電池スタックの上流の冷却水流路に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却水流入部と、冷却水流出部とは、それぞれ少なくとも一部が、モータ本体の回転軸方向に平行な内周面が設けられている筒状本体部が形成する筒状冷却水路と、モータ回転軸方向において重なっている。そのため、冷却水は、冷却水流入部から入り、冷却水流出部から排出されるまで、筒状本体部により形成される筒状冷却水路を流れるため、モータを効率よく冷却することができる。また、ウォータージャケットに縮径部が設けられていることにより、モータケースとウォータージャケットとを、容易に組み立てることができる。すなわち、容易に組み立てられ、効率よく冷却できる水冷モータとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る水冷モータを備える燃料電池システムにおいて、冷却系と、エア系とを示すシステム図である。
図2図1における水冷モータを示す斜視図である。
図3図1における水冷モータを示す正面図である。
図4図1における水冷モータを示す上面図である。
図5図1における水冷モータを示す側面図である。
図6図1における水冷モータの構成を示す分解図である。
図7図1における水冷モータのウォータージャケットを除いた状態を示す斜視図である。
図8図5におけるA-A断面を示す断面図である。
図9図8におけるC部を示す拡大図である。
図10図5におけるB-B断面を示す断面図である。
【0014】
実施の形態
以下、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態は、燃料電池システムに備えられている水冷モータに適用可能である。本実施の形態が適用可能な燃料電池システムを備える車両としては、例えば、水素燃料タンクを備える牽引車、又はフォークリフトなどが挙げられる。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る水冷モータを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池システムが備えるエア系1Aと、冷却系1Bとを示すシステム図である。燃料電池システムには、燃料電池スタック1が備えられている。燃料電池スタック1は、水素と酸素とを化学反応させて電気エネルギーを発生する装置である。エア系1Aは、燃料電池スタック1での化学反応に必要な酸素を含む空気を燃料電池スタック1に供給する装置である。エア系1Aは、エアフィルター2と、エアフローメータ3と、コンプレッサ4と、インタークーラ5と、エアシャットバルブ7と、燃料電池スタック1と、が含まれている。
【0016】
また、冷却系1Bは、燃料電池スタック1と、インタークーラ5と、水冷モータ20と、イオン交換器15と、に冷却水を循環させる装置である。冷却系1Bは、ラジエータ12と、ウォーターポンプ13と、インタークーラ5と、それらを接続する冷却水流路16と、分岐コネクタ14と、燃料電池スタック1と、イオン交換器15と、水冷モータ20と、インバータ8と、が含まれている。
【0017】
最初に、エア系1Aを説明する。空気は、エアフィルター2と、エアフローメータ3と、を通って、コンプレッサ4で加圧される。コンプレッサ4で加圧された空気は、インタークーラ5を通ることで冷却されて密度が上げられ、図示しない制御装置に制御されるエアシャットバルブ7を通って、燃料電池スタック1に送られる。エアフローメータ3と、圧力センサ6とは、それぞれエア系1Aに流れる空気量と、空気の圧力とを計測する。各々の出力は、図示しない制御装置にそれぞれ入力され、制御装置により燃料電池スタック内の水分量が適正に保たれる。燃料電池スタック1が発生させる電力量に応じた空気を供給するために、コンプレッサ4を駆動する水冷モータ20は、インバータ8を介して制御される。エア系1Aにより供給される酸素と、図示しない水素燃料タンクから供給される水素と、が燃料電池スタック1内で化学反応して、電気エネルギーを発生させる。
【0018】
次に、冷却系1Bを説明する。ラジエータ12により冷却された冷却水は、ウォーターポンプ13により加圧されてインタークーラ5に送られる。冷却水は、加圧された空気を冷却するインタークーラ5を冷却する。インタークーラ5を通った冷却水は、インタークーラ5の下流、かつ燃料電池スタック1の上流の冷却水流路16に設けられている分岐コネクタ14に到達する。分岐コネクタ14は、冷却水流路16を3つに分岐させている。冷却水流路16の分岐により、冷却水は、燃料電池スタック1と、水冷モータ20と、イオン交換器15と、に分流する。イオン交換器15は、冷却水の伝導率を一定以下に保つ装置である。イオン交換器15は、冷却系1Bを流れる冷却水に溶け出した金属イオンを一定量以下に除去する。ラジエータ12の下流、かつ燃料電池スタック1の上流にある冷却水は、ラジエータ12により冷却された温度が低い冷却水である。そのため、水冷モータ20に流れる冷却水の分岐点を、ラジエータ12の下流、かつ燃料電池スタック1の上流に設けることで、水冷モータ20に温度が低い冷却水を流すことができる。したがって、水冷モータ20を効果的に冷却することができる。
【0019】
燃料電池スタック1を通った冷却水は、水温センサ11を通って、ラジエータ12に還流される。水温センサ11の出力は、図示しない制御装置に入力され、燃料電池スタック1の出力制限を行う水温域かどうかの判断に利用される。水冷モータ20と、イオン交換器15と、に分流した冷却水は、それぞれを通ったあと、燃料電池スタック1の下流の冷却水流路16に合流する。合流した冷却水は、ラジエータ12に還流される。ラジエータ12に還流された冷却水は、再びウォーターポンプ13により加圧され、冷却系1Bを循環する。
【0020】
なお、冷却水は、ウォーターポンプ13により圧送される。圧送された冷却水の流量のうち、一部が水冷モータ20、及びイオン交換器15にそれぞれ分流される。残りの全量は、燃料電池スタック1に送られる。
【0021】
図2図7を参照しながら、以下に、水冷モータ20の構造を説明する。図2は、水冷モータ20を示した斜視図である。図3図5は、それぞれ水冷モータ20を示す、正面図、上面図、及び、側面図である。図6は、水冷モータ20の構成を示す分解図である。図7は、水冷モータ20のウォータージャケット50を除いた状態を示す斜視図である。
【0022】
水冷モータ20は、モータ本体30と、モータ本体30の一端側に取り付けられる蓋部材40と、モータ本体30の外周面を覆う円筒形状のウォータージャケット50と、を有している。図6には、モータ本体30と、蓋部材40と、ウォータージャケット50と、の組み立て構造がわかりやすく示されている。モータ本体30と、蓋部材40と、ウォータージャケット50とは、それぞれケースフランジ部33と、蓋フランジ部42と、ウォータージャケットフランジ部58とを有している。各々のフランジ部にそれぞれ設けられている4つの穴の各々に、締結部材であるボルトが通され、共通のボルトで共締めされている。
【0023】
最初に、モータ本体30を説明する。モータ本体30は、電力により回転力を発生する装置である。モータ本体30は、モータケース31と、モータケース31に装着されるOリング35(図8参照)とを有している。
【0024】
モータケース31は、一端側が開口された有底円筒形状の部材である。モータケース31は、2組の環状凸条31aと、それぞれの組の環状凸条31aの間に形成されている環状溝31bと、ケース底部32と、ケースフランジ部33と、隔壁34と、を有している。各環状凸条31aは、モータケース31の外周面36に全周にわたって設けられている。図6図7に示されているように、各組の環状凸条31a同士は、近接して配置されている。間に環状溝31bが形成されている1組の環状凸条31aが、2組配置されている。2組の環状凸条31aのうち、1組は円筒形状の一端側に、他方の1組は円筒形状の他端側に配置されている。
【0025】
図6図7には省略されているが、2つの環状溝31bには、それぞれOリング35が嵌められている。Oリング35は、モータケース31の外周面36と、ウォータージャケット50の内周面53aとの間に配置されている。円筒形状の他端側に配置されている1組の環状凸条31aの外径は、一端側に配置されている1組の環状凸条31aの外径より、小さく形成されている。これにより、ウォータージャケット50に、モータ本体30を通す際、ウォータージャケット50の内周面との間の距離を大きくすることができる。したがって、他端側に配置されているOリング35が損傷する可能性を低減できる。
【0026】
円筒形状のモータケース31の他端側には、ケース底部32が固定されている。モータケース31の一端側の外周面には、ケースフランジ部33が全周にわたって設けられている。ケースフランジ部33には、周方向等間隔の4ケ所に、締結部材用の穴が設けられている。モータケース31の外周面には、周方向の1箇所において、2組の環状凸条31aの間のほぼ全長に渡って、モータ回転軸X-X方向に隔壁34が設けられている。隔壁34は、後述する冷却水流入部56と、冷却水流出部55との間に配置されて、冷却水流入部56に流入した冷却水が、直接冷却水流出部55に流れて流出しないようにする部材である。隔壁34は、燃料電池システムに搭載された状態において、真上になる位置に形成されている。2組の環状凸条31aと、隔壁34とは、モータケース31に一体的に形成されている。なお、筒状冷却水路Lと、隔壁34との詳細形状については、後述する。
【0027】
Oリング35は、環状かつ断面が円形で、ゴム等の弾性材料で形成されている、各種装置において多用されている部材である。
【0028】
次に、蓋部材40を説明する。蓋部材40は、開口されているモータケース31の一端側に取り付けられて、モータケース31を閉塞する部材である。蓋部材40は、ほぼ円形に形成されている蓋本体41と、蓋本体41の外周部において全周に渡って設けられている蓋フランジ部42と、を有している。蓋フランジ部42には、周方向において等間隔の4ケ所に、締結部材用の穴が設けられている。
【0029】
図8、及び図10を参照しながら、ウォータージャケット50を説明する。図8、及び図10は、図5において、それぞれ断面A-A、及び断面B-Bを示している。図8は、水冷モータ20の鉛直方向を含む面における断面図である。また、図10は、水冷モータ20の鉛直方向に垂直な面における断面図である。ウォータージャケット50は、モータ本体30の外周面36を覆って冷却水を流す空間を形成する部材である。ウォータージャケット50は、ウォータージャケット本体51と、ウォータージャケット本体51の外周面にそれぞれ設けられている、冷却水流入部56と、冷却水流出部55と、を有している。ウォータージャケット本体51は筒状であり、両端にそれぞれ開口部57を有している。ウォータージャケット本体51は、ウォータージャケットフランジ部58と、大径部52と、筒状本体部53、縮径部54と、小径部59と、を有している。
【0030】
ウォータージャケット本体51の一端側端部の外周面には、ウォータージャケットフランジ部58が全周に渡って設けられている。ウォータージャケットフランジ部58には、周方向において等間隔の4ケ所に、締結部材用の穴が設けられている。
【0031】
冷却水流入部56と、冷却水流出部55とについて説明する。冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、それぞれ配管が接続されて、冷却水を流入または流出させる部材である。冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、それぞれウォータージャケット本体51の上部に、鉛直方向に沿って配置されている。
【0032】
冷却水流入部56と、冷却水流出部55との周方向位置について説明する。冷却水流出部55は、筒状冷却水路L内に入ったエアを速やかに排出するために、上部に配置されていることが好ましい。本実施の形態の水冷モータ20では、モータ本体30の外周面36の上部に隔壁34が設けられている。それを避けるため、冷却水流出部55は、真上から周方向にわずかにずれて配置されている。冷却水流出部55を上部に配置することにより、冷却水に含まれているエアを、冷却水の循環とともに効率よく抜くことができる。また、冷却水流入部56から流入した冷却水は、冷却水流出部55から排出されるまでに、モータ本体30の外周面36に沿って流れながら全周を冷却することが好ましい。したがって、冷却水流入部56は、モータ本体30の外周面36の上部において、冷却水流出部55の隔壁34を挟んだ反対側、かつ隔壁34の近くに配置されていることが好ましい。
【0033】
次に、冷却水流入部56と、冷却水流出部55とのモータ回転軸X-X方向位置について説明する。冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、モータ回転軸X-X方向において、互いにできるだけ離して配置されている。具体的には、冷却水流入部56はウォータージャケット本体51の他端側に、冷却水流出部55はウォータージャケット本体51の一端側に配置されている。後述するように、冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、モータ回転軸X-X方向において、筒状本体部53の内周面53aと、モータケース31の外周面36との間に形成されている筒状冷却水路Lと重なって配置されている。これにより、モータ回転軸X-X方向において、できるだけ広い範囲に冷却水を流すことができ、モータケース31の外周面を効率的に冷却することができる。
【0034】
水冷モータ20を構成するモータ本体30と、蓋部材40と、ウォータージャケット50と、の組み立て方法を説明する。上記のとおり、上記のそれぞれの部材には、ケースフランジ部33と、蓋フランジ部42と、ウォータージャケットフランジ部58と、が設けられている。まず、蓋フランジ部42と、ウォータージャケットフランジ部58とを合わせる。次に、それらをウォータージャケット50の一端側の開口部57を通す。そして、ケースフランジ部33と、蓋フランジ部42と、ウォータージャケットフランジ部58とに、締結部材のボルトを通して、それらを共締めする。これにより、簡易な組み立て構造で部材同士の精度が高い位置決めをすることができる。また、既存のモータの部品を流用して、低コストで水冷モータを実現することができる。
【0035】
次に、図8図10を参照しながら、筒状冷却水路Lを形成する部材と、隔壁34とを説明する。図8と、図10とは、図5において、それぞれ断面A-A、及び断面B-Bを示している。図8は、水冷モータ20の鉛直方向に沿った断面図である。また、図10は、水冷モータ20の鉛直方向に垂直な面における断面図である。図8図10には、筒状冷却水路Lが示されている。前述したように、隔壁34は、水冷モータ20を燃料電池システムに搭載した状態におけるモータケース31の外周面36の最上部に形成されている。そのため図8は、隔壁34を含む断面図を示している。一方、図10は、隔壁34が含まれていない断面図を示している。すなわち、図10に示されている筒状冷却水路Lの断面形状は、外周面36の最上部を除く全周における任意の断面における筒状冷却水路Lの断面形状である。
【0036】
図8からわかるように、隔壁34は、ウォータージャケット本体51の筒状本体部53の内周面53aに接触していない。すなわち、隔壁34の全長に渡って、隔壁34と、内周面53aとの間には、所定の隙間Gが設けられている。隔壁34は、モータ回転軸方向X-Xに沿って見た場合、冷却水流入部56は隔壁34の一方側、冷却水流出部55は隔壁34の他方側に配置されている。この構造により、冷却水流入部56から流入するエアを、所定の隙間Gを通して隔壁34の冷却水流出部55側に流すことができる。したがって、隔壁34を設けて冷却水を全周に流すことができる一方で、冷却水流入部56から流入したエアを最短距離で冷却水流出部55に流すことができる。
【0037】
ウォータージャケット本体51には、ウォータージャケットフランジ部58側から、大径部52と、筒状本体部53と、縮径部54と、小径部59とが、順に形成されている。大径部52の内径は、隣接する筒状本体部53より、少し大きく形成されている。これにより、モータ本体30をウォータージャケット本体51に挿入する時に、挿入しやすくなっている。筒状本体部53は、モータ回転軸X-Xと平行に形成されている内周面53aを有している。内周面53aには、モータケース31に保持された一端側のOリング35が接触している。
【0038】
図9を参照しながら、縮径部54を説明する。縮径部54は、断面において内径が小さくなる縮径第1面54aと、縮径第2面54bとを、有している。筒状本体部53の他端側端部に、縮径第1面54aと、縮径第2面54bとが、それぞれ連続して設けられている。縮径第1面は筒状本体部53と縮径第2面54bとをつないで縮径する面である。縮径第2面54bは、モータ回転軸X-Xに対して角度を有して形成されている傾斜面である。縮径第2面54bは、縮径第1面54aと、小径部59とをつないでいる面である。なお、本実施の形態では、縮径部54は、縮径第1面54aと、縮径第2面54bとを、有しているが、縮径部54には、縮径第1面54aが設けられていなくてもよい。すなわち、筒状本体部53の他端側端部に、直接、縮径第2面54bが接続されていても良い。
【0039】
縮径部54に隣接して、小径部59が設けられている。小径部59の内周面59aには、モータケース31に保持された他端側のOリング35が接触している。小径部59の内径は、モータケース31の他端側に配置された1組の環状凸条31aの外径に対応して、筒状本体部53の内径より小さく形成されている。モータケース31の他端側に配置された1組の環状凸条31aの外径を小さく形成することにより、ウォータージャケット50の内周面53aと、モータケース31の外周面36と、の間の距離を大きくすることができる。したがって、ウォータージャケット50に、モータ本体30を通す際、ウォータージャケット50をモータケース31に通しやすく、またモータケース31の他端側に配置されているOリング35が損傷する可能性を低減できる。
【0040】
次に、筒状冷却水路Lを形成する筒状本体部53と、冷却水流入部56及び冷却水流出部55とのモータ回転軸X-X方向における位置関係について説明する。図8から明らかなように、モータ回転軸X-X方向において、冷却水流入部56は筒状本体部53と重なって配置されている。また、冷却水流出部55は、図7に示されているとおり、隔壁34の長さ範囲内に配置されており、モータ回転軸X-X方向において、筒状本体部53と重なっている。すなわち、冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、モータ回転軸X-X方向において、筒状冷却水路Lと重なって配置されている。
【0041】
上記のとおり、本実施の形態の水冷モータ20は、ウォータージャケット本体51に、筒状本体部53と、小径部59とを繋ぐ縮径部54が設けられており、冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、モータ本体30の回転軸方向において、それぞれ少なくとも一部が筒状冷却水路Lと重なって配置されている。
【0042】
このような構成により、冷却水流入部56から流入する冷却水は、モータ回転軸X-X方向において広い範囲に存在する筒状冷却水路Lを一様に流れることで、効率よくモータ本体30を冷却できるとともに、組み立てやすい水冷モータ20とすることができる。
【0043】
また、本実施の形態の水冷モータ20は、冷却水流入部56と、冷却水流出部55とは、モータ本体の回転軸方向において、互いにずれて配置されている。
【0044】
このような構成により、冷却水流入部56と、冷却水流出部55との間に形成されている冷却水路Lを、モータ本体の回転軸X-X方向に幅広く流れ、効率的にモータ本体30を冷却することができる。
【0045】
また、本実施の形態の水冷モータ20は、モータ本体30と、蓋部材40と、ウォータージャケット50とは、共通の締結部材で共締めされている。
【0046】
このような構成により、簡易な組み立て構造で、部材同士を高い精度で位置決めをすることができる。
【0047】
また、本実施の形態の燃料電池システムは、水冷モータ20と、水冷モータ20によって駆動され、燃料電池スタックに空気を送風するコンプレッサ4と、を備えている。
【0048】
このような構成により、効率よくモータ本体30を冷却できて組み立てやすい水冷モータ20を備える燃料電池システムとすることができる。
【0049】
また、本実施の形態の燃料電池システムは、ラジエータ12と、燃料電池スタック1と、ラジエータ12とに冷却水を循環させる冷却水流路16と、を備え、水冷モータ20に接続される冷却水流路16は、ラジエータ12の下流、かつ燃料電池スタック1の上流の冷却水流路16に接続されている。
【0050】
このような構成により、水冷モータ20に温度が低い冷却水を流すことができ、水冷モータ20を効果的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 燃料電池スタック、4 コンプレッサ、12 ラジエータ、16 冷却水流路、 20 水冷モータ、30 モータ本体、40 蓋部材、50 ウォータージャケット 、51 ウォータージャケット本体、55 冷却水流出路、 56 冷却水流入路、 53 筒状本体部、53a 内周面、54 縮径部、L 筒状冷却水路、G 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10