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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】建物防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20231129BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20231129BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20231129BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E04B1/684 A
E04B1/68 A
E04B1/348 P
E04B1/348 Z
E04F13/08 W
E04F13/08 Y
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020012606
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116643
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 稔
【審査官】廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0328026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/684
E04B 1/348
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階建てとされたユニット建物の上階側に配置される上階側ユニットの建物外方側に設けられた上階外装部材と、
下階に配置されると共に前記上階側ユニットの真下に配置される下階側ユニットの建物外方側に設けられた下階外装部材と、
シート状に形成されると共に、上端部が前記上階外装部材における建物内側面に取り付けられかつ下端部が前記下階外装部材における建物外側面に取り付けられ、前記上端部から前記上階外装部材に対して建物内側に配置されかつ建物上下方向に折り返した折り返し部を有している防水部材と、
を有し、
前記防水部材は、前記折り返し部を構成する部位における前記折り返し部から前記下端部へ向けて延設された部位に隣接した位置の建物内側面に接着部材が取り付けられている、
建物防水構造。
【請求項2】
前記上階外装部材は、水平方向に延設されたフレーム部材を介して前記上階側ユニットに取り付けられており、
前記接着部材には、前記フレーム部材と前記上階外装部材との間で水平方向にて弾性的に変形した圧着部材が設けられている、
請求項1記載の建物防水構造。
【請求項3】
前記接着部材には、シート状に形成されかつ下端部が前記下階外装部材における建物外側面に取り付けられた継ぎ足し防水部材が接着可能とされている、
請求項1又は請求項2に記載の建物防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物防水構造が開示されている。この建物防水構造では、上階外装部材の下端部と下階外装部材の上端部との間に防水シートが設けられている。具体的には、防水シートの上端部が上階外装部材の下端部における建物内側面に取り付けられていると共に、防水シートの下端部が下階外装部材の上端部における意匠面に取り付けられている。この防水シートによって、上階外装部材と下階外装部材との間を通って建物内部へ水が浸入するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-180010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成の場合、防水シートが劣化して交換が必要な場合、上階外装部材を建物から取り外す必要があり、交換作業が大掛かりな作業になる。したがって、上記先行技術はこの点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は上記問題を考慮し、メンテナンス性を向上させることができる建物防水構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物防水構造は、複数階建てとされたユニット建物の上階側に配置される上階側ユニットの建物外方側に設けられた上階外装部材と、下階に配置されると共に前記上階側ユニットの真下に配置される下階側ユニットの建物外方側に設けられた下階外装部材と、シート状に形成されると共に、上端部が前記上階外装部材における建物内側面に取り付けられかつ下端部が前記下階外装部材における建物外側面に取り付けられ、前記上端部から前記上階外装部材に対して建物内側に配置されかつ建物上下方向に折り返した折り返し部を有している防水部材と、を有している。
【0007】
第2の態様に係る建物防水構造は、第1の態様に係る建物防水構造において、前記防水部材は、前記折り返し部を構成する部位における前記折り返し部から前記下端部へ向けて延設された部位に隣接した位置の建物内側面に接着部材が取り付けられている。
【0008】
第3の態様に係る建物防水構造は、第2の態様に係る建物防水構造において、前記上階外装部材は、水平方向に延設されたフレーム部材を介して前記上階側ユニットに取り付けられており、前記接着部材には、前記フレーム部材と前記上階外装部材との間で水平方向にて弾性的に変形した圧着部材が設けられている。
【0009】
第4の態様に係る建物防水構造は、第2の態様又は第3の態様に係る建物防水構造において、前記接着部材には、シート状に形成されかつ下端部が前記下階外装部材における建物外側面に取り付けられた継ぎ足し防水部材が接着可能とされている。
【0010】
第1の態様によれば、防水部材は、上端部が上階外装部材の建物内側面に取り付けられており、下端部が下階外装部材の建物外側面に取り付けられている。これにより、上階外装部材と下階外装部材との間を通って建物内部へ水が浸入するのを抑制している。防水部材には、折り返し部が設けられており、この折り返し部は、防水部材の上端部から上階外装部材に対して建物内側に配置されていることから、日光等の外部環境に曝されない。したがって、折り返し部は外部環境に起因した劣化を抑制することができる。そして、上階外装部材と下階外装部材との間に位置する防水部材が劣化した場合は、防水部材の下端部を下階外装部材から取り外して防水部材の折り返し部を展開するように下端部を建物下方側へ引き出すことで、劣化が抑制されている折り返し部を上階外装部材と下階外装部材との間に配置することができる。つまり、上階外装部材と下階外装部材との間の劣化した防水部材を、上階外装部材を取り外すことなく劣化が抑制された防水部材に変えることができる。
【0011】
第2の態様によれば、折り返し部には接着部材が取り付けられている。この接着部材は、防水部材における折り返し部から下端部へ向けて延設された部位と隣接する位置の建物内側面に取り付けられている。したがって、折り返し部を展開するように防水部材を引き出した際、劣化が抑制された部位の建物下方側に接着部材が設けられているため、防水部材を引き出して劣化部分を切り離した後に下階外装部材や他の部材に防水部材をそのまま接着させることができる。これにより、メンテナンス作業をより容易にすることができる。
【0012】
第3の態様によれば、接着部材には、水平方向に延設されかつ上階外装部材を上階側ユニットに取り付けるフレーム部材と、上階外装部材との間で水平方向にて弾性的に変形した圧着部材が設けられている。したがって、この圧着部材によって折り返し部を上階外装部材に密着させると共に、上階外装部材とフレーム部材との間の隙間を閉塞する。これにより、吹き上げ等によって上階外装部材とフレーム部材との間に水が浸入するのを抑制することができる。
【0013】
第4の態様によれば、接着部材には、継ぎ足し防水部材が接着可能とされている。この継ぎ足し防水部材は、シート状に形成されかつ下端部が下階外装部材における建物外側面に取り付けられている。つまり、折り返し部を展開するように防水部材の下端部を引き出して劣化部分を切り離した場合でも、継ぎ足し防水部材によっていわば防水部材が下階外装部材の建物外側面まで延長できる。したがって、折り返し部を展開するように防水部材の下端部を建物下方側へ引き出して劣化部分を切り離した場合に、接着部材が下階外装部材の建物外側面まで届かない場合でも、継ぎ足し防水部材により上階外装部材と下階外装部材との間に水が浸入するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る建物防水構造は、メンテナンス性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る建物防水構造を有する建物を示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る建物防水構造の要部を示す概略斜視図である。
図3】第1実施形態に係る建物防水構造の要部を建物上下方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
図4図2に対して組み付け前の状態を概略的に示す分解図である。
図5】第1実施形態に係る建物防水構造におけるメンテナンス時の状態を概略的に示す断面図である。
図6】第2実施形態に係る建物防水構造におけるメンテナンス時の状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図1図5を用いて、本発明に係る建物防水構造の第1実施形態について説明する。
【0017】
図1に示されるように、建物防水構造10が適用されたユニット建物11は、図示しない基礎上に複数載置された建物ユニット12により複数階建て(一例として2階建て)とされている。建物ユニット12は、それぞれが直方体状を成しており、この建物ユニット12を建物上下方向に重ねて設けることで、ユニット建物11の一つの階(本実施形態では2階)と、この一つの階の下の階(本実施形態では1階)とが構成されている。
【0018】
ユニット建物11の上階側、すなわち2階を構成する上階側ユニット12Aの建物外方側には、図3に示されるように上階外装部材14と外壁フレーム16とを含んで構成された外壁面材パネル18が取り付けられている。この上階外装部材14は、耐候性に優れたコンクリートやセラミック等の素材で構成されている。
【0019】
上階外装部材14は、上階外装部材14に対して建物内側に配置されかつ外壁フレーム16に締結具15によって取り付けられている。この外壁フレーム16は、上階外装部材14の建物上下方向における端部にそれぞれ配置されていると共に、当該端部に沿った水平方向を長手方向として延設されたフレーム部材としての横フレーム20と、上階外装部材14の建物上下方向における端部のそれぞれの横フレーム20を建物上下方向で連結する図示しない縦フレームとで構成されている。なお、横フレーム20は、外側縦壁部22と、内側縦壁部24と、外側縦壁部22における建物上下方向の一方の端部とこれに対応した内側縦壁部24における建物上下方向の一方の端部とを略水平方向に連結する底壁部26と、により長手方向に直交する断面形状が略U字状に形成されている。また、上階外装部材14の下端部28に対応した位置に設けられている横フレーム20は、断面開口が建物下方側へ向けて開放された向きに配置されている。
【0020】
上階外装部材14の下端部28における建物内側面30と、外壁フレーム16の横フレーム20における外側縦壁部22との間には、防水部材としての防水シート32の上端部32Aと折り返し部32Bとが設けられている。この防水シート32は、上階外装部材14の下端部28に沿って水平方向を長手方向とした略矩形シート状に形成されており(図2参照)、上階外装部材14の下端部28に沿って連続的に設けられている。また、防水シート32は、一例としてCR(クロロプレンゴム)シートにより構成されている。
【0021】
防水シート32の上端部32Aにおける建物外側面には、接着部材50としての両面テープ52及び圧着部材54とが設けられている。圧着部材54は、水平方向を板厚方向とする板状のスポンジにより構成されており、防水シート32の上端部32Aにおける建物外側面に取り付けられている。両面テープ52は、圧着部材54の防水シート32と接する面と反対側の面に取り付けられており、上階外装部材14の下端部28における建物内側面30に接着されている。なお、防水シート32の上端部32Aにおける接着部材50は、上階外装部材14における締結具15が挿入された締結孔56に対応した位置に配置されている。
【0022】
また、圧着部材54は、上階外装部材14を横フレーム20に取り付けた際に水平方向にて弾性的に変形する程度の板厚に設定されている(図4参照)。これにより、防水シート32の上端部32Aにおける上階外装部材14と横フレーム20との間には、隙間がない構成とされている。なお、図3及び図5は、後述する折り返し部32Bの第1延設部32BA、第2延設部32BB及び第3延設部32BCの関係を分かりやすくするため、上階外装部材14と横フレーム20とを離間させて図示している。
【0023】
ユニット建物11の2階を構成する上階側ユニット12Aの真下に配置されかつユニット建物11の下階(1階)を構成する下階側ユニット12Bには、建物外方側に下階外装部材38と外壁フレーム17とを含んで構成された外壁面材パネル40が取り付けられている。この下階外装部材38は、上階外装部材14と同様に、耐候性に優れたコンクリートやセラミック等の素材で構成されている。
【0024】
下階外装部材38は、下階外装部材38に対して建物内側に配置された外壁フレーム17に締結具15によって取り付けられている。この外壁フレーム17は、下階外装部材38の建物上下方向における端部にそれぞれ配置されていると共に、当該端部に沿った水平方向を長手方向として延設されたフレーム部材としての横フレーム21と、下階外装部材38の建物上下方向における端部のそれぞれの横フレーム21を建物上下方向で連結する図示しない縦フレームとで構成されている。なお、横フレーム21は、ユニット建物11の2階を構成する上階側ユニット12Aの外壁フレーム16における横フレーム20と同様に、外側縦壁部23と、内側縦壁部25と、外側縦壁部23における建物上下方向の一方の端部とこれに対応した内側縦壁部25における建物上下方向の一方の端部とを略水平方向に連結する底壁部27と、により長手方向に直交する断面形状が略U字状に形成されている。また、下階外装部材38の上端部42に対応した位置に設けられている横フレーム21は、断面開口が建物上方側へ向けて開放された向きに配置されている。
【0025】
下階外装部材38の上端部42には、切り欠き部60が設けられている。この切り欠き部60は、下階外装部材38の上縁から建物下方側へ所定の範囲にて下階外装部材38の厚さ方向に切り欠かれて形成されており、切り欠き部60の建物外側面は平面状に形成されている。なお、切り欠き部60には、締結具15が挿入された締結孔56が形成されている。
【0026】
下階外装部材38の切り欠き部60における建物外側面には、防水シート32の下端部32Cが取り付けられている。この防水シート32の下端部32Cには、建物内側面に接着部材50が設けられており、接着部材50の両面テープ52によって下階外装部材38の切り欠き部60における建物外側面に防水シート32の下端部32Cが取り付けられている。
【0027】
防水シート32における上階外装部材14の建物内側には、折り返し部32Bが形成されている。この折り返し部32Bは、防水シート32の上端部32Aから上階外装部材14の下端部28より建物下方側へ飛び出さない範囲にて建物下方側へ延設された第1延設部32BAと、第1延設部32BAから建物上方側へ折り返され建物上方側へ延設された第2延設部32BBと、第2延設部32BBから建物下方側へ折り返され建物下方側へ延設された第3延設部32BCとを含んで構成されている。なお、第3延設部32BCは、上階外装部材14の下縁より建物上方側の範囲とされている。つまり、第3延設部32BCは、折り返し部32Bから防水シート32における下端部32Cへ向けて延設された部位である露出部32Dに隣接された部位に相当する。以上の構成により、折り返し部32Bは、防水シート32を上端部32Aから建物上下方向にて複数回折り返しかつ上階外装部材14の裏面(建物内側)に配置された構成とされている。
【0028】
折り返し部32Bには、接着部材50が設けられている。具体的には、圧着部材54は、折り返し部32Bの第3延設部32BCにおける建物内側面に取り付けられている。両面テープ52は、圧着部材54の防水シート32と接する面と反対側の面に取り付けられており、当該両面テープ52における建物内側面には、粘着面を建物内側から覆う図示しない剥離紙が取り付けられている。したがって、両面テープ52は、水平方向にて対向する横フレーム20には接着されない。また、圧着部材54は、上階外装部材14を横フレーム20に取り付けた状態にて水平方向にて弾性的に変形することで、横フレーム20と密着すると共に、折り返し部32Bを上階外装部材14の建物内側面30に密着させる。これにより、折り返し部32Bの接着部材50における上階外装部材14と横フレーム20との間には、隙間がない構成とされている。
【0029】
折り返し部32Bの建物外側には、図示しない化粧胴差が設けられている。この化粧胴差は、一例として下階外装部材38に取り付けられたブラケットを介して設けられており、折り返し部32B及び上階外装部材14と下階外装部材38との間の隙間を外部に露出させないようにしている。
【0030】
(防水シートのメンテナンス)
次に、防水シート32のメンテナンスについて説明する。図5に示されるように、上階外装部材14と下階外装部材38の間に位置する防水シート32の露出部32D及び下端部32Cが、日光等の外部環境に曝されることで劣化した場合、防水シート32の下端部32Cの両面テープ52を剥がすと共に、下端部32Cを建物下方側へ向けて引っ張る。これにより、防水シート32の折り返し部32Bが展開されて折り返し部32Bの接着部材50が下階外装部材38の上端部42における切り欠き部60に対応した位置に引き出される(図中二点鎖線参照)。また、それまで上階外装部材14に対して建物内側に配置されていることで日光等の外部環境に曝されずに劣化が抑制された折り返し部32Bが上階外装部材14と下階外装部材38の間へ移動する。なお、上述のように、防水シート32の下端部32Cを建物下方側へ引っ張る際に、上階外装部材14を横フレーム20に締結する締結具15の締結を緩めることで上階外装部材14と横フレーム20との間隔を広げて折り返し部32Bを展開し易くしてもよい。
【0031】
防水シート32の折り返し部32Bを引き出した後、折り返し部32Bにおける接着部材50より建物下方側の部位、すなわち、露出部32Dから下端部32Cまでの範囲を、折り返し部32Bにおける接着部材50から上部の範囲に対して切り離す。そして、折り返し部32Bの接着部材50の剥離紙を取り除いて下階外装部材38の切り欠き部60の建物外側面に接着させる。これにより、劣化が抑制されている折り返し部32Bが、それまでの露出部32D及び下端部32Cに置き換わることになる。
【0032】
(第1実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0033】
本実施形態によれば、図2、3に示されるように、防水シート32は、上端部32Aが上階外装部材14の建物内側面30に取り付けられており、下端部32Cが下階外装部材38の切り欠き部60の建物外側面に取り付けられている。これにより、上階外装部材14と下階外装部材38との間を通って建物内部へ水が浸入するのを抑制している。防水シート32には、折り返し部32Bが設けられており、この折り返し部32Bは、防水シート32の上端部32Aから上階外装部材14に対して建物内側に配置されていることから、日光等の外部環境に曝されない。したがって、折り返し部32Bは外部環境に起因した劣化を抑制することができる。そして、上階外装部材14と下階外装部材38との間に位置する防水シート32が劣化した場合は、防水シート32の下端部32Cを下階外装部材38から取り外して防水シート32の折り返し部32Bを展開するように下端部32Cを建物下方側へ引き出すことで、劣化が抑制されている折り返し部32Bを上階外装部材14と下階外装部材38との間に配置することができる。つまり、上階外装部材14と下階外装部材38との間の劣化した防水シート32を、上階外装部材14を取り外すことなく劣化が抑制された防水シート32に変えることができる。これにより、メンテナンス性を向上させることができる。
【0034】
また、折り返し部32Bには接着部材50が取り付けられている。この接着部材50は、防水シート32における折り返し部32Bから下端部32Cへ向けて延設された部位である露出部32Dと隣接する位置、すなわち第3延設部32BCの建物内側面に取り付けられている。したがって、折り返し部32Bを展開するように防水シート32を引き出した際、劣化が抑制された部位の建物下方側に接着部材50が設けられているため、防水シート32を引き出して劣化部分を切り離した後に下階外装部材38や他の部材に防水シート32をそのまま接着させることができる。これにより、メンテナンス作業をより容易にすることができる。
【0035】
さらに、接着部材50には、水平方向に延設されかつ上階外装部材14を上階側ユニット12Aに取り付ける横フレーム20と、上階外装部材14との間で水平方向にて弾性的に変形した圧着部材54が設けられている。したがって、この圧着部材54によって折り返し部32Bを上階外装部材14に密着させると共に、上階外装部材14と横フレーム20との間の隙間を閉塞する。これにより、吹き上げ等によって上階外装部材14と横フレーム20との間に水が浸入するのを抑制することができる。
【0036】
さらにまた、防水シート32の上端部32Aに設けられた接着部材50と、折り返し部32Bに設けられた接着部材50とには、それぞれ圧着部材54が設けられていることから、上階外装部材14と横フレーム20との間の隙間がない箇所が建物上下方向にて2か所設けられている。これにより、上階外装部材14の下端部28はいわば二重止水構造となるため、吹き上げ等により水が浸入するのをより確実に抑制することができる。さらに、二重止水構造とすることで、施工者の作業熟練度にバラつきがある場合にも防水性能を確保することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、図6を用いて、本発明の第2実施形態に係る建物防水構造について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0038】
この第2実施形態に係る建物防水構造70は、基本的な構成は第1実施形態と同様とされ、継ぎ足し防水部材72が取り付けられる点に特徴がある。
【0039】
すなわち、防水シート32のメンテナンスを行う際は、防水シート32の下端部32Cの両面テープ52を剥がすと共に、下端部32Cを建物下方側へ向けて引っ張る。これにより、防水シート32の折り返し部32Bが展開されて接着部材50が下階外装部材38側に引き出される(図5中二点鎖線参照)。なお、本実施形態の防水シート32は、図6に示されるように、折り返し部32Bが展開された際に折り返し部32Bに設けられている接着部材50が下階外装部材38の切り欠き部60に届かない程度とされている。
【0040】
次に、折り返し部32Bの接着部材50には、継ぎ足し防水部材72が接着される。この継ぎ足し防水部材72は、防水シート32の下端部32Cに沿って水平方向を長手方向とした略矩形シート状に形成されており、防水シート32の下端部32Cに沿って連続的に設けられている。また、継ぎ足し防水部材72は、防水シート32と同様にCRシートにより構成されている。
【0041】
継ぎ足し防水部材72の下端部72Aには、接着部材50が設けられており、この接着部材50は下階外装部材38の切り欠き部60の建物外側面に対応した位置に配置されている。そして、継ぎ足し防水部材72の接着部材50における両面テープ52を下階外装部材38の切り欠き部60の建物外側面に接着させる。これにより、劣化が抑制されている折り返し部32B及び新たに追加された継ぎ足し防水部材72が、それまでの露出部32D及び下端部32C(図3参照)に置き換わることになる。
【0042】
(第2実施形態の作用・効果)
次に、第2実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0043】
上記構成によっても、継ぎ足し防水部材72が取り付けられる点以外は第1実施形態の建物防水構造10と同様に構成されているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、接着部材50には、継ぎ足し防水部材72が接着可能とされている。この継ぎ足し防水部材72は、シート状に形成されかつ下端部72Aが下階外装部材38における切り欠き部60の建物外側面に取り付けられている。つまり、折り返し部32Bを展開するように防水シート32の下端部32Cを引き出して劣化部分を切り離した場合でも、継ぎ足し防水部材72によっていわば防水シート32が下階外装部材38の建物外側面まで延長できる。したがって、折り返し部32Bを展開するように防水シート32の下端部32Cを建物下方側へ引き出して劣化部分を切り離した場合に、接着部材50が下階外装部材38の建物外側面まで届かない場合でも、継ぎ足し防水部材72により上階外装部材14と下階外装部材38との間に水が浸入するのを抑制できる。
【0044】
なお、上述した第1、第2実施形態では、防水シート32の上端部32A及び折り返し部32Bの接着部材50には、それぞれ圧着部材54が設けられている構成とされているが、これに限らず、圧着部材54がない構成としてもよい。また、接着部材50が設けられていない構成としてもよい。
【0045】
さらに、ユニット建物11は、2階建てとされているが、これに限らず、3階以上の複数階建てとされていてもよく、また本実施形態の建物防水構造は2階と1階との間のみならずその他の階と当該階の上の階又は下の階との間に設けてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10 建物防水構造
11 ユニット建物
12A 上階側ユニット
12B 下階側ユニット
14 上階外装部材
20 横フレーム(フレーム部材)
30 建物内側面
32 防水シート(防水部材)
32A 上端部
32B 折り返し部
32C 下端部
38 下階外装部材
50 接着部材
54 圧着部材
70 建物防水構造
72 継ぎ足し防水部材
72A 下端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6