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特許7393229電力需給調整システムおよび電力需給調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電力需給調整システムおよび電力需給調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20231129BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20231129BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231129BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02J1/00 306K
H02J1/00 306C
H02J1/00 306F
H02J7/02 J
H02J7/00 302C
H02J7/35 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020014402
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121160
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】松永 康寛
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063718(JP,A)
【文献】特開2015-233403(JP,A)
【文献】特開2014-023376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主幹直流バスと、前記主幹直流バスにそれぞれ接続された複数の電力システムとを備えた複合電力システムにおける前記複数の電力システムの相互間の電力需給を調整するためのシステムであって、
前記複数の電力システムのうち少なくとも1つが、前記主幹直流バスに接続された直流バスと、前記直流バスにそれぞれ接続された、自然エネルギーを利用して発電する1または複数の発電装置と、電力事業者からの商用電力を受電する系統電源装置と、前記直流バスとの間で充電または放電を行う蓄電装置とを少なくとも有する自然エネルギー利用電力システムであり、かつ前記1または複数の発電装置、前記系統電源装置および前記蓄電装置のうち少なくとも2つの装置の間に、前記直流バスに対して出力可能となる各々の出力電圧における差が予め設定されており
前記複数の電力システムの各々が、前記主幹直流バスとの間に流れる電流の量および向きを計測する電流メータをそれぞれ有し、かつ
各前記電流メータにより計測された電流の量および向きの計測値を記録する記録部と、
前記記録部に記録された計測値に基づいて、計測された各電流値の絶対値の増減に応じて各電力システムの他の電力システムに対する売電または買電の金額が増減するように前記金額を決定する演算部と、をさらに有することを特徴とする電力需給調整システム。
【請求項2】
前記演算部が、計測された電流の量および向きの積算値に基づいて、各電力システムの他の電力システムに対する売電または買電の金額を決定することを特徴とする請求項に記載の電力需給調整システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記電力システムが、前記直流バスに接続された負荷機器を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力需給調整システム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記電力システムが、負荷機器のみを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力需給調整システム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記電力システムが、商用電力を受電する系統電源装置のみを有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電力需給調整システム。
【請求項6】
主幹直流バスと、前記主幹直流バスにそれぞれ接続された複数の電力システムとを備え、前記複数の電力システムのうち少なくとも1つが、前記主幹直流バスに接続された直流バスと、前記直流バスにそれぞれ接続された、自然エネルギーを利用して発電する1または複数の発電装置と、電力事業者からの商用電力を受電する系統電源装置と、前記直流バスとの間で充電または放電を行う蓄電装置とを有する自然エネルギー利用電力システムであり、かつ前記発電装置、前記系統電源装置および前記蓄電装置のうち少なくとも2つの装置の間に、前記直流バスに対して出力可能となる各々の出力電圧における差が予め設定されている、複合電力システムにおける前記複数の電力システムの相互間の電力需給を調整するための方法であって、
前記複数の電力システムの各々と前記主幹直流バスとの間に流れる電流の量および向きを計測し、計測された電流の量および向きに基づいて、計測された各電流値の絶対値の増減に応じて各電力システムの売電または買電の金額が増減するように前記金額を決定することを特徴とする電力需給調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力システムから構成される複合電力システムにおける電力需給調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを活用した地域エネルギーマネージメントシステムやビルエネルギーマネージメントシステムなどが、注目されている。それらのシステムで共通した課題としては、自然エネルギーで発生した電力の活用を最大化し、電力会社からの系統電力の購入を最小化することである。また、発生した電力を過不足なく供給側に送ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6150072号明細書
【文献】特開2003-87969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記、参考文献1、2は、外部機関から入手した情報をもとに電力の需給調整を行っているが、何らかの理由により、外部機関サーバダウンや通信インフラのダウンが起こった場合、需給調整により行う電力価格の設定ができない。また、需給調整が上手くいかなくなる。
【0005】
上記の点に鑑み、本発明の目的は、複数の電力システムから構成される複合電力システムにおいて、外部機関のサーバや通信インフラに依存する必要がなく、複数の電力システムの相互間の電力需給を効果的に調整できるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するべく、本発明は、以下の構成を提供する。
・ 本発明による電力需給調整システムの態様は、主幹直流バスと、前記主幹直流バスにそれぞれ接続された複数の電力システムとを備えた複合電力システムにおける前記複数の電力システムの相互間の電力需給を調整するためのシステムであって、
前記複数の電力システムのうち少なくとも1つが、前記主幹直流バスに接続された直流バスと、前記直流バスにそれぞれ接続された、自然エネルギーを利用して発電する1または複数の発電装置と、電力事業者からの商用電力を受電する系統電源装置と、前記直流バスとの間で充電または放電を行う蓄電装置とを少なくとも有する自然エネルギー利用電力システムであり、かつ前記1または複数の発電装置、前記系統電源装置および前記蓄電装置のうち少なくとも2つの装置の間に、前記直流バスに対して出力可能となる各々の出力電圧における差が予め設定されており
前記複数の電力システムの各々が、前記主幹直流バスとの間に流れる電流の量および向きを計測する電流メータをそれぞれ有し、かつ
各前記電流メータにより計測された電流の量および向きの計測値を記録する記録部と、
前記記録部に記録された計測値に基づいて、計測された各電流値の絶対値の増減に応じて各電力システムの他の電力システムに対する売電または買電の金額が増減するように前記金額を決定する演算部と、をさらに有することを特徴とする。
・ 一つの例示形態として、前記演算部が、計測された電流の量および向きの積算値に基づいて、各電力システムの他の電力システムに対する売電または買電の金額を決定する。
・ 上記態様のシステムにおいて、一例として、少なくとも1つの前記電力システムが、前記直流バスに接続された負荷機器を有する。
・ 上記態様のシステムにおいて、一例として、少なくとも1つの前記電力システムが、負荷機器のみを有する。
・ 上記態様のシステムにおいて、一例として、少なくとも1つの前記電力システムが、商用電力を受電する系統電源装置のみを有する。
・ 本発明による電力需給調整方法の態様は、主幹直流バスと、前記主幹直流バスにそれぞれ接続された複数の電力システムとを備え、前記複数の電力システムのうち少なくとも1つが、前記主幹直流バスに接続された直流バスと、前記直流バスにそれぞれ接続された、自然エネルギーを利用して発電する1または複数の発電装置と、電力事業者からの商用電力を受電する系統電源装置と、前記直流バスとの間で充電または放電を行う蓄電装置とを有する自然エネルギー利用電力システムであり、かつ前記発電装置、前記系統電源装置および前記蓄電装置のうち少なくとも2つの装置の間に、前記直流バスに対して出力可能となる各々の出力電圧における差が予め設定されている、複合電力システムにおける前記複数の電力システムの相互間の電力需給を調整するための方法であって、
前記複数の電力システムの各々と前記主幹直流バスとの間に流れる電流の量および向きを計測し、計測された電流の量および向きに基づいて、計測された各電流値の絶対値の増減に応じて各電力システムの売電または買電の金額が増減するように前記金額を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力価格を簡易に設定できる。また、需給状況を反映した電力価格を迅速に決定し、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による電力需給調整システムの一例を概略的に示すブロック図である。
図2図1に示した電力システム1の動作を説明するブロック図である。
図3図3は、複合電力システムの主幹直流バスMBの電圧が決まった状態の一例を示す。
図4図4は、図3のように全体の電力システムの電力需給バランスが決まるときの、各電力システム内の電流メータの計測値の一例を示している。
図5】、図5は、図3および図4の状態となった後、発生電力に余剰が発生し、主幹直流バスMBの電圧が290Vまで上昇した状態の一例示す。
図6図6は、本発明の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的形態を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による電力需給調整システムの一例を概略的に示すブロック図である。本発明の電力需給調整システムは、主幹直流バスMBと、主幹直流バスMBにそれぞれ接続された複数の電力システム1~4とを備えた複合電力システムに組み込まれている。また、本発明の電力需給調整方法は、このような複合電力システムに適用され、当該システムにより実行される。
【0010】
複数の電力システム1~4のうち、電力システム1~3は、自然エネルギーを利用して発電する1または複数の発電装置を有する自然エネルギー利用電力システムである。
【0011】
自然エネルギー利用電力システム1は、主幹直流バスMBに接続された直流バスB1を有し、直流バスB1に接続された、自然エネルギーを利用して発電する複数の発電装置を有する。ここでは一例として、太陽光発電装置11、風力発電装置12、および水力発電装置13を有する。自然エネルギー利用電力システム1はさらに、直流バスB1との間で電力の充放電を行う蓄電装置16、商用電力を受電する系統電源装置15が接続されている。この例ではさらに、この電力システム1を所有する需要家が電力を消費する負荷機器17が接続されている。
【0012】
同様に、自然エネルギー利用電力システム2は、主幹直流バスMBに接続された直流バスB2を有する。直流バスB2に接続された発電装置として、太陽光発電装置21、風力発電装置22、およびディーゼル発電装置24を有する。自然エネルギー利用電力システム2はさらに、直流バスB2との間で電力の充放電を行う蓄電装置26、商用電力を受電する系統電源装置25が接続されている。この例ではさらに、この電力システム2を所有する需要家が電力を消費する負荷機器27が接続されている。
【0013】
同様に、自然エネルギー利用電力システム3は、主幹直流バスMBに接続された直流バスB3を有する。直流バスB3に接続された自然エネルギーを利用して発電する発電装置として、太陽光発電装置31および風力発電装置32を有する。自然エネルギー利用電力システム3はさらに、直流バスB3との間で電力の充放電を行う蓄電装置36、商用電力を受電する系統電源装置35が接続されている。この例ではさらに、この電力システム3を所有する需要家が電力を消費する負荷機器37が接続されている。
【0014】
電力システム4は、主幹直流バスMBに接続された直流バスB4に商用電力を受電する系統電源装置45のみが接続されている。
【0015】
電力システム1~3がそれぞれ有する各発電装置、蓄電装置、および系統電源装置には、所定の直流電圧に変換する装置(図示せず)が備わっており、それぞれ直流バスB1~B3に直流の電力を給電または受電している。直流バスB1~B3の各々と主幹直流バスMBとの間では、諸処の条件下で電流が入出し、すなわち双方向に電流が流れることができる。電力システム1~3は、主幹直流バスMBとの間に流れる双方向の電流の量および向きをそれぞれ計測する電流メータ18、28、38をそれぞれ有する。
【0016】
系統電源装置45のみを有する電力システム4は、基本的に主幹直流バスMBに給電するのみであるので電流の向きは一方向である。電力システム4も主幹直流バスMBへ流れる電流の量を計測する電流メータ48を有する。
【0017】
自然エネルギー利用電力システムである電力システム1~3に共通する構成について、図1の電力システム1を参照して説明する。太陽光発電装置11、風力発電装置12、水力発電装置13、および系統電源装置15には、出力電圧がそれぞれ予め設定されている。例えば、各装置の出力電圧として、風力発電装置11を300V、太陽光発電装置12を280V、水力発電装置13を290V、系統電源装置15を270Vとする。ここでの「出力電圧」とは、直流バスB1の電圧が当該出力電圧以下のときに直流バスB1に対して出力可能となる上限電圧である。
【0018】
電力システム2、3も同様である。さらに電力システム4も、系統電源装置45に出力電圧(例えば270V)が予め設定されている。同種類の装置(例えば電力システム1の風力発電装置12と電力システム2の風力発電装置22)であっても、電力システムごとに出力電圧の設定を異ならせてもよく、同じとしてもよい。設定された出力電圧が高い装置ほど、優先的に使用される装置となる。
【0019】
また、太陽光発電装置11、21、31、風力発電装置12、22、32、水力発電装置13は、発電していない場合、直流バスB1~B3に電圧を出力しない。
【0020】
蓄電装置16、26、36は、バッテリおよび充放電装置をそれぞれ有しており、所定の電圧範囲で電流を入出力している。蓄電装置16、26、36の電圧は、バッテリの残量とおおよそ相関関係があり、蓄電装置16、26、36の電圧が高ければバッテリの残量が多く、低ければ充電容量が少ない。蓄電装置16、26、36の電圧は、例えば230V~300Vの範囲で変化する。蓄電装置16、26、36は、基本的に、その電圧が直流バスB1、B2、B3の電圧より高い場合は放電し、低い場合は充電される。
【0021】
また、負荷機器17、27、37は、それぞれ直流バスB1、B2、B3の電圧が230V~300Vの間にあるときに動作する。
【0022】
1つの電力システム内では、より高い出力電圧を設定された装置が、より優先的に使用される装置となる。複数の装置に同じ出力電圧を設定してもよく、その場合、それらの装置は同じ優先順位となる。しかしながら、1つの電力システムに含まれる複数の装置のうち少なくとも2つの装置の間には、直流バスに対して出力可能となる出力電圧に差が設定されている。
【0023】
次に図2を参照し、図1に示した電力システム1を例として、1つの電力システム内の動作について説明する。蓄電装置16、太陽光発電装置11、風力発電装置12、水力発電装置13、系統電源装置15は、前述したとおり、設定された出力電圧が高いほど優先的に使用される。たとえば、蓄電装置16、太陽光発電装置11、風力発電装置12、水力発電装置13、系統電源装置15のすべてに発電があるかまたは給電可能である場合、出力電圧が最も高い風力発電装置12が優先的に出力される。他の装置は、負荷機器17の消費電力によって出力されるか否かが決まる。
【0024】
具体的には、図2のように、負荷機器17が1kWの消費電力で、太陽光発電装置11が300W、風力発電装置12が300W、水力発電装置13が400Wを発電していたとき、発電合計も1kWとなり需給のバランスが取れた状態となる。この場合の直流バスB1の電圧は、出力電圧のもっとも低い太陽光発電装置11の280Vとなる。
【0025】
この動作は、実際は瞬時にして行われるが、時系列的には次のように行われる。まず、負荷機器17の1kWの消費電力に対し、最も高い出力電圧300Vを設定された最も優先度の高い風力発電装置12の電力が優先的に使用される。すなわち風力発電装置12から直流バスB1に電力が出力される。しかし、負荷機器17の需要に対して電力が足りないため、直流バスB1の電圧が落ち、290Vまで降下する。直流バスB1の電圧が290Vまで達したところで、設定出力電圧が290Vである水力発電装置13から電力が出力され始める。しかしながら、水力発電装置13が加わっても電力が足りないため、直流バスB1の電圧は280Vまで降下する。直流バスB1の電圧が280Vまで達したところで、設定出力電圧が280Vである太陽光発電装置11から電力が出力され始めることによって、ようやく負荷機器17の電力需要とバランスして安定することになる。
【0026】
このように、負荷機器の電力需要とバランスするように直流バスB1の電圧は変動する。その場合、直流バスB1の電圧が高いほど風力発電装置12などの供給側の装置に余剰電力が多く、直流バスB1の電圧が低いほど供給側の装置に余剰電力が少ないことを示している。
【0027】
図1のように複数の電力システム1~4がある場合、各電力システムにおいて、前述した動作と同じ動作が実行される。これにより電力システム1~4の各直流バスB1~B4の電圧がそれぞれバランスしたところで安定する。そして、電力システム1~4と主幹直流バスMBとからなる全体システムである複合電力システムにおいても、同様の動作が実行される。全体システムにおいて、供給側と需要側の電力がバランスするところで主幹直流バスMBの電圧が安定する。主幹直流バスMBの電圧が高いほど、風力発電装置などを含む供給側の電力システムに余剰電力が多く、主幹直流バスMBの電圧が低いほど供給側の電力システムに余剰電力が少ないことになる。
【0028】
図2にはさらに、一例として、電力システム1の電流メータ18に備わる記録部181と演算部182が示されている。記録部181は、電流メータ18により計測された電流の量および向きの計測値を記録する機能を有する。電流の計測値の記録は、例えば連続的に行うことができる。また、別の例では、直流バスB1の電圧がほぼ安定したときを図示しない電圧計で検知し、その時点の電流の瞬時値を計測値として記録することができる。
【0029】
演算部182は、記録部181により記録された計測値に基づいて、後述する電力価格決定方法を実行し、各電力システムの売電または買電の金額を決定する演算を行う。演算部182は所定のプログラムを実行するプロセッサ、例えばコンピュータのCPUにより実施できる。
【0030】
図2にはさらに、主幹直流バスMBの電圧を計測する電圧計8と、一例として統合演算部9を示している。統合演算部9は、各電力システムの演算部182に替わって各電力システムの売電または買電の金額を決定する演算を行うこともできる。統合演算部9は、例えば複合電力システム全体の管理者が、所有し管理することができる。その場合、統合演算部9は、各電力システムの電流メータ18の記録部181から電流の計測値を取得し、それに基づいて電力価格に関する演算を行う。または、電流の計測値に加え、電圧計8から主幹直流バスMBの電圧を取得し、それらに基づいて電力価格に関する演算を行う場合もある。統合演算部9も所定のプログラムを実行するプロセッサ、例えばコンピュータのCPUにより実施できる。
【0031】
本発明による電力需給調整システムを実現する電力価格決定方法を説明する。説明に際し、各電力システムは各需要家が所有する電力システムとする。本発明の電力需給調整システムにより、各需要家が自己の所有する電力システムの電力需給を調節しようとするインセンティブが提供される。すなわち、電力価格が高くなれば需要を抑制しようとし、電力価格が安くなれば需要を促進しようとするインセンティブである。
【0032】
各需要家は、電力システム内において発電装置や系統電源装置および負荷機器を所有しており、他の電力システムに対して売電および買電を行う(例えば図1の電力システム1~3)。電力供給装置だけを所有してもよいが、この場合、売電のみ行う(例えば図1の電力システム4)。各電力システムは、たとえば、一般家庭や工場などの永続的に設置されるインフラに設けられてもよく、コンテナハウスやユニットハウスなどの一次的に設置されるインフラに設けられてもよい。
【0033】
図3は、複合電力システムの主幹直流バスMBの電圧が、ある瞬間に決まった状態の一例を示す。すなわち、最終的に主幹直流バスMBの電圧がバランスして安定した瞬時値となり、例えば280Vになったとする。このとき、一例として、電力システム1は直流バスB1の電圧が300V、電力システム2は直流バスB2の電圧が280V、電力システム3は直流バスB3の電圧が270V、そして電力システム4は直流バスB4の電圧が270Vの瞬時値にそれぞれ決まる。
【0034】
図4は、図3のように電力システム1~4の直流バスB1~B4の各電圧および複合電力システムの主幹直流バスMBの電圧の瞬時値がそれぞれ決まるときの、すなわち複合電力電力システム全体の電力需給バランスが決まるときの電力システム1~4の各々の電流メータ18、28、38、48の計測値の一例を示している。
【0035】
計測された電流がプラスのときは、当該電力システムから主幹直流バスMBに電力の供給を行っていることを意味する。すなわち、当該電力システム内の電力が余剰であることによって供給を行っている。また、計測された電流がマイナスのときは、当該電力システムが主幹直流バスMBから電力を消費していることを意味する。すなわち、当該電力システム内の電力が不足している。この例では、主幹直流バスMBの電圧が280Vのとき、電力システム1は10A、電力システム2は5Aの電流による電力を主幹直流バスMBに供給し、電力システム3は15Aの電流による電力を主幹直流バスMBから消費する。電力システム4は、直流バスB4の電圧が、主幹直流バスMBよりも低いため(図3参照)、電流が流れない(0A)。
【0036】
図5は、図3および図4の状態となった後、複合電力システム全体の発生電力に余剰が発生し、主幹直流バスMBの電圧が290Vまで上昇した状態を示す。このとき、各電力システム1~4から主幹直流直流バスMBへの供給電力、主幹直流バスMBからの消費電力は変わらないものとする。しかしながら、主幹直流バスMBの電圧が290Vとなったことにより、電流メータ18、28、38、48の計測値が、電力システム1は9.7A、電力システム2は4.8A、電力システム3は-14.5A、電力システム4は0.0Aとなる。図4の主幹直流バスMBの電圧が280Vのときと比べて、各電流値の絶対値がそれぞれ減少している。
【0037】
これは、各電力システム1~4の電力需要量が変わらないにも関わらず、売電または買電する価格が減少することを示す。すなわち、複合電力システム全体における電力需要量が一定のとき、システム全体の電力が余剰になったときには主幹直流バスMBの電圧が上昇し、その結果、電流が減少することによって売電または買電する価格が減少することになる。逆に、システム全体の電力が枯渇したときには主幹直流バスMBの電圧が降下し、その結果、電流が上昇することによって売電または買電する価格が増大することになる。これにより、電力の需給状況を反映した電力価格を決定することができる。
【0038】
電流メータによる電流の計測方法は、多様な方式とするができる。一例として、電流メータが、電流を連続的に計測する。計測値は、例えば図2に示した記録部181に記録される。そして、例えば図2に示した演算部182または統合演算部9が、連続的に記録された計測値を用い、その計測された電流の量および向き(プラスまたはマイナス)を所定の期間について積算する。その積算値に基づいて、当該電流メータを設けられた電力システムの他の電力システムに対する売電または買電の金額を決定することができる。
【0039】
別の例として、電流メータが、直流バスの電圧および主幹直流バスの電圧がバランスして安定またはほぼ安定したときの電流の瞬時値を計測する。計測値は、例えば図2に示した記録部181に記録される。同時に、例えば図2に示した電圧計8が、主幹直流バスの電圧の瞬時値を記録する。そして、例えば図2に示した演算部182または統合演算部9が、電流メータにより計測された電流の量および向きの瞬時値と、主幹直流バスの電圧の瞬時値とに基づいて、当該電流メータを設けられた電力システムの他の電力システムに対する売電または買電の金額を決定することができる。
【0040】
本発明によれば、複合電力システムにおける各電力システムと主幹直流バスMBとの間に電流メータをそれぞれ設置するだけで、簡易に電力の需給を反映した電力価格を決定することができる。したがって、需給状況を反映した電力価格を迅速に提供できる。さらに、本発明は、何らかの理由により、外部機関サーバダウンや通信インフラのダウンが起こった場合でも、需給調整を反映した電力価格の設定が可能であり、需給調整が可能である。
【0041】
本発明によれば、電力システムを所有する需要家は、買電価格が増大すれば需要(消費)を抑制しようとし、買電価格が減少すれば需要(消費)を促進しようとするインセンティブを与えられる。この需要の調節は、主幹直流バスMBの電圧に対して負帰還として働くことになる。その結果、主幹直流バスMBの電圧が適切な範囲で変動することが実現される。
【0042】
図6は、本発明の第2の実施形態を示す。第2の実施例では、電力供給する各電力システム1、2、3と、需要家4a、5a、6aの所有する電力消費する各電力システム4、5、6とが、別々に設けられている。電力システム4、5、6の負荷機器47、57、67と主幹直流バスMBとの間にも電流メータ48、58、68が設置される。この場合、電力システム1、2、3は発電のみを行い、電力システム4、5、6は消費のみを行う。電力システム1、2、3の管理者は、複合電力システム全体の管理者でもよい。そのような管理者は、電力システム4、5、6に電力供給を行い、各需要家4a、5a、6aから売電収入を得ることも可能である。
【0043】
以上に説明した本発明の実施形態の具体的構成は、図示の例に限られず、本発明の主旨に沿う範囲において多様な変形が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、2、3、4、5、6 電力システム
11、21、31 太陽光発電装置
12、22、32 風力発電装置
13 水力発電装置
15、25、35、45 系統電源装置
16、26、36 蓄電装置
17、27、37 負荷機器
18、28、38、48、58、68 電流メータ
181 記録部
182 演算部
24 ディーゼル発電装置
8 電圧計
9 統合演算部
B1、B2、B3、B4 直流バス
MB 主幹直流バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6