(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】タンク車
(51)【国際特許分類】
E01H 3/02 20060101AFI20231129BHJP
B60P 3/22 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E01H3/02
B60P3/22 Z
(21)【出願番号】P 2020014850
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小西 拓
(72)【発明者】
【氏名】下宇宿 研一
(72)【発明者】
【氏名】今岡 大策
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037716(JP,A)
【文献】特開平01-119360(JP,A)
【文献】特開2008-007994(JP,A)
【文献】特開2003-164541(JP,A)
【文献】特開2012-100819(JP,A)
【文献】米国特許第06619880(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00-15/00
A62C 2/00-99/00
B60P 3/22
B60P 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を積載するタンクを備えるタンク車であって、
前記タンク内の液体を排出する、又は該タンク内へ液体を吸入する第1の流路と、
該第1の流路からの液体を吐出する吐出部へ案内する第2の流路と、
前記タンクとは別の貯留部内に貯留されている液体を吸入する第3の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路と前記第3の流路とが接続される切替弁と、
前記タンク内の液体が前記吐出部へ移動するように前記第1の流路と前記第2の流路とが連通する状態と前記貯留部内の液体が前記タンクへ移動するように前記第3の流路と前記第1の流路とが連通する状態とに前記切替弁を切り替え操作する制御部と、を備え、
前記第2の流路に開閉可能な第2の開閉弁を設け
るとともに、前記第3の流路に開閉可能な第3の開閉弁を設け
、
前記制御部は、前記タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、前記第2の開閉弁を閉じ操作してから、前記第3の流路と前記第1の流路とが連通するように前記切替弁を切り替え操作することを特徴とするタンク車。
【請求項2】
前記第2の流路が、前記切替弁に接続される配管と、該配管の下流端において分岐された2本の分岐配管のうちの一方の分岐配管とで構成され、
前記第3の流路が、前記配管と、前記2本の分岐配管のうちの他方の分岐配管とで構成され、
前記第2の開閉弁が、前記一方の分岐配管に設けられ、前記第3の開閉弁が、前記他方の分岐配管に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタンク車。
【請求項3】
前記制御部は、前記タンク内の液体を前記吐出部へ吐出する吐出指令信号を受信した時に、前記第3の開閉弁を閉じ操作してから、前記第1の流路と前記第2の流路とが連通するように前記切替弁を切り替え操作することを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク車。
【請求項4】
前記タンクは、前記第3の流路に呼び液である液体を供給するための呼び液貯留部を備え、前記第1の流路は、前記呼び液貯留部からの液体を前記第3の流路に供給する又は前記呼び液貯留部に液体を吸入することで前記タンク内へ液体を吸入する第4の流路と、該第4の流路と下流側で合流され前記タンクに設けられた排出口から該タンク内の液体を排出する第5の流路と、を備え、前記第4の流路に開閉可能な第4の開閉弁を設けるとともに、前記第5の流路に開閉可能な第5の開閉弁を備え、前記制御部は、前記タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、前記第2の開閉弁及び前記第5の開閉弁を閉じてから、前記第3の流路と前記第4の流路とが連通するように前記切替弁を切り替えるとともに前記第3の開閉弁及び前記第4の開閉弁を開放することを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1項に記載のタンク車。
【請求項5】
前記制御部は、前記タンク内の液体を前記吐出部へ吐出する吐出指令信号を受信した時に、前記第3の開閉弁と前記第4の開閉弁を閉じてから、前記第5の流路と前記第2の流路とが連通するように前記切替弁を切替操作することを特徴とする請求項4に記載のタンク車。
【請求項6】
前記第2の開閉弁を開閉操作する操作スイッチを備え、前記制御部は、前記タンク内の液体を前記吐出部へ吐出する吐出指令信号及び前記切替弁の切替完了信号を受信した時に、前記操作スイッチによる前記第2の開閉弁の開閉操作が行えるように制御することを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のタンク車。
【請求項7】
前記第2の開閉弁を開閉操作する操作スイッチを備え、前記制御部は、前記タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、前記操作スイッチによる前記第2の開閉弁の開閉操作を無視するように制御することを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のタンク車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を積載するタンクを備えるタンク車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、タンク内へ液体である水を吸入して積載し、積載した水を放水することができるタンク車が開示されている。このタンク車は、水を積載するタンク内の水の吐出とタンク内への水の吸入とを切り替えるための3つの切替バルブを備えている。
【0003】
前記切替バルブは、弁本体に3つの配管が接続される3つの口(ポート)を備え、弁本体の内部に備える弁体が回転して3つの口を開閉することによって、流路を切り替えてタンク内の水の吐出とタンク内への水の吸入とを切り替えるようにしている。
【0004】
上記構成の切替バルブでは、弁体が回転している途中において全ての口が連通することがある。この連通状態になると、タンク内の水が、配管を通して意図していないところから外部に流出してしまうことがあり、早期改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、切替中に意図していないところから流体が流出してしまうことを防止することができるタンク車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタンク車は、液体を積載するタンクを備えるタンク車であって、前記タンク内の液体を排出する、又は該タンク内へ液体を吸入する第1の流路と、該第1の流路からの液体を吐出する吐出部へ案内する第2の流路と、前記タンクとは別の貯留部内に貯留されている液体を吸入する第3の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路と前記第3の流路とが接続される切替弁と、前記タンク内の液体が前記吐出部へ移動するように前記第1の流路と前記第2の流路とが連通する状態と前記貯留部内の液体が前記タンクへ移動するように前記第3の流路と前記第1の流路とが連通する状態とに前記切替弁を切り替え操作する制御部と、を備え、前記第2の流路に開閉可能な第2の開閉弁を設けるととともに、前記第3の流路に開閉可能な第3の開閉弁を設けたことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、切替弁を切り替える前に、例えば第2の流路に設けた第2の開閉弁及び第3の流路に設けた第3の開閉弁を閉じておけば、切替弁の切り替え時に、全ての口が連通したとしても、タンク内の液体が第1流路を介して第2の流路及び第3の流路へ流出することを防止できる。これにより、切替中に意図していないところから流体が流出してしまうことを防止することができる。切り替えた後は、第1の流路と第2の流路とが連通することによって、タンク内の液体を第1の流路から第2の流路を介して吐出部に案内して外部に吐出させることができる。また、第3の流路と第1の流路とが連通することによって、第3の流路からの液体を第1の流路を介してタンクへ吸入することができる。
【0009】
また、本発明のタンク車は、前記制御部が、前記タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、前記第2の開閉弁を閉じ操作してから、前記第3の流路と前記第1の流路とが連通するように前記切替弁を切り替え操作する構成であってもよい。
【0010】
上記のように、制御部が、タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、第2の開閉弁を閉じ操作してから、切替弁を切り替え操作することによって、切替弁の切り替え時に、全ての口が連通したとしても、第1の流路からの流体が第2の流路へ流れ込んで吐出部を通して外部に流出することを防止できる。
【0011】
また、本発明のタンク車は、前記制御部が、前記タンク内の液体を前記吐出部へ吐出する吐出指令信号を受信した時に、前記第3の開閉弁を閉じ操作してから、前記第1の流路と前記第2の流路とが連通するように前記切替弁を切り替え操作する構成であってもよい。
【0012】
上記構成によれば、制御部は、タンク内の液体を吐出部へ吐出する吐出指令信号を受信した時に、第3の開閉弁を閉じ操作してから、切替弁を切り替え操作することによって、全ての口が連通したとしても、第1の流路からの流体が第3の流路へ流れ込んで外部に流出することを防止できる。
【0013】
また、本発明のタンク車は、前記タンクが、前記第3の流路に呼び液である液体を供給するための呼び液貯留部を備え、前記第1の流路は、前記呼び液貯留部からの液体を前記第3の流路に供給する又は前記呼び液貯留部に液体を吸入することで前記タンク内へ液体を吸入する第4の流路と、該第4の流路と下流側で合流され前記タンクに設けられた排出口から該タンク内の液体を排出する第5の流路と、を備え、前記第4の流路に開閉可能な第4の開閉弁を設けるとともに、前記第5の流路に開閉可能な第5の開閉弁を備え、前記制御部は、前記タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、前記第2の開閉弁及び前記第5の開閉弁を閉じてから、前記第3の流路と前記第4の流路とが連通するように前記切替弁を切り替えるとともに前記第3の開閉弁及び前記第4の開閉弁を開放する構成であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、制御部は、呼び液を供給する呼び液供給指令信号を受信した時に、第2の開閉弁及び第5の開閉弁を閉じてから、切替弁を切り替えるとともに第3の開閉弁及び第4の開閉弁を開放することによって、全ての口が連通したとしても、タンク内の液体が第2の流路から吐出部を通して外部へ流出することを防止できる。
【0015】
また、本発明のタンク車は、前記制御部が、前記タンク内の液体を前記吐出部へ吐出する吐出指令信号を受信した時に、前記第3の開閉弁と前記第4の開閉弁を閉じてから、前記第5の流路と前記第2の流路とが連通するように前記切替弁を切替操作する構成であってもよい。
【0016】
上記構成によれば、制御部は、タンク内の液体を吐出部へ吐出する吐出指令信号を受信した時に、第3の開閉弁と第4の開閉弁を閉じてから、切替弁の切替操作を行うことによって、全ての口が連通したとしても、タンク内の流体が第5の流路から切替弁を介して第2の流路を通って外部へ流出することを防止できる。
【0017】
また、本発明のタンク車は、前記第2の開閉弁を開閉操作する操作スイッチを備え、前記制御部は、前記タンク内の液体を前記吐出部へ吐出する吐出指令信号及び前記切替弁の切替完了信号を受信した時に、前記操作スイッチによる前記第2の開閉弁の開閉操作が行えるように制御する構成であってもよい。
【0018】
上記構成によれば、制御部は、タンク内の液体を吐出部へ吐出する吐出指令信号及び切替弁の切替完了信号を受信した時に、操作スイッチによる第2の開閉弁の開放操作を行って、タンク内の流体が、開放された第2の開閉弁を通って外部に吐出される。
【0019】
また、本発明のタンク車は、前記第2の開閉弁を開閉操作する操作スイッチを備え、前記制御部は、前記タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、前記操作スイッチによる前記第2の開閉弁の開閉操作を無視するように制御する構成であってもよい。
【0020】
上記構成によれば、制御部は、タンク内へ液体を吸入する吸入指令信号を受信した時に、操作スイッチによる第2の開閉弁の開閉操作を無視するので、第2の開閉弁が開放されてタンク内へ吸入する液体が第2の流路を通して外部に流出することを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、切替弁を切り替える前に、第2の流路及び前記第3の流路のそれぞれに設けた開閉弁を閉じることによって、切替中に意図していないところから流体が流出してしまうことを防止することができるタンク車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4A】自動呼び水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図4B】自動呼び水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図4C】自動呼び水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図4D】自動呼び水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図5A】タンクに水を吸入する時の動作状態を示す説明図である。
【
図5B】タンクに水を吸入する時の動作状態を示す説明図である。
【
図5C】タンクに水を吸入する時の動作状態を示す説明図である。
【
図6A】停止を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図6B】停止を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図7A】放水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図7B】放水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図7C】放水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【
図7D】放水を行う時の動作状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るタンク車としての散水車1を、
図1に基づいて説明する。散水車1は、走行用駆動源であるエンジン2が下部に搭載された運転室3と、フレーム4に搭載され放水用の水を積載する前後方向に長いタンク5と、タンク5内の水を吐出する又はタンク5内に水を吸入するように流路を変更するための切替弁(この実施形態では4方弁)9(
図2参照)と、切替弁9に接続されて水を圧送するためのポンプ6と、ポンプ6の駆動により水が配管を通して圧送されて放水するための前方放水ノズル7及び後方放水ノズル8と、を備えている。ポンプ6は、エンジン2の動力を用いて駆動され、エンジン2の回転数が高くなればなるほど、ポンプ6の駆動力が大きくなるように構成されている。尚、エンジン2の回転数は、アクセルペダルの踏み込み量により変化する他、車体に設けた回転式のエンジン回転数設定スイッチ(図示せず)の回転位置に応じて変化するようになっている。
【0024】
図2に示すように、タンク5は、呼び液である呼び水を貯留しておくための呼び水室10を備えている。また、タンク5は、水の流入量が設定量(満水)になったことを検出する検出手段としての満水センサ11を備えている。呼び水室10は、タンク5のタンク車の前方の底部に位置している。また、呼び水室10は、後述する第4の流路R4に接続され、タンク5に形成される後述する排出口5Aが、後述する第4の流路R4とは別の第5の流路R5に接続されているため、タンク5内の水を全て使い切った場合でも、呼び水室10内の水は排出されずに残った状態となる。また、呼び水室10の水を配管内に充填することで配管内の空気抜きを行う。これにより、水の流動を迅速に行えるようにしている。前記第4の流路R4と前記第5の流路R5とで、タンク5内の液体を排出する、又はタンク5内へ液体を吸入する第1の流路R1を構成している。
【0025】
また、タンク5の底部には、タンク5内の水をタンク5の前側の底部から下方へ排出するための排出口5Aが形成され、この排出口5Aに第1タンク配管12の一端が接続されている。また、タンク5に備える呼び水室10の底部に形成された呼び水口5Bに、呼び水配管13の一端が接続され、呼び水配管13の他端が前記第1タンク配管12の下流側で合流されるように接続されている。第1タンク配管12には、開閉可能な第5の開閉弁であるタンク弁14が設けられ、呼び水配管13には、開閉可能な第4の開閉弁である呼び水弁15が設けられている。第1タンク配管12と呼び水配管13との合流部には合流配管16の一端が接続されて、合流配管16の他端(下流側端部)は、切替弁9の1つの口(ポート)9Aに接続されている。前記のように、第1タンク配管12の下端部(下流側端部)と呼び水配管13の下端部(下流側端部)とが一本の合流配管16によって合流されている。
【0026】
また、タンク5内の水をタンク5の後側の底部から下方へ排出するための第2タンク配管17が接続されている。第2タンク配管17には、開閉可能な第6の開閉弁である後方放水弁18が設けられている。また、第2タンク配管17の下流端には、分岐された2本の分岐配管19,20が接続され、それら分岐配管19,20のそれぞれには、手動操作弁21が設けられ、手動操作弁21,21の下流端に後方放水ノズル8,8が接続されている。
【0027】
切替弁9は、4つの口9A,9B,9C,9Dを備えた弁本体(図示せず)と、弁本体の内部に回転可能に配置された弁体(図示せず)と、を備えた汎用の4方弁から構成されている。弁体に備える4個の口9A,9B,9C,9Dは、呼び水室10内の水を排出する又は呼び水室10内へ水を吸入することでタンク5内へ水の吸入を行う呼び水口5Bとタンク5内の水を排出する排出口5Aとが接続される第1の口9Aと、ポンプ6の吸引口へ配管6Aを介して接続される第2の口9Bと、ポンプ6から圧送される水を吐出する吐出口に配管6Bを介して接続される第3の口9Cと、タンク5からの水を吐出する吐出口と後述する貯水槽31からの水を供給する吸入口とが兼用された第4の口9Dである。ポンプ6から圧送される側の流路には、リリーフ弁22が設けられている。
【0028】
第4の口9Dに接続される配管23が、下流端において二本の分岐配管24,25に分岐されている。一方の分岐配管24には、第2の開閉弁である前方放水弁26が設けられ、一方の分岐配管24の下流端には、分岐された2本の分岐配管27,28が接続され、それら分岐配管27,28のそれぞれには、手動操作弁29が設けられ、手動操作弁29,29の下流端に前方放水ノズル7,7が接続されている。これら前方放水ノズル7,7が水を外部に吐出する吐出部を構成する。他方の分岐配管25には、第3の開閉弁である吸水弁30が設けられ、他方の分岐配管25の下流端には、貯留部である貯水槽31の水Wの中に投入されるストレーナ32を備えている。貯水槽31は、池や川の他、水を貯留することができる容器やタンク等であってもよい。また、第4の口9Dに接続される配管23の途中には、放水配管33が分岐して接続されている。放水配管33には、手動操作により放水口34を開閉可能な放水弁35が設けられている。
【0029】
第5の流路R5は、第1タンク配管12と合流配管16とでタンク5の底部と切替弁9の第1の口9Aと間に形成される流路である。また、第4の流路R4は、呼び水配管13と合流配管16とでタンク5の呼び水室10の底部と切替弁9の第1の口9Aと間に形成される流路である。また、配管(分岐配管24,25が合流する合流配管)23と一方の配管24とで、分岐配管27,28と切替弁9の第4の口9Dと間に第2の流路R2が形成される。また、配管23と他方の配管25とで、ストレーナ32と切替弁9の第4の口9Dと間に第3の流路R3が形成される。
【0030】
図3は、本発明の制御構成を示すブロック図である。放水を行う準備を行うための放水釦36からのON-OFF信号、放水釦36が押されて放水準備が整った後に放水するために第2の開閉弁26を開閉操作する前側用操作スイッチ37からの開閉信号、第6の開閉弁である後方放水弁18を開閉操作する後側用操作スイッチ38からの開閉信号、呼び水釦39からのON-OFF信号、吸入釦40からのON-OFF信号、満水センサ11からの満水信号が入力される制御部Sを備え、制御部Sは、入力される信号に応じて、第2の開閉弁~第6の開閉弁26,30,15,14,18を開閉する操作、ポンプ6の駆動及び停止操作、切替弁9の切替操作を行うようにしている。
【0031】
放水釦36は、放水を開始または終了するための押し釦である。前側用操作スイッチ37は、前方放水ノズル7からの放水を開始する時にONするためのスイッチであり、前側用操作スイッチ37の操作により前方放水弁26を開放または閉じ状態に切り替える。また、後側用操作スイッチ38は、後方放水ノズル8からの放水を開始する時にONするためのスイッチであり、後側用操作スイッチ38の操作により後方放水弁18を開放または閉じ状態に切り替える。なお、後側用操作スイッチ38をONして放水を行う場合は、ポンプ6からの圧送される水ではなく、タンク5内の水を自重で落下させて後方放水ノズル8からの放水を行う。尚、ポンプ6から圧送される水が後方放水ノズル8から放水されるように構成してもよい。ここでは、前側用操作スイッチ37と後側用操作スイッチ38とを設けているが、同時に放水を開始できる1つの操作スイッチであってもよい。
【0032】
呼び水釦39は、呼び水室10からの水を第4の流路R4から第3の流路R3へ流すための押し釦である。吸入釦40は、タンク5内への水の吸入を開始するための押し釦である。
【0033】
前述した押し釦やスイッチを操作することにより制御部Sが開閉弁26,30,15,14,18及び切替弁9を自動的に駆動制御することについて説明する。まず、運転席内のPTOスイッチ(図示せず)を操作してエンジンとポンプ6とを接続し、ポンプ6を始動する。
【0034】
[呼び水動作]
呼び水釦39をONすると、制御部Sは、タンク弁14、前方放水弁26、後方放水弁18の3つの弁を閉じてから(
図4A参照)、閉じ状態の呼び水弁15及び閉じ状態の吸水弁30を開放するとともに、第4の流路R4と第3の流路R3が連通するように切替弁9を切り替える(
図4B参照)。このように切り替えることによって、切替弁9の切り替え時に、全ての口9A~9Dが連通したとしても、前方放水ノズル7から水が漏れてしまうことを防止できる。尚、閉じ状態の呼び水弁15及び閉じ状態の吸水弁30を開放する前に、切替弁9を切り替えたほうがより好ましい。また、後方放水弁18を閉じているので、後方放水ノズル8から水が漏れてしまうことも防止できる。この状態になると、呼び水が呼び水室10から第4の流路R4に流れてから、切替弁9を通って第3の流路R3へ流れる(
図4C参照)。これにより、呼び水室10の水を4つの配管13,16,23,25内に充填することで4つの配管13,16,23,25内の空気抜きを行うことで、水の流動を迅速に行えるようにしている。
制御部Sは、呼び水弁15及び吸水弁30の開放と切替弁9の切り替え完了から所定時間経過するまで待ってから、呼び水をポンプ6側へ引き寄せるように(第4の口9Dを第2の口9Bに、第3の口を第1の口9Aにそれぞれ連通するように)切替弁9を切り替える。ポンプ6の駆動により、前方側の配管13,16,6A,6B,23,25に水が充填されることになる(
図4D参照)。ポンプ6の駆動を継続することにより、貯水槽31からの水が、第3の流路R3、切替弁9、ポンプ6、第4の流路R4を通って呼び水室10を介してタンク5内に水が吸入される(
図5C参照)。タンク5に水を吸入することにより満水センサ11からの満水信号を制御部Sが受信すると、停止動作(後述)に移行する。
前記のように所定時間(例えば20秒間)経過することによって、制御部Sは、前記4つの配管13,16,23,25の内部に水が充填されたと判断している。
【0035】
[吸水動作]
次に、吸入釦40を押すと、タンク5内へ水を吸入する吸入指令信号が出力される。この吸入指令信号を制御部Sが受信した時に、前述したように、タンク弁14、前方放水弁26、後方放水弁18を閉じてから(
図5A参照)、閉じ状態の呼び水弁15及び閉じ状態の吸水弁30を開放するとともに、第4の流路R4と第3の流路R3とがポンプ6を介して連通するように(第4の口9Dを第2の口9Bに、第3の口9Cを第1の口9Aにそれぞれ連通するように)切替弁9を切り替える(
図5B参照)。このように切り替えることによって、切替弁9の切り替え時に、全ての口9A~9Dが連通したとしても、前方放水ノズル7から水が漏れてしまうことを防止できる。尚、閉じ状態の呼び水弁15及び閉じ状態の吸水弁30を開放する前に、切替弁9を切り替えたほうがより好ましい。また、後方放水弁18を閉じているので、後方放水ノズル8から水が漏れてしまうことも防止できる。この切替弁9の切り替えが完了すると、ポンプ6の駆動により、貯水槽31からの水が、第3の流路R3、切替弁9、ポンプ6、第4の流路R4を通って呼び水室10を介してタンク5内に水が吸入される(
図5C参照)。タンク5に水を吸入することにより満水センサ11からの満水信号を制御部Sが受信すると、停止動作に移行する。
【0036】
[停止動作]
前記吸入が完了すると、前記制御部Sは、停止動作に移行する。具体的には、
図6Aに示すように、全ての弁である、タンク弁14、呼び水弁15、前方放水弁26、吸水弁30、後方放水弁18を制御部Sが閉じ操作する。こののち、切替弁9を停止位置に切り替えて(
図6B参照)、停止動作が完了する。この場合も、全ての弁(タンク弁14、呼び水弁15、前方放水弁26、吸水弁30、後方放水弁18)が閉じられているため、切替弁9の切り替え時に、全ての口9A~9Dが連通したとしても、切替中に意図していないところから流体(水)が流出してしまうことを防止することができる。
【0037】
なお、停止釦を更に設け、吸入の準備から満水センサ11の検知前までの間に停止釦を操作した際に停止動作を実行するようにしてもよい。
制御部Sは、呼び水釦39がON操作されてからまたは吸入指令信号を受信してから切替弁9を停止位置に切り替え完了するまでの間、前記前側用操作スイッチ37による第2の開閉弁(前方放水弁26)の開閉操作を無視する構成にしておけば、第2の開閉弁(前方放水弁26)が開放されてタンク5内へ吸入する液体が第2の流路R2(
図2参照)で吐出部(前方放水ノズル7)へ案内され、外部に流出することを防止できる。
【0038】
[放水動作]
次に、放水動作について説明すれば、まず、放水釦36が押されると、放水を行うための準備を開始する。つまり、放水釦36からのON信号、つまりタンク5内の水を吐出部(前方放水ノズル7,7)へ吐出する吐出指令信号を制御部Sが受信すると、
図7Aに示すように、制御部Sは、呼び水弁15、タンク弁14、吸水弁30の3個の弁を閉じてから、閉じられているタンク弁14を開放する(
図7B参照)とともに、第1の口9Aと第2の口9Bとが連通し、かつ、第3の口9Cと第4の口9Dとが連通するように切替弁9を切り替える。これにより、切替弁9の切り替え時に、全ての口9A~9Dが連通したとしても、タンク5内の水が第2の流路R2を通して吐出部(前方放水ノズル7,7へ吐出されることを防止できる。尚、閉じられているタンク弁14を開放する前に、切替弁9を切り替えたほうがより好ましい。そして、第5の流路R5からの水が、切替弁9、ポンプ6を通して第2の流路R2に流れる(
図7C参照)。
【0039】
このとき、制御部Sが前記切替弁9の切替完了信号を受信した時、前側用操作スイッチ37の開閉操作が行えるように構成しておけば、切替弁9が切り替えられた後に、前側用操作スイッチ37をONすることによって、前方放水ノズル7から水を放水することができるが、常に、前側用操作スイッチ37の開閉操作が行えるように構成してもよい。また、後側用操作スイッチ38をONにすることによって、後方放水ノズル8からも放水することができる。前記前側用操作スイッチ37及び後側用操作スイッチ38の操作が有効か無効かを、ランプや音声による報知手段により操作者(オペレータ)に報知するようにしてもよい。尚、
図7A~
図7Dでは、前側用操作スイッチ37及び後側用操作スイッチ38の操作が有効である場合を示している。
【0040】
また、例えば散水車1のパーキングブレーキをONにしている停車状態である場合には、
図7Dに示すように、放水配管33の放水弁35を手動で開放し、放水配管33からの放水が行える場合を示している。この放水時には、前記エンジン回転数設定スイッチを操作することによって、ポンプ6の出力を調整して放水量を変更することが可能である。
【0041】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。例えば、タンク車としては、散水車に限らず、ガソリン、軽油、灯油などの液体を積載可能なタンクローリが挙げられ、液体を積載するタンクを備える各種のタンク車に本発明は適用することができる。
【0042】
上記実施形態では、走行用駆動源であるエンジン2の出力でポンプ6を駆動したが、走行用駆動源であるエンジン2とは別のエンジンや電動モータでポンプ6を駆動してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、タンク5内の液体を吐出する又はタンク5内へ液体を吸入するための機構として渦巻式のポンプ6を用いたが、ダイヤフラム式・ギヤ式・ベーン式などの各種のポンプであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、吸水のための配管と放水のための配管とを兼用しているが、吸水や放水専用の配管をそれぞれタンク5に設けてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、4方弁を用いたが、3方弁や5方弁以上の切替弁を用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、第2の開閉弁26及び第3の開閉弁30を制御部Sにより開閉操作するようにしたが、手動操作により開閉操作してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、車両に備えたポンプ6により液体の吸入及び吐出を行うようにしたが、車両に備えていない別のポンプ6により液体の吸入及び吐出を行うようにしてもよい。また、ポンプを省略して、タンク内の液体を自重により吐出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…散水車、2…エンジン、3…運転室、4…フレーム、5…タンク、5A…排出口、5B…呼び水口、6…ポンプ、6A,6B…配管、7…前方放水ノズル、8…後方放水ノズル、9…切替弁(4方弁)、9A…第1の口、9B…第2の口、9C…第3の口、9D…第4の口、10…呼び水室、11…満水センサ、12…第1タンク配管、13…呼び水配管、14…タンク弁(第5の開閉弁)、15…呼び水弁(第4の開閉弁)、16…合流配管、17…第2タンク配管、18…後方放水弁(第6の開閉弁)、19,20…分岐配管、21…手動操作弁、22…リリーフ弁、23…配管(合流配管)、24,25…分岐配管、26…前方放水弁(第2の開閉弁)、27,28…分岐配管、29…手動操作弁、30…吸水弁(第3の開閉弁)、31…貯水槽(貯留部)、32…ストレーナ、33…放水配管、34…放水口、35…放水弁、36…放水釦、37…前側用操作スイッチ、38…後側用操作スイッチ、39…呼び水釦、40…吸入釦、R1…第1の流路、R2…第2の流路、R3…第3の流路、R4…第4の流路、R5…第5の流路、S…制御部、W…水