(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】冷凍倉庫用の自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20231129BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20231129BHJP
F25D 13/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B65G1/00 521A
B65G1/04 521
F25D13/00 A
(21)【出願番号】P 2020017698
(22)【出願日】2020-02-05
(62)【分割の表示】P 2019054713の分割
【原出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏志
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04286911(US,A)
【文献】国際公開第2018/086883(WO,A1)
【文献】特開平03-238202(JP,A)
【文献】特開2019-001655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を冷凍保管可能であり、冷凍機を備え、断熱壁、及び断熱処理がされた天井を有する冷凍倉庫用の自動倉庫システムであって、
複数の荷を冷凍保管する冷凍保管棚と、
前記冷凍保管棚に保管されている荷を搬送可能な搬送車と、
前記搬送車へ電力を供給する給電端子を備える給電部と、を備え、
前記搬送車は、該搬送車を駆動する駆動装置と、該駆動装置に給電する蓄電池と、前記給電端子と接触可能な位置に配置され前記蓄電池と電気的に接続された受電端子とを有し、
本自動倉庫システムは、前記受電端子および前記給電端子の少なくとも一方の表面の霜を除去するための霜除去手段を有し、
前記霜除去手段は、前記搬送車が移動することで前記受電端子と接触し、霜を掻き落とす掻き落とし部材である、冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項2】
前記冷凍保管棚は、複数段の保管ステージを備え、各保管ステージの下部には、前記搬送車が走行可能な走行空間が設けられており、
前記各保管ステージは、第1方向に並んだ複数の冷凍保管部からなる保管行を複数備え、
前記複数の保管行は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って互いに隣接して配置される、請求項1に記載の冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項3】
前記給電部は、前記走行空間を走行する前記搬送車がアクセス可能な位置に設けられ、
前記霜除去手段は、前記走行空間を移動する前記搬送車の前記受電端子に対応する位置に設けられる、請求項2に記載の冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項4】
荷を冷凍保管可能であり、冷凍機を備え、断熱壁、及び断熱処理がされた天井を有する冷凍倉庫用の自動倉庫システムであって、
複数の荷を冷凍保管する冷凍保管棚と、
前記冷凍保管棚に保管されている荷を搬送可能な搬送車と、
前記搬送車へ電力を供給する給電端子を備える給電部と、を備え、
前記搬送車は、該搬送車を駆動する駆動装置と、該駆動装置に給電する蓄電池と、前記給電端子と接触可能な位置に配置され前記蓄電池と電気的に接続された受電端子とを有し、
本自動倉庫システムは、前記受電端子および前記給電端子の少なくとも一方の表面の霜を除去するための霜除去手段を有し、
前記霜除去手段は、前記搬送車を駆動させて前記受電端子の表面の霜を振り落とす霜除去運転である、冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項5】
荷を冷凍保管可能であり、冷凍機を備え、断熱壁、及び断熱処理がされた天井を有する冷凍倉庫用の自動倉庫システムであって、
複数の荷を冷凍保管する冷凍保管棚と、
前記冷凍保管棚に保管されている荷を搬送可能な搬送車と、
前記搬送車へ電力を供給する給電端子を備える給電部と、を備え、
前記搬送車は、該搬送車を駆動する駆動装置と、該駆動装置に給電する蓄電池と、前記給電端子と接触可能な位置に配置され前記蓄電池と電気的に接続された受電端子とを有し、
本自動倉庫システムは、前記受電端子および前記給電端子の少なくとも一方の表面の霜を除去するための霜除去手段を有し、
前記蓄電池の電池残量をモニタリングして、充電時の前記電池残量の増加量が所定値以下である場合に充電を中断し、前記霜除去手段による霜除去を行う、冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項6】
前記冷凍倉庫は、前記断熱壁及び前記天井で囲まれた閉鎖空間に隣接し、当該閉鎖空間よりも高い温度で管理される前室と、前記閉鎖空間及び前記前室との間の入出庫部とを備え、前記搬送車は、前記入出庫部まで荷を搬送する、請求項2から5のいずれか1項に記載の冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項7】
前記搬送車は、全ての前記保管ステージに配置される、請求項2
または3に記載の冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項8】
前記冷凍倉庫は、前記断熱壁及び前記天井で囲まれ前記搬送車が作業する閉鎖空間と、作業員が作業するための前室と、前記閉鎖空間及び前記前室との間の入出庫部を備える、請求項2から5のいずれか1項に記載の冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【請求項9】
前記冷凍倉庫は、前記断熱壁及び前記天井で囲まれ前記搬送車が作業する閉鎖空間と、作業員が作業するための前室と、前記閉鎖空間及び前記前室との間の入出庫部を備え、
前記搬送車は、前記入出庫部に搬入された荷を指定された前記冷凍保管部まで搬送し、かつ指定された前記冷凍保管部に保管されている荷を前記入出庫部まで搬送する、請求項
2に記載の冷凍倉庫用の自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍倉庫用の自動倉庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍食品等が保管される冷凍倉庫が知られている。例えば、特許文献1には、フォークリフトを用いて、冷凍倉庫内に設けられた棚への冷凍食品等の入庫、及び、棚からの冷凍食品等の出庫を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された冷凍倉庫は、その内部に、フォークリフトが走行可能な空間を広く設ける必要がある。フォークリフトが走行可能な空間を広く設けると、冷凍倉庫全体での冷凍食品等の荷の収容効率が低下し、更には、空間が大きくなることにより、冷凍倉庫内を低温に保つために必要な電力が増加してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の冷凍倉庫用の自動倉庫システムは、荷を冷凍保管可能な自動倉庫システムであって、複数の荷を冷凍保管する冷凍保管棚と、冷凍保管棚に保管されている荷を搬送可能な搬送車と、を備え、冷凍保管棚は、複数段の保管ステージを備え、各保管ステージの下部には、搬送車が走行可能な走行空間が設けられていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、荷の収容効率を向上させ、節電効果の向上を期待できる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、荷の収容効率を向上させ、節電効果の向上を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る自動倉庫システムの一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】自動倉庫システムの保管棚の配置を示す平面図である。
【
図3】自動倉庫システムを概略的に示す正面図である。
【
図6】実施形態及び比較例の倉庫システムの保管棚の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態、比較例、及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
また、第1、第2などの序数を含む用語が多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る自動倉庫システムの一例を概略的に示す平面図である。
図2は、自動倉庫システムの保管棚の配置を示す平面図である。
図3は、自動倉庫システムを概略的に示す正面図である。これらの図では、説明に重要でない柱や梁などの記載を一部省略しており、以下の図についても同様である。
【0012】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX方向、X方向に直交する水平な方向をY方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定める。なお、以降の説明ではXYZ直交座標系を用いて説明するが、必ずしもX方向、Y方向、Z方向は互いに直交していなくとも、略90度で交差していればよい。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸の正方向側を「右側」、X軸の負方向側を「左側」ということもある。また、Y軸の正方向側を「前側」、Y軸の負方向側を「後側」、Z軸の正方向側を「上側」、Z軸の負方向側を「下側」ということもある。このような方向の表記は自動倉庫システムの構成を制限するものではなく、自動倉庫システムは、用途に応じて任意の構成で使用されうる。
【0013】
〔冷凍倉庫用の自動倉庫システムの全体構成〕
まず、
図1乃至
図3を参照しながら自動倉庫システムの全体構成を先に説明する。自動倉庫システム1は、例えば-30℃の低温環境で荷を冷凍保管可能な倉庫内で、冷凍食品等の荷2を自動的に入庫、出庫、及び荷揃えすることができるシステムである。自動倉庫システム1は、断熱壁4及び断熱処理が施された天井6で囲まれた閉鎖空間A内に、荷2を冷凍保管する冷凍保管棚8と、冷凍保管棚8に保管されている荷2を搬送する搬送車としての台車10とを備えている。また、倉庫内には、台車10が走行するためのレール12が敷設されている。更に、自動倉庫システム1は、閉鎖空間A内の空気を冷却して、閉鎖空間A内に循環させる冷凍機Rを備えている。
【0014】
本実施形態による自動倉庫システム1は、冷凍機Rを用いることで倉庫内の温度を、例えば魚介類、冷凍食品を冷凍保管可能な-15℃以下の低温環境で、用途によっては、-30℃~-25℃付近の低温環境で定温管理することができる既設の冷凍倉庫内に、冷凍保管棚8、台車10、レール12等を増設することで実現可能である。したがって、自動倉庫システム1が適用される建物自体は、一般的に知られている冷凍倉庫と同様の構造を有している。冷凍機Rは、図示のように、閉鎖空間Aの端に配置され1つの冷凍機Rで閉鎖空間Aの温度調整を行うものであっても良いし、荷2の保管スペース(例えば、後述する「保管行」)に沿って複数の冷凍機を配置しても良い。また、冷凍機Rの本体自体を閉鎖空間Aの外部に配置し、冷凍機Rで発生させた冷気を、配管を通して閉鎖空間A内に送り込むものであっても良い。
【0015】
冷凍保管棚8は、荷2を保管する。レール12は、冷凍保管棚8が延びる方向に沿ってX軸方向に延在する。台車10は、レール12上をX軸方向に走行する。台車10と、レール12と、後述する台車の走行空間26を総括するときは単に「内部搬送機構」ということがある。台車10の動作は制御部14によって制御される。
【0016】
なお、本実施形態では、荷2をパレットに載せた状態で扱うが、これに限られず、パレットを用いずに荷を単独で扱うようにしてもよい。なお、荷2をパレットに載せた状態で搬送することを、単に荷2を搬送するという。
【0017】
自動倉庫システム1の入庫・出庫動作の概要を説明する。自動倉庫システム1は、例えばフォークリフト(不図示)によって倉庫外部からの荷2を倉庫の前室16に面した入出庫部18に搬入する。入出庫部18は、-5℃~5℃の温度で管理されている前室16と、低温環境の倉庫内部との境目に設けられる。荷2の入庫時には、自動倉庫システム1は、入出庫部18に搬入された荷2を、内部搬送機構によって冷凍保管棚8の所定位置に搬送して保管する。また、出庫時には、自動倉庫システム1は、冷凍保管棚8の所定位置で保管していた荷2を、内部搬送機構によって入出庫部18に搬送する。出荷時に入出庫部18まで搬送された荷2は、例えばフォークリフトによって倉庫外部に搬出される。
【0018】
〔冷凍保管棚〕
冷凍保管棚8は、多数の荷2を保管可能な、いわば高密度保管型の保管スペースである。冷凍保管棚8の構成は、複数の荷を収容・保管可能であれば、特に限定されない。冷凍保管棚8は、複数段の保管ステージ20を備えており、この実施形態では上下方向に層状に重ねられた3段の保管ステージ20を備えている。各保管ステージ20は、Y軸方向に隙間なく隣接して並べられた複数(例えば6つ)の保管行22を含み、各保管行22はX軸方向に接続された複数(例えば7つ)の冷凍保管部24を含む。冷凍保管部24は、荷2を冷凍保管する単位である。なお、保管ステージ20の段数、保管行22の行数、及び各保管行内の冷凍保管部24の数は例示であり、倉庫の形状や要求される荷2の大きさ、保管量に応じて、適宜選択可能である。当然のことながら、保管ステージ20、又は保管行22の数が1であっても良い。
【0019】
荷2を収納する密度を向上させるために、複数の保管行22の間には、スタッカークレーンやフォークリフトが走行するための空間が設けられておらず、冷凍保管棚8内の全ての保管行22において、隣接する保管行22同士は密着している。即ち、隣接する保管行22同士は隙間なく配置されており、また、仮に隙間があったとしても保管行22同士の隙間は、少なくとも1つの保管行22のY軸方向の幅よりも小さいことが好ましい。
【0020】
冷凍保管部24は、1つの荷を保管するための空間を構成しており、床面に荷2を載置できる。
【0021】
〔レール〕
レール12は、冷凍保管部24の下部に設けられた走行空間26内において、X軸方向に延在する。レール12は、その延在方向に台車10を走行させるように構成された車輪の転動面を有する部材または部分である。したがって、レール12は、棒状または帯状の部材に形成された転動面を有するレールであってもよいし、平面上に形成された転動面を有するレールであってもよい。
【0022】
〔走行空間〕
走行空間26は、保管行22の下側において保管行22の全長にわたって延びる空間であり、内部を台車10が走行する。走行空間26は、冷凍保管部24の床面に形成されたスリットを介して冷凍保管部24と連続しているが、前室16とは連続していないため、走行空間26内の温度は閉鎖空間A内の温度と実質的に同じである。したがって、走行時には台車10は冷凍倉庫内の温度と実質的に同じ温度の環境内を走行し続けることとなる。走行空間26内にはレール12が敷設されており、台車10が走行できる高さを有している。走行空間26の高さは、冷凍保管部24の高さよりも低い。走行空間26の高さを低くすることにより、走行空間26の容積を小さくし、これにより冷凍保管部24が閉鎖空間A内で占有する容積を増加させ、閉鎖空間A内を高密度化することができる。ここで「高密度化」するとは、閉鎖空間A内で荷2が占める体積を増やすことに加えて、閉鎖空間A内で空気が占める容積を減らすことも意味する。閉鎖空間A内で荷2の保管及び搬送に寄与しない空気の容積を減らし、例えば内部搬送機構のように荷2の保管及び搬送に不可欠な物体が閉鎖空間A内で占める体積を増やして高密度化することで、空気の温度を低下させるために使用される電力を節約することができる。
【0023】
〔台車〕
次に、
図4、及び
図5を参照して台車10について説明する。
図4は、台車の一例を概略的に示す平面図である。
図5は、台車の側面図である。台車10は、荷2を搬送するために、保管行22の中でレール12をX軸方向に走行する。台車10は、冷凍保管部24に対して荷2を出し入れする。
【0024】
台車10は、車体28と、載置部30と、リフト機構32と、複数(例えば4個)の車輪34と、受電端子36と、電池38と、モータ40と、台車制御部42とを主に含む。車体28は、上下方向に偏平な略直方体形状の輪郭を有する。車体28の内部には、複数の車輪34を駆動するモータ40と、電池38とが単一の断熱ケース44内に配置されている。また、台車制御部42を断熱ケース44内に配置しても良い。台車10は、電池38の電力によってモータ40を駆動するように構成されている。電池38は繰り返し充電可能なリチウムイオン電池などの二次電池であってもよい。台車10は、後述する充電ステーション46から給電された電力により電池38を充電するように構成されている。
【0025】
載置部30は、荷2を持上げて保持する部分である。リフト機構32が、載置部30を昇降させる機構である。
図5において、破線で示す載置部30は上昇した状態にあり、実線で示す載置部30は下降した状態にある。リフト機構32は載置部30を上昇させて荷2を冷凍保管部24から持上げることができる。リフト機構32は、載置部30を降下させて荷を冷凍保管部24に降ろすことができる。複数の車輪はレール12上を走行する。
【0026】
断熱ケース44は、車体28の内部に配置され、六面が断熱性能を有する箱として形成される。断熱ケース44には、微小な孔(図示せず)が形成されており、電池38と受電端子36を接続する導線が孔を通して断熱ケース44の内外に延びている。断熱ケース44は、メンテナンス時に作業員が内部にアクセスできるように開閉可能に形成されても良い。単一の断熱ケース44内に電池38とモータ40を収容することにより、モータ40の発熱で断熱ケース44内の温度を上昇させ、電池38の性能低下を抑制することができる。
【0027】
受電端子36は、台車10の外部表面に露出するように設けられており、後述する充電ステーション46の給電端子48と電気的に接触して、電池38を充電するための電力を受け取る電極として機能する。一例として、受電端子36は、車体28の両側面に設けられる受電端子36aと、受電端子36bと、を含んでもよい。一例として、受電端子36は、車体の外側の底面に設けられる受電端子36cと、受電端子36dと、を含んでもよい。説明の便宜上、
図4及び5には、受電端子36a、36bの組と、受電端子36c、36dの組とを両方記載しているが、これらは、一方の組のみを設けてもよいし、両方の組を設けてもよい。また、車体28の進行方向前後に受電端子を設けても良い。受電端子36の形状に特別な限定はないが、この例では、受電端子36の中心部分が相手側に突出た球面を有している。なお、ここでは受電端子36に球面を有している形態を記載したが、受電端子36と後述する給電端子48とは相補的な関係にあるため、給電端子48が球面を有していてもよい。
【0028】
給電端子48と受電端子36の少なくとも一方は、他方に向けて付勢されてもよい。例えば、受電端子36は、給電端子48に向けて付勢されてもよい。一例として、受電端子36は、給電端子48に向けて鉛直方向または水平方向に進退可能に支持され、コイルスプリング50のような付勢部材によって付勢されてもよい。
図5の例では、受電端子36は、収容部52によって上下方向に可動に収容され、受電端子36は、収容部52に設けられたコイルスプリング50によって下向きに付勢されている。受電端子36は、給電端子48に当接するとき、上向きに移動して給電端子48に下向きの接触圧力を加えるように配置される。この場合、受電端子36に給電端子48に対する接触圧力を加えることにより、受電端子36と給電端子48との接触を安定させることができる。
【0029】
なお、受電端子36a~36dは、配置されている場所以外は同一の構成を有しているため、本明細書では全ての受電端子36a~36dを総括して、受電端子36と総称することがある。
【0030】
〔充電ステーション〕
充電ステーション46は、台車10の電池38を充電するためのステーションである。充電ステーション46は、保管行22の一端側に設けられている。充電ステーション46は、各保管行22の一端に対応する位置に、台車10を受け入れることができるポート54を有している。充電ステーション46は、例えば倉庫の商用電源Vと接続されており、電源Vから供給された電力を、給電端子48及び受電端子36を介して台車10に供給する。図示の例では、保管行22が入出庫部18からX軸方向に延びており、充電ステーション46は保管行22の他端側に配置されている。なお、この例では、全ての保管行22に充電ステーション46のポート54が設けられていることとしているが、自動倉庫システム1が台車10をY軸方向に移動させる機構を有していれば、一部の保管行22にのみポート54を設けても良い。充電ステーション46を保管行22の他端側に設けて冷凍環境内に配置することで、台車10が充電をするに際して冷凍環境内から出る必要がなくなり、台車10の車体28等に結露が発生するのを抑制することができる。
【0031】
充電ステーション46は、台車10に対して給電を行うための給電端子48を有する。給電端子48は、台車10の受電端子36に対応する位置、即ち台車10が充電ステーション46のポート54の定位置に停車した際に、受電端子36と接触可能な位置に設けられている。例えば、受電端子36が車体28の両側面に設けられている場合には、充電ステーション46はポート54の各側壁部に給電端子48を備えている。また、例えば受電端子36が車体28の底面に設けられている場合には、ポート54の床面に給電端子48が設けられている。
【0032】
上述したように、受電端子36が球面として形成されている場合には、給電端子48は、X-Y平面に平行な板状の電極として形成される。反対に受電端子36が板状の電極として形成されている場合には、給電端子48は球面として形成される。
【0033】
〔霜除去部材〕
上述したように台車10は、閉鎖空間Aの外部を走行することはないため、台車10に結露が発生することはないが、閉鎖空間A内の全ての空間の温度を完全に均一にすることは困難であるため、車体28等に霜が発生することがある。特に、給電端子48や受電端子36に霜が堆積すると、両端子の間の電気接続を確立できなくなり適切に台車10の充電を行うことができなくなる。したがって自動倉庫システム1は、給電端子48及び受電端子36の少なくとも一方に堆積した霜を除去する霜除去部材56を備える。
【0034】
図5に示す例では、霜除去部材56として、ポート54の給電端子48の横に設けられた加熱要素としてのヒータ56aを示す。ヒータ56aは、台車10の受電端子36、又は充電ステーション46の給電端子48の少なくとも何れか近傍に適用可能である。台車10自体が電池38を有しているため、台車10自体にヒータ56aを搭載しても良いし、商用電源Vに直接接続可能な充電ステーション46にヒータ56aを配置しても良い。電源の確保のし易さ及び台車10の運転効率を考慮すると、
図1及び
図2に示すように、商用電源Vに直接接続可能な充電ステーション46の給電端子48近傍にヒータ56aを設けることが好ましい。この場合、ヒータ56aは、給電端子48だけを加熱しても良いし、台車10が充電ステーション46に到着して受電端子36と給電端子48とが接触可能な状態にあるときに両方の端子を同時に加熱しても良い。また、ヒータ56aは、常時、受電端子36又は給電端子48を加熱しても良いし、定期的にオン・オフを切り替えて受電端子36又は給電端子48を定期的に加熱しても良い。なお、
図1及び
図2の例では、ヒータ56aがポート54の側面に設けられている例を図示しているが、台車10の受電端子36が台車の底面に設けられている場合には、ヒータ56aはポート54の底面に設けられる給電端子48の近傍に配置される。また、他の霜除去部材56としては、ヒータ56aの他に霜を掻き落とす部材(図示せず)がある。このような部材としては、例えば走行空間26内の台車の走行経路上の受電端子36の表面と接触可能な位置に設けられたスクレーパー若しくはブラシ、又は受電端子36の表面の霜を掻き落とすワイパーがある。スクレーパー又はブラシのような掻き落とし部材を設置する位置は、レール12に沿ったどの位置でも良く、レール12の両端にある充電ステーション46と入出庫部18との間に等間隔で配置しても良い。また、これらの霜除去部材56を充電ステーション46の給電端子48側に霜除去部材56を設けても良い。
【0035】
〔霜除去運転〕
上記の霜除去部材56に替えて、又は霜除去部材56に加えて、台車10に霜除去運転モードを搭載しても良い。霜除去運転は、台車10が充電ステーション46に到着する度、又は一定時間毎に間欠的に行われる。霜除去運転は、例えば台車制御部42がモータ40の駆動を制御することで実行される。霜除去運転としては、台車10が充電ステーション46に到着する直前に、台車10を進行方向前後に小刻みに動かすことで受電端子36の表面に付着した霜を振り落とすような運転がある。
【0036】
以下、上述した自動倉庫システム1の作用について説明する。自動倉庫システム1は、入出庫部18に搬入された荷2を台車10の載置部30に載せて、予め指定された冷凍保管部24まで搬送する。その後、台車10は載置部30を下すことで載置部30上の荷2を冷凍保管部24に置く。また、台車10は予め指定された冷凍保管部24に保管されている荷2を載置部30に載せて入出庫部18まで搬送する。台車10は、電池38の残量が一定量以下になった場合、又は予め指定された走行距離若しくは走行時間だけ走行した場合に、充電のために充電ステーション46に向けて走行する。
【0037】
台車10又は充電ステーション46に受電端子36又は給電端子48のヒータ56aが設けられている場合には、例えば台車10が充電ステーション46に向けて走行し始めたときにヒータ56aの加熱を開始しても良い。また、台車10に霜除去運転モードが搭載されている場合には、台車10は充電ステーション46に到着する直前で霜除去運転を実行する。霜除去運転を行った後、台車10は走行空間26から充電ステーション46に進入し、定位置に停車する。台車が停車する定位置は、受電端子36と給電端子48との良好な接続を確立できる位置であり、この位置で台車10は、電池38の充電を行う。そして電池38の充電が完了した後、台車10は充電ステーション46から退出して走行空間26に戻る。
【0038】
また、台車10が電池38の残量をモニタリングし、充電時の電池残量の増加量が所定値以下である場合に、霜が十分に除去されていないと判断して、充電を一時的に中断し、再度、霜除去運転、又は霜除去部材56による霜除去を行うようにしても良い。
【0039】
以上のように、実施形態にかかる自動倉庫システム1によれば、冷凍倉庫内における荷2の搬送を自動化することができる。通常、-30℃前後の冷凍倉庫内では人間が継続的に作業できる時間は30分程度であるが、荷2の搬送を台車10で行うようにすることで、実質的に24時間、荷2の搬送を行うことができる。これにより、特に夜間、作業員がいない時間でも荷2の搬送及び荷揃えを行うことができ、倉庫内での作業効率を大幅に向上させることができる。
【0040】
また、実施形態による自動倉庫システム1では、冷却材として作用する荷2を高密度で収容することができる。冷凍製品である荷2は、当然、低温であるため閉鎖空間A内の保冷材としても機能する。したがって、荷2を高密度で収容することは保冷材の量を増やすことになり、閉鎖空間A内を低温に保つために必要な冷凍機Rの駆動電力を少なくすることができる。
【0041】
また、閉鎖空間A内において、例えば内部搬送機構を高密度化することで荷2の管理及び搬送に寄与しない空気の容積を減らし、冷凍倉庫内の温度管理に必要な冷凍機Rの駆動電力を少なくすることができる。
【0042】
この効果は、自動倉庫システム1と、従来のフォークリフト用の走行空間が設けられている冷凍倉庫とを比較するとより明確になる。
【0043】
図6は、実施形態及び比較例の倉庫システムの保管棚の配置を示す平面図である。より具体的には、
図6(a)は、実施形態による自動倉庫システムの平面図であり、
図6(b)は、比較例によるフォークリフトを備える冷凍倉庫の平面図であり、
図6(c)は、比較例によるスタッカークレーンを備える冷凍倉庫の平面図である。
図6(a)~(c)は、本発明の効果を明確にするため、荷、保管棚、及び閉鎖空間を同一の縮尺で示し、上述の実施形態と同一の符号を用いている。
【0044】
図6(b)に示すように、フォークリフトを備える冷凍倉庫では、フォークリフトが走行するための通路102を設ける必要がある。この例では、保管行は、必ず通路に面している必要があるため、保管行の間にはX軸方向に延びる通路102が必要となり、かつフォークリフトが隣接するX軸方向に延びる通路に移動するためにY軸方向に延びる通路104も必要となる。また、
図6(c)に示すように、スタッカークレーンを備える冷凍倉庫は、保管行の間にスタッカークレーンを移動させるためのX軸方向に延びる通路106が必要となる。このように、自動倉庫システム1と、比較例による冷凍倉庫を平面視で比較しただけで、荷の収容密度が明らかに異なることが分かる。さらに言えば、
図6(b)及び
図6(c)の例では、通路102,104の上側(Z方向)の空間は、空気となるため、比較例ではこの空気を冷却するための電力を消費する必要がある。これに対して自動倉庫システム1は、内部搬送機構を高密度化しているため、空気を冷却するために必要な電力を最小限にできる。
【0045】
また、-30℃の低温環境では、台車10を駆動するために必要な電池38やモータ40の性能低下が懸念される。しかしながら、電池38とモータ40を単一の断熱ケース44内に収容し、モータ40の駆動熱によって断熱ケース44内の温度を上昇させることで、電池38とモータ40の性能低下を抑制することができる。
【0046】
さらに、台車10を充電するために必要な端子の表面に付着した霜を除去する霜除去手段として霜除去部材56を設けるか霜除去運転モードを採用することにより、低温環境内でも適切に台車10の充電を行うことができる。また、台車10が走行する走行空間26を冷凍倉庫内の空間のみと連続するようにし、前室16とは連続しないようにすることで走行空間26内を冷凍倉庫内と同じ低温に維持することができる。これにより、台車10の受電端子36や、必要に応じて設けられる各種センサやカメラ等の表面に結露が発生するのを抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態の説明を行った。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0048】
〔変形例〕
以下、本発明の変形例を説明する。上述の実施形態では、充電ステーション46に給電端子48を設け、台車10に受電端子36を設けた接触型充電を用いた例を説明したが、台車10の電池を充電するための構成として、非接触型充電を用いても良い。この場合、充電ステーション46に給電部として給電コイルを設け、台車10に受電部として受電コイルを設ける。
【0049】
また、上述の実施形態では、X軸方向に走行する台車10を用いて荷2を搬送することとしたが、自動倉庫システム1は、この台車10をY軸方向に搬送するためのベルトコンベア又は第2の台車のようなY軸搬送機構を備えても良い。Y軸搬送機構は、荷2が載置されている台車10、又は台車10が下した荷をY軸方向に搬送する。これにより、台車10又は荷2を隣接する保管行22に移動させることができる。また、台車10、荷又は第2の台車を、異なる保管ステージ20に搬送するためのスタッカークレーンのようなZ軸搬送機構を設けても良い。
【0050】
また、受電端子36は、車体28に対して遊びをもった状態で支持され、充電ステーション46は、受電端子36を所定の位置に案内するための案内部材を備えてもよい。台車10が充電ステーション46に進入する際に、案内部材が受電端子36の位置をより適切な位置に修正することができる。この場合、台車10の停止位置精度の範囲を拡大することができる。
【0051】
台車10を各保管ステージ20の各保管行22に設けることは必須ではなく、台車10がY軸搬送機構、及びZ軸搬送機構によって全ての冷凍保管部24にアクセスできる限り、台車10の数は任意である。
【0052】
保管行22の冷凍保管部24の数を一様に構成することは必須ではない。保管行22を構成する冷凍保管部24の数は、冷凍保管棚8を収容する建物の壁の凹凸に応じて、数が多い行と少ない行とが設けられてもよい。
【0053】
上下方向に積層される保管行22の段数を一様に構成することは必須ではない。保管行22の段数は、冷凍保管棚8を収容する建物の天井の高さに応じて、段数が多い領域と少ない領域とが設けられてもよい。
【0054】
フォークリフトに代えて、クレーンを備えた移載装置など、別の種類の移載装置によって、荷2を搬入・搬出するようにしてもよい。
【0055】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0057】
1 自動倉庫システム、 8 冷凍保管棚、 20 保管ステージ、 22 保管行、 24 冷凍保管部、 26 走行空間、 36,38 電池、 40 モータ、 44 断熱ケース、 46 充電ステーション、 48 給電端子、 56 霜除去部材