(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】土留部材
(51)【国際特許分類】
E21D 5/10 20060101AFI20231129BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E21D5/10
E02D29/05 Z
(21)【出願番号】P 2020035260
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信秀
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌紀
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002634(JP,A)
【文献】特開2007-071379(JP,A)
【文献】特開2012-094307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 5/10
E21D 29/05
E02D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁部にフランジを有する複数のプレートと、
連結器具本体の一端を折り曲げて形成された挟持部を有し
、前記挟持部により
前記フランジ同士
を挟持
することにより前記複数のプレートを連結する連結器具と、
を備える土留部材であって、
前記フランジにおける前記挟持部と当接する面に、前記挟持部により前記フランジ同士が挟持される際
に前記連結器具の仮締め領域と本締め領域とを区分する
第1の突部が設けられていることを特徴とする土留部材。
【請求項2】
請求項1に記載の土留部材であって、
前記
第1の突部に代えて溝部が形成されていることを特徴とする土留部材。
【請求項3】
請求項1に記載の土留部材であって、
前記挟持部により前記フランジ同士が挟持される際に前記フランジにおける前記挟持部と当接する面に、前記連結器具の仮締め領域の範囲を区分する第2の
突部が設けられており、
前記仮締め領域は、前記
第1の突部と前記第2の
突部の間の領域であることを特徴とする土留部材。
【請求項4】
請求項3に記載の土留部材であって、
前記
第1の突部の大きさが、前記第2
の突部の大きさよりも大きいことを特徴とする土留部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ライナープレート等のフランジを有する土留部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ライナープレート工法は、掘削した坑内に土留部材であるライナープレートをクレーン等で吊り下ろし、吊り下ろしたライナープレートを相互に連結して、土留め支保工とする工法である。
【0003】
この工法において、例えば、ライナープレートを上下に連結するには、上部ライナープレートの下フランジと下部ライナープレートの上フランジとにそれぞれ形成された孔にボルトを通し、ナット止めするのが一般的である。
【0004】
しかしながら、ボルト・ナットによる連結箇所は多数あるので、ライナープレートの連結には、多大な時間と手間を要する。
【0005】
そこで、上記問題を解決するためのライナープレート用連結器具が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ライナープレートの連結には、特許文献1に開示されているものとは別のライナープレート用連結器具を用いることができる。
図1-
図4を用いて、別のライナープレート用連結器具について説明する。
【0008】
図1に示すように、別のライナープレート用連結器具(以下、「連結器具」という)1は、その一端を連結器具1の一方面側(この例では、下面側)にL字状に折り曲げることにより形成された差込み部2を有する。
図4に示すように、差込み部2の先端部2aは、差込み部2を、上部ライナープレート5の下フランジ4及び下部ライナープレート7の上フランジ6に形成された孔8に差し込んだ際に、孔8の周縁裏面に当接する。
【0009】
また、連結器具1は、その他端を連結器具1の一方面側(この例では、下面側)にU字状に折り曲げることにより形成された挟持部3を有する。
【0010】
挟持部3の折曲げ部3aは、連結器具1の長手方向に対して斜めに形成されている。この理由は、折曲げ部3aを連結器具1の長手方向に対して斜めに形成すると、挟持部3に、重なった下フランジ4と上フランジ6が入り込んだ際、折曲げ部3aと、重なった下フランジ4と上フランジ6の縁部とが平行になるので、挟持力が増すとともに、連結器具1を回動させた際のライナープレートの内側への連結器具1の出っ張り量を減少させることができ、この結果、作業に支障を来たすおそれを軽減するからである。
【0011】
図2に示すように、挟持部3の入口の開口幅L1は、重なった下フランジ4と上フランジ6の板厚より狭く形成されている。これによって、重なった下フランジ4と上フランジ6をより強固に挟持することができる。
【0012】
また、挟持部3の入口縁部3bは広がって形成されている。これによって、重なった下フランジ4と上フランジ6を円滑に挟持部3に入れ込むことができる。このように、挟持部3はRの字状に折り曲げられているため、下フランジ4と上フランジ6を挟持しているときは、上フランジ6は入口縁部3bに当接せず、開口幅L1で示した挟持部3の最も狭くなる部分に相当する屈曲部3cに当接することとなる。
【0013】
更に、
図3に示すように、挟持部3の幅L2は、差込み部2の幅L3より広く形成されている。これによって、重なった下フランジ4と上フランジ6をより強固に挟持することができる。
【0014】
なお、連結器具1は、例えば、エンボス加工により補強部1aが形成されている。
【0015】
このように構成されている連結器具1により上部ライナープレート5と下部ライナープレート7を連結させる場合には、
図4に示すように、重なった下フランジ4と上フランジ6に形成された孔8に連結器具1の差込み部2を挿入し、差込み部2の先端部2aを孔8の周縁裏面に当接させる。
【0016】
次いで、連結器具1を孔8に挿入した差込み部2を中心として、
図4中、矢印A方向に回動させる。これによって、重なった下フランジ4と上フランジ6が挟持部3に入り込み、かくして、挟持部3は、重なった下フランジ4と上フランジ6を挟持する。この際、挟持部3の入口の開口幅L1は、重なった下フランジ4と上フランジ6の板厚より狭くなっているので、重なった下フランジ4と上フランジ6をより強固に挟持することができる。また、挟持部3の入口縁部3bは、広がって形成されているので、重なった下フランジ4と上フランジ6を円滑に挟持部3に入れ込むことができる。
【0017】
ところで、ライナープレートの組み立てにおいて、ライナープレート同士を連結器具1で連結する場合、連結器具1を仮締めしながらライナープレートを仮組みし、ライナープレート同士の位置関係の調整が終了してから連結器具1を本締めする。
【0018】
しかしながら、連結器具1においては、仮締め状態と本締め状態が明確ではなく、締結が弱いと、例えば、他の連結器具1により締結させる際に衝撃で外れてしまう可能性がある。
【0019】
そこで、この発明の目的は、連結器具1の仮締め状態と本締め状態を明確にすることができ、連結器具1により連結される、フランジを有する土留部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、縁部にフランジを有する複数のプレートと、連結器具本体の一端を折り曲げて形成された挟持部を有し、前記挟持部により前記フランジ同士を挟持することにより前記複数のプレートを連結する連結器具と、を備える土留部材であって、前記フランジにおける前記挟持部と当接する面に、前記挟持部により前記フランジ同士が挟持される際に前記連結器具の仮締め領域と本締め領域とを区分する第1の突部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の土留部材であって、前記第1の突部に代えて溝部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の土留部材であって、前記挟持部により前記フランジ同士が挟持される際に前記フランジにおける前記挟持部と当接する面に、前記連結器具の仮締め領域の範囲を区分する第2の突部が設けられており、前記仮締め領域は、前記第1の突部と前記第2の突部の間の領域であることを特徴とする。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の土留部材であって、前記第1の突部の大きさが、前記第2の突部の大きさよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、土留部材にはフランジにおける挟持部と当接する面に連結器具の仮締め領域と本締め領域とを区分する境界部が設けられているため、連結器具の仮締め状態と本締め状態を明確にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ライナープレート用連結器具を示す斜視図である。
【
図2】ライナープレート用連結器具を示す平面図である。
【
図3】ライナープレート用連結器具を示す正面図である。
【
図4】ライナープレート用連結器具により連結されたライナープレートを示す部分斜視図である。
【
図5】ライナープレート用連結器具により本発明のライナープレートを挟持している様子を示す部分断面図である。
【
図6】本発明のライナープレートの上フランジを示す側面図である。
【
図7】本発明の他のライナープレートの上フランジを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照して、本発明に係る土留部材の実施形態について説明する。以下、土留部材としてのライナープレートを例にとって説明するが、本発明に係る土留部材はライナープレートに限定されない。
【0030】
本実施形態において、ライナープレートを連結する連結器具1は、
図1-
図4を用いて説明した連結器具1と同様である。つまり、板状の連結器具本体の一端をU字状に折り曲げて形成された挟持部3を有する連結器具1である。連結器具1は、上部ライナープレート5の下フランジ4と、及び下部ライナープレート7の上フランジ6を重なった状態で挟持して相互に連結する。
【0031】
図5に示すように、本実施形態に係る下部ライナープレート7の上フランジ6には突部6aが形成されている。突部6aは、挟持部3により重なった下フランジ4と上フランジ6が挟持される際に、上フランジ6における挟持部3と当接する面に設けられる。
【0032】
図6に示すように、上フランジ6の突部6aは、連結器具1の仮締め領域と本締め領域とを区分する境界部に対応する。すなわち、挟持部3が重なった下フランジ4と上フランジ6を挟持する際に、屈曲部3cが仮締め領域に位置する場合には仮締め状態となり、屈曲部3cが突部6aを乗り越えて本締め領域に位置する場合には本締め状態となる。
【0033】
なお、突部6aは、連結器具1を孔8に挿入した差込み部2を中心として、
図4中、矢印A方向に回動させる際に、屈曲部3cが通過する位置に設けられておればよく、上フランジ6に連続的に形成しても、断続的に形成してもよい。
【0034】
作業者は、上部ライナープレート5と下部ライナープレート7を連結する際、まず、下フランジ4と上フランジ6に形成された孔8に連結器具1の差込み部2を挿入し、差込み部2の先端部2aを孔8の周縁裏面に当接させ、次いで、連結器具1を孔8に挿入した差込み部2を中心として、回動させる。こうして、重なった下フランジ4と上フランジ6を挟持部3に入れ込む。このとき、屈曲部3cが突部6aを乗り越えないようにすることにより、連結器具1の仮締め状態とすることができる。
【0035】
次いで、作業者は、例えば、ライナープレート同士の位置関係の調整が終了したら、屈曲部3cが突部6aを乗り越えるように、挟持部3に重なった下フランジ4と上フランジ6を更に入れ込むことにより、連結器具1の本締め状態とすることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る下部ライナープレート7(「土留部材」の一例)は、連結器具1により上部ライナープレート5とともに挟持されて相互に連結されるライナープレートであって、挟持部3により重なった下フランジ4と上フランジ6が挟持される際に下フランジ4における挟持部3と当接する面に、連結器具1の仮締め領域と本締め領域とを区分する突部6a(「境界部」の一例)が設けられている。
【0037】
したがって、本実施形態に係る下部ライナープレート7によれば、上フランジ6における挟持部3と当接する面に連結器具1の仮締め領域と本締め領域とを区分する突部6aが設けられているため、連結器具1の仮締め状態と本締め状態を明確にすることができる。
【0038】
また、本締め状態では所定の締結力が得られることから、ライナープレートが変形した場合でも連結器具1が外れて脱落する可能性を低減させることができる。一方、仮締め状態では、ライナープレートの位置調整に関して融通が効くとともに、ライナープレート同士の結合が外れない程度の締結力を持たせることができる。また、視覚的に仮締め状態と本締め状態を確認できることから、施工管理が容易となる。
【0039】
なお、本実施形態の下部ライナープレート7は境界部の一例として突部6aを有するが、これに代えて、境界部に相当する溝部や境界線を形成することとしてもよい。また、突部6aと同様に、溝部や境界線は上フランジ6に連続的に形成しても、断続的に形成してもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、連結器具1が挟持部3に屈曲部3cを有しており、屈曲部3cが突部6aを乗り越えたか否かにより仮締め状態と本締め状態を区分することとしたが、挟持部3が屈曲部3cを有さない場合(例えば、挟持部3がUの字状である場合)には、挟持部3に目印を設け(目印の形態は任意の形態とすることができる)、その目印が突部6aを越えたか否かにより仮締め状態と本締め状態を区分することとしてもよい。
【0041】
更に、本実施形態においては、
図6に示すように、下部ライナープレート7の上フランジ6に一つの突部6aが形成されているが、
図7に示すように、例えば、2つの突部6b(「境界部」の一例)、6c(「第2の境界部」の一例)を形成することとしてもよい。この場合、突部6bと突部6cの間が仮締め領域となる。すなわち、連結器具1の屈曲部3cが突部6cを越えた場合に仮締め状態となり、突部6bを越えた場合に本締め状態となる。これにより、作業者は、一つ目の突部6cを越えたことにより仮締め状態になったこと、二つ目の突部6bを越えたことにより本締め状態になったことを容易に把握することができる。なお、突部6bと突部6cの大きさは、それぞれ任意の大きさ(但し、連結器具1の屈曲部3cが乗り越えられる大きさ)とすることができるが、
図7に示すように、突部6bと突部6cの大きさを異ならせることにより、連結器具1の取り付け時の力の入れ具合によって、屈曲部3cが突部6bを越えたのか、又は、突部6cを越えたのかを感覚的に把握することができる。また、突部6bを突部6cより大きくすることで、仮締め状態とするときには小さな力(屈曲部3cが突部6cを越える力)で取り付け、本締め状態とするときには大きな力(屈曲部3cが突部6bを越える力)で取り付けるといった作業者の感覚と仮締め状態と本締め状態とを適合させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:連結器具
2:差込み部
2a:先端部
3:挟持部
3a:折曲げ部
3b:入口縁部
3c:屈曲部
4:下フランジ
5:上部ライナープレート
6:上フランジ
6a:突部
6b:突部
6c:突部
7:下部ライナープレート
8:孔