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特許7393256インバート付き六角形セグメント及び六角形セグメントの接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】インバート付き六角形セグメント及び六角形セグメントの接合構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20231129BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020038277
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021139179
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安竹 馨
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠喜
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-247586(JP,A)
【文献】特開2002-004800(JP,A)
【文献】特開平11-287095(JP,A)
【文献】特開2006-241800(JP,A)
【文献】特開2002-013394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えた、シールドトンネル覆工体形成用の六角形セグメントであって、
トンネルの軸方向に沿う第1方向と、第1方向に直交する第2方向とを有し、
第2方向に沿う横断面形状が円弧状の本体部と、該本体部から内面側に突出し、平坦面を有するインバート部とを備え、前記インバート部は、前記本体部と一体成形されており、
前記六角形セグメントを、第2方向の全長を3等分して3領域に区分したときの両外側の2領域それぞれに、第1方向に延び且つ排水溝として機能する溝部が形成されており、
前記溝部は、第2方向において前記インバート部に隣接する該インバート部の外側に形成されており、且つ該インバート部における第2方向の両端部に位置する、前記本体部の断面円弧状の内周面から立ち上がる起立面が、該溝部の内側の縁部となっている、インバート付き六角形セグメント。
【請求項2】
前記溝部は、第2方向の外側の縁部が、前記V字状周方向接合面と前記切羽側接合面及び前記坑口側接合面との境界の位置よりも第2方向の内側に位置する、請求項1に記載のインバート付き六角形セグメント。
【請求項3】
互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えた六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けて構成されるシールドトンネルの覆工体における、トンネルの下部に形成される六角形セグメントの接合構造であって、
請求項1又は2に記載のインバート付き六角形セグメントが、前記切羽側接合面と前記坑口側接合面とを対向させた状態で、トンネルの軸方向に沿って複数連結されており、トンネルの下部に、複数の前記インバート付き六角形セグメントの前記インバート部が連なった構成のインバート及び複数の前記インバート付き六角形セグメントの前記溝部が連なった構成の連続溝が形成されている、六角形セグメントの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート付き六角形セグメント及び六角形セグメントの接合構造に関し、特に、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成するのに用いられる六角形セグメントの一つとして用いることによって、トンネルの下部に、トンネルの軸方向に沿って延びる連続インバート及び排水溝を簡便に設けることのできる、インバート付き六角形セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
都市部や平野部において各種のトンネルを構築する方法として、シールド掘進機によるシールド工法が広く採用されている。シールド工法は、シールド掘進機の先端の切羽面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方に、トンネルの軸方向及び周方向に連設してセグメントを順次組み付けることによって、トンネルの内周面を覆う覆工体を形成し、組み付けられた覆工体の前端部に、シールドジャッキを押し付けることにより反力を得ながら、発進立坑から到達立坑に向けて、トンネルを地中に構築してゆく工法である。
【0003】
トンネルの内周面を覆う覆工体を構成するセグメントとして、矩形状の平面形状を備えるセグメントが知られている。またシールドトンネルの覆工体の筒状部分の内側にインバートを設けることが知られている。インバートは、トンネルの用途に応じて多様な目的で設置され、例えば、トンネルの構築時に、軌条を敷設し又は敷設せずに、人やセグメント等の資材をトロッコや台車等で搬送する搬送路として使用したり、トンネル構築後の保守、補修時、配線・配管の作業時等に人や重機の搬送路としたりする目的で設けられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、矩形状の平面形状を備えるセグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによって形成した筒状構造体の内部に、該セグメントとは別体のインバートブロックをトンネルの軸方向に並べて配置することによって、該トンネルの内部にインバートを設けることが記載されている。
【0005】
また、近年、工事の効率化等を図る観点から、トンネルの内周面を覆う覆工体を構成するセグメントとして、一般に用いられる矩形状の平面形状を備えるセグメントに換えて、六角形状の平面形状を備える六角形セグメントを用いたシールド工法が採用される場合がある(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。六角形セグメントは、平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えている(図3(a)参照)。六角形セグメントは、トンネルの掘進方向後方側に先行して組み付けられた六角形セグメントの切羽側接合面及び切羽側斜め接合面に、トンネルの掘進方向前方側に後続して組み付けられる六角形セグメントの坑口側接合面及び坑口側斜め接合面を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメントにおける、トンネルの掘進方向前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、交互に突出させながら、トンネルの軸方向及び周方向にハニカム状に配置されて順次組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-23538号公報
【文献】特許第2596666号公報
【文献】特開平9-273395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術のように、セグメントをトンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによって形成した筒状構造体の内部に、セグメントとは別体のインバートブロックを配置してインバートを形成する場合は、シールドトンネルの構築とは別に、インバートブロックを配置し連結する工程が必要であるため、インバート付きトンネルの全体を構築する作業を考えたときに作業効率が悪く、例えば工期が長期化する等の観点から好ましくない。
また矩形状の平面形状を備えるセグメントは、セグメントがトンネルの周方向に並んだ環状構造体がトンネルの軸方向に複数並んだ構成の覆工体の構築に用いられることが多いが、トンネルの軸方向において隣り合う環状構造体間では、覆工体の強度を高めるために、周方向におけるセグメントの継ぎ目の位置が半ピッチ分ずれていることが多い。したがって、矩形状の平面形状を備えるセグメントに、インバート部や溝付のインバート部を一体に形成した場合には、隣り合う環状構造体どうし間でインバート部や溝部の位置がずれてしまうため、特許文献1には、筒状構造体を形成するセグメントにインバート部や溝部を一体に形成する示唆は存在しない。
【0008】
本発明の目的は、シールドトンネルに、トンネルの軸方向に延びるインバート及び連続溝を効率よく形成することのできる、インバート付き六角形セグメント及び六角形セグメントの接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えた、シールドトンネル覆工体形成用の六角形セグメントであって、トンネルの軸方向に沿う第1方向X1と、第1方向に直交する第2方向Y1とを有し、第2方向に沿う横断面形状が円弧状の本体部と、該本体部から内面側に突出し、平坦面を有するインバート部とを備え、前記インバート部における第1方向に沿う両側部に、第1方向に延びる溝部が形成されている、インバート付き六角形セグメントを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また本発明の六角形セグメントの溝部は、第2方向の外側の縁部が、前記V字状周方向接合面と前記切羽側接合面及び前記坑口側接合面との境界の位置よりも第2方向の内側に位置することが好ましい。また本発明の六角形セグメントは、前記溝部が、前記インバート部の前記平坦面に形成されているか又は前記インバート部に隣接するその外側に形成されていることが好ましい。
【0011】
また本発明は、互いに平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えた六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けて構成されるシールドトンネルの覆工体における、トンネルの下部に形成される六角形セグメントの接合構造であって、請求項1~3の何れか1項に記載のインバート付き六角形セグメントが、前記切羽側接合面と前記坑口側接合面とを対向させた状態で、トンネルの軸方向に沿って複数連結されており、トンネルの下部に、複数の前記インバート付き六角形セグメントの前記インバート部が連なった構成のインバート及び複数の前記インバート付き六角形セグメントの前記溝部が連なった構成の連続溝が形成されている、六角形セグメントの接合構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインバート付き六角形セグメント及び六角形セグメントの接合構造によれば、シールドトンネルに、トンネルの軸方向に延びるインバート及び連続溝を効率よく形成することができる。連続溝は、排水溝として好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造の構成を含む、シールドトンネルの覆工体の一部を示す斜視図である。
図2】本発明に係るインバート付き六角形セグメントの一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)をE方向から見た側面図、(c)は(a)をF方向から見た側面図である。
図3】本発明に係るインバート付き六角形セグメントと組み合わせて用いられる、インバート部を有しない他の六角形セグメントの一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)をE方向から見た側面図、(c)は(a)をF方向から見た側面図である。
図4】(a)は、図2のA-A線切断部端面図、(b)は、図2のB-B線切断部端面図、(c)は、図3のC-C線切断部端面図である。
図5】本発明の好ましい他の実施形態に係る六角形セグメントの接合構造の構成を含む、シールドトンネルの覆工体の一部を示す斜視図である。
図6】本発明に係るインバート付き六角形セグメントの他の例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)をE方向から見た側面図、(c)は(a)をF方向から見た側面図である。
図7】(a)は、図6のA’-A’線切断部端面図、(b)は、図6のB’-B’線切断部端面図である。
図8】本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造の構成を含む、シールドトンネルの覆工体の一部を、六角形セグメンの内周面側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の好ましい一実施形態に係るインバート付き六角形セグメント1Aは、図1に示すように、トンネルの軸方向Xに沿う第1方向X1と、第1方向X1に直交する第2方向Y1とを有し、第2方向Y1に沿う横断面形状が円弧状の本体部10と、該本体部10の内面側に突出し、平坦面11tを有するインバート部11とを備える。インバート付き六角形セグメント1Aは、図1に示すように、インバート部を有しない他の六角形セグメント1Cと組み合わされて、シールドトンネルの覆工体100を形成するのに用いられる。
インバート付き六角形セグメント1A(以下、単に「六角形セグメント1A」という)及びそれと併用されるインバート部を有しない他の六角形セグメント1C(以下、単に「六角形セグメント1C」という)について、図1図4を参照しつつ、より詳細に説明する。六角形セグメント1Aと六角形セグメント1Cとに共通する構成には同一の符号を付す。
【0015】
六角形セグメント1A,1Cは、互いに平行に配置された切羽側接合面13及び坑口側接合面14と、これらの接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備える、六角形の平面視形状を有するコンクリート製、好ましくは鉄筋コンクリート製のセグメントである。
六角形セグメント1Aの本体部10は、トンネルの半径方向の外側に配される六角形形状の外周面20を有し、平面視における周囲に、前述した切羽側接合面13、坑口側接合面14及び一対のV字状周方向接合面17を有する(図2(a)~(c)参照)。また本体部10は、第2方向Y1に沿う横断面形状、すなわち切羽側接合面13及び坑口側接合面14に沿った方向の断面形状が、円弧状である。
【0016】
六角形セグメント1Aのインバート部11は、本体部10から内面側に突出している。六角形セグメントにおいて、内面側とは、トンネルの半径方向においてトンネルの中央部側に向けられる面側である。六角形セグメント1Aは、コンクリート製であり、インバート部11は、本体部10と一体成形されている。コンクリート製には、鉄筋コンクリート製も含まれる。
六角形セグメント1A,1Cは、第1方向X1に延びる中央線CLの両端それぞれに、V字状周方向接合面17と切羽側接合面13及び坑口側接合面14との境界Pを有しており、第2方向Y1において境界Pより外側の一対の端部領域Eと、第2方向において境界Pより内側の中央領域Mとを有している(図2図4参照)。六角形セグメント1Aの端部領域Eは、図4に示すように、第2方向Y1に沿う横断面形状が各々円弧状の外周面20及び内周面10aを有し、外周面20と内周面10aとの間の厚みが略一定である。他方、六角形セグメント1Aの中央領域Mは、第2方向Y1に沿う横断面形状が円弧状の外周面20と外周面20側とは反対側の面である内面側に形成された平坦面11tとを有しており、中央領域Mの両端それぞれから六角形セグメント1の第2方向Y1の中央部に向かって厚みが漸次増大している。本実施形態において、第2方向Y1の中央部は、中央領域Mを第2方向Y1に2等分する位置でもある。
【0017】
六角形セグメント1Aのインバート部11には、インバート部11における第1方向X1に沿う両側部それぞれに、第1方向X1に延びる溝部12が形成されている。六角形セグメント1の溝部12は、インバート部11の平坦面11tに形成されている。より具体的には、溝部12は、第1方向X1に延びる帯状の底部と該底部の両側縁それぞれから立ち上がる両側面とを有し、インバート部11の平坦面11tと同一平面に開口している。溝部12の内面の断面形状は、上方が開放されたコ字状の他、V字状やU字状等の他の形状であってもよい。
溝部12により、排水溝として好適に使用される連続溝120(図1図5参照)を形成する観点から、溝部12は、六角形セグメント1Aを、第2方向Y1の全長を3等分して3領域に区分したときに両外側の2領域それぞれに形成されていることが好ましい。
【0018】
また溝部12は、その底部が、本体部10内に達しているものであってもよいが、底部が本体部10に達せず、溝部12の全体がインバート部11内に位置していることが、本体部10の強度に影響を与えることを抑制し、六角形セグメント1Aを含む複数の六角形セグメントにより形成されるシールドトンネル覆工体100の強度に対する影響をほぼ無くすことができる観点等から好ましい。
【0019】
図1に示す六角形セグメント1Aのインバート部11は、図4に示すように、第2方向Y1における溝部12の外側に、溝部12より内側の平坦面11tと同一平面上に位置する細幅の平坦面を有している。第2方向Y1における溝部12の外縁部eと、側部領域Eにおける断面円弧状の内周面10aとの間の表面は、図1及び図4に示すように、六角形セグメント1Aを、溝部12より内側の平坦面11tが水平となるように設置したときに、水平な平坦面となっているか(図4(a)参照)、又は溝部12の外縁部e側から側部領域Eの内周面10aに向かって高さが漸次若しくは段階的に高くなる面(平面、曲面、階段状の面等)となっていることが、トンネルの側壁からの漏水や側壁に生じた結露水等を、溝部12に導水する観点から好ましい。
【0020】
六角形セグメント1Cは、トンネルの半径方向の外側に配される六角形形状の外周面20及びトンネルの半径方向の内側に配される六角形形状の内周面10aを有し、全域に亘って略一定の厚みを有する板状体である。六角形セグメント1Cの外周面20及び内周面10aは、第2方向Y1に沿う横断面形状が各々円弧状であり、六角形セグメント1Cは、インバート部を有していない。
六角形セグメント1Aの本体部10及び六角形セグメント1Cは、第2方向Y1に沿う横断面形状が、トンネルの半径に相当する曲率半径を有する円弧状の形状を有している(図2(b)、(c)、図3(b)、(c)及び図4(a)、(c)参照)。また、六角形セグメント1Aと六角形セグメント1Cとは、第1方向X1の全長及び第2方向Y1の全長が同じであることが好ましく、六角形セグメント1Aの側部領域Eの厚みが、六角形セグメント1Cの厚みと同一であることが好ましい。
六角形セグメント1Aの中央領域Mにおける、六角形セグメント1Aの本体部10とインバート部11との境界は、例えば、中央領域Mの厚み方向の外周面20側に、側部領域Eの厚みtと同じ厚みの範囲を想定し、該範囲を本体部10、該範囲よりも内面側をインバート部11とする。併用するインバート部を有しない六角形セグメント1Cが判っている場合は、当該六角形セグメント1Cと同形状の部分を差し引いた残りの部分をインバート部11とすることもできる。
【0021】
そして、複数の六角形セグメントを、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けることによってシールドトンネルの内周面を覆う覆工体100を形成させる際に、図1に示すように、前述した六角形セグメント1Aをトンネルの下部に軸方向Xに並べて配し、前述した六角形セグメント1Cをそれ以外の部分に配することによって、トンネルの下部に、複数の六角形セグメント1Aのインバート部11がトンネルの軸方向Xに連なった構成のインバート110と、複数の六角形セグメント1Aの溝部12がトンネルの軸方向Xに連なった構成の、排水溝として好ましく用い得る連続溝120とを有するシールドトンネルの覆工体100を効率よく形成することができる。
【0022】
六角形セグメント1Aにおける溝部12の、第2方向の外側の縁部eが、V字状周方向接合面と切羽側接合面及び坑口側接合面との境界Pの位置又は該位置Pよりも第2方向の内側に位置すると、トンネルの下部に、六角形セグメント1Aを一列に並べて配したときに、それらの六角形セグメント1Aの溝部12が、他の六角形セグメント1Cの存在によって分断されにくく、トンネルの軸方向Xに連続して延びる連続溝120を容易に形成させることができる。斯かる観点から、溝部12は、第1方向X1に延びる中央線CLの両側それぞれにおいて、第2方向Y1の少なくとも内側の縁部uが、前記境界Pの位置又は該位置Pよりも第2方向Y1の内側(中央線CL側)に位置することが好ましく、第2方向Y1の外側の縁部eが、前記境界Pの位置又は該位置Pよりも第2方向Y1の内側(中央線CL側)に位置することがより好ましい。
【0023】
本実施形態における六角形セグメント1Aは、第1方向X1の一端部における、本体部10に存する切羽側接合面13とインバート部11の端面との間に段差kを有し、第1方向X1の他端部における、本体部10に存する坑口側接合面14とインバート部11の端面との間にも段差kを有している。そして、六角形セグメント1Aどうしを、トンネルの下部において連結したときには、隣り合う一方の六角形セグメント1Aのインバート部11と、他方の六角形セグメント1Aのインバート部11との間に、例えば0.1~10mm程度の隙間が生じる。この隙間の特に溝部12の周囲を囲むように、コーキング剤を充填して該隙間からの水漏れを防止することが好ましく、さらにこの隙間全長にわたってコーキング剤を充填してもよい。切羽側接合面13とインバート部11の端面との間の段差kを無くして、切羽側接合面13とインバート部11の端面とを連続する一平面としてもよい。また、坑口側接合面14とインバート部11の端面との間の段差kを無くして、坑口側接合面14とインバート部11の端面とを連続する一平面としてもよい。
【0024】
六角形セグメント1A,1Cにおける各々のV字状周方向接合面17における、切羽側斜め接合面15と坑口側斜め接合面16との間の角度θは、120°となっている(図2(a),図3(a)参照)。これによって、複数の六角形セグメント1A又は1Cを、先行する六角形セグメントの切羽側斜め接合面15及び切羽側接合面13に、後続して設置される六角形セグメントの坑口側斜め接合面16及び坑口側接合面14を、順次隙間なく重ね合わせた状態で、軸方向及び周方向にハニカム状に配置してゆくことができるようになっている(図1参照)。
【0025】
六角形セグメント1A,1Cには、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、切羽側接合面13の両側の側部領域から各々坑口側斜め接合面16の中央部に向けて、切羽側斜め接合面15と平行に延設して貫通する、斜ボルト挿通孔23が設けられている。各々の斜ボルト挿通孔23の切羽側接合面13側の端部には、連結用ボルト部材24の頭部を締着させる締着凹部23aが、開口面を切羽側接合面13に開口させて形成されている。切羽側接合面13における各々の締着凹部23aよりも切羽側斜め接合面15側の部分には、位置決め用の凹部13aが設けられている。これらの位置決め用の凹部13aには、トンネルの掘進方向Xに後続して設置される六角形セグメント1A,1Cの坑口側接合面14に設けられた一対の位置決め用の凸部14aが、嵌め込まれるようにして装着される。これによって、後続して設置される六角形セグメント1A,1Cの坑口側接合面14の全体が、先行して設置された六角形セグメント1A,1Cの切羽側接合面13の全体に、精度良く重ね合わされるように、トンネルの掘進方向Xに隣接する六角形セグメント1A,1Cを、位置決めできるようになっている。すなわち、各々の六角形セグメント1A,1Cの坑口側接合面14には、これの両側の側部領域に、位置決め用の凸部14aが各々設けられている。
【0026】
また、各々の六角形セグメント1A,1Cの一対の切羽側斜め接合面15には、これらの中央部に、雌ネジ孔15aが、例えば雌ネジアンカーを埋込むことによって設けられている。雌ネジ孔15aは、先行して設置された六角形セグメント1A,1Cの切羽側斜め接合面15に、後続して設置される六角形セグメント1Cの坑口側斜め接合面16が重ね合わされた際に、後続する六角形セグメント1A,1Cに設けられた斜ボルト挿通孔23の、締着凹部23aとは反対側の端部と直線状に連通するようになっている。これによって、連通した斜ボルト挿通孔23及び雌ネジ孔15aに、連結用ボルト部材24を挿通して締着させることにより、ハニカム状に配置された各々の隣接する六角形セグメント1A,1Cを、強固に一体として連結することが可能になる。
【0027】
六角形セグメント1A,1Cにおいては、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16に、位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bが各々設けられている。これらの位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bは、先行して設置された六角形セグメント1A,1Cに後続して、次の六角形セグメント1A,1Cを設置する際に、先行して設置された六角形セグメント1A,1Cによる、周方向Yに隣接して掘進方向X前方側に突出する等脚台形状部分の間の、等脚台形状の間隔部分に、後続する六角形セグメント1A,1Cが配置されるように案内して、精度良く位置決めできるようにすると共に、組み付けられた六角形セグメント1A,1Cに位置ずれが生じるのを、防止できるようにする機能を備えている。
【0028】
六角形セグメント1A,1Cには、これらの六角形セグメントを組み付け用のエレクター装置(図示せず。)によって把持できるようにする把持孔26,26Cが、例えば内側面の中央部分に設けられていると共に、六角形セグメント1A,1Cを吊り上げ可能とする吊上げ用インサート金具27が、例えば坑口側接合面14の両側の側部領域に配置されて、一対設けられている。六角形セグメント1Aの把持孔26は、エレクター装置が係合する部分26aが、断面円弧状の本体部10内に位置しており、併用する六角形セグメント1Cと同一のエレクター装置を用いて搬送及び所定位置への配置が可能となっている。
【0029】
複数の六角形セグメントを、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けることによってシールドトンネルの内周面を覆う覆工体100を形成させる際に、前述した六角形セグメント1Aをトンネルの下部に軸方向Xに並べて配することによって、本発明の一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造が形成される。
本発明の一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造においては、図1に示すように、インバート付き六角形セグメント1Aが、切羽側接合面と坑口側接合面とを対向させた状態で、トンネルの軸方向に沿って複数連結されており、トンネルの下部に、複数の六角形セグメント1Aのインバート部11が連なった構成のインバート11及び複数の六角形セグメント1Aの溝部12が連なった構成の、排水溝として好ましく用い得る連続溝120が形成されている。
【0030】
本発明の一実施形態に係る六角形セグメントを用いて形成したシールドトンネルの覆工体100、及び本発明の一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造によれば、複数の六角形セグメントを、公知の方法により、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けてシールドトンネルの覆工体を形成するに当たり、トンネルの下部に配する六角形セグメントとして、前述した六角形セグメント1Aを用いるだけで、複数の六角形セグメント1Aに亘って連続するインバート110や排水溝として利用可能な連続溝120を形成することができ、筒状構造体の完成後に後付けでインバートブロックを固定する方法等に比して、作業効率、工期の短縮化、資材管理の負担軽減等の多様な面において優れている。
なお、インバート110は、多様な目的で使用することができ、例えば、トンネルの構築時に、軌条を敷設し又は敷設せずに、人やセグメント等の資材をトロッコや台車等で搬送する搬送路として使用したり、トンネル構築後の保守、補修時、配線・配管の作業時等に人や重機の搬送路として使用したりすることができる。
【0031】
また六角形セグメントを用いたシールド工法では、六角形セグメントの交互に突出する等脚台形状部分の切羽側接合面にシールドジャッキを押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキを押し当てた隣接する等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメントを組み付ける作業を行うこともできる。そのため、矩形状の平面形状を備えるセグメントを用いたシールド工法のように、シールド掘進機を掘進させる工程を一リング毎に中断してセグメントを組み立てる作業を行うことなく、六角形セグメントを組み付けながら、シールド掘進機を連続して掘進させることで、効率良くシールド工事を行なうことも可能である。
【0032】
さらに、六角形セグメントを用いたシールド工法では、隣接する六角形セグメントの間の連結は、切羽側接合面や、坑口側接合面や、切羽側斜め接合面や、坑口側斜め接合面による端面の間を貫通して取り付けられる、連結ボルトを用いて行なうようになっているので(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、矩形状のセグメントによる覆工体の内周面に現れるような、連結ボルトの締結作業を行うためのボルトボックス等による凹凸が、六角形セグメントによる覆工体の内周面には形成されないようにすることが可能になる。またこれによって、覆工体の内周面を平滑な状態に保持することができるので、好ましくは内側面に防食層を施した六角形セグメントによる覆工体の内側に、さらに二次覆工を施工する必要がなく、六角形セグメントによる覆工体の内周面をそのままトンネルの内周面として用いて、構築したシールドトンネルを、例えば水を流通させる、下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯留地用のトンネルとして、有効に活用することも可能になる。
【0033】
図5は、本発明の他の実施形態の六角形セグメントの接合構造を含む、シールドトンネルの覆工体100Bの一部を示す斜視図であり、図6及び図7は、それに用いたインバート付き六角形セグメント1Bを示す、図2相当図及び図3(a)相当図である。
図6及び図7に示すインバート付き六角形セグメント1B(以下、六角形セグメント1Bともいう)については、主として、上述した六角形セグメント1Aと異なる点について説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
六角形セグメント1Bにおけるインバート部11Bは、第2方向Y1の両端部に、断面円弧状の内周面10aから立ち上がる起立面11cを有しており、第2方向Y1における起立面11cより内側の表面が平坦面11tとなっており、起立面11cを内側の縁部としてその外側に位置する部分が溝部12Bとなっている(図7(a)参照)。図示例においては、第2方向Y1の両端に位置する起立面11cは、それぞれ、V字状周方向接合面17と切羽側接合面13及び坑口側接合面14との境界Pに位置しているが、該境界Pから内側(中央線CL側)に離間した位置に起立面11cを有することが更に好ましい。本実施形態においては、起立面11cが溝部12Bの内側の縁部uとなり、複数の六角形セグメント1Bを、トンネルの下部に一列に連結して配した状態においては、トンネルの軸方向Xに隣り合う六角形セグメント1Bの溝部12B間に、六角形セグメント1Bと組み合わせて覆工体100Bを形成する他の六角形セグメント、例えば上述した構成の六角形セグメント1Cにおける三角形状部分の一部が存在する状態となる場合となるが、切羽側斜め接合面13と坑口側斜め接合面16とを対向させて連結する斜め継手部における止水を、例えば第1シール材18aやコーキング剤を利用して十分とすることで、溝部12B間に介在する他の六角形セグメント1Cの一部も、トンネルの軸方向Xに、複数の六角形セグメント1Cに亘って延びる排水溝としての連続溝120Bの一部として利用可能となる。このように、六角形セグメント1Bの溝部に沿うライン上に他の六角形セグメント1Bの一部が存在していても、その一部上を含めて複数の六角形セグメント1Bに亘って水が流れ、実質的に一本の溝として機能する場合、その溝は連続溝に含まれる。本実施形態の六角形セグメント1Bにおいては、平坦面11tを含む平面と内周面10aとの交線部分が、溝部12Bにおける第2方向Y1の外側の縁部eとなっている。六角形セグメント1Bにおいても、第2方向Y1の外側の縁部eがV字状周方向接合面17と切羽側接合面13及び坑口側接合面14との境界Pよりも第2方向Y1における内側に位置することが好ましい。
【0035】
六角形セグメント1Bどうしの接合部にも、溝部12Bの周囲を囲むようにコーキング剤を充填して溝部12Bからの液漏れを防止することが好ましい。さらに、隣り合うインバート部11Bどうしの隙間に水が侵入してしまうと排出することが困難になるため、インバート部11Bの全長にコーキング剤を充填して該隙間からの水漏れを防止することが好ましい。六角形セグメント1Bの把持孔26Bにおいても、エレクター装置が係合する部分26aが、断面円弧状の本体部10内に位置しており、六角形セグメント1Cと同一のエレクター装置を用いて搬送及び所定位置への配置が可能となっている。
【0036】
本発明の一実施形態に係る六角形セグメント1Bを用いて形成したシールドトンネルの覆工体100B、及び本発明の一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造によれば、複数の六角形セグメントを、公知の方法により、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けてシールドトンネルの覆工体を形成するに当たり、トンネルの下部に配する六角形セグメントとして、前述した六角形セグメント1Bを用いるだけで、複数の六角形セグメント1Bに亘って連続する構成のインバート110や排水溝として利用可能な連続溝120Bを形成することができ、筒状構造体の完成後に後付けでインバートブロックを固定する方法等に比して、作業効率、工期の短縮化、資材管理の負担軽減等の多様な面において優れている。
【0037】
図8は、上述した六角形セグメント1A又は1Bを用いて形成したシールドトンネルの覆工体の漏水処理方法が示されている。当該漏水処理方法によれば、構築後のシールドトンネルの覆工体におけるセグメントどうしの継手部から漏水が生じたときに、その漏水箇所Rから、溝部12,12Bによって形成された排水溝(連続溝)120,120Bに、浸入した水を導く導水手段30を、トンネルの内面に沿って配置する。導水手段30としては、断面コ字状の樋状の導水部材や、両端に開口を有するチューブ状の導水部材等が挙げられる。導水部材としては、合成樹脂製の可撓性の部材であることが、曲面状のトンネル内壁への固定性や、漏水箇所Rの高さに応じて適切な長さに切断して用いることができる等の観点から好ましい。導水部材は、非可撓性の材料からなるものであってもよく、例えば、金属、セラミック、高剛性のプラスチックからなるもの等であってもよい。
漏水箇所Rから溝部12,12Bや連続溝120,120Bに漏水を導く導水手段30を配置する漏水対策をすることで、多様な範囲で生じる漏水を、連続溝120,120Bに纏めた後、例えばポンプによる排出等の各種の処理を行うことができるため、漏水対策を簡便に行うことができる。
【0038】
本発明は上記の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、インバート付き六角形セグメントの左右の溝部の間に、排水溝目的又は排水溝目的ではない連続凹部等を形成してもよく、またインバート部11の内部に、配線や配管用の管路を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B インバート付き六角形セグメント
1C インバート部を有しない他の六角形セグメント
10 本体部
11,11B インバート部
12,12B 溝部
13 切羽側接合面
14 坑口側接合面
15 切羽側斜め接合面
16 坑口側斜め接合面
17 V字状周方向接合面
100,100B シールドトンネル覆工体
110 インバート
120,120B 連続溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8