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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】金物固定用治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
E04G21/18 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020044748
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143578
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 良則
(72)【発明者】
【氏名】桑島 靖彦
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-002366(JP,A)
【文献】特開2010-121331(JP,A)
【文献】実開平05-094460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/58
2/56-2/70
2/88-2/96
E04G21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の鉄骨側に面して開放された開放端を備え、当該開放端に前記鉄骨のフランジ部を挿入することにより当該フランジ部を挟持可能に構成された挟持部と、
前記フランジ部が前記開放端から基準位置まで挿入された場合に前記フランジ部の移動を規制する規制手段と、
前記挟持部から前記鉄骨のウエブ部の高さ方向に沿って延在し、前記フランジ部に固定される金物の取り付け位置を案内するガイド部と、を備え、
前記挟持部は、板ばね部材の付勢力によって前記フランジ部を挟持する構成とされ、
前記規制手段は、前記フランジ部が前記基準位置まで挿入された状態において当該フランジ部の先端と当接する前記板ばね部材の基端部とされている、
金物固定用治具。
【請求項2】
前記金物は、前記フランジ部に固定される固定部と、当該固定部の一端から延在して建物側部材が固定される縦板部と、を有しており、
前記挟持部は、前記固定部の両側に一対配置され、
前記ガイド部は、一対の前記挟持部を連結すると共に、前記縦板部を支持して前記金物を取り付け位置に案内可能に構成され、且つ、前記縦板部の周囲に展開されて作業者が前記縦板部と共に把持可能に形成されている、
請求項1に記載の金物固定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金物固定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の建物では、外壁や屋根等を構成する建物側部材が複数の金物を介して鉄骨に固定されている。また、建物の仕上げ面を均一に保つためには、建物側部材を受ける金物が、設計図通りの基準位置に配置されることが重要とされている。
【0003】
特許文献1には、上記のような建物側部材(パネル部材)を受ける金物を基準位置に案内するための金物固定用治具が開示されている。当該金物固定用治具は、鉄骨のフランジ部に取り付けられる一対の支持金物と、当該一対の支持金物に支持されるガイド金物により構成されている。各支持金物の位置決めは、フランジ部に墨出しされた金物用の基準位置に従って目視で行われる。その後、各支持金物を構成するアングル材とC形部材とをボルト締結することにより、鉄骨のフランジ部を挟持する。これにより、支持金物が鉄骨に固定される。この状態において、一対の支持金物の内側に金物を配置すると、ガイド金物によって金物が基準位置に案内される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-002366号公報
【0005】
しかしながら、上記先行技術では、金物固定用治具の位置決めを行うために金物の基準位置をフランジ部に墨出しすることが前提とされており、金物固定用治具の位置決めとフランジ部への固定作業がそれぞれ独立している。このため、金物固定用治具を取り付けるために複数の工程が必要になるため、金物の位置決めを容易に行うという点において改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、金物の位置決めを容易にすることができる金物固定用治具を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る金物固定用治具は、建物の鉄骨側に面して開放された開放端を備え、当該開放端に前記鉄骨のフランジ部を挿入することにより当該フランジ部を挟持可能に構成された挟持部と、前記フランジ部が前記開放端から基準位置まで挿入された場合に前記フランジ部の移動を規制する規制手段と、前記挟持部から前記鉄骨のウエブ部の高さ方向に沿って延在し、前記フランジ部に固定される金物の取り付け位置を案内するガイド部と、を備えている。
【0008】
第1の態様に係る金物固定用治具は、建物の鉄骨のフランジ部を挟持する挟持部と、挟持部から延材するガイド部を備えており、フランジ部に固定される金物の取り付け位置がガイド部によって案内される。また、挟持部は、建物の鉄骨側に面して開放された開放端からフランジ部が挿入されるように構成されており、フランジ部を基準位置まで挿入すると、規制手段によってフランジ部の移動が規制される。これにより、挟持部を介して金物固定用治具をフランジ部に装着させる作業と同時に、フランジ部に対する金物固定用治具の相対的な位置決めを行うことができる。その結果、施工現場において金物固定用治具を簡単、且つ、短時間で設定することができるため、金物の位置決めを容易にすることができる。
【0009】
第2の態様に係る金物固定用治具は、第1の態様に記載の構成において、前記挟持部は、板ばね部材の付勢力によって前記フランジ部を挟持する構成とされ、前記規制手段は、前記フランジ部が前記基準位置まで挿入された状態において当該フランジ部の先端と当接する前記板ばね部材の基端部とされている。
【0010】
第2の態様に係る金物固定用治具において、フランジ部は、板ばね部材の開放端から基準位置まで挿入されると、基端部に当接して変移が規制される。このように、規制手段が挟持部と一体に設けられているため、金物固定用治具の部品点数を減らすことができる。
【0011】
第3の態様に係る金物固定用治具は、第1の態様又は第2の態様に記載の構成において、前記金物は、前記フランジ部に固定される固定部と、当該固定部の一端から延在して建物側部材が固定される縦板部と、を有しており、前記挟持部は、前記固定部の両側に一対配置され、前記ガイド部は、一対の前記挟持部を連結すると共に、前記縦板部を支持して前記金物を取り付け位置に案内可能に構成され、且つ、前記縦板部の周囲に展開されて作業者が前記縦板部と共に把持可能に形成されている。
【0012】
第3の態様に係る金物固定用治具は、金物の固定部の両側に配置される一対の挟持部を有しており、金物固定用治具のガイド部は、一対の挟持部を連結し、金物の縦板部を支持することで取り付け位置に案内する構成とされている。ここで、ガイド部は、金物の縦板部の周囲に展開されて作業者が金物の縦板部と共に把持可能に形成されている。これにより、作業者は縦板部をガイド部と共に把持することにより、金物を所定の取り付け位置で安定して支持することができる。このため、金物をフランジ部に固定する際の位置ずれが低減され、組付け精度が向上する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、第1の態様に係る金物固定用治具によれば、金物の位置決めを容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0014】
第2の態様に係る金物固定用治具によれば、金物固定用治具の部品点数を減らすことができるという優れた効果を有する。
【0015】
第3の態様に係る金物固定用治具によれば、金物をフランジ部に固定する際の位置ずれが低減され、組付け精度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る金物固定用治具を用いて建物の鉄骨に固定された金物を示す斜視図である。
図2図1の2-2線に沿った断面を一部拡大して示す拡大断面図である。
図3図1において、建物下方側に配置された鉄骨の一部を建物上方から見た平面図である。
図4】本実施形態に係る金物固定用治具の平面図である。
図5】本実施形態に係る金物固定用治具の正面図である。
図6】本実施形態に係る金物固定用治具の側面図である。
図7】本実施形態に係る金物固定用治具を用いて天井側の鉄骨のフランジ部に固定される金物の位置決めを行う状態を示す分解斜視図である。
図8図7に対応する正面図である。
図9図8の9-9線に沿った切断面を拡大して示す拡大断面図である。
図10】本実施形態に係る金物固定用治具を用いて床側の鉄骨のフランジ部に固定された金物の位置決めを行う状態を示す図9に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、図1図10を用いて、第1実施形態に係る金物固定用治具40について説明する。金物固定用治具40は、一例として、鉄骨造の建物10の梁部材として設けられた鉄骨16のフランジ部20に装着され、フランジ部20に固定される金物22の位置決めを行う治具である。以下では、まず、金物22が固定される建物10の外壁部12について説明する。
【0018】
図1には、建物10の外壁部12の一部が模式的に示されている。建物10の外壁部12には、外壁パネル14が立設されている。外壁パネル14は、一例として、軽量気泡コンクリート製のALC(Autoclaved Lightweight Concrete)パネルとされており、内部に図示しないアンカーが配置されている。
【0019】
外壁パネル14の屋内側には、建物高さ方向に間隔を空け、水平方向に沿って延在する一対の鉄骨16が配置されており、一対の鉄骨16が外壁パネル14の取り付け相手とされている。建物上方側の鉄骨16Aは、建物10の天井梁とされており、延在方向の端部が図示しない柱部材の上端部に支持されている。また、建物下方側の鉄骨16Bは、建物10の床梁とされており、延在方向の端部が図示しない柱部材の下端部に支持されている。また、これらの鉄骨16A,16Bは、I形鋼により構成されており、縦断面視で建物高さ方向に延在するウエブ部18と、ウエブ部18の上端及び下端から水平方向に延在するフランジ部20を備えている。以下、ウエブ部18の上端及び下端から延在するフランジ部20を区別する場合は、ウエブ部18の上端から延在するフランジ部20を上フランジ部20Aとし、ウエブ部18の下端から延在するフランジ部20を下フランジ部20Bとして説明する。
【0020】
上記構成の鉄骨16A,16Bには、それぞれのフランジ部20に金物22が固定されており、当該金物22を介して外壁パネル14が取り付けられている。金物22は、建物上方側の鉄骨16Aに固定される上側金物24と、建物下方側の鉄骨16Bに固定される下側金物32によって一組に構成されている。
【0021】
図1及び図2に示されるように、上側金物24は、アングル状に形成されており、鉄骨16Aの下フランジ部20Bの下側に水平に配置された固定部24Aと、固定部24Aの屋外側の端部から略垂直下方(ウエブ部18の高さ方向)へ延在する縦板部24Bを備えている。固定部24Aと下フランジ部20Bには、建物下方側からボルト26が貫通しており、ボルト26の先端にナット28が螺合されている。これにより、上側金物24の固定部24Aが下フランジ部20Bに固定されている。なお、固定部24Aに形成されたボルト26用の貫通孔は逃がし孔30とされており、下フランジ部20Bの奥行方向(鉄骨16の延在方向に対して直交する方向)に長い楕円形とされている。この逃がし孔30の内径寸法は、ボルト26の軸部の外形寸法よりも大きくされているため、予めボルト26とナット28を用いて上側金物24を仮留めした後に、後述する金物固定用治具40を用いて取り付け位置の微調整を行うことができる構成となっている。
【0022】
また、固定部24Aの屋外側の端部は、下フランジ部20Bの屋外側の先端部20B1よりも屋外側に突出している。従って、固定部24Aの屋外側の端部から延在する縦板部24Bは、下フランジ部20Bの先端部20B1と離間している。この縦板部24Bの屋外側の面は、上述した外壁パネル14の取り付け面とされている。縦板部24Bには、屋内側からセットボルト27が貫通しており、セットボルト27の先端が外壁パネル14の内部に配置されたアンカーに固定されている。これにより、上側金物24の縦板部24Bに外壁パネル14の上部が固定される。また、上述した通り、縦板部24Bは下フランジ部20Bの先端部20B1と離間していることから、外壁パネル14と鉄骨16Aとの間に所定の間隙tが形成されている。この間隙tは、建物躯体や外壁パネル14の組付け時のばらつきを吸収する調整代であると共に、外壁パネル14の屋内側の面に敷設される断熱材を配置するためのスペースとされている。
【0023】
図3に示されるように、下側金物32は、鉄骨16Bの上フランジ部20Aに固定されている。この下側金物32は、上フランジ部20Aに固定される支持部材34と、外壁パネル14の取り付け相手となるアングル材36によって一組に構成されている。この下側金物32は、上フランジ部20Aの上側で水平に延在する支持部材34の固定部34Aと、支持部材34の屋外側の端部に接合され、当該端部から略鉛直上方(ウエブ部18の高さ方向)に延在するアングル材36の縦板部36Aを備えている。
【0024】
固定部34Aと上フランジ部20Aには、建物下方側からボルト26が貫通しており、ボルト26の先端にナット28が螺合されている。これにより、支持部材34の固定部34Aが上フランジ部20Aに固定されている。また、固定部34Aの屋外側の端部は、上フランジ部20Aの先端部20A1よりも屋外側に突出しており、固定部34Aの屋外側の端部から立設された縦板部36Aは、上フランジ部20Aの先端部20A1と離間して配置されている。また、アングル材36の縦板部36Aには、屋内側からセットボルト27が貫通しており、セットボルト27の先端が外壁パネル14の内部のアンカーに固定されている。これにより、下側金物32の縦板部36Aが外壁パネル14の下部に固定されている。この状態では、外壁パネルの下部と鉄骨16Bとの間に、外壁パネル14の上部と同様に、所定の間隙tが形成されている。
【0025】
以上説明した通り、建物10では、上側金物24及び下側金物32を用いて外壁パネル14の屋内側の面と鉄骨16A,16Bのフランジ部20の先端部との間に所定の間隙tを形成し、両者を連結している。本実施形態では、基準線を鉄骨16に墨出しすることなく、金物固定用治具40を用いて上側金物24と下側金物32の取り付け位置を決定することができる。以下、金物固定用治具40について詳細に説明する。
【0026】
図4図6に示されるように、金物固定用治具40は、樹脂製の板状部材で構成された本体部42を備えている。本体部42は、一対のベース部44と、これらのベース部44を連結するガイド部46によって構成されている。
【0027】
各ベース部44は、取り付け時に鉄骨16のフランジ部20に対して平行に配置される板状部材とされ、ベース部44に固定された板ばね部材48と共に金物固定用治具40の挟持部50を構成している。板ばね部材48は、金属製の板材を折り曲げて形成されており、山折りに屈曲された弾性部48Aと、先端部の一端から略直角に屈曲された基端部48Bと、基端部48Bの一端から屈曲され、ベース部44の下面44Aに沿って配置された取付部48Cと、を備えている。
【0028】
板ばね部材48の弾性部48Aは、ベース部44との間にフランジ部20の板厚よりも薄い間隙が形成されると共に、ベース部44に沿って延在している。また、弾性部48Aの屋内側の端部は、鉄骨16側に面して開放された開放端52とされている。金物固定用治具40は、弾性部48Aの弾性力に抗して開放端52からフランジ部20を挿入することにより、板ばね部材48の付勢力によってフランジ部20を挟持する構成となっている(図8図10参照)。
【0029】
図8及び図10に示されるように、本実施形態では、フランジ部20が開放端52から挿入されて金物固定用治具40が基準位置に装着されると、フランジ部20の先端部が基端部48Bに当接するように構成されている。換言すると、板ばね部材48を構成する基端部48Bは、金物固定用治具40を基準位置に装着するためにフランジ部20の移動を規制する規制手段とされている。なお、金物固定用治具40の基準位置とは、後述するように金物固定用治具40を用いて固定された金物22に外壁パネル14を取り付けた状態において、外壁パネル14と鉄骨16のフランジ部20(20A、20B)の先端部(20A1、20B1)との間に間隙tが形成される位置である。
【0030】
図6に示されるように、板ばね部材48の取付部48Cは、ベース部44の下面44Aに取り付けられている。具体的には、取付部48Cとベース部44には締結用のボルト54が貫通しており、ボルト54の先端は、ベース部44に形成された貫通孔(符号省略)の雌ねじ部と螺合している。このように、板ばね部材48とベース部44がボルト54で固定されているため、長期間の使用で板ばね部材48の弾性力が低下した場合、板ばね部材48を取り外して交換することができる。
【0031】
一方、本体部42のガイド部46は、一対のベース部44の屋外側の端部同士を連結している。ガイド部46は、略U字状に形成された長尺な板状部材とされており、一対のベース部44の屋外側の端部から鉄骨16のウエブ部18の高さ方向に沿って延在している。より具体的には、ガイド部46は、一対のベース部44の端部からそれぞれ延びる第1直線部と、第1直線部46Aの先端同士を繋ぐ第2直線部46Bを備えている。第1直線部の基端は、ベース部44の屋外側の端部に接着剤を用いて接合されている。また、本実施形態では、金物固定用治具40の幅方向の側面に、第1直線部46Aとベース部44のつぎ目を跨ぐ補強部材56が接合され、第1直線部46Aと第2直線部46Bの接合部が補強されている。
【0032】
図7には、鉄骨16Aの下フランジ部20Bに仮留めされた上側金物24と、当該上側金物24に対応して下フランジ部20Bに装着される金物固定用治具40が分解斜視図で示されている。
【0033】
これらの図に示されるように、金物固定用治具40が下フランジ部20Bに装着される場合、ガイド部46が一対の挟持部50の下方側に配置される姿勢で装着される。作業者は、一対の挟持部50を上側金物24の両側に配置されるようにして、下フランジ部20Bの先端部20B1を板ばね部材48の開放端52から挿入する。また、作業者は、下フランジ部20Bの先端部20B1を板ばね部材48の基端部48Bに当接させて、金物固定用治具40を基準位置に装着する(図8参照)。
【0034】
図8に示されるように、金物固定用治具40が基準位置に装着された状態では、鉄骨16の延在方向から見て、下フランジ部20Bの先端部20B1とガイド部46の屋内側の面を構成する基準面Rとの間に間隙tが形成されている。作業者は、上側金物24の縦板部24Bにおける屋外側の面がガイド部46の第1直線部46Aの基準面Rに当接する位置まで上側金物24を移動させて、上側金物24の取り付け位置を決定する。換言すると、ガイド部46は、第1直線部46Aで縦板部24Bの先端部を支持することにより、上側金物24を取り付け位置に案内する構成となっている。
【0035】
また、図9に示されるように、金物固定用治具40を下フランジ部20Bに装着した状態では、鉄骨16の延在方向と直交する方向から見て、U字形のガイド部46が上側金物24の縦板部24Bと一部重なるように配置され、且つ、ガイド部46が縦板部24Bの周り(縦板部24Bの外周部の外側)を囲うように展開される。作業者は、一方の手でガイド部46と縦板部24Bとを同時に把持し、縦板部24Bをガイド部46で支持させるようにして上側金物24の位置決めを行(図9の手H1、手H2参照)。その状態のまま、作業者は、工具を用意した他方の手で、ボルト26とナット28を締結する。これにより、上側金物24の固定作業が完了する。
【0036】
図10に示されるように、鉄骨16Bの上フランジ部20Aに下側金物32を固定する場合は、金物固定用治具40の姿勢を上下反転させて上フランジ部20Aに装着する。そして、上述した上側金物24と同様に、一対の挟持部50を下側金物32の両側で上フランジ部20Aに装着し、上フランジ部20Aを板ばね部材48の基端部48Bに当接させる。この状態では、上フランジ部20Aの先端部20A1とガイド部46の基準面Rとの間に間隙tが形成されている。その後、金物固定用治具40のガイド部46は、第1直線部46Aでアングル材36の縦板部36Aの先端を支持することにより、下側金物32を取り付け位置に案内する。作業者は、一方の手でガイド部46と下側金物32を同時に把持した状態で、他方の手を使いボルト26とナット28を締結して作業を完了させる。
【0037】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0038】
本実施形態に係る金物固定用治具40は、建物10の鉄骨16のフランジ部20を挟持する挟持部50と、挟持部50から延材するガイド部46を備えており、フランジ部20に固定される金物22の取り付け位置がガイド部46によって案内される。また、挟持部50は、建物10の鉄骨16側に面して開放された開放端52からフランジ部20が挿入されるように構成されており、フランジ部を基準位置まで挿入すると、規制手段によってフランジ部の移動が規制される。これにより、挟持部50を介して金物固定用治具40をフランジ部20に装着させる作業と同時に、フランジ部20に対する金物固定用治具40の相対的な位置決めを行うことができる。その結果、施工現場において金物固定用治具40を簡単、且つ、短時間で設定することができるため、金物22の位置決めを容易にすることができる。
【0039】
また、本実施形態の挟持部50は、板ばね部材48の付勢力によってフランジ部20を挟持しており、フランジ部20は、開放端52から基準位置まで挿入されると、板ばね部材48の基端部48Bに当接して変移が規制される。このように、規制手段が挟持部50の板ばね部材48と一体に設けられているため、金物固定用治具40の部品点数を減らすことができる。また、板ばね部材48によってフランジ部20が挟持される構成であるため、金物固定用治具40の装着及び取り外しの作業を簡単に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態に係る金物固定用治具40では、一対の挟持部50を有しており、これらの挟持部50が金物22の固定部(24A、34A)の両側に配置される構成とされている。このため、固定部(24A、34A)の一方側に挟持部50が配置される構成と比較して、ガイド部46の基準面Rを安定させることができる。
【0041】
また、ガイド部46は、金物22の縦板部(24B、36A)の周囲(縦板部の外周部の外側)に展開されて作業者が金物22の縦板部(24B、36A)と共に把持可能に形成されている。これにより、作業者は、縦板部(24B、36A)をガイド部46と共に把持することにより、金物22を所定の取り付け位置で安定して支持することができる。このため、金物22をフランジ部20に固定する際の位置ずれが低減され、組付け精度が向上する。更に、縦板部(24B、36A)とガイド部46を把持すると、縦板部(24B、36A)の周囲に展開されたガイド部46により作業者の手の位置(図9の手H1、手H2参照)を固定部(24A、34A)から遠ざけることができるため、金物22を固定する際に、ガイド部46を把持して金物22を支持する側の手と、締結用の工具との干渉を避けて作業することができるため、作業性が向上する。
【0042】
[補足説明]
上記実施形態では、金物固定用治具40は、建物10の天井梁と床梁を構成する鉄骨16と当該鉄骨16に固定される金物22の位置決めをする構成としたが、本発明はこれに限らず、各種の建築物の骨格に固定される金物の位置決めに用いることができる。例えば、屋根梁を構成する鉄骨と、当該鉄骨と屋根パネルとを連結する金物の位置決めを行うように構成してもよい。
【0043】
上記実施形態では、金物固定用治具40の挟持部50は、板ばね部材48の付勢力でフランジ部20を挟持する構成としたが、本発明はこれに限らない。コイルばねの付勢力で挟持する構成としてもよいし、ボルト等の締結具で挟持してもよい。
【0044】
上記実施形態では、金物固定用治具40に一対の挟持部50設ける構成としたが、1つの挟持部50を備える構成としてもよい。この場合に、ガイド部46を、挟持部の一端からL字状に屈曲した板状部材とすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、金物固定用治具40の本体部42を構成するベース部44とガイド部46とを別体で構成したが本発明はこれに限らない。ベース部44とガイド部46を一体に形成してもよい。また、軽量化を図る点から、本実施形態では金物固定用治具40の本体部42が樹脂製とされたが、本体部42を金属製にしてもよいし、木製にしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、フランジ部20の移動を規制する規制手段を板ばね部材48の基端部としたが、本発明はこれに限らず、板ばね部材48とは別体の規制手段を設ける構成としてもよい。例えば、板ばね部材48の基端部48Bにスペーサ部材を取り付けて、スペーサ部を規制手段としてもよい。当該構成によれば、金物固定用治具40が基準位置に装着されると、フランジ部20の先端部がスペーサ部材に当接する。
【0047】
また、上記実施形態では、金物固定用治具40の基準位置が画一的とされたが、本発明はこれに限らず、建物の設計に応じて金物固定用治具40の基準位置を変更できる基準位置調整機構を設ける構成としてもよい。例えば、上記実施形態では、ベース部44と板ばね部材48がボルト54を用いて固定されているが、当該ボルト54が貫通するベース部44と板ばね部材48の貫通孔の一方をベース部44の奥行方向に長い長円形状に形成する基準位置調整機構が考えられる。この場合、貫通孔の長手方向に沿ってベース部44と板ばね部材48の相対的な位置関係を調整することにより、基準位置を調整することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 建物
16 鉄骨
20 フランジ部
22 金物(上側金物、下側金物)
24A 固定部
24B 縦板部
34A 固定部
36B 縦板部
40 金物固定用治具
46 ガイド部
48 板ばね部材
48B 基端部
50 挟持部
52 開放端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10