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特許7393265金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット
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  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図1
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図2
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図3
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図4
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図5
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図6
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図7
  • 特許-金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/54 20060101AFI20231129BHJP
   E06B 1/12 20060101ALI20231129BHJP
   E04B 2/88 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
E06B3/54 Z
E06B1/12 Z
E04B2/88
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020052920
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152285
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】599093524
【氏名又は名称】旭ビルウォール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】伊勢谷 三郎
(72)【発明者】
【氏名】和久井 智
(72)【発明者】
【氏名】島田 大
(72)【発明者】
【氏名】野田 紗緒里
(72)【発明者】
【氏名】松田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】東 克彦
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4899507(US,A)
【文献】特開平6-221059(JP,A)
【文献】特開昭48-49223(JP,A)
【文献】実開平2-91812(JP,U)
【文献】特開2010-43456(JP,A)
【文献】特開2017-121804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/12-1/22
E06B 3/54-3/88
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドベンド工法によりねじれあるいは曲げられるべきガラス板と、
該ガラス板の少なくとも一辺に沿って配されていて前記ガラス板の周縁を挟持している金属製の金属枠と、
該金属枠を覆って保持して建物躯体に取り付けられるべき枠ホルダとを備え、
前記金属枠は、その長手方向に沿って間隔を存して配されていて前記長手方向と交わる方向に形成されている切込み部を有していることを特徴とする金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット。
【請求項2】
前記切込み部は、前記金属枠を分割するように周方向の全部に形成されていて、前記金属枠は複数個の枠セグメントが長手方向に並んで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット。
【請求項3】
前記切込み部は、所定の厚みを有して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット。
【請求項4】
前記金属枠は、横断面視にて円弧形状の外周面を有し、
前記枠ホルダは、前記金属枠の外周面の円弧形状に沿った内周面を有し、
前記金属枠は前記枠ホルダ内で回動できることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の周縁を保持する枠として金属枠を用いたコールドベンドガラスユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス板をサッシ(枠体)ごと、あるいはガラス板のみを少しずつねじり(曲げ)ながら現場にて建物躯体に取り付けるコールドベンド工法が知られている。特に、ガラス板のみを曲げるものとしては、例えば特許文献1のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-121804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラス板の枠として例えばアルミ製のアルミ枠を使用して、この枠付きのガラス板をコールドベンドガラスとした場合、アルミ枠はこれに追従して変形することが困難である。すなわち、ガラスはある程度の応力に耐えることができるのでねじれたり曲がったりするが、アルミ枠はアルミからなる金属製であるため、このねじれや曲げに追従することができず、アルミホルダが先に割れたり破損してしまったりする。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、金属製の金属枠(例えばアルミ枠)でガラス板の周縁が保持されている状態でガラス板がコールドベンド工法によりねじれたり曲げられてコールドベンドガラスになったとしても、このねじれや曲げに追従して金属枠が割れたり破損したりすることがない金属枠を用いたコールドベンドガラスユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、コールドベンド工法によりねじれあるいは曲げられるべきガラス板と、該ガラス板の少なくとも一辺に沿って配されていて前記ガラス板の周縁を挟持している金属製の金属枠と、該金属枠を覆って保持して建物躯体に取り付けられるべき枠ホルダとを備え、前記金属枠は、その長手方向に沿って間隔を存して配されていて前記長手方向と交わる方向に形成されている切込み部を有していることを特徴とする金属枠を用いたコールドベンドガラスユニットを提供する。
【0007】
好ましくは、前記切込み部は、前記金属枠を分割するように周方向の全部に形成されていて、前記金属枠は複数個の枠セグメントが長手方向に並んで形成されている。
【0008】
好ましくは、前記切込み部は、所定の厚みを有して形成されている。
【0009】
好ましくは、前記金属枠は、横断面視にて円弧形状の外周面を有し、前記枠ホルダは、前記金属枠の外周面の円弧形状に沿った内周面を有し、前記金属枠は前記枠ホルダ内で回動できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属枠が切込み部を有しているため、ガラス板がコールドベンド工法によりねじられ(ひねられ)あるいは曲げられてコールドベンドガラスとなり、その際に金属枠の長手方向に沿ってねじりの方向に力が働いたとしても、切込み部の部分にて金属枠は容易に角度を少しずつねじりの方向に向くようにして、コールドベンドガラスの形状に追従することができる。このため、金属枠にねじり力が加わったとしても、金属枠が割れたり破損したりすることはない。
【0011】
切込み部を金属枠を分割するように金属枠の周方向に沿って全部に形成すれば、金属枠は複数の枠セグメントにて形成されることになるので、個々の枠セグメントがコールドベンド工法のねじりや曲げにさらに追従される。
【0012】
また、切込み部に所定厚みを設ける、すなわち切込み部を介した金属枠(枠セグメント)同士の間に間隙を設けることで、コールドベンド工法により金属枠に対して曲げの方向に力が働いたとしても、この切込み部の厚み(間隙)が曲げによる金属枠の角度の変更を受け入れることができる。すなわち、コールドベンドガラスの形状によりこのような曲げ方向に力が加わったとしても、金属枠が割れたり破損したりすることはない。
【0013】
また、金属枠の外周面に対応させて枠ホルダの内周面をともに横断面視にて円の外周形状として形成することで、金属枠の外周面が枠ホルダの内周面に摺動して金属枠が枠ホルダ内で回動可能となる。このため、コールドベンド工法によりガラス板がねじられ(ひねられ)たり曲げられたりした際に金属枠に変形による負荷を与えることを抑制することができ、金属枠の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る金属枠を用いたコールドベンドガラスユニットの概略外観図である。
図2】本発明に係る金属枠を用いたコールドベンドガラスユニットの概略詳細図である。
図3】金属枠と枠ホルダとの関連を示す概略断面図である。
図4】金属枠と枠ホルダとの関連を示す概略断面図である。
図5】金属枠と枠ホルダとの関連を示す概略断面図である。
図6】ガラス板がコールドベンドガラスになった際の概略外観図である。
図7】枠セグメントを示す概略図である。
図8】ガラス板が別のコールドベンドガラスになった際の概略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明に係る金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット1は、コールドベンド工法によりねじられあるいは曲げられるべきガラス板2と、このガラス板2の少なくとも一辺に沿って配されている金属製の金属枠3とを備えている。具体的な材質としては、アルミニウムを利用できる。金属枠3は、ガラス板2の周縁を挟持している。具体的には、金属枠3とガラス板2との間には弾性材料からなるシール体6が介装されていて、シール体6がガラス板2の周縁を挟持し、さらに金属枠3がこのシール体6を覆って挟持している。したがって、シール体6はガラス板2の周縁を挟み込むような凹形状を有し、この凹み部分にガラス板2の周縁が嵌め込まれる。そして、金属枠3もシール体6を挟み込むような凹形状を有し、この凹み部分にガラス板2とともにシール体6が嵌め込まれる。
【0016】
図の例では、金属枠3はガラス板2の左右側辺に対して鉛直方向に延びて配されている。本発明に用いるガラス板2としてはコールドベンド工法が適用されるガラス板であればどのようなものでもよく、図で示すようなペアガラスの他、単板ガラスや合わせガラスも適用可能である。図ではガラス板2としてペアガラスを示しているので、空気層を介した2枚の単板ガラスが配され、ペアガラスの周囲にはスペーサ(不図示)及びシール材(不図示)が配されている。また、コールドベンドガラスユニット1は、さらに金属枠3を覆う枠ホルダ4を備えている。この枠ホルダ4は、金属枠3を保持して建物躯体5に取り付けられるべきものである(図では建物躯体5の例としてH鋼を示している)。
【0017】
そして、金属枠3には切込み部7が形成されている。切込み部7は金属枠3の長手方向に沿って間隔を存して配されていて、金属枠3の長手方向と交わる方向に形成されている(図では水平方向)。図の例では、切込み部7は金属枠3を分割するように金属枠3の周方向の全部に形成されている。これにより、金属枠3は複数個の枠セグメント8が長手方向に並んで形成されることになる。このような枠セグメント8が連なることで、長尺の金属枠3が形成されている。このように金属枠3を複数個の枠セグメント8で形成することで、枠セグメント8の一つ一つが異なる角度を向いて配されることができるようになる。すなわち、枠セグメント8は金属枠3の長手方向を軸方向として一つ一つ異なる回転角度をとることができる。これにより、ガラス板2がコールドベンド工法によりコールドベンドガラスになったとしても、そのねじれ(ひねり)に対して金属枠3自体でこれを許容するように追従することができる。
【0018】
なお、切込み部7は金属枠3の全周に亘って形成せずに一部にのみ形成してもよい。すなわち金属枠3を完全に分割して枠セグメント8を形成しなくても、ある程度の範囲で切込み部7を形成することでコールドベンドガラスのねじれ(ひねり)に追従して金属枠3を変形させることができる。これにより、金属枠3が割れたり破損したりすることが防止される。
【0019】
このように、本発明に係る金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット1のように、金属枠3に切込み部7を設ければ、ガラス板2がコールドベンド工法によりねじられ(ひねられ)あるいは曲げられてコールドベンドガラスとなり、その際に金属枠3の長手方向に沿ってねじりの方向に力が働いたとしても、切込み部7の部分にて金属枠3は容易に角度を少しずつねじりの方向に向くようにして、コールドベンドガラスの形状に追従させることができる。このため、金属枠3にねじり力が加わったとしても、金属枠3が割れたり破損したりすることはない。さらに、切込み部7を金属枠3を分割するように金属枠3の周方向に沿って全部に形成すれば、金属枠3は複数の枠セグメント8にて形成されることになるので、個々の枠セグメント8がコールドベンド工法のねじりや曲げにさらに追従される。
【0020】
さらに、図3図5に示すように、金属枠3は、横断面視(長手方向に対して直交する方向から見て)にて円弧形状の外周面3aを有している。一方で、枠ホルダ4は、金属枠3の外周面3aの円弧形状に沿った内周面4aを有している。よって、外周面3aと内周面4aとは同心円且つ略同径(内周面4aの方が外周面3aよりも若干大きい径)の円周に沿うような円弧形状を有している。これら外周面3aと内周面4aとは互いに摺動可能であり、したがって金属枠3は枠ホルダ4内で回動できるということになる。図でいえば、図4の状態がガラス板2が建物躯体5に対して平行な状態であり、コールドベンド工法によってガラス板2が曲げられてガラス板2が建物躯体5に対して外側にねじられた例が図3であり、建物躯体に対して内側(建物躯体5側)にねじられた例が図5である。
【0021】
このように、金属枠3の外周面3aに対応させて枠ホルダ4の内周面4aをともに横断面視にて円の外周形状として形成することで、金属枠3の外周面3aが枠ホルダ4の内周面4aに摺動して金属枠3が枠ホルダ4内で回動可能となる。このため、コールドベンド工法によりガラス板2がねじられ(ひねられ)たり曲げられたりした際に金属枠3に変形による負荷を与えることを抑制することができ、金属枠3の破損を防止することができる。これは、上述したように金属枠3に切込み部8を形成することと相俟って、コールドベンド工法に対応するようなさらなる工夫点といえる。このようにすることで、図6に示すように、ガラス板2がねじられたり曲げられたりしてコールドベンドガラスになったとしても、切込み部8を有する金属枠3(枠セグメント8)がそれぞれこれに追従してねじられ、さらに金属枠3自体も枠ホルダ4内で回動して追従するので、金属枠3に無理な力が働くことはなく、金属枠3の破損を防止できる。なお、枠ホルダ4はボルト9により建物躯体5に確実に固定されている。また、ガラス板2の外側面と枠ホルダ4との間には、塵埃等の侵入を防止するためのシール材10が形成されている。ガラス板2の内側面と枠ホルダ4との間からは、金属枠3が露出している。このように、枠ホルダ4の間口を広げることで、ガラス板2が変形した際に枠ホルダ4とガラス板2とが接触してしまうことを防止している。さらに、この例が示すようなガラス板2を並べて建物の外壁を形成するような場合には、塵埃等の侵入を防止するために隣り合うガラス板2の周縁を保持している枠ホルダ4の間にシール材11が配される。
【0022】
図7を参照すれば明らかなように、切込み部7は所定の厚みを有して形成されていてもよい。ここで切込み部7の所定の厚みとは、切込み部7を介した金属枠3(枠セグメント8)同士の間に間隙12を設けることである。この間隙12は金属枠3の一方の側に向けて徐々に広がるように形成されている(金属枠3の一方の側の側面から他方の側の側面に向けて延び、その先端に向けて厚みが徐々に狭まるように形成されている切込み部7)。すなわち、間隙12は側面視にていわゆるくさび形状となる。これにより、コールドベンド工法により金属枠3に対して曲げの方向に力が働いたとしても、この切込み部8の厚み(間隙12)が曲げによる金属枠3の角度の変更を受け入れることができる。すなわち、コールドベンドガラスの形状によりこのような曲げ方向に力が加わったとしても、金属枠3が割れたり破損したりすることはない。具体的には、間隙12を建物躯体5に対して外側方向に広がるように形成すれば、図8に示すように、建物躯体5に対して外側に曲げるようなコールドベンド工法を用いた場合にも対応可能となる。
【0023】
本発明は、コールドベンド工法によりガラス板2がねじれた場合は金属枠3がねじれたり回動したりすることでこれに追従し、曲げられた場合は間隙12が縮むことでこれに追従することを実現するものである。このように本発明は、コールドベンド工法を用いたコールドベンドガラスによりカーテンウォールや様々な建築物を施工する際に大変有用な技術である。
【符号の説明】
【0024】
1:金属枠を用いたコールドベンドガラスユニット、2:ガラス板、3:金属枠、3a:金属枠の外周面、4:枠ホルダ、4a:枠ホルダの内周面、5:建物躯体、6:シール体、7:切込み部、8:枠セグメント、9:ボルト、10:シール材、11:シール材、12:間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8