(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】脈波センサ付きバンド及び当該バンドを有する時計
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20231129BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20231129BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61B5/0245 B
A61B5/02 310B
A61B5/02 310F
A44C5/00 D
(21)【出願番号】P 2020059509
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】亀山 愛樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 勝弘
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0278645(US,A1)
【文献】特開2018-099409(JP,A)
【文献】特開2016-015978(JP,A)
【文献】特開2011-055895(JP,A)
【文献】特開2003-061921(JP,A)
【文献】特開2009-153832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A44C 5/00-5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈波センサと、
制御部と、
を有
する、ユーザの手首に装着するためのバンドであって、
前記脈波センサは、
前記バンドの内側に、前記バンドの周方向に配置される複数の受光素子を含む受光素子列と、前記バンドの周方向に前記受光素子列と並列に配置される複数の発光素子を含む発光素子列とを含み、
前記発光素子列は複数組設けられており、
前記制御部は、
前記発光素子列の組毎に発光させて、前記複数の受光素子のうち最も高感度に脈波を測定できる受光素子と発光素子列の組とを選択する
バンド。
【請求項2】
前記受光素子列における各受光素子は、前記発光素子列において当該受光素子と近接する発光素子と関連付けられており、
前記制御部は、
選択した前記受光素子以外の受光素子と、選択した前記受光素子に関連付けられた発光素子以外の発光素子とをオフにする
請求項1記載のバンド。
【請求項3】
前記受光素子列が複数列設けられた
請求項1又は2記載のバンド。
【請求項4】
前記複数の発光素子は、特定の方向に指向性を持たせたものである
請求項1乃至
3のいずれか1つ記載のバンド。
【請求項5】
前記制御部が、
所定レベル以上の脈波を測定できない場合に、前記複数の受光素子のゲインを高める又は前記複数の発光素子の発光量を増加させる
請求項1乃至
4のいずれか1つ記載のバンド。
【請求項6】
前記脈波センサが、撥水性のあるカバーで覆われている
請求項1乃至
5のいずれか1つ記載のバンド。
【請求項7】
前記脈波センサが、遮光性を持たせるための突起部で囲われている
請求項1乃至
6のいずれか1つ記載のバンド。
【請求項8】
前記制御部が、
所定レベル以上の脈波を測定できない場合に、警告出力を行う
請求項1乃至
7のいずれか1つ記載のバンド。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか1つ記載のバンドを有する
時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの手首に装着する脈波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートウォッチの開発が盛んに行われている。スマートウォッチには生体信号を読み取るセンサが複数搭載されており、その中の1つに光電脈波センサがある。光電脈波センサは、近赤外から緑色波長帯の光を血管部位に照射し、血中ヘモグロビンの光吸収特性を利用することで反射光から血液の容積変化を測定する手法である。これにより得られる容積脈波から周期を算出してリアルタイムに脈拍数を算出する。スマートウォッチは手首に装着するため、手首で脈波を測定する各種方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示の技術では、一般的なスマートウォッチの文字盤を含むケースの裏側に光電脈波センサが搭載されている。手首で脈波測定を行う場合、手のひら側にある橈骨動脈付近で大きな信号が得られることが知られているが、手の甲側に光電脈波センサが取り付けられていると、大きな信号が得られないという問題がある。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2は、橈骨動脈からの信号を得るため、バンドによって橈骨動脈付近にセンサを固定する構造を開示している。しかしながら、この構造は少しセンサがずれるだけで脈波検出が困難になるため、センサが動かないよう手首をバンドで締め付けており、快適な装着感を損なう。
【0005】
さらに、例えば特許文献3は、発光素子と受光素子を手首周囲方向へ交互に且つ一列に複数配置した構造を開示している。これによれば、センサがずれた場合でも、複数の受光素子のいずれかによって大きな脈波信号を検知できるというものである。しかし、発光素子と受光素子とが一列に交互に並んでおり、受光素子と受光素子の間に発光素子が入るため、受光素子間の間隔が広くなってしまう。少しのずれで脈波の波形が変化するため、これでは少しのずれに対応できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5862731号公報
【文献】特開2004-275307号公報
【文献】特開2010-51790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の目的は、一側面によれば、ユーザの手首において脈波をより測定しやすくするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る脈波測定装置である、ユーザの手首に装着するためのバンドは、脈波センサと、制御部とを有する。この脈波センサは、バンドの内側に、当該バンドの周方向に配置される複数の受光素子を含む受光素子列と、当該バンドの周方向に受光素子列と並列に配置される複数の発光素子を含む発光素子列とを含む。そして、上で述べた制御部は、複数の受光素子のうち最も高感度に脈波を測定できる受光素子を選択する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、脈波をより測定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る脈波測定装置の装着例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る脈波センサの外観を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る脈波測定装置の機能構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係る脈波測定装置の動作内容を示す図である。
【
図6】
図6は、不適切な脈波の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係る脈波センサの外観を示す図である。
【
図8】
図8は、第3の実施の形態に係る脈波センサの外観を示す図である。
【
図9】
図9は、第4の実施の形態に係る脈波センサの断面を示す図である。
【
図10】
図10は、第5の実施の形態に係る脈波センサの断面を示す図である。
【
図11】
図11は、第6の実施の形態に係る脈波センサの外観を示す図である。
【
図12】
図12は、第6の実施の形態に係る脈波測定装置の機能構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、第7の実施の形態に係る脈波測定装置の機能構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、第7の実施の形態に係る脈波測定装置の動作内容を示す図である。
【
図15】
図15は、第8の実施の形態に係る脈波測定装置の装着例を示す図である。
【
図16】
図16は、第8の実施の形態に係る脈波測定装置の機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1に、本発明の実施の形態に係るスマートウォッチ型の脈波測定装置100の概要を示す。脈波測定装置100は、表示部を有するケース190と、バンド110とを有している。なお、本発明の実施の形態では、表示部が設けられない場合や、ケース190が設けられない場合(ケース190に包含される構成要素がバンド110に組み入れられる場合)も想定され、その場合にはバンド110のみで脈波測定装置100が構成される。一方で、表示部やケース190が設けられる場合でも、ユーザの手首の周りに装着することになり、主要部である脈波センサ部分はバンド110に設けられるので、本願では、脈波測定装置100を単にバンドと呼ぶこともあるものとする。
【0012】
図1(a)及び(b)では、脈波測定装置100を右手手首に装着した場面を示しており、
図1(a)は手のひらが見える方向からの模式図であり、
図1(b)は手首部分の断面図である。
【0013】
図1(b)に模式的に示すように、手首1には、尺骨2と、橈骨3とがあり、橈骨3の付近に橈骨動脈4が通っている。橈骨動脈4は、大きな脈波振動を発しているので、この橈骨動脈4から脈波信号を得ることで高感度なセンシングを行うことができる。そのため、バンド110には、橈骨動脈4付近に脈波センサ115を設けている。
図1では、橈骨動脈4付近にのみにある程度の長さの脈波センサ115を設ける例を示しているが、右手だけではなく左手に装着する場合などに対応するため、バンド110の周方向全体に渡って脈波センサ115を設けるようにしても良い。バンド110に占める脈波センサ115の周方向の長さが長くなるほど、バンド110が周方向に回転したとしても、橈骨動脈4からの脈波信号を高感度で検出できる可能性が高くなる。すなわち、手首1にバンド110を締め付けるような装着状態ではなく、緩くはめるような装着状態でも脈波信号を検出できるようになる。
【0014】
なお、バンド110は、手首1に装着するため、柔軟性のある素材で形成されている。
【0015】
図2に、脈波センサ115の外観について示す。脈波センサ115は、バンド110に設けられるので、例えばフレキシブルな基板に形成されている。
図2(a)は、脈波センサ115の手首1側の面、すなわちバンド110の内側を表している。
図2(a)に示すように、例えばLED(Light Emitting Diode)である複数の発光素子116aがバンド110の周方向に並べられた第1の発光素子列1151と、複数の発光素子116bがバンド110の周方向に並べられた第2の発光素子列1153と、第1の発光素子列1151と第2の発光素子列1153とに挟まれて複数の受光素子117がバンド110の周方向に並べられた受光素子列1152とを含む。すなわち、1つの受光素子117に対して、バンド110の周方向に直交する方向に2つの発光素子116a及び116bが配置されている。
【0016】
本実施の形態において、受光素子列1152のそれぞれの受光素子間に発光素子を配置する必要が無いので、その分受光素子117の間隔を狭くすることができ、バンド110が手首1で少し動いても、いずれかの受光素子117で脈波を高感度で検出できるようになる。
【0017】
本実施の形態では、隣接する発光素子116aと受光素子117と発光素子116bとで1つのセンサ部120が構成される。
図2(a)の例では、9個のセンサ部120が並べられている。なお、1つのセンサ部120に含まれる発光素子の数については、2に限られず、1以上の所定数となる。
【0018】
図2(a)におけるAA線の断面図を、
図2(b)に示す。センサ部120には、ユーザの汗などから受光素子及び発光素子を保護するための透明なカバー121が手首1側に設けられている。カバー121は、撥水性を有することが好ましく、透明な素材(強化ガラス等)のカバーで、素子部を保護するよう、センサの縁からカバーする。また、カバー越しに手首が接着するが、素子と手首の距離を一定に保つものが好ましい。また、3つのくぼみに発光素子116a、受光素子117及び発光素子116bが設けられている。こうして、素子が直接手首に触れるのを防ぐことができるので、素子を保護することができる。なお、
図2(b)において、素子の上部の空間に電池等を内蔵するようにしても良い。
【0019】
このような脈測定装置100の機能構成図を、
図3に示す。
【0020】
図2(a)に示したように脈波センサ115にはセンサ部120は複数含まれており、各センサ部120は、発光素子116aと、当該発光素子116aに対して発光信号を出力する発光信号出力部131と、受光素子117と、受光素子117からの信号を増幅させる信号増幅部132と、信号増幅部132からの信号に対して平滑化などの処理を行うフィルタ部133と、フィルタ部133から信号を外部に脈波信号として出力する脈波信号出力部135と、発光素子116bと、発光素子116bに対して発光信号を出力する発光信号出力部134とを有する。
【0021】
さらに、脈波測定装置100は、各センサ部120からの脈波信号を受信して最も高感度なセンサ部120を選別するなどの処理を実行する制御部150と、制御部150からの選択信号に応じていずれかのセンサ部120をイネーブルするスイッチング部140と、制御部150で処理された脈波に関する情報を表示する表示部160とを有する。
【0022】
このような脈波測定装置100の動作内容を、
図4を用いて説明する。
【0023】
まず、制御部150は、スイッチング部140に対して全センサ部120をオンにする。そうすると、全センサ部120で発光素子116a及び116bを発光させ且つ受光素子117で反射光を受光することで受光信号を信号増幅部132及びフィルタ部133で処理して脈波信号出力部135から出力するので、制御部150は、全センサ部120から脈波信号を取得する(ステップS1)。なお、センサ部120を順次動作させて、各センサ部120から脈波信号を順次取得しても良い。
【0024】
そして、制御部150は、閾値以上の振幅の脈波信号が得られたか否かを判断する(ステップS3)。閾値以上の振幅の脈波信号が一つも得られない場合、橈骨動脈4から脈波センサ115が大きくずれていることが想定される。閾値以上の振幅の脈波信号が得られなかった場合には、制御部150は、表示部160に対して、脈波センサ115がずれていることなどを示す警告を出力させる(ステップS5)。そして処理はステップS13に移行する。警告では、脈波センサの位置を適切な位置に移動させることを求めるような内容を含むようにしても良い。
【0025】
一方、閾値以上の振幅の脈波信号が得られた場合には、制御部150は、全センサ部120からの脈波信号のうち最適な脈波信号を特定する(ステップS7)。橈骨動脈4付近のセンサ部120からは、例えば
図5に示すような十分な振幅を有した鮮明な脈波が得られるが、そうでないと
図6に示すような振幅があまりなくノイズばかりの信号が得られるので、
図5に示すような脈波信号を選択する。脈波信号の選択基準については、予め設定しておく。
【0026】
そして、制御部150は、最適な脈波信号を出力したセンサ部120以外のセンサ部120をスイッチング部140によってオフにさせる(ステップS9)。これによって全体の消費電力を抑制することができるようになる。
【0027】
そして、制御部150は、最適な脈波信号を出力したセンサ部120からの脈波信号を処理して、当該脈波信号に基づく情報を生成して、表示部160に出力させる(ステップS11)。例えば、脈波信号の波形を表示させたり、脈拍数を計算して出力するようにしても良い。
【0028】
そして、制御部150は、処理終了が指示されたか否かを判断する(ステップS13)。処理終了が指示されれば処理は終了される。なお、例えば所定回数警告を出力しても閾値以上の振幅の脈波信号が得られない場合には、処理終了が指示されたものとみなすようにしても良い。
【0029】
一方、処理終了が指示されていない場合には、制御部150は、現在の脈波信号の振幅が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS15)。一旦、脈波信号を得られていても、バンド110が手首1を回ってしまって位置がずれる場合もある。このような状況になっていないかを確認するものである。脈波信号の振幅が閾値以上であれば、処理はステップS11に戻る。すなわち、選択されたセンサ部120からの脈波信号の処理を継続する。一方、脈波信号の振幅が閾値未満であれば、処理はステップS1に戻って、適切なセンサ部120の選択からやり直す。なお、ステップS15の閾値はステップS3と同一であっても良いし、異なっていても良い。但し、異なっている場合には、ステップS5の処理の後に、単純にステップS1に戻っても良い。
【0030】
以上のような構成を有し、上で述べた処理を行うことで、適切な脈波を測定できるようになる。また、バンド110が手首1に強固に固定されていない場合でも、いずれかのセンサ部120から脈波を測定できるようになる。すなわち、脈波測定装置100を手首1へ締め付け過ぎないような緩やかな取り付けでもセンシングが可能であり、長時間でも快適な装着感を得られる。さらに、安静時に長時間安定した振幅の脈波を検出することができれば、病気の診断目安等となることが期待される。
【0031】
[実施の形態2]
第1の実施の形態における
図2(a)のような発光素子及び受光素子の配置は一例であって、例えば
図7に示すような配置であってもよい。
図7では、脈波センサ115bには、中央に複数の受光素子117がバンド110の周方向に並べられた受光素子列1152が設けられているが、バンド110の縁側に第1の実施の形態とは異なる第1の発光素子列1151bと第2の発光素子列1153bとが設けられている。具体的には、第1の発光素子列1151bでは、複数の発光素子116aがバンド110の周方向に並べられているが、その並びの間隔は受光素子117一つおきである。また、第2の発光素子列1153bでは、複数の発光素子116bがバンド110の周方向に並べられているが、その並びの間隔は受光素子117一つおきであり、且つ第1の発光素子列1151bとは互い違いになるように並べられている。
【0032】
本実施の形態においても、9つのセンサ部がバンド110の周方向に並べられているが、第1のセンサ部120dは、第1の発光素子列1151bにおける発光素子116aと受光素子117とで構成されるが、第2のセンサ部120eは、第2の発光素子列1153bにおける発光素子116bと受光素子117とで構成される。この2つのセンサ部120d及び120eとがバンド110の周方向に繰り返して配置される。
【0033】
これによって発光素子の数を削減し、消費電力を削減できるようになる。
【0034】
図3に示した脈測定装置100の機能構成図は、発光素子の数が1つになるだけで、基本的には同じであり、
図4に示した動作内容も同様である。
【0035】
なお、第1のセンサ部120dと第2のセンサ部120eとが交互に配置される例を示したが、それぞれ例えば2つずつ並べるようにしても良い。
【0036】
[実施の形態3]
第1及び第2の実施の形態では、発光素子列を複数設ける例を示したが、例えば、
図8に示すように、受光素子列を複数にしても良い。
【0037】
図8の例では、脈波センサ115cには、発光素子列1151cを中央に配置して、その両脇に第1の受光素子列1152bと第2の受光素子列1152cを設ける例を示している。
【0038】
この実施の形態では、センサ部120fは、受光素子117bと発光素子116aと受光素子117cとを含む。そして、複数のセンサ部120fがバンド110の周方向に並んでいる。
【0039】
なお、1つのセンサ部120fにおいて2つの受光素子117b及び117cが設けられているので、
図3に示した脈波測定装置100の機能構成図においては、受光素子と信号増幅部とフィルタ部とのセットが2つ設けられるが、発光素子と信号出力部とのセットは1つになる。また、脈波信号出力部135は、2つの脈波信号を合わせて積算するか、2つの脈波信号のうち振幅が大きい方を選択して出力するといった処理を行う。
【0040】
以上のような構成を採用することで、より好ましい脈波信号を測定できるようになる。
【0041】
[実施の形態4]
第1乃至第3の実施の形態では、基本的に
図2(b)に示すようにカバー121が手首1に触れるようになる。カバー121が設けられない場合、複数のくぼみが設けられた脈波センサ115部分が手首1に触れるようになる。これは、ユーザに不快感を与える可能性がある。また、手首1とカバー121などとの隙間から光が入るので、受光素子に影響がある場合もある。
【0042】
そこで、
図9に示すように、センサ部120gには、脈波センサ115の縁を囲う柔軟な素材で形成された突起部122が設けられる。これによって、手首1と脈波センサ115部分との密着による不快感を軽減し、周辺からの光を遮光することで、受光素子において血液からの反射光を受光しやすくなる。
【0043】
[実施の形態5]
発光素子116a及び116bから放射される光を手首1にあてる角度によって受光素子117によって検出される脈波信号が異なる場合もある。このような場合には、
図10に模式的に示すように、発光素子116aに対してレンズ118a、発光素子116bに対してレンズ119bを設けることで、発光素子116a及び116bに指向性を持たせて、好ましい角度で発光素子116a及び116bからの光を手首1に照射できるようにする。
【0044】
[実施の形態6]
第1及び第2の実施の形態では、発光素子列を2つ設ける例が示されていたが、より多くの発光素子列を設けることで、発光素子から放射される光と橈骨動脈4とその反射光と受光素子との関係から、より好ましい脈波信号が得られる場合がある。
【0045】
図11に、より多くの発光素子列を設ける例の模式図を示す。本実施の形態に係る脈波センサ115dは、受光素子列1152と、第1の発光素子列1151aと、第2の発光素子列1153aと、第3の発光素子列1151bと、第4の発光素子列1153bと、第5の発光素子列1151cと、第6の発光素子列1153cとが含まれている。より多くの発光素子列を含めても良い。
【0046】
本実施の形態に係るセンサ部120hは、受光素子117と、発光素子116aと、発光素子116bと、発光素子116cと、発光素子116dと、発光素子116eと、発光素子116fとを含む。但し、発光素子116aと発光素子116bとが組になっており、発光素子116cと発光素子116dとが組になっており、発光素子116eと発光素子116fとが組になっており、組毎に同時に発光するようになっている。
【0047】
本実施の形態に係る脈波測定装置100bの機能構成例を
図12に示す。脈波測定装置100bは、複数のセンサ部120hと、スイッチング部140と、制御部150bと、表示部160とを有する。
【0048】
各センサ部120hは、受光素子117と、複数の発光素子116a乃至116f(図では116a乃至116dで、他は省略。)と、信号増幅部132と、フィルタ部133と、脈波信号出力部135と、複数の発光信号出力部131a及び131b(発光素子の組の数だけ)と、発光制御部136とを有する。
【0049】
発光信号出力部131aは、発光素子116a及び116bに発光信号を出力する。発光信号出力部131bは、発光素子116c及び116dに発光信号を出力する。発光制御部136は、制御部150bからの指示に応じて、複数の発光信号出力部のうちいずれかに発光信号を出力させる。
【0050】
例えば、まず、発光信号出力部131aが発光素子116a及び116bの組に発光信号を出力して発光させて、そのときに受光素子117が手首1からの反射光を受光して脈波信号を生成し、当該脈波信号は、信号増幅部132、フィルタ部133及び脈波信号出力部135を介して制御部150bに出力される。次に、発光信号出力部131bが発光素子116c及び116dの組に発光信号を出力して発光させて、そのときに受光素子117が手首1からの反射光を受光して脈波信号を生成し、当該脈波信号は、信号増幅部132、フィルタ部133及び脈波信号出力部135を介して制御部150bに出力される。このような動作を繰り返すことにより、発光素子の組をずらしながら、各組について脈波信号を得ることができるようになる。なお、発光素子の組の発光順は、バンドの周方向に垂直な方向において、受光素子117側からでも、受光素子117から最も遠い外側からでも、その他の方法であっても良い。
【0051】
制御部150bは、センサ部120hにつき、複数の脈波信号を得ることができ、全てのセンサ部120hが出力する複数の脈波信号のうち、最も好ましい脈波信号を選択する。選択された脈波信号を出力したセンサ部120hをスイッチング部140でオンにすると共に、他のセンサ部120hについてはオフにする。さらに、選択された脈波信号を生成させる光を放射した発光素子の組も特定して、発光制御部136に、その発光素子の組のみ発光させるように指示する。
【0052】
すなわち、
図4のステップS1において、全てのセンサ部120hが出力する複数の脈波信号を順次取得する処理を行う。そして、ステップS7で、全てのセンサ部120hが出力する複数の脈波信号のうちで、最も好ましい脈波信号を特定し、ステップS9で、最も好ましい脈波信号を出力したセンサ部以外のセンサ部をオフにすると共に、最も好ましい脈波信号を出力したセンサ部120hの発光制御部136に、最も好ましい脈波信号を出力した際に発光していた発光素子の組に発光させるように指示する。
【0053】
このような構成及び動作を採用すれば、更に好ましい脈波信号を取得できることが期待される。
【0054】
[実施の形態7]
これまで述べた実施の形態では発光素子の発光量は一定で、受光素子からの信号の増幅度合い(即ちゲイン)も一定であった。しかしながら、取得された脈波の状況からすれば、発光量を増加させたり、受光素子のゲインを上昇させたりすることが好ましい場合もある。
【0055】
本実施の形態に係る脈波測定装置100cの機能構成例を
図13に示す。脈波測定装置100cと
図3に示した脈波測定装置100との差異は、各センサ部120jが、発光素子116a及び116bの発光量を制御するための発光制御部136bをさらに有している点と、制御部150cが、発光制御部136bに対して発光量の指示を行うことと、受光素子117の信号増幅部132に対してゲインの指示を行うことをさらに行うようになっている点と、発光信号出力部131cが発光素子116a及び116bの発光量を調整できるようになっている点である。但し、発光素子116a及び116bについての制御のみを行うようにしても良いし、受光素子117についての制御のみを行うようにしても良い。
【0056】
脈波測定装置100cの動作内容について
図14に示す。脈波測定装置100の動作内容との差異は、
図4におけるステップS3のNoルートにおける処理が、ステップS21乃至S25に置き換わっている点が異なる。
【0057】
すなわち、閾値以上の振幅の脈波信号が得られなかった場合には、制御部150cは、発光素子116a及び116bの発光量と受光素子117のゲインとのうち制御対象について調整可能か否かを判断する(ステップS21)。もはや発光量を最大まで上げてしまっていたり、受光素子117のゲインを最大まで上げてしまっていると、もはや調整は不可能なので、制御部150cは、警告を表示部160に表示させて(ステップS25)、処理はステップS13に移行する。警告の内容は第1の実施の形態と同様である。
【0058】
一方、発光素子116a及び116bの発光量と受光素子117のゲインとのうち制御対象について調整可能であれば、制御部150cは、発光素子116a及び116bの発光量を制御対象とする場合には、発光制御部136bに発光量を所定量増やすように指示し、受光素子117のゲインを制御対象とする場合には、信号増幅部132に対してゲインを増加するように指示する(ステップS23)。そして処理はステップS1に戻る。
【0059】
このような動作を行うことによって、閾値以上の振幅の脈波信号を得られる可能性が高くなる。
【0060】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と組み合わせることが可能である。
【0061】
[実施の形態8]
上でも述べたが、
図15に模式的に示すように、表示部を含むケース190を設けないようなバンド110dとして実施する場合もある。
【0062】
このバンド110dは、橈骨動脈4付近をカバーするように脈波センサ115を含むのは同様であるが、ケース190がないので、脈波センサ115部分に、電池を含む回路などを含むものである。
【0063】
また、
図3に示した脈波測定装置100の機能構成とは異なり、
図16に示すように、表示部160の代わりに、測定された脈波信号に基づく情報を出力するための出力部170を有する。出力部170は、例えばBluetooth(登録商標)のような近距離無線通信規格に従った通信部であっても良いし、例えばUSB(Universal Serial Bus)のコネクタのように、ケーブル経由で他の装置に対して脈波信号に基づく情報を出力するものであってもよい。USBコネクタが設けられていれば、USBコネクタ経由で電力供給して、内蔵電池の充電を行うようにしても良いし、USBコネクタが設けられていなくても、無線給電機構を別途設けることで、内蔵電池の充電を行うようにしても良い。
【0064】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、機能構成例は一例であって、異なるデバイス構成となっていても全体として同様の機能を実現できれば良い。一部にマイクロプロセッサが実行するプログラムにより上記機能が実現される場合もあれば、全て専用の回路で実装される場合もある。
【0065】
動作フローについても、同様の動作が実現できれば、実行順番を入れ替えたり、複数のステップを同時に実行するようにしても良い。
【0066】
さらに、ケース190に時計機能、他の演算機能、通信機能等と、他のセンサを設けるようにしても良い。さらに、ケース190に、スイッチング部140及び制御部150等を設けておき、バンド110については取り替え可能にしておいても良い。さらに、右手にバンド110を装着する例を示したが、左手にバンド110を装着するようにしても良い。この場合、橈骨動脈4の位置が異なるので、その位置付近に脈波センサ115を配置することが好ましい。
【0067】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0068】
本実施の形態に係る脈波測定装置である、ユーザの手首に装着するためのバンドは、脈波センサと、制御部とを有する。そして、当該脈波センサは、バンドの内側に、当該バンドの周方向に配置される複数の受光素子を含む受光素子列と、当該バンドの周方向に受光素子列と並列に配置される複数の発光素子を含む発光素子列とを含む。さらに、上で述べた制御部は、複数の受光素子のうち最も高感度に脈波を測定できる受光素子を選択する。
【0069】
このように発光素子列を受光素子列とを別に設けることで、受光素子の間隔を狭めることができ、ユーザの手首でバンドが回転したとしても、好適な脈波を測定しやすくなる。
【0070】
なお、受光素子列における各受光素子は、発光素子列において当該受光素子と近接する発光素子と関連付けられていても良い。この場合、上で述べた制御部は、選択した受光素子以外の受光素子と、選択した受光素子に関連付けられた発光素子以外の発光素子とをオフにする。このようにすれば、消費電力を下げることができる。
【0071】
さらに、上で述べた受光素子列が複数列設けられる場合もある。バンドの周方向だけではなく、それに直交する方向においても受光素子を別途設けることで、より脈波を測定しやすくなる。
【0072】
また、発光素子列が複数組(各組に含まれる発光素子列は1以上)設けられる場合もある。この場合、上で述べた制御部が、発光素子列の組毎に発光させて、最も高感度に脈波を測定できる受光素子と発光素子列の組とを選択するようにしても良い。発光素子で出力される光線と血管との角度が異なると、反射光を受光する受光素子において適切な脈波を測定できる場合があるためである。
【0073】
また、複数の発光素子は、特定の方向に指向性を持たせたものである場合もある。より適切な方向から発光素子からの光線を血管に当てるためである。
【0074】
さらに、上で述べた制御部は、所定レベル以上の脈波を測定できない場合に、複数の受光素子のゲインを高める又は複数の発光素子の発光量を増加させるようにしても良い。このようにすれば、より適切な脈波を測定できるようになることが期待される。
【0075】
さらに、上記脈波センサが、撥水性のあるカバーで覆われているようにしても良い。ユーザの手首における汗などに対応するためである。
【0076】
さらに、上記脈波センサが、遮光性を持たせるための突起部で囲われるようにしても良い。ユーザによるバンドの装着感を改善したり、受光素子において環境光の影響を抑制するためである。
【0077】
また、上で述べた制御部が、所定レベル以上の脈波を測定できない場合に、警告出力を行うようにしても良い。例えば、バンドを回転させて、バンドの装着状態を変えるためである。
【0078】
さらに、脈波測定装置であるバンドは、表示部をさらに有するようにしても良い。この場合、上記制御部が、測定された脈波に基づく情報を表示部に表示させる。なお、脈波測定装置としては表示部がなくても良い。
【0079】
また、上記制御部が、測定された前記脈波に基づく情報を外部に出力するようにしても良い。例えば、無線又はケーブルコネクタ経由で、スマートフォンや他のコンピュータ等に出力するようにする。
【0080】
なお、このような脈波測定装置は、スマートウォッチなどの時計として実装される場合もある。すなわち、脈波測定装置は、ユーザの手首に装着可能なバンドの形態であれば良く、その他の機能を有する装置と一体化しても良い。
【0081】
このような構成は、実施の形態に述べられた事項に限定されるものではなく、実質的に同一の効果を奏する他の構成にて実施される場合もある。
【符号の説明】
【0082】
1 手首 2 尺骨 3 橈骨 4 橈骨動脈
100 脈波測定装置 110 バンド
115 脈波センサ
116 発光素子 117 受光素子 120 センサ部
140 スイッチング部 150 制御部 160 表示部