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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】自己出力型ガンマ線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/28 20060101AFI20231129BHJP
   G21C 17/10 20060101ALI20231129BHJP
   G21C 17/104 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01T1/28
G21C17/10 600
G21C17/104
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020068161
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165645
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伏見 篤
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕一
【審査官】大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-000499(JP,A)
【文献】特開2014-085119(JP,A)
【文献】特開昭57-211573(JP,A)
【文献】米国特許第04091288(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/16、1/28、3/00
G21C 17/00-17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタと、
前記エミッタを囲むコレクタと、
前記エミッタおよび前記コレクタを結ぶ信号線と、
前記信号線に取り付けられた電流計を備え、
前記エミッタを複数備え、
前記コレクタの内面の表面積をS1とし、前記複数の前記エミッタの表面積の合計をS2としたとき、S1<S2である
ことを特徴とする自己出力型ガンマ線検出器。
【請求項2】
各前記エミッタに前記信号線がそれぞれ接続され、前記信号線が一つに結線されて前記電流計に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の自己出力型ガンマ線検出器。
【請求項3】
エミッタと、
前記エミッタを囲むコレクタと、
前記エミッタおよび前記コレクタを結ぶ信号線と、
前記信号線に取り付けられた電流計を備え、
前記エミッタの表面に複数の突起物を設け、
前記コレクタの内面の表面積をS1とし、前記エミッタの表面積をS2としたとき、S1<S2である
ことを特徴とする自己出力型ガンマ線検出器。
【請求項4】
前記エミッタの前記複数の突起物の形状が全て等しいことを特徴とする請求項3に記載の自己出力型ガンマ線検出器。
【請求項5】
前記エミッタの前記複数の突起物が等間隔に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の自己出力型ガンマ線検出器。
【請求項6】
前記エミッタの前記複数の突起物は、形状が異なり間隔が一様ではない配置とされたことを特徴とする請求項3に記載の自己出力型ガンマ線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽水炉の炉出力の監視に使用される自己出力型ガンマ線検出器に関し、特に、沸騰水型原子炉の炉出力を変更したときの出力の監視に用いて好適な自己出力型ガンマ線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所は、その運転中に、炉心の出力を放射線検出器で監視することにより、計画通りの出力で原子炉が運転できているかを確認している。
現在の沸騰水型軽水炉では、放射線検出器として、ガンマ線を検出することで炉出力を監視する検出器であるガンマサーモメータが主流になりつつある。
しかしながら、ガンマサーモメータは、ガンマ線の線量率を熱に変換して測定するため、低出力領域での測定は原理的に困難となる。そのため、将来の低出力領域の運転時における、ガンマ線による炉出力を測定する技術が求められている。
【0003】
ガンマ線検出器としては、上記のガンマサーモメータの他に、自己出力型ガンマ線検出器(Self-Powered Gamma-ray Detector:SPGD)がある。
SPGDは、エミッタおよびコレクタと呼ばれる部材から構成される(例えば、特許文献1を参照)。エミッタにガンマ線が衝突すると、コンプトン散乱および光電効果により電子が放出され、放出された電子がコレクタで吸収される。エミッタおよびコレクタをケーブルなどで接続し、両者の間に電流計を設置することで、電子の需給に伴う電位差を測定することができる。
この方式であれば、ガンマ線を熱に変換することなく、直接測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-85119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、標準的なSPGDの線量率の測定下限値は数kGy/hであり、低出力時の炉出力監視のためには数十kGy/hの測定が必要となることを考えると、標準的なSPGDをそのまま低出力時の監視に用いることは困難である。
低出力時の監視にSPGDを使用するためには、検出器の高感度化が必要となる。
【0006】
上述した問題の解決のために、本発明においては、ガンマ線の線量が少ない場合でもガンマ線の検出を可能にする、感度の高い自己出力型ガンマ線検出器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自己出力型ガンマ線検出器は、エミッタと、エミッタを囲むコレクタと、エミッタおよびコレクタを結ぶ信号線と、信号線に取り付けられた電流計を備える。
そして、本発明の自己出力型ガンマ線検出器は、コレクタの内面の表面積をS1とし、エミッタの表面積をS2としたとき、S1<S2である。
第1の本発明の自己出力型ガンマ線検出器は、さらに、エミッタを複数備え、複数のエミッタの表面積の合計を上記のS2とする。
第2の本発明の自己出力型ガンマ線検出器は、さらに、エミッタの表面に複数の突起物を設けている。
【発明の効果】
【0008】
上述の本発明によれば、エミッタの表面積をコレクタの内面の表面積よりも大きくしたことにより、ガンマ線を照射した際の電子の放出量を大きくすることができるので、自己出力型ガンマ線検出器の高感度化が可能となる。
これにより、ガンマ線の線量が少ない場合でもガンマ線の検出が可能となり、自己出力型ガンマ線検出器を用いて低出力時の炉出力を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】SPGDの基本構成の要部の水平断面図である。
図2】改良型沸騰水型原子炉の概略構成図である。
図3】改良型沸騰水型原子炉の燃料集合体の概略構成図(水平断面図)である。
図4】実施例1のSPGDの中心軸に垂直な面における断面図である。
図5】実施例1のSPGDの中心軸を含む面における断面図である。
図6】実施例2のSPGDの中心軸を含む面における断面図である。
図7】実施例3のSPGDの中心軸を含む面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態及び実施例について、文章もしくは図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態及び実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
ガンマサーモメータは、ガンマ線の線量率を熱に変換して測定するため、低出力領域での測定は原理的に困難となる。
そのため、本願の発明者は、ガンマ線検出器として自己出力型ガンマ線検出器(SPGD)に着目した。
しかしながら、前述したように、標準的なSPGDをそのまま低出力時の監視に用いることは困難である。
【0012】
本願の発明者は、ガンマ線がエミッタに照射されて発生する電子のエミッタ内での飛程が小さく、エミッタからコレクタに到達する電子のほぼ全ては、エミッタの表面で生成されることに着目した。すなわち、エミッタの中心付近で電子が生成したとしても、電子はそのままエミッタの中で失速し停止してしまう。
また、SPGDでは、ガンマ線がエミッタに照射されて発生した電子がコレクタに到達することにより正の電流が流れ、その電流を電流計で測定することで、ガンマ線を検出している。しかし、ガンマ線がコレクタに照射されても電子が発生し、コレクタで発生した電子がエミッタに到達して負の電流となり、正負の電流が相殺された値が測定値となるため、測定値が小さくなって感度が低くなる。
そこで、本願の発明者は、コレクタの構造の制約の中で、エミッタの表面積を大きくすることで、エミッタからコレクタへ到達する電子の数を増やして、上記の正の電流の量を大きくできることを見出した。
【0013】
本発明の自己出力型ガンマ線検出器は、エミッタと、エミッタを囲むコレクタと、エミッタおよびコレクタを結ぶ信号線と、信号線に取り付けられた電流計を備える。
そして、本発明の自己出力型ガンマ線検出器は、コレクタの内面の表面積をS1とし、エミッタの表面積をS2としたとき、S1<S2である。
このようにエミッタの表面積をコレクタの内面の表面積よりも大きくしたことにより、ガンマ線を照射した際の電子の放出量を大きくすることができるので、自己出力型ガンマ線検出器の高感度化が可能となる。
これにより、ガンマ線の線量が少ない場合でもガンマ線の検出が可能となり、自己出力型ガンマ線検出器を用いて低出力時の炉出力を監視することができる。
【0014】
本発明に係る自己出力型ガンマ線検出器が適用される沸騰水型原子炉とは、通常の沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor:BWR)、改良型沸騰水型原子炉(Advanced Boiling Water Reactor:ABWR)、高経済性単純化沸騰水型原子炉(Economic Simplified Boiling Water Reactor:ESBWR)等を含む。
通常の沸騰水型原子炉(BWR)は、再循環ポンプを備え冷却材として水(冷却水)を原子炉圧力容器外へ通流し、再び原子炉圧力容器内のダウンカマへ流入させることで冷却水を循環させる構成である。
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)は、インターナルポンプを備え、冷却水を原子炉圧力容器内で循環させる構成である。
高経済性単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)は、ABWRにおけるインターナルポンプを不要とする。
【0015】
以下では、炉心として、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を例として説明する。
なお、上述のように、ガンマ線検出器が炉出力監視の主流となりつつある技術背景を踏まえると、SPGDは、横断面十字状の制御棒(十字型制御棒)を装荷する燃料集合体の体数が異なる、他の沸騰水型原子炉にも適用可能である。
【0016】
SPGDの基本構成の要部の水平断面図を、図1に示す。なお、図1では、SPGDの構成のうち、エミッタおよびコレクタを結ぶ信号線や、信号線に取り付けられた電流計等の図示を省略している。
【0017】
図1に示すSPGD100は、コレクタ101およびそれに内包されるエミッタ102から構成される。
コレクタ101は、底面を有する円筒状の構造となっている。
エミッタ102は、従来のSPGDの設計では、1本の円柱状の構造となっている。
【0018】
コレクタ101の内面103の表面積S1は、従来のSPGDの設計通りにエミッタ102を1本の円柱状の構造とした場合には、エミッタ102の表面積(外面104の表面積)S2よりも大きくなる(S1>S2)。
【0019】
これに対して、本発明に係るSPGDでは、エミッタの本数もしくは形状を、従来のSPGDのエミッタの構造から変更することにより、コレクタの内面の表面積S1よりもエミッタの表面積S2が大きい構成(S1<S2)とする。
【0020】
次に、本発明に係るSPGDを適用する改良型沸騰水型原子炉(ABWR)について説明する。
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の概略構成図を、図2に示す。
【0021】
図2に示すABWR200は、原子炉圧力容器201内に円筒状の炉心シュラウド202が設けられ、炉心シュラウド202内に、複数体の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心203が設置されている。
また、原子炉圧力容器201内には、炉心203を覆うシュラウドヘッド204に取り付けられ上方へと延伸する気水分離器205、及び気水分離器205の上方に配される蒸気乾燥器206が設けられている。
上部格子板207が、シュラウドヘッド204の下方で炉心シュラウド202内に配され、炉心シュラウド202に取り付けられて炉心203の上端部に位置している。
炉心支持板208が、炉心203の下端部に位置して炉心シュラウド202内に配され、炉心シュラウド202に設置されている。
また、複数の燃料支持金具209が炉心支持板208に設置されている。
さらに、原子炉圧力容器201内には、燃料集合体の核反応を制御するため炉心203へ複数の横断面十字状の制御棒(図示せず)を挿入可能とする制御棒案内管210が設けられている。
原子炉圧力容器201の底部より下方に設置された制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に制御棒駆動機構211を備え、制御棒は制御棒駆動機構211に連結されている。
【0022】
原子炉圧力容器201の底部である下鏡212に、その下方より原子炉圧力容器201の内部へ貫通するよう複数のインターナルポンプ213が設置されている。複数のインターナルポンプ213は、複数の制御棒案内管210の最外周部より外側であって、環状に相互に所定の間隔にて離間し、複数台配されている。
これにより、インターナルポンプ213は、制御棒案内管210等と干渉することはない。そして、各インターナルポンプ213のインペラが、円筒状の炉心シュラウド202と原子炉圧力容器201の内面との間に形成される環状のダウンカマ214内に位置付けられている。
原子炉圧力容器201内の冷却材である水(冷却水)は、各インターナルポンプ213のインペラにより、ダウンカマ214を介して、下鏡212側から炉心203へ供給される。
【0023】
炉心203内に流入する冷却水は、燃料集合体(図示せず)の核反応により加熱され気液二相流となり、気水分離器205へ流入する。
気水分離器205を通流する気液二相流は、湿分を含む蒸気(気相)と水(液相)に分離され、液相は再び冷却水としてダウンカマ214へ降下する。
一方、蒸気(気相)は、蒸気乾燥器206へと導入され湿分が除去された後、主蒸気配管215を介してタービン(図示せず)へ供給される。
復水器等を介して給水配管216より原子炉圧力容器201内に流入する冷却水は、ダウンカマ214内を下方へと通流する(降下する)。
このように、インターナルポンプ213は、炉心203で発生する熱を効率良く冷却するため、冷却水を炉心203へ強制循環させる。
【0024】
次に、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)において、SPGDを設置する場所について説明する。
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の燃料集合体の概略構成図(水平断面図)を、図3に示す。
【0025】
図3に示す燃料集合体300は、横断面が正方形状の角筒であるチャンネルボックス301、複数の燃料棒(図示せず)、下部タイプレート(図示せず)、上部タイプレート(図示せず)、複数の燃料スペーサ(図示せず)を有している。
そして、チャンネルボックス301の内部の空間(燃料領域)302に、複数の燃料棒および減速材が設けられる。
また、各燃料棒の下端部が下部タイプレートに支持され、各燃料棒の上端部が上部タイプレートに支持される。
燃料集合体300の横断面における、各燃料棒および減速材(図示せず)の配置および形状は、用途に合わせて変更が可能である。
【0026】
横断面が十字形をしている制御棒304は、図3に示すように、炉心の横断面において、隣接して配置された4体の燃料集合体300毎に一体の割合で配置される。
制御棒304は、図3に示すように、燃料集合体300の外側で、燃料集合体300の一つのコーナー部に面して配置される。
制御棒304の二枚のブレードが、一体の燃料集合体301の二つの側壁部305および306に対向している。
制御棒304は、中性子吸収材(例えば、ボロン)を充填した中性子吸収材領域(図示せず)、およびフォロアー部(図示せず)を有する。
制御棒304が挿入されておらず、かつチャンネルボックス301の外側の領域である水領域307に、検出器としてSPGD308が設置される。
【実施例
【0027】
続いて、本発明の自己ガンマ線検出器(SPGD)の具体的な実施例を説明する。
【0028】
(実施例1)
実施例1のSPGDの中心軸に垂直な面における断面図を、図4に示す。また、実施例1のSPGDの中心軸を含む面における断面図を、図5に示す。
【0029】
図4および図5に示すSPGD400は、コレクタ401と、コレクタ401に内包される複数本のエミッタ402と、ケーブル403と、ケーブル404と、電流計405とから、構成されている。
複数本のエミッタ402は、多数(少なくとも2本)の円柱形のエミッタ402で構成されており、それぞれのエミッタ402は、他のエミッタ402とは接触せずに離れて配置されている。
ケーブル403は、コレクタ401に接続されている。
ケーブル404は、複数のエミッタ402に接続されたケーブルがまとめられて一つに結線されて電流計405に接続されている。これにより、それぞれのエミッタ402においてガンマ線が照射された発生した電子による電流を検出できる。
電流計405は、コレクタ401からのケーブル403とエミッタ402からのケーブル404の間に設置され、両者を接続する。
【0030】
実施例1のSPGD400は、一本の太いエミッタを用いる従来の構成よりも、エミッタ402を複数本に分割することで、エミッタ402の総表面積(全てのエミッタ402の外面407の表面積の合計)S2を増やすことを特徴としている。
この結果、エミッタ402の総表面積S2を、コレクタの内面406の表面積S1よりも大きくすることが達成できる。
【0031】
コレクタ401を円筒形、複数本のエミッタ402をそれぞれ円柱形、としたときには、コレクタ401とエミッタ402の長さがほぼ等しいので、(コレクタ401の内径)<(エミッタ402の外径の合計)とすれば、S1<S2となる。
【0032】
実施例1のSPGD400によれば、エミッタ402の総表面積S2を、コレクタの内面406の表面積S1よりも大きくすることにより、ガンマ線を照射した際の電子の放出量を大きくできるので、自己出力型ガンマ線検出器の高感度化が可能となる。
これにより、ガンマ線の線量が少ない場合でもガンマ線の検出が可能となり、自己出力型ガンマ線検出器を用いて低出力時の炉出力を監視することができる。
【0033】
(実施例2)
実施例2のSPGDの中心軸に垂直な面における断面図を、図6に示す。
実施例1は、従来のSPGDの設計と同様の円柱形のエミッタを作製することを前提にしていたが、実施例2では、実施例1のように複数本のエミッタを用いなくても、1本のエミッタでエミッタの表面積を拡大できる構造とした。
【0034】
図6に示すSPGD500は、外側のコレクタ501と、コレクタ501に内包される1本のエミッタ502と、コレクタ501に接続されたケーブル503と、エミッタ502に接続されたケーブル504と、ケーブル503とケーブル504の間に設置され両者を接続する電流計505から構成される。
【0035】
この構成では、エミッタ502に、規則的に配置された複数の突起物506を有することを特徴とする。複数の突起物506は、形状が全て等しく、かつ、等間隔に配置されている。
この複数の突起物506を有することにより、一本の円柱形でエミッタを作製した場合と比較して、エミッタ502の表面積S2を大きくできる。
なお、エミッタ502の突起物506の形状として、突起の長さや、エミッタ502の軸方向に対する角度は、コレクタ501に収まる範囲で自由に設定することが出来るが、突起物506の大きさや間隔は一定とする。これにより、例えばエミッタ502をねじの鋳型に入れることで作成することを可能にするなど、エミッタ502の作製が簡易となる。
突起物506の大きさや間隔や個数は、エミッタ502の表面積S2がコレクタ501の内面の表面積S1よりも大きくなるように、それぞれ選定する。
【0036】
実施例2のSPGD500は、エミッタ502に複数の突起物506を有することにより、一本の円柱形でエミッタを製作した場合と比較して、エミッタ502の表面積を大きくできる。
これにより、エミッタ503の表面積S2を、コレクタ501の内面の表面積S1よりも大きくすることが可能になる。
【0037】
実施例2のSPGD500によれば、エミッタ502の表面積S2を、コレクタ501の内面の表面積S1よりも大きくできることにより、ガンマ線を照射した際の電子の放出量を大きくできるので、自己出力型ガンマ線検出器の高感度化が可能となる。
これにより、ガンマ線の線量が少ない場合でもガンマ線の検出が可能となり、自己出力型ガンマ線検出器を用いて低出力時の炉出力を監視することができる。
【0038】
(実施例3)
実施例3のSPGDの中心軸に垂直な面における断面図を、図7に示す。
実施例2ではエミッタ502の突起物506が全て同じ大きさ、かつ等間隔で配置された規則的な構成であったが、実施例3では、大きさや間隔が一様ではない突起物を有する構造とした。
【0039】
図7に示すSPGD600は、外側のコレクタ601と、コレクタ601に内包される1本のエミッタ602と、コレクタ601に接続されたケーブル603と、エミッタ602に接続されたケーブル604と、ケーブル603とケーブル604の間に設置され両者を接続する電流計605から構成される。
【0040】
この構成では、エミッタ602に複数の突起物606を有することを特徴としている。
複数の突起物606は、実施例2の複数の突起物506とは異なり、形状が異なり間隔が一様ではない配置とされている。
この複数の突起物606を有することにより、一本の円柱形でエミッタを作製した場合と比較して、エミッタ602の表面積を大きくできる。
【0041】
例えば、ブリッジ加工や化学物質での腐食作用等の簡易な製造方法により、エミッタ602の表面を粗くすることで、形状が異なり間隔が一様ではない配置とされた、複数の突起物606を形成することができる。
【0042】
実施例3のSPGD600は、エミッタ602に複数の突起物606を有することにより、一本の円柱形でエミッタを製作した場合と比較して、エミッタ602の表面積を大きくできる。
これにより、エミッタ603の表面積S2を、コレクタ601の内面の表面積S1よりも大きくすることが可能になる。
【0043】
実施例3のSPGD600によれば、エミッタ602の表面積S2を、コレクタ601の内面の表面積S1よりも大きくできることにより、ガンマ線を照射した際の電子の放出量を大きくできるので、自己出力型ガンマ線検出器の高感度化が可能となる。
これにより、ガンマ線の線量が少ない場合でもガンマ線の検出が可能となり、自己出力型ガンマ線検出器を用いて低出力時の炉出力を監視することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 SPGD、101 コレクタ、102 エミッタ、103 コレクタの内面、104 エミッタの外面、200 ABWR、201 原子炉圧力容器、202 炉心シュラウド、203 炉心、204 シュラウドヘッド、205 気水分離機、206 蒸気乾燥器、207 上部格子板、208 炉心支持板、209 燃料指示金具、210 制御棒案内管、211 制御棒駆動機構、212 下鏡、213 インターナルポンプ、214 ダウンカマ、215 主蒸気配管、216 給水配管、300 燃料集合体、301 チャンネルボックス、304 制御棒、305,306 側壁部、307 水領域、308 SPGD、400 SPGD、401 コレクタ、402 エミッタ、403,404 ケーブル、405 電流計、406 コレクタの内面、407 エミッタの外面、500 SPGD、501 コレクタ、502 エミッタ、503,504 ケーブル、505 電流計、506 突起物、600 SPGD、601 コレクタ、602 エミッタ、603,604 ケーブル、605 電流計、606 突起物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7