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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ダンパー部材およびアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20231129BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F16F15/04 A
B06B1/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020079166
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021173364
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】日向 章二
(72)【発明者】
【氏名】小林 優帆
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-084043(JP,U)
【文献】特開平06-300037(JP,A)
【文献】特開平09-296846(JP,A)
【文献】特開平06-123321(JP,A)
【文献】特開2020-045996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材、および前記第1部材の外周側を囲む第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材の間に配置されるゲル状部材と、
前記第1部材の表面および前記ゲル状部材の表面に配置される可撓性補強層と、を有し、
前記ゲル状部材は、第1ゲル端面を備え、
前記第1部材は、前記第1ゲル端面と同一面上に位置する内周側端面を備え、
前記可撓性補強層は、前記第1ゲル端面および前記内周側端面に接続され、前記第1ゲル端面と前記内周側端面との境界を覆うことを特徴とするダンパー部材。
【請求項2】
前記可撓性補強層は、ゴムシート、樹脂フィルム、およびコーティング膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のダンパー部材。
【請求項3】
前記第2部材は、前記内周側端面および前記第1ゲル端面と同一面上に位置する外周側端面を備え、
前記可撓性補強層は、前記外周側端面に接続され、前記第1ゲル端面と前記外周側端面との境界を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載のダンパー部材。
【請求項4】
前記第1部材の外周面は、前記内周側端面の外周縁に接続される面取り部を備え、
前記ゲル状部材は、前記面取り部に接続されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のダンパー部材。
【請求項5】
前記ゲル状部材は、前記第1ゲル端面とは反対側を向く第2ゲル端面を備え、
前記第2ゲル端面は、凹面であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のダンパー部材。
【請求項6】
前記ゲル状部材は、円筒形状であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のダンパー部材。
【請求項7】
可動体および固定体と、
前記可動体を前記固定体に対して振動させる駆動機構と、
請求項1から6の何れか一項に記載のダンパー部材と、を有し、
前記可動体および前記固定体の一方は、前記可動体および前記固定体の他方の内周側に配置される内周側部分を備え、前記可動体および固定体の他方は、前記内周側部分の外周側を囲む外周側部分を備え、
前記ダンパー部材は、
前記第1部材が前記内周側部分に固定され、
前記第2部材が前記外周側部分に固定されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
前記ダンパー部材は、前記可動体の振動方向の一端側および他端側で前記可動体と前記固定体を接続することを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
可動体および固定体と、
前記可動体を前記固定体に対して振動させる駆動機構と、
前記固定体と前記可動体とを接続するゲル状部材と、
前記可動体もしくは前記固定体の表面、および、前記ゲル状部材の表面に配置される可撓性補強層と、を有し、
前記可動体および前記固定体の一方は、前記可動体および前記固定体の他方の内周側に配置される内周側部分を備え、前記可動体および固定体の他方は、前記内周側部分の外周
側を囲む外周側部分を備え、
前記ゲル状部材は、第1ゲル端面を備え、
前記内周側部分は、前記第1ゲル端面と同一面上に位置する内周側端面を備え、
前記可撓性補強層は、前記第1ゲル端面および前記内周側端面に接続され、前記第1ゲル端面と前記内周側端面との境界を覆うことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項10】
前記ゲル状部材は、前記可動体の振動方向の一端側および他端側で前記可動体と前記固定体を接続することを特徴とする請求項9に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を固定体に対して振動させるアクチュエータ、および可動体と固定体とを接続するダンパー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、固定体および可動体と、固定体に対して可動体を振動させる磁気駆動機構を備えるとともに、可動体と固定体とをゲル状ダンパー部材によって接続したものがある。特許文献1では、可動体は、磁石が固定されたヨークを備えており、固定体(固定体)は、可動体を収容するカバーと、コイルを保持するホルダを備える。ゲル状ダンパー部材は、厚さ方向の一方の面がヨークに接着され、他方の面がカバー部材に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-13086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ゲル状ダンパー部材は、シート状ゲルを矩形に切断したゲル状部材であり、ヨークとカバーとの間に挟まれている。しかしながら、切断したゲル状部材を単体で部品として取り扱う場合、取り扱いが難しい。また、特許文献1の構造では、ゲル状ダンパー部材は振動方向と直交する方向にも変形可能な状態に組み立てられている。従って、可動体が意図しない方向へ動きやすいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、枠状の第1部材と第2部材(内枠と外枠)との隙間に筒状のゲル状部材を配置し、筒状のゲル状部材によって第1部材と第2部材とを接続した構造のダンパー部材を提案している。第1部材(内枠)を可動体側の部品であるシャフトに固定し、第2部材(外枠)を固定体側の部品であるケースに固定する構造のアクチュエータは、可動体が振動方向(軸線方向)と直交する方向に動きにくい。
【0006】
上記のような構造のダンパー部材では、可動体が軸線方向に振動する際、筒状のゲル状部材の内周部に応力が集中する。ゲル状部材の内周部は第1部材(内枠)の外周面に接続される。第1部材には、外周面の縁に製造時のバリを除去するための面取り部が設けられているため、ゲル状部材の縁は面取り部に接続される。ゲル状部材の縁がテーパー状の面取り部に入り込んだ形状になっていると、この部分に応力が集中したときにゲル状部材が第1部材からはがれやすい。従って、ダンパー部材が壊れやすく耐久性が低いという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、枠状の第1部材と第2部材を筒状のゲル状部材によって接続したダンパー部材、および、筒状のゲル状部材を介して可動体および固体を接続するアクチュエータにおいて、ゲル状部材の内周部に応力が集中したときにゲル状部材が内周側の枠材からはがれにくい構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るダンパー部材は、第1部材、および前記第1部材の外周側を囲む第2部材と、前記第1部材と前記第2部材の間に配置されるゲル状部材と、前記第1部材の表面および前記ゲル状部材の表面に配置される可撓性補強層と、を
有し、前記ゲル状部材は、第1ゲル端面を備え、前記第1部材は、前記第1ゲル端面と同一面上に位置する内周側端面を備え、前記可撓性補強層は、前記第1ゲル端面および前記内周側端面に接続され、前記第1ゲル端面と前記内周側端面との境界を覆うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、内周側の枠材(第1部材)と外周側の枠材(第2部材)の間にゲル状部材を成形して部品化している。従って、第1部材と第2部材を介してゲル状部材を可動体および固定体に接続できるので、可動体と固定体とを接続する際に、ゲル状部材の接着作業を行う必要がない。従って、アクチュエータの組立が容易である。また、第1部材は、第1ゲル端面と同一面上に位置する内周側端面を備え、第1ゲル端面および内周側端面に可撓性補強層が接続される。可撓性補強層は、第1ゲル端面と内周側端面との境界を覆うように配置されているので、第1部材の外周面からゲル状部材がはがれる際に最初にはがれ始める部位を可撓性補強層で保護できる。従って、ゲル状部材の内周部に応力が集中したときにゲル状部材が第1部材からはがれにくく、ダンパー部材が壊れにくい。よって、ダンパー部材の耐久性を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記可撓性補強層は、ゴムシート、樹脂フィルム、およびコーティング膜のいずれかである。ゴムや樹脂などのシート材、フィルム材、コーティング膜を可撓性補強層として用いることにより、ゲル状部材がせん断変形する際に可撓性補強層が破断するようなことがなく、ゲル状部材のせん断変形に追従して可撓性補強層が変形する。従って、ゲル状部材の変形特性を確保しながらダンパー部材の耐久性を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記第2部材は、前記内周側端面および前記第1ゲル端面と同一面上に位置する外周側端面を備え、前記可撓性補強層は、前記外周側端面に接続され、前記第1ゲル端面と前記外周側端面との境界を覆う。このようにすると、可撓性補強層の内周部と外周部が第1部材と第2部材に接続されるため、可撓性補強層の固定強度を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記第1部材の外周面は、前記内周側端面の外周縁に接続される面取り部を備え、前記ゲル状部材は、前記面取り部に接続される。第1部材が金属部材である場合には、製造時のバリを除去するための面取り部を形成することが好ましい。本発明では、面取り部にゲル状部材が入り込んだために第1部材からゲル状部材がはがれやすくなったとしても、この部分を可撓性補強層で保護できる。従って、ゲル状部材の内周部に応力が集中したときにゲル状部材が第1部材からはがれにくい。
【0013】
本発明において、前記ゲル状部材は、前記第1ゲル端面とは反対側を向く第2ゲル端面を備え、前記第2ゲル端面は、凹面である。このような端面形状は、ダンパー部材を注型により製造した場合に得られる。すなわち、型部材の底面に可撓性補強層を構成するシートやフィルムを配置して第1部材と第2部材を位置決めし、ゲル材料を第1部材と第2部材の隙間に吐出すると、第2ゲル端面は、ゲル材料の表面張力によって凹面になる。また、第1部材の端面(内周側端面)と同一面上に位置する第1ゲル端面が形成され、型部材の底面に配置されるシートやフィルムに第1ゲル端面が接続される。あるいは、型部材の底面にシートやフィルムを配置せずに第1部材と第2部材との間にゲル状部材を直接成形し、型部材から外した後にコーティング層を形成することもできる。このように、注型によりゲル状部材を製造することで、ダンパー部材を容易に製造することができる。
【0014】
本発明において、前記ゲル状部材は、円筒形状であることが好ましい。このようにすると、ゲル状部材が全周で均等に配置される。従って、ゲル状部材のばね定数を全周で均等にすることができるので、可動体を軸線方向に振動させるアクチュエータを構成した場合
に、可動体が特定の方向へ動きやすくなることがない。よって、可動体を安定して支持できる。
【0015】
次に、本発明のアクチュエータは、可動体および固定体と、前記可動体を前記固定体に対して振動させる駆動機構と、上記のダンパー部材と、を有し、前記可動体および前記固定体の一方は、前記可動体および前記固定体の他方の内周側に配置される内周側部分を備え、前記可動体および固定体の他方は、前記内周側部分の外周側を囲む外周側部分を備え、前記ダンパー部材は、前記第1部材が前記内周側部分に固定され、前記第2部材が前記外周側部分に固定されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第1部材と第2部材を介してゲル状部材を可動体および固定体に接続できる。従って、ダンパー部材を介して可動体と固定体とを接続する作業が容易であり、アクチュエータの組立が容易である。また、可動体が振動した際にゲル状部材が第1部材からはがれにくくダンパー部材が壊れにくいので、アクチュエータの耐久性を高めることができる。また、ダンパー部材の耐久性を高めることによって、可動体を振動させる際の振幅の許容範囲を大きくすることができる。従って、大きな振幅で可動体を振動させることができる。
【0017】
本発明において、前記ダンパー部材は、前記可動体の振動方向の一端側および他端側で前記可動体と前記固定体を接続することが好ましい。このようにすると、可動体の振動方向の両端がダンパー部材によって支持される。従って、可動体を安定して支持でき、可動体が意図しない方向へ動くことを抑制できる。
【0018】
次に、本発明は、可動体と固定体の間に直接ゲル状部材を成形した形態のアクチュエータに適用することが可能である。すなわち、本発明のアクチュエータは、可動体および固定体と、前記可動体を前記固定体に対して振動させる駆動機構と、前記固定体と前記可動体とを接続するゲル状部材と、前記可動体もしくは前記固定体の表面、および、前記ゲル状部材の表面に配置される可撓性補強層と、を有し、前記可動体および前記固定体の一方は、前記可動体および前記固定体の他方の内周側に配置される内周側部分を備え、前記可動体および固定体の他方は、前記内周側部分の外周側を囲む外周側部分を備え、前記ゲル状部材は、第1ゲル端面を備え、前記内周側部分は、前記第1ゲル端面と同一面上に位置する内周側端面を備え、前記可撓性補強層は、前記第1ゲル端面および前記内周側端面に接続され、前記第1ゲル端面と前記内周側端面との境界を覆うことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、ゲル状部材を介して可動体と固定体とを接続しており、可動体が振動した際に、ゲル状部材が可動体および固定体の一方に設けられた内周側部分からはがれにくい。従って、アクチュエータの耐久性を高めることができる。また、可動体を振動させる際の振幅の許容範囲を大きくすることができる。従って、大きな振幅で可動体を振動させることができる。
【0020】
本発明のアクチュエータにおいて、前記ゲル状部材は、前記可動体の振動方向の一端側および他端側で前記可動体と前記固定体を接続することが好ましい。このようにすると、可動体の振動方向の両端がゲル状部材によって支持される。従って、可動体を安定して支持でき、可動体が意図しない方向へ動くことを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内周側の枠材(第1部材、もしくは内周側部分)と外周側の枠材(第2部材、もしくは外周側部分)とがゲル状部材を介して接続される。内周側の枠材は、第1ゲル端面と同一面上に位置する内周側端面を備え、第1ゲル端面および内周側端面に可撓性補強層が接続される。可撓性補強層は、第1ゲル端面と内周側端面との境界を覆うよ
うに配置されているので、内周側の枠材からゲル状部材がはがれる際に最初にはがれ始める部位を可撓性補強層で保護できる。従って、ゲル状部材の内周部に応力が集中したときにゲル状部材が内周側の枠材からはがれにくく、ダンパー部材が壊れにくい。よって、ダンパー部材の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの断面図である。
図2図1のアクチュエータを軸線方向の一方側から見た分解斜視図である。
図3図1のアクチュエータを軸線方向の他方側から見た分解斜視図である。
図4】ダンパー部材の構成を模式的に示す断面図である。
図5】ダンパー部材の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、軸線Lとは可動体3の中心軸線である。また、軸線Lが延在する方向(軸線L方向)の一方側をL1とし、軸線L方向の他方側をL2とする。本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3が固定体2に対して軸線L方向に振動する。
【0024】
以下に説明する実施形態では、可動体3は、軸線L方向の一方側L1、および他方側L2の2箇所において、ダンパー部材10によって固定体2と接続されるが、本発明では、ダンパー部材10が1箇所もしくは3箇所以上に配置される態様を採用してもよい。また、以下に説明する実施形態では、可動体3は、固定体2の内周側に配置されるが、本発明では、可動体3が固定体2の外周側に配置される態様を採用してもよい。
【0025】
また、以下に説明する実施形態では、可動体3を固定体2に対して振動させる駆動機構として、磁気駆動機構6を用いる。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、固定体2に配置されるコイル62とを備えているが、本発明では、磁石61とコイル62の配置を逆にした構成を採用することも可能である。すなわち、磁気駆動機構6は、可動体3に配置されるコイル62と、固定体2に配置される磁石61とを備える態様を採用してもよい。
【0026】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の断面図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1を軸線方向の一方側L1から見た分解斜視図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1を軸線方向の他方側L2から見た分解斜視図である。アクチュエータ1は、固定体2および可動体3と、固定体2と可動体3とを接続するダンパー部材10と、可動体3を固定体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、固定体2に配置されるコイル62とを備えており、固定体2に対して可動体3を軸線L方向に相対移動させる。
【0027】
(ダンパー部材)
可動体3は、軸線L方向の一方側L1の端部、および軸線L方向の他方側L2の端部の各位置において、ダンパー部材10を介して固定体2と接続される。以下、軸線L方向の一方側L1に配置されるダンパー部材10を第1ダンパー部材10Aとし、軸線L方向の他方側L2に配置されるダンパー部材10を第2ダンパー部材10Bとする。第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bは同一部材であり、軸線L方向で逆向きに配置される。
【0028】
ダンパー部材10は、第1部材11と、第1部材11の外周側を囲む第2部材12と、第1部材11と第2部材12の間に配置されるゲル状部材14を備える。ゲル状部材14
の内周部は、第1部材11に接続され、ゲル状部材14の外周部は、第2部材12に接続される。ダンパー部材10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。本形態では、ゲル状部材14は粘弾性体である。例えば、ゲル状部材14は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。
【0029】
第1部材11は可動体3に固定される。第1部材11は可動体3と一体になって軸線L方向に振動する。従って、第1部材11は、可動体3の質量を調節するための錘として用いることができる。第2部材12は固定体2に固定される。ゲル状部材14は、第1部材11および第2部材12を介して固定体2と可動体3を接続する。可動体3が軸線L方向に振動する際、ゲル状部材14は、せん断方向に変形する。ダンパー部材10の詳細な構成およびその製造方法については後述する。
【0030】
(固定体)
固定体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線L方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線L方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を備える。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。
【0031】
図2図3に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3箇所に爪部27を備えている。爪部27は径方向内側に弾性変形可能であり、ケース20の内周側に押し込まれる。爪部27の先端がケース20の縁に設けられた係止部28に係止されることにより、第1蓋部材21および第2蓋部材22がケース20から外れることが規制される。
【0032】
コイルホルダ4は、ホルダ環状部41と、ホルダ環状部41から軸線L方向の他方側L2へ突出する胴部42を備える。ホルダ環状部41がケース20の内側に圧入されることにより、コイルホルダ4はケース20に固定される。ホルダ環状部41には、L1側から第1蓋部材21が固定される。ホルダ環状部41は円形の開口部44を備えており、開口部44に第1ダンパー部材10Aが固定される。本形態では、開口部44に第1ダンパー部材10Aの第2部材12が圧入されている。
【0033】
コイルホルダ4の胴部42にはコイル62が固定される。コイル62から引き出されたコイル線(図示省略)の端部は、ホルダ環状部41から径方向外側へ突出する端子ピンに絡げられている。コイル線は、端子ピンを介して基板63に接続される。図2に示すように、基板63は、ケース20の外周面に設けられた凹部24に固定される。
図1に示すように、ケース20は、第2蓋部材22のL1側の位置から内周側へ突出するケース環状部25を備える。第2蓋部材22は、ケース環状部25にL2側から固定される。また、ケース環状部25は円形の開口部26を備えており、開口部26に第2ダンパー部材10Bが固定される。本形態では、開口部26に第2ダンパー部材10Bの第2部材12が圧入されている。
【0034】
(可動体)
可動体3は、固定体2の径方向の中心において軸線L方向に延びるシャフト31と、シャフト31の軸線L方向の略中央に固定される磁石61と、磁石61にL1側で重なる第1ヨーク32と、磁石61にL2側で重なる第2ヨーク33を備える。
【0035】
磁石61は円筒状であり、軸線L方向においてN極とS極とに分極するように着磁されている。シャフト31は、固定体2の径方向の中心において軸線L方向に延びている。磁石61の外周側には、コイルホルダ4の胴部42が磁石61と同軸に配置される。従って
、磁石61とコイル62は同軸に配置される。
【0036】
第1ヨーク32は、外径寸法が磁石61の外径寸法よりわずかに大きい磁性板である。第1ヨーク32の外周面は、磁石61の外周面より径方向外側に張り出している。第1ヨーク32は、磁石61のL1側の面に接着等の方法で固定される。
【0037】
第2ヨーク33は、2枚の磁性板(第1磁性板34、第2磁性板35)によって構成される。第1磁性板34は、磁石61のL2側の面に接着等の方法で固定される端板部341と、端板部341の外縁からL1側に延在する円筒状の側板部342とを備える。側板部342は、コイルホルダ4の胴部42の外周側に配置される。第2磁性板35は、第1磁性板34の端板部341よりわずかに小さな円板状である。第2磁性板35は、第1磁性板34の端板部341にL1側で積層され、端板部341に溶接されている。第2磁性板35は、磁石61のL2側の面に接着等の方法で固定される。
【0038】
シャフト31は、第1ヨーク32からL1側に突出する第1端部311と、第2ヨーク33からL2側に突出する第2端部312を備える。第1端部311には、第1ダンパー部材10Aの第1部材11が固定される。また、第2端部312には、第2ダンパー部材10Bの第1部材11が固定される。シャフト31の両端に固定される2個の第1部材11は、可動体3と一体になって移動する。
【0039】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1は、コイル62に通電することにより、磁気駆動機構6が、可動体3を軸線L方向に駆動する駆動力を発生させる。コイル62への通電を切ると、可動体3は、ゲル状部材14の復帰力によって原点位置へ戻る。従って、コイル62への通電を断続的に行うことにより、可動体3は、軸線L方向で振動する。
【0040】
第1ダンパー部材10Aは、シャフト31とコイルホルダ4との間において、シャフト31のL1側の端部を全周で囲むゲル状部材14を備えている。また、第2ダンパー部材10Bは、シャフト31とケース環状部25との間において、シャフト31のL2側の端部を全周で囲むゲル状部材14を備えている。第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10Bにおいて、ゲル状部材14は、第1部材11と第2部材12の間に隙間なく充填されており、全周に連続して配置される。
【0041】
可動体3が固定体2に対して軸線L方向に振動する際、ダンパー部材10は、ゲル状部材14の内周部に固定された第1部材11とゲル状部材14の外周部に固定された第2部材12とが軸線L方向に相対移動する。従って、ゲル状部材14は、可動体3の振動に追従してせん断方向に変形する。
【0042】
ダンパー部材10は、可動体3が径方向に移動する場合には、ゲル状部材14が潰れる方向に変形する。ゲル状部材14が潰れる方向に変形する場合のバネ定数は、ゲル状部材14がせん断方向に変形する場合のバネ定数の3倍程度になる。従って、可動体3が振動方向(軸線L方向)とは異なる方向に移動することが抑制されている。
【0043】
(ダンパー部材の詳細な構造)
図4は、ダンパー部材10の構成を模式的に示す断面図である。図4において、LAはダンパー部材10の中心軸線である。LA1は軸線LAが延在する方向(軸線LA方向)の一方側であり、LA2は軸線LA方向の他方側である。図1に示すように、ダンパー部材10は、アクチュエータ1の軸線Lとダンパー部材10の軸線LAとが一致するように組み立てられる。
【0044】
第1部材11および第2部材12は円筒形状であり、同軸に配置される。第1部材11は、大径部15と、大径部15よりも小径の小径部16を備える。第1部材11の中心には、可動体3のシャフト31を配置するための軸穴17が形成されている。大径部15は第2部材12の内周側に配置される。小径部16は、大径部15から他方側LA2へ延びている。第2部材12は、軸線LA方向の長さが大径部15と同一である。ゲル状部材14は、径方向の厚さが一定の円筒形状である。ゲル状部材14の内周は大径部15の外周面150に接続され、ゲル状部材14の外周部は第2部材12の内周面120に接続される。
【0045】
第1部材11は、軸線LA方向の一方側LA1を向く内周側端面111を備える。また、第2部材12は、軸線LA方向の一方側LA1を向く外周側端面121を備える。内周側端面111および外周側端面121は、軸線LA方向に対して略垂直な平坦面である。大径部15の外周面150は、内周側端面111の外周縁から軸線LA方向の他方側LA2へ延びている。外周面150は、軸線LA方向と略平行に延びる円筒面である。
【0046】
大径部15の外周面150の一方側LA1の縁には、第1部材11の製造時に形成されたバリを除去するための面取り部18が形成されている。図4に示すように、面取り部18は外周面150の縁を斜めに切欠いたテーパー形状であり、全周に形成されている。面取り部18は、第1部材11の内周側端面111の外周縁に接続される。なお、図4では図示を省略しているが、第1部材11および第2部材12の他の部位にも面取り部が形成されている。例えば、小径部16の外周面の縁、第1部材11の内周面の縁、第2部材12の外周面の縁、および、第2部材12の内周面120の縁にも、それぞれ、同様の面取り部が形成されている。
【0047】
ダンパー部材10は、後述するように、第1部材11および第2部材12の隙間にゲル材料G(図5参照)を充填して固化させる方法(注型)によって製造されている。ゲル状部材14は、軸線LA方向の一方側LA1を向く第1ゲル端面141、および、軸線LA方向の他方側LA2を向く第2ゲル端面142を備える。第1ゲル端面141と第2ゲル端面142は、軸線LAを含む平面で切断した断面形状が異なる。
【0048】
第1ゲル端面141は、軸線LA方向に対して略垂直な平坦面である。第1ゲル端面141は、第1部材11に設けられた内周側端面111、および、第2部材12に設けられた外周側端面121と同一面上に位置する。一方、第2ゲル端面142は、充填されたゲル材料Gの表面(液面)であるため、表面張力によって凹面になっている。本形態では、ゲル状部材14が接続される外周面150および内周面120(接続面)は、軸線LA方向の長さがゲル状部材14よりも長い。従って、外周面150および内周面120(接続面)は、第2ゲル端面142よりも軸線LA方向の他方側LA2まで延びている。
【0049】
ダンパー部材10の軸線LA方向の一方側LA1の端面には、可撓性補強層19が設けられている。本形態では、可撓性補強層19は、内周側端面111、第1ゲル端面141、および外周側端面121の全範囲に連続して広がる。可撓性補強層19は、内周側端面111、第1ゲル端面141、および外周側端面121に密着している。上記のように、内周側端面111と第1ゲル端面141との境界には、面取り部18が設けられており、面取り部18にゲル状部材14が入り込んでいる。可撓性補強層19は、面取り部18に入り込んだゲル状部材14と内周側端面111との境界を覆っており、ゲル状部材14と内周側端面111との境界を保護している。
【0050】
可撓性補強層19は、ゲル状部材14の変形特性を確保でき、且つ、ゲル状部材14よりも破断しにくい材質とすることが好ましい。例えば、可撓性補強層19は、ゲル状部材14よりも弾性率が小さいことが好ましい。ゲル状部材14よりも弾性率が小さければ、
ゲル状部材14よりも伸びやすいので、ゲル状部材14の変形特性を確保できる。また、ゲル状部材の弾性限界点でのひずみ量より、可撓性補強層19の弾性限界点でのひずみ量の方が大きいことが好ましい。このような材質であれば、ゲル状部材14よりも可撓性補強層19の方が破断しにくい。例えば、可撓性補強層19として、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等からなるゴムシートを用いることで、このような特性を持たせることができる。
【0051】
なお、可撓性補強層19として、可撓性の樹脂フィルムを用いてもよい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)製のフィルムを用いることができる。PET製のフィルムは、耐久性に優れている。
【0052】
(ダンパー部材の製造方法)
図5は、ダンパー部材10の製造方法の説明図である。ダンパー部材10の製造に用いる製造用治具90は、円形凹部91と、円形凹部91の底面中央から突出するピン92を備える。ダンパー部材10の製造方法は、製造用治具90に対して第1部材11および第2部材12を組み付ける第1工程と、第1部材11と第2部材12の隙間Sにゲル材料を充填する第2工程と、ゲル材料を加熱硬化させる第3工程と、製造用治具90からダンパー部材10を取り外す第4工程と、を含む。
【0053】
本形態では、第1工程では、最初に、可撓性補強層19を構成するゴムシート、もしくは樹脂フィルムを円形凹部91の底面94に配置しておく(図5参照)。しかる後に、製造用治具90に対して第1部材11および第2部材12を当接させて位置決めすることによって、第1部材11と第2部材12の間に径方向の隙間Sを形成する。すなわち、円形凹部91の中央から突出するピン92を第1部材11の軸穴17に挿入し、第1部材11の大径部15の端面を円形凹部91の底面94にL1側から当接させる。また、円形凹部91の内周面に第2部材12を内接させるとともに、第2部材12の端面を円形凹部91の底面94の外周領域に当接させる。これにより、第1部材11と第2部材12が軸線L方向および径方向に位置決めされ、第1部材11の大径部15と第2部材12の間には、環状の隙間Sが形成される。環状の隙間Sは全周にわたって形成され、径方向の幅が全周で一定である。
【0054】
第1工程では、円形凹部91の底面94に配置したゴムシート、もしくは樹脂フィルム(可撓性補強層19)の内周縁を接着剤等により第1部材11の端面に接続する。また、ゴムシート、もしくは樹脂フィルム(可撓性補強層19)の外周縁を接着剤等により第2部材12の端面に接続する。これにより、内周側端面111および外周側端面121が可撓性補強層19に接続される。
【0055】
本形態では、第2工程で隙間Sにゲル材料を入れる前に、ゲル状部材14と接する面にプライマー13を塗布しておく。具体的には、大径部15の外周面150および第2部材12の内周面120にプライマー13を塗布する。プライマー13は、面取り部18にも塗布する。また、第1部材11と第2部材12との隙間Sに配置されたゴムシートもしくは樹脂フィルム(可撓性補強層19)の表面にも、プライマー13を塗布する。第1部材11および第2部材12に対するプライマー13の塗布は、製造用治具90に組み付ける前に行ってもよいし、組み付けた後に行ってもよい。
【0056】
第2工程では、第1部材11と第2部材12との隙間Sに硬化前のゲル材料Gを充填する。図4に示すように、第2工程では、ディスペンサー93からゲル材料Gを吐出して、隙間Sに充填する。ゲル材料Gの表面(液面)は、表面張力が働くことによって外周縁が巻き上がった形状になるので、全体として凹面になる。
【0057】
第3工程では、ゲル材料Gを製造用治具90ごと加熱し、規定の温度で規定の時間維持することにより硬化させる。これにより、隙間Sにはゲル状部材14が形成される。ゲル材料Gは、加熱硬化する際に、プライマー13に接する部分がプライマー13と反応して、第1部材11の外周面および第2部材12の内周面に固定される。従って、硬化後のゲル状部材14は、接着剤を用いることなく、ゲル状部材14自体の接着力によって第1部材11および第2部材12に固定される。また、ゲル材料Gは、可撓性補強層19を形成するためのゴムシートもしくは樹脂フィルムに接する部分がプライマー13と反応して、ゴムシートもしくは樹脂フィルムに固定される。従って、硬化後のゲル状部材14の第1ゲル端面141は、接着剤を用いることなく、ゲル状部材14自体の接着力によって可撓性補強層19に固定される。
【0058】
第4工程では、完成したダンパー部材10を製造用治具90から取り外す。例えば、製造用治具90の底面94に突き出しピンを配置するための貫通孔(図示せず)を設けておき、突き出しピンを用いてダンパー部材10を製造用治具90から取り外す。完成したダンパー部材10は、第1ゲル端面141が内周側端面111および外周側端面121と同一面上に位置する平坦面になっており、液面であった第2ゲル端面142は凹面になっている。また、内周側端面111、第1ゲル端面141、および外周側端面121には可撓性補強層19が接続されており、内周側端面111と第1ゲル端面141との境界は、可撓性補強層19によって補強されている。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態のダンパー部材10は、第1部材11、および第1部材11の外周側を囲む第2部材12と、第1部材11と第2部材12の間に配置されるゲル状部材14と、第1部材11の表面およびゲル状部材14の表面に配置される可撓性補強層19と、を有する。ゲル状部材14は、第1ゲル端面141を備え、第1部材11は、第1ゲル端面141と同一面上に位置する内周側端面111を備える。可撓性補強層19は、第1ゲル端面141および内周側端面111に接続され、第1ゲル端面141と内周側端面111との境界を覆っている。
【0060】
また、本形態のアクチュエータ1は、可動体3および固定体2と、可動体3を固定体2に対して振動させる磁気駆動機構6と、上記のダンパー部材10(第1ダンパー部材10Aおよび第2ダンパー部材10B)とを有する。本形態では、可動体3は固定体2の内周側に配置される。可動体3は、アクチュエータ1の径方向の中心に配置されるシャフト31(内周側部分)を備え、固定体2は、シャフト31の外周側を囲む外周側部分(ホルダ環状部41およびケース環状部25)を備える。ダンパー部材10は、第1部材11が内周側部分に固定され、第2部材12が外周側部分に固定される。
【0061】
本形態のダンパー部材10は、内周側の枠材(第1部材11)と外周側の枠材(第2部材12)の間にゲル状部材14を成形して部品化されている。従って、第1部材11と第2部材12を介してゲル状部材14を可動体3および固定体2に接続できるので、可動体3と固定体2とを接続する際に、ゲル状部材14の接着作業を行う必要がない。従って、アクチュエータ1の組立が容易である。
【0062】
また、本形態のダンパー部材10では、第1部材11は、第1ゲル端面141と同一面上に位置する内周側端面111を備え、第1ゲル端面141および内周側端面111に可撓性補強層19が接続される。可撓性補強層19は、第1ゲル端面141と内周側端面111との境界を覆うように配置されているので、第1部材11の外周面150からゲル状部材14がはがれる際に最初にはがれ始める部位を可撓性補強層19によって保護できる。従って、ゲル状部材14の内周部に応力が集中したときにゲル状部材14が第1部材11からはがれにくく、ダンパー部材10が壊れにくい。よって、ダンパー部材10の耐久
性を高めることができる。
【0063】
本形態では、可撓性補強層19として、ゴムシートまたは樹脂フィルムを用いる。可撓性補強層19は、ゲル状部材14がせん断変形する際に可撓性補強層19が破断することがなく、ゲル状部材14のせん断変形に追従して可撓性補強層19が変形する材質であればよい。このような可撓性補強層19を設けることにより、ゲル状部材14の変形特性を確保しながら、ダンパー部材10の耐久性を高めることができる。
【0064】
本形態では、第2部材12は、内周側端面111および第1ゲル端面141と同一面上に位置する外周側端面121を備える。可撓性補強層19は、外周側端面121に接続され、第1ゲル端面141と外周側端面121との境界を覆っている。このように、可撓性補強層19の内周部と外周部をそれぞれ第1部材11と第2部材12に接続することにより、可撓性補強層19の固定強度を高めることができる。従って、ダンパー部材10の耐久性を高めることができる。
【0065】
本形態では、第1部材11の外周面150は、内周側端面111の外周縁に接続される面取り部18を備えている。第1部材11が金属部材である場合には、製造時のバリを除去するための面取り部18が形成される。本形態では、面取り部18にゲル状部材14が入り込んだために第1部材11からゲル状部材14がはがれやすくなったとしても、この部分を可撓性補強層19で保護できる。従って、ゲル状部材14の内周部に応力が集中したときにゲル状部材14が第1部材11からはがれにくい。
【0066】
本形態では、ゲル状部材14は、第1ゲル端面141とは反対側を向く第2ゲル端面142を備え、第2ゲル端面142は、凹面である。このような端面形状は、ダンパー部材10を注型により製造した場合に得られる。すなわち、製造用治具90(型部材)の底面94に可撓性補強層19を構成するゴムシートや樹脂フィルムを配置して第1部材11と第2部材12を位置決めし、ゲル材料Gを第1部材11と第2部材12の隙間に吐出すると、第2ゲル端面142は、ゲル材料Gの表面張力によって凹面になる。注型によりゲル状部材14を製造することで、ダンパー部材10を容易に製造することができる。
【0067】
本形態では、ゲル状部材14は、円筒形状であるため、ゲル状部材14が全周で均等に配置される。従って、ゲル状部材14のばね定数を全周で均等にすることができるので、可動体3を軸線方向に振動させるアクチュエータ1を構成した場合に、可動体3が特定の方向へ動きやすくなることがない。よって、可動体3を安定して支持できる。
【0068】
本形態では、ダンパー部材10は、可動体3の振動方向の一端側および他端側で可動体3と固定体2を接続しており、可動体3の振動方向の両端がダンパー部材10によって支持される。従って、可動体3を安定して支持でき、可動体3が意図しない方向へ動くことを抑制できる。
【0069】
(変形例)
(1)上記形態のダンパー部材10は、枠状の第1部材11および第2部材12の間にゲル状部材14を成形して部品化したものであったが、本発明は、可動体3と固定体2の間に直接ゲル状部材14を成形する形態に適用可能である。例えば、第1部材11がシャフト31に固定もしくは一体化され、第2部材12がホルダ環状部41およびケース環状部25にそれぞれ固定もしくは一体化されたアクチュエータでは、第1部材11は可動体3に設けられた内周側部分を構成し、第2部材12は固定体2に設けられた外周側部分を構成する。内周側部分の表面とゲル状部材14の表面には、上記形態と同様に可撓性補強層19が接続される。すなわち、ゲル状部材14は、第1ゲル端面141を備え、内周側部分は、第1ゲル端面141と同一面上に位置する内周側端面を備え、可撓性補強層19は
、第1ゲル端面141および内周側端面に接続され、第1ゲル端面141と内周側端面との境界を覆っている。また、外周側部分は、第1ゲル端面141と同一面上に位置する外周周側端面を備え、可撓性補強層19の外周部分は外周側端面に接続される。
【0070】
このようにすると、上記形態と同様に、可動体3の振動方向の一端側および他端側でゲル状部材14を介して可動体3と固定体2とを接続しているアクチュエータにおいて、可動体3が振動した際にゲル状部材14が内周側部分からはがれにくい。従って、アクチュエータ1の耐久性を高めることができる。その結果、可動体3を振動させる際の振幅の許容範囲を大きくすることができるので、大きな振幅で可動体3を振動させることができる。
【0071】
(2)上記形態は、ゴムシートや樹脂フィルムを製造用治具90の底面94に配置してゲル材料Gを充填する方法によって可撓性補強層19を形成するものであったが、成形品の端面にコーティング材を塗布することによって可撓性補強層19を形成してもよい。
【0072】
例えば、製造用治具90の底面94にゴムシートや樹脂フィルムを配置せずに第1部材11と第2部材12との隙間Sにゲル材料Gを充填してゲル状部材14を直接成形し、第1部材11と第2部材12をゲル状部材14によって接続した成形品を製造用治具90から外した後に、成形品の内周側端面111、第1ゲル端面141、および外周側端面121に樹脂やゴムなどのコーティング材料をスプレーすることにより、コーティング膜(膜可撓性補強層19)を形成することができる。あるいは、コーティング材料へのディッピングによりコーティング膜(可撓性補強層19)を形成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…アクチュエータ、2…固定体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、10…ダンパー部材、10A…第1ダンパー部材、10B…第2ダンパー部材、11…第1部材、12…第2部材、13…プライマー、14…ゲル状部材、15…大径部、16…小径部、17…軸穴、18…面取り部、19…可撓性補強層、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…凹部、25…ケース環状部、26…開口部、27…爪部、28…係止部、31…シャフト、32…第1ヨーク、33…第2ヨーク、34…第1磁性板、35…第2磁性板、41…ホルダ環状部、42…胴部、44…開口部、61…磁石、62…コイル、63…基板、90…製造用治具、91…円形凹部、92…ピン、93…ディスペンサー、94…底面、111…内周側端面、120…内周面、121…外周側端面、141…第1ゲル端面、142…第2ゲル端面、150…外周面、311…第1端部、312…第2端部、341…端板部、342…側板部、G…ゲル材料、L…軸線、L1…一方側、L2…他方側、LA…軸線、LA1…一方側、LA2…他方側、S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5