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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/40 20060101AFI20231129BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20231129BHJP
   B61F 5/24 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
F16F9/40 A
F16F9/32 K
B61F5/24 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099810
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193311
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕泰
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084841(JP,A)
【文献】特開2015-222110(JP,A)
【文献】特開2008-025694(JP,A)
【文献】特開2011-007287(JP,A)
【文献】特開平7-054899(JP,A)
【文献】特開2014-149003(JP,A)
【文献】特開2008-261421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/40
F16F 9/32
B61F 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入されて前記ロッドの一端に連結されるとともに前記シリンダ内を液体が充填されるロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、
気体とともに液体を貯留するタンクと、
前記シリンダの端部を閉塞するバルブケースと、
前記バルブケースの反ピストン側室側に配置されるボトムキャップと、
前記バルブケースと前記ボトムキャップとの間に形成されて前記タンクに連通される液室と、
前記タンクに連通されずに前記ロッド側室と前記液室とを連通する排出通路と、
前記バルブケースに設けられる吸込通路と、
前記排出通路に設けられる減衰バルブと、
前記バルブケースに設けられて前記吸込通路を前記タンクから前記ピストン側室へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するチェックバルブとを備え、
前記排出通路は、前記ボトムキャップに設けられて前記液室に臨む開口端を有して分岐しないキャップ内通路を有する
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記吸込通路は、前記バルブケースに周方向に並べて形成される複数のポートを有し、
前記排出通路の前記開口端は、前記ポートの全部を取り囲む円のうち最小径の仮想円の範囲に前記バルブケースの軸方向にて対向する位置に開口する
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記排出通路の前記開口端は、前記バルブケースの前記吸込通路の入口側の開口に正対する
ことを特徴とする請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する第一通路と、
前記第一通路に設けられた第一開閉弁と、
前記ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路と、
前記第二通路に設けられた第二開閉弁と、
前記排出通路および前記液室を介さずに前記タンクと前記ロッド側室とを連通する供給通路と、
前記供給通路に設けられて前記タンクから前記ロッド側室へ液体を供給可能なポンプとを備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシリンダ装置としては、たとえば、鉄道車両の車体と台車との間に介装されて、車両進行方向に対して左右方向の車体の振動を抑制するダンパが知られている。
【0003】
具体的には、このようなシリンダ装置は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてロッドの一端に連結されるとともにシリンダ内を作動油が充填されるロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、シリンダの外周に設けられる外筒と、シリンダと外筒との間の環状隙間で形成されるタンクと、ロッド側室とタンクとを連通する排出通路と、タンクとピストン側室とを連通する吸込通路と、排出通路に設けられる減衰バルブと、吸込通路に設けられるタンクからピストン側室へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブと、ピストンに設けられてピストン側室からロッド側室へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路とを備えており、ユニフロー型のパッシブダンパとされている。
【0004】
また、排出通路は、シリンダのロッド室側の端部に嵌合されるロッドガイドに設けられる通路と、ロッドガイドに装着されてタンク内に収容されるパイプとで形成されている。
【文献】特開2014-149003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成されたシリンダ装置は、伸長作動すると、圧縮されるロッド側室から排出通路を通じて作動油がタンクへ排出されるとともに、シリンダからロッドが退出する体積分の作動油が吸込通路を通じてタンクから拡大するピストン側室へ補充される。
【0006】
排出通路は、前述のようにタンク内に収容されるパイプで形成されており、減衰バルブを通過して流速が早くなる作動油の流れをパイプによって整流してタンクへ作動油を排出させてタンク内での作動油の気体の巻き込みを防止している。
【0007】
しかしながら、シリンダ装置が高速で伸長作動を呈すると、パイプだけでは作動油の流れを整流しきれずタンク内の気体を巻き込んでエアレーションが発生し、気体を含んだ作動油が吸込通路を介してピストン側室に侵入して、シリンダ装置が設定通りに減衰力を発生できない心配がある。
【0008】
そこで、本発明は、高速で伸縮しても設定通りに減衰力を発生可能なシリンダ装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるシリンダ装置は、シリンダと、シリンダ内に軸方向に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてロッドの一端に連結されるとともにシリンダ内を液体が充填されるロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、気体とともに液体を貯留するタンクと、シリンダの端部を閉塞するバルブケースと、バルブケースの反ピストン側室側に配置されるボトムキャップと、バルブケースとボトムキャップとの間に形成されてタンクに連通される液室と、タンクに連通されることなくロッド側室と液室とを連通する排出通路と、バルブケースに設けられる吸込通路と、排出通路に設けられる減衰バルブと、バルブケースに設けられて吸込通路をタンクからピストン側室へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するチェックバルブとを備え、排出通路は、ボトムキャップに設けられて液室に臨む開口端を有して分岐しないキャップ内通路を有することを特徴とする。
【0010】
このように構成されたシリンダ装置では、シリンダ内から排出されて減衰バルブを通過した液体をタンクを介さず分岐の無いボトムキャップに設けたキャップ内通路を通じてバルブケースの反ピストン側室側に設けられた液室内へ直接排出できるので、液室の圧力を高めるとともに気体の巻き込みの無い液体をピストン側室に吸込通路を通じて強制的にチャージできる。
【0011】
また、吸込通路がバルブケースに周方向に並べて形成される複数のポートを有し、排出通路の開口端がポートの全部を取り囲む円のうち最小径の仮想円の範囲にバルブケースの軸方向にて対向する位置に開口するようにシリンダ装置を構成してもよい。このように構成されたシリンダ装置では、各ポートと排出通路の開口端との距離が前記仮想円と対向しない範囲に開口端が配置される場合と比較して近くなるので、排出通路を通過して液室に入り込んできた液体がポートへ向かって流れやすくなって、吸込通路を通じてピストン側室内に液体を送りやすくなり、ピストン側室内での液体の吸込不足の発生を効果的に抑制できる。
【0012】
また、シリンダ装置における排出通路の開口端は、前記バルブケースの前記吸込通路の入口側の開口に正対していてもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、排出通路を通過して液室に排出された液体が吸込通路に向かって流れるので、吸込通路を通じてピストン側室内により一層液体を送りやすくなり、ピストン側室内での液体の吸込不足の発生を効果的に抑制できる。
【0013】
さらに、シリンダ装置は、ロッド側室とピストン側室とを連通する第一通路と、第一通路に設けられた第一開閉弁と、ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路と、第二通路に設けられた第二開閉弁と、排出通路および液室を介さずにタンクとロッド側室とを連通する供給通路と、供給通路に設けられてタンクから液体を吸い込んでロッド側室へ液体を吐出可能なポンプとを備えてもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、ポンプが排出通路および液室を介さずにタンクから直接に作動油を吸い込んでロッド側室へ供給するので、排出通路を通じて液室へ流入する作動油量がポンプの駆動により減少することがなく、液室の圧力を高めつつピストン側室へ強制的に気体の巻き込みの無い液体を供給でき、高速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシリンダ装置によれば、高速で伸縮しても設定通りに減衰力を発生可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態におけるシリンダ装置の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態のシリンダ装置としてのアクチュエータを鉄道車両に適用した状態を示す図である。
図3】本発明の一実施の形態のシリンダ装置の排出通路の開口端の設置位置を説明する図である。
図4】本発明の一実施の形態の第一変形例におけるシリンダ装置を原理的に示した図である。
図5】本発明の一実施の形態の第二変形例におけるシリンダ装置を原理的に示した図である。
図6】本発明の一実施の形態の第三変形例におけるシリンダ装置を原理的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。本実施の形態のシリンダ装置Cは、図1および図2に示すように、鉄道車両の台車Wと車体Bとの間に介装されて、車体Bの車両進行方向に対して水平横方向の振動を抑制するように車体Bの制振装置として使用されている。
【0017】
シリンダ装置Cは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてロッド2の一端に連結されるとともにシリンダ1内を液体が充填されるロッド側室R1とピストン側室R2とに区画するピストン3と、気体とともに液体を貯留するタンクTと、シリンダ1の端部を閉塞するとともにピストン側室R2とタンクTに連通される液室Lとを仕切るバルブケース4と、ロッド側室R1と液室Lとを連通する排出通路5と、バルブケース4に設けられる吸込通路6と、排出通路5に設けられる減衰バルブ15と、バルブケース4に設けられて吸込通路6をタンクTからピストン側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するチェックバルブ7とを備えて構成されている。
【0018】
以下、シリンダ装置Cの各部について詳細に説明する。シリンダ1は、筒状であって、シリンダ1の図1中左端には環状のロッドガイド8が嵌合され、シリンダ1の図1中右端には、バルブケース4が嵌合されている。ロッドガイド8の内周には、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2が挿通されている。そして、ロッドガイド8は、ロッド2のシリンダ1に対する軸方向の移動を案内する。ロッド2の一端は、シリンダ1外へ突出しており、ロッド2の他端は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結されている。シリンダ1の左端は、ロッドガイド8とロッド2とにより、シリンダ1の右端は、バルブケース4によって、それぞれ閉塞されている。
【0019】
シリンダ1の外周側には、シリンダ1の外周を覆う外筒9が設けられている。外筒9の図1中左端側の内周には、ロッドガイド8が嵌合されるとともに、螺子部9aが形成されており、外周に螺子溝を備えたロックナット10が螺着される。また、外筒9の図1中右端には、外筒9の図1中右端を閉塞するボトムキャップ11が装着されている。
【0020】
このように、外筒9に取付けられるロックナット10とボトムキャップ11とによって、ロッドガイド8、シリンダ1、シリンダ1の端部に嵌合するバルブケース4とが挟持されて外筒9に対して不動に固定される。シリンダ1と外筒9の図1中左端は、以上のようにロッドガイド8によって閉塞され、外筒9の図1中右端はボトムキャップ11によって閉塞され、シリンダ1と外筒9との間の環状隙間が密閉されている。
【0021】
なお、ロッド2の外周は、ロッドガイド8に装着される環状のシール部材12によってシールされ、シリンダ1内は密閉される。さらに、シリンダ1は、内方に摺動自在に挿入されるピストン3によって、図1中左方のロッド側室R1と図1中右方のピストン側室R2とに区画されている。そして、ロッド側室R1とピストン側室R2には、液体として作動油が充填されている。
【0022】
つづいて、ピストン3には、ピストン側室R2とロッド側室R1とを連通するとともに途中にチェックバルブ13aを備えた整流通路13が設けられている。チェックバルブ13aは、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するようになっており、整流通路13をピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0023】
バルブケース4は、前記したように、シリンダ1の端部に嵌合されてシリンダ1の図1中右端を閉塞している。具体的には、バルブケース4は、シリンダ1の図1中右端とボトムキャップ11との間で挟持される円盤状の本体部4aと、本体部4aから図1中左方へ突出してシリンダ1の図1中右端内周に嵌合する嵌合部4bと、本体部4aの図1中右端から開口する凹部4cと、嵌合部4bの図1中左端から開口する凹部4dとを備えている。凹部4cは、本体部4aの図1中左端に形成される後述する通路としての切欠4eを介してシリンダ1と外筒9との間の環状隙間に連通されており、凹部4dは、ピストン側室R2に面しておりピストン側室R2に連通される。
【0024】
また、バルブケース4は、本体部4aを貫いて凹部4cと凹部4dとを連通して吸込通路6を形成する6つのポート6aを備えている。各ポート6aは、バルブケース4の軸心を中心にして同一円周上に等間隔に並べて設けられており、ピストン側室R2と凹部4cとを連通している。なお、ポート6aの設置数は、任意に設定でき単数であってもよいが、ポート6aの断面を円形にする場合には複数に設定されると吸込通路6の流路面積を確保しやすくなる。ポート6aの断面形状は、円形に限られず、円弧形状や矩形状等、他の形状とされてもよい。なお、吸込通路6の流路面積は、大きければ大きいほど、タンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れがスムーズになってピストン側室R2の拡大時における吸込不足を生じさせない点で有利となる。
【0025】
ボトムキャップ11は、バルブケース4の反ピストン側室側に配置され、外筒9に溶接によって装着されて外筒9の図1中右端を閉塞するとともに、図1中左端には本体部4aの図1中右端が嵌合される凹部11aを備えていて、バルブケース4とバルブケース4に嵌合されるシリンダ1を径方向に位置決めしている。ボトムキャップ11にバルブケース4が嵌合するとバルブケース4の凹部4cとボトムキャップ11の凹部11aとの間であってバルブケース4の反ピストン側室側に液室Lが形成される。なお、凹部11aの深さがバルブケース4の切欠4eの深さよりも浅く、凹部11aにバルブケース4が嵌合しても当該液室Lと前記環状隙間の連通が確保される。
【0026】
また、タンクTは、シリンダ1と外筒9との間の環状隙間で形成されている。また、凹部4cで形成されたバルブケース4の反ピストン側室側に臨む液室Lは、切欠4eを通路としてタンクTに通じるとともに、吸込通路6によってピストン側室R2に連通される。なお、タンクTと液室Lとを連通する通路は、切欠4e以外によって形成されてもよく、バルブケース4ではなくボトムキャップ11に設けられてもよい。
【0027】
タンクT内には、気体と、シリンダ1内と同様に作動油が充填され、液室Lにも作動油が充填される。なお、シリンダ装置Cに使用される液体は、水、水溶液といった作動油以外の液体とされてもよい。
【0028】
また、ボトムキャップ11は、図1中左端であってタンクTに臨む端面から開口する嵌合孔11bと、嵌合孔11bから開口して途中で分岐せずにバルブケース4の凹部4cに対向して液室Lに臨む端部に開口するキャップ内通路11cを備えるとともに、図1中右端に鉄道車両の車体Bに連結可能なブラケット11dを備えている。シリンダ装置Cはブラケット2a,11aを利用して鉄道車両の車体Bと台車Wとに連結され、図2に示すように、車体Bと台車Wとの間に介装可能となっている。
【0029】
排出通路5の開口端となるキャップ内通路11cの凹部4cで形成された液室Lに臨む開口端は、液室LをタンクTに連通する通路としての切欠4eの液室Lに臨む開口端と異なる位置に開口している。さらに、排出通路5の液室Lに臨む開口端は、図3に示すように、ポート6aの全部を取り囲む円のうち最小径の仮想円VCの範囲にバルブケース4の軸方向で対向する位置に開口している。つまり、シリンダ装置Cを軸方向から見て、排出通路5の開口端は、ボトムキャップ11の液室L側面の前記仮想円VCの範囲にバルブケース4の軸方向で対向する位置に開口している。本実施の形態では、ポート6aの全部が同一円周上に配置されているので、仮想円VCの直径は、前記同一円の直径にポート6aの直径を加算した長さとなる。なお、たとえば、ポート6aが同一円周上であっても等間隔に配置されずバルブケース4の周方向で偏った範囲に配置される場合、仮想円VCの直径はやはり前記同一円の直径にポート6aの直径を加算した長さとなるが、その場合は、なるべくバルブケース4のポート6aが集中する範囲に対向する位置に排出通路5の開口端を設けるとよい。また、さらに、キャップ内通路11cは、複数のポート6aのうち、任意のポート6aに軸方向で正対する位置に開口している。なお、キャップ内通路11cの開口端は、分岐して複数の開口を有してもよく、その場合、前記仮想円VCの範囲に対向する位置であって各々がポート6aに正対する位置に開口するとよい。
【0030】
そして、バルブケース4の凹部4d内には、凹部4dの底部に離着座してポート6aを開閉可能な環状の弁体7aと、バルブケース4の凹部4dの側壁を形成する嵌合部4bの内周に固定される環状のばね受7bと、弁体7aとばね受7bとの間に介装されて弁体7aを前記底部へ向けて付勢するばね7cとを備えたチェックバルブ7が収容されている。ばね7cは、ばね定数が低くごく弱い付勢力で弁体7aを付勢しており、弁体7aは、凹部4dの底部に当接した状態では全てのポート6aを閉塞して吸込通路6を遮断する。なお、弁体7aの外周は、バルブケース4の凹部4dを形成する側壁に摺接しており、弁体7aの前記底部に対して軸方向へ遠近する際に径方向へぶれずに移動できる。
【0031】
チェックバルブ7は、液室L内の圧力がピストン側室R2の圧力を上回って両者の差圧がばね7cで設定される開弁圧に達すると、弁体7aを押圧する圧力の力でばね7cが押し縮められて、吸込通路6が開放される。また、チェックバルブ7は、ピストン側室R2の圧力が液室Lの圧力より高いとバルブケース4に着座したままとなってポート6aの出口端を閉塞し、吸込通路6を遮断する。このように、チェックバルブ7は、タンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するとともに反対側への流れを阻止しており、吸込通路6をタンクTからピストン側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0032】
つづいて、ロッドガイド8は、環状であって外筒9の内周に嵌合されるとともにロッド2が摺動自在に挿入される蓋部8aと、蓋部8aの図1中右端から突出してシリンダ1の外周に嵌合される環状の嵌合部8bと、蓋部8aの図1中左端外周に設けた環状の凹部8cと、蓋部8aの内周であって図1中右端から途中までにかけて形成される溝8dと、嵌合部8bの図1中右端であってタンクTに臨むとともにボトムキャップ11の嵌合孔11bに軸方向で正対する嵌合孔8eと、溝8dと嵌合孔8eとを連通する通路8fとを備えている。
【0033】
そして、ロッドガイド8は、シリンダ1、バルブケース4とともにボトムキャップ11が溶接によって一体化された外筒9内に収容されるとともに、外筒9の図1中左端内周に螺着されるロックナット10によってシリンダ1およびバルブケース4とともに外筒9内で固定される。
【0034】
また、ロッドガイド8の内周には、ロッド2の外周に摺接してロッド2とロッドガイド8との間をシールする環状のシール部材12が装着されていて、シリンダ1内からの液体の漏洩が防止されている。
【0035】
そして、ロッドガイド8の嵌合孔8eには、タンクT内に収容されるパイプ14の図1中左端が嵌合され、ボトムキャップ11の嵌合孔11bには、パイプ14の図1中右端が嵌合されている。このようにパイプ14は、外筒9に固定されるロッドガイド8とボトムキャップ11とで保持されるため、シリンダ装置Cに振動が入力されても脱落することはない。
【0036】
ロッドガイド8に設けられてロッド側室R1に臨む溝8dは、通路8f、パイプ14内、ボトムキャップ11に設けられたキャップ内通路11cを介して液室Lに連通され、さらに、切欠4eを通じてタンクTに連通される。そして、これら溝8d、通路8f、パイプ14内およびキャップ内通路11cで排出通路5が形成されており、ロッド側室R1から排出通路5を通じてタンクTへ向かう作動油は、液室Lを経由してタンクTに到達するようになっている。このように、排出通路5は、ロッドガイド8とボトムキャップ11とで保持されるパイプ14内と途中で分岐しないキャップ内通路11cで通路の終端側が形成されており、途中でタンクTに連通されることがないので、気体の巻き込みの無い整流された液体を液室Lへ排出できる。なお、パイプ14に代えて、外筒9の内周或いは外周に外筒9との間に排出通路5の一部となる環状隙間を形成する筒部材を設けてもよい。
【0037】
また、ロッドガイド8に設けられた通路8fの途中には、減衰バルブ15が設けられている。減衰バルブ15は、本実施の形態では、開弁圧の調整が可能であって排出通路5を開閉する可変リリーフ弁とされており、ソレノイド15aと、ソレノイド15aによって駆動されるとともに通路8fに設けられた弁体15bと、弁体15bを閉弁させる方向へ付勢するばね15cと、ロッド側室R1の圧力を弁体15bに対して開弁方向へ作用させるパイロット通路15dとを備えている。そして、ソレノイド15aは、ばね15cの付勢力に対抗する方向へ弁体15bに推力を作用させる。弁体15bには、開弁方向にソレノイド15aの推力とロッド側室R1の圧力とが作用し、閉弁方向にばね15cの付勢力が作用する。ソレノイド15aへ与える電流量を調整するとソレノイド15aの推力を大小調整できるので、ソレノイド15aへ与える電流量の調整で減衰バルブ15が排出通路5を開放する際の開弁圧を調整できる。なお、減衰バルブ15は、可変リリーフ弁以外にも作動油の流れに与える抵抗を調整可能な弁であってもよいし、減衰力の調整が不要であればソレノイド等のアクチュエータを備えず作動油の流れに対して設定された抵抗を与えるバルブであってもよい。また、本実施の形態では、減衰バルブ15は、ロッドガイド8に設けられているがボトムキャップ11に設けられてもよい。
【0038】
このように構成されたシリンダ装置Cでは、外部入力によってロッド2がシリンダ1に対して退出する伸長作動を呈すると、ピストン3の移動によって縮小されるロッド側室R1内の作動油は、チェックバルブ13aが閉弁することにより整流通路13を通過できないので、排出通路5および液室Lを通じてタンクTへ移動する。シリンダ装置Cの伸長作動によって拡大されるピストン側室R2には、チェックバルブ7が開くことにより吸込通路6を通じてタンクTから液室Lを介して作動油が供給される。このようにシリンダ装置Cが伸長作動すると、作動油が排出通路5に設けられた減衰バルブ15を通過する際の圧力損失により、ロッド側室R1内の圧力が上昇する一方、ピストン側室R2内の圧力はほぼタンク圧となるため、シリンダ装置Cは、伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発生する。そして、減衰バルブ15の開弁圧を調整してロッド側室R1の圧力を大小調整できるので、減衰バルブ15のソレノイド15aへ与える電流量の調整によって、シリンダ装置Cが発生する伸側の減衰力を調整できる。
【0039】
他方、シリンダ装置Cが収縮作動を呈すると、作動油は、チェックバルブ13aを押し開いて整流通路13を介してピストン3の移動によって縮小されるピストン側室R2から拡大するロッド側室R1へ移動する。また、シリンダ1内の全体では、ロッド2がシリンダ1内に侵入する体積分の作動油が過剰となり、シリンダ1内で過剰分の作動油は、シリンダ1内から排出通路5の減衰バルブ15および液室Lを通じてタンクTへ移動する。このように、シリンダ装置Cが収縮作動すると、作動油が排出通路5に設けられた減衰バルブ15を通過してシリンダ1内の全体の圧力が上昇するため、シリンダ装置Cは、収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発生する。減衰バルブ15の開弁圧を調整することでシリンダ1の圧量を大小調整できるので、減衰バルブ15のソレノイド15aへ与える電流量の調整によって、シリンダ装置Cが発生する圧側の減衰力を調整できる。
【0040】
以上の通り、シリンダ装置Cは、伸縮時に作動油がタンクT、ピストン側室R2およびロッド側室R1を一方通行で循環して減衰バルブ15を通るようになる。よって、シリンダ装置Cは、伸長作動時と収縮作動時の両方で減衰力を発生するユニフロー型のパッシブダンパとして機能でき、減衰バルブ15の開弁圧の調整で減衰力調整もできる。また、前述した通り、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、ピストン3のロッド側室R1側の受圧面積をピストン側室R2側の受圧面積の二分の一に設定してあるので、減衰バルブ15の開弁圧を同じにすればシリンダ装置Cが伸側の減衰力と圧側の減衰力とを等しくできる。
【0041】
そして、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、吸込通路6が設けられるバルブケース4の反ピストン側室側に設けられる液室Lに排出通路5の開口端が通じており、シリンダ装置Cが伸長する際にシリンダ1内から排出されて減衰バルブ15を通過した作動油は液室Lに排出される。また、排出通路5の液室Lへの開口端は、液室LをタンクTに連通する通路である切欠4eの液室L側の開口端とは異なる位置に開口しているので、排出通路5を通過した作動油は、液室Lを経由して切欠4eを通じてタンクTへ排出される。このように、排出通路5を通過した作動油が一旦液室Lを経由するため、作動油の流入によって液室L内の圧力は、タンクTよりも高くなる傾向になるとともに、排出通路5を通過してきたばかりで気体との接触の無い作動油をピストン側室R2に吸込通路6を通じて強制的にチャージできるようになる。よって、シリンダ装置Cは、高速で伸長しても、ピストン側室R2での作動油の吸込不足の発生や、気体を巻き込んだ作動油のシリンダ1内への侵入を抑制できるので、設定通りの減衰力を発揮できる。
【0042】
このように本実施の形態のシリンダ装置Cは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてロッド2の一端に連結されるとともにシリンダ1内を作動油(液体)が充填されるロッド側室R1とピストン側室R2とに区画するピストン3と、気体とともに作動油(液体)を貯留するタンクTと、シリンダ1の端部を閉塞するバルブケース4と、バルブケース4の反ピストン側室側に配置されるボトムキャップ11と、バルブケース4とボトムキャップ11との間に形成されてタンクTに連通される液室Lと、タンクTに連通されずにロッド側室R1と液室Lとを連通する排出通路5と、バルブケース4に設けられる吸込通路6と、排出通路5に設けられる減衰バルブ15と、バルブケース4に設けられて吸込通路6をタンクTからピストン側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するチェックバルブ7とを備え、排出通路5がボトムキャップ11に設けられて液室Lに臨む開口端を有して分岐しないキャップ内通路11cを有して構成されている。
【0043】
このように構成されたシリンダ装置Cでは、前述した通り、シリンダ1内から排出されて減衰バルブ15を通過し、タンクTを介さず気体の巻き込みの無い作動油(液体)を分岐の無いキャップ内通路11cを通じて整流してバルブケース4の反ピストン側室側に設けられた液室L内へ直接排出できるので、液室Lの圧力を高めるとともに気体の巻き込みの無い作動油(液体)をピストン側室R2に吸込通路6を通じて強制的にチャージできる。
【0044】
以上より、本実施の形態のシリンダ装置Cによれば、高速で伸縮しても、ピストン側室R2での作動油の吸込不足の発生や、気体を巻き込んだ作動油(液体)のシリンダ1内への侵入を抑制できるので、設定通りの減衰力を発揮できる。
【0045】
なお、排出通路5の開口端であるキャップ内通路11cの液室Lへの開口端は、ボトムキャップ11の仮想円VCの範囲のバルブケース4に対向する位置以外に開口してもよく、また、バルブケース4の形状や構造、およびボトムキャップ11の形状や構造によって、排出通路5の取り回しの関係で液室Lに対して排出通路5が径方向から接続される場合でも、排出通路5を通過した作動油の流入によって液室L内の圧力を高め、排出通路5を通過してきたばかりで気体との接触の無い作動油をピストン側室R2に吸込通路6を通じて強制的にチャージできるので、本発明の効果は失われない。これに対して、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、排出通路5の開口端、この場合、キャップ内通路11cの液室Lへの開口端は、ポート6aの全部を取り囲む円のうち最小径の仮想円VCの範囲にバルブケース4の軸方向で対向する位置に設置されている。このように構成されたシリンダ装置Cでは、排出通路5の液室Lへの開口端がポート6aの全部を取り囲む円のうち最小径の仮想円VCの範囲に対向する位置に設けられるので、排出通路5を通過して液室Lに入り込んできた作動油がポート6aへ向かって流れやすくなって、吸込通路6を通じてピストン側室R2内に作動油を送りやすくなり、ピストン側室R2内での作動油の吸込不足の発生を効果的に抑制できる。なお、ポート6aが同一円周上であっても等間隔に配置されずバルブケース4の周方向で偏った範囲に配置される場合でも排出通路5の開口端が仮想円VCの範囲にバルブケース4の軸方向で対向する位置にあればよいが、その場合は、バルブケース4のなるべくポート6aが集中する部位に対向するように排出通路5の開口端を設けるとよい。
【0046】
また、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、排出通路5の開口端、この場合、キャップ内通路11cの液室Lへの開口端がバルブケース4の吸込通路6の入口側の開口に正対している。本実施の形態では、具体的に、バルブケース4に設けられた吸込通路6を形成している複数のポート6aのうち任意のポート6aの入口端である反ピストン室側端にボトムキャップ11に設けられたキャップ内通路11cの開口端が正対している。このように構成されたシリンダ装置Cによれば、排出通路5を通過して液室Lに排出された作動油がポート6aに向かって流れるので、吸込通路6を通じてピストン側室R2内により一層作動油を送りやすくなり、ピストン側室R2内での作動油の吸込不足の発生を効果的に抑制できる。
【0047】
また、本実施の形態のシリンダ装置Cは、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容する整流通路13を備えているので、シリンダ装置Cはユニフロー型のダンパに設定される。ユニフロー型のダンパでは、シリンダ装置Cの伸長時に、ピストン3の移動に伴うピストン側室R2の容積拡大分の全量の作動油をピストン側室R2へ供給する必要がある。ところが、本実施の形態のシリンダ装置Cは、前述した通り、伸長作動時に液室Lの圧力を高めるとともに気体の巻き込みのない作動油をピストン側室R2へスムーズに供給でき、ユニフロー型に設定されても設定通りの減衰力を発揮できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cは、ユニフロー型に設定されるダンパの実用性を高めることができる。
【0048】
なお、シリンダ装置Cは、前述したところでは、ユニフロー型のダンパとされているが、伸長時に排出通路5を通じてロッド側室R1から前記液室Lへ作動油を排出でき、ピストン側室R2で不足する作動油をタンクTから供給する態様であれば、バイフロー型のダンパとされもてよい。シリンダ装置をバイフロー型のダンパとする場合、たとえば、図4に示した一実施の形態の第一変形例のシリンダ装置C1のように構成すればよい。図4では、シリンダ装置C1の構成を原理的に示しているが、同じ符号が付された部品は、一実施の形態のシリンダ装置Cと同じ部品を指している。シリンダ装置C1は、一実施の形態のシリンダ装置Cにおけるピストン3の整流通路13を廃止して、排出通路5と並列に設けられて減衰バルブ15を迂回する通路16と、通路16に設けられてタンクTからロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ17と、吸込通路6と並列に設けられてチェックバルブ7を迂回する通路18と、通路18に設けられてピストン側室R2からタンクTへ向かう作動油の流れのみを許容するとともに通過する作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ19とを備える。
【0049】
通路16は、排出通路5とは独立してタンクTとロッド側室R1とを連通しているが、一部を排出通路5と共有してもよいし、ロッド側室R1を液室Lに連通してもよい。また、通路18は、吸込通路6とは独立してピストン側室R2を液室Lに連通しているが、一部を吸込通路6と共有してもよいし、ピストン側室R2をタンクTに連通してもよい。
【0050】
このように構成されたシリンダ装置C1は、伸長作動時には、ピストン3の移動によって縮小されるロッド側室R1内の作動油が減衰バルブ15および液室Lを通じてタンクTへ流れ、ピストン3の移動によって拡大されるピストン側室R2にはタンクTから液室Lおよび吸込通路6を介して作動油が供給される。このシリンダ装置C1の伸長作動時には、排出通路5から排出される作動油がバルブケース4の反ピストン側室側に設けられた液室Lに排出されるので、気体の巻き込みのない作動油が強制的にピストン側室R2にチャージされる。また、シリンダ装置C1は、収縮作動時には、ピストン3の移動によって縮小されるピストン側室R2内の作動油が圧側減衰バルブ19を通じてタンクTへ流れ、ピストン3の移動によって拡大されるロッド側室R1にはタンクTから通路16を介して作動油が供給される。なお、シリンダ装置C1の収縮時にロッド側室R1で必要となる作動油量は、ピストン3の断面積からロッド2の断面積を引いた値にピストン3の移動量を乗じた値の油量となる。本実施の形態のシリンダ装置C1では、ロッド2の断面積はピストン3の断面積の二分の一なので、シリンダ装置C1が収縮作動した際にロッド側室R1で必要となる作動油量は、シリンダ装置C1が伸長作動した場合にピストン側室R2で必要となる作動油量の半分となる。よって、シリンダ装置C1が収縮作動する場合、圧側減衰バルブ19が設けられる通路18の出口端をチェックバルブ17の入り口近傍に設けずとも問題はない。なお、通路18の出口端をチェックバルブ17が設置される部品に設けられるチェックバルブ17のポートの入口の至近や対向する位置に設けてロッド側室R1へも作動油のチャージ効果を狙ってもよいのは当然である。このように、バイフロー型に設定されるシリンダ装置C1にあっても、伸長作動時にバルブケース4の反ピストン側室側に設けられた液室Lに作動油が排出されるので、液室Lの圧力を高めつつピストン側室R2へ強制的に気体の巻き込みのない作動油を供給できるので、シリンダ装置C1は高速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮できる。
【0051】
また、通路18が液室Lに連通される場合、シリンダ装置C1の収縮作動時にピストン側室R2から作動油が液室Lに流入して液室Lの圧力が高くなる傾向になるので、シリンダ装置C1が伸長作動に切り換る際にピストン側室R2に速やかに作動油を送り込めるようになるので、シリンダ装置C1が収縮作動から伸長作動に切り換わる際にも減衰力が速やかに立ち上がる。
【0052】
さらに、シリンダ装置C2をセミアクティブダンパとしたい場合には、図5に示した一実施の形態の第二変形例のシリンダ装置C2のように構成すればよい。図5では、シリンダ装置C2の構成を原理的に示しているが、同じ符号が付された部品は、一実施の形態のシリンダ装置Cと同じ部品を指している。
【0053】
シリンダ装置C2は、一実施の形態のシリンダ装置Cの構成に加えて、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する第一通路20と、第一通路20の途中に設けた第一開閉弁21と、ピストン側室R2とタンクTとを連通する第二通路22と、第二通路22の途中に設けた第二開閉弁23とを備えている。
【0054】
第一通路20は、ロッドガイド8、ボトムキャップ11およびバルブケース4の内部に設けられる通路ととともにロッドガイド8とボトムキャップ11に架け渡されるパイプ24内とで形成されており、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通している。
【0055】
第一通路20に設けられる第一開閉弁21は、通電時に第一通路20を開く連通ポジションを採るとともに、非通電時に第一通路20を遮断する遮断ポジションを採る電磁開閉弁とされていて、ロッドガイド8に設置されている。なお、第一開閉弁21は、ボトムキャップ11に設置されてもよい。
【0056】
第二通路22は、通路の一部を排出通路5および第一通路20と共通にしてパイプ14,24内を通じてピストン側室R2とタンクTとを連通している。なお、第二通路22は、排出通路5と第一通路20と独立して設けられてもよいが、排出通路5と第一通路20と通路の一部を共有することで部品点数と加工工数を削減できる。
【0057】
第二通路22に設けられる第二開閉弁23は、通電時に第二通路22を開く連通ポジションを採るとともに、非通電時に第二通路22を遮断する遮断ポジションを採る電磁開閉弁とされていて、ロッドガイド8に設置されている。なお、第二開閉弁23は、ボトムキャップ11に設置されてもよい。
【0058】
このように構成されたシリンダ装置C2では、第一開閉弁21を連通ポジションとし第二開閉弁23を遮断ポジションとすると、ロッド側室R1とピストン側室R2とは第一通路20を介して連通状態となるが、ピストン側室R2とタンクTとの第二通路22を介しての連通が断たれる。この状態で、シリンダ装置C2が外部入力によってロッド2がシリンダ1に対して退出する伸長作動を呈すると、作動油が縮小されるロッド側室R1から第一通路20を通じて拡大されるピストン側室R2へ移動する。また、シリンダ1内の全体では、ロッド2がシリンダ1から退出する体積分の作動油が不足するが、不足分の作動油は、チェックバルブ7が開いて液室Lおよび吸込通路6を通じてタンクTからピストン側室R2へ移動する。このように、第一開閉弁21を連通ポジションとし第二開閉弁23を遮断ポジションとした状態でシリンダ装置C2が伸長作動しても、作動油が排出通路5に設けられた減衰バルブ15を通過せず、ロッド側室R1とピストン側室R2とがほぼタンク圧となるので、シリンダ装置C2は、伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発生しない。
【0059】
他方、第一開閉弁21を連通ポジションとし第二開閉弁23を遮断ポジションとした状態でシリンダ装置C2が収縮作動を呈すると、作動油は、第一通路20を介して縮小されるピストン側室R2から拡大するロッド側室R1へ移動する。また、シリンダ1内の全体では、ロッド2がシリンダ1内に侵入する体積分の作動油が過剰となるが、第二通路22が遮断されているため、シリンダ1内で過剰分の作動油は、シリンダ1内から排出通路5の減衰バルブ15および液室Lを通じてタンクTへ移動する。このように、第一開閉弁21を連通ポジションとし第二開閉弁23を遮断ポジションとした状態でシリンダ装置C2が収縮作動すると、作動油が排出通路5に設けられた減衰バルブ15を通過してシリンダ1内の全体の圧力が上昇するため、シリンダ装置C2は、収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発生する。減衰バルブ15の開弁圧を調整することでシリンダ1内の圧力を大小調整できるので、減衰バルブ15へ与える電流量の調整によって、シリンダ装置C2が発生する圧側の減衰力を調整できる。
【0060】
また、シリンダ装置C2では、第一開閉弁21を遮断ポジションとし第二開閉弁23を連通ポジションとすると、ロッド側室R1とピストン側室R2との第一通路20を介しての連通が断たれるが、ピストン側室R2とタンクTとは第二通路22を介して連通される。この状態で、シリンダ装置C2が外部入力によってロッド2がシリンダ1に対して退出する伸長作動を呈すると、第一通路20が遮断されているため作動油が縮小されるロッド側室R1から排出通路5の減衰バルブ15および液室Lを通じてタンクTへ移動する。シリンダ装置C2の伸長作動によって拡大されるピストン側室R2には、第二通路22を通じてタンクTから作動油が供給される。このように、第一開閉弁21を遮断ポジションとし第二開閉弁23を連通ポジションとした状態でシリンダ装置C2が伸長作動すると、作動油が排出通路5に設けられた減衰バルブ15を通過してロッド側室R1内の圧力が上昇する一方、ピストン側室R2内の圧力はほぼタンク圧となるため、シリンダ装置Cは、伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発生する。減衰バルブ15の開弁圧を調整することでロッド側室R1の圧力を大小調整できるので、減衰バルブ15へ与える電流量の調整によって、シリンダ装置C2が発生する伸側の減衰力を調整できる。
【0061】
他方、第一開閉弁21を遮断ポジションとし第二開閉弁23を連通ポジションとした状態でシリンダ装置C2が収縮作動を呈すると、作動油は、チェックバルブ13aを押し開いて縮小されるピストン側室R2から整流通路13を通じて拡大するロッド側室R1へ移動する。また、シリンダ1内の全体では、ロッド2がシリンダ1内に侵入する体積分の作動油が過剰となるが、シリンダ1内で過剰分の作動油は、シリンダ1内から第二通路22を通じてタンクTへ移動する。このように、第一開閉弁21を遮断ポジションとし第二開閉弁23を連通ポジションとした状態でシリンダ装置C2が収縮作動しても、作動油が排出通路5に設けられた減衰バルブ15を通過せず、ロッド側室R1とピストン側室R2とがほぼタンク圧となるので、シリンダ装置C2は、収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発生しない。
【0062】
前述した通り、本実施の形態のシリンダ装置C2では、ピストン3のロッド側室R1側の受圧面積をピストン側室R2側の受圧面積の二分の一に設定してある。よって、減衰バルブ15の開弁圧を同じにすれば、シリンダ装置C2が伸側の減衰力と圧側の減衰力とを等しくできる。よって、ピストン3のロッド側室R1側の受圧面積をピストン側室R2側の受圧面積の二分の一に設定すると、シリンダ装置C2の減衰力の制御が容易となる。
【0063】
以上の通り、シリンダ装置C2は、第一開閉弁21を連通ポジションとするとともに第二開閉弁23を遮断ポジションとすると収縮作動時のみに減衰力を発生して伸長作動時には減衰力を発生しない。また、シリンダ装置C2は、第一開閉弁21を遮断ポジションとするとともに第二開閉弁23を連通ポジションとすると伸長作動時のみに減衰力を発生して収縮作動時には減衰力を発生しない。
【0064】
図2に示したシリンダ装置C2の鉄道車両への取付状態では、台車Wに対して車体Bが右方へ移動する場合にシリンダ装置C2が収縮作動を呈し、台車Wに対して車体Bが左方へ移動する場合にシリンダ装置C2が伸長作動を呈する。この場合、シリンダ装置C2は、圧側の減衰力で車体Bの右方への移動を抑制するが、車体Bと台車Wとが右方へ移動し、かつ、台車Wの移動速度が遅い場合、収縮作動して圧側の減衰力を発生して車体Bの振動を抑制できる。ところが、シリンダ装置C2は、車体Bと台車Wとが右方へ移動し、かつ、台車Wの移動速度が速い場合、収縮作動せず伸長作動を呈する。ここで、シリンダ装置C2が伸側の減衰力を発生するとシリンダ装置C2の伸長作動が抑制されるため台車Wの右方向の移動を車体Bへ伝達してしまう。しかしながら、本実施の形態のシリンダ装置C2では、片効きのセミアクティブダンパとして機能できるので、車体Bと台車Wとが右方へ移動し、かつ、台車Wの移動速度が速い場合に圧側の減衰力のみを発生するように制御できるから、車体Bの振動を助長してしまうのを防止できる。なお、車体Bと台車Wとが左方へ移動し、かつ、台車Wの移動速度が速い場合には、シリンダ装置C2の伸側の減衰力のみを発生するように制御すればよい。このように、シリンダ装置C2が減衰力を発生する方向が鉄道車両の台車Wの振動により車体Bを加振する方向である場合、そのような方向には力を出さないようにシリンダ装置C2を片効きのダンパとして機能させ得る。よって、このシリンダ装置C2は、カルノップ理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、セミアクティブダンパとして機能できる。
【0065】
つづいて、第一開閉弁21と第二開閉弁23とをともに遮断ポジションとすると、シリンダ装置C2の回路構成は、見かけ上、第一通路20、第一開閉弁21、第二通路22および第二開閉弁23を備えてない一実施の形態のシリンダ装置Cの回路構成と同じになる。よって、この場合、シリンダ装置C2は、伸縮作動時に作動油が必ず減衰バルブ15を通過するので、伸長作動時と収縮作動時の両方で減衰力を発揮するユニフロー型のダンパとして機能する。
【0066】
さらに、シリンダ装置C2では、第一開閉弁21と第二開閉弁23とをともに連通ポジションとすると、ロッド側室R1とピストン側室R2とが第一通路20を介して連通されるともに、ピストン側室R2とタンクTとが第二通路22を介して連通される。つまり、シリンダ装置C2がこの状態となると、ロッド側室R1とピストン側室R2とが第一通路20および第二通路22を介してタンクTに常時連通した状態となるので、シリンダ装置C2が伸長作動しても収縮作動してもシリンダ1内はタンク圧となり、シリンダ装置C2は、減衰力を発揮しないアンロード状態となる。
【0067】
このように構成されたシリンダ装置C2でも、伸長作動時に減衰力を発揮する態様では、ロッド側室R1から排出通路5を介してバルブケース4とボトムキャップ11との間に形成される液室Lに作動油が排出される。よって、シリンダ装置C2は、一実施の形態のシリンダ装置Cと同様に、液室Lの圧力を高めつつピストン側室R2へ強制的に気体の巻き込みのない作動油を供給できるので、高速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮できる。
【0068】
なお、図6に示す一実施の形態の第三変形例のシリンダ装置C3のように、シリンダ装置C2の構成に、ポンプPとモータMを追加してシリンダ装置C3をアクチュエータとして機能させるようにしてもよい。
【0069】
具体的には、第三変形例のシリンダ装置C3は、シリンダ装置C2の構成に加えて、排出通路5および液室Lを介さずにロッド側室R1とタンクTとを連通する供給通路25と、ボトムキャップ11内に設けられて供給通路25を通じてタンクTからロッド側室R1へ作動油を供給可能なポンプPと、ボトムキャップ11に取付けられてポンプPを駆動するモータMと、供給通路25の途中であってポンプPとロッド側室R1との間に設置されてポンプPからロッド側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ26とを備えている。
【0070】
供給通路25は、ロッドガイド8およびボトムキャップ11の内部に設けられる通路とともにロッドガイド8とボトムキャップ11に架け渡されるパイプ27内とで形成されており、ロッド側室R1とタンクTとを連通している。
【0071】
ポンプPは、ボトムキャップ11内に設置されており、本実施の形態では供給通路25の途中に設けられるギアポンプとされている。また、モータMは、ボトムキャップ11に取付けられており、ポンプPの駆動軸に動力を与えるようになっている。ポンプPは、モータMによって駆動されるとタンクTから作動油を吸込んでロッド側室R1へ供給する。なお、ポンプPはギアポンプ以外のポンプとされてもよい。さらに、モータMは、減速機を備えていてもよく、その場合には減速機の出力シャフトをポンプPに連結すればよい。また、ポンプPおよびモータMは、ロッドガイド8に設置されてもよい。
【0072】
このように構成されたシリンダ装置C3では、モータMでポンプPを駆動しつつ、第一開閉弁21を連通ポジションとし第二開閉弁23を遮断ポジションとすると、第一通路20によってロッド側室R1とピストン側室R2とが連通状態におかれて両者にポンプPから作動油が供給される。作動油の供給によって、ロッド側室R1およびピストン側室R2の容積の総和が増大し、ロッド2がシリンダ1から図6中左方へ押し出されてシリンダ装置C3は伸長作動を呈する。ロッド側室R1内およびピストン側室R2内の圧力が減衰バルブ15の開弁圧を上回ると、減衰バルブ15が開弁して作動油が排出通路5および液室Lを介してタンクTへ排出される。よって、ロッド側室R1内およびピストン側室R2内の圧力は、減衰バルブ15の開弁圧と等しくなるようにコントロールされる。よって、シリンダ装置C3は、ピストン3におけるピストン側室R2側とロッド側室R1側の受圧面積差に前記した減衰バルブ15の開弁圧を乗じた値に等しい伸長方向の推力を発揮する。また、シリンダ装置C3が発生する推力は、減衰バルブ15へ与える電流量の調整によって調整される。
【0073】
他方、シリンダ装置C3では、モータMでポンプPを駆動しつつ、第一開閉弁21を遮断ポジションとし第二開閉弁23を連通ポジションとすると、ロッド側室R1のみに作動油が供給されてロッド側室R1が拡大し、反対に収縮するピストン側室R2内からは連通状態とされる第二通路22と通じて作動油がタンクTへ排出される。すると、ピストン3が図6中右方へ押されてシリンダ装置C3は収縮作動を呈する。この場合、ピストン側室R2の圧力はタンク圧とり、ロッド側室R1の圧力は減衰バルブ15の開弁圧と等しい圧力にコントロールされる。よって、シリンダ装置C3は、ピストン3におけるロッド側室R1側の受圧面積と減衰バルブ15の開弁圧を乗じた値に等しい収縮方向の推力を発揮する。また、シリンダ装置C3が発生する推力は、減衰バルブ15へ与える電流量の調整によって調整される。
【0074】
このように、ポンプPを駆動しつつ、シリンダ装置C3に出力させたい推力の方向に応じて、第一開閉弁21と第二開閉弁23との一方を連通ポジションとし、第一開閉弁21と第二開閉弁23との他方を遮断ポジションとすれば、シリンダ装置C3は、アクチュエータとして機能する。また、本実施の形態では、減衰バルブ15が可変リリーフバルブであるので、シリンダ装置C3がアクチュエータとして機能する際の推力の制御にも利用される。
【0075】
なお、ポンプPを停止させた場合、シリンダ装置C3は、シリンダ装置C2と同様に、整流通路13、吸込通路6、第一通路20、第二通路22、排出通路5、第一通路20に設けられる第一開閉弁21、第二通路22に設けられる第二開閉弁23および排出通路5に設けられる減衰バルブ15を備えているので、第一開閉弁21と第二開閉弁23の開閉の切換えによってセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能でき、さらには、アンロードの状態となることもできる。なお、シリンダ装置C3は、アンロードの状態では、ポンプPを駆動しても伸長も収縮もせず外力による振動に対して減衰力を発生しない状態となる。
【0076】
このように構成されたシリンダ装置C3でも、ダンパとして機能する場合、伸長作動時に減衰力を発揮する態様では、ロッド側室R1から排出通路5を介してバルブケース4の反ピストン側室側に設けられた液室Lに作動油が排出される。シリンダ装置C3は、ポンプPが排出通路5および液室Lを介さずにタンクTから直接に作動油を吸い込んでロッド側室R1へ供給するので、排出通路5を通じて液室Lへ流入する作動油量をポンプPの駆動により減少することがない。よって、推力を発生するためにポンプPを搭載したシリンダ装置C3にあっても、一実施の形態のシリンダ装置Cと同様に、液室Lの圧力を高めつつピストン側室R2へ強制的に気体の巻き込みの無い作動油を供給できるので、高速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮できる。
【0077】
なお、シリンダ装置C,C1,C2,C3におけるロッドガイド8、バルブケース4およびボトムキャップ11の形状および構造は任意に変更可能であり、それぞれ複数の部品で形成されてもよい。また、シリンダ装置C,C1,C2,C3の用途は鉄道車両の振動抑制用途のほかにも、建築物、機械の振動抑制、車両の振動抑制等といった種々の用途に利用できる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・シリンダ、2・・・ロッド、3・・・ピストン、4・・・バルブケース、4e・・・切欠(通路)、5・・・排出通路、6・・・吸込通路、6a・・・ポート、7・・・チェックバルブ、8・・・ロッドガイド、11・・・ボトムキャップ、11c・・・キャップ内通路、13・・・整流通路、15・・・減衰バルブ、20・・・第一通路、21・・・第一開閉弁、22・・・第二通路、23・・・第二開閉弁、25・・・供給通路、C,C1,C2,C3・・・シリンダ装置、L・・・液室、P・・・ポンプ、R1・・・ロッド側室、R2・・・ピストン側室、T・・タンク、VC・・・仮想円
図1
図2
図3
図4
図5
図6