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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】モータロック制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20231129BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231129BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231129BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L3/00 H
B60T7/12 B
B60T13/74 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020115536
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013162
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 好史
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232485(JP,A)
【文献】特開2002-152903(JP,A)
【文献】特開2009-23378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 3/00
B60T 13/74
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
登り勾配路において車両の駆動源である電動モータがモータロック状態になった場合に、前記電動モータのトルクの発生を禁止するとともに前記車両の電動パーキングブレーキを作動させるモータロック制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、前記モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、前記モータロック制御を解除する、
モータロック制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、前記モータロック制御を解除して、車両が定速で後退するように前記電動モータを駆動制御する、
請求項1に記載のモータロック制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、平坦路又は下り勾配において前記電動モータがモータロック状態になった場合は、前記モータロック制御を行わない、
請求項1又は2に記載のモータロック制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源である電動モータがモータロック状態になった場合に車両のモータロック制御を行うモータロック制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された駆動力制御装置は、坂道での発進時においてモータロック状態となり、かつ、インバータ回路の温度が所定温度以上である場合に、電動モータのトルク発生を禁止させ、更にブレーキを作動させて車両のずり下がりを防止するモータロック制御を行う。その後、インバータ回路の温度が所定温度以上になると、モータロック制御を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-232485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、登り勾配路においてモータロック状態になった場合、ドライバは、車両の周囲の状況等から、車両をずり下げたいと考えることがある。しかしながら、特許文献1に記載された駆動力制御装置では、一旦モータロック制御が行われると、インバータ回路の温度が所定温度以上になるまではモータロック制御が解除されない。一方で、ドライバが、シフトレバーを操作してギアをニュートラル又はバックに切り替えれば、インバータ回路の温度が所定温度以上になる前に車両をずり下げることは可能であると考えられる。しかしながら、このような操作は、ドライバにとって極めて煩雑な操作である。
【0005】
そこで、本発明は、モータロック制御の解除を簡易に行うことができるモータロック制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモータロック制御装置は、登り勾配路において車両の駆動源である電動モータがモータロック状態になった場合に、電動モータのトルクの発生を禁止するとともに車両の電動パーキングブレーキを作動させるモータロック制御を行う制御部を備え、制御部は、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除する。
【0007】
このモータロック制御装置では、登り勾配路において電動モータがモータロック状態になると、電動モータのトルクの発生を禁止するとともに電動パーキングブレーキを作動させるモータロック制御が行われるため、電動モータの故障を抑制することができる。ここで、登り勾配路においてモータロック状態になった車両をずり下げたい場合、ドライバは、意識的又は無意識的にアクセルオフする。そこで、このモータロック制御装置は、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除する。このように、車両をずり下げたいときにドライバが意識的又は無意識的に行う操作によりモータロック制御を解除することができるため、モータロック制御の解除を簡易に行うことができる。
【0008】
制御部は、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除して、車両が定速で後退するように電動モータを駆動制御する。このモータロック制御装置では、登り勾配路においてモータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除して、車両が定速で後退するように電動モータを駆動制御する。これにより、勾配路の傾斜角度が大きい場合等に、車両のずり下がり速度が過大になるのを抑制することができる。
【0009】
制御部は、平坦路又は下り勾配において電動モータがモータロック状態になった場合は、モータロック制御を行わない。平坦路又は下り勾配路においてモータロック状態になる場合としては、車両の車輪が縁石等の突起に引っ掛かっている場合が考えられる。このような場合は、ドライバは、登り勾配路においてモータロック状態になった場合とは異なり、車両の前進を意図していると考えられる。そこで、このモータロック制御装置では、平坦路又は下り勾配においてモータロック状態になった場合は、モータロック制御を行わない。これにより、ドライバの意図に沿った電動モータの駆動を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータロック制御の解除を簡易に行うことができるモータロック制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るモータロック制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】車両の模式図である。
図3】実施形態に係るモータロック制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
図4】モータロック制御を説明するためのタイムチャートである。
図5】モータロック制御を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るモータロック制御装置2は、車両1に搭載されている。モータロック制御装置2は、車両1の駆動源である電動モータ3と、車両1の電動パーキングブレーキ4と、制御部10と、を備える。車両1は、少なくとも電動モータ3を駆動源とした車両であればよく、例えば、電動モータ3のみを駆動源とした電気車両であってもよく、電動モータ3及びエンジン(不図示)の双方を駆動源としたハイブリット車両であってもよい。
【0014】
電動モータ3は、車両1の駆動輪に直接的又は間接的に連結される出力軸(不図示)を有しており、電流が供給されることにより、出力軸を回転させて車両1の駆動輪を回転駆動するモータである。電動モータ3は、制御部10により駆動制御される。電動モータ3は、力行及び回生の双方を行い得る電動発電機(モータージェネレータ)であってもよい。電動モータ3としては、公知の様々な電動モータを用いることができる。
【0015】
電動パーキングブレーキ4は、車両1の停止状態を維持するためのブレーキである。電動パーキングブレーキ4は、制御部10により駆動制御される。電動パーキングブレーキ4としては、公知の様々な電動パーキングブレーキを用いることができる。
【0016】
制御部10は、CPU、ROM、RAM等を有する電子制御ユニット(ECU)である。制御部10では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。制御部10は、それぞれ複数の電子制御ユニットにより構成されていてもよく、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0017】
制御部10は、電動モータ3及び電動パーキングブレーキ4と電気的に接続されており、電動モータ3及び電動パーキングブレーキ4を駆動制御する。制御部10は、車両情報取得部11と、路面勾配取得部12と、電動モータ制御部13と、電動パーキングブレーキ制御部14と、モータロック制御部15と、を備える。
【0018】
車両情報取得部11は、車両1の様々な情報を取得する。車両情報取得部11が取得する車両1の様々な情報を、車両情報という。車両情報取得部11は、1つで構成されていてもよく、複数で構成されていてもよい。車両情報取得部11は、車両情報として、アクセル開度、パーキングブレーキ操作、電動モータ3の回転数(出力軸の回転数)、車両1の重量(以下「車両重量」という。)、トランスミッション(不図示)のギア段(以下「ギア比」という。)、デファレンシャルギアのギア比(以下「デフ比」という。)、車両1のタイヤ(不図示)の有効半径、車両1の前面投影面積、等を取得する。
【0019】
アクセル開度は、例えば、車両1のアクセルペダル(不図示)のシャフト部分に設けられたアクセルペダルセンサ(不図示)からの信号に基づき取得することができる。
【0020】
パーキングブレーキ操作は、例えば、車両1のパーキングブレーキボタン又はパーキングブレーキレバーに設けられたブレーキセンサ(不図示)からの信号に基づき取得することができる。
【0021】
電動モータ3の回転数は、例えば、電動モータ3の出力軸に設けられたロータリーエンコーダ(不図示)の信号に基づき取得することができる。
【0022】
車両重量は、例えば、車両1の積み荷の重量を検出する重量センサ(不図示)からの信号、車両1の加速度を検出する加速度センサ(不図示)からの信号、等に基づき取得することができる。つまり、予め積み荷が無い場合の車両重量をメモリに登録しておき、このメモリから読み出した車両重量に、重量センサが検出した積み荷の重量を加えることで、車両重量を取得することができる。また、車両1を加減速した際に加速度センサが検出した加速度から車両重量を推定することで、車両重量を取得することができる。
【0023】
トランスミッションのギア比は、例えば、トランスミッションの自動変速を行うトランスミッションECU(不図示)からの信号に基づき取得することができる。
【0024】
デファレンシャルギアのデフ比、タイヤの有効半径、及び車両1の前面投影面積は、走行状態によって大きく変わらないため、例えば、予めこれらの情報をメモリに登録しておき、このメモリからこれらの情報を読み出すことで取得することができる。
【0025】
路面勾配取得部12は、車両1が走行している路面の勾配を検出する。路面勾配取得部12は、路面の勾配として、勾配角度を検出する。また、路面勾配取得部12は、路面の勾配として、登り勾配路、平坦路、下り勾配路、の何れかを検出してもよい。路面の勾配は、例えば、車両1に搭載された加速度センサ(不図示)からの信号に基づいて取得することができる。
【0026】
電動モータ制御部13は、車両情報取得部11が取得したアクセル開度に基づいて、電動モータ3を駆動制御する。車両情報取得部11が取得したアクセル開度は、電動モータ3に対するドライバの要求トルクとなる。このため、電動モータ制御部13は、電動モータ3に発生するトルクがドライバの要求トルクとなるように、電動モータ3を駆動制御する。
【0027】
電動パーキングブレーキ制御部14は、車両情報取得部11が取得したパーキングブレーキ操作に基づいて、電動パーキングブレーキ4を駆動制御する。
【0028】
モータロック制御部15は、登り勾配路において電動モータ3がモータロック状態になった場合に、モータロック制御を行う。登り勾配路であるか否かは、例えば、路面勾配取得部12が検出した路面の勾配に基づいて判断することができる。モータロック状態とは、電動モータ3が発生するトルクが車両1の走行抵抗トルク以下となって、電動モータ制御部13の駆動制御により電動モータ3にトルクが発生しているが、電動モータ3が回転していない又は殆ど回転していない状態をいう。モータロック状態になっているか否かは、例えば、電動モータ制御部13の制御情報と、車両情報取得部11が取得した電動モータ3の回転数と、に基づいて判断することができる。モータロック制御は、モータロック状態における電動モータ3の負荷を軽減するための制御であって、電動モータ3のトルクの発生を禁止するとともに、電動パーキングブレーキ4を作動させる制御である。車両1の走行抵抗トルクとは、車両1の走行抵抗を電動モータ3のトルクに換算したものである。
【0029】
図2に示すように、車両1が駆動力Fで走行している場合の車両1の走行抵抗Fresは、例えば、車両1の車輪の転がり抵抗Frotと、車両1の空気抵抗FAirと、勾配抵抗FGradと、の総和により表される。つまり、Fres=Frot+FAir+FGradとなる。なお、車両1の走行抵抗Fresは、これらの抵抗のうちの一部の抵抗であってもよく、他の抵抗を加えてもよい。
【0030】
ここで、車両質量をm、重力加速度をg、転がり抵抗係数をμrot、空気密度をρ、車両1の前面投影面積をA、空気抵抗係数をC、路面の勾配をθ(又はGrad)とした場合、転がり抵抗Frotは、例えば、次の式(1)により表され、空気抵抗FAirは、次の式(2)により表され、勾配抵抗FGradは、例えば、次の式(3)により表される。
【0031】
【数1】
【0032】
車両1のタイヤの有効半径をrwh、トランスミッションのギア比をG、デファレンシャルギアのデフ比をGとした場合、車両1の走行抵抗トルクTresは、例えば、Tres=(Fres×rwh)/G/Gで表される。
【0033】
このように、登り勾配路において電動モータ3がモータロック状態になると、電動モータ3が過負荷状態となって故障する可能性があることから、モータロック制御部15は、モータロック制御を行うことで、電動モータ3の負荷を軽減する。
【0034】
一方、モータロック制御部15は、平坦路又は下り勾配において電動モータ3がモータロック状態になった場合は、モータロック制御を行わない。つまり、電動モータ3のトルクの発生を許可するとともに、電動パーキングブレーキ4を作動させない。
【0035】
モータロック制御部15は、モータロック制御が行われている際に、アクセル開度が大きくなる等して、モータロック制御を行わない場合に電動モータ3に発生するトルクが車両1の走行抵抗トルクよりも大きくなった場合は、モータロック制御を解除する。モータロック制御を解除するとは、電動モータ3のトルクの発生を許可するとともに、電動パーキングブレーキ4の作動を解除することをいう。
【0036】
また、モータロック制御部15は、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除する。つまり、モータロック制御は、登り勾配路において電動モータ3がモータロック状態になった場合に行われるが、このようなモータロック状態においてドライバがアクセルオフすると、モータロック制御が解除される。アクセルオフは、アクセルペダルが踏み込まれていない状態をいう。アクセルオフされたか否かは、例えば、車両情報取得部11が取得したアクセル開度に基づいて判断することができる。
【0037】
モータロック制御部15は、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除するだけでなく、更に、車両1が定速で後退するように電動モータ3を駆動制御してもよい。以下では、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除して、車両1が定速で後退するように電動モータ3を駆動制御するものとして説明する。車両1が定速で後退するように電動モータ3を駆動制御することを、定速制御という。
【0038】
一方、平坦路又は下り勾配において電動モータ3がモータロック状態になった場合は、車両の車輪が縁石等の突起に引っ掛かっていると考えられる。このため、モータロック制御部15は、平坦路又は下り勾配において電動モータ3がモータロック状態になった場合は、モータロック制御を行わない。つまり、電動モータ3のトルクの発生を許可するとともに、電動パーキングブレーキ4を作動させない。
【0039】
次に、図3を参照して、モータロック制御装置2の処理動作の一例について説明する。なお、以下に示すモータロック制御装置2の処理動作は、制御部10により行われる。
【0040】
まず、制御部10は、モータロック制御フラグがONになっているか否かを判定する(ステップS1)。モータロック制御フラグは、電動モータ3のトルクの発生を禁止するためのフラグであり、モータロック制御が行われている間は、モータロック制御フラグがONになっている。このため、モータロック制御フラグがONになっていると、電動モータ3のトルクの発生が禁止され、モータロック制御フラグがOFFになっていると、電動モータ3のトルクの発生が許可される。
【0041】
モータロック制御フラグがONになっていない場合(ステップS1:NO)、制御部10は、電動モータ3に発生しているトルクTが、0よりも大きい許容トルクTlockよりも大きく、かつ、電動モータ3の回転数ωが略0であるか否か、を判定する(ステップS2)。許容トルクTlockは、電動モータ3がモータロック状態になっているときに、電動モータ3に許容されるトルクである。電動モータ3に許容されるトルクとは、電動モータ3が故障しない程度の負荷状態となるトルクである。電動モータ3の回転数ωが略0とは、電動モータ3が回転していない又は殆ど回転していない状態をいう。
【0042】
電動モータ3に発生するトルクTが許容トルクTlock以下、又は、電動モータ3の回転数ωが略0でない場合(ステップS2:NO)、制御部10は、ドライバの要求トルクTdrvが0であるか否かを判定する(ステップS3)。要求トルクTdrvが0とは、ドライバがアクセルを踏み込んでおらず、アクセル開度が0である状態をいう。
【0043】
要求トルクTdrvが0でない場合(ステップS3:NO)、制御部10は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から処理を行う。要求トルクTdrvが0である場合(ステップS3:YES)、制御部10は、定速制御を解除して(ステップS4)、電動モータ3にドライバの要求トルクTdrvに対応するトルクTが発生するように、電動モータ3を駆動制御する(ステップS5)。定速制御は、車両1が定速で後退するように電動モータ3を駆動する制御であり、後述するステップS16において行われる。このため、以前に行ったステップS16の定速制御が現在も継続して行われている場合は、ステップS4で定速制御を解除する。一方、ステップS16の定速制御が行われていない場合は、ステップS4で特に何もしなくてもよい。そして、制御部10は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から処理を行う。
【0044】
一方、上述したステップS2において、電動モータ3に発生するトルクTが許容トルクTlockより大きく、かつ、電動モータ3の回転数ωが略0である場合(ステップS2:YES)、制御部10は、車両1の接地路面の勾配角度Gradが0°よりも大きいか否か、つまり、車両1の接地路面が登り勾配路であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0045】
車両1の接地路面の勾配角度Gradが0°以下、つまり、車両1の接地路面が平坦路又は下り勾配路である場合(ステップS6:NO)、制御部10は、電動モータ3に許容トルクTlockに対応するトルクTが発生するように、電動モータ3を駆動制御する(ステップS7)。
【0046】
車両1の接地路面の勾配角度Gradが0°より大きい、つまり、車両1の接地路面が登り勾配路である場合(ステップS6:YES)、制御部10は、モータロック制御フラグをONにして電動モータ3のトルクの発生を禁止し(ステップS8)、電動パーキングブレーキ4を作動させる(ステップS9)。そして、制御部10は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から処理を行う。
【0047】
一方、上述したステップS1において、モータロック制御フラグがONになっている場合(ステップS1:YES)、制御部10は、ドライバの要求トルクTdrvが走行抵抗トルクTresよりも大きいか否かを判定する(ステップS10)。走行抵抗トルクTresは、定期的に又は任意のタイミングで求めてもよく、ステップS10を行う際に求めてもよい。走行抵抗トルクTresを定期的に又は任意のタイミングで求める場合は、ステップS10では、直近に求めた走行抵抗トルクTresを用いる。
【0048】
ドライバの要求トルクTdrvが走行抵抗トルクTresよりも大きい場合(ステップS10:YES)、制御部10は、電動パーキングブレーキ4の作動を解除し(ステップS11)、モータロック制御フラグをOFFにして、電動モータ3にドライバの要求トルクTdrvに対応するトルクTが発生するように、電動モータ3を駆動制御する(ステップS12)。そして、制御部10は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から処理を行う。
【0049】
ドライバの要求トルクTdrvが走行抵抗トルクTres以下の場合(ステップS10:NO)、制御部10は、ドライバの要求トルクTdrvが0であるか否か、つまり、ドライバがアクセルオフしたか否かを判定する(ステップS13)。
【0050】
ドライバの要求トルクTdrvが0でない場合、つまり、ドライバがアクセルオフしていない場合(ステップS13:NO)、制御部10は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から処理を行う。一方、ドライバの要求トルクTdrvが0である場合、つまり、ドライバがアクセルオフした場合(ステップS13:YES)、制御部10は、モータロック制御フラグをOFFにして電動モータ3のトルクの発生を許可し(ステップS14)、電動パーキングブレーキ4の作動を解除する(ステップS15)。そして、制御部10は、車両1が定速で後退するように電動モータ3を駆動制御する定速制御を行う(ステップS16)。ステップS16の定速制御では、例えば、車両1の制動装置(不図示)も駆動制御することにより、車両1の後退速度を制御してもよい。そして、制御部10は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から処理を行う。
【0051】
次に、図4及び図5を参照して、モータロック制御のタイムチャートの一例について説明する。
【0052】
図4に示す例では、時間t1において、電動モータ3がモータロック状態になってモータロック制御が行われると、電動モータ3のトルクの発生が禁止されることで電動モータ3が発生するトルクが0となるとともに、電動パーキングブレーキ4が作動する。その後、時間t2において、ドライバがアクセルオンしても、ドライバの要求トルクTdrvが走行抵抗トルクTresよりも大きくなるまでは、電動モータ3のトルクの発生が禁止された状態が維持されるとともに、電動パーキングブレーキ4が作動した状態が維持される。その後、時間t3において、ドライバの要求トルクTdrvが走行抵抗トルクTresよりも大きくなると、モータロック制御が解除されて、電動モータ3からトルクが発生されるとともに、電動パーキングブレーキ4が解除される。
【0053】
図5に示す例では、時間t4において、電動モータ3がモータロック状態になってモータロック制御が行われると、電動モータ3のトルクの発生が禁止されることで電動モータ3が発生するトルクが0となるとともに、電動パーキングブレーキ4が作動する。その後、時間t5において、アクセルオフされると、モータロック制御が解除されて、車両1が定速で後退するように電動モータ3にトルクが発生されるとともに、電動パーキングブレーキ4が解除される。
【0054】
このように、本実施形態に係るモータロック制御装置2では、登り勾配路において電動モータ3がモータロック状態になると、電動モータ3のトルクの発生を禁止するとともに電動パーキングブレーキ4を作動させるモータロック制御が行われるため、電動モータ3の故障を抑制することができる。ここで、登り勾配路においてモータロック状態になった車両1をずり下げたい場合、ドライバは、意識的又は無意識的にアクセルオフする。そこで、このモータロック制御装置2は、モータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除する。このように、車両1をずり下げたいときにドライバが意識的又は無意識的に行う操作によりモータロック制御を解除することができるため、モータロック制御の解除を簡易に行うことができる。
【0055】
また、このモータロック制御装置2では、登り勾配路においてモータロック制御が行われている際にアクセルオフされると、モータロック制御を解除して、車両1が定速で後退するように電動モータを駆動制御する。これにより、勾配路の傾斜角度が大きい場合等に、車両1のずり下がり速度が過大になるのを抑制することができる。
【0056】
平坦路又は下り勾配路においてモータロック状態になる場合としては、車両1の車輪が縁石等の突起に引っ掛かっている場合が考えられる。このような場合は、ドライバは、登り勾配路においてモータロック状態になった場合とは異なり、車両1の前進を意図していると考えられる。そこで、このモータロック制御装置では、平坦路又は下り勾配においてモータロック状態になった場合は、モータロック制御を行わない。これにより、ドライバの意図に沿った電動モータ3の駆動を行うことができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…モータロック制御装置、3…電動モータ、4…電動パーキングブレーキ、10…制御部、11…車両情報取得部、12…路面勾配取得部、13…電動モータ制御部、14…電動パーキングブレーキ制御部、15…モータロック制御部。
図1
図2
図3
図4
図5