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  • 特許-キャリアプレート及び対象物移動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】キャリアプレート及び対象物移動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20231129BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20231129BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F11/48 B
E05F15/689
B60J1/17 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020170129
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061888
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 太一
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0007494(US,A1)
【文献】特開2003-336439(JP,A)
【文献】実開昭63-083383(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第10252055(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0248495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38,11/48
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動対象物が取り付けられる取り付け部と、
ガイドレール上で移動するガイド部と、
前記移動対象物を移動させる駆動力を伝達する、前記ガイドレールの下端に向かう第1の駆動力伝達部材を収容する第1の溝部と、前記ガイドレールの上端に向かう第2の駆動力伝達部材を収容する第2の溝部とが形成された収納部と、
を備え、
前記第1の駆動力伝達部材と前記第2の駆動力伝達部材は所定の箇所において交差し、
前記第1の溝部は、所定の曲げ半径の湾曲した部分を有し、前記第1の溝部の湾曲した部分の側面は前記第1の駆動力伝達部材に接することにより、前記所定の箇所において前記第2の駆動力伝達部材に対する前記第1の駆動力伝達部材の動きが抑制され、
前記第2の溝部は、直線形状である、
キャリアプレート。
【請求項2】
前記湾曲した部分は、前記第1の溝部の長手方向において、該第1の溝部の半分よりも前記所定の箇所側に設けられる、請求項1に記載のキャリアプレート。
【請求項3】
前記第1の溝部の曲げ半径を規定する円の中心は、前記収納部の外側に位置している、請求項1又は2に記載のキャリアプレート。
【請求項4】
前記第1の溝部の湾曲した部分は、前記所定の箇所から前記収納部の内部に向かう方向に凸となる形状である、請求項1から3の何れか一項に記載のキャリアプレート。
【請求項5】
前記駆動力伝達部材の引張りにより移動して前記移動対象物を移動させる請求項1からの何れか一項に記載のキャリアプレートを備える対象物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアプレート及び対象物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている従来のキャリアプレートは、駆動力伝達部材であるケ―ブルを案内するガイド部を備える。ガイド部には、ケ―ブルを収納する直線形状の複数の溝部が形成される。
【0003】
これらの溝部は、ケーブルが交差するように形成される。ガイド部の外部に引き出されたケーブルは、ガイドレールの上端部と下端部のそれぞれに設けられた方向転換部材を介して、モータなどの駆動部に接続される。駆動部によるケ―ブルの巻き取りと送り出しが行われることによって、ガイド部は、ガイドレール上を昇降移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-190229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に示されるような従来技術では、ガイド部がガイドレール上を昇降移動して、ガイド部と方向転換部材との相対的な位置が変化すると、ガイド部の溝部から引き出されるケーブルの延伸方向が変化する。
【0006】
例えば、キャリアプレートがガイドレールの上下方向の中央部付近に位置する場合、ガイドレールの下端部に設けられる方向転換部材は、相対的にキャリアプレートの下側に位置する。この場合、ガイド部の溝部から引き出されるケーブルの延伸方向は、ガイドレールの延伸方向と略平行な状態になる。
【0007】
一方、キャリアプレートがガイドレールの下端部付近に位置する場合、ガイドレールの下端部に設けられる方向転換部材は、相対的にキャリアプレートの横側に位置する。この場合、ガイド部の溝部から引き出されるケーブルの延伸方向は、ガイドレールの延伸方向と略平行な状態にならず、ガイドレールの延伸方向に対して一定角度で傾斜した状態になる。
【0008】
このようにキャリアプレートから引き出されたケーブルの延伸方向が変化すると、ガイド部の溝部から引き出されて互いに交差しているケーブル同士が擦れて、音が発生するという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、ケーブル同士が擦れ合うことを軽減できるキャリアプレート及び対象物移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガイドレール上を移動可能なキャリアプレートは、移移動対象物が取り付けられる取り付け部と、ガイドレール上で移動するガイド部と、前記移動対象物を移動させる駆動力を伝達する、前記ガイドレールの下端に向かう第1の駆動力伝達部材を収容する第1の溝部と、前記ガイドレールの上端に向かう第2の駆動力伝達部材を収容する第2の溝部とが形成された収納部と、を備え、前記第1の駆動力伝達部材と前記第2の駆動力伝達部材は所定の箇所において交差し、前記第1の溝部は、所定の曲げ半径の湾曲した部分を有し、前記第1の溝部の湾曲した部分の側面は前記第1の駆動力伝達部材に接することにより、前記所定の箇所において前記第2の駆動力伝達部材に対する前記第1の駆動力伝達部材の動きが抑制され、前記第2の溝部は、直線形状である
【0011】
本発明の対象物移動装置は、前記ケーブルの引張りにより昇降して前記移動対象物である窓ガラスを昇降させるキャリアプレートを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーブル同士が擦れ合うことを軽減できるキャリアプレート及び対象物移動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る対象物移動装置100の構成例を示す図
図2】キャリアプレート40の構成例を示す図
図3】キャリアプレート40の収納部42を拡大して示す図
図4】キャリアプレート40の収納部42を拡大して示す図
図5】対象物移動装置100の動作を説明するための図
図6図6はケーブル50c11及びケーブル50c12の延伸方向の違いを説明するための図
図7】本開示の実施の形態に係るキャリアプレート40の比較例であるキャリアプレート40Aの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る対象物移動装置100の構成例を示す図である。
【0015】
対象物移動装置100は、車両のドアのインナーパネルに取り付けられており、キャリアプレート40を移動させることにより、キャリアプレート40に取り付けられた窓ガラスを移動させるウインドレギュレータ等に適用される。本実施の形態では、移動対象物は、キャリアプレート40に取り付けられる窓ガラスとしている。適用例がウインドレギュレータの場合、キャリアプレート40の移動方向は、移動対象物である窓ガラスの昇降方向を基準として規定される上下方向である。
【0016】
対象物移動装置100は、2つのガイドレール10と、4つのプーリーブラケット20と、駆動部30と、2つのキャリアプレート40と、ケーブル50とを備える。
【0017】
(ガイドレール10の構成)
2つのガイドレール10は、それぞれが窓ガラスの移動方向に延伸し、互いに略平行に配置される。ガイドレール10は、キャリアプレート40を移動可能に支持し、キャリアプレート40の移動を案内する。
【0018】
(プーリーブラケット20の構成)
プーリーブラケット20は、ケーブル50の移動方向を転換するプーリーの回転軸を支持する部材である。プーリーブラケット20は、ガイドレール10の上端部と下端部のそれぞれに設けられている。
【0019】
(ケーブル50の構成)
動力伝達部材であるケーブル50は、駆動部30の駆動力をキャリアプレート40に伝達するための部材であり、例えば、金属素線、樹脂繊維素線などを撚り合わせた可撓性を有するワイヤである。ケーブル50は、3本のケーブル50a、50b、50cにより構成される。
【0020】
ケーブル50aは、一端が駆動部30に接続される。このケーブル50aは、駆動部30から図1の左側に示されるガイドレール10の上端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸び、さらに、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート40に向かって伸びている。そして、ケーブル50aの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート40に接続される。
【0021】
ケーブル50bは、一端が図1の左側に示されるガイドレール10に設けられるキャリアプレート40に接続される。このケーブル50bは、当該キャリアプレート40から当該ガイドレール10の下端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸びている。さらに、ケーブル50bは、当該プーリーブラケット20から、図1の右側に示されるガイドレール10の上端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸びている。そして、ケーブル50bの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート40に接続される。
【0022】
ケーブル50cは、一端が駆動部30に接続される。このケーブル50cは、駆動部30から図1の右側に示されるガイドレール10の下端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸び、さらに、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート40に向かって伸びている。そして、ケーブル50cの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート40に接続される。
【0023】
なお、ケーブル50の全体の内、駆動部30から左右のガイドレール10に設けられるプーリーブラケット20までの部分は、ケーブル50を保護するためのアウターケーシング51に挿入されている。
【0024】
(駆動部30の構成)
駆動部30は、ケーブル50の巻き取りと繰り出しとを行うことによって、キャリアプレート40を移動させる装置である。
【0025】
駆動部30は、例えば、ケーブル50が巻かれるドラムと、モータと、モータの回転をドラムに伝達するウォームギヤ等の動力伝達部とを備える。
【0026】
モータが順方向に回転すると、モータの回転運動が動力伝達部を介してドラムに伝達されることにより、ドラムが順方向に回転する。この場合、ケーブル50aがドラムに巻き取られて、ケーブル50cがドラムから繰り出される。これにより、2つのキャリアプレート40が上昇する。
【0027】
一方、モータが逆方向に回転すると、ドラムが逆方向に回転するため、この場合、ケーブル50cがドラムに巻き取られて、ケーブル50aがドラムから繰り出される。これにより、2つのキャリアプレート40が下降する。
【0028】
(キャリアプレート40の構成)
次に図2図4を参照してキャリアプレート40の構成について説明する。なお、本実施の形態では、図1の右側に示されるキャリアプレート40の構成例について説明するが、図1の左側に示されるキャリアプレート40にも図2図4に示す構成例を適用可能である。
【0029】
図2はキャリアプレート40の構成例を示す図である。図3及び図4はキャリアプレート40の収納部42を拡大して示す図である。
【0030】
キャリアプレート40は、窓ガラスを保持しながら、ガイドレール10上で窓ガラスを昇降移動させる部材である。キャリアプレート40は、窓ガラスを取り付ける41と、ケーブル50を収納する収納部42と、ガイドレール10上で昇降移動するガイド部43とを備える。
【0031】
(ガイド部43の構成)
ガイド部43には取り付け部41及び収納部42が固定される。ガイド部43は、例えば、ガイドレール10に形成された爪部がガイド部43に嵌合することにより、ガイドレール10に移動可能に取り付けられる。
【0032】
(収納部42の構成)
収納部42には、ケーブル50b及びケーブル50cが交差するようにケーブル50b及びケーブル50cを収納する2つの溝部422、425と、ケーブル50b及びケーブル50cの端部が係り止めされる係止穴421、424とが形成される。
【0033】
係止穴421は、ケーブル50cの端部に設けられるケーブルエンド50c1を収納するための穴である。溝部422は、係止穴421と連通してケーブル50cを収納する湾曲形状の溝である。
【0034】
係止穴424は、ケーブル50bの端部に設けられるケーブルエンド50b1を収納するための穴である。溝部425は、係止穴424と連通して、ケーブル50bを収納する直線形状の溝である。なお、溝部425は、直線形状の溝に限定されず、溝部422と同様に湾曲形状の溝としてもよい。
【0035】
そして、図3に示すように、溝部422の開口部422aは、溝部425の開口部425aと対向する位置に形成される。
【0036】
また、図2に示すように、溝部422の開口部422aから引き出されたケーブル50cと、溝部425の開口部425aから引き出されたケーブル50bは、開口部422a及び開口部425aが対向する箇所1で互いに交差する。そして、その箇所1において、ケーブル50bとケーブル50cは互いに接触している。
【0037】
さらに、図4に示すように、溝部422の係止穴421から開口部422aまでの区間の内、一部の区間に湾曲部422bが形成される。湾曲部422bは、ケーブル50bとケーブル50cが互いに交差する箇所1(図2参照)から、収納部42の内部に向かう方向D(図2参照)に凸となる形状である。当該方向Dは、例えば、収納部42からガイド部43に向かう方向に等しい。
【0038】
また、図4に示すように、湾曲部422bの曲率半径Rを規定する円の中心をCPとした場合、中心CPは、収納部42の側面42aに対向するように収納部42の外側に位置する。そして、湾曲部422bは、その側面422b1がケーブル50cの側面に接する。
【0039】
湾曲部422bは、例えば、溝部422の長手方向において、溝部422の半分よりもケーブル50が交差する箇所1側に設けられる。
【0040】
(対象物移動装置100の動作)
次に図5及び図6を参照して対象物移動装置100の動作を説明する。図5は対象物移動装置100の動作を説明するための図である。
【0041】
図5の上側には、ガイドレール10上の所定の位置P1に存在するキャリアプレート40から引き出されているケーブル50の状態が示される。位置P1は、例えば、ガイドレール10の上下方向の中央部付近の位置である。
【0042】
キャリアプレート40が位置P1に存在するときに、ケーブル50cを巻き取るように駆動部30が駆動した場合、キャリアプレート40は、ガイドレール10を下降するように移動する。
【0043】
図5の下側には、位置P1よりも下側の位置P2に存在するキャリアプレート40から引き出されているケーブル50の状態が示される。位置P2は、例えば、ガイドレール10の下端部付近の位置である。
【0044】
(ケーブル50cの延伸方向)
ここで、図5に示すようにキャリアプレート40の位置が変化すると、キャリアプレート40から引き出されるケーブル50cの延伸方向が変化する。本発明の実施の形態では、延伸方向が変化する前後のケーブル50cを区別するため、キャリアプレート40が位置P1に存在するときのケーブル50cを「ケーブル50c11」と称し、キャリアプレート40が位置P2に存在するときのケーブル50cを「ケーブル50c12」と称する。
【0045】
図6を参照してケーブル50c11及びケーブル50c12の延伸方向が変化する様子について説明する。図6はケーブル50c11及びケーブル50c12の延伸方向の違いを説明するための図である。
【0046】
キャリアプレート40が図5に示す位置P1に存在する場合、ガイドレール10の下端部に設けられるプーリーブラケット20は、相対的にキャリアプレート40の下側に位置する。
【0047】
そのため、溝部422から当該プーリーブラケット20に向かって伸びるケーブル50c11の延伸方向は、ガイドレール10の延伸方向と略平行な状態になる。従って、図6に示すように溝部422から引き出されたケーブル50c11は、収納部42の側面42aに接した状態になる。収納部42の側面42aは、ケーブル50と対向し、かつ、ガイドレール10の延伸方向と略平行な面である。
【0048】
一方、キャリアプレート40が図5に示す位置P2に存在する場合、ガイドレール10の下端部に設けられるプーリーブラケット20は、相対的にキャリアプレート40の左側に位置する。従って、溝部422から当該プーリーブラケット20に向かって伸びるケーブル50c12は、ガイドレール10の延伸方向と略平行な状態にならず、収納部42の側面42aに対して一定角度で傾斜した状態になる。
【0049】
このようにケーブル50cの延伸方向が変化すると、ケーブル50bとケーブル50cとが交差する箇所1において、ケーブル50bとケーブル50cが互いに擦れ合って、擦れ音が発生する可能性がある。
【0050】
本実施の形態に係るキャリアプレート40は、溝部422に湾曲部422bを形成することによって、溝部422の開口部422a付近に存在するケーブル50cを強制的に湾曲させた状態で保持することができる。
【0051】
このため、位置P1に存在するキャリアプレート40から引き出されるケーブル50c11がケーブル50bと交差する箇所1での第1延伸方向を、位置P2に存在するキャリアプレート40から引き出されるケーブル50c12がケーブル50bと交差する箇所1での第2延伸方向に設定することができる。
【0052】
従って、キャリアプレート40が移動する前後で、ケーブル50bとケーブル50cが交差する箇所1において、ケーブル50cの延伸方向が変化し難くなり、ケーブル50bとケーブル50cが擦れることを防止できる。
【0053】
溝部422の湾曲部422bには、ケーブル50cが湾曲した状態で収納されるため、溝部422に収納されたケーブル50cの曲げ半径を所定量確保することができる。すなわち、キャリアプレート40が位置P1から位置P2へ移動した場合でもケーブル50が折損に至るような曲げ半径よりも大きな曲げ半径を確保できる。これによりケーブル50の折損を防止することができる。
【0054】
また、キャリアプレート40が位置P1から位置P2へ移動しても、湾曲部422bの側面422b1がケーブル50c12の側面に接することにより、ケーブル50c12とケーブル50bとが交差する箇所1において、ケーブル50c12の動きが抑制される。このため、ケーブル50bとケーブル50cとの擦れによる音を抑制することができる。
【0055】
図7は本開示の実施の形態に係るキャリアプレート40の比較例であるキャリアプレート40Aの構成例を示す図である。比較例のキャリアプレート40Aは、直線形状の溝部422Aを備える。
【0056】
このように、直線形状の溝部422Aを備えキャリアプレート40Aを用いた場合、位置P1に存在するキャリアプレート40Aから引き出されるケーブル50c11がケーブル50bと交差する箇所1での第1延伸方向は、位置P2に存在するキャリアプレート40Aから引き出されるケーブル50c12がケーブル50bと交差する箇所1での第2延伸方向とが異なる。
【0057】
従って、キャリアプレート40Aが移動する前後で、ケーブル50bとケーブル50cが交差する箇所1においてケーブル50cの延伸方向が変化して、ケーブル50bとケーブル50cが擦れるため、音が発生する。図7には、ケーブル50cの延伸方向が変化する前の位置と変化後の位置とのギャップGが示される。
【0058】
この対策のため、例えば、ケーブル50bとケーブル50cとの間に隙間ができるように、キャリアプレート40Aの厚さを大きくしたり、ケーブル同士を結束する結束部材などを利用する方法も採り得る。ただし、この場合、キャリアプレート40Aが大型化し、また対象物移動装置100の製造コストが増加するなどのデメリットが生じ得る。
【0059】
これに対して、本発明の実施の形態に係るキャリアプレート40は、例えばキャリアプレート40のダイキャスト成形時や、キャリアプレート40の切削加工によって、湾曲部422bを容易に形成できる。またキャリアプレート40の寸法を変える必要もない。従って、キャリアプレート40が大型化することなく、また結束部材などが不要である。
【0060】
なお、本発明の実施の形態で詳述した構成は、キャリアプレート40を移動させる装置であれば、どのような装置に用いられてもよく、窓ガラス昇降装置以外のその他の装置に用いることができる。例えば、この構成は、着座状態から歩行可能な姿勢にさせて歩行を支援する歩行支援装置にも適用できる。具体的には、歩行支援装置が備える着座部やハンドルを昇降移動させるために、着座部やハンドルが設置される設置部材に2つのケーブルが交差するように取り付けられている場合がある。この場合、当該設置部材に形成される溝に、本発明の実施の形態で詳述した構成を適用すればよい。
【0061】
なお、本発明の実施の形態では、2つのキャリアプレート40により窓ガラスを支持して昇降させるダブルリフト式の対象物移動装置100の構成例について説明したが、対象物移動装置100は、1つのキャリアプレートにより窓ガラスを支持して昇降させるシングルリフト式の窓ガラス昇降装置に適用することも可能である。
【0062】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
(1)キャリアプレートは、移動対象物が取り付けられる取り付け部と、前記移動対象物を移動させる駆動力を伝達する駆動力伝達部材が交差するように収納する2つの溝部が形成された収納部と、を備え、前記2つの溝部のうちの1つの溝部は、湾曲した部分を有し、前記駆動力伝達部材が交差する箇所の前記駆動力伝達部材の動きを抑制するように、前記湾曲した部分の側面が前記駆動力伝達部材の側面に接する。
【0064】
(2)前記湾曲した部分は、前記1つの溝部の長手方向において、該1つの溝部の半分よりも前記駆動力伝達部材が交差する箇所側に設けられる。
【0065】
(3)前記溝部の曲率半径を規定する円の中心は、前記収納部の外側に位置し、前記溝部は、前記駆動力伝達部材を湾曲した状態で収納する。
【0066】
(4)前記溝部の湾曲した部分は、前記駆動力伝達部材が交差する箇所から収納部の内部に向かう方向に凸となる形状である。
【0067】
(5)前記2つの溝部の全ては、前記湾曲した部分を有する。
【0068】
(6)対象物移動装置は、前記駆動力伝達部材の引張りにより移動して前記移動対象物を移動させる上記のキャリアプレートを備える。
【0069】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均などの意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るキャリアプレート及び対象物移動装置は、ケーブル同士が擦れ合うことを軽減できる装置として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 交差する箇所
10 ガイドレール
20 プーリーブラケット
30 駆動部
40 キャリアプレート
40A 例のキャリアプレート
41 取り付け部
42 収納部
42a 側面
43 ガイド部
50 ケーブル
50a ケーブル
50b ケーブル
50b1 ケーブルエンド
50c ケーブル
50c1 ケーブルエンド
50c11 ケーブル
50c12 ケーブル
51 アウターケーシング
100 対象物移動装置
421 係止穴
422 溝部
422a 開口部
422A 溝部
422b 湾曲部
422b1 側面
424 係止穴
425 溝部
425a 開口部
R 曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7