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特許7393322温度測定装置、温度測定方法及び大気計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】温度測定装置、温度測定方法及び大気計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20220101AFI20231129BHJP
【FI】
G01J5/48 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020209330
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096297
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福田 義徳
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124708(JP,A)
【文献】特開2009-122050(JP,A)
【文献】特開2014-102005(JP,A)
【文献】国際公開第2020/089996(WO,A1)
【文献】特開2020-052036(JP,A)
【文献】特開平09-015056(JP,A)
【文献】特開2006-162369(JP,A)
【文献】特開2007-240164(JP,A)
【文献】特開2009-174990(JP,A)
【文献】特開2018-179808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01J 11/00
G01P 13/00 - G01P 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサを含み、当該赤外線センサの出力のうち大気により吸収される第一の波長帯の赤外線に基づく温度データである第一温度データと、大気により吸収される赤外線の量が、前記第一の波長帯の赤外線よりも少ない第二の波長帯の赤外線に基づく温度データである第二温度データと、を取得する温度データ取得部と、
前記第一温度データ及び前記第二温度データに基づき測定対象空間における大気の温度を演算する演算処理部と、を備え、
前記演算処理部は、前記温度データ取得部で取得した、前記測定対象空間における、校正用の前記第一温度データと前記第二温度データとに基づき予め設定された、前記測定対象空間における大気の温度を表す演算式を記憶している記憶部と、
前記温度データ取得部で取得した、前記測定対象空間における、温度測定用の前記第一温度データ及び前記第二温度データと前記演算式とから前記測定対象空間における大気の温度を算出する温度算出部と、
を備え
前記演算式は、次式で表されることを特徴とする温度測定装置。
TA=(D1-D2×(1-α1))/α1+γ
γ=(-β1+β2×(1-α1))/α1)
TAは大気の温度、D1は第一温度データ、D2は第二温度データ、α1は、第一温度データD1に含まれる、大気の温度の割合、β1は第一温度データD1のバイアス値、β2は第二温度データD2のバイアス値、である。
【請求項2】
前記演算処理部は、
複数時点における前記校正用の前記第一温度データ及び前記第二温度データと、当該校正用の第一温度データと前記第二温度データとの関係を表す一次式と、をもとに、前記一次式を特定するパラメータ値を探索して前記演算式を特定する前処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記温度データ取得部は、
前記第一の波長帯に感度を有する第一赤外線カメラと、
前記第二の波長帯に感度を有する第二赤外線カメラと、を前記赤外線センサとして備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記第一赤外線カメラは、3μm以上5μm以下の波長帯に感度を有することを特徴とする請求項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記第二赤外線カメラは、7μm以上14μm以下の波長帯に感度を有することを特徴とする請求項又は請求項に記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記温度データ取得部は、
前記赤外線センサとしての一台の赤外線カメラと、
当該赤外線カメラに取り付けられ、少なくとも2つの異なる透過波長を有する光学フィルタと、を備え、
前記透過波長は前記第一の波長帯又は前記第二の波長帯であり、
前記光学フィルタを切り替え、前記第一の波長帯を透過した温度データを前記第一温度データとし、前記第二の波長帯を透過した温度データを前記第二温度データとして取得することを特徴とする請求項又は請求項に記載の温度測定装置。
【請求項7】
測定対象空間における大気の温度を演算する温度測定方法であって、
赤外線センサを含み、当該赤外線センサの出力のうち大気により吸収される第一の波長帯の赤外線に基づく温度データである第一温度データと、大気により吸収される赤外線の量が、前記第一の波長帯の赤外線よりも少ない第二の波長帯の赤外線に基づく温度データである第二温度データと、を取得する温度データ取得部を有し、
前記温度データ取得部により、前記測定対象空間における、校正用の前記第一温度データ及び前記第二温度データを取得するステップと、
取得した校正用の前記第一温度データ及び前記第二温度データに基づき、前記測定対象空間における大気の温度を演算するための演算式を特定するステップと、
前記温度データ取得部により、前記測定対象空間における、温度測定用の前記第一温度データ及び前記第二温度データを取得するステップと、
前記温度測定用の前記第一温度データ及び前記第二温度データと、前記演算式とをもとに、前記測定対象空間における大気の温度を演算するステップと、を備え
前記演算式は、次式で表されることを特徴とする温度測定方法。
TA=(D1-D2×(1-α1))/α1+γ
γ=(-β1+β2×(1-α1))/α1)
TAは大気の温度、D1は第一温度データ、D2は第二温度データ、α1は、第一温度データD1に含まれる、大気の温度の割合、β1は第一温度データD1のバイアス値、β2は第二温度データD2のバイアス値、である。
【請求項8】
測定対象空間における大気の温度を演算する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の温度測定装置と、
前記測定対象空間における大気の流れを計測する流れ計測装置と、
前記温度測定装置で演算した前記測定対象空間の複数地点における前記大気の温度を表す温度分布画像と、前記流れ計測装置で計測した前記測定対象空間における前記大気の流れを表す流れ計測画像と、を表示装置に表示する表示処理部と、を備え、
前記表示処理部は、前記温度分布画像及び前記流れ計測画像を重畳表示又は並べて表示することを特徴とする大気計測システム。
【請求項9】
前記温度分布画像と前記流れ計測画像とのうち、いずれの画像を表示するかを選択する選択部を備え、
前記表示処理部は、前記選択部での選択に応じて、前記温度分布画像と前記流れ計測画像のうちのいずれか一方、又は両方を、前記表示装置に表示することを特徴とする請求項に記載の大気計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置、温度測定方法及び大気計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間内の大気の温度分布を測定する方法として数々の方法が提案されている。古典的な方法としては、空間内に温度センサを格子状に直接配置する方法がある。また、空間内に金属製や樹脂製の板或いは線状或いは網状の部材を配置し、その温度変化を赤外線カメラで測定する方法(例えば、特許文献1参照。)、また、空間内に温度に依存して変化する螢光塗料を塗布した細線を配置し、その蛍光をカメラで撮影する方法(例えば、特許文献2参照。)、さらに、空気に向けて超音波を発生させ音速を求める方法(例えば、特許文献3参照。)等により間接的に温度を測定する方法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-19624号公報
【文献】特開2017-15590号公報
【文献】特開2003-130735号公報
【文献】特開2020-52036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空間内に、温度センサや、温度変化を検出するための金属や樹脂製の測定用部材を配置する方法にあっては、これら温度センサや測定用部材を空間内に配置する必要があり、この配置作業に多くの手間が必要とされる。また、流れ場に温度センサや測定用部材等を配置すると、気流を阻害することから、実態に合わない温度分布測定が行われる可能性がある。
【0005】
また、超音波を発生させるようにした方法においては、超音波の音速変化を利用して温度測定を行うため、温度センサ等を配置する必要がない。しかしながら、超音波を用いた方法は、点測定ができるのみであって、温度分布を検出することはできない。
【0006】
そのため、実環境下での空間の温度を、簡易な構成で検出し、容易に温度分布を検出することの可能な温度の測定方法が望まれていた。
【0007】
この発明は上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、実環境下での温度測定を簡易且つ容易に行い、温度分布を容易に検出することの可能な温度測定装置、温度測定方法及び大気計測システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、赤外線センサを含み、赤外線センサの出力のうち大気により吸収される第一の波長帯の赤外線に基づく温度データである第一温度データと、大気により吸収される赤外線の量が、第一の波長帯の赤外線よりも少ない第二の波長帯の赤外線に基づく温度データである第二温度データと、を取得する温度データ取得部と、第一温度データ及び第二温度データに基づき測定対象空間における大気の温度を演算する演算処理部と、を備え、演算処理部は、温度データ取得部で取得した、測定対象空間における、校正用の第一温度データと第二温度データとに基づき予め設定された、測定対象空間における大気の温度を表す演算式を記憶している記憶部と、温度データ取得部で取得した、測定対象空間における、温度測定用の第一温度データ及び第二温度データと演算式とから測定対象空間における大気の温度を算出する温度算出部と、を備え、演算式は、次式で表される、温度測定装置が提供される。
TA=(D1-D2×(1-α1))/α1+γ
γ=(-β1+β2×(1-α1))/α1)
TAは大気の温度、D1は第一温度データ、D2は第二温度データ、α1は、第一温度データD1に含まれる、大気の温度の割合、β1は第一温度データD1のバイアス値、β2は第二温度データD2のバイアス値、である。
【0009】
本発明の他の態様によれば、測定対象空間における大気の温度を演算する温度測定方法であって、赤外線センサを含み、赤外線センサの出力のうち大気により吸収される第一の波長帯の赤外線に基づく温度データである第一温度データと、大気により吸収される赤外線の量が、第一の波長帯の赤外線よりも少ない第二の波長帯の赤外線に基づく温度データである第二温度データと、を取得する温度データ取得部を有し、温度データ取得部により、測定対象空間における、校正用の第一温度データ及び第二温度データを取得するステップと、取得した校正用の第一温度データ及び第二温度データに基づき、測定対象空間における大気の温度を演算するための演算式を特定するステップと、温度データ取得部により、測定対象空間における、温度測定用の第一温度データ及び第二温度データを取得するステップと、温度測定用の第一温度データ及び第二温度データと、演算式とをもとに、測定対象空間における大気の温度を演算するステップと、を備え、演算式は、次式で表される、温度測定方法が提供される。
TA=(D1-D2×(1-α1))/α1+γ
γ=(-β1+β2×(1-α1))/α1)
TAは大気の温度、D1は第一温度データ、D2は第二温度データ、α1は、第一温度データD1に含まれる、大気の温度の割合、β1は第一温度データD1のバイアス値、β2は第二温度データD2のバイアス値、である。
【0010】
さらに本発明の他の態様によれば、測定対象空間における大気の温度を演算する前記態様の温度測定装置と、測定対象空間における大気の流れを計測する流れ計測装置と、温度測定装置で演算した測定対象空間の複数地点における大気の温度を表す温度分布画像と、流れ計測装置で計測した測定対象空間における大気の流れを表す流れ計測画像と、を表示装置に表示する表示処理部と、を備え、表示処理部は、温度分布画像及び流れ計測画像を重畳表示又は並べて表示する、大気計測システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、空間内の大気の温度を簡易な構成で且つ実環境下で容易に検出することができ、その結果容易に温度分布を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る温度測定装置の一例を示す概略構成図である。
図2】校正用のパラメータの探索方法を説明するための説明図である。
図3】画像処理装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】校正用のパラメータの他の探索方法を説明するための説明図である。
図5】温度分布の他の演算方法を説明するための説明図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る温度測定装置の一例を示す概略構成図である。
図7】フィルタホイールを備えたカメラの一例を示す概略構成図である。
図8】赤外線の波長と、大気に対する透過率との対応を示す特性の一例である。
図9】本発明の第三実施形態に係る温度測定装置の一例を示す概略構成図である。
図10】大気だけを温めたときの大気の温度変化の測定結果の一例である。
図11】大気の流れと大気の温度分布とを重畳表示した画像の一例である。
図12】本発明の第四実施形態に係る大気計測システムの一例を示す機能構成図である。
図13】切り出し窓幅及び解析ステップを説明するための図である。
図14】温度変動分布解析時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15】時系列に並べた温度変動分布画像の一例である。
図16】大気計測システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
<温度の演算方法>
【0015】
まず、温度の演算方法を説明する。
【0016】
本実施形態に係る温度の演算方法では、赤外線センサとして赤外線カメラを用い、赤外線カメラにより空間を撮影し、壁等の空間を形成する部材が発生する赤外線を、波長帯域の異なる二つの温度データとして取得し、この波長帯域の異なる2種類の温度データを用いて空間の温度を検出する。
【0017】
簡単のために、ここでは、2台の赤外線カメラ(温度データ取得部)1A、1Bを用いて空間の温度を検出する方法を説明する。
【0018】
2台の赤外線カメラ1A、1Bは、異なる波長帯に感度を有する。一方の赤外線カメラ(第一赤外線カメラ)1Aは、大気により吸収される赤外線の量が比較的大きい波長帯である第一の波長帯に感度を有し、この第一の波長帯を除く帯域に対する感度は零である。他方の赤外線カメラ(第二赤外線カメラ)1Bは、大気により吸収される赤外線の量が比較的小さい波長帯である第二の波長帯に感度を有し、この第二の波長帯を除く帯域に対する感度は零である。つまり、第一の波長帯と第二の波長帯とは異なる波長帯であり、赤外線カメラ1Bが感度を有する第一の波長帯において大気により吸収される赤外線の量は、赤外線カメラ1Aが感度を有する第二の波長帯において大気により吸収される赤外線の量よりも少ない。
【0019】
具体的には、赤外線カメラ1Aは、例えば、3μm以上5μm以下の中赤外域の波長帯に感度を持ち、3μm以上5μm以下を除く波長帯に対する感度は零である。赤外線カメラ1Bは、例えば7μm以上14μm以下の遠赤外域の波長帯に感度を持ち、7μm以上14μm以下を除く波長帯に対する感度は零である。また、赤外線カメラ1Aは、1μm以上5μm以下の波長帯に感度を持ち、この波長帯を除く帯域に対する感度は零であり、他方の赤外線カメラ1Bは、7μm以上13μm以下の波長帯に感度を持ち、この波長帯を除く帯域に対する感度は零とすることもできる。
【0020】
なお、赤外線カメラ1Aが有する大気により吸収される赤外線の量が比較的大きい第一の波長帯及び、赤外線カメラ1Bが有する大気により吸収される赤外線の量が比較的小さい第二の波長帯の組み合わせは、3μm以上5μm以下と7μm以上14μm以下の波長帯の組み合わせ、1μm以上5μm以下と7μm以上13μm以下の波長帯の組み合わせに限るものではない。第一の波長帯と第二の波長体とは、赤外線カメラ1Aが有する大気により吸収される赤外線の量が比較的大きい波長帯と赤外線カメラ1Bが有する大気により吸収される赤外線の量が比較的小さい波長帯との組み合わせであればよいが、前述の3μm以上5μm以下と7μm以上14μm以下の波長帯の組み合わせ、また、1μm以上5μm以下と7μm以上13μm以下の波長帯の組み合わせであれば、赤外線カメラ1A及び赤外線カメラ1Bとして、中赤外域の波長帯を感度に持つ市販されている赤外線カメラや、遠赤外域の波長帯に感度を持つ市販されている赤外線カメラを適用することができ、入手しやすい。
【0021】
これら2台の赤外線カメラ1A及び1Bを、互いの視野が同一となるように配置する。これら2台の赤外線カメラ1A及び1Bは、同一の背景(壁面)を測定する際に、温度校正が適切になされているものとする。
【0022】
ここで、以下の演算では、赤外線カメラ1Aで測定される画素毎の温度データの平均値を、温度データD1とし、赤外線カメラ1Bで測定される画素毎の温度データの平均値を、温度データD2として説明する。
赤外線カメラ1Aで測定される温度データ(第一温度データ)D1は、測定対象の空間を形成する壁面からの温度TWと、大気からの温度(以後、大気の温度ともいう。)TAとの和となり、次式(1)で近似することができる。
【0023】
D1=TA×α1+TW×(1-α1)+β1 ……(1)
【0024】
同様に、赤外線カメラ1Bで測定される温度データ(第二温度データ)D2は、測定対象の空間を形成する壁面からの温度TWと、大気の温度TAとの和となり、次式(2)で近似することができる。
【0025】
D2=TA×α2+TW×(1-α2)+β2 ……(2)
【0026】
(1)式及び(2)式は、次式(3)及び(4)と表すことができる。
【0027】
D1×(1-α2)
【0028】
=TA×α1×(1-α2)+TW×(1-α1)×(1-α2)
【0029】
+β1×(1-α2) ……(3)
【0030】
D2×(1-α1)
【0031】
=TA×α2×(1-α1)+TW×(1-α2)×(1-α1)
【0032】
+β2×(1-α1) ……(4)
【0033】
(3)式及び(4)式の差分は次式(5)で表すことができる。
【0034】
D1×(1-α2)-D2×(1-α1)
【0035】
=TA×(α1×(1-α2)-α2×(1-α1))
【0036】
+β1×(1-α2)-β2×(1-α1)……(5)
【0037】
(5)式から、TAを表す次式(6)を導くことができる。
【0038】
TA
【0039】
=(D1×(1-α2)-D2×(1-α1)-β1×(1-α2)
【0040】
+β2×(1-α1))/(α1×(1-α2)-α2×(1-α1))
【0041】
……(6)
【0042】
(6)式から、パラメータα1、α2、β1、β2を別途校正データとして取得しておけば、大気の温度を検出できることがわかる。
【0043】
厳密には、パラメータα1、α2、β1、β2は、背景つまり壁面までの距離の関数となる。そのため、より正確に大気の温度を算出するためには、背景までの距離に応じて、校正データを取得すればよい。また、本測定においては、測定波長帯の異なる2つの赤外線カメラ1A、1Bにおいて、ほぼ同一の放射率の壁面を選択することが重要となる。
【0044】
なお、大気による吸収が少ない波長帯を測定波長帯として有する赤外線カメラ1Bにおいて、大気による吸収が十分無視できるとすると、α2=0とすることができる。そのため、(6)式は、次式(7)となる。
【0045】
TA=(D1-β1-(D2-β2)×(1-α1))/α1 ……(7)
<変形例>
【0046】
なお、ここでは、説明を簡単にするため、測定波長域が異なる2台の赤外線カメラ1A、1Bによって、温度データD1及びD2を取得しているが、これに限るものではない。例えば1台の赤外線カメラにおいて、2つ以上の光学フィルタを設け、一方の光学フィルタは大気による吸収の大きい波長帯を抽出し、他方の光学フィルタでは、大気による吸収がより小さい波長帯の温度データを取得する構成としてもよい。光学フィルタを切り替え、大気による吸収の大きい波長帯と、大気による吸収がより小さい波長帯とを切り替えることで、波長帯の異なる複数種類の温度データを取得することができる。この場合、2台の赤外線カメラを用いる場合のように、視野を合わせる必要がないため、より簡単に、空間内の大気の温度を測定することができる。
【0047】
このように、赤外線カメラ1Aで測定される温度データD1及び赤外線カメラ1Bで測定される温度データD2は、それぞれ測定対象の空間を形成する壁面からの温度TWと、大気の温度TAとの和で表すことができ、2つの変数を有する一次関数で表すことができる。そのため、この2つの変数を有する一次関数と、既知の温度データD1及びD2とから、大気の温度TAを演算するための演算式、すなわち(6)式を導くことができる。
【0048】
その結果、2つの赤外線測定帯域で、赤外線カメラ1A及び1Bによる温度測定を行って2つの温度データD1、D2を取得することにより、これら2つの温度データD1及びD2と演算式(6)式とから、空間内の大気の温度TAを得ることができる。さらに、大気による吸収が少ない波長帯を測定波長帯として有する赤外線カメラ1Bにおいて、大気による吸収が十分無視できる場合には、温度測定を行って取得した温度データD1及びD2と演算式(7)式とから、空間内の大気の温度TAを得ることができる。
そして、以上の演算の説明に用いた温度データD1及びD2は、赤外線カメラ1A及び1Bから得られた温度データの平均値である。そのため、式(6)又は式(7)から得られる大気の温度TAは、測定対象空間内の、赤外線カメラ1A及び1Bの視野内の領域に対応する領域の平均温度を表す。
【0049】
ここで、赤外線カメラ1A及び1Bにより得た画素毎の温度データのうち、測定対象空間内のある一つの地点Xに対応する画素の温度データをもとに大気の温度TAを演算すれば、測定対象空間内のある一つの地点Xにおける大気の温度TAを得ることができる。そして、画素毎にその温度データを用いて大気の温度TAを演算すれば、測定対象空間内の、赤外線カメラ1A及び1Bの視野に対応する領域の大気の温度TAを画素単位で得ることができる。したがって、取得した各画素に対応する大気の温度TAを、各画素と対応付けて表示することによって、赤外線カメラ1A及び1Bの視野に対応する測定対象空間内の領域の温度分布を得ることができる。
〔第1実施形態〕
【0050】
次に、前記(7)式を用いて大気温度を測定する温度測定装置について説明する。
【0051】
まず、第1実施形態に係る温度測定装置を説明する。
【0052】
図1は、第1実施形態に係る温度測定装置10の一例を示す概略構成図である。
【0053】
図1に示すように、温度測定装置10は、異なる波長帯に感度を有する二つの赤外線カメラ1A及び1Bと、パーソナルコンピュータ等からなる画像処理装置2とを備える。画像処理装置2は、図示しない入力装置及び表示装置を備え、赤外線カメラ1A及び1Bから予め設定した所定周期で画像データからなる温度データを、測定用温度データとして取得し、記憶部2aに記憶する。また、画像処理装置(演算処理部)2は、記憶部2aに記憶した赤外線カメラ1A及び1Bで取得した2種類の温度データから、赤外線カメラ1A及び1Bで撮影した空間の温度を演算し表示装置に表示する。
【0054】
赤外線カメラ1Aは、大気による吸収が比較的大きい波長帯に感度を有し、例えば3μm以上5μm以下の中赤外線の帯域に感度を持ち、3μm以上5μm以下を除く帯域に対する感度は零である。赤外線カメラ1Aとして、中赤外帯域の冷却型(素子InSb)の赤外線カメラを用いることができる。赤外線カメラ1Aの画素数は640×512画素である。
【0055】
赤外線カメラ1Bは、赤外線カメラ1Aが感度を有する波長帯よりも長い波長帯であり、大気による吸収量が赤外線カメラ1Aが感度を有する波長帯における吸収量よりも小さい波長帯に感度を有し、例えば7μm以上14μm以下の遠赤外帯域に感度を持つ。赤外線カメラ1Bとして、遠赤外帯域の非冷却型(素子マイクロボロメータ)の赤外線カメラを用いることができる。赤外線カメラ1Bの画素数は640×480画素である。
【0056】
温度測定装置10は、2台の赤外線カメラ1A及び1Bで室内の壁面の撮影を行い、2台の赤外線カメラ1A及び1Bと壁面との間の空間の、大気の温度測定を目的とする。2台の赤外線カメラ1A及び1Bは、これら2台の赤外線カメラ1A、1Bの視野内にほぼ同一の領域が含まれるように配置される。赤外線カメラ1A及び1Bは、これら赤外線カメラ1A及び1Bそれぞれの温度データを用いて、赤外線カメラ1A及び1Bと壁面との間の大気の温度を測定する観点から、同程度の画角とし、壁面から各赤外線カメラ1A及び1Bまでの距離が同等程度となる位置に配置されることが好ましい。
【0057】
ここでは、撮影フレームレートは、25Hz、撮影時間は30秒とし、30秒間の平均の温度値をデータとして用いた。
<温度測定時の処理手順>
【0058】
温度測定装置10では、まず、校正データの取得を行う。
【0059】
具体的には、室内の大気の温度を17℃から30℃に変化させ、2台の赤外線カメラ1A及び1Bで壁面を撮影した。なお、赤外線カメラ1A、1Bから壁面までの距離は3.3mである。また、室内の大気の温度は熱電対で測定した。
【0060】
ここで、(7)式は、次式(8)で表す一次式に変形することができる。
【0061】
TA=(D1-β1-(D2-β2)×(1-α1))/α1
【0062】
=(D1-D2×(1-α1)-β1+β2×(1-α1))/α1
【0063】
=(D1-D2×(1-α1)/α1+(-β1+β2×(1-α1))/α1
【0064】
=(D1-D2×(1-α1))/α1+γ
【0065】
γ=(-β1+β2×(1-α1))/α1 ……(8)
【0066】
つまり、(8)式に示すように、大気の温度TAは、(D1-D2×(1-α1))/α1にバイアス値γを加えたものとなる。
【0067】
すなわち、(D1-D2×(1-α1))/α1とTAとの関係が傾き「1」となるようにα1を適切に設定すれば、この関係の切片からバイアス値γを求めることができる。
【0068】
本実施例においては、図2に示すように、α1を0.15としたときに、(D1-D2×(1-α1))/α1と大気の温度TAとの関係の傾きが「1」となった。また、このときの切片γは4.37であった。なお、図2において、横軸は(D1-D2×(1-α1))/α1〔℃〕、縦軸は大気の温度TA〔℃〕である。
【0069】
したがって、(8)式より、大気の温度TAは次式(9)で求めることができる。
【0070】
TA=(D1-D2×0.85)/0.15+4.37 ……(9)
【0071】
大気の温度、つまり熱電対で測定した室内の温度が28℃である状態で、赤外線カメラ1A及び1Bによって室内を撮影し、温度データD1及びD2を取得した。取得した温度データD1及びD2それぞれについて、各画素の温度データの平均値を求め、求めた平均値を温度データD1、D2とした。そして、求めた温度データD1、D2を、(9)式に当てはめ、室内の大気の温度TAを演算したところ、室内の大気の平均温度は27.8℃であった。室内の温度測定値28℃との差は0.2℃であった。
【0072】
また、熱電対で測定した室内の温度が18℃である状態で、赤外線カメラ1A及び1Bによって室内を撮影し、温度データD1及びD2を取得した。取得した温度データD1及びD2を(9)式に当てはめ、室内の大気の温度TAを演算したところ、室内の大気の平均温度は18.1℃であった。室内の温度測定値18℃との差は0.1℃であった。
【0073】
以上から、前記(9)式から精度よく空間内の大気の温度が得られることが確認された。
【0074】
図3は、画像処理装置2における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0075】
画像処理装置2では、まず、部屋等といった大気温度の測定対象の空間において、赤外線カメラ1A及び1Bを用いて校正用の温度データ(校正用の第一温度データ及び第二温度データ)を取得する(ステップS1)。次いで、取得した温度データをもとに、前記(8)式における所定の校正用パラメータを探索する(ステップS2)。すなわち、(D1-D2×(1-α1)/α1)とTAとの関係が傾き「1」となるα1と、α1であるときのバイアス値γとを探索する。
【0076】
次いで、取得した校正用パラメータα1とバイアス値γとから、大気の温度TAの演算式(9)を特定し、記憶部2aに格納する(ステップS3)。以上の処理(ステップS1~S3 前処理部)によって、温度測定時の前処理が終了する。
【0077】
次いで、ステップS4に移行し、大気温度の測定対象の空間において、赤外線カメラ1A及び1Bを用いて温度測定用の温度データを取得し、記憶部2aに格納する。なお、赤外線カメラ1A及び1Bは、温度測定時の前処理を行ったときの設置場所に配置することが望ましい。
【0078】
次いで、記憶部2aに格納した赤外線カメラ1A及び1Bの温度測定用の温度データをもとに、前記(9)式を用いて、大気の温度TAを演算し(ステップS5、温度算出部)、取得した大気の温度TAを、表示装置に表示する(ステップS6)。例えば、大気の温度TAの大きさに応じて異なる表示色で表示すること、或いは、温度を数値表示すること等により、大気温度の測定対象の空間における温度を表示する。これによって、ユーザは、大気温度の測定対象の空間における温度を容易に認識することができる。
【0079】
このとき、例えば、赤外線カメラ1A、1Bの温度データ毎に、各画素の温度データの平均値を求め、これを赤外線カメラ1A、1Bの温度データD1、D2として、温度を演算すれば、測定対象空間内における、視野に対応する領域の平均温度を得ることができる。また、画素単位の温度データ毎に、大気の温度TAを演算すれば、測定対象空間内における視野に対応する領域の温度分布を得ることができる。特に温度分布を取得した場合には、温度に応じて異なる表示色で表示すること或いは、温度分布に対応して温度を数値で表すこと等によって、測定対象空間内の温度分布を視覚的に容易に認識することができる。
【0080】
また、このとき、より長い時間撮影し、30秒間毎に、この30秒間の平均の温度値を用いて、温度分布を演算し、時系列に表示することによって、大気温度の測定対象空間における30秒毎の温度の変化状況又は温度分布の変化状況を表すことができる。
【0081】
このように、第1実施形態における温度測定装置10は、簡易な構成で温度測定を行うことができる。また、赤外線カメラ1A、1Bを、所定の位置に設置するだけでよいため、実環境下での温度測定を容易に行うことができ、すなわち温度分布測定も容易に行うことができる。特に、測定対象空間内の温度分布を測定する場合には、赤外線カメラ1A、1Bを所定の位置に設置するだけで、複数地点の温度データを取得することができる。そのため、赤外線カメラ1A及び1Bによる1度の撮影によって、測定対象空間内の複数地点の温度データを取得することができ、測定対象空間内の温度分布を容易に取得することができる。
また、従来の温度計等のセンサを用いて温度測定を行う場合には、センサを、測定対象空間内の温度を測定したい地点に配置する必要がある。これに対し第1実施形態に係る温度測定装置10は、温度を測定したい地点に赤外線カメラ1A、1Bを配置する必要はない。そのため、温度測定を行うためのセンサ、つまり、赤外線カメラ1A、1Bを容易に設置することができる。
<第1実施形態の変形例1>
【0082】
実験室以外の、実際の測定現場において、校正を行うこと、つまり、(8)式中のパラメータα1及びγを求めることは、空間の温度を種々変化させて測定を行わなければならず、非常に困難であり実用的ではない。
【0083】
ここで、校正用パラメータα1及びγは、前述のように、実際には赤外線カメラ1A、1Bから壁面までの距離の関数となる。
【0084】
そこで、校正作業を軽減するため、表1に示すように、実験室等で赤外線カメラ1A、1B等から壁面までの距離に応じて予め校正用パラメータα1及びγを求めておき、実際の測定現場で大気の温度を測定する場合には、予め求めていた校正用パラメータα1及びγのうち、温度測定時の、赤外線カメラ1A、1Bと、壁面との間の距離に応じて対応する構成用パラメータを選択して用いるように構成してもよい。

【表1】

<第1実施形態の変形例2>
【0085】
空間の温度TAを演算するためには、校正用パラメータとしてα1とバイアス値γとが必要である。このうちバイアス値γの値はα1、β1、β2が関与するため、誤差要因となる比率が高い。
【0086】
そこで、より正確な温度を得るためには、図4に示すように、室内の1点或いは複数点の温度を熱電対等の温度計1aにより実測し、これをもとに校正用パラメータγを求め、この校正用パラメータを用いて、大気の温度TAを補正するようにしてもよい。つまり、例えば、室内の複数点の温度を温度計1aにより実測する。この実測値は大気の温度TAに相当する。また、赤外線カメラ1A及び1Bから温度計1aの設置場所における温度データD1及びD2を取得する。そして、温度計1aで実測した大気の温度TA(実測値)と、温度計1aの設置場所における温度データD1及びD2と、(D1-D2×(1-α1))/α1とTAとの関係から求めたα1と、前記(8)式とから、未知数γを演算するようにしてもよい。
<第1実施形態の変形例3>
【0087】
空間の温度を取得するために赤外線カメラ1A及び1Bで測定対象空間の壁面等を撮影する場合、実施の測定現場においては、壁面の形状の凹凸や、壁面の放射率の違い、2台の赤外線カメラ1A及び1Bの視野の誤差等によって、正確な大気の温度測定を行うことができず、ノイズが重畳する可能性がある。
【0088】
その一方で、大気の温度の評価は、赤外線カメラ1Aの画素数(640×512画素)ほど、空間的に厳密に評価する必要がない場合がある。例えば、測定対象空間のある領域の温度が上昇し、他の領域の温度が低下したことがわかれば十分なケースがある。
【0089】
そこで、図5に示すように、赤外線カメラ1Aで測定した640×512画素からなる画像(図5(a))を、例えば、128×128画素毎の5×4の計20の区画に分割し(図5(b))、区画毎の平均の温度を演算するようにしてもよい。このようにすることによって、測定誤差の程度を緩和することができる。また、5×4の区画毎に平均温度を演算すればよいため、画像処理装置2の処理負荷を軽減することができる。
【0090】
また、視野内の一部の領域の温度測定を行う場合等には、図5(b)に示す複数の区画において、温度測定対象である「一部の領域」を含む区画についてのみ温度測定を行えばよい。この場合には、区画の平均温度を演算するようにしてもよく、また、「一部の領域」を含む区画について、当該区画に含まれる画素毎に温度測定を行い、「一部の領域」を含む区画について温度分布を測定するようにしてもよい。
〔第2実施形態〕
【0091】
次に、本発明の第2実施形態に係る温度測定装置10-1を説明する。
【0092】
図6は、第2実施形態に係る温度測定装置10-1の一例を示す概略構成図である。
【0093】
温度測定装置10-1は、1台の赤外線カメラ1Cと、パーソナルコンピュータ等からなる画像処理装置2と、記憶部2aとを備える。赤外線カメラ1Cは、大気による吸収が比較的大きい波長帯に感度を有し、例えば3μm以上5μm以下の中赤外線の帯域に感度を持つ。赤外線カメラ1Cとして、中赤外帯域の冷却型(素子InSb)の赤外線カメラを用いることができる。赤外線カメラ1Cの画素数は640×512画素である。また、赤外線カメラ1Cには、図7に示すように、赤外線バンドパスフィルタの通過帯域(透過波長)を選択することの可能な、通過帯域(透過波長)の異なる複数の光学フィルタ3aを有するフィルタホイール3が設けられている。
【0094】
ここで、赤外線の波長の、大気に対する透過率は、図8に示す特性を有することが文献等によって知られている。
【0095】
図8に示すように、中赤外線の3μm以上5μm以下の帯域では、4.2μm近傍で透過率が小さく(吸収が大きい)、3.7μm近傍で透過率が大きい(吸収が小さい)。そこで、フィルタホイール3には、光学フィルタ3aとして、4.2μm近傍のバンドパスフィルタと、3.7μm近傍のバンドパスフィルタとを設ける。そして、例えば、5秒毎に2つの光学フィルタ3aを切り替え交互に2つの波長帯域で測定する。
【0096】
これによって、大気による吸収の大きい温度データと、大気による吸収の小さい温度データとを、ほぼ同時に取得することができ、上記第一実施形態と同様の手順で大気の温度を取得することができる。
【0097】
また、1台の赤外線カメラ1Cで測定が完結するため、2台の赤外線カメラを用いる場合のように、2台の赤外線カメラの視野を調整する必要がなく、温度測定を容易に行うことができる。
〔第3実施形態〕
【0098】
次に、本発明の第3実施形態に係る温度測定装置10-2を説明する。
【0099】
図9は、第3実施形態に係る温度測定装置10-2の一例を示す概略構成図である。
【0100】
温度測定装置10-2は、1台の赤外線カメラ1Aと、パーソナルコンピュータなどからなる画像処理装置2とを備える。赤外線カメラ1Aは、上記第1実施形態における赤外線カメラ1Aと同様に、大気による吸収が比較的大きい波長帯に感度を有し、例えば3μm以上5μm以下の中赤外線の帯域に感度を持つ。赤外線カメラ1Aとして、中赤外帯域の冷却型(素子InSb)の赤外線カメラを用いることができる。赤外線カメラ1Aの画素数は640×512画素である。
【0101】
ここで、気流によって生じる極短時間での大気の温度変化を想定した場合、大気の温度変化は壁面には伝わらず、大気だけが温度変化する。
【0102】
また、気流による大気の温度変化の効果を調べたい場合、大気の絶対温度を測定する必要はなく、気流の発生前後の温度変化量がわかればよい。
【0103】
このような場合には、大気による吸収が比較的大きい波長帯に感度を有する赤外線カメラ1Aだけで温度を測定すればよい。
【0104】
つまり、温度変化前後での大気の温度を、TA(0)(変化前)、TA(1)(変化後)とし、大気による赤外線の吸収が比較的大きい帯域を測定波長帯として有する赤外線カメラで測定される温度データを、D1(0)(変化前)、D1(1)(変化後)、大気による赤外線の吸収が比較的小さい帯域を測定波長帯として有する赤外線カメラで測定される温度データをD2(0)(変化前)、D2(1)(変化後)とすると、前記(8)式は、次式(10)で表すことができる。
【0105】
TA(0)=(D1(0)-D2(0)×(1-α1))/α1+γ
【0106】
TA(1)=(D1(1)-D2(1)×(1-α1))/α1+γ
【0107】
γ=(-β1+β2×(1-α1))/α1 ……(10)
【0108】
大気による赤外線の吸収が比較的小さい波長を測定波長帯として有する赤外線カメラでは、壁の温度だけが測定される。そのため、D2(0)=D2(1)とすると、大気の温度変化ΔTAは、次式(11)で表すことができる。
【0109】
ΔTA=TA(1)-TA(0)=(D1(1)-D1(0))/α1
【0110】
……(11)
【0111】
したがって、大気による赤外線の吸収が比較的大きい波長を測定波長帯として有する赤外線カメラ1Aだけで、大気の温度変化を演算することができる。
【0112】
したがって、赤外線カメラ1Aからの温度データをもとに、画素の温度データ毎に(11)式から大気の温度変化ΔTAを演算することによって、測定対象空間内の、赤外線カメラ1Aの視野に対応する領域の温度変化ΔTAを得ることができる。
図10は、ドライヤにより大気だけを温めたときの、大気の温度変化の測定結果である。図10に示すように、ドライヤの熱により温度変化が生じた大気の領域と、温度変化が生じていない大気の領域とが明瞭に区別されることがわかる。
〔第4実施形態〕
【0113】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0114】
この第4実施形態は、大気の温度分布と共に、大気の流れも表示するようにしたものである。
【0115】
つまり、大気の温度分布測定は、エアーコンディショナー等の空調機器の効率を評価するために行われることが多い。また、多くの場合、大気の温度分布の変化は、自然対流や空調機器からの強制対流によって生じる。ここで、大気の流れは、特許文献4に記載されているように、大気により吸収される赤外線の量が比較的大きい赤外線を用いることで測定することができる。
【0116】
そのため、特許文献4に記載の流体の流れの計測方法を用いることによって、大気の流れを表す画像を取得することができる。そこで、大気の温度分布の画像と共に、大気の流れの画像を重畳表示することによって、大気の流れと、その温度分布とを容易に認識することができる。そのため、空調機器の効率評価等を、視覚的に容易に行うことができ、効率評価に要する時間を削減することができる。
【0117】
大気の温度分布と大気の流れとを表示する方法として、例えば、図11に示すように、大気の流れ画像に大気の等温線を重ね合わせる方法が考えられる。
【0118】
また、大気の温度分布と大気の流れとを二つ並べて表示するようにしてもよい。
【0119】
図12は、大気の温度分布の測定と大気の流れの計測とを共に行うことの可能な大気計測システム20の一例を示す機能構成図である。大気計測システム20は、上記第1実施形態における温度測定装置10と同様に、赤外線センサとしての、測定波長帯の異なる2台の赤外線カメラ1A及び赤外線カメラ1Bと、画像処理装置2と記憶部2aとを備える。
【0120】
大気計測システム20は、大気の温度分布の測定対象の空間を、例えば2台の赤外線カメラ1A及び1Bで撮影した温度データを取得し、第1実施形態における画像処理装置2の処理と同様の手順で、大気の温度TAを演算し測定対象の空間の大気の温度分布画像を生成する温度測定部(温度測定装置)11と、大気の流れを計測する流れ計測部(流れ計測装置)12と、温度測定部11で生成した温度分布画像と、流れ計測部12で計測した大気の流れを表す流れ計測画像とのうち、表示装置13に表示する画像を選択する選択部14と、選択部14で選択された画像を、表示装置13に表示する表示処理部15と、を備える。
【0121】
流れ計測部12は、大気による赤外線の吸収が比較的大きい帯域を測定対象域として有する赤外線カメラ1Aの画像データをもとに、大気の流れ計測を行う。選択部14は、例えばタッチパネル等の入力装置で構成され、温度測定部11で取得した温度分布画像と、流れ計測部12で計測した流れ計測画像と、のうち、いずれの画像を表示するか、また両方の画像を共に表示するかを選択する。
【0122】
表示処理部15は、選択部14で選択された画像を、表示装置13に表示する表示処理を行う。すなわち、選択部14で温度分布画像及び流れ計測画像の一方が選択されたときには、選択された画像を表示装置13に表示し、温度分布画像及び流れ計測画像が共に選択されたときには、これら画像を共に表示する。表示方法は選択部14で設定するようにしてもよく、例えば選択部14での表示方法の選択に応じて、二つの画像を重畳表示してもよく、また左右又は上下に並べて表示してもよい。
<流れ計測部12の処理手順>
【0123】
次に、流れ計測部12の処理手順の一例を説明する。この流れ計測部12では、例えば特許文献4に記載の流体の流れ計測装置における処理と同様に処理を行う。
【0124】
具体的には、流れ計測部12では、温度測定部11による処理によって、赤外線カメラ1Aにより予め設定された周期で撮影された温度画像データを、予め設定した所定期間の間取得し、取得した温度画像データを記憶部2aに時系列に格納する。
【0125】
流れ計測部12は、記憶部2aに格納された時系列の温度画像データ及び、予め記憶部2aに格納されている温度変動分布解析に必要なデータベースをもとに、流体の流れ解析を行う。
【0126】
流れ計測部12は、図13(a)に示すように、時系列温度データの一部を、一定期間の切り出し窓幅Δt1の単位で切り出し、切り出した温度データを部分温度データとする。このとき、時系列温度データから部分温度データを切り出す時刻は、図13(b)に示すように一定の解析ステップずつずらすものとする。これにより、切り出し窓幅相当分の期間データを有する温度データからなる部分温度データが複数切り出される。
【0127】
なお、解析される時系列温度データの温度変動に欠落が生じることを防ぐため、連続する部分温度データどうしは、温度データの一部が重なるように切り出されることが望ましい。流れ計測部12は、切り出した部分温度データそれぞれに対してフーリエ変換を行う。
【0128】
切り出し窓幅とは、図13(b)に示すように、部分温度データとして切り出す期間を規定するものであり、例えばΔt1期間分の部分温度データを抽出する場合には、Δt1が切り出し窓幅となる。また、解析ステップとは、図13(b)に示すように、部分温度データを抽出する際の切り出し窓のずれ量を表し、ずれ量がΔt2である場合には、Δt2ずつずれた時点における、Δt1期間分の部分温度データが抽出される。
【0129】
流れ計測部12は、切り出した部分温度データ毎に周波数解析法により、温度変動分布解析を行い、解析結果を表示装置に時系列に表示する。なお、本実施形態においては、時系列の温度データに対し、短時間の窓関数を順次ずらしながら掛けて切り出し、それに対してフーリエ変換を行っており、この方法を短時間フーリエ変換法という。短時間フーリエ変換法を用いることにより、時間変化に伴う温度変動を得ることができる。
【0130】
一般に、流体の温度は一様ではなくばらつきがある。特に気体の流れを知りたいような対象、例えば、エアーコンディショナーから送出される空気の流れ、車両の排気管から排出される排気ガスの流れ、ドライヤから送出される熱風の流れ等、温度が大きく異なる気体が検知対象として挙げられることが多い。
【0131】
ここで、計測された温度範囲に比べて温度変動量がわずかな場合、温度画像データそのものからは流れを認識することはできない。例えば、計測する温度範囲を15℃から25℃とし、温度変動を0.1℃とすると、温度画像データを表示する場合、ダイナミックレンジに対する変化量は1/100となるため、温度変動成分は、背景に埋もれてしまい、流れとして表現することはできない。つまり、温度画像データを時系列に表示したとしても、温度画像データから温度変動成分を認識することは困難である。
【0132】
そのため、一定期間内での解析により温度変動成分を算出し、これを指標とすることで、表示の温度範囲を狭めることができ、その結果、温度変動成分を、背景温度に埋もれることなく流体の流れとして表現することができる。特に背景の温度範囲が広い場合、つまり、ダイナミックレンジが広い場合に、効果的である。
【0133】
記憶部2aに格納されているデータベースには、例えば計測対象が大気であるときの、切り出し窓幅、解析ステップ及び解析周波数等を含む。
【0134】
このデータベースは、計測対象の大気に対して温度変動分布解析を行ったときに、新規登録または更新設定される。
【0135】
流れ計測部12では、空間内の大気について処理を実行する場合には、データベースに登録された切り出し窓幅、解析ステップ、解析周波数を読み出し、これに基づき温度変動分布解析を行う。
【0136】
具体的には、流れ計測部12では、赤外線カメラ1Aから予め設定されたフレームレートで撮影された計測対象の流体の温度画像データを記憶部2aに時系列に格納する。
【0137】
そして、温度変動分布解析を行うときには、図14のフローチャートに示すように、まず、記憶部2aに格納された温度画像データを読み込み(ステップS11)、続いて入力装置により計測対象の流体として大気が設定されると、流れ計測部12では、記憶部2aのデータベースに登録されている切り出し窓幅、解析ステップ及び解析周波数を読み出し、これらを温度変動分布解析用のパラメータ値として設定する(ステップS14)。
【0138】
そして、流れ計測部12は、ステップS14で設定された切り出し窓幅と解析ステップで、時系列温度データから部分温度データを切り出し(ステップS16)、切り出した部分温度データそれぞれについて短時間フーリエ変換法を用いて温度変動分布解析を行う( ステップS17)。具体的には、温度変動分布解析用のパラメータ値として設定された解析周波数の正弦波信号と余弦波信号を用いて、切り出した部分温度データ信号に対し、サイン変換とコサイン変換からなるフーリエ変換を行う。
【0139】
このとき、入力装置からパラメータ値が再度設定されたならばステップS16の処理を再度行い、例えば確定操作が行われたとき、このときのパラメータ値を温度変動分布解析用のパラメータ値としてデータベースに記憶する。さらに、部分温度データ毎の短時間フーリエ変換による温度変動分布解析の結果について、振幅を温度変動値とし、位相から温度変動の正負を判断する。
【0140】
なお、ここでは、正弦波信号と余弦波信号とを用いてフーリエ変換を行っているが、正弦波信号及び余弦波信号のうちのいずれか一方のみを用いた変換処理を行ってもよい。
【0141】
そして、記憶した温度変動分布解析用のパラメータ値を用いて、一つの画素の温度変動分布解析を行ったならば、次の画素について同様に処理を行う。そして、全ての画素について温度変動分布解析を行ったならば、次の部分温度データについて同様に温度変動分布解析を行い、全ての部分温度データについて温度変動分布解析を行ったならば、ステップS18に移行し、解析結果の表示処理を行う。具体的には、部分温度データの単位で、温度変動分布解析の結果を時系列に表示する。
【0142】
ステップS18での、解析結果の表示処理は、例えば、図15に示すように、赤外線カメラ1Aによる温度画像における各画素について同一時点における部分温度データから得た、各画素の温度変動値からなる温度変動分布画像を、温度変動値の大きさに応じて表示形態を変える等して、表示装置に表示する。図15に示すように、各部分温度データから得た温度変動分布画像を時系列に表示することによって、温度変動分布の変化状況を表示することができる。なお、図15は、気流を計測対象としたものであり、天井における気流の流れを可視化したものである。
【0143】
ここで、気流があるということは、ある一つの地点では、温度変動が現れることになる。そのため、温度変動の分布を計測し、温度変動の分布を時系列に表示することによって、計測対象の気流の流れを可視化することができる。つまり、流れがある場合、単位時間に温度変動が凸になる場合と温度変動が凹になる場合とが、交互に繰り返されるが、これを時間的に連続して描画することで、気流の流れを可視化することができる。つまり、大気の流れ計測画像を表示することができる。
<第4実施形態の動作>
【0144】
次に、大気計測システム20における処理手順の一例を示すフローチャート(図16)を伴って、動作を説明する。
【0145】
まず、選択部14の機能により、ユーザは、画像処理装置2を操作して流れ計測画像を表示するか否かを設定する。また、流れ計測画像を表示する場合には、流れ計測画像と温度分布画像とを表示装置13に重畳表示するのか、上下又は左右に並べて表示するのか、等の表示型式を設定する。
【0146】
画像処理装置2では、ユーザによる選択情報を読み込むと(ステップS21)、温度測定部11の機能により、大気の温度分布測定処理を行う(ステップS22)。具体的には、例えば上記第1実施形態における処理手順と同様の手順で、校正用温度データを取得し、大気温度の演算式を確定した後、温度データを取得し、確定した大気温度の演算式を用いて例えば画素毎に大気の温度TAを演算し、測定対象空間の大気の温度分布を取得して記憶部2aに格納する。
【0147】
続いて、ステップS21の処理で、流れ計測画像の表示が指示されている場合には(ステップS23)、ステップS24に移行し、流れ計測部12の機能により、大気の流れ計測処理を行う。なお、流れ計測部12で用いる温度データは、大気の温度分布測定処理によって記憶部2aに格納した温度データを用いることが好ましい。
【0148】
ステップS21の処理で、流れ計測画像の表示が指示されていない場合、また、ステップS24で大気の流れ計測処理が終了したならば、ステップS25に移行し表示処理を行う。このとき、ステップS21で流れ計測画像の表示が指示されていない場合には、大気の温度分布画像を表示装置13に表示する。また、流れ計測画像の表示が指示されている場合には、同じ時刻に対応する大気の温度分布画像と流れ計測画像とを、重畳表示する、或いは、左右に並べて表示する等の指示にしたがって表示装置13に表示する。
【0149】
そして、選択部14の機能により、表示画面の切り替えが指示されたならば(ステップS26)、ステップS25に戻って指示に応じて表示画面を切り替える。そして、大気の温度分布画像及び流れ計測画像の表示の終了操作が行われなければステップS27からステップS25に戻って引き続き指定された画像の表示処理を実行し、終了操作が行われたとき(ステップS27)、処理を終了する。
【0150】
このように、第4実施形態に係る大気計測システム20では、流れ計測画像と、温度分布画像とを共に表示することができるため、両者を参照することによって、どの程度の温度の大気がどのように流れているかを視覚的に容易に認識することができる。そのため、温度分布画像を用いた解析等を容易に行うことができ、特に、エアーコンディショナー等の空調機器の効率を評価するのに好適である。
【0151】
なお、第4実施形態においては、温度測定部11として、第1実施形態における温度測定装置10を適用した場合について説明したが、温度測定部11として第2実施形態における温度測定装置10-1又は第3実施形態における温度測定装置10-2を適用することも可能である。
【0152】
また、第4実施形態においては、流れ計測部12では、大気の温度測定処理によって記憶部2aに時系列に格納した温度データを用いて、短時間フーリエ変換法により温度変動分布の解析を行い流れ計測画像を表示しているが、これに限るものではない。特許文献4に記載されているように、短時間フーリエ変換法を用いて流れ計測画像を取得する方法と、リアルタイムで温度変動分布を取得するバンドパスフィルタ法を用いて流れ計測画像を取得する方法とのいずれかの方法で流れ計測画像を取得できるように構成してもよく、また、バンドパスフィルタ法のみを用いて流れ計測画像を取得するように構成してもよい。大気の流れ計測画像を表示することができれば、温度変動分布の取得方法は制限されない。
【0153】
なお、上記各実施形態においては、赤外線センサとして赤外線カメラを用いているが、赤外線センサとして赤外線受光素子を用いてもよい。この場合には、赤外線カメラ1A及び1Bの感度特性と同等の感度特性を有する赤外線受光素子を、赤外線カメラ1A、1Bそれぞれに対応する赤外線受光素子として用いればよい。この場合も、測定対象空間内の測定地点に赤外線受光素子を配置する必要はないため、赤外線受光素子を容易に設置することができる。特に、測定対象空間内の温度分布を検出するためには、測定地点毎に赤外線受光素子を配置することになるが、本実施形態に係る温度測定装置10によれば、測定対象空間内の測定地点に赤外線受光素子を配置する必要はないため、複数の赤外線受光素子を配置する場合でも、容易に配置することができる。
【0154】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0155】
1A、1B、1C 赤外線カメラ
2 画像処理装置
2a 記憶部
3 フィルタホイール
3a 光学フィルタ
10、10-1、10-2 温度測定装置
11 温度測定部
12 流れ計測部
13 表示装置
14 選択部
15 表示処理部
20 大気計測システム
図1
図2
図3
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