IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ポリエーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/30 20060101AFI20231129BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08G65/30
C08G65/336
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020514396
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2019016334
(87)【国際公開番号】W WO2019203234
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2018079524
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】長岡 優
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-504469(JP,A)
【文献】特開2010-254978(JP,A)
【文献】国際公開第2006/049088(WO,A1)
【文献】特開2003-313289(JP,A)
【文献】特開2003-105078(JP,A)
【文献】特開平04-036312(JP,A)
【文献】国際公開第2019/203233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物、および塩の少なくとも一方を含む水溶性化合物を含有する粗製ポリエーテルから該水溶性化合物を取り除く工程を含むポリエーテルの製造方法であって、
工程(1)前記粗製ポリエーテルと有機溶媒とを混合する工程、および、
工程(2)前記粗製ポリエーテルと前記有機溶媒との混合液において析出した固形物を除去する工程、
を含み、
前記水溶性化合物が、アルカリ金属化合物または複合金属シアン化物錯体触媒由来の化合物であり、
前記有機溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であるか、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせであり、
前記工程(1)において、前記粗製ポリエーテル100重量部と、前記非プロトン性極性有機溶媒5~1000重量部、または前記プロトン性極性有機溶媒5~1000重量部とが混合され、
前記工程(1)における前記粗製ポリエーテルと前記有機溶媒との混合から前記工程(2)における前記固形物の除去の間に、ポリエーテルを含む均一溶液を、液-液相分離させる、ポリエーテルの製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒が前記非プロトン性極性有機溶媒である、請求項1に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が前記プロトン性極性有機溶媒と前記非極性有機溶媒との組み合わせである、請求項1に記載の、ポリエーテルの製造方法。
【請求項4】
前記非プロトン性極性有機溶媒が、ケトン系溶媒およびアミド系溶媒のいずれかである、請求項1または2に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項5】
前記非プロトン性極性有機溶媒が、ケトン系溶媒である、請求項4に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項6】
前記非プロトン性極性有機溶媒が、アセトンである、請求項5に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項7】
前記プロトン性極性有機溶媒が、アルコール系溶媒である、請求項1または3に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項8】
前記プロトン性極性有機溶媒が、炭素数1~3のアルコール系溶媒である、請求項7に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項9】
前記プロトン性極性有機溶媒がメタノールである、請求項8に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項10】
前記非極性有機溶媒が、鎖式あるいは環式飽和炭化水素である、請求項1、3、7、8、または9に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項11】
前記非極性有機溶媒がヘキサン、および/またはシクロヘキサンである、請求項10に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項12】
前記プロトン性極性有機溶媒の重量と前記非極性有機溶媒との重量比が、プロトン性極性有機溶媒の重量/非極性有機溶媒の重量として、1/1~1/100である、請求項1、3、7、8、9、10、または11に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項13】
均一溶液の温度を変化させることにより液-液相分離を生じさせる、請求項12に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項14】
前記粗製ポリエーテルと前記有機溶媒とを混合する時の温度が0~140℃である請求項1~13のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項15】
前記混合液において固形物を析出させる温度が0~140℃である、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項16】
前記固形物を除去する操作が静置分離、遠心分離またはろ過の少なくとも1つを含む操作である、請求項1~15のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項17】
前記工程(2)が複数回実施される、請求項1~16のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項18】
前記粗製ポリエーテルが、水酸基末端ポリエーテル、または不飽和基含有ポリエーテルである、請求項1~17のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項19】
前記粗製ポリエーテルの主鎖が、プロピレンオキサイドの開環重合体である、請求項18に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項20】
金属化合物、および塩の少なくとも一方を含む水溶性化合物を含有する粗製不飽和基含有ポリエーテルから該水溶性化合物を取り除く工程として
工程(1A):前記粗製不飽和基含有ポリエーテルと有機溶媒とを混合する工程、および、
工程(2A):前記粗製不飽和基含有ポリエーテルと前記有機溶媒との混合液において析出した固形物を除去する工程、
を含み、さらに、
工程(3A):前記工程(1A)、および前記工程(2A)を経て得られた精製された不飽和基含有ポリエーテルが有する不飽和基を、下記一般式(1)で示されるシラン化合物によりヒドロシリル化して反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得る工程を含み、
前記工程(1A)における前記粗製不飽和基含有ポリエーテルと前記有機溶媒との混合から前記工程(2A)における前記固形物の除去の間に、不飽和基含有ポリエーテルを含む均一溶液を、液-液相分離させ、
前記有機溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であるか、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせであり、
前記工程(1A)において、前記粗製ポリエーテル100重量部と、前記非プロトン性極性有機溶媒5~1000重量部、または前記プロトン性極性有機溶媒5~1000重量部とが混合される、反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法。
H-(SiR 2-bO)-Si(R3-a (1)
(一般式(1)中、RおよびRは同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、R’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよく、Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示し、m個の-(SiR 2-bO)-で表される基において、mが2以上の整数である場合、二個以上のbは同一であってもよく、異なっていてもよく、mは0から19の整数を示し、但し、aおよびbは、a+Σb≧1を満足する。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基含有ポリエーテルは、室温においても湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し得る。反応性ケイ素基含有ポリエーテルが、かかる架橋反応によるゴム状硬化物を与える性質を有することが知られている。
【0003】
反応性ケイ素基含有ポリエーテルは、すでに工業的に生産されている。反応性ケイ素含有ポリエーテルは、シーリング材、接着剤、塗料等の用途に広く使用されている。
【0004】
このような反応性ケイ素基含有ポリエーテルを製造する方法の一例として、KOH等のアルカリ金属または複合金属シアン化物錯体を触媒としてアルキレンオキシドの開環重合を行い、末端に水酸基を有するポリエーテルを製造し、当該ポリエーテルが有する末端水酸基をオレフィンへ変換し、末端に不飽和基を有する不飽和基含有ポリエーテルを得る方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法等により得られる不飽和基含有ポリエーテルの末端の不飽和基と、反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物とのヒドロシリル化反応によって反応性ケイ素基含有ポリエーテルを製造する方法が知られており、すでに工業的に実用化されている。
【0005】
しかし、上記方法において、不飽和基含有ポリエーテル中にアルカリ性成分が存在したり、または、複合金属シアン化物錯体および/またはその残渣化合物のような重合触媒由来の金属不純物が存在すると、その後のヒドロシリル化反応が阻害される場合がある。また、不飽和基含有ポリエーテル中に塩が多く存在すると、濁りの原因となる。
【0006】
反応阻害や濁りの防止のため、不飽和基含有ポリエーテルと、酸性成分が添加された洗浄水とを激しく撹拌し、水相を取り除くこと、または、不飽和基含有ポリエーテルと有機溶媒と洗浄水とを激しく撹拌し、水相を取り除くことで、不飽和基含有ポリエーテル中のアルカリ性成分、重合触媒由来の金属不純物、および塩を低減させることが可能である。(特許文献2、特許文献3参照)
【0007】
しかし、上記精製方法では、水を使用しているため、排水設備が必要となり、プロセスが煩雑であったり、ポリエーテルと洗浄水を混合するため、激しい撹拌が必要であったり、激しい撹拌を実施すると系が乳化状態になりやすく、撹拌後のポリエーテルと水との分離に長時間を要する可能性があったり、不十分な不純物除去によりヒドロシリル化が阻害される場合があったりする等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平4-36312号公報
【文献】国際公開第2006/049088号
【文献】特開2002-249580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の課題を鑑みてなされたものであって、水溶性化合物を含む粗製ポリエーテルと非プロトン性極性有機溶媒と、または、粗製ポリエーテルとプロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを各々混合し、その後、析出した固形物を静置分離、遠心分離またはろ過で分離することで、水を使用しなくても、ポリエーテルから効率良く不純物を除去できる精製されたポリエーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]水溶性化合物を含有する粗製ポリエーテルから該水溶性化合物を取り除く工程を含むポリエーテルの製造方法であって、
工程(1)粗製ポリエーテルと有機溶媒とを混合する工程、および、
工程(2)粗製ポリエーテルと有機溶媒との混合液において析出した固形物を除去する工程、
を含み、
有機溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であるか、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせである、ポリエーテルの製造方法。
[2]有機溶媒が非プロトン性極性有機溶媒である、[1]に記載のポリエーテルの製造方法。
[3]有機溶媒がプロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせである、[1]に記載の、ポリエーテルの製造方法。
[4]非プロトン性極性有機溶媒が、ケトン系溶媒およびアミド系溶媒のいずれかである、[1]または[2]に記載のポリエーテルの製造方法。
[5]非プロトン性極性有機溶媒が、ケトン系溶媒である、[4]に記載のポリエーテルの製造方法。
[6]非プロトン性極性有機溶媒が、アセトンである、[5]に記載のポリエーテルの製造方法。
[7]プロトン性極性有機溶媒が、アルコール系溶媒である、[1]または[3]に記載のポリエーテルの製造方法。
[8]プロトン性極性有機溶媒が、炭素数1~3のアルコール系溶媒である、[7]に記載のポリエーテルの製造方法。
[9]プロトン性極性有機溶媒がメタノールである、[8]に記載のポリエーテルの製造方法。
[10]粗製ポリエーテル100重量部と、非プロトン性極性有機溶媒1~1000重量部、またはプロトン性極性有機溶媒1~1000重量部とを混合する、[1]~[9]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[11]非極性有機溶媒が、鎖式あるいは環式飽和炭化水素である、[1]、[3]、[7]、[8]、[9]、または[10]に記載のポリエーテルの製造方法。
[12]非極性有機溶媒がヘキサン、および/またはシクロヘキサンである、[11]に記載のポリエーテルの製造方法。
[13]プロトン性極性有機溶媒の重量と非極性有機溶媒との重量比が、プロトン性極性有機溶媒の重量/非極性有機溶媒の重量として、1/1~1/100である、[1]、[3]、[7]、[8]、[9]、[10]、[11]、または[12]に記載のポリエーテルの製造方法。
[14]工程(1)における粗製ポリエーテルと有機溶媒との混合から工程(2)における固形物の除去の間に、ポリエーテルを含む均一溶液を液-液相分離させる、[1]~[13]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[15]均一溶液の温度を変化させることにより液-液相分離を生じさせる、[14]に記載のポリエーテルの製造方法。
[16]粗製ポリエーテルと有機溶媒とを混合する時の温度が0~140℃である[1]~[15]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[17]混合液において固形物を析出させる温度が0~140℃である、[1]~[16]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[18]固形物を除去する操作が静置分離、遠心分離またはろ過の少なくとも1つを含む操作である、[1]~[17]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[19]工程(2)が複数回実施される、[1]~[18]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[20]粗製ポリエーテルが、水酸基末端ポリエーテル、不飽和基含有ポリエーテルおよび反応性ケイ素基含有ポリエーテルからなる群より選ばれるいずれかである、[1]~[19]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[21]水溶性化合物が、アルカリ金属化合物または複合金属シアン化物錯体触媒由来の化合物であることを特徴とする、[1]~[20]のいずれか1つに記載のポリエーテルの製造方法。
[22]水溶性化合物を含有する粗製不飽和基含有ポリエーテルから該水溶性化合物を取り除く工程として
工程(1A):粗製不飽和基含有ポリエーテルと有機溶媒とを混合する工程、および、
工程(2A):粗製不飽和基含有ポリエーテルと有機溶媒との混合液において析出した固形物を除去する工程、
を含み、さらに、
工程(3A):工程(1A)、および工程(2A)を経て得られた精製された不飽和基含有ポリエーテルが有する不飽和基を、下記一般式(1)で示されるシラン化合物によりヒドロシリル化して反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得る工程を含み、
有機溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒であるか、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせである、反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法。
H-(SiR 2-bO)-Si(R3-a (1)
(一般式(1)中、RおよびRは同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、R’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよく、Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示し、m個の-(SiR 2-bO)-で表される基において、mが2以上の整数である場合、二個以上のbは同一であってもよく、異なっていてもよく、mは0から19の整数を示し、但し、aおよびbは、a+Σb≧1を満足する。)
【0012】
また、本発明は以下に関する。
[23]水溶性化合物を含有するポリエーテル(以下、粗製ポリエーテルという)から該水溶性化合物を取り除く工程を含むポリエーテルの製造方法であって、
工程(1):粗製ポリエーテルに非プロトン性極性溶媒を混合する工程
工程(2):析出した固形物を除去する工程
を少なくとも含むことを特徴とするポリエーテルの製造方法。
[24]水溶性化合物を含有するポリエーテル(以下、粗製ポリエーテルという)から該水溶性化合物を取り除く工程を含むポリエーテルの製造方法であって、
工程(1):粗製ポリエーテルにプロトン性極性溶媒(水を除く)ならびに非極性溶媒を混合する工程
工程(2):析出した固形物を除去する工程
を少なくとも含むことを特徴とするポリエーテルの製造方法。
[25]水溶性化合物を含有する不飽和基含有ポリエーテル(以下、粗製不飽和基含有ポリエーテルという)から該水溶性化合物を取り除く、
工程(1):粗製不飽和基含有ポリエーテルに非プロトン性極性溶媒を混合する工程
工程(2):析出した固形物を除去する工程
を少なくとも含み、その後、下記一般式(1)で示されるシラン化合物によりヒドロシリル化して得られた、反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法。
H-(SiR 2-bO)-Si(R 3-a)X (1)
(式中、RおよびRは同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の-(SiR 2-bO)-基におけるbについて、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0から19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。)
[26]水溶性化合物を含有する不飽和基含有ポリエーテル(以下、粗製不飽和基含有ポリエーテルという)から該水溶性化合物を取り除く、
工程(1):粗製不飽和基含有ポリエーテルにプロトン性極性溶媒(水を除く)ならびに非極性溶媒を混合する工程
工程(2):析出した固形物を除去する工程
を少なくとも含み、その後、下記一般式(1)で示されるシラン化合物によりヒドロシリル化して得られた、反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法。
H-(SiR 2-bO)-Si(R 3-a)X (1)
(式中、RおよびRは同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の-(SiR 2-bO)-基におけるbについて、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0から19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水溶性化合物を含有する粗製ポリエーテルから水溶性化合物を除去するにあたって、粗製ポリエーテルと非プロトン性極性有機溶媒とを混合するか、または、粗製ポリエーテルとプロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを混合し、その後、析出した固形物を静置分離、遠心分離またはろ過で分離することにより、激しい撹拌や水を使用することなく、ポリエーテルから効率良く水溶性化合物を除去し、また、低濁度のポリエーテルが得られるポリエーテルの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ポリエーテルの製造方法)
ポリエーテルの製造方法は特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。ポリエーテルの製造方法において用いられる粗製ポリエーテルは、水溶性化合物を不純物として含むポリエーテルであれば特に限定されない。粗製ポリエーテルとしては、例えば、水酸基末端ポリエーテル、不飽和基含有ポリエーテルおよび反応性ケイ素基含有ポリエーテルからなる群から選択されるポリエーテルを用いることができる。
【0015】
ポリエーテルの製造方法としては、例えば、特許文献1に記載の製造方法が好ましい。
特許文献1に記載の製造方法では、ポリエーテルの末端の水酸基を金属アルコキシドによりアルコキシド化した後に、炭素-炭素不飽和基を有する不飽和基含有ハロゲン化物を反応させてポリエーテルの末端に炭素-炭素不飽和基を導入する。
【0016】
水酸基末端ポリエーテルの製造方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。
【0017】
一般的な製造方法としては、例えば、複合金属シアン化物錯体を触媒として用いる重合反応が挙げられる。
【0018】
水酸基末端ポリエーテルの主鎖構造は、-R-O-で表される繰り返し単位が好ましい。
【0019】
ここで、Rは、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の有機基である。主鎖中の複数のRは、同一の基であってもよく、2種以上の異なった基であってもよい。
【0020】
Rとしてはアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。
【0021】
-R-O-で表される繰り返し単位としては、-CHCHO-、-CH(CH)CHO-、-CH(C)CHO-、-C(CHCHO-、および-CHCHCHCH2O-等をあげることができるが、-CHCHO-、-CH(CH)CHO-が好ましく、-CH(CH)CHO-が特に好ましい。
【0022】
また、水酸基末端ポリエーテルの主鎖は、分岐していてもよく、架橋していてもよい。
【0023】
水酸基末端ポリエーテルは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキサイドを開環重合させて製造されるものが好ましい。
【0024】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α-ブチレンオキサイド、β-ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、およびα-メチルスチレンオキシド等を挙げることができる。
【0025】
また、上記アルキレンオキサイド以外に、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテル等の炭素原子数2~12の置換または非置換のグリシジルエーテル類等も使用することができる。
【0026】
開始剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノールおよび2,2-ジメチル-1-プロパノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、メタリルアルコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の2価アルコールまたは多価アルコール、および水酸基を有する各種重合体等を挙げることができる。
【0027】
このようにして得られる水酸基末端ポリエーテルは、次いで、金属アルコキシドとの反応(アルコキシド化反応)により、-OM(Mはアルカリ金属)で表される末端基を有するポリエーテルに変換される。
【0028】
金属アルコキシドとしては、水酸基末端ポリエーテルが有する末端水酸基(-OH)中の水素原子を、アルカリ金属原子に置換可能な化合物であれば特に限定されない。
【0029】
金属アルコキシドとしては、炭素原子数1~4のアルカリ金属アルコキシドが用いられる。
【0030】
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびカリウムエトキシドが好ましく、ナトリウムメトキシド、およびカリウムメトキシドがより好ましく、入手性の点でナトリウムメトキシドが特に好ましい。
【0031】
金属アルコキシドは2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、1種類を単独で用いることが好ましい。
【0032】
次いで、-OMで表される末端基を有するポリエーテルは、ハロゲン化物との反応(アリル化反応)により、精製前の金属不純物を含む不飽和基含有ポリエーテルに変換される。
【0033】
不飽和基含有ハロゲン化物としては、下記式で表される化合物が好ましい。
H(R)C=C(R)-R-Y
(上記式中、Rは酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の有機基であり、R、Rは、水素原子、または炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Yはハロゲン原子である。)
不飽和基含有ハロゲン化物としては、入手性の点でアリルクロライド、およびメタリルクロライド(3-クロロ-2-メチル-1-プロペン)が好ましい。
【0034】
不飽和基含有ハロゲン化物は2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、1種類を単独で用いることが好ましい。
【0035】
水酸基末端ポリエーテルに、金属アルコキシドを作用(アルコキシド化反応)させた後、炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物と反応させ、さらに上記ハロゲン化物と反応(例えば、アリル化反応)させることで、不飽和基を1つの末端に1個より多く有する不飽和基含有ポリエーテルを得ることもできる。炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物としては、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0036】
ポリエーテルと不飽和基含有ハロゲン化物との反応完了後も撹拌を継続することで、金属アルコキシド、または金属アルコキシド中のアルカリ性不純物が、不飽和基含有ハロゲン化物と反応することにより消費される。不飽和基含有ハロゲン化物の添加後に、炭素数1~3のアルコールまたは水の中から選ばれる少なくとも一種を添加することにより、これらアルカリ性成分の溶解度が高まり、アルカリ性成分と不飽和基含有ハロゲン化物との反応が促進される。結果として、アルカリ性成分の消費速度を速めることが可能となる。炭素数1~3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノール等が挙げられ、メタノール、およびエタノールがより好ましい。これらのアルコールの中では、アルカリ性成分に対してより良い良溶媒であり、少ない添加部数でアルカリ性成分を溶解可能であるため、メタノールが特に好ましい。
ただし、アルコールはこれらに限定されず、分子内の水酸基の数は2つ以上であってもよく、分子内に炭素、水素、酸素以外の原子を含有していてもよい。炭素数4以上のアルコールを用いると、アルカリ性成分の溶解性が不十分であり効果が限定的である。また、炭素数4以上のアルコールは沸点が高く、反応後の除去が難しい。
【0037】
炭素数1~3のアルコールまたは水の中から2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、1種類を単独で用いることが好ましい。
【0038】
炭素数1~3のアルコールまたは水の添加部数については特に限定しないが、不飽和基含有ポリエーテル100重量部に対し、0.05~20重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましい。添加部数が過少であるとアルカリ成分が十分に溶解しにくく、アルコールまたは水の添加効果が限定的である場合がある。また、添加部数が過多であると、アルコールまたは水添加時の圧力の上昇が大きくなり、添加が困難である等の不都合が生じる場合がある。
【0039】
アルコールまたは水添加後の撹拌時間は特に限定しないが、8時間以内が好ましく、4時間以内がより好ましい。撹拌時間を過度に長くしても、生産効率の低下に見合うだけのアルカリ性成分の除去効果を得られる訳ではない。
【0040】
上述の方法により得られる不飽和基含有ポリエーテル中には、金属不純物や塩が含まれる。次ぐ精製工程での除去対象となる水溶性化合物としては、亜鉛塩、コバルト塩および/またはアルカリ金属塩等の、アルカリ金属化合物または複合金属シアン化物錯体触媒由来の化合物等が例示できる。
【0041】
(ポリエーテルの精製)
精製されたポリエーテルの製造方法は、水溶性化合物を含有する粗製ポリエーテルから該水溶性化合物を取り除く工程を含む方法である。
上記製造方法は、
工程(1)粗製ポリエーテルと有機溶媒とを混合する工程、および、
工程(2)粗製ポリエーテルと有機溶媒との混合液において析出した固形物を除去する工程、
を含む。工程(1)および工程(2)で使用される有機溶媒は、非プロトン性極性有機溶媒であるか、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせである。
【0042】
つまり、ポリエーテルの精製方法において、精製は、水溶性化合物を含有する粗製ポリエーテルと非プロトン性極性有機溶媒と、または、粗製ポリエーテルとプロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを各々混合し、その後、析出した固形物を静置分離、遠心分離またはろ過で分離することで行われる。
【0043】
本明細書において、非プロトン性極性有機溶媒とは、比誘電率が10以上の解離性のHをもたない有機溶媒である。プロトン性極性有機溶媒とは、比誘電率が10以上の解離性のHをもつ有機溶媒である。非極性有機溶媒とは、比誘電率が10未満の有機溶媒である。
【0044】
非プロトン性極性有機溶媒は特に限定されない。当該非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が好ましく、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒がより好ましく、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が特に好ましい。
さらに、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンがより好ましく、アセトンが特に好ましい。
【0045】
プロトン性極性有機溶媒は特に限定されない。当該プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ヘキサノール等のアルコール系溶媒;ギ酸、酢酸、フェノール等が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ヘキサノール等のアルコール系溶媒が特に好ましい。さらに、アルコール系溶媒としては、炭素数1~3のアルコールが好ましい。炭素数1~3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等があげられ、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。分子内の水酸基の数は2つ以上であっても良く、分子内に炭素、水素、酸素以外の原子を含有していてもよい。
【0046】
ポリエーテルと混合される非プロトン性極性有機溶媒、またはプロトン性極性有機溶媒の量は、粗製ポリエーテル100重量部に対して、それぞれ1~1000重量部が好ましく、5~500重量部がより好ましい。
【0047】
非極性有機溶媒は特に限定されない。当該非極性有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の鎖式あるいは環式飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類が好ましく、鎖式あるいは環式飽和炭化水素、芳香族炭化水素がより好ましく、鎖式あるいは環式飽和炭化水素が特に好ましい。さらに鎖式あるいは環式飽和炭化水素としては、ヘキサン、シクロヘキサンであることが好ましい。
【0048】
プロトン性極性有機溶媒/非極性有機溶媒の重量比としての混合比は、1/1~1/100が好ましく、1/1~1/30がより好ましい。かかる範囲内の混合比でプロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒とが使用されると、両者の併用による所望する効果を得やすく、また、過度に大きい装置を用いる必要がなく、精製後の溶媒を短時間で除去しやすい。
有機溶媒を加えた後の状態は、特に限定されない。ポリエーテルと有機溶媒は均一溶液になることが好ましい。なお、均一溶液であるとは、ポリエーテルと有機溶媒とが均一な溶液を形成していればよい。有機溶媒の添加後に固形物が析出している場合であっても、ポリエーテルと有機溶媒とが均一な溶液を形成していれば、かかる状態について、ポリエーテルと有機溶媒とが均一溶液を形成しているとする。
ポリエーテルと有機溶媒とが均一溶液を形成する場合、工程(1)における粗製ポリエーテルと有機溶媒との混合から工程(2)における固形物の除去の間に、ポリエーテルを含む均一溶液を、液-液相分離させるのが好ましい。
この場合、ポリエーテルに含まれる不純物である水溶性化合物を、液-液分離後に形成した2つの液相のうちの1つの相に高濃度の水溶性化合物を抽出しつつ、高濃度な水溶性化合物が存在する相において水溶性化合物を固形物として析出させることによって、効率よくポリエーテルを精製することができる。
相分離させる方法は、特に限定されない。相分離させる方法は、温度変化、pH変化、塩析であることが好ましく、温度変化、pH変化であることがさらに好ましく、温度変化であることが特に好ましい。
相分離させる方法としては、均一溶液の温度を変化させる方法が好ましい。温度変化は、液-液相分離可能であれば特に限定されず、昇温であっても冷却であってもよく、冷却が好ましい。
液-液相分離について、より具体的には、有機溶媒が非プロトン性極性有機溶媒である場合、ポリエーテルを主体とする相と、有機溶媒を主体とする相とに分離する。有機溶媒が、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせである場合、ポリエーテルと非プロトン性極性有機溶媒とを主体する相と、ポリエーテルと非極性有機溶媒とを主体とする相とに分離する。
【0049】
ポリエーテルと有機溶媒とを混合する時の温度は、特に限定されない。ポリエーテルと溶媒とを混合する温度は、0℃以上が好ましい。ただし、140℃を超えると、ポリマーの劣化が懸念されることから、実用上0~140℃が好ましい。特に、ポリエーテルと有機溶媒が均一溶液になる温度で混合することが好ましい。
【0050】
ポリエーテルと有機溶媒とを混合する方法は、特に限定されない。混合方法としては、振とう器や撹拌機を使用する方法が好ましい。
【0051】
固形物を析出させる時の温度は、特に限定されない。固形物を析出させる温度は、0℃以上が好ましい。ただし、140℃を超えると、ポリマーの劣化が懸念されることから、実用上0~140℃が好ましい。特に、ポリエーテルと有機溶媒とが相分離する温度にすることが好ましい。
【0052】
固形物を分離する操作も、特に限定されない。分離操作は、静置分離、遠心分離またはろ過の少なくとも1つを含む操作であることが好ましく、遠心分離またはろ過であることがより好ましい。ろ過による不純物の除去に際して、固形物を含むポリエーテルをそのままろ過装置に供給してもよい。ろ過性や、固形物の除去性を高めるためには、固形物を含む精製前ポリエーテルに、ろ過助剤を加えたスラリーを、ろ過装置にボディフィードすることが好ましい。
ろ過助剤は、精製ポリエーテルに分散させてボディフィードして用いることもできるが、精製ポリエーテルのフィードに先立って、ろ過装置にプレコートして利用することもできる。
ろ布等への微小な固形物の目詰まりが懸念される場合には、プレコートを行った上で、不純物を含有する精製ポリエーテルをそのまま供給することもでき、ろ過助剤を分散させた精製ポリエーテルをボディフィードで供給することもできる。
ろ過助剤としては、セライトやパーライト等の周知のろ過助剤を利用できる。例えば、昭和化学製のラヂオライトや、東興パーライト工業製のトプコ等として、粒子径の異なる種々グレードのろ過助剤の製品を入手可能である。
ろ過助剤としては、除去する不純物の種類に応じて、単独で、または複数の種類を混合して使用することが可能である。
なお、極端に小さい粒子径のろ過助剤を用いると、ろ過性(ろ過処理速度)が悪くなる場合があり、逆に、極端に大きい粒子径のろ過助剤を用いると、ろ過性が良い一方で、不純物の除去効率が悪化しやすい。
以上の観点から、不純物除去工程で使用されるろ過助剤の平均粒子径(レーザー法)は、例えば、20μm以上40μm以下のように30μm程度が好ましい。
析出させた固形物の平均粒子径(散乱強度)は、固形物分離工程における不純物除去効率が高い点から、600nm以上が好ましく、800nm以上がより好ましく、1000nm以上が特に好ましい。
また、固形物を析出させ分離する操作を複数回含んでもよい。ただし、回数が多いと生産性が悪化する。そのため、固形物を析出させ分離する工程は10回以下であることが好ましく、より好ましくは5回以下であり、特に好ましくは3回以下であり、最も好ましくは1回である。
【0053】
固形物を析出させる際には、無機酸、有機酸、アルカリ、無機塩、および有機塩等を添加してもしなくてもよい。
【0054】
(不飽和基含有ポリエーテルのヒドロシリル化)
精製後の不飽和基含有ポリエーテルの末端の不飽和基を、公知の方法によりヒドロシリル化することで反応性ケイ素基を導入して、反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得ることができる。
【0055】
不飽和基含有ポリエーテルのヒドロシリル化は特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。
【0056】
不飽和基を有するポリエーテルとヒドロシリル化を行なうシラン化合物としては、1個以上のSi-H基を分子内に有している化合物であればよい。代表的なものを示すと、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
H-(SiR 2-bO)-Si(R3-a (1)
(一般式(1)中、RおよびRは同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、R’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよく、Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の-(SiR 2-bO)-で表される基において、mが2以上の整数である場合、二個以上のbは同一であってもよく、異なっていてもよく、mは0から19の整数を示し、但し、aおよびbは、a+Σb≧1を満足する。)
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1~3個の範囲で結合することができる。上記一般式(1)において、(a+Σb)は1~5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0058】
特に、下記一般式(2)で表される化合物が入手が容易であるので好ましい。
H-SiR 3-c (2)
(一般式(2)中、R、Xは前記と同じ。cは1、2または3を示す。)
【0059】
具体的には、トリクロルシラン、メチルジクロルシラン、ジメチルクロルシラン、フェニルジクロルシラン、トリメチルシロキシメチルクロルシラン等のハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメチルシロキシメチルメトキシシラン、トリメチルシロキシジエトキシシラン等のアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシラン、トリメチルシロキシジアセトキシシラン等のアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジエチルケトキシメート)トリメチルシロキシシラン、ビス(メチルエチルケトキシメート)メチルシラン、トリス(アセトキシメート)シラン等のケトキシメートシラン類;メチルイソプロペニルオキシシラン等のアルケニルオキシシラン類等が挙げられる。これらのうち、特にアルコキシシラン類が好ましく、アルコキシ基の中でもメトキシ基が特に好ましい。
【0060】
ヒドロシリル化反応は、通常10~140℃、より好ましくは20~120℃、もっとも好ましくは40~100℃の範囲で行われるのが好適である。反応温度の調節、反応系の粘度の調整等の必要に応じて、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶媒を用いることができる。
【0061】
不飽和結合を導入したポリエーテルと加水分解性ケイ素基を有する化合物とのヒドロシリル化反応において用いる触媒としては、白金、ロジウム、等のVIII族遷移金属元素から選ばれた金属錯体触媒等が有効に使用される。金属錯体触媒としては、例えば、HPtCl・6HO、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、RhCl(PPh、等のような化合物が使用できる。ヒドロシリル化の反応性の点から、HPtCl・6HO、白金-ビニルシロキサン錯体、が特に好ましい。ここでいう白金-ビニルシロキサン錯体とは、白金原子に対し、配位子として分子内にビニル基を有する、シロキサン、ポリシロキサン、環状シロキサンが配位している化合物の総称である。上記配位子の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチル1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。触媒使用量としては特に制限は無いが、通常、アルケニル基1モルに対して白金触媒を10-1から10-8モル使用することが好ましい。
【0062】
このようにして合成された反応性ケイ素基含有ポリエーテルは硬化触媒の存在下で、大気中の水分により常温で硬化し、金属、ガラス等に密着性の良い塗膜を与え、建造物、航空機、自動車等の被膜組成物、密封組成物、塗料組成物、接着剤組成物として有用である。硬化触媒としては、従来公知のシラノール縮合触媒を使用することができる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
(反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法)
また、以下の反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法が提供される。
反応性ケイ素基含有ポリエーテルの製造方法は、具体的には、水溶性化合物を含有する粗製不飽和基含有ポリエーテルから該水溶性化合物を取り除く工程として
工程(1A):粗製不飽和基含有ポリエーテルと有機溶媒とを混合する工程、および、
工程(2A):粗製不飽和基含有ポリエーテルと有機溶媒との混合液において析出した固形物を除去する工程、
を含み、さらに、
工程(3A):工程(1A)、および工程(2A)を経て得られた精製された不飽和基含有ポリエーテルが有する不飽和基を、前述の一般式(1)で示されるシラン化合物によりヒドロシリル化して反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得る工程を含む。
工程(1A)および工程(2A)において用いられる有機溶媒は、非プロトン性極性有機溶媒であるか、プロトン性極性有機溶媒と非極性有機溶媒との組み合わせである。
工程(1A)および工程(2A)は、ポリエーテルの製造方法として前述した方法に従って実施される。
工程(3A)は、不飽和基含有ポリエーテルのヒドロシリル化として前述した方法に従って実施される。
かかる製造方法によれば、水を使用しなくても、効率良く不純物を除去できる精製された反応成形ケイ素基含有ポリエーテルを製造することができる。
また、上記の製造方法によれば、不純物である水溶性化合物によるヒドロシリル化反応の阻害が抑制される。
【実施例
【0064】
以下、本発明をより一層明らかにするために具体的な実施例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(pH測定)
不飽和基含有ポリエーテルのpHはJIS K 1557-5(試験方法:pH(参考))に記載の方法で測定した。
pH計は、メトラー・トレド(株)製S220-Kitを使用した。
【0066】
(濁度測定)
不飽和基含有ポリエーテルまたは反応性ケイ素基含有ポリエーテルを分光光度計用セル(アズワン(株)製2-478-05)に移してペルジャー((株)サンプラテック製PC-250K)を用いて脱泡処理を行った。脱泡処理はダイヤフラムポンプを用いて減圧し、目視で泡がなくなるまで実施した。脱泡処理したセルを分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製U-1800型)を用いて、A660(660nmの吸光度)を測定した。分光光度計のゼロ点調整には、イオン交換水を使用した。
【0067】
(合成例1)
数平均分子量300のポリプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの開環重合を行い、触媒および/またはその残渣である金属化合物を不純物として含む、数平均分子量約15000の水酸基末端ポリエーテルを得た。
【0068】
(合成例2)
合成例1で得られた水酸基末端ポリエーテルの水酸基に対して1.0倍当量のナトリウムメトキシドの30%メタノール溶液を添加してメタノールを留去した。その後、水酸基に対して1.8倍当量のアリルクロライドを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。アリルクロライド添加後1時間後にメタノール0.5部を添加し、さらに3時間撹拌した。その後、アリルクロライドとメタノールとを留去し、不飽和基含有ポリエーテル(a1)を得た。不飽和基含有ポリエーテル(a1)のpHを測定したところ、8.4であった。
【0069】
(実施例1)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)50gと、アセトン50gとをガラス容器に入れた。ガラス容器内の液を60℃まで加熱し、振とう器で10分間混合した。混合後の温度は15℃であった。その後、0.5μmメンブレンフィルターでろ過を行った。ろ過された液に対して、110℃で減圧脱揮を行った。脱揮後に得られた不飽和基含有ポリエーテルの濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例2)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)50gと、メタノール2.5gと、ヘキサン2.5gとをガラス容器に入れた。ガラス容器内の液を60℃まで加熱し、振とう器で10分間混合した。混合後の温度は15℃であった。その後、遠心分離機で固液分離を行った。固液分離後の液に対して、110℃で減圧脱揮を行った。脱揮後に得られた不飽和基含有ポリエーテルの濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例3)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)50gと、メタノール5gと、ヘキサン45gとをガラス容器に入れた。ガラス容器内の液を60℃まで加熱し、振とう器で10分間混合した。混合後の温度は15℃であった。その後、遠心分離機で固液分離を行った。固液分離後の液に対して、110℃で減圧脱揮を行った。脱揮後に得られた不飽和基含有ポリエーテルの濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例4)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)50gと、メタノール5gと、シクロヘキサン45gとをガラス容器に入れた。ガラス容器内の液を60℃まで加熱し、振とう器で10分間混合した。混合後の温度は15℃であった。その後、遠心分離機で固液分離を行った。固液分離後の液に対して、110℃で減圧脱揮を行った。脱揮後に得られた不飽和基含有ポリエーテルの濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)50gと、メタノール25gとをガラス容器に入れた。ガラス容器内の液を60℃まで加熱し、振とう器で10分間混合した。混合後の温度は15℃であった。その後、0.5μmメンブレンフィルターでろ過を行った。ろ過された液に対して、110℃で減圧脱揮を行った。脱揮後に得られた不飽和基含有ポリエーテルの濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)50gと、ヘキサン25gとをガラス容器に入れた。ガラス容器内の液を60℃まで加熱し、振とう器で10分間混合した。混合後の温度は15℃であった。その後、0.5μmメンブレンフィルターでろ過を行った。ろ過された液に対して、110℃で減圧脱揮を行った。脱揮後に得られた不飽和基含有ポリエーテルの濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
(実施例5)
実施例3で得られた不飽和基含有ポリエーテル50g、ヘキサン1g、およびアスコルビン酸0.0225gを200mL四つ口フラスコに加え、90℃で減圧脱揮を行った。その後、フラスコ内の液を1時間撹拌した。次いで、フラスコ内をNで置換し、白金-ビニルシロキサン錯体(Pt1wt%/イソプロパノール(以下、IPA))23μLを加え撹拌し、ジメトキシメチルシラン1.2gをゆっくり滴下した。その混合溶液を90℃で1時間反応させ、その後、110℃で減圧脱揮を行って、反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得た。NMRにより得られたポリマーの残アリル基率を測定した結果、未反応のアリル基率は1%であった。
【0077】
(比較例3)
比較例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル50g、ヘキサン1g、およびアスコルビン酸0.0225gを200mL四つ口フラスコに加え、90℃で減圧脱揮を行った。その後、フラスコ内の液を1時間撹拌した。次いで、フラスコ内をNで置換し、白金-ビニルシロキサン錯体(Pt1wt%/イソプロパノール(以下、IPA))23μLを加え撹拌し、ジメトキシメチルシラン1.2gをゆっくり滴下した。その混合溶液を90℃で1時間反応させ、その後、110℃で減圧脱揮を行って、反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得た。NMRにより得られたポリマーの残アリル基率を測定した結果、未反応のアリル基率は70%であった。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】