IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 大阪ガスケミカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エアフィルタ 図1
  • 特許-エアフィルタ 図2
  • 特許-エアフィルタ 図3
  • 特許-エアフィルタ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20231129BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20231129BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20231129BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20231129BHJP
   B01D 39/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61L9/014
B01D53/04 110
B01J20/20 A
B01D46/00 302
B01D39/14 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020565202
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2020000446
(87)【国際公開番号】W WO2020145345
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】201910020245.3
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾林 卓
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】今西 正千代
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-047649(JP,A)
【文献】特開2005-304844(JP,A)
【文献】特開2006-231324(JP,A)
【文献】特開2008-212448(JP,A)
【文献】特開2013-078540(JP,A)
【文献】特開2001-096166(JP,A)
【文献】特開2012-183534(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1499997(CN,A)
【文献】特開2002-210328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B01D 53/03 - 53/12
B01D 39/00 - 39/20
B01J 20/20
B01D 46/00 - 46/90
F24F 8/00 - 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面を有する面状のエアフィルタであって、
面方向に配列する複数のセルを画するコルゲートハニカム構造体と、前記複数のセルに充填された複数の多孔質の充填剤とを備え、
前記複数のセルは、複数の最小径セルと複数の大径セルからなり、
前記複数の最小径セルは、内接円の直径が最も小さいセルであり、
前記複数の大径セルは、内接円の直径が前記複数の最小径セルの内接円の直径よりも大きいセルであり、
前記最小径セルの個数に占める、前記充填剤が充填された最小径セルの個数の割合は50%以下であり、
前記大径セルの個数に占める、前記充填剤が充填された大径セルの個数の割合は25~100%であることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記複数のセルに占める前記最小径セルの割合が10~90面積%である、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記コルゲートハニカム構造体は、複数のライナー部材と複数のコルゲート部材とが互いに接着されて構成されており、
前記複数のライナー部材は、前記面方向に垂直な方向から観察した際に直線状であり、
前記複数のコルゲート部材は、前記面方向に垂直な方向から観察した際に前記ライナー部材が延伸する方向に添って山部と谷部が繰り返す波型形状であり、
前記複数のコルゲート部材は、前記波型形状の高さ及びピッチの一方又は両方が異なる二種以上のコルゲート部材を含む、請求項1または2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記複数のコルゲート部材は、前記ライナー部材を介することなく、互いの山部が直接接着されている一対以上のコルゲート部材を含む、請求項3に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
吸着剤が前記複数のライナー部材と前記複数のコルゲート部材を構成する基材の内部および表面のいずれか一方または双方に保持されている、請求項3または4に記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記複数の充填剤が球状である、請求項1~5の何れか一項に記載のエアフィルタ。
【請求項7】
前記充填剤は活性炭である、請求項1~6の何れか一項に記載のエアフィルタ。
【請求項8】
前記第1の面及び前記第2の面の一方又は両方に、通気性シートが配置されている、請求項1~7の何れか一項に記載のエアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭等の目的で使用するエアフィルタに関する。
本願は、2019年1月9日に中国国家知識産権局に出願された、出願番号201910020245.3に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機等において、脱臭等の目的で使用されるエアフィルタとしては、複数のライナー部材と複数のコルゲート部材とを交互に重ねることにより多数のセルを構成したコルゲートハニカム構造体が知られている。
処理対象となる空気は、セルを通過する間に悪臭成分等がコルゲートハニカム構造体に吸着することにより浄化される。
コルゲートハニカム構造体の材質としては、通常吸着剤を付着または含有させた紙が使用されている。
また、吸着効率や持続性を高めることを目的として、コルゲートハニカム構造体のセルに、活性炭等を充填した脱臭フィルタも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-47649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、セルに活性炭等を充填するためには、ある程度大きなセルが必要となる。その場合、処理対象となる空気は、セルを通過する間にコルゲートハニカム構造体に充分に接触することができず、コルゲートハニカム構造体の利点である即効性のある吸着性能を発揮しにくくなる。
【0005】
活性炭等を細かくすれば、セルをあまり大きくすることなく充填することが可能である。しかし、その場合、細かい活性炭等によりセルが目詰まりした状態となり、圧力損失が非常に高くなってしまう。
そのため、特許文献1のように、コルゲートハニカム構造体のセルに活性炭等を充填したエアフィルタは、実用化に至っていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、圧力損失の上昇を抑制しながら、活性炭等の充填剤を充填することにより、吸着効率や持続性を高めたエアフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]第1の面と第2の面を有する面状のエアフィルタであって、
面方向に配列する複数のセルを画するコルゲートハニカム構造体と、前記複数のセルに充填された複数の多孔質の充填剤とを備え、
前記複数のセルは、複数の最小径セルと複数の大径セルからなり、
前記複数の最小径セルは、内接円の直径が最も小さいセルであり、
前記複数の大径セルは、内接円の直径が前記複数の最小径セルの内接円の直径よりも大きいセルであり、
前記最小径セルの個数に占める、前記充填剤が充填された最小径セルの個数の割合は50%以下であり、
前記大径セルの個数に占める、前記充填剤が充填された大径セルの個数の割合は25~100%であることを特徴とするエアフィルタ。
[2]前記複数のセルに占める前記最小径セルの割合が10~90面積%である[1]に記載のエアフィルタ。
[3]前記コルゲートハニカム構造体は、複数のライナー部材と複数のコルゲート部材とが互いに接着されて構成されており、
前記複数のライナー部材は、前記面方向に垂直な方向から観察した際に直線状であり、
前記複数のコルゲート部材は、前記面方向に垂直な方向から観察した際に前記ライナー部材が延伸する方向に添って山部と谷部が繰り返す波型形状であり、
前記複数のコルゲート部材は、前記波型形状の高さ及びピッチの一方又は両方が異なる二種以上のコルゲート部材を含む、[1]または[2]に記載のエアフィルタ。
[4]前記複数のコルゲート部材は、前記ライナー部材を介することなく、互いの山部が直接接着されている一対以上のコルゲート部材を含む、[3]に記載のエアフィルタ。
[5]吸着剤が前記コルゲートハニカム構造体に保持されている、[1]~[4]の何れかに記載のエアフィルタ。
[6]前記複数の充填剤が球状である、[1]~[5]の何れかに記載のエアフィルタ。
[7]前記充填剤は活性炭である、[1]~[6]の何れかに記載のエアフィルタ。
[8]前記第1の面及び前記第2の面の一方又は両方に、通気性シートが配置されている、[1]~[7]の何れかに記載のエアフィルタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性炭等の充填剤を充填したエアフィルタによれば、圧力損失の上昇を抑制しながら、吸着効率や持続性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るエアフィルタに用いるコルゲートハニカム構造体の平面図である。
図2図1のコルゲートハニカム構造体の部分拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係るエアフィルタの断面図である。
図4】実施例に係るエアフィルタの拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエアフィルタは、面方向に配列する複数のセルを画するコルゲートハニカム構造体と、前記複数のセルに充填された複数の多孔質の充填剤とを備える。
図1は、本発明の一実施形態に係るエアフィルタに用いるコルゲートハニカム構造体1を面方向に垂直な方向から見た図である。コルゲートハニカム構造体1は、ライナー部材10とコルゲート部材20で構成されており、図1における紙面表側が第1の面61、紙面裏側が第2の面62となる面状体である。
コルゲートハニカム構造体の厚さ(後述する、コルゲートハニカム構造体が有するセルの深さ方向の長さ)は、5~100mmの範囲で調整すればよく、通常、5~50mmである。
【0011】
ライナー部材10は、図1に示すように、面方向に垂直な方向から観察した際に直線状ないし略直線状に見え、図1の紙面厚さ方向に幅のある細帯状の部材である。
コルゲート部材20は、図1に示すように、細帯状の部材が繰り返し折れ曲がり、面方向に垂直な方向から観察した際にライナー部材10が延伸する方向に添って山部と谷部が繰り返す波型形状とされた部材である。
【0012】
本実施形態では、小コルゲート部材21と大コルゲート部材22の2種類のコルゲート部材20が使用されている。大コルゲート部材22のピッチと高さは、小コルゲート部材21のピッチと高さよりも大きい。
図2に示すように、小コルゲート部材21の谷部21bは1枚のライナー部材10に接着されており、山部21aは、他の1枚のライナー部材10に接着されている。
これに対し、大コルゲート部材22の谷部22bは1枚のライナー部材10に接着されているが、山部22aは、他の1枚のライナー部材10を介することなく、他の大コルゲート部材22の山部22aに直接接着されている。
【0013】
図1図2に示すように、コルゲートハニカム構造体1には、ライナー部材10及びコルゲート部材20で画された複数のセル30が面方向に配列するように形成されている。
本実施形態では、セル30として、最小径セル31と2種類の大径セル(第1大径セル32、第2大径セル33)が形成されている。
最小径セル31は、ライナー部材10と小コルゲート部材21により画された空間である。第1大径セル32は、ライナー部材10と大コルゲート部材22により画された空間である。また、第2大径セル33は、互いの山部22aが直接接着された一対の大コルゲート部材22により画された空間である。
【0014】
図2において、最小径内接円41は最小径セル31の内接円であり、第1大径内接円42は第1大径セル32の内接円であり、第2大径内接円43は第2大径セル33の内接円である。
これらの内接円の内、最小径内接円41の直径が最も小さく、第1大径内接円42と第2大径内接円43の直径は最小径内接円41の直径よりも大きい。また、第2大径内接円43の直径は第1大径内接円42の直径よりも大きい。
【0015】
最小径内接円41が内接する最小径セル31は、開口面積が小さいため、充填剤が充填されにくく、気体をスムーズに通過させることができる。また、最小径セル31は、開口面積が小さいため、最小径セル31を通過する気体は、ライナー部材10と小コルゲート部材21に充分接触することができ、悪臭成分等をこれらの部材に吸着させやすい。
【0016】
また、最小径内接円41よりも直径の大きい内接円が内接する第1大径セル32と第2大径セル33には、最小径セル31には入りにくい充分な大きさの充填剤を充填することができる。そのため、圧力損失の上昇を抑制しながら、充填剤によって吸着効率や持続性を高めることができる。
また、本実施形態のように、内接円の直径が異なる複数種類の大径セル(第1大径セル32、第2大径セル33)が存在すると、圧力損失の上昇を抑制する効果がさらに高まると共に、長期間使用した際、同時に目詰まりを生じることを防ぐことができる。また、大きさの異なる複数種類の充填剤を充填しやすい。そのため、吸着特性の異なる複数種類の充填剤を使用しやすい。
【0017】
コルゲートハニカム構造体1におけるセル30の総面積(100%)に対する最小径セル31の総面積の割合(コルゲートハニカム構造体1の複数セル30に占める、最小径セル31の割合(面積%)を意味する。)は、10~90%であることが好ましく、15~75%であることがより好ましく、20~50%であることがさらに好ましい。
前記割合が好ましい下限値以上であれば、通気性を確保して、圧力損失の上昇を抑制しやすい。また、前記割合が好ましい上限値以下であれば、第1大径セル32と第2大径セル33に、充分な量の充填剤を充填しやすい。
第1大径セル32の総面積と第2大径セル33の総面積は、充填する充填剤の大きさごとの配合量に応じて適宜調整すればよい。
【0018】
最小径セル31、第1大径セル32、第2大径セル33は、ライナー部材10が配列する方向において、できるだけ均等に分布していることが好ましい。これにより、部分的に圧力損失が高くなることを防止できる。
【0019】
最小径内接円41の直径は、0.5~3mmであることが好ましく、1~2.5mmであることがより好ましく、1.5~2.0mmであることがさらに好ましい。
最小径内接円41の直径が好ましい範囲の下限値以上であれば、最小径セル31の気体通過を妨げにくい。最小径内接円41の直径が好ましい範囲の上限値以下であれば、最小径セル31を通過する気体を充分にコルゲートハニカム構造体1に接触させて、悪臭成分等をコルゲートハニカム構造体1に吸着させることができる。
【0020】
第1大径内接円42及び第2大径内接円43の直径は、最小径内接円41の直径の1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。
上記好ましい比率以上であれば、最小径セル31に対する充填剤の充填を抑制しつつ第1大径セル32、第2大径セル33に充填剤を充填しやすい。
【0021】
第1大径内接円42の直径は、1~6mmであることが好ましく、1~4mmであることがより好ましく、2~3mmであることがさらに好ましい。
第1大径内接円42の直径が好ましい範囲の下限値以上であれば、第1大径セル32に充填剤を充填しやすい。第1大径内接円42の直径が好ましい範囲の上限値以下であれば、第1大径セル32の面積が過大とならず、コルゲートハニカム構造体1の強度を確保しやすい。
【0022】
第2大径内接円43の直径は、第1大径内接円42の直径の1.1倍以上であることが好ましく、1.25倍以上であることがより好ましい。
上記好ましい比率以上であれば、第1大径セル32及び第2大径セル33を利用して、異なる大きさの充填剤を充填しやすい。
【0023】
小コルゲート部材21の波型形状のピッチ、及び高さは、最小径内接円41の直径が前記好ましい値となるように決めることができる。
具体的には、小コルゲート部材21の波型形状のピッチは、2~7mmであることが好ましく、3~6mmであることがより好ましい。
また、小コルゲート部材21の波型形状の高さは、0.5~3mmであることが好ましく、1~2.5mmであることがより好ましい。
なお、小コルゲート部材21の波型形状の高さは、小コルゲート部材21の一方の面における谷部21bと山部21aの高さ方向における距離であり、高さ方向とは、ライナー部材10に直交する方向である。
【0024】
また、大コルゲート部材22の波型形状のピッチ、及び高さは、第1大径内接円42と第2大径内接円43の直径が前記好ましい値となるように決めることができる。
具体的には、大コルゲート部材22の波型形状のピッチは、4~12mmであることが好ましく、5~10mmであることがより好ましい。
また、大コルゲート部材22の波型形状の高さは、2~6mmであることが好ましく、2.5~5mmであることがより好ましい。
なお、大コルゲート部材22の波型形状の高さは、大コルゲート部材22の一方の面における谷部22bと山部22aの高さ方向における距離であり、高さ方向とは、ライナー部材10に直交する方向である。
【0025】
コルゲートハニカム構造体1のライナー部材10とコルゲート部材20は、基材と、基材に保持された吸着剤で構成されることが好ましい。
基材としては、紙類、不織布類、プラスチックフイルム類などシート状の基材であれば、特に限定するものではないが、吸着剤を保持しやすい点から繊維基材が好ましい。繊維基材としては、セルロース繊維を主成分とする紙基材、合成繊維を主成分とするプラスチック基材が挙げられる。中でも、セルロース繊維を主成分とする紙基材が好ましい。
なお、「主成分とする」とは、基材全体に対する割合が50質量%以上であることを意味する。
【0026】
紙基材は、典型的には、セルロース繊維を含むパルプから構成される。セルロース繊維を含むパルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等が挙げられる。
【0027】
木材パルプは、蒸解工程および/または漂白工程を経たものであってもよい。一般に、木材パルプは、原料の木材からセルロース以外の成分を除去するために、種々の蒸解工程や漂白工程を施して用いられる。本発明において、蒸解工程や漂白工程は特に限定されず、適宜、公知の方法を用いることができる。
これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
紙基材は、セルロース繊維以外の他の繊維をさらに含んでいてもよい。他の繊維としては、例えばレーヨン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、鉱物繊維等の無機繊維、動物繊維等が挙げられる。
紙基材は、サイズ剤、紙力増強剤、着色剤、防腐剤、難燃剤等の内添薬品を含んでいてもよい。内添薬品としては、公知のものを用いることができる。
【0029】
プラスチック基材としては、例えばレーヨン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維の一種以上を主成分とするものが挙げられる。
基材の坪量は、10~500g/mであることが好ましく、10~400g/mであることがより好ましく、10~300g/mであることがさらに好ましい。
繊維基材は、抄紙法により得たものが好ましい。
【0030】
基材に保持させる吸着剤としては、粒状、粉末、繊維状等の活性炭、モルデナイト、フェリエライト、モレキュラーシーブス等のゼオライト、シリカゲル、アルミナゲル等の公知の吸着剤が挙げられる。これらの吸着剤には、除去対象成分と反応する薬品(例えばアンモニアやホルムアルデヒドと反応する化合物)を担持させてもよい。また除去対象成分と反応する薬品を基材に直接担持させてもよい。
基材に保持させる吸着剤は、基材内部に保持されていても、表面に付着していても、内部及び表面の双方に存在していてもよい。
基材に保持させる吸着剤は、抄紙時に内添してもよいし、抄紙後に塗布または含浸させてもよい。
【0031】
コルゲートハニカム構造体1の製造方法に特に限定はないが、ライナー部材10に小コルゲート部材21を接着させた片段ボール(以下「小片段ボール」という。)と、ライナー部材10に大コルゲート部材22を接着させた片段ボール(以下「大片段ボール」という。)を積層し接着して製造することが好ましい。
【0032】
また、大片段ボールは、一対の大コルゲート部材22の山部22a同士を接着し、一対のライナー部材10の間に一対の大コルゲート部材22が、一対の大コルゲート部材22の山部22a同士が接着した状態で挟まれた構造体(以下「X構造フルート」という。本実施形態では、図2のX構造フルート70)とし、このX構造フルート70と小片段ボールと積層接着することが好ましい。
【0033】
X構造フルート70と小片段ボールと積層接着する場合、X構造フルート70のライナー部材10と小片段ボールのライナー部材10とが重ねられてもよい。また、X構造フルート70のライナー部材10に小片段ボールの小コルゲート部材21側を接着し、この小片段ボールのライナー部材10と他の小片段ボールのライナー部材10とが重なるようにして、積層接着してもよい。
すなわち、小片段ボールとX構造フルートとを積層接着してコルゲートハニカム構造体1を製造すると、1つの片段ボールを構成するライナー部材10が単独で存在する部分と、一対の片段ボールを構成する2枚のライナー部材10とが重なった状態で存在する部分とが形成される。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係るエアフィルタの模式的な断面図である。図3のエアフィルタは、図1、2に示したコルゲートハニカム構造体1のセル30に多孔質の充填剤50が複数充填され、コルゲートハニカム構造体1の第1の面61と第2の面62に、各々通気性シート71と通気性シート72が配置されている。
【0035】
充填剤50は多孔質であることにより、悪臭等の除去成分を吸着する能力を持っている。充填剤50としては、粒状、粉末、繊維状等の活性炭、モルデナイト、フェリエライト、モレキュラーシーブス等のゼオライト、シリカゲル、アルミナゲル等が挙げられる。中でも活性炭が好ましく、粒状活性炭がより好ましく、球状または略球状の活性炭が特に好ましい。
【0036】
充填剤50には、無機酸等の除去対象成分と反応する薬品を担持させてもよい。
充填剤50は粒状であることが好ましく、略球状であることがより好ましく、球状であることが特に好ましい。球状または略球状であれば、セル30への充填が容易であると共に、セル30を画するライナー部材10やコルゲート部材20との間に適度な隙間が生じ、通気を確保しやすい。
【0037】
充填剤50の平均粒子径は、500~10000μmであることが好ましく、1000~5000μmであることがより好ましい。なお、平均粒子径は、JIS K1474(活性炭試験方法―平均粒径測定法)に準拠し、質量平均粒径法にて測定される。
【0038】
充填剤50の比表面積は、600~2200m/gであることが好ましい。比表面積は、窒素ガス吸着法で測定したBET比表面積である。
充填剤50の比表面積が前記好ましい下限値以上であることにより、悪臭成分等の吸着性能を発揮しやすい。また、充填剤50の比表面積が前記好ましい上限値以下であることにより、充填剤50の強度を保ちやすい。
【0039】
最小径セル31の個数(100%)に占める充填剤50が充填された最小径セル31の個数の割合(充填率)は、50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
最小径セル31の充填率が好ましい上限値以下であれば、通気性を確保しやすい。
最小径セル31の充填率を好ましい上限値以下とするためには、最小径内接円41よりも直径の小さい充填剤50が充填剤50全体に占める割合を低くすればよい。
最小径セル31の充填率の下限は0%であってもよい。すなわち、最小径セル31には、充填剤50が充填されていなくてもよい。
【0040】
一方、大径セル(本実施形態の場合第1大径セル32及び第2大径セル33)の個数(100%)に占める充填剤50が充填された大径セルの個数の割合(充填率)は、25~100%であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、75~100%であることがさらに好ましい。
大径セルの充填率が好ましい下限値以上であれば、充填剤50によって吸着効率や持続性を高めやすい。大径セルの充填率が好ましい上限値以下であれば充填作業が容易である。
なお、充填率を求めるにあたっては、充填剤50の大きさにかかわらず、1個でも充填されているセルは充填されたセルとする。
【0041】
図3では、充填剤50として球状の小充填剤51と小充填剤51より大きい大充填剤52とを充填した例を模式的に示している。
小充填剤51の直径は、最小径内接円41より大きいことが好ましい。これにより、小充填剤51が最小径セル31に充填されにくくなる。
なお、充填剤50の直径が最小径内接円41より大きくても、割れるなどにより、最小径セル31に破片となった充填剤50などが充填される場合がある。
【0042】
充填剤50はセル30に充填されているので、何れの直径も、第2大径内接円43より小さい。また、大充填剤52の直径は、第1大径内接円42より大きいことが好ましい。これにより、大充填剤52が第2大径セル33に充填されやすくなり、第2大径セル33の充填率を向上させることができる。
【0043】
通気性シート71、通気性シート72は、不織布やメッシュクロス等の通気性材料で構成されている。不織布やメッシュクロス等を構成する材料としては、レーヨン、ポリエステル、ナイロン等が挙げられる。
通気性シート71、通気性シート72は、コルゲートハニカム構造体1の第1の面61値と第2の面62に各々接着して配置されている。
通気性シート71と通気性シート72を位置することにより、エアフィルタから充填剤50が脱落することを防止できる。また、エアフィルタを通る気体から、塵などを除去することができる。
【0044】
なお、図1、2では、X構造フルート70を有するコルゲートハニカム構造体1としたが、X構造フルート70を有することは必ずしも必須ではない。例えば大きさの異なる三種類の片段ボールを用いて組み合わせて積層した構成でもよい。
また、大径セルは、図1、2に示したように2種類に限られず、1種類であっても、3種類以上であってもよい。
また、セル30の形状にも特に限定はない。
また、図1、2では、大コルゲート部材22と小コルゲート部材21が、ピッチと高さの双方で異なる構成としたが、ピッチと高さの一方のみ異なる複数種類のコルゲート部材20を使用してもよい。
また、セル30が異なる大きさのセルを含むことができれば、コルゲート部材20は一種類でもよい。例えば、一種類の片段ボールを用いて作成したX構造フルートを複数積層してもよい。
また、充填剤50の形や大きさは図3に示したように2種類に限られず、3種類以上でもよい。
【実施例
【0045】
[実施例1]
坪量50g/mのガラス繊維混抄紙(王子エフテックス社製)をライナー原紙とし、活性炭、無機吸着剤、化学吸着剤等を200g/Lの割合で含む吸着剤分散液を含浸させてライナー部材とした。
坪量50g/mのガラス繊維混抄紙(王子エフテックス社製)紙をコルゲート原紙とし、活性炭、無機吸着剤、化学吸着剤等を200g/Lの割合で含む吸着剤分散液を含浸させてコルゲート用基材とした。
コルゲート用基材をコルゲート処理してコルゲート部材とした後、ライナー部材と貼り合せ片段ボールを形成した。片段ボールは、高さ及びピッチの異なる、小片段ボールと大片段ボールの2種類を作成した。小片段ボールには、ピッチが4.9mm、高さが2mmの小コルゲート部材を用い、大片段ボールには、ピッチが5.9mm、高さが3mmの大コルゲート部材を用いた。
【0046】
得られた大片段ボール2枚を、大コルゲート部材の稜線同士を合わせて、ライナー部材が両外側となるように接着し、その両外側のライナー部材に、各々小片段ボールのコルゲート部材を接着した積層体を得た。この積層体を複数重ね、図1に示したのと同等のコルゲートハニカム構造体を得た。なお、各片段ボールはコルゲート部材の稜線方向を揃えて積層した。また、コルゲートハニカム構造の厚さ(セルの深さ方向の長さ)は、15mmとした。
【0047】
得られたコルゲートハニカム構造体の一方の面に通気性シートを接着し、他方の面から、充填剤として、大阪ガスケミカル(株)製薬品担持球状活性炭((平均粒径2mm、BET比表面積930m/g)の23gを充填した。その後、他方の面にも通気性シートを接着し、実施例1のエアフィルタを得た。
通気性シートとしては、ポリエステル製のメッシュ(目開き1mm)を用いた。
【0048】
[比較例1]
実施例1で用いた大片段ボールのみを、互いのライナー部材とコルゲート部材とを接着して複数積層した構造にした以外は実施例1と同様にしてエアフィルタを得た。なお、複数の大片段ボールはコルゲート部材の稜線方向を揃えて積層した。
【0049】
[圧力損失評価]
得られたエアフィルタを100mm×100mmの開口の樹脂ケースに入れた後、風洞装置にセットし、0.5m/s、1.0m/s、1.5m/s、2.0m/sの各線速時の圧力損出を測定した。
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、実施例1のエアフィルタが、圧力損失の点で比較例1と比べて優れることがわかる。
図4は、実施例1のエアフィルタの他方の面に通気性シートを接着する前に、他方の面側から撮影した拡大写真である。図4に示すように、最小径セルには、ほとんど充填剤が充填されず、充填率が50%を超えないことが確認できた。また、大径セルの大部分に充填剤を充填することができ、少なくとも25%以上の充填率となったことが確認できた。特に、内接円の直径が大きい大径セル(図1の第2大径セル33に相当)の充填率が高かった。
すなわち、実施例1では、充填剤が充填されておらず気体が通過しやすいセルを確保して圧力損失の上昇を抑制しながら、活性炭等の充填剤を充填できたことか確認できた。
【0052】
[比較例2]
実施例1において、球状活性炭を充填しなかった以外は実施例1と同様にエアフィルタを得た。
【0053】
[ホルムアルデヒド除去性能評価]
中国GB規格(GB/T 18801-2015)に基づく評価試験を採用し、試験室の大きさを1mとした簡易試験により、エアフィルタのホルムアルデヒド負荷後のクリーンエア供給率(CADR)及びクリーンエア供給率維持率(CADR維持率)を測定することにより、ホルムアルデヒド除去性能評価を行った。
【0054】
(初期CADRの測定)
実施例1、比較例2で得られたエアフィルタを搭載した空清ファンをセットし、ホルムアルデヒドの気中濃度を1ppmとなるように試験室に封入し、空清ファンを対象となる空気清浄機と同じ線速(LV)である1.0m/sで稼働させ、ホルムアルデヒドメーターhtvを用いて、5分間隔でホルムアルデヒド気中濃度を60分間測定し、経過時間とホルムアルデヒド気中濃度の関係から、初期クリーンエア供給率(初期CADR)を測定した。
結果を表2に示す。
【0055】
(ホルムアルデヒド負荷後のCADRの測定)
次に、実施例1、比較例2で得られたエアフィルタを搭載した空清ファンをセットし、揮散用ファン上の濾紙にホルムアルデヒド溶液を、ホルムアルデヒドの質量が20mgとなるように含浸させ、空清ファン及び揮散ファンを稼働させ、12時間放置した。
【0056】
さらに、上記の処理を施したエアフィルタを搭載した空清ファンをセットし、ホルムアルデヒドの気中濃度を1ppmとなるように試験室(1m)に封入し、空清ファンを対象となる空気清浄機と同じ線速(LV)である1.0m/sで稼働させ、ホルムアルデヒドメーターhtvを用いて、5分間隔でホルムアルデヒド気中濃度を60分間測定し、経過時間とホルムアルデヒド気中濃度の関係から、ホルムアルデヒド20mg/枚負荷後のクリーンエア供給率(CADR)を測定した。
【0057】
初期クリーンエア供給率(初期CADR)と、上記ホルムアルデヒド20mg/枚負荷後のクリーンエア供給率(CADR)との関係から、20mg負荷後のクリーンエア供給率維持率(CADR維持率)を算出した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すとおり、実施例1のエアフィルタは、初期だけでなく、20mg相当吸着後においても高い吸着性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の活性炭等の充填剤を充填したエアフィルタは、圧力損失の上昇を抑制しながら、吸着効率や持続性を高めることができる。
本発明のエアフィルタは、悪臭成分や有害成分等の除去を目的として、空気清浄機、エアコン、除湿機等に使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 コルゲートハニカム構造体
10 ライナー部材
20 コルゲート部材
21 小コルゲート部材
22 大コルゲート部材
30 セル
31 最小径セル
32 第1大径セル
33 第2大径セル
41 最小径内接円
42 第1大径内接円
43 第2大径内接円
50 充填剤
51 小充填剤
52 大充填剤
61 第1の面
62 第2の面
71 通気性シート
72 通気性シート
図1
図2
図3
図4