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特許7393353物体を処理する方法及びその方法を実施するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】物体を処理する方法及びその方法を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020567220
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 DE2019100488
(87)【国際公開番号】W WO2019233526
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】102018113264.6
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517184129
【氏名又は名称】レナ テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】RENA Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Hoehenweg 1, 78148 Guetenbach,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウブ・ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ウイライン・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】カルテンバッハ・フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ペディアディタキス・ステファン・アレクシス
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011118441(DE,A1)
【文献】特開平06-208984(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007054090(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第19717511(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
B05B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(2)を処理する方法であって、
処理対象の物体(2)が搬送装置(5)によって溶液槽(3)を通過するように搬送され、
処理溶液(4)が上向き出口開口部(13)を設けられた少なくとも1つの供給デバイス(9)によって溶液槽(3)に導入され、処理溶液(4)が処理溶液ジェット(24)の構成を有する上向き出口開口部(13)によってここで上向きに噴霧され、
物体(2)が、上向き出口開口部(13)の上方で溶液槽(3)を通過するように搬送され、
溶液槽(3)を通じた物体(2)の搬送中に、物体(2)の下向き表面(23)が処理溶液ジェット(24)に接触し、
溶液槽(3)を通過した後に物体(2)の下向き表面(23)の各点が処理溶液ジェット(24)で均等な長さの時間で処理されているように、溶液槽(3)を通じた物体(2)の搬送の間、物体(2)の下向き表面(23)の各点が処理溶液ジェット(24)に接触させられることを特徴とする、方法。
【請求項2】
処理が片面処理であって、物体(2)の下向き表面(23)が処理溶液(4)で処理されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理溶液ジェット(24)は、溶液槽(3)に既に含まれている処理溶液(4)において構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの供給デバイス(9)は、外管(11)及び該外管(11)内に配置された内管(12)を有するチューブインチューブシステムとして構成され、処理溶液(4)は、内管(12)の下向き出口開口部(14)を介して外管(11)に導入されており、処理溶液ジェット(24)は、外管(11)から上向きに溶液槽(3)に噴霧されていることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法を実施する処理装置(1)であって、
処理溶液(4)が配置され得る溶液槽(3)と、
処理対象の物体(2)が溶液槽(3)を通過するように搬送方向(6)に搬送され得る搬送装置(5)と、
溶液槽(3)に配置され、処理溶液(4)が溶液槽(3)に導入され得る少なくとも1つの供給デバイス(9)と、
を備え、
少なくとも1つの供給デバイス(9)は処理溶液(4)を上向きに噴霧する上向き出口開口部(13)を有し、
処理装置(1)は、処理対象の物体(2)を搬送方向(6)に沿って相互に隣接する複数の軌道(7)で搬送するように設置され、少なくとも1つの供給デバイス(9)は複数の供給デバイス(9)のうちの1つであり、処理装置(1)は、各軌道(7)に対して専用の供給デバイス(9)を有していることを特徴とする、処理装置(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの供給デバイス(9)は、搬送方向(6)に対して非平行に、少なくとも部分的に、溶液槽(3)において延在することを特徴とする請求項5に記載の処理装置(1)。
【請求項7】
少なくとも部分的に、少なくとも1つの供給デバイス(9)は、搬送方向(6)に対して傾斜して配向された直線区間(10)を有することを特徴とする請求項5または6に記載の処理装置(1)。
【請求項8】
直線区間(10)は、少なくとも1つの供給デバイス(9)の全長(L)にわたって延在し、円錐状に広がる処理溶液ジェット(24)が、少なくとも1つの供給デバイス(9)の上向き出口開口部(13)によって構成可能であり、直線区間(10)は、搬送方向(6)に対して角度αで配向され、その角度αについて、それは少なくともおよそα=arcsin((B-2R)/L))であり、Lは少なくとも1つの供給デバイス(9)の長さであり、Bは処理対象の物体(2)の幅であり、Rは搬送装置(5)の搬送面(22)の高さでの処理溶液ジェット(24)の半径であることを特徴とする、請求項7に記載の処理装置(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの供給デバイス(9)は、少なくとも1つの供給デバイス(9)の長手延在方向(25)に相互に離れて配置される複数の上向き出口開口部(13)を有することを特徴とする、請求項5~8の何れか一項に記載の処理装置(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの供給デバイス(9)は、外管(11)及び該外管(11)内に配置された内管(12)を有するチューブインチューブシステムとして構成され、外管(11)は、処理溶液(4)を上向きに噴霧する上向き出口開口部(13)を有し、内管(12)は、処理溶液(4)がそれを介して外管(12)に導入され得る下向き出口開口部(14)を有することを特徴とする、請求項5~9の何れか一項に記載の処理装置(1)
【請求項11】
少なくとも1つの供給デバイスは、処理溶液(4)を上向きに噴霧するための搬送方向(6)に対して斜方又は垂直に相互に隣接して配置される複数の上向き出口開口部(13)を有することを特徴とする、請求項5~10の何れか一項に記載の処理装置(1)。
【請求項12】
搬送装置(5)は、搬送方向(6)に相互に続いて配置される複数の搬送ローラー(8)を有し、少なくとも1つの供給デバイス(9)は、搬送ローラー(8)の下方に配置され、少なくとも1つの供給デバイス(9)の上向き出口開口部(13)は、搬送方向(6)に関連して搬送ローラー(8)の位置に配置されることを特徴とする、請求項5~11の何れか一項に記載の処理装置(1)。
【請求項13】
少なくとも1つの供給デバイス(9)からの気泡及び/又は気泡に富む処理溶液(4)の除去のための脱気装置(18)を有し、脱気装置(18)は少なくとも1つの供給デバイス(9)に接続される排出ライン(19)を有することを特徴とする、請求項5~12の何れか一項に記載の処理装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を処理する方法及びこの種の方法を実施するための処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理溶液による物体の表面の処理は、様々な技術分野において使用される。したがって、例えば、湿式化学エッチング方法は、とりわけ、太陽電池産業におけるウエハ表面の処理に使用される。
【0003】
物体の表面の処理は、例えば、浸漬処理の形態において実現可能であり、一定数の物体は処理溶液で満たされた溶液槽の中に浸漬されて所定の継続時間留まる。これは、バッチ法として知られるものである。
【0004】
更なる可能性は、インライン方法として知られているものによる物体の処理方法である。ここで、物体は溶液槽を通過するように搬送装置上を搬送され、処理溶液による物体の処理が、溶液槽を通じた物体の搬送中に行われる。バッチ法とは対照的に、物体がシステムに起因して両面を標準的に処理される場合、物体の片面処理はインライン方法の場合において種々の態様で実現され得る。
【0005】
バッチ法の場合とインライン方法の場合の双方において、処理結果の品質は、とりわけ、処理対象の物体の領域における処理溶液の温度及び/又は化学組成に依存し得る。例えば、熱の蓄積及び/又は反応生成物による過飽和が発生/物体で発生した場合、これは処理結果の品質に対して悪影響を与え得る。エッチング方法の場合、例えば、この類の場合、エッチングの速度の低下が起こり得る。
【発明の概要】
【0006】
物体の処理の場合、特に物体の片面処理の場合に、処理結果の品質の向上を可能とすることが、本発明の目的である。
【0007】
本発明によれば、上記目的は、請求項1に記載の方法によって、及び請求項6に記載の処理装置によって達成される。
【0008】
物体を処理する本発明による方法の場合において、
-処理対象の物体が、搬送装置によって溶液槽(basin)を通過するように搬送され、
-処理溶液が上向き出口開口部が設けられた少なくとも1つの供給デバイスによって前記溶液槽に導入され、前記処理溶液が処理溶液ジェットの構成を有する前記上向き出口開口部によってここで上向きに噴霧され、
-前記物体が、前記上向き出口開口部の上方で前記溶液槽を通過するように搬送され、
-前記溶液槽を通じた前記物体の搬送中に、前記物体の下向き表面が前記処理溶液ジェットに接触させられる、
ことが提供される。
【0009】
本発明による処理装置は、
-処理溶液が配置され得る溶液槽と、
-それによって処理対象の物体が前記溶液槽を通過するように搬送方向に搬送され得る搬送装置と、
-前記溶液槽に配置され、それによって処理溶液が前記溶液槽に導入され得る少なくとも1つの供給デバイスと、を備え、
-前記少なくとも1つの供給デバイスは、前記処理溶液を上向きに噴霧する上向き出口開口部を有する。
【0010】
処理溶液ジェットの構成を有する少なくとも1つの供給デバイスによって処理溶液が上向きに噴霧されるということによって、物体を処理するための新たな又は未使用の処理溶液が、片面処理方法の場合でよくあるように、少なくとも1つの供給デバイスの上方に搬送される処理対象の物体で利用可能となることが達成され得る。特に、少なくとも1つの供給デバイスを介して溶液槽に導入される処理溶液が熱を放散すること及び/又は反応生成物を放出することができるために、処理対象の物体の領域における熱の蓄積及び/又は反応生成物による過飽和は、この態様によって回避され得る。
【0011】
これに対して、処理対象の物体の領域における熱の蓄積及び/又は反応生成物による過飽和は、処理溶液ジェットを溶液槽の底部の方向に噴霧する下向き出口開口部によっては充分に効果的には回避されることができない。
【0012】
物体が溶液槽を通過するように搬送されるという文言は、物体の表面が溶液槽に配置される処理溶液の液体面高さよりも完全に下方に位置していなければならないということも、それらの表面が溶液槽の溶液槽縁よりも完全に下方に位置していなければならないということも意味しない。したがって、物体上部表面の一部又は物体表面の全部は、基本的に、溶液槽の溶液槽縁若しくは処理溶液の液体面高さよりも上方に到来し、又は搬送され得る。
【0013】
さらに、処理溶液ジェットが上向きに噴霧されるという文言は、処理溶液ジェットが垂直方向に沿って噴霧されるということを必ずしも意味しない。上向きに噴霧される処理溶液ジェットは、基本的に、垂直方向に関して偏差を伴って上向きに噴霧され得る。偏差は、好ましくは最大で40度、特に好ましくは最大で35度である。
【0014】
「上向き出口開口部」は、処理溶液などの流体が、恐らくは垂直方向に関して上記の範囲の偏差を伴って、上記の出口開口部を通じて上向きに出ることができるように配置された出口開口部を意味することが理解されるべきである。
【0015】
処理対象の物体は、例えば、基板、特に太陽電池及び/又は半導体産業に関するウエハであり得る。
【0016】
処理対象の物体は、好ましくは所定の幅を有する。特に、処理対象の物体の全てが同一の幅を有することが好ましい。これは、複雑さに関して好都合な物体の処理を可能とする。
【0017】
1つの物体の幅は、搬送面内でかつ搬送方向に対して垂直に、その範囲を意味するものと理解されるべきであり、用語「搬送面」は物体が搬送装置によって搬送される平面を意味することが理解されるべきである。
【0018】
物体は、水平な搬送方向に沿って搬送装置によって有利に搬送される。
【0019】
溶液槽を通じた物体の搬送の場合、溶液槽は、好ましくは、物体の下向き表面まで、又はこれを超えて、処理溶液で満たされる。
【0020】
特に、物体の下向き表面が処理溶液で処理される場合、物体の処理は、片面処理であり得る。換言すると、物体を処理する方法は、物体の下向き表面の片面処理のための方法であり得る。この種の処理の場合、物体の下向き表面は、好ましくは、処理溶液と接触されることはなく、又は少なくとも目標とする態様とはならない。
【0021】
処理が片面処理である場合、搬送の場合には物体の下向き表面のみが処理溶液に接触するように、搬送装置は配置及び構成され、溶液槽は処理溶液で満たされることが、好ましくは規定される。
【0022】
さらに、物体の処理は、例えば、エッチング処理であり得る。この場合、処理溶液は、便宜的に、エッチング溶液である。特に、処理の場合に、少なくとも3μm、好ましくは少なくとも5μm、特に好ましくは少なくとも6μmのエッチング摩耗がそれぞれの物体上で達成されるように、処理が行われ得る。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態では、物体の処理は、物体の下向き表面上の処理溶液のメニスカスの構成によって行われる。
【0024】
溶液槽を通じた物体の搬送の間、物体の下向き表面の各点は、溶液槽を通じて通過した後に物体の下向き表面の各点が処理溶液ジェットで均等な長さの時間及び恐らくは均等な頻度で処理されるように、処理溶液ジェットに有利に接触させられる。結果として、均一な処理結果が、物体の下向き表面上で達成され得る。
【0025】
好ましい態様では、処理溶液ジェットは、溶液槽に既に含まれている処理溶液中に構成される。ここで、処理溶液ジェットは、溶液槽に既に含まれている処理溶液の循環を有利にもたらす。
【0026】
溶液槽に既に含まれている処理溶液を通過する間、処理溶液ジェットは円錐状に大きくなり得る。この場合、処理溶液ジェットの構成を有する上向き出口開口部によって処理溶液が上向きに噴霧されるという文言は、噴霧されるそれぞれの処理溶液ジェットの円錐軸が、垂直方向に対して、好ましくは最大で40度、特に好ましくは最大で35度の偏差を有するように理解され得る。
【0027】
ある有利な設計変形例では、少なくとも1つの供給デバイスは、外管及び外管内に配置された内管を有するチューブインチューブシステムとして構成される。上記設計変形例では、処理溶液は、内管の下向き出口開口部を介して外管に有利に導入される。さらに、処理溶液ジェットは、外管から上向きに溶液槽に有利に噴霧される。
【0028】
内管の下向き出口開口部は、気泡に富む処理溶液が内管の上部に集まり得ることを可能とする。そこから、気泡に富む処理溶液が、又は目標とする態様では収集された気体のみが、例えば内管に接続された排出ラインを介して、内管から排出され得る。この態様では、内管から外管に導入される処理溶液には気泡が少ない又は気泡がないという状況を達成し得る。物体の片面処理の場合、特に、例えば、気泡の破裂に起因し得る処理溶液による物体の上向き表面の汚染を回避することができるという効果を有する。
【0029】
内管の場合の下向き出口開口部と外管の場合の上向き出口開口部とを組み合わせることによって、少なくとも1つの供給デバイスからの処理溶液の向上した流出挙動を可能とする「ラビリンス効果」が達成され得る。特に、少なくとも1つの供給デバイスからの処理溶液のより均一な流出は、内管の下向き出口開口部を介した外管への処理溶液の導入及び外管からの処理溶液ジェットの噴霧によって達成され得る。
【0030】
それは、外管に処理溶液を導入するために、内管が下向き出口開口部を排他的に有する場合に特に好ましい。
【0031】
少なくとも1つの供給デバイスは、搬送装置の下方に便宜的に配置される。少なくとも1つの供給デバイスは、好ましくは水平に配向される。
【0032】
本発明の1つの効果的な改良の場合、少なくとも1つの供給デバイスは、搬送方向に対して非平行に、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、溶液槽中において延在する。換言すると、少なくとも1つの供給デバイスの少なくとも一部断面が搬送方向に平行に延在しない場合に有利である。
【0033】
さらに、少なくとも部分的に、少なくとも1つの供給デバイスは、搬送方向に対して傾斜して配向された直線区間を有することが規定され得る。換言すると、少なくとも1つの供給デバイスの少なくとも一部断面は、搬送方向に対して傾斜して配向された直線区間を有し得る。好ましい態様では、上記直線区間は、少なくとも1つの供給デバイスの全長にわたって延在する。
【0034】
円錐状に広がる処理溶液ジェットは、少なくとも1つの供給デバイスの上向き出口開口部によって有利に構成され得る。
【0035】
上記直線区間が少なくとも1つの供給デバイスの全長にわたって延在する場合、直線区間が搬送方向に対して角度αで配向されている場合が有利であり、その角度αについて、少なくともおよそα=arcsin((B-2R)/L))であり、Lは少なくとも1つの供給デバイスの長さであり、Bは処理対象の物体の幅であり、Rは搬送装置の搬送面の高さでの処理溶液ジェットの半径である。特に、搬送方向に関する少なくとも1つの供給デバイスのこの種の配向は、溶液槽を通過した後には、物体の下向き表面の各点が処理溶液ジェットで均等な長さの時間にわたって処理されている状況を達成し得る。
【0036】
ここで、「少なくともおよそ」という表現は、αがarcsin((B-2R)/L)と厳密に等しくてもよいし、上記用語からわずかに、例えば最大10%、好ましくは最大5%異なっていてもよいことを意味する。
【0037】
代替例として、少なくとも1つの供給デバイスが周期性を有し、又は搬送面に並行で搬送方向に対して垂直にジャンプ(jumps)を備えていることが規定され得る。例えば、少なくとも1つの供給デバイスは、ジグザグコースを有し得る。供給デバイスの「遮断された」実施形態も可能であり、その場合、特に、供給デバイスが相互に離れて搬送方向に対して傾斜して配置される複数の部品を備える。
【0038】
本発明の効果的な一実施形態では、少なくとも1つの供給デバイスは、少なくとも1つの供給デバイスの長手延在方向に相互に離れて配置される複数の上向き出口開口部を有する。
【0039】
上述のように、少なくとも1つの供給デバイスは、チューブインチューブシステムとして構成され得る。この場合、外管は、処理溶液を上向きに噴霧する上向き出口開口部を有利に有する。この場合、内管は、下向き出口開口部を有することができ、それを介して処理溶液が外管に導入され得る。
【0040】
処理装置は、内管と外管の間に配置される少なくとも1つのスペーサ素子を適宜備える。この種のスペーサ素子は、好ましくは、2つの管を相互に所定の間隔で保持するように作用する。さらに、内管と外管の間の空隙が1以上の密閉素子によって密閉される場合は好都合である。
【0041】
本場合では、管は必ずしも円形の断面形状を有する中空体を意味すると理解されなくてもよい。それぞれの管は、例えば、多角形、特に三角形若しくは矩形断面形状、又は円形、特に環形、楕円形若しくは長円形の断面形状を有し得る。さらに、内管及び外管は、必ずしも同一の断面形状を有する必要はない。例えば、外管は矩形断面形状を有する一方で、内管は円形の断面形状を有していてもよい。
【0042】
矩形断面形状を有する外管の実施形態の場合、特に、外管は、処理対象の物体と同じ幅であって、かつ搬送方向に平行に配向され得る。ここで、外管の上向き出口開口部は、装置の動作中又は方法が実施される場合に、物体の下向き表面が処理溶液ジェットによって均一に処理溶液で装填されるように分配され得る。
【0043】
上向き出口開口部に加えて、少なくとも1つの供給デバイスは、処理溶液を下向き及び/又は横方向に噴霧する下向き及び/又は横向きの出口開口部を有し得る。これは、溶液槽における処理溶液のより均一な循環を可能とする。チューブインチューブシステムとしての少なくとも1つの供給デバイスの1つの改良の場合、特に、外管は、上記下向き及び/又は横向きの出口開口部を有し得る。
【0044】
「下向き出口開口部」は、処理溶液などの流体が、例えば、恐らく垂直方向に関して偏差を伴って、上記の出口開口部を通じて下向きに出ることができるように配置された出口開口部を意味することが理解されるべきである。偏差は、好ましくは最大で40度、特に好ましくは最大で35度である。
【0045】
「横方向の出口開口部」は、処理溶液などの流体が、例えば、恐らくは水平方向に関して偏差を伴って、上記の出口開口部を通じて横向きに出ることができるように配置された出口開口部を意味することが理解されるべきである。ここで、偏差は、好ましくは最大で40度、特に好ましくは最大で35度である。
【0046】
有利な一実施形態の場合、少なくとも1つの供給デバイスは、処理溶液を上向きに噴霧するために、搬送方向に対して斜方又は垂直に相互に隣接して配置される複数の上向き出口開口部を有する。この態様では、空間的にさらに拡張された溶液槽への処理溶液の噴霧、ひいては溶液槽における処理溶液のより均一な循環が達成され得る。チューブインチューブシステムとしての少なくとも1つの供給デバイスの1つの改良の場合、特に、外管は、搬送方向に対して斜方又は垂直に相互に隣接して配置される上記出口開口部を有し得る。
【0047】
好ましい態様では、搬送装置は、搬送方向に相互に続いて配置された複数の搬送ローラーを有する。さらに、少なくとも1つの供給デバイスが、搬送装置の搬送ローラーの下方に配置されている場合が好ましい。
【0048】
少なくとも1つの供給デバイスの上向き出口開口部は、搬送方向に関して、有利に搬送ローラーの位置に配置される。すなわち、上から見た場合、少なくとも1つの供給デバイスの出口開口部は、搬送ローラーによって遮蔽されている。これによって、搬送ローラーが処理溶液ジェットによって少なくとも部分的に周囲に流される状況を達成することができ、その結果として、搬送ローラーの領域における処理溶液の向上した循環が達成され得る。
【0049】
搬送装置の搬送ローラーは、特に、それらの最上点が各場合において溶液槽縁の高さに配置されるように配置され得る。
【0050】
処理装置は、少なくとも1つの供給デバイスに処理溶液を導入するための投入デバイスを適宜有する。投入デバイスは、とりわけ、少なくとも1つの供給デバイスに接続された投入ラインを備え得る。チューブインチューブシステムとしての少なくとも1つの供給デバイスの1つの改良の場合、特に、内管は、投入ラインに接続され得る。
【0051】
本発明の1つの好ましい改良では、処理装置は、少なくとも1つの供給デバイスから気泡及び/又は気泡に富む処理溶液を除去するための脱気装置を有する。脱気装置は、とりわけ、少なくとも1つの供給デバイスに接続される排出ラインを有し得る。チューブインチューブシステムとしての少なくとも1つの供給デバイスの1つの改良の場合、特に、内管は、排出ラインに接続され得る。
【0052】
方法が実施される場合、気泡に富む処理溶液が、又は目標とする態様では収集された気体のみが、脱気装置によって少なくとも1つの供給デバイスから排出され得る。気泡に富む処理溶液が少なくとも1つの供給デバイスから排出される場合、処理溶液は、気泡に富む処理溶液から気泡を除去した後に少なくとも1つの供給デバイスに再び導入され得る。
【0053】
処理装置は、処理対象の物体を搬送方向に沿って相互に隣接する複数の軌道で搬送するように有利に設置される。結果として、処理装置によってハイスループットが達成され得る。処理装置は、例えば、軌道及び時間あたり少なくとも500個の物体、好ましくは軌道及び時間あたり少なくとも700個の物体、特に好ましくは時間あたり少なくとも900個の物体のスループットを実現できるように構成され得る。例えば、処理装置は、処理対象の物体を搬送方向に沿って相互に隣接する5列の軌道で搬送し、かつ軌道及び時間あたり1000個の物体のスループットを実現するように設置され得る。
【0054】
少なくとも1つの供給デバイスは、特に、構造的に同一である複数の供給デバイスのうちの1つであってもよい。さらに、処理装置は、各場合において、各軌道に対して専用の供給デバイスを有してもよい。
【0055】
供給デバイスの各々は、脱気装置の上記排出ラインに有利に接続される。さらに、供給デバイスの各々が投入デバイスの上記投入ラインに接続されている場合は好都合である。
【0056】
更なる本文では、本発明を図面に基づいてより詳細に説明する。ここで、同一の又は同一に作用する素子には適宜同一の名称が与えられる。本発明は、機能的な特徴に関連しないときでさえも、図面において示される実施形態に制限されない。図面の前の説明及び次に続く説明は、従属請求項において複数で部分的に組合せられて示される多数の特徴を含む。当業者は、上記の特徴を個別に検討も行うことになり、一方、それらを組合せて適切な更なる組合せを形成することになる。特に、上記特徴は、各場合において個別に、並びに本発明による方法及び/又は本発明による処理装置による所望の適切な組合せで、組み合わせられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明による方法を実施する本発明による処理装置の例示の一実施形態を平面図で示す。
図2図2は、図1での断面A-Aに沿った処理装置を通る断面を示す。
図3図3は、処理装置の供給デバイスの平面図を示す。
図4図4は、図3での供給デバイスの側面図を示す。
図5図5は、図4での断面B-Bに沿った供給デバイスを通る断面(長手方向の断面)を示す。
図6図6は、図4での断面C-Cに沿った供給デバイスを通る断面(横断面)を示す。
図7図7は、図5での断面図(長手方向の詳細な断面)の拡大された詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、物体2の片面処理のための本発明による処理装置1の例示の一実施形態を上面図で示す。
【0059】
処理対象の物体2(図2参照)は、例えば、基板、特に太陽電池及び/又は半導体産業のためのウエハであってもよく、物体2は明瞭さの向上のために図1に示されていない。
【0060】
処理装置1は、例えばエッチング溶液などの処理溶液4を受ける溶液槽3を備える(図2参照)。さらに、処理装置1は搬送装置5を備え、これにより、処理対象の物体2は水平搬送方向6に沿って溶液槽3を通過するように搬送され得る。
【0061】
さらに、処理装置1は、処理対象の物体2を搬送方向6に沿って相互に隣接する複数の軌道7中の搬送装置5によって搬送するように設置される。図1では、破線は、それぞれの軌道7の側縁を特定する。
【0062】
図1から理解されるように、搬送装置5は、物体2の搬送について搬送方向6に相互に続いて配置された複数の搬送ローラー8を備える。搬送ローラー8は、搬送方向6に対して垂直に配向され、好ましくは、相互に等距離に配置される。
【0063】
さらに、処理装置1は複数の供給デバイス9を備え、それにより処理溶液4が溶液槽3に導入可能となる。供給デバイス9は、搬送ローラー8の下方に配置される。さらに、供給デバイス9は、好ましくは、相互に同じ高さ、相互に平行及び相互に等距離に配置される。各場合における処理装置1は、軌道7の各々に対して専用の供給デバイス9を有する。本例示の実施形態では、処理装置1は、処理対象の物体2を相互に隣接した5列の軌道7において搬送装置5によって搬送するように設置されているため、それに応じて処理装置1は5台の供給デバイス9を有する。
【0064】
それぞれの供給デバイス9は、それぞれの供給デバイス9の全長Lにわたって延在する直線区間10を有し(図3から図5参照)、搬送方向6に対して横方向に配向される。さらに、供給デバイス9の各々は、外管11及び外管11に配置された内管12を有するチューブインチューブシステムとして構成される(図5から図7参照)。
【0065】
それぞれの供給デバイス9の外管11は、処理溶液4を上向きに噴霧するための複数の上向き出口開口部13を有する(特に図3図4図6及び図7参照)。出口開口部13は、各場合において搬送ローラー8の位置に、搬送方向6に対して配置され、それぞれの外管11は、各搬送ローラー8の場合において、相互に隣接して配置された複数の上向き出口開口部13を有する。搬送ローラー8が供給デバイス9の上方に配置されているため、それぞれの外管11の出口開口部13は図1の搬送ローラー8によって遮蔽され、そのため見えなくなっている。それぞれの供給デバイス9の内管12は、処理溶液4を関連する外管11に導入するための複数の下向き出口開口部14を有する(図7参照)。
【0066】
さらに、処理装置1は、それぞれの供給デバイス9の内管12に処理溶液4を導入するための投入デバイス15を備える。投入デバイス15は、各場合において供給デバイス9(より正確には、供給デバイス9の内管12)がコネクタユニット17によって接続される投入ライン16を備える(図2参照)。
【0067】
さらに、処理装置1は、供給デバイス9から気泡及び/又は気泡に富む処理溶液を除去するための脱気装置18を備える。脱気装置18は、各場合において供給デバイス9(より正確には、供給デバイス9の内管12)がコネクタユニット20によって接続される排出ライン19を有する(図2参照)。
【0068】
図2は、図1での断面A-Aに沿った処理装置1を通る断面を示す。
【0069】
搬送装置5の搬送ローラー8が同一の高さに配置されることが図2から分かる。本例示の実施形態では、搬送ローラー8は、それらの最上点が各場合において溶液槽3の溶液槽縁21の高さに配置されるように、配置される。つまり、物体2が搬送装置5によって搬送される搬送面22は、溶液槽縁21の高さに位置している。これは、搬送ローラー8上で搬送される物体2がそれらの下向き表面23上でのみ処理溶液4と接触し、溶液槽3がその溶液槽縁21まで満たされる状況を達成する。
【0070】
処理溶液4による物体2の処理は、溶液槽3を通る物体2の搬送中に行われる。処理の場合、物体2は、それらの下向き表面23上で処理溶液4と接触する。
【0071】
処理溶液4は、投入デバイス15の投入ライン16を介して供給デバイス9の内管12に導入される。処理溶液4は、それぞれの供給デバイス9の内管12から関連する外管11にその下向き出口開口部14を介して導入される。処理溶液4は、処理溶液ジェット24の構成を有するその上向き出口開口部13を介して、それぞれの供給デバイス9の外管11から上向きに同様に噴霧され、そのうちの幾つかは図2の例として図式的に示される。
【0072】
処理溶液ジェット24は、溶液槽3に既に含まれている処理溶液4に形成され、処理対象の物体2と接触する。溶液槽3に既に含まれている処理溶液4を通過する間、処理溶液ジェット24は円錐状に大きくなり得る。
【0073】
上述したように、それぞれの供給デバイス9は、搬送方向6に対して傾斜して配向される。それぞれの供給デバイス9が搬送方向6に対して位置する角度αに関して、それは少なくともおよそα=arcsin((B-2R)/L))の場合であり、Lはそれぞれの供給デバイス9の長さであり、Bは処理対象の物体2の幅であり、Rは搬送面22の高さでの処理溶液ジェット24の半径である。特に、搬送方向6に対する供給デバイス9のこの種の配向は、溶液槽3を通過した後に物体2の下向き表面23の各点が処理溶液ジェット24で均等な長さの時間で処理されているように、溶液槽3を通じた物体2の搬送の間、物体2の下向き表面23の各点が処理溶液ジェット24に接触させられる状況を達成し得る。
【0074】
供給デバイス9の内管12に供給される処理溶液4に含まれる気泡は、それぞれの内管12の上部に集まる。気泡に富む処理溶液又は恐らくは収集された気体のみが、脱気装置18の排出ライン19を介して排出可能であり、排出ライン19は、供給デバイス9の内管12に接続される。気泡が少ない又は気泡のない処理溶液4のみがそれぞれの内管12の下向き出口開口部14を介して関連する外管11に出て、その結果、気泡が少ない又は気泡のない処理溶液4のみが上記外管11から上向きに噴霧される。この態様では、溶液槽3に位置している処理溶液4への気泡の流入が、回避され、又は少なくとも低減される。
【0075】
図3は、例として、処理装置1の供給デバイス9の1つの平面図を示す。処理装置1の供給デバイス9は構造的に相互に同一の構成のものであるため、以下の解説は処理装置1の他の供給デバイス9にも類似的に適用される。
【0076】
図3では、上記供給デバイス9の、より詳細にはその外管11の上向き出口開口部13(図5参照)が視認可能となる。図3から分かるように、供給デバイス9の上向き出口開口部13は、実質的に供給デバイス9の全長Lに渡って供給デバイス9の長手延在方向25に分布される。
【0077】
さらに、図3は2つのコネクタユニット17、20を図示し、それらによって、処理装置1の供給デバイス9は、脱気装置18の排出ライン19に、及び投入デバイス15の投入ライン16にそれぞれ接続される。それによって供給デバイス9が脱気装置18の排出ライン19に接続されるコネクタユニット20は、図3において供給デバイス9の右手端に配置され、その一方でそれによって供給デバイス9が投入デバイス15の投入ライン16に接続されるコネクタユニット17は、供給デバイス9の左手端に配置される。
【0078】
図4は、図3からの供給デバイス9の側面図を示す。さらに、図4は、2つの上記コネクタユニット17、20も示す。
【0079】
さらに、図5から図7の断面図が関連する2つの断面(断面B-B及び断面C-C)は、図4に示される。
【0080】
図5は、図3での供給デバイス9を通る断面B-Bに沿って上記供給デバイス9上に配置されるコネクタユニット17、20を通る断面を示す。
【0081】
図5では、供給デバイス9の(既に図3及び図4において視認可能である)外管11とは別に、その内管12も視認可能である。
【0082】
図6は、断面C-Cに沿った図3での供給デバイス9を通る断面を示す。
【0083】
図6は、横断面における供給デバイス9の外管11及び内管12を図示する。外管11の上向き出口開口部13の1つは、1時の位置に見える。さらに、内管12と外管11の間に配置され、供給デバイス9の2つの管11及び12を相互に所定の間隔で保持するスペーサ素子26は、図6において視認可能である。
【0084】
図7は、図5からの断面図の拡大された詳細を示す。
【0085】
図7は、供給デバイス9の内管12の一部及び外管11の一部を示し、内管12の複数の下向き出口開口部14及び外管11の幾つかの上向き出口開口部13が視認可能である。
【0086】
内管12の下向き出口開口部14を通じて、気泡の分離を伴って、処理溶液4は外管11に導入、より正確には、内管12と外管11の間の間隙に導入される。気泡は、内管11の上部に集まる。したがって、気泡が少ない又は気泡のない処理溶液4は、上向き出口開口部13に移動する。
【0087】
本発明を、図示する例示の実施形態に基づいて詳細に説明した。それでもなお、本発明は、開示された例に限定されず、又は開示された例によって限定されない。他の変形は、本発明の基礎を形成する概念から逸脱することなく、当業者によって上記例示の実施形態から導かれ得る。
【符号の説明】
【0088】
1 処理装置
2 物体
3 溶液槽
4 処理溶液
5 搬送装置
6 搬送方向
7 軌道
8 搬送ローラー
9 供給デバイス
10 直線区間
11 外管
12 内管
13 上向き出口開口部
14 下向き出口開口部
15 投入デバイス
16 投入ライン
17 コネクタユニット
18 脱気装置
19 排出ライン
20 コネクタユニット
21 溶液槽縁
22 搬送面
23 下向き表面
24 処理溶液ジェット
25 長手延在方向
26 スペーサ素子
L 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7