IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーム・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】装置へのエネルギーの供給
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231129BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02J7/00 C
H02J7/00 A
H01M10/44 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020567828
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 GB2019051286
(87)【国際公開番号】W WO2019239097
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】16/008,393
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500395107
【氏名又は名称】アーム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パティル、サンジェイ
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0194205(US,A1)
【文献】特開2010-145143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0153910(US,A1)
【文献】米国特許第9785177(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
エネルギーをストアし前記エネルギーの一部を前記装置に供給するための、エネルギーストレージ回路と、
前記装置に供給されている前記エネルギーの前記一部に応答して前記エネルギーストレージ回路を放電するための、放電回路と、
前記エネルギーストレージ回路を再充電するための、電源回路と、
前記0でない残留エネルギーの量を少なくとも2つの値から選択するための、選択回路と、を備え、
前記放電回路は、前記エネルギーストレージ回路が前記放電回路によって放電されるとき、0でない残留エネルギーを前記エネルギーストレージ回路に保持するように適合され、
前記放電回路は、前記放電回路の要素を選択的にアクティブ化又は非アクティブ化することによって、前記0でない残留エネルギーの前記量を変化させるように適合されている、装置。
【請求項2】
前記0でない残留エネルギーの量は、プログラム可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの値は、倍数である、
請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記放電回路は、第1のトランジスタを含む、
請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第1のトランジスタは、p型トランジスタである、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のトランジスタは、自然な閾値動作電圧を有しており、
前記0でない残留エネルギーは、前記第1のトランジスタ及び他のトランジスタが非アクティブ化されるとき、前記自然な閾値動作電圧に対応する、
請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記放電回路は、前記第1のトランジスタと同じタイプの第2のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタに直列に接続されている、
請求項からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタは、それぞれ自然な閾値動作電圧を有しており、
前記0でない残留エネルギーは、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタの両方がアクティブ化されるとき、前記自然な閾値動作電圧の2倍に対応する、
請求項に記載の装置。
【請求項9】
さらなるエネルギーストレージ回路が、設けられて、前記エネルギーストレージ回路が前記放電回路によって放電されている間に前記装置に電力を供給する、
請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記放電回路は、抵抗器として作用することによって前記エネルギーストレージ回路を放電するように適合されている、
請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記エネルギーストレージ回路は、コンデンサである、
請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
エネルギーストレージ回路にエネルギーをストアすることと、
前記エネルギーの一部を装置に供給することと、
前記装置に供給されている前記エネルギーの前記一部に応答して前記エネルギーを放出することと、
0でない残留エネルギーを保持することと、
前記エネルギーストレージ回路を再充電することと、
前記0でない残留エネルギーの量を少なくとも2つの値から選択することと、
を含
前記0でない残留エネルギーの前記量が前記エネルギーを放出するための放電回路の要素を選択的にアクティブ化又は非アクティブ化することによって変化される、
方法。
【請求項13】
装置であって、
エネルギーをストアするための手段と、
前記エネルギーの一部を装置に供給するための手段と、
前記装置に供給されている前記エネルギーの前記一部に応答して前記エネルギーを放出するための手段と、
0でない残留エネルギーを保持するための手段と、
エネルギーをストアするための前記手段を再充電するための手段と、
前記0でない残留エネルギーの量を少なくとも2つの値から選択するための手段と、を備え、
前記0でない残留エネルギーの前記量が前記エネルギーを放出するための手段の要素を選択的にアクティブ化又は非アクティブ化することによって変化される
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギーに関する。特に、本技術は、装置にエネルギーを供給することに関連を有する。
【背景技術】
【0002】
データ処理装置などの様々な装置では、コンデンサを充電することが一般的であり、当該コンデンサは、次に処理回路に少量のエネルギーを供給する。次に、コンデンサの残りの電荷は、コンデンサがもう一度充電される前に、放電される。このプロセスは、処理回路が、例えばメイン又は幹線電源(以下、「メイン電源」)によって、直接電力供給されているのではないということを表している。
【発明の概要】
【0003】
第1の例示的構成から見ると、装置であって、エネルギーをストアし当該エネルギーの一部を当該装置に供給するための、エネルギーストレージ回路と、当該装置に供給されている当該エネルギーの当該一部に応答して当該エネルギーストレージ回路を放電するための、放電回路と、当該エネルギーストレージ回路を再充電するための、電源回路と、を備え、当該放電回路は、当該エネルギーストレージ回路が当該放電回路によって放電されるとき、0でない残留エネルギーを当該エネルギーストレージ回路に保持するように適合されている、装置が、提供される。
【0004】
第2の例示的構成から見ると、エネルギーストレージ回路にエネルギーをストアすることと、当該エネルギーの一部を装置に供給することと、当該装置に供給されている当該エネルギーの当該一部に応答して当該エネルギーを放出することと、0でない残留エネルギーを保持することと、当該エネルギーストレージ回路を再充電することと、を含む、方法が、提供される。
【0005】
第3の例示的構成から見ると、装置であって、エネルギーをストアするための手段と、当該エネルギーの一部を装置に供給するための手段と、当該装置に供給されている当該エネルギーの当該一部に応答して当該エネルギーを放出するための手段と、0でない残留エネルギーを保持するための手段と、エネルギーをストアするための当該手段を再充電するための手段と、を備える、装置が、提供される。
【0006】
本発明は、添付の図面に示されるその実施形態を参照して、単に例としてのみ、さらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】いくつかの実施形態による装置のブロック図である。
図2】エネルギーストレージ回路の両端の電圧の経時的なグラフである。
図3】いくつかの実施形態による放電プロセスを示すフローチャートである。
図4A】回路要素の電圧の経時的なグラフである。
図4B】回路要素の電圧の経時的なグラフである。
図5】いくつかの実施形態による装置を示す図である。
図6】いくつかの実施形態による装置を示す図である。
図7】いくつかの実施形態による装置を示す図である。
図8】いくつかの実施形態による装置を示す図である。
図9】いくつかの実施形態による、図8の装置がどのように動作させられることができるかを示すフロー図である。
図10A】本技術のプログラム可能な実施形態を示す図である。
図10B】本技術のプログラム可能な実施形態を示す図である。
図11A】本技術のプログラム可能な実施形態を示す図である。
図11B】本技術のプログラム可能な実施形態を示す図である。
図12】本技術のいくつかの実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図を参照して実施形態を議論する前に、実施形態についての以下の説明が、提供される。
【0009】
一例示的構成によれば、装置であって、エネルギーをストアし当該エネルギーの一部を当該装置に供給するための、エネルギーストレージ回路と、当該装置に供給されている当該エネルギーの当該一部に応答して当該エネルギーストレージ回路を放電するための、放電回路と、当該エネルギーストレージ回路を再充電するための、電源回路と、を備え、当該放電回路は、当該エネルギーストレージ回路が当該放電回路によって放電されるとき、0でない残留エネルギーを当該エネルギーストレージ回路に保持するように適合されている、装置が、提供される。
【0010】
上記の例示的構成では、0でない残留エネルギーは、放電回路によって放電されているとき、エネルギーストレージ回路に保持されている。例えば、放電動作が放電回路によって実行された後、0でない残留エネルギー(例えば、0より大きいエネルギーの量)がエネルギーストレージ回路に残るであろうし、それによりエネルギーストレージ回路を再充電するために必要なエネルギー量が減少するであろう。結果として、装置によって消費される全体的なエネルギーは、同じ容量のエネルギーストレージ回路において残留エネルギーが全く保たれない状態と比較して、減少する。
【0011】
0でない残留エネルギーは、固定されている必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、0でない残留エネルギーの量は、プログラム可能である。この方法で、0でない残留エネルギーは、必要に応じて経時的に変化することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、当該装置は、当該0でない残留エネルギーの量を少なくとも2つの値から選択するための、選択回路を備える。これにより、0でない残留エネルギーの量は、少なくとも2つの値のうちの1つにプログラムされることができるのであり、次に、放電回路は、プログラムされた値までエネルギーストレージ回路を放電するであろう。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該少なくとも2つの値は、倍数であることができる。例えば、第2の値は、第1の値の倍数(例えば、2倍)であることができ、第3の値(存在する場合)は、第1の値のさらなる倍数(例えば、3倍)であることができる。いくつかの実施形態では、当該少なくとも2つの値は、倍数であることができることに、留意されたい。ここで、当該倍数は、第1の値の2の累乗倍である。例えば、第2の値は、第1の値の2倍であることができ、第3の値は、第1の値の4倍であることができる。値を2進法のようなやり方で配置することにより、個別の値を一緒に組み合わせることにより任意の倍数に到達することができてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、当該放電回路は、当該放電回路の要素を選択的にアクティブ化又は非アクティブ化することによって、当該0でない残留エネルギーの当該量を変化させるように適合されている。この場合も、放電回路の要素のそれぞれ異なる組み合わせを使用してそれぞれ異なる0でない残留値を提供することにより、それらの要素を組み合わせて広範囲のそれぞれ異なる0でない残留値を生成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、当該放電回路は、第1のトランジスタを含む。トランジスタは、論理値「0」を論理値「1」より容易に通過させるn型であるか、論理値「1」を論理値「0」よりも容易に通過させるp型であるかに大別できる。いくつかの実施形態では、使用されるトランジスタは、p型である。そのようなトランジスタは、「0」の論理値を通過させることに対しての良好性がより低いから、そのようなトランジスタは、グランドに接続されているとき、概して0電圧まで完全放電せず代わりに自然に電圧を保持する傾向がある。したがって、放電回路でそのようなトランジスタを使用する場合、エネルギーストレージ回路の完全な放電を防止して代わりにエネルギーストレージ回路に残留電荷を残すことが、可能である。
【0016】
いくつかの実施形態では、当該第1のトランジスタは、自然な動作電圧を有しており、当該0でない残留エネルギーは、当該第1のトランジスタ及び他のトランジスタが非アクティブ化されるとき、当該自然な動作電圧に対応する。p型トランジスタの自然な動作電圧は、Vで表される場合がある。p型トランジスタは、この電圧で自然に動作するから、それは、グランドに接続されているとき、自然に電圧Vを保持する。
【0017】
いくつかの実施形態では、当該放電回路は、当該第1のトランジスタと同じタイプの第2のトランジスタを含み、当該第1のトランジスタに直列に接続されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、当該第1のトランジスタ及び当該第2のトランジスタは、それぞれ自然な動作電圧を有しており、当該0でない残留エネルギーは、当該第1のトランジスタと当該第2のトランジスタの両方がアクティブ化されるとき、当該自然な動作電圧の2倍に対応する。同じタイプの2つのトランジスタを直列に設けることにより(例えば、第1のトランジスタのドレインを第2のトランジスタのゲートに接続することにより)、第2のトランジスタは、第1のトランジスタが放電するにつれて、充電される。1つのトランジスタの自然な動作電圧がVである場合、回路は、両方のトランジスタが充電されているという条件で(例えば、全体の電圧が約2Vである限り)、開いている(放電が引き起こされ)。したがって、この方法での2つのトランジスタの使用は、2Vの残留電圧が得られるまで放電を引き起こす。
【0019】
いくつかの実施形態では、さらなるエネルギーストレージ回路が、設けられて、当該エネルギーストレージ回路が当該放電回路によって放電されている間に当該装置に電力を供給する。いくつかの実施形態では、エネルギーストレージ回路を放電することは、エネルギーストレージ回路が装置の他の部分から切断されることを、必要とする場合がある(装置のそれらの部分も放電されることを、防止又は阻止するためである)。ただし、これにより、装置への電力の供給が、妨げられるであろう。したがって、この期間中に装置に電力を供給するために、さらなるエネルギーストレージ回路が、設けられることができる。さらなるエネルギーストレージ回路は、電源回路によってエネルギーストレージ回路と同時に再充電されることができるし、又はいくつかの実施形態では、エネルギーストレージ回路自体によって再充電されることさえできるであろう。
【0020】
いくつかの実施形態では、当該放電回路は、抵抗器として作用することによって当該エネルギーストレージ回路を放電するように適合されている。そのような装置は、例えば、エネルギーを熱として放出することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、当該エネルギーストレージ回路は、コンデンサである。
【0022】
ここで、特定の実施形態について図を参照して説明する。
【0023】
図1は、一実施形態による装置100のブロック図である。装置は、メイン電源から電力を得る電源回路110を含む。そして今度は、これが、エネルギーストレージ回路120にエネルギーを提供するために使用される。エネルギーストレージ回路120は、例えば、コンデンサの形態をとることができる。エネルギーストレージ回路は、装置100の残りにエネルギーを提供するために使用されるが、いくつかの実施形態では、エネルギーストレージ回路120は、装置100の一部にのみエネルギーを提供することができる。この実施形態では、エネルギーストレージ回路は、コンデンサの形態をとる。放電回路130も、設けられる。この実施形態では、放電回路130は、抵抗器として作用し、それによって、エネルギーストレージ回路120からエネルギーを熱として放出する。
【0024】
放電回路130は、エネルギーストレージ回路120からエネルギーを放出するときに残留エネルギーが残されるようなものである。その結果、電源回路110がエネルギーストレージ回路120を再充電するとき、行われるべき仕事がより少なくなり、その結果システムによって使用されるエネルギーがより少なくなる。
【0025】
図2は、エネルギーストレージ回路120の両端の電圧の経時的なグラフを示している。図は、エネルギーストレージ回路120の両端の電圧が、再充電プロセス200の間にVmaxまで増加していることを示しており、その時点で、エネルギーストレージ回路120は、完全に充電されている。次に、エネルギーストレージ回路120の両端の電圧は、エネルギーストレージ回路120が装置100に(例えば、装置内の処理回路に)電力を供給している間、減少する202。次に、エネルギーストレージ回路120の両端の電圧は、エネルギーストレージ回路120が放電回路130によって放電されるにつれて、減少する204。放電回路130による完全放電206は、閾値Vまでの部分放電208、及び閾値2Vまでの部分放電210と比較される。
【0026】
図3に示される例では、放電回路130は、エネルギーストレージ回路120を、装置によって実行されるそれぞれ異なる動作の後で同じ量だけ放電する。この例では、装置が、様々な処理動作を実行する処理回路を含むことが考慮されている。S302では、処理動作が実行され、S204aでは、放電回路130がエネルギーストレージ回路120を閾値Vまで部分放電する。S304では、異なる処理動作が実行され、S204bでは、放電回路130がエネルギーストレージ回路120を同じ閾値Vまで放電する。したがって、装置によって実行される動作に関わりなく、エネルギーストレージ回路120のエネルギーは、再充電される前に、0でない残留エネルギーVまで(熱として)放出される。したがって、実行される動作に関わりなく、エネルギーがエネルギーストレージ回路120から完全に放出されるシステムと比較して、エネルギーが節約される。
【0027】
図4Aは、回路要素について、n型トランジスタを介して放電(i)、及び充電(ii)されるときの経時的な電圧を示し、図4Bは、回路要素について、p型トランジスタを介して放電(i)、及び充電(ii)されるときの経時的な電圧を示している。図4B(i)に示されるように、p型MOSFET(pMOS)などのp型トランジスタによって放電される回路要素は、何らかの残留電荷を残して何らかの閾値V(ここで、Vは、0より大きいが、Vmaxより小さい)まで部分放電されることだけができる。したがって、p型トランジスタは、何らかの残留電荷を残してエネルギーストレージ回路120を部分放電するのに十分である。対照的に、n型MOSFET(nMOS)などのn型トランジスタによって放電される回路要素は、コンデンサに残留電荷を全く残さずに0まで完全に放電されることができる(図4A(i))。したがって、エネルギーストレージ回路120が、n型トランジスタを介して放電されるとき、それは、0まで完全に放電されるし、単一のn型トランジスタは、エネルギーストレージ回路120を何らかの閾値まで部分放電するには十分ではないであろう。0の電圧は、そのコンポーネントの両端の可能な限り低い電圧を意味するように意図されていることに留意すべきである。
【0028】
逆に、回路要素が、p型トランジスタを介して充電される場合(図7B(ii)に示される)、それは、その最大電圧Vmaxまで完全に充電されることができ、一方、n型トランジスタを介して充電される場合(図4A(ii))、回路要素は、最大電圧Vmaxよりも低い何らかの閾値電圧Vまで充電されることだけができる。図6及び図7を参照して以下で詳細に説明するように、これは、n型トランジスタがさらなるトランジスタと直列に設けられる場合、さらなるトランジスタは、エネルギーストレージ回路が放電されるにつれて、n型トランジスタを介して充電されることができるということを意味する。さらなるトランジスタは、(充電中のn型トランジスタの特性に従って)何らかの閾値まで充電されるだけであろうから、これは、残留電荷がエネルギーストレージ回路に残され、したがってエネルギーストレージ回路は、部分放電されるだけであることを意味する。
【0029】
図5は、例示的実施形態を示しており、装置100aは、電力レールVDD及びVSSの間に接続された、エネルギー供給回路120としてコンデンサ120a、及び放電回路130aを含む。コンデンサは、安価で耐久性がありかつ迅速に充電及び放電されるように適合されているから、この実施形態では、コンデンサ120aが、使用される。しかしながら、コンデンサ120aは、他の形態のエネルギーストレージによって置き換えられることができることが理解されよう。放電回路130aは、装置100aによる動作(例えば、処理動作)が完了した後に、コンデンサ120aを部分放電するように適合されている。この特定の実施形態では、放電回路130aは、p型トランジスタ500を含む。p型トランジスタの自然な閾値によって、コンデンサ130aは、トランジスタ500を介して放電されるときに部分放電されるだけであり、それにより、コンデンサ130aに残留電荷が残される。トランジスタ500は、例えば、pMOSトランジスタ、すなわち、p型MOSFETトランジスタであり得る。
【0030】
図6は、本技術の代替実施形態を示しており、放電回路130bは、直列に接続された複数のn型トランジスタ600を含む。図6の配置は、電力レールVSS及びVDDの間に接続された、コンデンサ120a及び放電回路130bを含む。図5の放電回路130aに類似して、放電回路130bは、この場合はn型トランジスタの特性を利用することによって、コンデンサ120aを何らかの閾値まで部分放電するように適合されている。特に、この配置は、図4A(ii)に示されるように、n型トランジスタを介して充電される回路要素は、何らかの閾値Vまでだけ充電されることができる、ということを利用している。コンデンサ120aが放電回路130bを介して放電されると、コンデンサ120aが第1のn型トランジスタ600aを充電し、そして今度はそれが第2のn型トランジスタ600bを充電し、そして今度はそれが第3のn型トランジスタ600cを充電する。トランジスタ600bは、n型トランジスタ600aを介して充電されるから、トランジスタ600bは、残留電荷を残して何らかの閾値までだけ充電されることができ、当該残留電荷は、コンデンサ120aにストアされる。同様に、n型トランジスタ600cも、n型トランジスタ600bを介して充電されるということに起因して、コンデンサ120aにストアされるさらなる残留電荷を残して閾値までだけ充電されることができる。したがって、コンデンサ120aには、両方のトランジスタによる残留電荷が残される。実際には、2つのトランジスタによって提供される残留電荷は、同一であり、それにより、1つのトランジスタが寄与するコンデンサ120aの残留電荷の倍数の量が提供される。コンデンサ120aについての閾値電圧(及び残留電荷)は、さらなるn型トランジスタ600を直列に追加することによって増加されることができ、したがって、放電回路130b内のn型トランジスタ600の数は、3つに限定されるのではなく、1より大きい任意の数であることができることが理解されよう。
【0031】
図7は、本技術のさらなる実施形態を示しており、放電回路130cは、直列に接続されたn型トランジスタ700とp型トランジスタ710を含む。この配置は、図7A(ii)に示される充電におけるn型トランジスタの特性と、図7B(i)に示される放電におけるp型トランジスタの特性と、の両方を利用している。図7において、コンデンサ120aが放電回路130cを介して放電されると、コンデンサ120aが最初にn型トランジスタ700を充電し、n型トランジスタ700が第1のp型トランジスタ710aを充電し、そして今度はそれが第2のp型トランジスタ710bを充電する。第1のp型トランジスタ710aは、n型トランジスタ700を介して充電されるから、第1のp型トランジスタ710aは、何らかの閾値Vまでだけ充電されることができ、そのようにして、残留電荷が、システムに残る。次に、第1のp型トランジスタ710aが第2のp型トランジスタ710bを介して放電するとき、第1のp型トランジスタ710aは、同じ量のさらなる残留電荷を残して閾値までだけ放電されることができる。このようにして、「二重の」残留電荷が、コンデンサ120aに残される。前の実施形態におけるように、閾値は、さらなるn型トランジスタを追加することによって増加されることができ、さらなるp型トランジスタを追加することによっても増加されることができる。ここで、コンデンサ120aは、当該閾値まで放電される。したがって、図7に示される実施形態は、示されるように1つのn型トランジスタ700と2つのp型トランジスタ710に限定されるのでは、なく、任意の数のn型及びp型トランジスタが、使用されることができることが理解されよう。
【0032】
図5図6、及び図7は、本技術による放電回路130の様々な構成を示しているのであるが、しかしながら、エネルギーストレージ回路120が部分放電されることを可能にする、放電回路130の任意の配置が使用されることができることが理解されよう。概して、これは、図5におけるような単一のp型トランジスタ、又はp型とn型の一方若しくは両方の複数のトランジスタ、又は同じ結果をもたらす他の任意の構成であり得る。
【0033】
本技術のいくつかの実施形態は、電力レールVDD及びVSSを含む。電源レールVDD及びVSSは、それらの間に電圧を有するように配置される。放電回路130及びエネルギーストレージ回路120は、電力レールVDD及びVSSが、エネルギーストレージ回路120と放電回路130との間で電荷を供給するように、図5図7に示されるように電力レールの間に接続される。
【0034】
いくつかの実施形態では、閾値は、エネルギーストレージ回路120が放電されるたびに同じである。ここで、エネルギーストレージ回路120は、当該閾値まで放電される。他の実施形態では、閾値は、可変であり得る。図5図7のいずれでも、固定閾値を使用できるが、しかしながら、図6及び図7における配置は、可変閾値を提供するように構成されることもでき、この場合、閾値は、放電回路130内のトランジスタのうち1つ以上をバイパスすることによって低減されることができる。所与のトランジスタの閾値がVである場合、直列に含まれる追加のトランジスタは、それぞれ閾値をVだけ増加させる。図2は、このような閾値の例を示す。例えば、単一のp型トランジスタを含む装置208は、Vtの閾値を有し、一方、直列に2つのp型トランジスタを含む装置210は、2Vの閾値を有する。
【0035】
図8は、本技術の実施形態を示し、装置100bは、電源回路110と、エネルギーストレージ回路120と、エネルギーストレージ回路120を部分放電するように構成された放電回路130と、を含む。装置は、処理動作を実行するための処理回路800を含む。
【0036】
エネルギーストレージ回路120、放電回路130、及び処理回路800はすべて、電力レールVDD及びVSSの間に接続されている。当該電力レールVDD及びVSSは、電源回路110からエネルギーストレージ回路120へ、エネルギーストレージ回路120を再充電するために電力を供給するのであり、また、エネルギーストレージ回路120が処理回路800に電力を供給できるように、エネルギーストレージ回路120を処理回路800に接続するとともに、エネルギーストレージ回路120が放電回路130を通して放電されることができるように、エネルギーストレージ回路120を放電回路130に接続する。電源レールVSSは、システムの0電圧を定める。装置100bはまた、電力レールVDD及びVSSの間に接続された、さらなるエネルギーストレージ回路802も含む。さらなるエネルギーストレージ回路802は、エネルギーストレージ回路120が再充電又は放電されている間に、処理回路802に電力を供給するように配置される。図8はまた、リフレッシュトランジスタ804及び806、転送トランジスタ808及び810、並びにエネルギーストレージトランジスタ812及び814を含む、スイッチとして作用するように構成された6つのトランジスタも示す。トランジスタ804~814は、ここでは交換可能にスイッチと呼ばれる。トランジスタ804~814は、MOSFETであり得る。しかしながら、トランジスタ804~814、又は回路内の電気の流れを調節するように構成された他の任意のコンポーネントの代わりに、他の任意の電力スイッチを使用できることが理解されよう。
【0037】
図9は、図8の装置100bを動作させることができる方法を示すフロー図を示す。スイッチ804、806、808、810、812、及び814は、さらなるストレージ回路802を充電し、処理回路800に電力を提供し、エネルギーストレージ回路120を放電し、又はエネルギーストレージ回路120を充電し互いに分離されているプロセスを、可能にする。例えば、エネルギーストレージ回路120が放電されることなく、さらなるエネルギーストレージ回路802が充電されることを、可能にすることである。S1000では、リフレッシュスイッチ804及び806は閉じられ、転送スイッチ808及び810は開いたままにされる。これにより、エネルギーストレージ回路120が充電されることが、可能になる。ひとたびエネルギーストレージ回路120が完全に充電されれば、S1002では、リフレッシュスイッチ804及び806の両方が開かれ、転送スイッチ808及び810が閉じられる。これにより、エネルギーストレージ回路120が、2つの電源が平衡に達するまで、さらなるエネルギーストレージ回路802を充電することが、可能になる。あるいは、さらなるエネルギーストレージ回路802が存在しない場合、エネルギーストレージ回路120は、処理回路800に電力を直接供給するように構成されることができる。処理回路800は、何らかの処理動作を実行し、その後、又はエネルギーストレージ回路120及び802が平衡に達した後、S1004において、転送スイッチ808及び810が開かれて、エネルギーストレージ回路120が放電回路130を通して部分放電されることを可能にする一方、電源スイッチ812及び814の両方を閉じることによって、さらなるエネルギーストレージ回路802が処理回路800に電力を供給するように準備される。リフレッシュスイッチ804及び806並びに転送スイッチ808及び810がすべて開いているから、エネルギーストレージ回路120の放電は、放電回路130を介して行われる。放電回路130は、抵抗器として作用することによってエネルギーストレージ回路120を放電し、エネルギーストレージ回路120にストアされている電力を熱に変換し、その熱は、装置100b内で放散される。
【0038】
図10図11は、本技術の実施形態を示し、当該実施形態は、プログラム可能である、すなわち、それらは、プログラム論理を使用して制御されることができる。図10Aは、ANDゲート1104及びバッファ1102が、どのようにして、それらがトランジスタ1106をアクティブ化又は非アクティブ化するために使用されることができるように、トランジスタ1100と共に配置されることができるかの例を示す。図10Bは、この設計をどのようにして複数のトランジスタ1106に拡張できるかを示す。これにより、トランジスタ1106を選択的にアクティブ化又は非アクティブ化することによって閾値が変化させられることが、可能になる。ここで、コンデンサ120aは、当該閾値まで放電される。図10の配置は、「アクティブロー」構成として知られている。
【0039】
図11は、本技術のプログラム可能な実施形態の「アクティブハイ」構成を示す。図11Aは、ANDゲート1206への入力に基づいてトランジスタ1200をアクティブ化又は非アクティブ化するように構成された、バッファ1204、トランジスタ1202、及びANDゲート1206を示す。図11Bは、この構成をどのようにして複数のトランジスタ1200に拡張できるかを示す。
【0040】
図10B及び図11Bは、選択的にアクティブ化又は非アクティブ化されるように構成された、直列の2つのトランジスタのみを示しているが、この配置は、任意の数のトランジスタ1106/1200に拡張されることができることが理解されよう。
【0041】
図10図11は、コンデンサ120aについての閾値が、どのようにして変化させられることができるかを示している。この故に、閾値は、いくつのトランジスタ1106/1200がアクティブ化されているかに応じて、それぞれが倍数であるいくつかの値から、選択されることができる。閾値が選択されることができる数多くの方法があり、例えば、閾値は、ランダムに選択されてもよい。これは、システムの電力消費からの如何なる予測可能性も排除することにより、システムのセキュリティをさらに改善する。閾値は、何らかのランダムな入力に基づいてランダムに選択されてもよく、例えば、ランダムな数が生成されてもよく、その数に等しい数のトランジスタがアクティブ化されてもよい。閾値のランダムな選択を行う多くの方法があり任意の方法が使用され得ることが、理解されよう。さらにまた、真にランダムな選択を行うことがしばしば実際的ではないことが理解されるであろうし、そのため、本出願の文脈における「ランダム」は、疑似ランダムな方法で行われる選択も意味するように意図されていることが理解されよう。
【0042】
図10図11に示される本技術のプログラム可能な実施形態は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムによって制御されることもできる。
【0043】
図12は、本発明の実施形態を示すフローチャート1300のものである。ステップS1302において、エネルギーは、エネルギーストレージ回路120にストアされる。ステップS1304において、エネルギーは、エネルギーストレージ回路から装置100に、例えば、装置100b内の処理回路802に供給される。この動作が完了すると、エネルギーストレージ回路120は、ステップS1306で放電される。これは、残りのエネルギーが所定のプリセット値(プリセット値、例えばVの正の整数倍)に達するまで、(ステップS1308を介して)継続する。ひとたびこれが完了すれば、エネルギーストレージ回路120は、例えば電源回路110によって、再充電される。エネルギーストレージ回路120において残留電荷を維持することにより、電源回路110によってエネルギーストレージ回路120を再充電するために必要なエネルギーが、低減されることができる。
【0044】
本出願において、「~に構成され」という言葉は、装置の要素が、定められた動作を実行できる構成を有することを意味するために使用される。この文脈において、「構成」は、ハードウェア又はソフトウェアの、配置、又は相互接続の方法を意味する。例えば、装置は、定められた動作を提供する専用のハードウェアを有し得、又はプロセッサ若しくは他の処理デバイスは、機能を実行するようにプログラムされ得る。「に構成され」は、装置要素が、如何なる方法でも、定められた動作を提供するために変更される必要があることを含意しない。
【0045】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して本明細書で詳細に説明されてきたが、本発明は、それらの厳密な実施形態に限定されず、かつ様々な変更、追加、及び修正が、添付の特許請求の範囲によって定められる通りの本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者によってそれらにもたらされることができることが、理解されるべきである。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、従属請求項の特徴の様々な組み合わせを、独立請求項の特徴と行うことができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12