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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】描画システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0488 20220101AFI20231129BHJP
   G06F 3/04845 20220101ALI20231129BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20231129BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231129BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G06F3/0488
G06F3/04845
G06F3/03 400Z
G09G5/00 510H
G09G5/00 510V
H04M1/00 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020569379
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043382
(87)【国際公開番号】W WO2020158088
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019016610
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-053236(JP,A)
【文献】特開2016-110178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/048-3/04895
G06F 3/03
G06F 3/041
G09G 5/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示デバイスと前記第1の表示デバイスの表示画面に対応する第1の位置検出センサとを備えた第1の端末装置と、第2の表示デバイスと前記第2の表示デバイスの表示画面に対応する第2の位置検出センサとを備えた第2の端末装置とが通信可能に接続されて構成される描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
前記第2の端末装置から送信されて来る指示情報を取得する指示情報取得部と
前記第1の表示デバイスの前記表示画面を描画エリアとし、前記指示情報取得部を通じて取得した前記指示情報に応じると共に、前記第1の位置検出センサを通じて受け付ける描画操作入力に応じて前記描画エリアに描画を行うようにする描画処理部と、
を備え、
前記第2の端末装置は、
前記第2の表示デバイスの前記表示画面を指示入力エリアとし、前記指示入力エリアに指示入力受付画面を表示する受付画面表示処理部と、
前記指示入力エリアに表示された前記指示入力受付画面と前記第2の位置検出センサとを通じて受け付けた前記指示情報を、前記第1の端末装置に送信するようにする指示情報提供部と
を備え、
前記第1の端末装置の前記第1の位置検出センサと、前記第2の端末装置の前記第2の位置検出センサとは、同一の電子ペンにより操作が可能なものであり、
前記第1の端末装置は、
前記電子ペンから送信される電子ペン識別情報を受信する第1の受信手段と、
前記第1の受信手段を通じて受信した前記電子ペン識別情報を、前記第2の端末装置に送信する第1の識別情報提供手段と、
前記第2の端末装置から送信されて来る電子ペン識別情報を取得する第1の識別情報取得手段と、
前記第1の受信手段を通じて受信した電子ペン識別情報と、前記第1の識別情報取得手段を通じて取得した電子ペン識別情報とが同じ場合に、前記第2の端末装置との間に通信路を接続させるようにする第1の認証制御手段と
を備え、
前記第2の端末装置は、
前記電子ペンから送信される電子ペン識別情報を受信する第2の受信手段と、
前記第2の受信手段を通じて受信した前記電子ペン識別情報を、前記第1の端末装置に送信する第2の識別情報提供手段と、
前記第1の端末装置から送信されて来る電子ペン識別情報を取得する第2の識別情報取得手段と、
前記第2の受信手段を通じて受信した電子ペン識別情報と、前記第2の識別情報取得手段を通じて取得した電子ペン識別情報とが同じ場合に、前記第1の端末装置との間に通信路を接続させるようにする第2の認証制御手段と
を備えることを特徴とする描画システム。
【請求項2】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
前記第2の端末装置との間で通信路が接続された場合に、前記指示入力受付画面を形成するための情報を含み、指示情報を受け付けて送信するために必要になる画面等情報を前記第2の端末装置に送信する画面等情報提供部を備え、
前記第2の端末装置は、
前記第1の端末装置から送信されて来る前記画面等情報を取得する画面等情報取得部を備え、
前記受付画面表示処理部は、前記画面等情報取得部を通じて取得した前記画面等情報に含まれる情報に基づいて、前記指示入力受付画面を前記指示入力エリアに表示して、指示情報を受け付け可能にする
ことを特徴とする描画システム。
【請求項3】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
前記第2の端末装置との間で通信路が接続された場合に、所定の描画ソフトウェアを実行して、前記指示情報取得部と前記描画処理部とを制御する第1の制御部を備え、
前記第2の端末装置は、
前記第1の端末装置との間で通信路が接続された場合に、所定の入力受付ソフトウェアを実行して、前記受付画面表示処理部と前記指示情報提供部とを制御する第2の制御部を備える
ことを特徴とする描画システム。
【請求項4】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
前記第1の表示デバイスの前記表示画面に描画エリアを設け、描画を行うようにする描画機能と、前記第1の表示デバイスの前記表示画面に指示入力エリアを設け、指示入力受付画面を表示して指示情報の入力を受け付ける指示入力受付機能との両方を有する第1の描画用ソフトウェアを備えており、
前記第2の端末装置との間で通信路が接続された場合に、前記第1の表示デバイスの前記表示画面を前記描画エリアとして、前記描画機能を働かせるようにして前記第1の描画用ソフトウェアを実行し、前記指示情報取得部と前記描画処理部とを制御する第1の制御部を備え、
前記第2の端末装置は、
前記第2の表示デバイスの前記表示画面に描画エリアを設け、描画を行うようにする描画機能と、前記第2の表示デバイスの前記表示画面に指示入力エリアを設け、指示入力受付画面を表示して指示情報の入力を受け付ける指示入力受付機能との両方を有する第2の描画用ソフトウェアを備えており、
前記第1の端末装置との間で通信路が接続された場合に、前記指示入力受付機能を働かせるようにして前記第2の描画用ソフトウェアを実行し、前記受付画面表示処理部と前記指示情報提供部とを制御する第2の制御部を備える
ことを特徴とする描画システム。
【請求項5】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第2の端末装置の前記第2の位置検出センサは、使用者の指等によるタッチ操作が可能なものであることを特徴とする描画システム。
【請求項6】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
無線あるいは有線により信号の送受信を行う第1の通信部と、
前記第1の通信部を通じた通信の結果に基づいて、接続判定を行う接続判定部と
を備え、
前記第2の端末装置は、
無線あるいは有線により信号の送受信を行う第2の通信部と、
前記第2の通信部を通じた通信の結果に基づいて、接続判定を行う接続判定部と
を備えることを特徴とする描画システム。
【請求項7】
請求項6に記載の描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
前記第1の通信部を通じて通信を開始させるための第1の操作部を備え、
前記第1の操作部が操作された場合に、前記第1の通信部は記第2の端末装置の前記第2の通信部との間で通信路を接続するための通信処理を開始させることを特徴とする描画システム。
【請求項8】
請求項6に記載の描画システムであって、
前記第2の端末装置は、
前記第2の通信部を通じて通信を開始させるための第2の操作部を備え、
前記第2の操作部が操作された場合に、前記第2の通信部は前記第1の端末装置の前記第1の通信部との間で通信路を接続するための通信処理を開始させることを特徴とする描画システム。
【請求項9】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記第2の端末装置は、使用者の身体に対して取り付けるための取り付け具を備えることを特徴とする描画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、表示デバイスと位置検出センサとを有し、電子ペンによる描画入力が可能な端末装置を備えて構成される描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスと位置検出センサとを備え、電子ペンによる描画入力が可能なタブレットPC(Personal Computer)などが広く用いられている。タブレットPCに対して描画入力を行う場合には、いわゆる描画ソフトウェアが実行される。描画ソフトウェアにおいては、表示画面に描画エリアと指示入力エリアとを設けて、使用者からの指示入力を受け付ける。
【0003】
描画エリアは、電子ペンによる描画入力を受け付けて、これに応じた描画像を表示するエリアである。指示入力エリアは、指示入力受付画面を表示して、例えば、描画に用いる線種、色、色合い、鮮やかさ、明るさ、グラデーションの度合などといった、描画に関する種々の指示入力(パラメータの入力)を受け付けるエリアである。指示入力エリアは、色の選択なども行うことから、パレット部などと呼ばれる場合もある。
【0004】
そして、描画エリアと指示入力エリアが1つの表示画面内に設けられるため、描画エリアでの描画中に、電子ペンが誤って指示入力エリアに入ってしまった場合には、意図しない指示入力が行われてしまう場合がある。このような問題に対応するため、後に記す特許文献1には、電子ペンが描画エリアから連続して指示入力エリアに至った場合には、指示入力エリアに対する指示入力を無効とする座標入力制御方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-11233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
比較的に大きな表示画面の表示デバイスを有するタブレットPCであっても、当該装置の表示画面に描画エリアと指示入力エリアとの両方を設けると、描画エリアは小さくならざるを得ない。近年においては、コンピュータの性能向上に伴い、表示画面のサイズが8インチ~11インチ程度の小型の表示デバイスを備えた小型のタブレットPCで描画ソフトウェアを実行し、細かな描画を行う場合も多い。
【0007】
この場合、描画エリアはとても小さくなる。描画エリアが小さいと、細かな画像を描画する場合などにおいて、描画した画像の拡大縮小の繰り返しが生じ、作業効率が極度に悪くなることが考えられる。このため、できるだけ描画エリアを大きくしたいとする要求がある。その一方で、指示入力エリアに対する指示入力も適切なタイミングで適切に行えなければならない。線種や色の変更などは適宜のタイミングで行えなければ、使用者の意図に応じて柔軟に描画を行うことができない。
【0008】
以上のことに鑑み、大きな描画エリアを確保できると共に、指示入力エリアに対する指示入力も適切なタイミングで受け付けて、これに応じた描画を行えるようにする描画システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
第1の表示デバイスと前記第1の表示デバイスの表示画面に対応する第1の位置検出センサとを備えた第1の端末装置と、第2の表示デバイスと前記第2の表示デバイスの表示画面に対応する第2の位置検出センサとを備えた第2の端末装置とが通信可能に接続されて構成される描画システムであって、
前記第1の端末装置は、
前記第2の端末装置から送信されて来る指示情報を取得する指示情報取得部と
前記第1の表示デバイスの前記表示画面を描画エリアとし、前記指示情報取得部を通じて取得した前記指示情報に応じると共に、前記第1の位置検出センサを通じて受け付ける描画操作入力に応じて前記描画エリアに描画を行うようにする描画処理部と、
を備え、
前記第2の端末装置は、
前記第2の表示デバイスの前記表示画面を指示入力エリアとし、前記指示入力エリアに指示入力受付画面を表示する受付画面表示処理部と、
前記指示入力エリアに表示された前記指示入力受付画面と前記第2の位置検出センサとを通じて受け付けた前記指示情報を、前記第1の端末装置に送信するようにする指示情報提供部と
を備え、
前記第1の端末装置の前記第1の位置検出センサと、前記第2の端末装置の前記第2の位置検出センサとは、同一の電子ペンにより操作が可能なものであり、
前記第1の端末装置は、
前記電子ペンから送信される電子ペン識別情報を受信する第1の受信手段と、
前記第1の受信手段を通じて受信した前記電子ペン識別情報を、前記第2の端末装置に送信する第1の識別情報提供手段と、
前記第2の端末装置から送信されて来る電子ペン識別情報を取得する第1の識別情報取得手段と、
前記第1の受信手段を通じて受信した電子ペン識別情報と、前記第1の識別情報取得手段を通じて取得した電子ペン識別情報とが同じ場合に、前記第2の端末装置との間に通信路を接続させるようにする第1の認証制御手段と
を備え、
前記第2の端末装置は、
前記電子ペンから送信される電子ペン識別情報を受信する第2の受信手段と、
前記第2の受信手段を通じて受信した前記電子ペン識別情報を、前記第1の端末装置に送信する第2の識別情報提供手段と、
前記第1の端末装置から送信されて来る電子ペン識別情報を取得する第2の識別情報取得手段と、
前記第2の受信手段を通じて受信した電子ペン識別情報と、前記第2の識別情報取得手段を通じて取得した電子ペン識別情報とが同じ場合に、前記第1の端末装置との間に通信路を接続させるようにする第2の認証制御手段と
を備えた描画システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の描画システムの外観の例を説明するための図である。
図2】実施の形態の第1、第2の端末装置の基本構造を説明するための分解構成図である。
図3】第1の実施の形態の第1の端末装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図4】第1の実施の形態の第2の端末装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図5】第1の実施の形態の第1の端末装置と第2の端末装置の動作の概要について説明するための図である。
図6】第1の実施の形態の第1の端末装置で行われる処理と第2の端末装置で行われる処理につい説明するためのフローチャートである。
図7】第2の実施の形態の第1の端末装置の構成例と第2の端末装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図8】第2の実施の形態の第1の端末装置と第2の端末装置の動作の概要について説明するための図である。
図9】第2の実施の形態の第1の端末装置で行われる処理と第2の端末装置で行われる処理につい説明するためのフローチャートである。
図10】第3の実施の形態の第1の端末装置の構成例と第2の端末装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図11】第3の実施の形態の第1の端末装置と第2の端末装置の動作の概要について説明するための図である。
図12】第3の実施の形態の第1の端末装置で行われる処理と第2の端末装置で行われる処理の動作につい説明するためのフローチャートである。
図13】第2の端末装置の使用者の身体への装着の例について説明するための図である。
図14】電子ペン識別情報を用いた認証処理を行う描画システムの構成例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、この発明の描画システムの実施の形態について説明する。以下においては、3つの実施の形態について説明するが、まず、それらの3つの実施の形態の描画システムで共通する描画システムの外観と、描画システムを構成する端末装置の基本構造について説明する。
【0013】
[描画システムの外観]
図1は、実施の形態の描画システムの外観の例を説明するための図である。図1に示すように、当該描画システムは、第1の端末装置1と第2の端末装置2とにより構成される。第1の端末装置1は、表示画面のサイズが例えば8インチ~12インチ程度の薄型の表示デバイスと、当該表示画面に対応し電子ペンなどの指示体による指示位置を検出する位置検出センサとを備えた、タブレットPCなどとして実現される。
【0014】
第2の端末装置2は、表示画面のサイズが例えば4インチ~6インチ程度の薄型の表示デバイスと、当該表示画面に対応し電子ペンなどの指示体による指示位置を検出する位置検出センサとを備えたものである。具体的には、スマートホンなど呼ばれる高機能携帯電話端末や第1の端末装置1より小型のタブレットPCなどとして実現される。
【0015】
第1の端末装置1と第2の端末装置2とは、近距離無線通信機能により通信路を接続し、相互に通信を行うことができる。近距離無線通信機能の規格には種々のものがあり、当該描画システムにおいても、種々の規格の近距離無線通信機能を用いることが可能である。しかし、以下においては説明を簡単にするため、第1の端末装置1と第2の端末装置2との間では、広く一般に利用されているBluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信機能が用いられるものとして説明する。
【0016】
第1の端末装置1は、描画ソフトウェア(以下、描画ソフトと記載する。)を搭載し、これを実行することによって、図1に示したように表示画面115Dに描画エリアR1と指示入力エリアR2とを設けて使用者からの入力を受け付けることができる。描画エリアR1は、電子ペンによる描画入力を受け付けて、これに応じた描画像を表示するエリアである。また、指示入力エリアは、指示入力受付画面を表示して、例えば線種や色の選択といった描画に関する種々の指示入力(パラメータの入力)を受け付けるエリアである。
【0017】
第1の端末装置1は、描画エリアR1と指示入力エリアR2とに対する使用者からの操作入力を受け付け、描画エリアR1に使用者の指示に応じた画像を描画できる。すなわち、この明細書において、描画ソフトは、ポインティングデバイス(主に電子ペン)を用いて、コンピュータ上で画像を描く2次元コンピュータグラフィックスのアプリケーションである。
【0018】
しかし、第1の端末装置1の表示画面115Dのサイズは、8インチ~12インチと小さい。このため、図1に示すように、指示入力エリアR2を設けることにより、描画エリアR1が小さくなってしまい、描画作成時の作業効率が悪くなる。近年においては、スマートホンや小型のタブレットPCが広く普及している。描画装置としての第1の端末装置の使用者であっても、スマートホンや小型のタブレットPCを所持している場合が多い。
【0019】
そこで、第1の端末装置1に加えて、第2の端末装置2を利用することによって1つの描画システムを構成する。当該描画システムにおいては、第1の端末装置1の表示画面115Dの全面を描画エリアとして用い、第2の端末装置2の表示画面215Dの全面を指示入力エリアとして用いる。すなわち、従来は1つの端末装置の表示画面内設けていた描画エリアR1と指示入力エリアR2とのそれぞれを、第1の端末装置1と第2の端末装置2とのそれぞれに別々に設ける。
【0020】
これにより、指示入力エリアが描画エリアを圧迫して、描画エリアを狭くしないようにできる。そして、第2の端末装置2の表示画面215Dに設けられた指示入力エリアを通じて受け付けた指示情報を、第1の端末装置1に対して無線通信を通じて提供する。第1の端末装置1では、第2の端末装置からの指示情報と、自機の表示画面115Dの全面に設けられる描画エリアに対する使用者からの指示入力とに応じて、描画を行うことができるようにしている。
【0021】
[第1、第2の端末装置の基本構造]
図2は、第1、第2の端末装置の基本構造を説明するための分解構成図である。図1に示したように、第1の端末装置1と第2の端末装置2とは、大きさは異なるものの、いずれも薄型の表示デバイスと位置検出センサとが搭載され、平板状の外形を有するものであり、基本構造は同様のものである。このため、ここでは第1の端末装置1の場合を例にして、第1の端末装置1と第2の端末装置2の基本構造について説明する。なお、図2において、括弧内の参照符号は、第2の端末装置2についてのものである。
【0022】
図2に示すように、第1の端末装置1は、筐体10内に、下から順に、回路基板100、第1のセンサ111、表示デバイス115、第2のセンサ113が収納され、これらがフロントパネル20によって筐体10内に封入される。フロントパネル20の点線で示した内側には、例えば透明の強化ガラスが嵌め込まれており、表示デバイス115の表示画面の全体が観視できるようになっている。また、フロントパネル20の強化ガラス面上が操作面となり、第2のセンサ113などを傷つけることなく、第1のセンサ111や第2のセンサ113に対する指示体による指示操作を行うことができる。
【0023】
回路基板100は、制御回路、表示制御回路、第1のセンサ用の位置検出回路、第2のセンサ用の位置検出回路、近距離無線通信回路、半導体メモリなどの種々の電子回路や電子部品などが搭載されたものである。第1のセンサ111は、電磁誘導方式のものである。表示デバイス115は、例えば、薄型の表示素子であるLCD(Liquid Crystal Display)や種々のフィルタやバックライトなどを含むものである。第2のセンサ113は、静電容量方式のものである。すなわち、第1の端末装置1は、表示デバイス115を挟んで、異なる方式の位置検出センサが設けられている。
【0024】
電磁誘導方式の第1のセンサ111は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数のループコイルが配設されて構成されたものである。そして、第1のセンサ111の複数のループコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける。対応する電磁誘導方式の電子ペンは、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備えており、第1のセンサ111からの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより信号を発生させ、この信号に筆圧情報を含めて第1のセンサ111に送信する。これを第1のセンサ111が受信期間において受信して、第1のセンサ用の位置検出回路に供給し、電子ペンによる指示位置と筆圧が検出される。
【0025】
静電容量方式の第2のセンサ113は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数の線状導体(ライン電極)が配設されたものである。そして、第2のセンサ113においては、指や静電ペン(導電性を有するペン型の位置指示器)が近づけられることによって、線状導体に静電容量(電荷)の変化が生じ、これが第2のセンサ用の位置検出回路に供給されて、指示位置が検出される。なお、静電ペンには、バッテリで駆動され、信号を送出するいわゆるアクティブ静電ペンと呼ばれるものもある。しかし、第2のセンサ113は、主に、指または単に導電性を有する静電ペンにより操作されるものである。
【0026】
第1のセンサ111と第2のセンサ113のそれぞれは、表示デバイス115の表示画面の全面に対応しており、当該表示画面上のどの位置を指示しても、その指示位置を検出することができるようになっている。このように、第1の端末装置1は、第1のセンサ111を通じて電磁誘導方式の電子ペンを用いた指示入力を受け付けることも可能であるし、第2のセンサ113を通じて、指や静電ペンによる指示入力を受け付けることも可能なものである。特に、電磁誘導方式の電子ペンを用いることにより、より細かに位置を指示することができ、また、当該電子ペンにかけられる筆圧を検出して第1のセンサ111に送信することができるので、きめ細かな描画を行うことができる。
【0027】
[第1の実施の形態]
<第1の端末装置1の構成例>
図3は、第1の実施の形態の第1の端末装置1の構成例を説明するためのブロック図である。第1の端末装置1は、点線で囲んで示したように、ユーザインターフェース部110と、描画処理部120と、制御部130と、コネクション部140と、パネル連携部150とを備える。
【0028】
ユーザインターフェース部110は、使用者からの指示入力を受け付けたり、使用者に対して情報を提供したりする部分である。図3に示したように、ユーザインターフェース部110は、第1のセンサ111と、第1の位置検出回路112と、第2のセンサ113と、第2の位置検出回路114と、表示デバイス115と、表示制御回路116とを備える。
【0029】
第1のセンサ111は、X軸方向ループコイル群とY軸方向ループコイル群を備えた電磁誘導方式の位置検出センサであり、第1の位置検出回路112は、第1のセンサ用の位置検出回路である。第1の位置検出回路112は、第1のセンサ111のX軸方向及びY軸方向のループコイルについて、順次に切り替えながら、電力供給して信号(磁界)を発生させる送信期間と、電力供給を停止して電子ペンからの信号(磁界)を受信する受信期間とを設けることができる。
【0030】
第1の位置検出回路112は、受信期間においては、電子ペンからの信号を受信したループコイルの位置に応じて、電子ペンによる指示位置を検出し、検出結果を制御部130などに通知することができる。また、電子ペンからの信号には筆圧に関する情報も含まれている。このため、第1の位置検出回路112は、受信した電子ペンからの信号から筆圧情報も検出して検出結果を制御部130などに通知することができる。
【0031】
第2のセンサ113は、X軸方向線状導体群とY軸方向線状導体群を備えた静電容量方式の位置検出センサであり、第2の位置検出回路114は、第2のセンサ用の位置検出回路である。第2の位置検出回路114は、第2のセンサ113のX軸方向及びY軸方向の線状導体に生じる静電容量に基づいて、指や静電ペンによる指示位置を検出し、検出結果を制御部130などに通知する。
【0032】
表示デバイス115は、LCD、種々のフィルタ、バックライトなどを備えたものである。表示制御回路116は、制御部130の制御の下、表示デバイス115の表示画面に種々の情報を表示したり、表示した情報を消去したりするなどの処理を行う。
【0033】
描画処理部120は、使用者からの指示に応じて第1の端末装置1において描画する機能を実現する。描画処理部120は、描画用画像メモリ121と、描画パラメータメモリ122と、描画処理回路123とを備える。描画用画像メモリ121は、表示デバイス115の表示画面に対応するメモリ(VRAM)であり、使用者の指示に応じて描画された画像を形成する画像データを記憶保持する。描画パラメータメモリ122は、指示入力エリアに表示される指示入力受付画面を通じて受け付けた、線種、色などの種々の描画に関する設定情報(パラメータ情報)を記憶保持する。
【0034】
描画処理回路123は、描画パラメータメモリ122に記憶保持されたパラメータに基づいて、第1のセンサ111を通じて受け付けた指示入力に応じた画像を、描画用画像メモリ121に形成する処理を行う。また、描画処理回路123は、描画用画像メモリ121に形成された画像について、第1のセンサ111を通じて受け付けた指示入力に応じて消去する処理も行える。この場合の画像の消去は、描画された画像の一部分の消去ができるようにされる。
【0035】
制御部130は、第1の端末装置1の各部を制御する機能を実現する部分であり、制御回路131と記憶装置132とを備える。制御回路131は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えたものである。制御回路131は、種々のソフトウェアを実行し、各部を制御して、第1の端末装置1が備える種々の機能を実現する。記憶装置132は、例えば、比較的に大容量の半導体メモリと、そのドライバとからなり、当該半導体メモリへの情報の書き込み、削除、変更、当該半導体メモリからの情報の読み出しを行う。記憶装置132は、種々のアプリケーションソフトウェアや処理に必要になる情報、使用者が作成した情報などを記憶保持する他、処理の途中経過を保持する作業領域としても用いられる。
【0036】
コネクション部140は、近距離無線通信機能を実現する部分であり、近距離無線通信回路141及び近距離無線通信アンテナ141Aと、近接判定回路142とからなる。近距離無線通信回路141及び近距離無線通信アンテナ141Aは、Bluetooth(登録商標)規格の近距離無線機能を実現する。近接判定回路142は、近距離無線通信回路141の状態や受信した情報に基づいて、第2の端末装置2が近接し、近距離無線通信回路141及び近距離無線通信アンテナ141Aを通じて通信路を接続して通信が可能になったか否かを判定する。
【0037】
パネル連携部150は、第2の端末装置2と連携し、第2の端末装置2に指示入力エリアを設け、第2の端末装置において受け付けた指示情報の提供を受けるようにする機能を実現する。パネル連携部150は、パネルデータ提供回路151と指示情報取得回路152を備える。パネルデータ提供回路151は、第2の端末装置2が第1の端末装置に近接し、通信路が接続され通信が可能になったと近接判定回路142で判定された場合に機能する。
【0038】
パネルデータ提供回路151は、第2の端末装置2の表示画面215Dを指示入力エリアとし、使用者から指示入力を受け付け、受け付けた指示情報を第1の端末装置に送るようにするためのパネルデータ(画面等情報)を第2の端末装置2に提供するものである。当該パネルデータは、第2の端末装置2の表示画面215Dに表示する指示入力受付画面を形成する画像データや当該指示入力受付画面を通じて使用者から指示入力を受け付けて、第1の端末装置に送信する処理を行うソフトウェアなどからなる。当該パネルデータは、近距離無線通信回路141及び近距離無線通信アンテナ141Aを通じて、第2の端末装置2に提供される。
【0039】
指示情報取得回路152は、近距離無線通信アンテナ141A及び近距離無線通信回路141を通じて受信する第2の端末装置2からの描画に関する指示情報(パラメータ)を取得して、描画パラメータメモリ122に記録する処理を行う。第2の端末装置2からの指示情報は、上述したように、第1の端末装置1のパネルデータ提供回路151の機能により、第2の端末装置2に提供され、表示画面215Dに表示される指示情報入力画面を通じて受け付けた指示入力に応じた指示情報である。
【0040】
第1の端末装置1に電源が投入されると、制御回路131は、記憶装置132に記憶保持されている情報に基づいて、実行可能なソフトウェアに対応したアイコンを、表示制御回路116を通じて表示デバイス115の表示画面115Dに表示する。制御回路131は、第2のセンサ113及び第2の位置検出回路114を通じて、アイコンの選択入力を受け付け、選択されたアイコンの対応するソフトウェアを実行し、使用者が目的とする処理を行えるようにする。
【0041】
また、第1の実施の形態の第1の端末装置1においては、制御回路131の制御の下、コネクション部140とパネル連携部150とが機能することによって、第2の端末装置2と連携し、描画ソフトを実行して描画機能を実現できる。第1の端末装置1と第2の端末装置2とが連携して実現される描画機能の詳細については後述する。
【0042】
<第2の端末装置2の構成例>
図4は、第1の実施の形態の第2の端末装置2の構成例を説明するためのブロック図である。第2の端末装置2は、点線で囲んで示したように、ユーザインターフェース部210と、描画処理部220と、制御部230と、コネクション部240と、パネル連携部250とを備える。
【0043】
第2の端末装置2のユーザインターフェース部210、描画処理部220、制御部230、コネクション部240は、第1の端末装置1の名称が同一の対応する構成部分と同様に構成されたものである。このため、第2の端末装置2のこれらの各部についての説明は重複するので省略する。ただし、第2の端末装置の第1のセンサ211、第2のセンサ213、表示デバイス215は、第1の端末装置の第1のセンサ111、第2のセンサ113、表示デバイス115とは、サイズが異なるものである。
【0044】
また、第2の端末装置2のパネル連携部250は、第1の端末装置1のパネル連携部150とは異なる構成を有する。第2の端末装置2のパネル連携部250は、パネルデータ取得回路251と、指示情報提供回路252とを備える。パネルデータ取得回路251は、第1の端末装置1から送信され、近距離無線通信アンテナ241A及び近距離無線通信回路241を通じて受信されるパネルデータを取得する。パネルデータ取得回路251は、取得したパネルデータを例えば記憶装置232に格納する。
【0045】
パネルデータ取得回路251により、例えば記憶装置232に格納されたパネルデータの内、指示入力を受け付けるようにするソフトウェアが制御回路231において実行される。これにより、指示入力受付画面を表示するための情報が、制御回路231の制御により、表示制御回路216に供給され、表示デバイス215の表示画面215Dに指示入力受付画面が表示される。そして、表示画面215Dに表示された指示入力受付画面と、第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212あるいは第2のセンサ213及び第2の位置検出回路214とを通じて、使用者からの指示入力を受け付けることができるようにされる。
【0046】
指示情報提供回路252は、表示デバイス215の表示画面215Dに表示された指示入力受付画面と、第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212とを通じて受け付けた指示入力に応じた指示情報を、第1の端末装置1に送信する処理を行う。この場合、指示情報は、近距離無線通信回路241及び近距離無線通信アンテナ241Aを通じて、第1の端末装置1に対して送信するようにされる。
【0047】
なお、通常、使用者は描画に用いる電子ペンを用いて、指示入力受付画面に対して操作を行う場合が多いと考えられ、この場合には、指示入力受付画面と電磁誘導方式の第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212を通じて指示入力を受け付ける。しかし、使用者が指などを表示画面215D上に接触させるようにした場合には、指示入力受付画面と静電誘導方式の第2のセンサ213及び第2の位置検出回路214とを通じて指示入力を受け付けることももちろんできる。
【0048】
従って、第1の実施の形態の第2の端末装置2では、制御回路231の制御の下、コネクション部240とパネル連携部250とが機能することにより、第1の端末装置1と連携し、第1の端末装置1で実行される描画ソフトに応じた描画機能を実現できる。
【0049】
また、第2の端末装置2においても、電源が投入されると制御回路231が、記憶装置232に記憶保持されている情報に基づいて、実行可能なソフトウェアに対応したアイコンを、表示制御回路216を通じて表示デバイス215の表示画面215Dに表示する。制御回路231は、第2のセンサ213及び第2の位置検出回路214を通じて、アイコンの選択入力を受け付け、選択されたアイコンの対応するソフトウェアを実行し、使用者が目的とする処理を行える。
【0050】
<第1の実施の形態の描画システムの動作の概要>
図5は、第1の実施の形態の描画システムを構成する第1の端末装置1と第2の端末装置2の動作の概要について説明するための図である。図5(A)に示すように、第1の端末装置1には、描画ソフトが搭載されている。この描画ソフトには、第2の端末装置2に提供するためのパネルデータも含まれている。図5(A)に示したように、第1の端末装置1と第2の端末装置2とのそれぞれに電源が投入された状態で、これらの端末装置が距離的に離れているために近距離無線通信機能により無線通信ができない状態にあるとする。この場合には、第1の端末装置1と第2の端末装置2とは、それぞれ独立に機能する。
【0051】
電源が投入された状態の第1の端末装置1と第2の端末装置2とが、図5(A)において点線矢印で示したように近づくようにされたとする。そして、図5(B)に示すように、第1の端末装置1と第2の端末装置2とが近接し、近距離無線通信により相互に無線通信ができる状態になったとする。この場合、図5(B)に示すように、第1の端末装置1では、描画ソフトが起動(実行)され、パネルデータが第2の端末装置2に送信される。第2の端末装置2は、第1の端末装置1からのパネルデータを受信して、これを利用する。
【0052】
これにより、図5(C)に示すように、第1の端末装置1では、描画ソフトの機能によって、表示デバイス115の表示画面115Dの全面が描画エリアとされ、当該描画エリアを通じて、描画入力を行うことができるようにされる。第2の端末装置2では、第1の端末装置1からのパネルデータの機能により、表示デバイス215の表示画面215Dの全面が指示入力エリアとされ、ここに指示入力受付画面が表示されて使用者からの指示入力を受け付けることができるようにされる。
【0053】
第2の端末装置2の表示画面215Dに表示された指示入力受付画面と第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212を通じて受け付けた指示情報は、指示情報提供回路252が機能して、第1の端末装置1に送信される。第2の端末装置2からの指示情報は、線種や色などの描画に関する種々のパラメータであり、第1の端末装置1では、第2の端末装置2からの指示情報を取得し、これに応じて描画エリアに描画することができるようにされる。
【0054】
<第1の実施の形態の第1の端末装置1と第2の端末装置2の処理>
図6は、第1の実施の形態の第1の端末装置1で行われる処理と第2の端末装置2で行われる処理のそれぞれについ説明するためのフローチャートである。第1の端末装置1は、電源が投入され、何のソフトウェアも実行されていない状態にあるときには、図6(A)に示す処理を実行する。同様に、第2の端末装置2は、電源が投入され、何のソフトウェアも実行されていない状態にあるときには、図6(B)に示す処理を実行する。
【0055】
第1の端末装置1では、近距離無線通信回路141が、接続要求信号の送受信を行うようにし、近接判定回路142が、外部機器からの接続要求信号の受信状況に基づき、第2の端末装置2が近接しているか否かを判定する処理を行う(ステップS101)。ステップS101の判定処理は、第2の端末装置2が近接していると判定されるか、あるいは、なんらかのソフトウェアが実行されたり、電源をオフする操作がされたりするといった所定の終了事象が発生するまで継続して行われる。
【0056】
ステップS101の判定処理が終了した場合には、制御回路131は、近接判定回路142からの検出出力に基づいて、第2の端末装置2が近接したか否かを判別する(ステップS102)。ステップS102の判別処理において、第2の端末装置2は近接していないと判別した場合には、所定の終了事象が発生した状態であるので、制御回路131は、図6(A)に示す処理を終了して、次の実行タイミングを待つことになる。また、ステップS102の判別処理において、第2の端末装置2が近接していると判別した場合には、制御回路131は、近距離無線通信回路141を制御し、第2の端末装置2と近距離無線通信を行って通信路を接続する処理を行う(ステップS103)。
【0057】
同様に、第2の端末装置2では、近距離無線通信回路241が、接続要求信号の送受信を行うようにし、近接判定回路242が、外部機器からの接続要求信号の受信状況に基づき、第1の端末装置1が近接しているか否かを判定する処理を行う(ステップS201)。ステップS201の判定処理は、ステップS101の処理と同様に、第1の端末装置1が近接していると判定されるか、あるいは、なんらかのソフトウェアが実行されたり、電源をオフする操作がされたりするといった所定の終了事象が発生するまで継続される。
【0058】
ステップS201の判定処理が終了した場合には、制御回路231は、近接判定回路242からの検出出力に基づいて、第1の端末装置1が近接したか否かを判別する(ステップS202)。ステップS202の判別処理において、第1の端末装置1は近接していないと判別した場合には、所定の終了事象が発生した状態であるので、制御回路231は、図6(B)に示す処理を終了して、次の実行タイミングを待つことになる。また、ステップS202の判別処理において、第1の端末装置1が近接していると判別した場合には、制御回路231は、近距離無線通信回路241を制御し、第1の端末装置1と近距離無線通信を行って通信路を接続する処理を行う(ステップS203)。
【0059】
これにより、第1の端末装置1は近距離無線通信回路141及び近距離無線通信アンテナ141Aを通じて、第2の端末装置2は近距離無線通信回路241及び近距離無線通信アンテナ241Aを通じて、相互に近距離無線通信による無線通信が可能になる。
【0060】
ステップS103の処理の後、第1の端末装置1では、制御回路131において描画ソフトを起動し、表示デバイス115の表示画面115Dの全面を描画エリアとして、使用者からの描画入力を受付可能にする(ステップS104)。すなわち、ステップS104の処理の後においては、第1の端末装置1は、使用者の指示入力に応じた描画が可能な状態に遷移する。これにより、第1の端末装置1では、第1のセンサ111及び第1の位置検出回路112を通じて、使用者による電子ペンを用いた描画入力(位置指示入力)受け付けて、これに応じた描画像を表示デバイス115の表示画面115Dに表示できるようにされる。更に、第1の端末装置1では、制御回路131の制御の下、パネルデータ提供回路151が機能し、近距離無線通信により第2の端末装置2に対してパネルデータを送信する(ステップS105)。
【0061】
第2の端末装置2においては、第1の端末装置1からのパネルデータを受信し、これをパネルデータ取得回路251が取得して、これを用いて表示デバイス215の表示画面215Dに指示入力受付画面を表示して、指示入力を受付可能する(ステップS204)。すなわち、ステップS204の処理の後においては、第2の端末装置2は、使用者の指示入力に応じた指示情報の受付が可能な状態に遷移する。この場合、第2の端末装置2の表示デバイス215の表示画面215Dの全面が指示入力エリアとなって、ここに指示入力受付画面が表示される。そして、表示画面215Dに表示された指示入力受付画面と、第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212あるいは第2のセンサ213及び第2の位置検出回路214とを通じて、使用者からの指示入力を受け付けることができるようにされる。
【0062】
この後、第2の端末装置2の制御回路231は、指示情報提供回路252を制御して、指示情報提供処理を実行する(ステップS205)。このステップS205の処理は、描画に関する指示入力を受け付けた時には、指示情報提供回路252が機能して、第1の端末装置1に提供する指示情報を形成し、これを無線送信した後に次のステップに進む処理となる。また、ステップS205の処理は、描画に関する指示入力を受け付けていないときには、何もせずに次のステップに進む処理となる。
【0063】
一方、第1の端末装置1では、制御回路131が指示情報取得回路152を制御して、指示情報の取得設定処理を行う(ステップS106)。このステップS106の処理は、描画に関する指示情報を取得した時には、指示情報取得回路152が機能して、取得した指示情報を描画パラメータメモリ122に格納(設定)する処理を行う。また、ステップS106の処理は、第2の端末装置からの指示情報を取得していないときには、何もせずに次のステップに進む処理となる。
【0064】
第2の端末装置2からの指示情報は、上述もしたように、例えば線種や色彩などの描画に関するパラメータである。このため、指示情報が、描画パラメータメモリ122に設定されることにより、当該指示情報に応じて、描画を行うことができるようにされる。従って、指示情報が例えば線種や色彩に関するものである場合には、指示された線種、指示された色彩で描画を行うことができるようにされる。
【0065】
この後、第1の端末装置1において、制御回路131は、描画ソフトの実行を終了させる所定の操作が行われるなどの終了事象が発生したか否かを判別する(ステップS107)。ステップS107の判別処理において、終了事象は発生していないと判別した時には、ステップS106からの処理を繰り返すようにし、使用者からの描画入力を継続して受け付けるようにする。また、ステップS107の判別処理において、終了事象が発生したと判別した時には、ステップS103で接続した通信路を解放したり、表示画面の表示画像を描画ソフト実行前の状態に戻したりするなどの終了処理を行う(ステップS108)。この後、図6(A)に示した処理を終了する。
【0066】
一方、第2の端末装置2においても、ステップS205の処理の後において、制御回路231は、指示入力受付画面を通じて指示入力の受付を終了させる所定の操作が行われるなどの終了事象が発生したか否かを判別する(ステップS206)。ステップS206の判別処理において、終了事象は発生していないと判別した時には、ステップS205からの処理を繰り返すようにし、使用者からの指示入力の受付を継続して行えるようにする。また、ステップS206の判別処理において、終了事象が発生したと判別した時には、ステップS203で接続した通信路を解放したり、表示画面の表示画像を指示入力受付画面の表示前の状態に戻したりするなどの終了処理を行う(ステップS207)。この後、図6(B)に示した処理を終了する。
【0067】
このように、第1の端末装置1の表示画面115Dの全面を描画エリアとすることができる。また、第2の端末装置2の表示画面215Dの全面を指示入力エリアとして、指示入力受付画面を表示し、描画に関する指示入力を受け付け、受け付けた指示入力に応じた指示情報を第1の端末装置に送信して提供できる。これにより、大きな描画エリアを確保して、描画の拡大縮小を繰り返さなくても、適切に描画入力を行うようにすることができる。しかも、第2の端末装置2側で、線種や色彩といった描画に関する指示入力を受け付けて、これに応じた指示情報(パラメータ情報)を、第1の端末装置に提供できる。これにより、第1の端末装置1と第2の端末装置2とからなる描画システムを用いても、使用者の意図した描画を適切に行うことができる。
【0068】
[第2の実施の形態]
<第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aの構成例>
第2の実施の形態の描画システムもまた、図1を用いて説明した第1の実施の形態の描画システムと同様に第1の端末装置と第2の端末装置との2つの端末装置により構成される。具体的には、タブレットPCなどとして実現される第1の端末装置1Aと、スマートホンや小型のタブレットPCなどとして実現される第2の端末装置2Aとにより構成される。そして、この第2の実施の形態の第1の端末装置1A及び第2の端末装置2Aは、いずれも図2を用いて説明した基本構造を有する平板状(薄い型)のものである。
【0069】
但し、第1の実施の形態の第1の端末装置1及び第2の端末装置2と、以下に説明する第2の実施の形態の第1の端末装置1A及び第2の端末装置2Aとは、実行されるソフトウェアやパネル連携部の構成が異なっている。図7は、第2の実施の形態の第1の端末装置1Aの構成例と第2の端末装置2Aの構成例とを説明するためのブロック図である。図7の上側に示した第1の端末装置1Aにおいて、図3を用いて説明した第1の実施の形態の第1の端末装置1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分の詳細な説明については省略する。同様に、図7の下側に示した第2の端末装置2Aにおいて、図4を用いて説明した第1の実施の形態の第2の端末装置2と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分の詳細な説明については省略する。
【0070】
図7の上側に示した第1の端末装置1Aの制御部130は、第1の実施の形態の第1の端末装置1と同様に描画ソフト実行部としても機能する。ただし、第1の端末装置1Aの制御部130において実行される描画ソフトは、第1の実施の形態の第1の端末装置1で用いられた描画ソフトとは異なり、パネルデータを第2の端末装置2Aに提供する機能は備えないものである。このため、第2の実施の形態の第1の端末装置1Aのパネル連携部150Aは、指示情報取得回路152Aだけを備え、パネルデータ提供回路は備えないものとなっている。
【0071】
図7の下側に示した第2の端末装置2Aの制御部230は、指示入力受付画面を表示画面215Dに表示して、使用者からの指示入力を受け付けるようにするパネルソフトの実行部として機能する。このため、この第2の実施の形態の第2の端末装置2Aは、第1の端末装置1Aからパネルデータの提供を受ける必要はない。従って、第2の実施の形態の第2の端末装置2Aのパネル連携部250Aは、指示情報提供回路252Aだけを備え、パネルデータ取得回路は備えないものである。すなわち、この第2の実施の形態の描画システムの場合には、パネルデータは第2の端末装置2Aが備えている構成になっている。
【0072】
<第2の実施の形態の描画システムの動作の概要>
図8は、第2の実施の形態の描画システムを構成する第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aの動作の概要について説明するための図である。図8(A)に示すように、第1の端末装置1Aには、描画ソフトが搭載されている。当該描画ソフトは、第1の実施の形態の第1の端末装置1に搭載されていた描画ソフトとは若干異なる。当該描画ソフトは、第1の端末装置1Aの表示画面115Dの全面を描画エリアとして描画を行えるようにするものであるが、第2の端末装置2Aに対して、パネルデータを提供する機能は備えていないものである。
【0073】
一方、第2の端末装置2Aには、パネルソフトが搭載されている。当該パネルソフトは、指示入力受付画面を形成する画像データを含む。また、当該パネルソフトは、第2の端末装置2Aの表示画面215Dの全面を指示入力エリアとし、ここに指示入力受付画面を表示して、第1のセンサ211や第2のセンサ213を通じて使用者からの指示入力を受け付けるように機能するソフトウェアを含む。なお、第1の実施の形態の描画システムの場合と同様に、使用者からの指示情報は、指示入力受付画面と、第2のセンサ213及び第2の位置検出回路214を通じて受け付けることももちろんできる。
【0074】
図8(A)に示したように、第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aとのそれぞれに電源が投入された状態で、これらの端末装置が距離的に離れているために近距離無線通信機能により通信ができない状態にあるとする。この場合には、第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aとは、それぞれ独立に機能する。電源が投入された状態の第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aとが、図8(A)において点線矢印で示したように近づくようにされ、図8(B)に示すように、第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aとが近接し、相互に無線通信ができる状態になったとする。
【0075】
この場合、図8(B)に示すように、第1の端末装置1Aでは、制御部130において、描画ソフトが起動(実行)される。一方、第2の端末装置2Aでは、制御部230において、パネルソフトが起動(実行)される。これにより、図8(C)に示すように、第1の端末装置1Aでは、描画ソフトの機能によって、表示デバイス115の表示画面115Dの全面が描画エリアとされ、当該描画エリアを通じて、描画入力を行うことができるようにされる。第2の端末装置2Aでは、パネルソフトの機能により、表示デバイス215の表示画面215Dの全面が指示入力エリアとされ、ここに指示入力受付画面が表示されて使用者からの指示入力を受け付けることができるようにされる。
【0076】
第2の端末装置2Aの表示画面215Dに表示された指示入力受付画面と、例えば、第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212を通じて受け付けた指示入力に応じた指示情報は、指示情報提供回路252Aが機能して、第1の端末装置1Aに送信される。第2の端末装置2Aからの指示情報は、線種や色などの描画に関する種々のパラメータであり、第1の端末装置1Aでは、第2の端末装置2Aからの指示情報を取得し、これに応じて描画エリアに描画することができるようにされる。
【0077】
<第2の実施の形態の第1の端末装置1Aと第2の端末装置2Aの処理>
図9は、第2の実施の形態の第1の端末装置1Aで行われる処理と第2の端末装置2Aで行われる処理のそれぞれについ説明するためのフローチャートであり、図9(A)は第1の端末装置1Aの処理を、図9(B)は第2の端末装置2Aの処理を示している。図9(A)、(B)のフローチャートにおいて、第1の実施の形態の図6(A)、(B)のフローチャートと同様に行われる処理には同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明については重複するので省略する。
【0078】
第2の実施の形態の第1の端末装置1Aは、電源が投入され、何のソフトウェアも実行されていない状態にあるときには、図9(A)に示す処理を実行する。第1の端末装置1Aは、ステップS101~ステップS103の処理により、第2の端末装置2Aと近接した場合に、近距離無線通信により通信路を接続する。通信路が接続された後において、第1の端末装置1Aは、制御部130で描画ソフトを実行し、表示デバイス115の表示画面115Dの全面を描画エリアとして、使用者による描画入力を可能にする(ステップS301)。すなわち、ステップS301の処理の後においては、第1の端末装置1Aは、使用者の指示入力に応じた描画が可能な状態に遷移する。
【0079】
この後、第1の端末装置1Aは、近距離無線通信アンテナ141A及び近距離無線通信回路141を通じて、第2の端末装置2Aからの指示情報を受信し、これを指示情報取得回路152Aが取得して、描画パラメータメモリ122に格納する(ステップS106)。これにより、使用者からの指示入力に応じた描画を行うことができるようにされる。制御部130は、所定の終了事象が発生するまでステップS106からの処理を繰り返すようにし(ステップS107)、終了事象が発生したら、所定の終了処理を行って(ステップS108)、この図9(A)に示す処理を終了する。
【0080】
一方、第2の実施の形態の第2の端末装置2Aにおいては、何のソフトウェアも実行されていない状態にあるときには、図9(B)に示す処理を実行する。第2の端末装置2Aは、ステップS201~ステップS203の処理により、第1の端末装置1Aと近接した場合に、近距離無線通信により通信路を接続する。通信路が接続された後において、第2の端末装置2Aは、制御部230でパネルソフトを実行し、表示デバイス215の表示画面215Dの全面を指示入力エリアとして、指示入力受付画像を表示して使用者による指示入力を可能にする(ステップS401)。すなわち、ステップS401の処理の後においては、第2の端末装置2Aは、使用者の指示入力に応じた指示情報の受付が可能な状態に遷移する。これにより、第2の端末装置2Aは、使用者からの指示入力を受け付けることができるようにされる。
【0081】
第2の端末装置2Aが、使用者から指示入力を受け付けたとする。この場合、指示情報提供回路252Aが、受け付けた指示入力に応じた指示情報を形成し、これを近距離無線通信回路241及び近距離無線通信アンテナ241Aを通じて、第1の端末装置1Aに送信する処理を行う(ステップS205)。これにより、上述したように、第1の端末装置1Aにおいて、使用者からの指示入力に応じた描画を行うことができるようにされる。制御部230は、所定の終了事象が発生するまでステップS205からの処理を繰り返すようにし(ステップS206)、終了事象が発生したら、所定の終了処理を行って(ステップS207)、この図9(B)に示す処理を終了する。
【0082】
このように、この第2の実施の形態の描画システムの場合には、第1の端末装置1Aが描画ソフトを備え、第2の端末装置2Aがパネルソフトを備える。第1の端末装置1Aは、当該描画ソフトを実行することにより、表示デバイス115の表示画面115Dの全画面を描画エリアとして描画入力を受け付けるようにできる。一方、第2の端末装置2Aは、当該パネルソフトを実行することにより、表示デバイス215の表示画面215Dの全画面を指示入力エリアとし、指示入力受付画面を表示して指示入力を受け付け、これに応じた指示情報を第1の端末装置1Aに提供できる。従って、第1の端末装置1Aは、使用者からの指示情報に応じた描画を、表示画面115Dの全面を用いて行うことができる。
【0083】
[第3の実施の形態]
<第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bの構成例>
第3の実施の形態の描画システムもまた、図1を用いて説明した第1の実施の形態の描画システムと同様に、第1の端末装置と第2の端末装置との2つの端末装置により構成される。具体的には、タブレットPCなどとして実現される第1の端末装置1Bと、スマートホンや小型のタブレットPCなどとして実現される第2の端末装置2Bとにより構成される。そして、この第3の実施の形態の第1の端末装置1B及び第2の端末装置2Bは、上述した第1、第2の実施の形態の描画システムと同様に、いずれも図2を用いて説明した基本構造を有する平板状(薄い型)のものである。
【0084】
図10は、第3の実施の形態の第1の端末装置1Bの構成例と第2の端末装置2Bの構成例とを説明するためのブロック図である。図10図7とを比較すると分かるように、第3の実施の形態の第1の端末装置1Bは、第2の実施の形態の第1の端末装置1Aとほぼ同様に構成され、第3の実施の形態の第2の端末装置2Bは、第2の実施の形態の第2の端末装置2Aとほぼ同様に構成される。ただし、第1の端末装置1B、第2の端末装置2Bで実行されるソフトウェアとその実行態様が、第2の実施の形態の第1の端末装置1A、第2の端末装置2Aとは異なっている。
【0085】
図10の上側に示した第1の端末装置1Bもまた、図3を用いて説明した第1の実施の形態の第1の端末装置1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分の詳細な説明については省略する。また、図10の下側に示した第2の端末装置2Bもまた、図4を用いて説明した第1の実施の形態の第2の端末装置2と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分の詳細な説明については省略する。
【0086】
第3の実施の形態の第1の端末装置1Bの制御部130は描画ソフト実行部として機能する。そして、制御部130で実行される描画ソフトは、描画機能と指示入力受付機能との両方を備えたものである。描画機能は、表示デバイス115の表示画面115Dに描画エリアを設け、描画を行うようにする機能である。指示入力受付機能は、表示デバイス115の表示画面115Dに指示入力エリアを設け、指示入力受付画面を表示して指示情報の入力を受け付ける機能である。
【0087】
また、この実施の形態の描画ソフトについては、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが協働する場合の優先順位の設定ができるようになっている。この優先順位は、描画機能を機能させる場合が第1位となり、指示入力受付機能を機能させる場合が第2位となるように決められているものとする。そして、第1の端末装置1Bの制御部130の記憶装置132には、描画ソフトに関する優先順位として第1位を示す情報が設定(記憶)され、第2の端末装置2Bと協働する場合には、第1の端末装置1Bにおいて描画機能を実行する設定となっている。
【0088】
これにより、第2の端末装置2Bが近傍になく、第1の端末装置1Bが単体で機能する場合であって、当該描画ソフトを起動したとする。この場合には、単体で機能するので、描画ソフトの優先順位は関係なく、図1に示したように、表示デバイス115の表示画面115Dに描画エリアR1と指示入力エリアR2との両方を設けて、描画入力と指示入力の両方を受け付けることができるようにされる。
【0089】
しかし、第2の端末装置2Bが近傍にあり、近距離無線通信による通信路が接続され、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが協働して機能する場合には、描画ソフトの優先順位が考慮される。この場合、上述したように、第1の端末装置1Bの描画ソフトに関する優先順位は第1位であるので、描画機能だけが機能するようにして描画ソフトが実行される。この場合には、第1の端末装置1Bにおいて、指示入力受付機能が働くことはない。
【0090】
一方、第3の実施の形態の第2の端末装置2Bの制御部230は描画ソフト実行部として機能する。制御部230で実行される描画ソフトは、第1の端末装置1Bの制御部130で実行される描画ソフトと同様のものであり、描画機能と指示入力受付機能との両方を備え、当該描画ソフトについては、優先順位の設定ができるようになっている。そして、第2の端末装置2Bの制御部230の記憶装置232には、描画ソフトに関する優先順位として第2位を示す情報が設定(記憶)され、第1の端末装置1Bと協働する場合には、第2の端末装置2Bにおいて指示入力受付機能を実行する設定となっている。
【0091】
これにより、第1の端末装置1Bが近傍になく、第2の端末装置2Bが単体で機能する場合であって、当該描画ソフトを起動したとする。この場合には、単体で機能するので、描画ソフトの優先順位は関係なく、表示デバイス215の表示画面215Dに描画エリアR1と指示入力エリアR2との両方を設けて、描画入力と指示入力の両方を受け付けることができるようにされる。この場合には、表示画面215D自体が小さいが、第1の端末装置1Bが単体で機能する場合と同様に描画処理を行うことができる。
【0092】
しかし、第1の端末装置1Bが近傍にあり、近距離無線通信による通信路が接続され、第2の端末装置2Bと第1の端末装置1Bとが協働して機能する場合には、描画ソフトの優先順位が考慮される。この場合、上述したように、第2の端末装置2Bの描画ソフトに関する優先順位は第2位であるので、指示入力受付機能が機能するようにして描画ソフトが実行される。
【0093】
このように、第3の実施の形態の描画システムにおいては、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとのそれぞれでは、描画機能と指示入力受付機能との両方を備えた描画ソフトが搭載されて実行可能にされている。そして、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとに搭載される描画ソフトは、実行可能である場合には、全く同じ描画ソフトを搭載してもよい。しかし、一般的には、同じ機能を備えた描画ソフトであって、それぞれの端末装置で機能するオペレーティングシステムに応じた描画ソフトが搭載される。
【0094】
例えば、第1の端末装置1Bで機能するオペレーティングシステムが、windows(登録商標)であり、第2の端末装置2Bで機能するオペレーティングシステムがAndroid(登録商標)であったとする。この場合には、同様の機能を有する描画ソフトであって、windows(登録商標)用の描画ソフトが第1の端末装置1Bに搭載され、Android(登録商標)用の描画ソフトが第2の端末装置2Bに搭載される。また、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが同じオペレーティングシステムが機能する場合であっても、描画機能と指示入力受付機能との両方を備えた描画ソフトであれば、それぞれの端末装置の特性に応じて作成された描画ソフトが、それぞれの端末装置に搭載されていてももちろんよい。
【0095】
<第3の実施の形態の描画システムの動作の概要>
図11は、第3の実施の形態の描画システムを構成する第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bの動作の概要について説明するための図である。図11(A)に示すように、第1の端末装置1Bには、描画ソフトが搭載されている。当該描画ソフトは、上述もしたように、描画機能と指示入力受付機能とを備えたものである。また、第2の端末装置2Bにも、第1の端末装置1Bの場合と同様に、描画機能と指示入力受付機能とを備えた描画ソフトが搭載されている。
【0096】
第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとおいては、搭載されている描画ソフトについての優先順位が設定されている。描画ソフトについての優先順位は、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが協働して描画を行えるようにする場合に、描画機能を実行する端末が第1位で、指示入力受付機能を実行する端末が第2位となるものである。この第3の実施の形態においては、第1の端末装置1Bの描画ソフトに関する優先順位は第1位であり、第2の端末装置2Bの描画ソフトに関する優先順位は第2位である。
【0097】
図11(A)に示したように、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとのそれぞれに電源が投入された状態で、これらの端末装置が距離的に離れているために近距離無線通信機能により通信ができない状態にあるとする。この場合には、第1の端末装置1と第2の端末装置2とは、それぞれ独立に機能する。従って、この状態で描画ソフトがそのそれぞれで実行されれば、従来通り、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bのそれぞれで、描画エリアと指示入力エリアとが設けられて描画処理を行うようにできる。
【0098】
電源が投入された状態の第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが、図11(A)において点線矢印で示したように近づくようにされたとする。そして、図11(B)に示すように、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが近接し、相互に近距離無線通信ができる状態になったとする。
【0099】
この場合、図11(B)に示すように、第1の端末装置1Bでは、描画ソフトに関する優先順位が第1位に設定されているので、描画機能だけを実行するようにして描画ソフトが起動(実行)される。一方、第2の端末装置2Bでは、描画ソフトに関する優先順位が第2位に設定されているので、指示入力受付機能だけを実行するようにして描画ソフトが起動(実行)される。
【0100】
これにより、図11(C)に示すように、第1の端末装置1Bでは、描画ソフトの描画機能によって、表示デバイス115の表示画面115Dの全面が描画エリアとされ、当該描画エリアを通じて、描画入力を行うことができるようにされる。第2の端末装置2Bでは、描画ソフトの指示入力受付機能によって、表示デバイス215の表示画面215Dの全面が指示入力エリアとされ、ここに指示入力受付画面が表示されて使用者からの指示入力を受け付けることができるようにされる。
【0101】
第2の端末装置2Bの表示画面215Dに表示された指示入力受付画面と、例えば、第1のセンサ211及び第1の位置検出回路212を通じて受け付けた指示入力に応じた指示情報は、指示情報提供回路252Aが機能して、第1の端末装置1Bに送信される。第2の端末装置2Bからの指示情報は、線種や色などの描画に関する種々のパラメータであり、第1の端末装置1Bでは、第2の端末装置2Aからの指示情報を取得し、これに応じて描画エリアに描画することができるようにされる。
【0102】
<第3の実施の形態の第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bの処理>
図12は、第3の実施の形態の第1の端末装置1Bで行われる処理と第2の端末装置2Bで行われる処理のそれぞれについ説明するためのフローチャートであり、図12(A)は第1の端末装置1Bの処理を、図12(B)は第2の端末装置2Bの処理を示している。図12(A)、(B)のフローチャートにおいて、第1の実施の形態の図6(A)、(B)のフローチャートと同様に行われる処理には同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明については重複するので省略する。
【0103】
第1の端末装置1Bは、電源が投入され、何のソフトウェアも実行されていない状態にあるときには、図12(A)に示す処理を実行する。第1の端末装置1Bは、ステップS101~ステップS103の処理により、第2の端末装置2Bと近接した場合に、近距離無線通信により通信路を接続する。通信路が接続された後において、第1の端末装置1Bは、描画ソフトに関する優先順位が第1位であるので、制御部130で描画機能のみを実行するようにして描画ソフトを起動(実行)する(ステップS501)。これにより、ステップS501の処理の後においては、第1の端末装置1Bは、使用者の指示入力に応じた描画が可能な状態に遷移し、表示デバイス115の表示画面115Dの全面を描画エリアとして、使用者による描画入力が可能になる。
【0104】
この後、第1の端末装置1Bは、近距離無線通信アンテナ141A及び近距離無線通信回路141を通じて、第2の端末装置2Bからの指示情報を受信し、これを指示情報取得回路152Aが取得して、描画パラメータメモリ122に格納する(ステップS106)。これにより、使用者からの指示入力に応じた描画を行うことができるようにされる。制御部130は、所定の終了事象が発生するまでステップS106からの処理を繰り返すようにし(ステップS107)、終了事象が発生したら、所定の終了処理を行って(ステップS108)、この図11(A)に示す処理を終了する。
【0105】
一方、第2の端末装置2Bにおいては、電源が投入され、何のソフトウェアも実行されていない状態にあるときには、図12(B)に示す処理を実行する。第2の端末装置2Bは、ステップS201~ステップS203の処理により、第1の端末装置1Bと近接した場合に、近距離無線通信により通信路を接続する。通信路が接続された後において、第2の端末装置2Bは、描画ソフトに関する優先順位が第2位であるので、制御部230で、指示入力受付機能のみを実行するようにして描画ソフトを起動(実行)する(ステップS601)。すなわち、ステップS601の処理の後においては、第2の端末装置2Bは、使用者の指示入力に応じた指示情報の受付が可能な状態に遷移する。これにより、第2の端末装置2Bでは、表示デバイス215の表示画面215Dの全面を指示入力エリアとして、指示入力受付画像を表示して使用者による指示入力が可能になる。
【0106】
第2の端末装置2Bが、使用者から指示入力を受け付けたとする。この場合、指示情報提供回路252Aが、受け付けた指示入力に応じた指示情報を形成し、これを近距離無線通信回路241及び近距離無線通信アンテナ241Aを通じて、第1の端末装置1Bに送信する処理を行う(ステップS205)。これにより、上述したように、第1の端末装置1Bにおいて、使用者からの指示入力に応じた描画を行うことができるようにされる。制御部230は、所定の終了事象が発生するまでステップS205からの処理を繰り返すようにし(ステップS206)、終了事象が発生したら、所定の終了処理を行って(ステップS207)、この図12(B)に示す処理を終了する。
【0107】
このように、この第3の実施の形態の描画システムでは、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが近接しておらず、それぞれが単体で描画ソフトを起動すると、自機の表示画面に描画エリアと指示入力受付エリアを設けて従来通りの描画処理が行える。しかし、第1の端末装置1Bと第2の端末装置2Bとが近接している場合には、それぞれにおいて描画ソフトが実行されるものの、第1の端末装置1Bでは描画機能が、第2の端末装置2Bでは指示入力受付機能が実行される。この場合、描画については、第1の端末装置1Bの表示デバイス115の表示画面115Dの全面を通じて描画を行うことができる。また、指示入力については、描画は第2の端末装置2Bの表示デバイス215の表示画面215Dの全面を通じて行うことができ、受け付けた指示入力に応じた指示情報を第1の端末装置1Bに提供できる。
【0108】
[第2の端末装置2、2A、2Bの使用者への装着]
上述した第1~第3の実施の形態の描画システムは、いずれも第1の端末装置(1、1A、1B)と第2の端末装置(2、2A、2B)の2つの端末装置から構成されている。このため、机上で当該描画システムを使用する場合には両端末装置を机上において操作できるので、操作上の問題はない。しかし、例えば屋外などにおいて、スケッチを行うような場合には、第1の端末装置と第2の端末装置との両方を手に持たなければならず、当該描画システムを用いては、自由な描画を行えなくなる可能性がある。
【0109】
そこで、描画エリアが設けられる第1の端末装置(1、1A、1B)は手で把持するようにし、第2の端末装置(2、2A、2B)は第1の端末装置(1、1A、1B)を把持する方の腕に装着することにより、他方の手を自由にする。これにより、他方の手には電子ペンを持って、第1の端末装置と第2の端末装置との両方への操作が可能になり、自由な描画を行えるようにできる。図13は、第2の端末装置(2、2A、2B)の使用者の身体への装着の例について説明するための図である。ここでは、第1の実施の形態の第1の端末装置1と第2の端末装置2とを用いる場合を例にして説明する。
【0110】
図13(A)、(B)に示すように、第2の端末装置2の表示画面215Dとは反対側の面(裏面)には、リストバンド21とフィンガーバンド22とが装着されている。装着の仕方は様々な方法を用いることができるが、リストバンド21は、例えば、その両端に設けられた係止部材が、第2の端末装置2の裏面に設けられたリストバンド用の溝に対して嵌め込まれて、容易に外れないようにされている。また、フィンガーバンド22はこれに設けられている係止部材が、第2の端末装置2の裏面に設けられたフィンガーバンド用の溝に対して嵌め込まれて、容易に外れないようにされている。
【0111】
使用者は、自分の腕にリストバンド21を嵌め、自分の例えば親指にフィンガーバンド22を嵌めることによって、図13(A)、(B)に示すように、使用者の腕に第2の端末装置2を装着することができる。使用者は、第2の端末装置2が装着された腕を左右に動かしたり、第2の端末装置2が装着された腕の手首を動かすことによって、使用者の腕に装着した第2の端末装置2の位置を若干ずらしたり、表示画面215Dの向き(傾き)を調整したりすることができる。
【0112】
更に、図13(C)に示すように、第2の端末装置2を装着した側の手で第1の端末装置1を把持することによって、使用者の当該手(腕部を含む)によって、第1の端末装置1と第2の端末装置2との両方を持つ(保持する)ことができる。これにより、他方の手は電子ペンだけを持てばよいので、使用者は、屋外などにおいても、第1の端末装置1と第2の端末装置2との両方を電子ペンで操作して、自分の意図に応じて第1の端末装置1に対して自由に描画入力を行うことができる。
【0113】
なお、図13(C)に示した例の場合には、使用者の左腕に第2の端末装置2を装着し、左手で第1の端末装置1を把持している場合を示している。従って、右手に電子ペンを持ち、自由な描画入力を行うことができる。もちろん、右腕に第2の端末装置2を装着し、右手で第1の端末装置1を把持し、左手に電子ペンを持って、第1の端末装置1と第2の端末装置2との両方を操作するようにすることも可能である。また、第2、第3の実施の形態の描画システムについても、図13を用いて説明した態様で利用することができる。
【0114】
[電子ペンによる認証]
上述した第1、第2、第3の実施の形態では、第1の端末装置(1、1A、1B)と第2の端末装置(2、2A、2B)が近接して、近距離無線通信により通信路が接続できた場合に描画システムとして動作するようにした。しかし、使用者が複数の端末装置を所持していたり、他の人の端末装置が近傍に存在していたりする場合もあると考えられる。このような場合には、若干ではあるが、本来、ペアとなるべき第1の端末装置と第2の端末装置とがペアとならずに、本来の描画システムが動作できなくなる可能性がある。
【0115】
そこで、使用者が第1の端末装置(1、1A、1B)と第2の端末装置(2、2A、2B)で共通に使用する電子ペンにより、近距離無線通信による通信路を接続する端末の認証を行うようにする。簡単には、電子ペンの指示入力を受け付けた端末装置が、近距離無線による接続要求を出すようにする。そして、他端末からの接続要求を受信し、自機からも接続要求を出している場合に、接続要求の送信元と自機との間に通信路を接続するようにすれば、描画システムを構成する第1の端末装置と第2の端末装置のペアリングができる。
【0116】
しかし、電子ペンに指示入力が可能な端末装置が3台以上存在した場合には、上述した方法では適切なペアリングができない場合もある。そこで、描画システムを用いる使用者が使用する電子ペンから送信する位置指示信号に、当該電子ペンに固有の電子ペン識別情報(電子ペンID)を含める。当該電子ペンからの電子ペンIDを含む位置指示信号を受信した第1の端末装置1や第2の端末装置2では、電子ペンからの位置指示信号に含まれる電子ペンIDを抽出し、これを保持する。更に、第1の端末装置1と第2の端末装置2とは、保持した電子ペンIDを含む接続要求を形成し、これを近距離無線通信により送信する。
【0117】
そして、第1の端末装置1と第2の端末装置2とは、自機が保持している電子ペンIDと同じ電子ペンIDを含む接続要求を送信してきた端末装置と通信路を接続する。これにより、ペアとなって描画システムを構成する第1の端末装置1と第2の端末装置2との間に通信路を接続して、適切に描画システムを構成し、機能させることができる。
【0118】
図14は、電子ペンIDを用いた認証処理を行う描画システムの構成例を説明するためのブロック図である。図14において、第1の端末装置1Cに設けた電子ペン認証部170と、第2の端末装置2Cに設けた電子ペン認証部270とが、電子ペン認証機能を実現する主要部となる。第1の端末装置1Cの電子ペン認証部170以外の部分は、第1の実施の形態の第1の端末装置1と同様に構成される部分である。同様に、第2の端末装置2Cの電子ペン認証部270以外の部分は、第1の実施の形態の第2の端末装置2と同様に構成される部分である。
【0119】
すなわち、第1の端末装置1Cにおいては、ユーザインターフェース部110が機能して、電子ペンからの位置指示信号を受信し、当該位置指示信号から電子ペンIDを抽出して、電子ペン認証部170に供給する。電子ペン認証部170は、ユーザインターフェース部110からの電子ペンIDを保持すると共に、制御部130の制御の下、コネクション部140と協働し、電子ペンIDを含む接続要求を形成して、これを近距離無線通信により送信する。更に、電子ペン認証部170は、コネクション部140を通じて受信した接続要求に電子ペンIDが含まれている。このため、当該電子ペンIDが電子ペン認証部170において保持する電子ペンIDと同じであった場合に、当該接続要求の送信元との間に通信路を接続するようにコネクション部140を制御する。
【0120】
同様に、第2の端末装置2Cにおいては、ユーザインターフェース部210が機能して、電子ペンからの位置指示信号を受信し、当該位置指示信号から電子ペンIDを抽出して、電子ペン認証部270に供給する。電子ペン認証部270は、ユーザインターフェース部210からの電子ペンIDを保持すると共に、制御部230の制御の下、コネクション部240と協働し、電子ペンIDを含む接続要求を形成して、これを近距離無線通信により送信する。更に、電子ペン認証部270は、コネクション部240を通じて受信した接続要求に電子ペンIDが含まれている。このため、当該電子ペンIDが電子ペン認証部270において保持する電子ペンIDと同じであった場合に、当該接続要求の送信元との間に通信路を接続するようにコネクション部240を制御する。
【0121】
これにより、第1の端末装置1Cと第2の端末装置2Cとの間に通信路が接続されて、第1の端末装置1と第2の端末装置2とからなる描画システムが適切に構成される。この場合、第1の端末装置1Cと第2の端末装置2Cとの間に、他のいかなる端末装置が存在していても、第1の端末装置1Cと第2の端末装置2Cとは、他の端末装置と通信路を接続することはない。これにより、常時、適切に描画システムを構成できる。以上のことは、第2の実施の形態の描画システム、第3の実施の形態の描画システムのいずれの場合にも、同様の認証処理を行うようにできる。
【0122】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の説明から分かるように、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)においては、表示デバイス115の表示画面の全面を描画エリアとして用いて描画入力を受け付けることができる。また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)においては、表示デバイス215の表示画面の全面を指示入力エリアとし、ここに指示入力受付画面を表示して、使用者からの指示入力を受け付けることができる。そして、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)においては、受け付けた指示入力に応じて指示情報を第1の端末装置(1、1A、1B、1C)に提供できる。これにより、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)においては、使用者の指示入力に応じた描画を行える。
【0123】
このように、上述した実施の形態の描画システムの場合には、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)の表示画面に大きな描画エリアを確保できる。また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)の表示画面に指示入力エリアを設け、この指示入力エリアに対する指示入力も適切なタイミングで受け付け、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)に提供して、使用者の指示に応じた描画を行うようにすることができる。
【0124】
[変形例]
なお、上述した実施の形態の第1の端末装置(1、1A、1B、1C)の第1のセンサ111と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)の第1のセンサ211は、いずれも電磁誘導方式のものであるので、同一の電子ペンを用いて描画入力や指示入力を行える。また、上述した実施の形態の第1の端末装置(1、1A、1B、1C)の第2のセンサ113と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)の第2のセンサ213は、いずれも静電容量方式のものであるので、使用者の指や静電ペンによる入力も可能である。このため、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)に対する描画入力は電子ペンを用いて行い、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)に対する指示入力は使用者の指を用いて行うといったことが可能である。
【0125】
また、描画システムを構成する第1の端末装置と第2の端末装置とは、電磁誘導方式のセンサと静電容量方式のセンサとの両方を備える必要はない。第1の端末装置と第2の端末装置とは、電磁誘導方式のセンサと静電容量方式のセンサとのいずれか一方を備えるものであればよい。そして、第1の端末装置については、描画機能を実現するものであるので、電子ペンや静電ペンによって、描画入力を行うことができるセンサを備えていればよい。
【0126】
センサの組み合わせとしては、以下の4つがある。(1)第1の端末装置と第2の端末装置とが共に電磁誘導方式のセンサを備える場合がある。(2)第1の端末装置と第2の端末装置とが共に静電容量方式のセンサを備える場合がある。(3)第1の端末装置が電磁誘導方式のセンサを備え、第2の端末装置が静電容量方式のセンサを備える場合がある。(4)第1の端末装置が静電容量方式のセンサを備え、第2の端末装置が電磁誘導方式のセンサを備える場合がある。
【0127】
また、上述した実施の形態では、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)とは、近距離無線通信により接続されるものとしたが、これに限るものではない。両端末装置間を有線により接続することもできる。この場合には、有線による他の端末装置との接続が確認できた場合に、他の端末装置との間に有線を通じて通信路を接続するようにすればよい。
【0128】
また、上述した実施の形態では、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)とが、近接した場合に、通信路を接続し、自動的に描画ソフトやパネルソフトを起動(実行)するようにしたが、これに限るものではない。第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)とが近接して通信路を接続したとする。この場合に、例えば、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)との一方あるいは両方で、描画を行うようにするための操作入力を受け付けた場合に、描画ソフトやパネルソフトを起動(実行)するようにしてもよい。
【0129】
また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)は、スマートホンやタブレットPCの構成のものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、スマートウォッチなどと呼ばれる腕時計型の端末装置であってもよいし、指示入力が可能な種々のウェアラブル端末(使用者の身体に装着して使用する端末)であってもよい。
【0130】
また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)で用いられる指示入力受付画面は1つに限らず、受け付ける情報が異なる複数の指示入力受付画面を用意し、これらを使用者の指示に応じて切り替えて用いるようにすることももちろんできる。当該制御は、制御回路231によって行うことができる。
【0131】
また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)に設けられる操作ボタンを、パーソナルコンピュータのポインティングデバイスであるいわゆるマウスの左クリックボタンや右クリックボタンのようにして用いるようにすることができる。すなわち、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)に設けられる所定の操作ボタンを押下した時には、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)の表示デバイス115の表示画面115D上にあるものを選択したり、移動したり、実行したりするようできる。また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)に設けられる他の所定の操作ボタンを押下した時には、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)において、そのときに実行可能な機能のメニューを表示させて選択可能にすることができる。
【0132】
また、電子ペンにサイドスイッチが搭載されており、このサイドスイッチの操作情報を近距離無線通信により送信可能であるとする。この場合には、電子ペンのサイドスイッチを、パーソナルコンピュータのポインティングデバイスであるいわゆるマウスの左クリックボタンや右クリックボタンのようにして、例えば第1の端末装置(1、1A、1B、1C)に対する操作に用いるようにすることができる。もちろん、電子ペンのサイドスイッチに対する操作に応じた情報を、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)に対する操作にも用いるようにすることができる。このため、電子ペンのサイドスイッチに対する操作に応じて、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)とのいずれを操作できるようにするかは、例えば使用者によってそれぞれの端末装置に設定できるようにしておけばよい。
【0133】
また、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)の表示デバイスの表示画面の大きさは、図1にしました態様に限るものではない。第1の端末装置(1、1A、1B、1C)と第2の端末装置(2、2A、2B、2C)とが同じサイズの表示デバイスを備えていてもよい。また、第2の端末装置(2、2A、2B、2C)の表示デバイスの表示画面の方が、第1の端末装置(1、1A、1B、1C)表示デバイスの表示画面よりも大きくてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1、1A、1B、1C…第1の端末装置、110…ユーザインターフェース部、111…第1のセンサ、112…第1の位置検出回路、113…第2のセンサ、114…第2の位置検出回路、115…表示デバイス、115D…表示画面、116…表示制御回路、120…描画処理部、121…描画用画像メモリ、122…描画パラメータメモリ、123…描画処理回路、130…制御部、131…制御回路、132…記憶装置、140…コネクション部、141…近距離無線通信回路、141A…近距離無線通信アンテナ、142…近接判定回路、150…パネル連携部、151…パネルデータ提供回路、152、152A…指示情報取得回路、170…電子ペン認証部、2、2A、2B、2C…第2の端末装置、210…ユーザインターフェース部、211…第1のセンサ、212…第1の位置検出回路、213…第2のセンサ、214…第2の位置検出回路、215…表示デバイス、215D…表示画面、216…表示制御回路、220…描画処理部、221…描画用画像メモリ、222…描画パラメータメモリ、223…描画処理回路、230…制御部、231…制御回路、232…記憶装置、240…コネクション部、241…近距離無線通信回路、241A…近距離無線通信アンテナ、242…近接判定回路、250…パネル連携部、251…パネルデータ取得回路、252、252A…指示情報提供回路、270…電子ペン認証部、21…リストバンド、22…保持具
図1
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