(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】技術システムの校正方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20231129BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20231129BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G05B13/02 B
G05B13/04
F02D41/14
(21)【出願番号】P 2020570709
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2019025193
(87)【国際公開番号】W WO2019242892
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ディドコック・ニコ
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/198638(WO,A1)
【文献】特開2009-151383(JP,A)
【文献】特開2013-218725(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/02
G05B 13/04
F02D 41/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
技術システムの一定数kの制御変数(u
k)により制御され、技術システムのこれらの制御変数(u
k)に依存して、動作点が技術システムの一定数mの状態変数(v
m)の形で設定される技術システム、特に、燃焼エンジン、変速機、ハイブリッド駆動部、車両の空調機器、電子的に制御可能なスプリング、電子的に制御可能なサスペンション又は車両操縦部を校正する方法であって、この校正時に、動作点において、所与の付帯条件(h,g)を遵守する形の最適化によって、技術システムの少なくとも1つの出力パラメータ(y)に関して最適である、技術システムの制御変数(u
k)が算出され、この最適化の付帯条件(g)により、この最適化時に計算された、技術システムの新しい制御変数(u)が、技術システムの一定数の取得済みのデータ点(x
n)を包囲する包絡線D内に有るのかが検査される方法において、
この校正に必要な校正変数kvを技術システムの所要の制御変数と技術システムの所要の状態変数の形で包含するd次元の校正空間Kが、次元d
sub(d
sub<d)の第一の下位校正空間K
subと少なくとも1つの別の下位校正空間K
sub2とに分割されて、
組み合せ順列によって、それぞれ一定数e、有利には、e=2個の校正変数kvから成る部分集合が算出され、その得られた校正変数kvのe次元の関係B
vから、技術システムの取得済みのデータ点(x
n)に基づき、各e次元の関係B
vに関して、e次元のデータ包絡線D
vが計算され、
各e次元の関係B
vに関して、データ包絡線D
vの体積容量F
vが検査され、
体積容量F
vが最も小さいe次元のデータ包絡線D
vに割り当てられたd
sub個の校正変数kvが、第一の下位校正空間K
subに対して選定され、
残るd-d
sub個の校正変数kvが、この少なくとも1つの別の下位校正空間K
sub2に対して割り振られるか、或いは複数の別の下位校正空間K
sub2に配分され、
少なくとも第一の下位校正空間K
subに関する、技術システムの取得済みのデータ点(x
n)を用いて、この校正時に付帯条件gとして検査される、d
sub次元のデータ包絡線D
subが計算されることを特徴とする方法。
【請求項2】
第一の下位校正空間K
subに対して選定されなかった校正変数kvから成る少なくとも1つの残るe次元の関係B
vが別の下位校正空間K
sub2として使用されて、このe次元の関係B
vのe次元のデータ包絡線D
vが本校正時に付帯条件gとして検査されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の下位校正空間K
subに対して選定されなかった校正変数kvから成る全ての残るe次元の関係B
vが別の下位校正空間K
sub2として使用されて、このe次元の関係B
vのe次元のデータ包絡線D
vが本校正時に付帯条件gとして検査されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
本校正時に、技術システムに対する少なくとも1つの外部要因が考慮されて、校正変数kvが、この少なくとも1つの外部要因を包含することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技術システムの校正方法に関し、この技術システムは、技術システムの一定数の制御変数により制御され、技術システムの制御変数に依存して、技術システムの一定数の状態変数の形で動作点を設定し、この校正時に、i番目の動作点において、所与の付帯条件を遵守する形の最適化によって、技術システムの少なくとも1つの出力パラメータに関して最適である、技術システムの制御変数が探索され、この最適化の付帯条件では、この最適化時に計算された、技術システムの制御変数から成るテスト点が、技術システムの一定数の取得済みのデータ点を包囲するデータ包絡線内に有るのかが検査される。
【背景技術】
【0002】
燃焼エンジンを校正する場合、一般的には、例えば、排ガス限界や燃料消費量限界(一般的には出力パラメータ)などの所定の基準が遵守され、その際、燃焼エンジンの許容されない動作状態が回避されるように、燃焼エンジンの状態変数に依存して、燃焼エンジンの決定すべき所与の制御変数を確定することが重要である。この場合、制御変数は、燃焼エンジンを閉ループ制御又は開ループ制御するための変数である、即ち、例えば、点火時点、噴射時点(例えば、プレ噴射、アフター噴射)、EGR(排ガス再循環)の再循環させる排ガス量、スロットルバルブの位置などである。状態変数は、制御変数に依存して、並びにその時々の(例えば、荷重、環境条件(例えば、周囲の温度、大気圧)などの)外部要因に依存して出現する、燃焼エンジンのパラメータである。燃焼エンジンの典型的な状態変数は、回転数と回転モーメントである。これらの状態変数は燃焼エンジンの動作状態を反映する。これらの状態変数は、測定することができるが、例えば、モデルに基づき、燃焼エンジンのそれ以外の測定量から計算することもできる。これらの制御変数と状態変数は、共に、全ての制御変数と状態変数の入力パラメータベクトルの形で校正の入力パラメータを構成する。許容されない動作状態は、例えば、燃料消費量、排ガス(NOx、COx、煤など)、シリンダー圧、エンジン温度などの物理的に測定可能な出力パラメータに基づき定められる。そのために、通常は測定可能な出力パラメータの相応の限界値が付与される。それらの出力パラメータは、燃焼エンジンの反応としてのその時々の動作状態(状態変数)とその時々の制御変数に依存して出現する。所定の状態変数は、限定することもでき、例えば、回転モーメント又は最大回転数を、そのため、許容されない動作状態を定義することもできる。しかし、燃焼エンジンの許容されない動作状態は、ノッキング、不着火などの望ましくない効果で表現することもできる。その場合、そのような許容されない動作状態は、場合によっては、外部要因にも依存して、入力パラメータの所定の組合せの時に起こる。そこで、燃焼エンジンの校正時に、与えられた状態変数に関して、場合によっては、所定の外部要因に関しても、出来る限り許容されない動作状態が起こらないと同時に、或る出力パラメータ(校正の目標)、典型的には、排ガス値(排出ガス中のNOx、COx、HC(炭化水素)の成分、煤、微粒子など)と燃料消費量が最適化(通常は最小化)されるように、制御変数を定めるのが有効である。校正時に、制御変数によって決まる(一定数の制御変数に基づく)多次元空間が探索空間と称される。探索空間の全ての許容される制御変数が走行可能な領域を形成し、与えられた状態変数に関して、許容されない動作状態を引き起こさないために、制御変数が、その領域内に存在しなければならない。従って、その時々の状態変数に依存する走行可能な領域は探索空間の下位空間である。走行可能な領域の外縁は、しばしば走行可能限界とも称される。
【0003】
その場合、制御変数は、例えば、状態変数に依存した特性マップとして、しばしば制御機器に保存されている。燃焼エンジンに関する制御変数は、例えば、エンジン制御機器に保存され、変速機に関する制御変数は、例えば、変速機制御機器に保存され、ハイブリッド駆動系統に関する制御変数は、例えば、ハイブリッド制御機器に保存されている。
【0004】
今日の燃焼エンジンは、多数の状態変数に依存して設定される多数の制御変数を有する。それにより生じる多数の校正入力パラメータと燃焼エンジンの動作状態に対する制御変数の通常は非線形的な影響とのために、また(走行可能性限界を遵守しなければならないので)入力パラメータの互いの(何重でもある)依存性のために、この校正は、手動では殆ど成就できない非常に複雑な設定課題である。従って、この校正は、しばしば最適化問題として解決され、その際、入力パラメータ又は或る入力パラメータは、1つ又は複数の出力パラメータに関して最適化(最小化又は最大化)される。その最適化の際に、所与の状態変数に関して、場合によっては、与えられた外部要因に関しても、出力パラメータを最適化するために、制御変数を変化させる。燃焼エンジンの校正時に、しばしば排ガス値又は燃料消費量が出力パラメータとして用いられる。その場合、最適化の際に、付帯条件も、特に、走行可能性限界を遵守することも付与される。即ち、最適化の際に、制御変数と状態変数が走行可能性限界内に存在することしか許容されない。そのようにして、一般的に制御変数に関する特性マップが、状態変数に依存して、場合によっては、外部要因にも依存して、設定されて、燃焼エンジンを制御するために、燃焼エンジンのエンジン制御機器に保存される。走行動作中に、その時々の状態変数が検出されて、保存された特性マップから、制御変数に関して実施すべき設定事項が読み出されて、燃焼エンジンに設定される。
【0005】
その場合、校正のために、入力パラメータの制限された数の離散的なデータ点(この場合、データ点は具体的な入力ベクトルである)しか入手できないことが問題である。その際、それらのデータ点は、モデルから計算されるか、或いは試験台で実際に存在する燃焼エンジンを動作させて測定される。しかし、それにより、走行可能性限界は未だ出現しない。従って、そこで所定の状態変数に関する最適化から新たに決定された制御変数が、大抵の場合複数の制御変数から成る制御変数ベクトルが走行可能性限界の中に有るのか、或いは外に有るのかは、取得済みの離散的なデータ点に基づき特定することができない。従って、所謂データ包絡線が既に使用されており、制限された数のデータ点から、それらのデータ点の包絡線、所謂データ包絡線が計算される。それにより、走行可能性限界は、そのデータ包絡線によって形成される。
【0006】
この問題を解決するために、取得済みの許容されるデータ点だけからデータ包絡線を計算する包絡線アルゴリズムが既に知られている。その例は、取得済みのデータ点を包含する最小の凸状空間として定義される凸状のデータ包絡線である。凸状のデータ包絡線を近似する既知のアルゴリズムは、所謂QuickHullアルゴリズムである。しかし、凸状のデータ包絡線を使用することは、二通りの理由から問題である。第一は、凸状包絡線の計算は、低次元の探索空間でのみ効率的である。しかし、計算負荷は、探索空間の次元に応じて、さもなければデータ包絡線を計算するためのデータ点の数に応じて指数関数的に増大し、その結果、約10次元以上の探索空間での計算は、是認できる計算負荷では最早現実的に不可能である。第二に、探索空間の関連する領域が実際にはしばしば凸状でなく、そのことは、非現実的なデータ包絡線を生じさせる。この問題は、多くの場合、何らかの複雑な三角形分割法により解決される。三角形分割法とは、凸状のデータ包絡線を単純な形状に分割すること、即ち、二次元の場合には、例えば、データ点を三角形の網に配分することであると理解する。非凸状三角分割法の例は、例えば、非特許文献1に記載されている通りの所謂アルファシェイプ法である。しかし、その三角形分割法の計算は、高次元に関して、並びに多数のデータ点に関しても、同じく非常に複雑で負担がかかる。
【0007】
しかし、特に、燃焼エンジンの校正時には、一般的に10~20又はそれ以上の制御変数(探索空間の次元>10)を処理しなければならない。同じく、校正のために入手可能な105~106個のデータ点は珍しくない。それらの両方は、少なくとも是認できる負担と是認できる時間での校正時の凸状のデータ包絡線の計算を現実的に不可能にする。
【0008】
特許文献1により、探索空間の次元が大きい場合でも、特に、10を上回る場合でも、是認できる負担でデータ包絡線を計算できる包絡線アルゴリズムが周知である。しかし、それらのアルゴリズムは、多くの場合に校正のための使用環境において実装されておらず、従って使用できない。それとは別に、校正技術者が、新しいアルゴリズムの代わりに、慣れ親しんだアルゴリズムで、特に、凸状のデータ包絡線を探索しようと試みることが多。
【0009】
従って、代替措置が存在するにも関わらず、多くの場合に、凸状のデータ包絡線を計算するために、探索空間を手動で縮小して、例えば、より小さな次元で、しかし、そのために、より多くのそのようなデータ包絡線を計算している。しかし、探索空間に関する制御変数の手動による選定は、制御変数の選定が校正の精度と信頼性に影響を及ぼすので、相当の経験を必要とする。
【0010】
しかし、上記の問題は、技術システムとしての燃焼エンジンの校正時だけに生じるのではなく、当然のことながら、任意の技術システムに移し替えることができ、その際、技術システムは、制御変数の規定に基づき制御されて、制御変数の規定に依存して、状態変数により定義される所定の状態を占める。別の例は、変速機制御ユニット(TCU)での変速機用途、或いはハイブリッド制御ユニット及び/又はバッテリー管理システムでのハイブリッド用途である。更に別の例は、車両の空調機器、或いは電子的に制御可能なスプリング又はサスペンションである。基本的に、制御ユニットにより制御される如何なる電子機械システムも技術システムとして校正することができる。技術システムの校正時の共通の目標は、出来る限り許容されない動作状態が生じないと同時に、技術システムの所与の出力パラメータが最適化目標に関して最適化されるように、状態変数に依存して制御変数を付与することである。校正時には、一般的にデータフィールド又はデータテーブルが作成され、それに基づき、技術システムを制御することができる。その場合、それらのデータフィールド又はデータテーブルは、動作中にその時々の動作状態に関して最適な制御変数を読み出すことができるように、一般的に技術システムの制御機器に記憶されている。付属する制御機器により制御される、車両のコンポーネントの典型的な例は、燃焼エンジン以外に、変速機、駆動用バッテリー、ブレーキ、駆動系統、ホイールサスペンションなどである。
【0011】
しかし、本発明による校正は、車両又は車両のコンポーネントの挙動を最適化するためにも使用することができる。多くの場合に、車両の走行特性(例えば、ノイズ、シャーシ、ダンピング、切替挙動、操舵、空調など)は、校正によって所望の特性に関して最適化される。例として、ダンピングの最適化、変速機の最適化、クラッチの最適化又は車両操舵の調整が挙げられる。それにより、制御変数は、技術システムを動作させるための、技術システムに対する所定の設定事項である。例えば、シャーシ軸支部のスプリングパラメータ(制御変数)を変化させて、例えば、走行動特性や走行快適性などの所定の出力パラメータを調節又は最適化することによって、シャーシの剛性を最適化することができる。別の例は、流体力学式クラッチであり、その際、クラッチ流体の流れを最適化するか、或いは車両操舵の挙動又は特性を調整する。
【0012】
しかし、校正は、車両のコンポーネントに限定されるのではなく、全く普遍的に技術システムとしての任意の機械コンポーネントにも適用することができる。
【0013】
従って、校正に関する技術システムとしては、特に、動作中に制御変数によって(例えば、制御又は所定の設定により)影響を及ぼすことができる、並びに、所定の挙動に関して、動作状態に依存して最適化すべき、機械、例えば、車両の如何なるコンポーネントも対象となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際特許公開第2017/198638号明細書
【文献】国際特許公開第2012/169972号明細書
【文献】国際特許公開第2014/187828号明細書
【文献】国際特許公開第2013/087307号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】H. Edelsbrunner, et al., “Three-Dimensional Alpha Shapes”, ACM Transactions on Graphics, Vol.13, No. 1, Jan. 1994, Seiten 43-72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のことから、本発明の目的は、有効なデータ点に基づき簡単かつ速い手法でデータ包絡線の遵守状況を考慮することを可能にする、技術システムを校正する方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、独立請求項1の特徴によって解決される。校正空間をより小さい複数の下位校正空間に分割し、次に、それらに関してデータ包絡線を計算することによって、データ包絡線を算出するための計算負荷を明らかに低減することができる。そのため、高次元のデータ包絡線の代わりに、より速く算出できる低次元の包絡線を使用する。この場合、本発明による分割措置は、最大限の限定的に作用する影響を与える校正変数が第一の下位校正空間に包含されることを保証する。この目的は、データを包囲する最も小さい(例えば、凸状の)空間をデータ包絡線として定義することである。最大限の限定的に作用する影響を与える校正変数は、最も小さい包絡線をも生じさせ、そのため、これらは、有利な手法で第一の下位校正空間に取り込まれる。これは、(10を上回る)高次元の校正空間において、従来の包絡線アルゴリズム、特に、QuickHullアルゴリズムなどの凸状包絡線アルゴリズムを用いて校正を実施することをも可能にする。
【0018】
別の下位校正空間を算出する負担は、単純に第一の下位校正空間に関して選定されなかった校正変数から成る少なくとも1つの残るe次元の関係を別の下位校正空間として使用して、このe次元の関係のe次元のデータ包絡線が校正時に付帯条件として検査されることで軽減することができる。この負担は、第一の下位校正空間に関して選定されなかった校正変数から成る全ての残るe次元の関係を別の下位校正空間として使用することによって更に全く大幅に軽減される。
【0019】
本校正は、校正時に技術システムに対する少なくとも1つの外部要因を考慮して、校正変数がこの少なくとも1つの外部要因を包含することによって、簡単に技術システムに対する外部要因に拡張することができる。
【0020】
以下において、本発明を制限するものではない本発明の有利な実施形態を例示して模式的に図示する
図1~3を参照して、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】校正変数の二次元グラフの形で校正空間の校正変数の組み合せ順列を図示したグラフ
【
図2】二次元のデータ包絡線を伴って
図1の抜粋を図示したグラフ
【
図3】二次元のデータ包絡線を伴って
図1の抜粋を図示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
初めに、一定数の制御変数の形で(実験計画DoEとしても知られる)探索計画を作成するための十分に周知の方法が存在し、それらを用いて、技術システムを理想的に作動させて、技術システムの静的特性及び動的特性を最適に検出できることに言及しておきたい。技術システムが制御変数に基づき作動され、その際、状態変数が測定されると、即ち、そのような技術システムの具体的な測定の際に、データ点xnが得られる。同様に、入手可能なデータ点xnに基づき技術システムのモデル又は技術システムの出力パラメータyを特定するための十分に周知の方法が存在する。技術システムに関して、存在する既知のモデルを利用することもできる。このモデルによって、出力パラメータyは、最早測定する必要がなくなり、それ以外のデータ点に関しても、モデルから計算することができる。同様に、モデルによって、状態変数を制御変数に依存してモデル化することができ、それにより、そのようなモデルから更に別のデータ点xnを算出することも可能である。しばしば、実験計画やモデルも同時に算出される。その例は、特許文献2又は3に見い出される。しかし、本発明では、データ点xnのような具体的な形式を問題とするのではなく、(即ち、走行可能性限界内に)多数の有効なデータ点xnが存在することを出発点とする。同様に、本発明では、例えば、技術システムにおいて測定技術的に、或いは好適なモデルから、如何にして出力パラメータyを算出するのかは重要でない。
【0023】
そこで、燃焼エンジンを技術システムの例として本発明を述べるが、それにより普遍性を制限するものではない。技術システムの多数n=1,...,Nの有効な(即ち、走行可能性限界内に有る)データ点xnが存在することを出発点とする。これらのデータ点xnは、技術システム用の試験台、例えば、燃焼エンジン用のエンジン試験台での測定によって、或いは技術システムの既存のモデル又は特定されたモデルから算出することができる。両方の場合に、本校正に関する目標は、通常データ点xnを用いて、探索空間、即ち、制御変数unの空間を状態変数vnに依存して走行可能性限界内に出来る限り良好かつ一様に包囲することである。この場合、データ点xnは、それぞれ関与する全て(k個)の制御変数u=[u1,…,uk]の具体的な値と関与する全て(m個)の状態変数v=[v1,...,vm]の具体的な値の形の校正に関与する全ての校正変数kvから成るベクトル、即ち、
【0024】
【数1】
である。これらの校正変数kvにおいて、一般的には変化させることができるのではなく、存在する、通常は非常に緩慢にしか変化しない外部要因wも考慮することができる。しかし、技術システム用の試験台では、そのような外部要因wも設定することができる。それにより、データ点x
nは、そのような外部要因wも包含することができるが、そのことは、本発明による措置を何も変えない。そのために、制御変数u
nと状態変数v
nは、場合によっては、同じく相応のベクトルに集約される。
【0025】
そして、本校正は、例えば、一般的に
【0026】
【数2】
の形で記述できる最適化問題である。この場合、Zは、状態変数vにより与えられる状態空間を表し、hとgは、最適化の所与の付帯条件である。出力パラメータベクトルyに集約された、技術システムの出力パラメータy、例えば、燃焼エンジンの排ガス値、燃料消費量などを最適化する。与えられた状態変数ベクトルvに依存して、制御変数ベクトルuを変化させることによって、少なくとも1つの出力パラメータyに対して最適化する。例えば、付帯条件hによって、例えば、排ガス値限界や燃料消費量限界、最大シリンダー圧、最大エンジン温度、ノッキングの回避などの技術システムの許容される動作状態を遵守すべきことを付与することができ、付帯条件gによって、データ包絡線D、即ち、例えば、走行可能性限界を遵守すべきことを付与することができる。出力パラメータyは、技術システム1において測定するか、或いは技術システム1のモデルから算出することができる。
【0027】
本校正は、一般的には、全ての状態変数vを含む所与のi番目の状態変数ベクトルviにより与えられる、技術システムの所与の記録されたi番目(i=1,...,l)の動作点においてそれぞれ実施される。この場合、本校正は、場合によっては、所定の外部要因wに対しても実施することができる。固定の動作点での校正は、それにより校正変数kvを制御変数uに、場合によっては、所定の外部要因wに低減することができる、即ち、例えば、
【0028】
【数3】
となるので、校正を簡単にする。しかし、それにより、同じ手法で、付帯条件もh
i(u
i)とg
i(u
i)に簡略化される。この場合、その時々のi番目の動作点に関して有効な制御変数u
iしか考慮されないが、状態変数v
iが考慮されないので、ローカルな校正とも呼ばれる。また、それにより、ローカルなデータ包絡線しか考慮されない。それにより、ローカルな包絡線は、記録されたi番目の動作点に関して有効なデータ点x
niを包含する。そして、i番目の動作点に関する上記の最適化問題は、次の通り単純化される。
【0029】
【0030】
この最適化問題は、i個の動作点の中の少なくとも1つ、有利には、全てに関して解かれる。本校正では、既知のデータ点xnは、付帯条件gi(ui)の形のデータ包絡線による検査に関してのみ必要である。ローカルな校正の欠点は、それにより、隣り合う動作点の既知の情報自体がシステム的に無視されることである。
【0031】
従って、本校正時には、状態変数viが、多くの場合に追加入力として考慮され、それにより、校正変数kvが制御変数uも状態変数vも包含し、場合によっては、所定の外部要因をも包含する、即ち、例えば、
【0032】
【数5】
となる。この場合、校正は、場合によっては、所定の外部要因に対して実施することができる。本校正時には、又もや制御変数ベクトルuが、与えられた状態変数ベクトルv
iに依存して変更される。同じ手法で、i番目の動作点v
iにおける付帯条件がh(u
i,v
i)及びg(u
i,v
i)として得られる。この場合には、グローバルな校正とも呼ばれ、付帯条件g(u
i,v
i)により、全てのデータ点v
iに関するグローバルなデータ包絡線が考慮される。そして、この最適化問題は、i個の動作点v
iの各々に対して、以下の形で行われる。
【0033】
【0034】
この最適化問題は、i個の動作点の少なくとも1つ、有利には、全てに関して解かれる。それにより、本校正は、同じく所定のi番目の動作点viに対して実施され、ここで、単に境界条件h又はgによって、別の、特に、隣り合う動作点の情報も考慮される。それによって、この最適化により特定される、出力パラメータyのモデルが、より精確になり、グローバルなデータ包絡線により付与される境界条件gの制約が、より小さくなる。
【0035】
i個の動作点の各々に関する技術システムの出力パラメータyが、それぞれ最適化目標又は本校正の目標であり、例えば、排出の最小化、例えば、燃焼エンジンのNOx、COx、HC又は煤などの排出の最小化、燃焼エンジンの燃料消費量の最小化などである。出力パラメータyと制御変数u並びに、場合によっては、状態変数vとの間の関係が本校正によって特定される。上記の最適化問題を解くための十分に周知の方法が存在し、例えば、そのような方法は特許文献4に記載されている。即ち、この最適化時に、技術システムの少なくとも1つの出力パラメータyに関して最適な制御変数uが探索され、その際、最適化は、一般的に出力パラメータの最小化又は最大化を目標とする。一般的に、この最適化は、定義された停止判断基準に到達するまで反復して実施される。考えられる停止判断基準は、例えば、所定の反復回数又は出力パラメータyが目標基準に到達すること、又は目標基準を下回ることである。停止判断基準が出現した時点の制御変数uが最適な制御変数uと見做される。そして、この最適な制御変数uに基づき技術システムを動作させる。この場合、各反復工程において、付帯条件の遵守状況も検査される。しかし、本発明では、如何にして最適化問題を具体的に解くのかは重要でない。
【0036】
本校正時に、i個の動作点viの各々に関する最適化の各反復工程jにおける最適化によって、取得済みのN個のデータ点xnから算出されたデータ包絡線を付帯条件gにおいて考慮して、新しい制御変数ベクトルuijが算出される。所与の停止判断基準に到達して、新しい制御変数ベクトルuijが全ての付帯条件を満たした場合に、最後の反復工程における制御変数ベクトルuijがi番目の動作点における最適化された制御変数uiとなる。本校正時に付帯条件gの遵守状況を検査するために、各反復工程jにおいて、この新しい制御変数ベクトルuijがデータ包絡線内に、即ち、例えば、走行可能性限界の中に有るのか、或いは外に有るのかを検査する。この検査は、制御変数u並びに、場合によっては、状態変数vによって定義される校正空間Kの次元が大きい(10を上回る)場合でも、十分に速くできなければならない。それゆえ、校正の種類(ローカル又はグローバル)に応じて、場合によっては、校正空間Kは、(制御変数の)探索空間、或いは(制御変数の)探索空間と、外部要因も考慮すると、(状態変数の)状態空間とを包含する。しかし、この最適化時に付帯条件gにより検査できるようにするために、先ずは既知のN個のデータ点xnから、データ包絡線Dを算出する。しかし、この校正空間Kの次元dが非常に大きくなる可能性が有り、その結果、データ包絡線Dの計算は、時として非常に計算負荷が大きくなるか、或いは(少なくとも是認できる時間内に)全く計算できなくなる。
【0037】
この場合、本校正は、
図4に図示されている通り進行する。本校正は、校正ユニット3(校正に使用するハードウェア及び/又はソフトウェア)において既知のデータ点x
nに基づき、与えられた状態変数vと、場合によっては、与えられた外部要因wに対して技術システムの制御変数uを変化させて、少なくとも1つの出力パラメータyを最適化することによって行われる。この場合、技術システム1が実際にハードウェアとして存在するのか、或いはモデルによってシミュレーションされるのかは何らの役割も果たさない。技術システム1に関するモデルを使用する場合、そのモデルを校正ユニット3に実装することもできる。以下で詳しく述べる通り、データ包絡線Dの計算は、同じく校正ユニット3で行うことができる。そして、出力パラメータを最適化する、本校正で算出された制御変数uは、(
図4に表示されている通り)技術システム1を制御する制御ユニット2に保存するか、或いはそれにより技術システム1を設定することができる。
【0038】
本発明では、データ包絡線Dを計算するために、先ずは次元dの校正空間K全体が第一の下位校正空間Ksubと一定数の別の下位校正空間Ksub2とに分割される。この場合、下位校正空間Ksub,Ksub2は、有利には、当然のことながら重なり合ってはならない。この次元dは、本校正で使用される制御変数u=[u1,…,uk]と状態変数v=[v1,...,vm]の数である、即ち、d=k+mである。外部要因も考慮すると、次元dは、それに応じて大きくなる。以下において、簡略化のために、本校正に使用される制御変数及び状態変数と、場合によっては、外部要因とを含む、校正変数kv1,...,kvdの中の幾つかだけについて述べる。本発明では、先ずは第一の下位校正空間Ksubの最大次元dsubが確定又は付与され、ここで、dsub<dである。この場合、最大次元dsubは、当然のことながら、選定された包絡線アルゴリズムによって、この第一の下位校正空間Ksubに関する包絡線Dsubが十分に速く計算できるように選定される。凸状包絡線を計算するためのQuickHullアルゴリズム又はそれ以外のアルゴリズムを使用する場合、例えば、4~7の最大次元dsubが付与され、当然のことながら、それ以外の最大次元dsubを選定することもできる。それ以外のアルゴリズムでは、場合によっては、最大次元dsubをより大きく選定することもできる。別の下位校正空間Ksub2は、同じ最大次元dsub2=dsubとすることができるが、より小さい最大次元dsub2とすることもでき、個々の別の下位校正空間Ksub2の次元は(複数存在する限り)同じである必要はない。本校正の校正空間Kの当初の次元dをより小さい複数の下位校正空間Ksub,Ksub2に分割するためには、当然のことながら、本校正の校正空間Kの所定の校正変数kvを選定して、下位校正空間Ksub,Ksub2に割り当てなければならない。
【0039】
そのために、校正空間Kの一定数dの校正変数kv1,...,kvdに関して、組み合せ順列によって、それぞれ一定数eの要素から成る部分集合、即ち、校正変数kv1,...,kvdの大きさeの部分集合を作成する。これらの部分集合の要素の数eが小さくなるほど、より速く下位校正空間Ksub,Ksub2を算出することができ、そのため、小さい集合、特に、e=2個の要素から成る集合が有利である。この場合、要素の数eは、当然のことながら、校正変数kv1,...,kvdの数dよりも小さい。この場合、組み合せ順列は、部分集合内の要素の順番を考慮せずに(即ち、例えば、{a,b}={b,a})、或いは部分集合内の要素の順番を考慮して(即ち、例えば、{a,b}≠{b,a})作成することができる。d個の要素から成る1つの集合から、e個の要素を選定するために、そのような全ての順列を作成すると、順番を考慮した場合の
【0040】
【0041】
【0042】
個の順列が得られる。従って、次元dの校正空間K全体に関して、それぞれ校正変数kv1,...,kvdの中の一定数eを含む一定数のe次元の関係が得られる。このe次元の関係の数は、考え得る組み合せ順列の数に等しい。e=2又はe=3の場合、これらの関係を二次元又は三次元のグラフBvの形で表すこともできる。この二次元又は三次元のグラフBvに、データ包絡線の算出に使用される既知のデータ点xnをプロットすることができる。
【0043】
図1の実施例では、次元d=9の校正空間Kを、即ち、校正空間Kが、例えば、全体として9個の制御変数と状態変数を含むことを出発点としている。
図1の例では、例えば、技術システムのm=2個の状態変数v
1(=kv
1),v
2(=kv
2)、ここでは、例えば、エンジン回転数とエンジン回転モーメントが有る。更に、技術システムのk=7個の制御変数u
1(=kv
3),...,u
7(=kv
d)も有り、それが具体的に如何なる変数であるのかは重要でない。それから、それぞれe=2個の要素から成る部分集合が作成され、それらから、校正変数kv
1,...,kv
dのV=72個の(順番を考慮した)順列と、関係B
vとしてのV=72個の二次元グラフとが得られる。これらの順列は、
図1には、図解のために行例形式で図示されている。順番を考慮しない場合、V=36個の順列が得られ、それは、
図1の上方又は下方の三角行列の形で表すことができる。
【0044】
個々の二次元の関係B
vの軸は、有利には、正規化される、即ち、個々の二次元の関係B
vの横座標値は軸の同じ長さに対して調整される。同じことが、有利には、縦座標値にも言え、横座標と縦座標の軸の長さは同じである必要はない。この正規化の工程は、必ずしも必要ではないが、一般的には、より良い結果に結び付くので、有利である。それにより、二次元の関係B
vに関して、
図1に図示されている通り、辺の長さが同じである四角形のパターンが得られる。この工程は、当然のことながら、高次元の関係B
vに関しても実施することができる。
【0045】
ここで、各二次元の関係B
vに関して、或いは一般的に各e次元の関係に関して、例えば、QuickHullアルゴリズムにより、データ包絡線D
v、例えば、凸状のデータ包絡線D
vを計算する。これらの関係B
vの次元が、有利には、2であるか、或いは一般的に十分に小さく選定されることから、そのようなデータ包絡線D
vを非常に速く計算することができる。データ包絡線D
vが、
図2に幾つかのグラフに対して図示されている。
【0046】
次の工程として、計算したデータ包絡線D
vの体積容量F
vを算出する。二次元のデータ包絡線D
vの場合、その体積は、当然のことながら、平面の面積に低下する。そのような体積容量F
vは、既知のデータ包絡線D
vにより非常に簡単に数値計算することができる。
図2と3には、簡略化するために、それぞれ所定の校正変数kvに関する幾つかの二次元グラフB
v、それに対するデータ包絡線D
v及び体積容量F
v(ここでは、平面の面積)が図示されている。そのようなe次元のデータ包絡線D
vの体積容量F
vが小さくなるほど、e次元の関係B
vに包含される校正変数kvは、ベースとする校正空間Kのデータ包絡線D
vをより大きく制限する。それと同様に、当然のことながら、データ包絡線D
v外の体積容量を計算することができる。その際には、その体積が大きくなるほど、ベースとする探索空間のデータ包絡線に対する制限する影響が大きくなると言える。同じ手法で、判定のために、データ包絡線D
vの体積容量F
vに対するデータ包絡線D
v外の体積の(或いはその逆の)比率又は差を用いることができる。同様に、データ包絡線の体積容量F
vの比率又はデータ包絡線D
v外の体積を関係B
vに含まれるe次元空間の体積と関連付けることができる。しかし、それは、全てデータ包絡線D
vの体積容量F
vを評価することを目的としており、この体積容量F
vが小さくなるほど、e次元のグラフB
vに関与する校正変数kvの制限する作用が大きくなると評価される。
【0047】
それ故、第一の下位校正空間Ksubに対して、体積容量Fvが最も小さいe次元の関係Bvにおけるデータ包絡線Dvに関与するdsub個の校正変数kvが選定される。
【0048】
そのために、例えば、体積容量Fvが最も小さいe次元の関係Bvが選定されて、それに関与する校正変数kvがdsub個の校正変数kvに追加される。それに続いて、体積容量Fvが2番目に小さい関係Bvが選定されて、両方に関与する校正変数kvが又もやdsub個の校正変数kvに追加される。これらの関与する校正変数kvの中の1つが選定された校正変数kvの集合に既に含まれている場合、その変数は、当然のことながら、改めて追加されない。これが、全てのdsub個の校正変数kvが選定されるまで繰り返される。そのため、この選定は、校正空間Kのd個の校正変数kvの中の何れを次元dsubの第一の下位校正空間Ksubにおいて使用するのかだけを決める。
【0049】
最後の工程において、より少ない数の選定すべき校正変数kvだけが欠落しているために、関係Bvに関与する全ての校正変数kvを追加できなかった場合、例えば、単純に必要な数の関与する校正変数kvを任意に選定することができる。例えば、二次元の場合、常に横座標又は縦座標の校正変数kvが選定される。しかし、この関係Bvを飛ばして、辛うじて必要な数の校正変数kvが関与する関係Bvが見つかる限り、データ包絡線Dvが次に大きい関係Bvを選定することができる。しかし、欠落した校正変数kvを選定するためのそれ以外の如何なる方式も実装することができる。
【0050】
そして、それにより決定された次元dsub(dsub<d)の下位校正空間に関して、当然のことながら、dsub個の選定された校正変数kvに低減された既知のデータ点xnを用いて、任意のデータ包絡線Dvを計算することができる。次元dsubが十分に小さいことにより、これは、QuickHullアルゴリズムなどの従来の包絡線アルゴリズムを用いても十分に速く行うことができる。
【0051】
別の下位校正空間Ksub2に配分しなければならない、校正空間Kの残りの(d-dsub)個の校正変数kvに関して、様々な形で進行することができる。
【0052】
1つの手法は、下位校正空間Ksub2を決定するために、残る(d-dsub)個の校正変数kvから、又もやdsub2個の校正変数kvを選定することであり、その際、次元dsub2は、又もや設定又は付与することができる。これは、当然のことながら、複数の別の下位校正空間Ksub2に関しても行うことができる。それにより、これらの下位校正空間に関する相応のデータ包絡線Dsub2を同様に計算することができる。同じく、残る(d-dsub)個の校正変数kvに関しても、単純にe次元のグラフBvの既に算出されたデータ包絡線Dvを使用することができ、これは、特に速い方法である。最大限の限定的に作用する校正変数kvが何れにしても既に第一の下位校正空間Ksubに包含されているので、別の手法は、残る(d-dsub)個の校正変数kvを単純に手動で別の下位校正空間Ksub2に配分することである。これらの手法の組合せも考えられる。
【0053】
しかし、本校正では、残る(d-dsub)個の校正変数kvに関して、特許文献1にも記載されている通り進行することができる。これも、当然のことながら、それ以外の手法と組み合わせることができる。
【0054】
本発明では、最大限の限定的に作用するdsub個の校正変数kvを第一の下位校正空間Ksubに割り当てるのが有利であり、これは、本発明による方法により系統的かつ自動的に実施することができる。
【0055】
それにより、本校正では、付帯条件gにおいて、高い次元dの個々のデータ包絡線Dの代わりに、より低い次元の複数のデータ包絡線Dsub,Dsub2,Dvを検査すべきであるが、これは、本校正の基本的な措置を何ら変更しない。