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特許7393405睡眠呼吸障害のスクリーニング、診断および監視のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】睡眠呼吸障害のスクリーニング、診断および監視のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A61B5/16 130
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021163949
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2017559054の分割
【原出願日】2016-05-09
(65)【公開番号】P2022002737
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/160,937
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ニン
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-124858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0300449(US,A1)
【文献】特表2012-503804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0371547(US,A1)
【文献】特表2012-532703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0240982(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0183644(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0266356(US,A1)
【文献】国際公開第2014/029764(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視セッションにおいて患者の合計睡眠時間を推定する医療スクリーニングデバイスにおける方法であって、
監視セッションにおいて、アクティグラフィーセンサから複数のチャンネルを含むアクティグラフィー信号を受信することと、
前記アクティグラフィー信号を複数の重複エポックへと分割することであって、該複数の重複エポックは少なくとも1つの重複エポックを含み、該少なくとも1つの重複エポックは先行エポックと後続エポックとに重複するものである、分割することと、
前記アクティグラフィー信号を用いて前記複数の重複エポックの各エポックについての前記患者の睡眠/覚醒状態を決定することと、
前記複数の重複エポックの前記睡眠/覚醒状態から前記合計睡眠時間を推定することと、を含み、
前記複数の重複エポックの各エポックについて前記患者の前記睡眠/覚醒状態を決定することは、
前記アクティグラフィー信号から各エポックについて、前記複数のチャンネルから活動カウントを決定することと、
2つの重複エポックの活動カウントの比を第1の活動閾値と比較することであって、前記2つの重複エポックの活動カウントの比は、1つの重複エポックの活動カウントの、当該重複エポックの直前にあり当該重複エポックと重複した先行する重複エポックの活動カウントに対する比である、比較することと、
前記重複エポックの活動カウントの、前記先行する重複エポックの活動カウントに対する比が、前記第1の活動閾値よりも高いかどうかに基づいて、前記重複エポックにおける前記患者の前記睡眠/覚醒状態を「覚醒」と判定することと
を含む、方法。
【請求項2】
エポックにおいて前記患者の前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記エポックの前記活動カウントが第2の活動閾値よりも高い場合、前記睡眠/覚醒状態を「覚醒」と決定することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記患者の呼吸流量信号にさらに依存する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記エポックにおいて前記呼吸流量信号が安定している場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項5】
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記呼吸流量信号が前記エポックにおいてSDB発症が発生した指示を含む場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項6】
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記患者の呼吸努力信号にさらに依存する、請求項1の方法。
【請求項7】
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記エポックにおいて前記呼吸努力信号が安定している場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することをさらに含む、請求項6の方法。
【請求項8】
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記呼吸努力信号が前記エポックにおいてSDB発症が発生した指示を含む場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することさらに含む、請求項6の方法。
【請求項9】
前記SDB発症は、いびき、流量制限、呼吸努力に関連する覚醒、閉塞性呼吸低下、および閉塞性無呼吸のうち1つを含む、請求項5および8のうちいずれか1つの方法。
【請求項10】
前記患者の睡眠呼吸障害の重症度の指数を前記推定された合計睡眠時間から計算することをさらに含む、請求項1~9のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
計算した前記指数は、
前記監視セッションにおいて無呼吸および呼吸低下を検出することと、
前記監視セッションにおいて検出された無呼吸および呼吸低下の数を前記推定された合計睡眠時間で除算することと
を含む、請求項10に記載方法。
【請求項12】
前記エポックに対して活動カウントを決定することは、
前記アクティグラフィー信号の各チャンネルを修正することと、
前記修正されたチャンネルを合計して、単一のアクティグラフィー信号を得ることと、
前記エポックに対して前記単一のアクティグラフィー信号の平均平方根値を計算することと
を含む、請求項1~11のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
複数のエポックを含む監視セッションにおいて患者の合計睡眠時間を推定する医療スクリーニングデバイスを用いたシステムであって、
3つの直交軸を含む複数のチャンネルのそれぞれにおけるアクティグラフの加速を示すアクティグラフィー信号を生成するように構成されたアクティグラフと、
プロセッサであって、
前記アクティグラフィー信号から各エポックについて、前記複数のチャンネルから活動カウントを決定することであって、前記複数のエポックの各エポックは重複エポックであり、該重複エポックは少なくとも1つの重複エポックを含み、該少なくとも1つの重複エポックは先行エポックと後続エポックとに重複するものである、決定することと、
複数の前記重複エポックの各エポックにおいて前記患者の睡眠/覚醒状態を決定することであって、2つの重複エポックの活動カウントの比を第1の活動閾値と比較し、ここで、前記2つの重複エポックの活動カウントの比は、1つの重複エポックの活動カウントの、当該重複エポックの直前にあり当該重複エポックと重複した先行する重複エポックの活動カウントに対する比であり、前記重複エポックの活動カウントの、前記先行する重複エポックの活動カウントに対する比が、前記第1の活動閾値よりも高いかどうかに基づいて、前記重複エポックにおける前記患者の前記睡眠/覚醒状態を「覚醒」と判定することと、
複数の前記重複エポックの各エポックにおいて前記患者の前記睡眠/覚醒状態から前記合計睡眠時間を推定することと、を行うようにプログラムされた、プロセッサと
を含む、システム。
【請求項14】
前記患者の呼吸を示す信号を生成するように構成された呼吸センサーをさらに含み、前記睡眠/覚醒状態の決定は、前記生成された信号にさらに依存する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記患者の呼吸努力を示す信号を生成するように構成された呼吸努力センサーをさらに含み、前記睡眠/覚醒状態の決定は、前記生成された呼吸努力信号にさらに依存する、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、リモートコンピューティングデバイスの一部を形成する、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
通信インターフェースと、
前記アクティグラフィー信号を、前記通信インターフェースを介して前記リモートコンピューティングデバイスの前記プロセッサへリレーするように構成されたローカルプロセッサと
をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記アクティグラフィー信号を保存するように構成された取り外し可能なメモリをさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
複数のエポックを含む監視セッションにおいて患者の合計睡眠時間を推定する医療スクリーニングデバイスであって、
少なくとも2つの直交軸を含む複数のチャンネルのそれぞれにおけるクティグラフの加速を示すアクティグラフィー信号を生成するように構成されたアクティグラフと、
前記アクティグラフに接続されたプロセッサと
を含んでなり、
前記プロセッサは、
監視セッションにおいて、複数のチャンネルを含むアクティグラフィー信号を受信し、
前記アクティグラフィー信号を、各エポックが前記複数のチャンネルを含む複数の重複エポックへと分割し、ここで、前記複数の重複エポックは少なくとも1つの重複エポックを含み、該少なくとも1つの重複エポックは先行エポックと後続エポックとに重複するものであり、
前記アクティグラフィー信号から、前記複数の重複エポックの各エポックについて、前記複数のチャンネルからの活動カウントを決定し、
前記複数の重複エポックの各エポックについて前記患者の睡眠/覚醒状態を決定し、ここで、前記睡眠/覚醒状態を決定することは、
2つの重複エポックの活動カウントの比を第1の活動閾値と比較することであって、前記2つの重複エポックの活動カウントの比は、1つの重複エポックの活動カウントの、当該重複エポックの直前にあり当該重複エポックと重複した先行する重複エポックの活動カウントに対する比である、比較することと、
前記重複エポックの活動カウントの、前記先行する重複エポックの活動カウントに対する比が、前記第1の活動閾値よりも高いかどうかに基づいて、前記重複エポックにおける前記患者の前記睡眠/覚醒状態を「覚醒」と判定すること、
前記複数の重複エポックのそれぞれの睡眠/覚醒状態から前記合計睡眠時間を推定することと
を含むものである、医療スクリーニングデバイス。
【請求項20】
前記医療スクリーニングデバイスは、使用する際に、睡眠中の患者の身体上に取り付けられるように構成されている、請求項19に記載の医療スクリーニングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/160,937号(タイトル:「Systems
and Methods for Screening, Diagnosis, an
d Monitoring of Sleep-Disordered Breathi
ng」、出願日:2015年5月13日)に対する恩恵を主張する。本明細書中、同文献
の開示内容全体を参考のため援用する。
【0002】
2 連邦支援による研究または開発に関する声明
適用無し
【0003】
3 共同研究開発に対する団体名
適用無し
【0004】
4 配列表
適用無し
【0005】
5 技術の背景
5.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断および監視のうち1つ以上に関する。
また、本技術は、医療デバイスまたはシステムおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0006】
5.2 関連技術の説明
5.2.1 人間呼吸系及びその疾患
身体の呼吸系は、ガス交換を促進させる。鼻および口腔は、患者の気道への入口を形成
する。
【0007】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く
、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取
り入れさせ、二酸化炭素を外に出すことができる。気管は、右および左の気管に分かれ、
これらの気管はさらに分かれて、最終的に終末細気管支に分かれる。気管支は、誘導気道
を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道のさらなる分割部は、呼吸細気管
支に至り、最終的に肺胞に至る。肺の胞状領域は、ガス交換が実行される場であり、呼吸
領域と称される。以下を参照されたい:「Respiratory Physiolog
y」、 by John B. West, Lippincott Williams
& Wilkins, 9th edition published 2011。
【0008】
広範囲な呼吸疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸
低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0009】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の一形態であり、睡眠時の
上気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられ、睡眠時の異常に小さい上気道
および舌領域における筋緊張の正常欠損、軟口蓋および後中咽頭壁の組み合わせに起因す
る。この症状により、罹患患者は典型的には30~120秒の間持続する期間に、ときに
は一晩に200~300回、呼吸を停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血
管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体
重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。米国特許第4,944,310号(Sull
ivan)を参照されたい。
【0010】
チェーンストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患
者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交
互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付け
られる。CSRは、低酸素の繰り返しに起因して有害になる可能性がある。患者によって
は、CSRに関連して睡眠から何度も目覚める者もおり、不眠が深刻化し、交感神経作用
が増加し、後負荷が増加する。米国特許第6,532,959号(Berthon-Jo
nes)を参照されたい。
【0011】
5.2.2 診断システムおよび監視システム
臨床専門家は、患者のスクリーニング、診断または監視を個人的観察に基づいて適切に
行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況があ
る。状況によっては、患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。
或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。臨床診療が多忙である場合、
臨床医は、患者管理ガイドラインの発展に遅れをとらないようにすることが困難になる場
合がある。
【0012】
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および予後のための従来のシステムであ
り、典型的には専門家臨床スタッフの適用および解釈を伴う。PSGにおいては、多様な
身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EO
G)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚セ
ンサーを人体上に配置する。しかし、これらのセンサーは、臨床設定における通常の用途
に適している場合があるものの、このようなシステムは複雑かつ高価になる可能性があり
、かつ/または、自宅で就寝しようとしている患者にとっては不快または非実際的である
場合がある。
【0013】
自宅用のより簡便なスクリーニング/診断/監視システムは、鼻カニューレ、圧力セン
サー、処理デバイス、および記録手段を含む。鼻カニューレは、中空のオープンエンドの
突起を含むデバイスである。これらの突起は、患者の呼吸との干渉を最小限にするように
、患者の鼻孔中にほとんど非侵襲的に挿入されるように構成される。これらの中空の突起
は、圧力変換器とY字型の管を介して流体連通する。圧力変換器は、患者の鼻孔の入口に
おける圧力(鼻圧力)を示すデータ信号を提供する。鼻圧力信号は形状が鼻流量信号に類
似しているため、鼻圧力は、鼻流量の申し分のないプロキシである。
【0014】
処理デバイスは、患者の呼吸を監視するために圧力変換器からの鼻圧力信号をリアルタ
イムで分析するように、構成され得る。対照的に、診断はリアルタイムで行う必要は無い
。そのため、記録手段は、圧力変換器からの鼻圧力信号を後で診断目的のためのオフライ
ン分析に用いられるように記録するように、構成される。
【0015】
鼻圧力信号の分析においては、スクリーニング/診断/監視セッション時に無呼吸およ
び呼吸低下を特定しようとし得る。無呼吸および呼吸低下の合計数を監視セッションの長
さによって除算すると、SDB重症度の指数が得られる(無呼吸‐呼吸低下指数(AHI
)として知られる)。AHIは、睡眠呼吸障害のための広範に用いられるスクリーニング
および診断ツールである。しかし、このような分析の場合、セッション時において長期に
わたって患者が眠り込んでいない場合があるため、AHIを過小評価する傾向がある。そ
の結果、このような分析から返送されたAHIに基づいて患者をスクリーニングした場合
、例えば不眠症の場合のように頻繁に発生するように、監視セッション時の睡眠が途切れ
途切れになる患者を見逃す傾向がある。
【0016】
AHIを推定するためのより高精度の方法の場合、無呼吸および呼吸低下の数を、セッ
ション時に患者が眠り込んだ時間数で除算する。このようにAHIを計算するためには、
患者が眠り込んだときを分析により検出する必要になる。睡眠/覚醒状態を鼻圧力から(
または実際には鼻圧力がプロキシである鼻流量を示す信号から)純粋に検出することは困
難なタスクであることが判明しており、その結果、AHI計算およびよってAHIに基づ
いたスクリーニング、診断および監視の精度に影響が発生する。
【0017】
よって、患者の合計睡眠時間をより高精度に推定する、向上したSDBスクリーニング
/監視/診断システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
6 本技術の簡単な説明
本技術は、向上した快適性、コスト、有効性、使いやすさおよび製造可能性のうち1つ
以上を有する呼吸疾患の監視または診断において用いられる医療デバイスの提供に向けら
れる。
【0019】
本技術の第1の態様は、呼吸疾患のスクリーニング、診断または監視のためのシステム
に関連する。
【0020】
本技術の別の態様は、呼吸疾患のスクリーニング、診断または監視において用いられる
方法に関連する。
【0021】
一形態の本技術は、監視セッション時に患者が眠り込んだ時間量をセッション時に収集
されたアクティグラフィーデータを用いて推定するように構成された方法およびシステム
を含む。この推定は、当該セッションにおける睡眠呼吸障害の重症度の指数(例えば、無
呼吸呼吸低下指数(AHI))の計算に用いられ得る。任意選択的に、この推定は、セッ
ション時に収集された呼吸流量または努力データを考慮に入れ得る。
【0022】
本発明の1つの態様によれば、監視セッション時の複数のエポックを含む患者の合計睡
眠時間を推定する方法が開示される。本方法は、セッションの各エポック時の患者の眠り
込み/覚醒状態を監視セッション時に得られた患者のアクティグラフィー信号を用いて決
定することと、各エポック時の患者の睡眠/覚醒状態から合計睡眠時間を推定することと
を含む。エポック時の患者の睡眠/覚醒状態の決定は、アクティグラフィー信号からの各
エポックにに対する活動カウントを決定することと、エポックについての活動カウントの
先行エポックについての活動カウントに対する比が第1の活動閾値より高い場合に、エポ
ック時の患者の睡眠/覚醒状態を「覚醒」として決定することとを含む。
【0023】
本発明の別の態様によれば、複数のエポックを含む監視セッション時の患者の合計睡眠
時間を推定するシステムが開示される。本システムは、3つの直交軸それぞれにおけるア
クティグラフの加速を示すアクティグラフィー信号を生成するように構成されたアクティ
グラフと、プロセッサとを含む。このプロセッサは、アクティグラフィー信号から各エポ
ックについての活動カウントを決定することと、エポックについての活動カウントと先行
エポックについての活動カウントに対する比が第1の活動閾値よりも高い場合に、各エポ
ック時の患者の眠り込み/覚醒状態を「覚醒」として決定することと、各エポック時の患
者の睡眠/覚醒状態から合計睡眠時間を推定することとを行うように、プログラムされる
【0024】
もちろん、態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/ま
たは態様の多様な1つを多様に組み合わせて、本技術のさらなる態様または下位態様を構
成してもよい。
【0025】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報
を鑑みれば明らかになる。
【0026】
7 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一例として例示する。図面中、類似の参照符号は、
以下の類似の要素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、睡眠ポリグラフ(PSG)を受けている患者を示す。
図2図2は、鼻および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含む人間の呼吸系の概要を示す。
図3図3は、本技術の一形態におけるスクリーニング/診断/監視システムのブロック図である。
図4図4は、図3のシステムの鼻カニューレを実行するために用いられ得る鼻カニューレを示す。
図5図5は、本技術の一形態において図3のシステムにおいて実行される合計睡眠時間推定アルゴリズムを実行する際に用いられ得る方法を示すフローチャートを含む。
図6図6は、本技術の別の形態において図3のシステムにおいて実行される合計睡眠時間推定アルゴリズムを実行する際に用いられ得る方法を示すフローチャートを含む。
図7図7は、図6の方法の睡眠/覚醒決定ステップを実行する際に用いられ得る方法を示すフローチャートを含む。
図8図8は、図5のアルゴリズムを用いて推定された合計睡眠時間(TST)をおよそ36回分の監視セッションにおいてスコア付けされたTST値に対してプロットして得られたグラフを含む。
図9A図9Aは、通常約90秒間にわたるノンレム睡眠呼吸時の患者の睡眠ポリグラフを示す。
図9B図9Bは、約6分間にわたる睡眠呼吸障害患者の睡眠ポリグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
8 本技術の例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり
得る特定の例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられ
る用語は、本明細書中に記載される特定の例を説明する目的のためのものであり、限定的
なものではないことも理解されるべきである。
【0029】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な例に関連
して提供される。任意の1つの例の1つ以上の特徴は、別の例または他の例の1つ以上の
特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの例
のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる例を構
成し得る。
【0030】
8.1 スクリーニング、診断、監視システム
8.1.1 睡眠ポリグラフシステム
図1は、睡眠ポリグラフ(PSG)を受けている患者1000を示す。PSGシステム
は、ヘッドボックス2000を含む。ヘッドボックス2000は、以下のセンサーからの
信号を受信および記録する:EOG電極2015、EEG電極2020、ECG電極20
25、頤下EMG電極2030、いびきセンサー2035、胸帯上の呼吸インダクタンス
プレチスモグラム(呼吸努力センサー)2040、腹帯上の呼吸インダクタンスプレチス
モグラム(呼吸努力センサー)2045、口腔鼻カニューレおよびサーミスタ2050、
フォトプレチスモグラフ(パルスオキシメータ)2055、および身体位置センサー20
60。電気信号は、額中心に位置決めされた接地電極(ISOG)2010と呼ばれる。
【0031】
8.1.2 自宅用途のシステム
図3は、特に自宅用途に適したスクリーニング/診断/監視システム3000を示すブ
ロック図である。システム3000は、呼吸センサー3010を含む。呼吸センサー30
10は、患者の呼吸を示すアナログまたはデジタル信号を生成するように、構成される。
1つの実行において、システム3000は、鼻カニューレ3020を含む。鼻カニューレ
3020は、システム3000へ接続されている際、患者の鼻圧力を示す信号を取得し、
呼吸センサー3010へ搬送するように、構成される。鼻カニューレ3020は、図4
示すように患者の鼻孔へ挿入されるように構成された2つのプロングまたはノズル302
5を含む。鼻カニューレ3020のプロング3025は、可撓性カテーテル3028へ接
続される。可撓性カテーテル3028は、鼻孔における圧力を本実行において圧力センサ
ーである呼吸センサー3010へ搬送するように、構成される。呼吸センサー3010か
ら提供される鼻圧力信号は、適切な単位変換により、患者の呼吸流量Qrを示すものとし
てとられ得る。
【0032】
システム3000は、プロセッサ3030をさらに含む。プロセッサ3030は、以下
に述べるように患者の呼吸から導出されてセンサー3020から生成される呼吸信号を処
理および/または分析するように、構成される。プロセッサ3030は、呼吸信号をメモ
リ3080と連携して処理および/または分析する。
【0033】
呼吸センサー3010は、A/D変換器3040を介してプロセッサ3030へ接続さ
れ得る。A/D変換器3040は、呼吸センサー3010によって生成されたアナログ信
号をデジタルデータのストリームへ変換する。あるいは、呼吸センサー3010がデジタ
ル信号を生成するように構成されている場合、A/D変換器3040は省略してよい。
【0034】
システム3000は、図2のPSGシステム中の呼吸インダクタンスプレチスモグラム
(呼吸努力センサー)2040と同様の呼吸努力センサー3050を胸または腹帯305
5上にさらに含み得る。呼吸努力センサー3050は、所定のサンプリング周波数(例え
ば、10Hz)と共に、(デジタルセンサー3050の場合は)直接的にまたは(アナロ
グセンサー3050の場合は)A/D変換器を介してプロセッサ3030へ接続される。
プロセッサ3030は、呼吸努力センサー3050から生成された呼吸努力信号の処理お
よび/または分析を以下のように行うように、さらに構成され得る。
【0035】
システム3000は、アクティグラフ3060をさらに含み得る。アクティグラフは、
X、YおよびZとしてラベル付けされかつアクティグラフの軸に相対して規定された3つ
の直交軸それぞれにおけるアクティグラフの加速を示す信号を生成するように構成された
加速度計である。これら3つの信号を、アクティグラフィー信号と総称する。アクティグ
ラフィーは、多様なシナリオにおける睡眠/覚醒決定に対する入力として研究者によって
広範に用いられており、最も多い用途は、不眠/眠り込み状態の誤解釈および概日リズム
障害の評価である。アクティグラフィーは電気生理学を用いて取得されるのではなく、動
きの定量化によって取得されるため、患者が睡眠時に頻繁に寝返りをうつかまたは覚醒時
に動きが少ない場合、PSGおよびアクティグラフィーから導出された睡眠/覚醒状態が
一致しない状況があり得る。アクティグラフィーの分析のためのいくつかのアルゴリズム
が開発され、以下のような異なる状況において適用されている;これらのアルゴリズムか
ら得られた睡眠/覚醒の結果と、至適基準のPSGを用いて得られたものとの間の一致が
概して良好である状況。
【0036】
アクティグラフ3060は、患者の身体上の便利な位置(例えば、患者の胴体)上に取
り付けられるように、構成される。アクティグラフ3060からプロセッサ3030への
接続は、所定のサンプリング周波数(例えば、10Hz)と共に、(デジタルアクティグ
ラフ3060の場合は)直接的に行われるかまたは(アナログアクティグラフ3060の
場合は)A/D変換器を介して行われる。アクティグラフ3060(デジタルの場合)ま
たはA/D変換器のいずれかは、特定のサンプリング周波数においてサンプルを含むアク
ティグラフィーデータまたはアクティグラフィー信号を生成すると言われる。プロセッサ
3030は、アクティグラフ3060によって生成されたアクティグラフィー信号の処理
および/または分析を以下に述べるように行うように、さらに構成され得る。
【0037】
システム3000は、システム3000のその他の構成要素のための電力を生成するよ
うに構成された電源3090(例えば、電池)をさらに含み得る。本システムは、A/C
コンセントを介して利用可能になるような他の電源も用い得る。
【0038】
上記したように、信号処理/分析は、プロセッサ3030によって実行され得る。プロ
セッサは、監視/処理/分析/診断または本明細書中に記載の他の方法(例えばSDBに
関連するもの)のうちいずれかを実行するように具体的にプログラムされたプロセッサを
含み得る。システム3000のこのような実行において、処理は、メモリ3080中に保
存されたコンピュータプログラムとして具現化され得る。このようなコンピュータプログ
ラムは、本明細書中に開示されるアルゴリズムまたは方法を実行するための命令および/
またはデータを含み得る。これらのプログラムは、メモリ位置(例えば、ROM)中に保
存され得、その後実行時間中にRAM中に必要なだけロードされ得る。プロセッサは、(
例えば、記憶位置からダウンロードされたかまたはハードウェア中に焼き付けられたコー
ドにより)本明細書中に記載のアルゴリズムおよび方法を実行するように適切にプログラ
ムされたデジタル信号プロセッサまたは特定用途向け集積回路も含み得る。
【0039】
信号処理/分析を実行するプロセッサは、リモートコンピューティングデバイス(図示
せず)の一部を形成してもよい。1つのこのような実行において、プロセッサ3030は
、多様なセンサー(例えば、呼吸センサー3010)から生成された信号をリモートコン
ピューティングデバイス(「リモートプロセッサ」)と関連付けられたプロセッサへワイ
ヤレスにまたは有線接続によって通信インターフェース3070を介してリレーするよう
に構成された「ローカルプロセッサ」であり得る。このような実行において、システム3
000は、BlueToothまたはWiFiを介してリモートコンピューティングデバ
イス(例えば、ラップトップ、携帯電話、タブレットまたはより一般的には充分な処理能
力を持つ任意のコンピューティングデバイス)と通信し得る。別のこのような実行におい
て、プロセッサ3030は、多様な信号をメモリ3080中に保存し得る。メモリ308
0は、システム3000から取り外し可能であり得る(例えば、メモリカードまたは外部
ハードドライブ)。このような実行において、取り外されたメモリ3080は、保存され
た信号をそのプロセッサ(リモートプロセッサ)による処理/分析の対象としてメモリ3
080から取り出すように構成されたリモートコンピューティングデバイスのインターフ
ェースに挿入され得る。そのため、プロセッサが本明細書中に記載のアルゴリズムまたは
方法を行う際に用いるアクティグラフデータまたは信号を保存するメモリは、命令の保存
に用いられるプログラムを保存するメモリと異なり得、あるいは、いくつかの実行におい
て同じメモリであってもよい。
【0040】
信号処理/分析は、一部の信号処理/分析がローカルプロセッサ3030によって実行
されるように、ローカルプロセッサ3030とリモートコンピューティングデバイスのプ
ロセッサとの間において共有され得る。その後、ローカルプロセッサ3030は、残りの
信号処理/分析をリモートコンピューティングデバイスのプロセッサが実行することがで
きるように、中間分析結果をリモートコンピューティングデバイスへ送信する。
【0041】
システム3000呼吸センサー3010、プロセッサ3030、A/D変換器3040
、通信インターフェース3070およびメモリ3080は、ハウジング3095に収納さ
れる。ハウジング3095は好適には、患者が容易に携帯および使用できるように、手持
ちサイズまたはポケットサイズである。
【0042】
8.1.3 信号処理/分析
以下において、システム3000のスクリーニング/診断/監視機能の一部として多様
な信号に対して行われる信号処理/分析の多様な態様について説明する。
【0043】
8.1.3.1 合計睡眠時間の推定
本開示のいくつかの態様によれば、合計睡眠時間の推定方法において、監視セッション
時において患者がベッドにいるときに睡眠と覚醒状態期間とを区別することが可能な活動
ベースの分類子が用いられ得る。合計睡眠時間の推定方法は、教師あり学習型方法であり
得、訓練データセットを用いてパラメータを「学習する」。1つの実行において、合計睡
眠時間の推定方法は、監視セッション時にアクティグラフ3060から生成されたアクテ
ィグラフィー信号を構成する3軸加速信号をとり、これらを適切にフィルタリングし、監
視セッションを分割してエポックとする。フィルタリングされたアクティグラフィー信号
からの各エポックについて、身体活動のカウントを推定する。各エポックは、活動カウン
トに基づいて二元的状態(「睡眠」または「覚醒」)に分類される。この分類は、事前に
「スコア付けされた」訓練データに対するクロス検証を介して最適化され得る活動閾値を
用いる。
【0044】
図5は、本技術の一形態による一例または合計睡眠時間の推定方法500を示すフロー
チャートを含む。方法500は、例えば図3に示すローカルプロセッサ3030によって
またはリモートプロセッサによって実行してもよいし、あるいは、上記したようなローカ
ルプロセッサ3030およびリモートプロセッサの組み合わせによって実行してもよい。
【0045】
方法5000は、ステップ5010から開始する。ステップ5010において、アクテ
ィグラフィー信号を事前処理する。アクティグラフィー信号を事前処理することは、例え
ば、加速度計のベースラインの任意のドリフトを除去することを含み得る。いくつかの実
行によれば、事前処理は、アクティグラフィー信号をトレンド除去することを含み得る。
その後、ステップ5020は、事前処理されたアクティグラフィー信号をフィルタリング
する。ステップ5010~5030はそれぞれ、アクティグラフィー信号の3つの「チャ
ンネル」(すなわち、3つの軸(X、Y、およびZ)それぞれの加速値)に対して独立的
に実行される。
【0046】
事前処理後、その結果得られた事前処理された信号は、5020において示すようにフ
ィルタリングされ得る。フィルタリングは、例えば、全体的な身体の動きと無関係のアク
ティグラフィー信号の構成要素を低減させるかまたは除去することを含み得る。1つの実
行において、ステップ5020は、トレンド除去されたアクティグラフィー信号を通常の
全体的身体動きの範囲に対応する範囲0.5Hz~4.5Hz内においてバンドパスフィ
ルタリングすることを含む。ステップ5020は、フィルタリングされたアクティグラフ
ィー信号をその95番目のパーセンタイル値で除算する大きさ正規化も含み得る。
【0047】
次のステップ5030において、各チャンネルを分割して、所定の持続期間のエポック
とする。1つの実行において、各エポックの持続期間は30秒間であり、各エポックは、
ぎりぎりの場合を最小限にするために、先行する続きのエポックと10秒間だけ重複する
。しかし、他のエポック持続期間および重複範囲を選択してもよい点に留意されたい。
【0048】
次のステップ5040において、各エポックnについて活動カウントAを決定する。
1つの実行において、ステップ5040は、(例えば、絶対値をとり)3つのフィルタリ
ングされたアクティグラフィーチャンネルを修正し(例えば、絶対値をとり)、3つの修
正されたチャンネルを合計して、単一のアクティグラフィー信号を取得し、各エポックに
ついての活動カウントAをエポックについて合計された信号の平方平均(RMS値また
は平均平方根)として計算する。
【0049】
次に、方法5000は、ステップ5050に進む。ステップ5050は、その活動カウ
ントAおよびその先行エポックの活動カウント(An-1)に基づいて、各エポックn
の眠り込む/覚醒状態を決定する。1つの実行において、AのAn-1に対する比が第
1の活動閾値T1を超える場合、エポックnの睡眠/覚醒状態は「覚醒」として決定され
、そうではない場合、「睡眠」として決定される。このような実行において、活動カウン
トが先行エポック以降に絶対レベルに関係無く実質的に増加していない場合、患者は眠り
込んでいると決定される。別の実行において、活動カウントAが第2の活動閾値T
りも高い場合、エポックnの睡眠/覚醒状態は「覚醒」として決定され、そうではない場
合、「睡眠」として決定される。さらに別の実行において、これらの基準のうちいずれか
が満たされない場合、エポックnの睡眠/覚醒状態は「覚醒」として決定され、そうでは
ない場合、「睡眠」として決定される。
【0050】
活動閾値TおよびTは、何らかの他の手段により(例えば、同期PSGデータを手
動で用いて)「スコア付けされた」先行アクティグラフィーデータ(すなわち、決定され
た睡眠/覚醒状態)から決定され得る。1つの実行において、活動閾値の最適化は、6重
のクロス検証によって実行され得、これにより、方法5000の出力とスコア付けされた
アクティグラフィーデータとの間の相互相関係数が最大化される。典型的なスコア付けさ
れたアクティグラフィーデータに対する1つのこのような実行において、第1の活動閾値
の最適値は1.7であることが判明し、第2の活動閾値Tの最適値は、スコア付け
されたデータセットについて活動カウントの94番目のパーセンタイルであることが判明
した。しかし、[1.3、2.0]の範囲の第1の活動閾値の値と、65番目および98
番目のパーセンタイル間の範囲の第2の活動閾値とは、合理的な有効性と共に用いられ得
る。
【0051】
最終ステップ5060において、各エポックの決定された睡眠/覚醒状態から合計睡眠
時間(TST)を推定する。これらのエポックは重複しているため、ステップ5060は
、睡眠として決定されたエポックの数を単純にカウントしたり、各エポックの持続期間で
乗算するのではない。すなわち、ステップ5060は、睡眠/覚醒状態が「睡眠」として
決定されたエポックの一部として決定されているアクティグラフィー信号サンプルに対応
する時刻数をカウントし、アクティグラフ3060のサンプリング周波数またはそのA/
D変換器(これらのうち、アクティグラフィー信号サンプルを信号処理/分析へ供給する
いずれか)によって除算する。その結果、TST値が秒単位で得られる。
【0052】
合計睡眠時間の推定方法の別の実行は、アクティグラフ3060からのアクティグラフ
ィー信号に加えて、呼吸センサー3010からの呼吸流量信号または呼吸努力センサー3
050からの呼吸努力信号を用いる。
【0053】
図6は、別の実行による合計睡眠時間の推定方法の実行に用いられ得る方法6000を
示すフローチャートを含む。方法6000のステップ6010~6040は、方法500
0における対応するステップ5010~5040と同じである。
【0054】
ステップ6050においては、ステップ5050と同様に、各エポックnの眠り込み/
覚醒状態を決定する。ステップ6050においては、ステップ5050と同様に、エポッ
クの活動カウントAおよびその先行エポックの活動カウント(An-1)を用いる。ス
テップ5050と対照的に、ステップ6050は、呼吸センサー3010からの呼吸流量
信号または呼吸努力センサー3050からの呼吸努力信号のいずれかをさらに考慮に入れ
る。このさらなる信号から、(特にエポック時に患者が覚醒状態ではあり得るが相対的に
動きが少ない時の)患者の状態についてのさらなる識見が得られる。
【0055】
図7は、現在のエポックnについて方法6000の合計睡眠時間推定ステップ6050
の実行に用いられ得る方法7000を示すフローチャートを含む。方法7000について
、呼吸センサー3010からの呼吸流量信号の側面において述べるが、呼吸流量信号の代
替として用いられる呼吸努力センサー3050からの呼吸努力信号と共に方法7000を
実行することもできることが理解されるべきである。
【0056】
方法7000は、ステップ7010から開始する。ステップ7010において、ステッ
プ5050と同様に、現在のエポックの活動カウントAと先行エポックの活動カウント
n-1との比(A/An-1)が第1の活動閾値Tを超えるかまたは現在のエポッ
クの活動カウントAが第2の活動閾値Tを超えるかをチェックする。現在のエポック
の活動カウントAと先行エポックの活動カウントAn-1との比(A/An-1)が
第1の活動閾値Tを超えるかまたは現在のエポックの活動カウントAが第2の活動閾
値Tを超える場合(「Y」)、ステップ7020において、現在のエポックnの睡眠/
覚醒状態を「覚醒」として決定する。ステップ5050と同様の同じ活動閾値Tおよび
が、ステップ7010において用いられ得る。
【0057】
しかし、これらの状態のうちいずれも成立しない(「N」)場合、患者の動きは相対的
に少ないものの、方法7000は、さらなるチェックを行った後、睡眠/覚醒状態を決定
する。詳細には、ステップ7030において、現在のエポック時における呼吸流量信号の
品質が不十分であるかを決定する。そうではない(「N」)場合、ステップ7040にお
いて、現在のエポックの睡眠/覚醒状態を「不明」として決定する。そうではない場合(
「Y」)、ステップ7050において、現在のエポック時の呼吸流量信号が安定している
かを決定する。安定性を試験するため、ステップ7050は、以下の呼吸-流量-関連変
数のうち1つ以上のエポックに対する変動性(例えば、標準偏差)が閾値を下回るかを試
験する:
・一回換気量;
・吸気時間;
・呼吸速度;
・吸気ピーク流量;
・呼気ピーク流量位置;
・最後の呼吸からの経過時間。
【0058】
現在のエポック時における呼吸流量信号が安定している(「Y」)場合、ステップ70
60において、現在のエポックの睡眠/覚醒状態を「睡眠」として決定する。そうではな
い場合(「N」)、ステップ7070において、呼吸流量信号が現在のエポック時にSD
B発症が発生した指示を含むかを決定する。「SDB発症」とは、本文脈において、睡眠
呼吸障害に関連する呼吸発症を指し、いびき、流量制限、呼吸努力に関連する覚醒、閉塞
性呼吸低下、および閉塞性無呼吸を含み得る。これらの多様な種類のSDB発症を検出す
る方法について、以下に説明する。そうである場合(「Y」)、ステップ7060におい
て、現在のエポックの睡眠/覚醒状態を「睡眠」として決定する。そうではない場合、ス
テップ7080において、現在のエポックの睡眠/覚醒状態を「覚醒」として決定する。
【0059】
方法6000の最終ステップ6060において、方法5000のステップ5060と同
様に、各エポックの睡眠/覚醒決定からの合計睡眠時間(TST)を推定する。
【0060】
8.1.3.2 無呼吸/呼吸低下の検出
無呼吸/呼吸低下検出アルゴリズムは、呼吸センサー3010からの呼吸流量を示す信
号を入力として受信し、無呼吸または呼吸低下が検出されたかを示すフラッグを出力とし
て提供する。
【0061】
1つの形態において、無呼吸とは、呼吸流量の関数が所定の期間にわたって流量閾値を
下回ったときに検出されるものとされる。この関数は、ピーク流量、比較的短期間の平均
流量、または比較的短期間の平均およびピーク流量の流量中間値を決定し得る(例えば、
RMS流量)。流量閾値は、流量の比較的長期間の測定値であり得る。
【0062】
1つの形態において、呼吸低下とは、呼吸流量の関数が所定の期間にわたって第2の流
量閾値を下回ったときに検出されるものとする。この関数は、ピーク流量、比較的短期間
の平均流量、または比較的短期間の平均およびピーク流量の流量中間値を決定し得る(例
えば、RMS流量)。第2の流量閾値は、流量の比較的長期の測定値であり得る。第2の
流量閾値は、無呼吸の検出に用いられる流量閾値よりも高い。
【0063】
8.1.3.3 いびきの検出
1つの形態において、いびき検出アルゴリズムは、呼吸センサー3010からの呼吸流
量信号を入力として受信し、いびきが存在している範囲の測定値を出力として提供する。
【0064】
いびき検出アルゴリズムは、流量信号の強度を30~300Hzの範囲内において決定
するステップを含み得る。さらに、いびき決定アルゴリズムは、バックグラウンドノイズ
(例えば、送風器からのシステム中の気流音)を低減するために呼吸流量信号をフィルタ
リングするステップを含み得る。
【0065】
フィルタリングされた呼吸流量信号の強度が閾値を超える場合いびきが存在するとみな
され得る。
【0066】
8.1.3.4 気道開通性の決定
開通性とは、気道が開口している程度または気道が開口している範囲である。気道開通
性とは、開口である。気道開通性の定量化は、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞)を
示す値(0)と共に行われ得る。無呼吸または呼吸低下が開通性気道と併発した場合、開
放性無呼吸または呼吸低下とみなされ、無呼吸または呼吸低下が気道閉鎖と併発した場合
、閉塞性無呼吸または呼吸低下とみなされる。
【0067】
1つの形態において、気道開通性決定アルゴリズムは、呼吸流量信号を入力として受信
し、信号の出力を約0.75Hz~約3Hzの周波数範囲内において決定する。この周波
数範囲内におけるピークの存在は、気道開放を示すものとしてみなされる。ピークの不在
は、気道閉鎖の指示とみなされる。
【0068】
1つの形態において、気道開通性決定アルゴリズムは、呼吸流量信号を入力として受信
し、心臓発生信号の存在または不在を決定する。心臓発生信号の不在は、気道閉鎖の指示
としてみなされる。
【0069】
8.1.3.5 流量制限の検出
流量制限は、米国仮特許出願第62/043079号(出願日:2014年8月28日
、ResMed Limited、タイトル:「Diagnosis and trea
tment of Respiratory Disorders」)に記載のように、
呼吸流量信号から検出され得る。
【0070】
8.1.3.6 RERAの検出
RERAは、PCT特許出願第PCT/AU2015/050056号(出願日:20
15年2月13日、ResMed Limited、タイトル:「Diagnosis
and treatment of Respiratory Disorders」)
に記載のように、呼吸流量信号から検出され得る。
【0071】
8.1.3.7 AHIの計算
無呼吸/呼吸低下指数(AHI)は、以下のように計算され得る。
【数1】
【0072】
そのため、AHIは、睡眠の1時間あたりに発症する(かまたは検出される)無呼吸/
呼吸低下発症の数を示す。従来、AHIは、人間の睡眠呼吸障害の重症度を示すものとし
てみなされている。その結果、治療決定は、システム3000によって計算されるAHI
値に基づき得る。
【0073】
8.1.3.8 スクリーニング/診断/監視
計算されたAHIは、スクリーニングセッション時のAHIが特定の閾値を超える患者
をさらに注目できるようシグナルアウトすることにより、スクリーニングツールとして用
いられ得る。
【0074】
AHIは、患者を診断すること(すなわち、患者を診断セッション時に計算されたその
AHI値に応じてカテゴリーに入れることにより、患者をそのSDBの重症度によってカ
テゴリー分けすること)のためにも用いられ得る。
【0075】
AHIを用いたSDB治療を受けている患者を監視するには、各治療セッション時にお
けるそのAHIを計算することと、SDBの悪化(すなわち、AHIの増加)を報告する
こととが必要になり得る。治療のパラメータは、AHIに応じても変更され得る。
【0076】
8.1.4 例示的結果
睡眠研究において、手首に取り付けられたアクティグラフ(Actiwatch(登録
商標)、Philips Respironicsから入手可能)からの「スコア付けさ
れた」アクティグラフィーデータを、システム3000からのアクティグラフィーデータ
の各患者の胴体上に配置されたアクティグラフ3060と並行して記録した。スコア付け
されたデータは、合計で900万個を超えるエポックを含む29人の異なる患者の36個
の監視セッションからなっていた。下記の表1は、システム3000によって記録された
アクティグラフィーデータへ適用された上記したアルゴリズム5000によって決定され
た睡眠/覚醒状態(すなわち、呼吸流量または努力データ無しのもの)と、並行して記録
されたアクティグラフィーデータのスコア付けされた睡眠/覚醒状態との間の混同行列を
含む。
【表1】
【0077】
その結果得られた感度および特異性を表2に示す。
【表2】
【0078】
図8は、36監視セッションにおいてスコア付けされたTST値に対してプロットされ
たアクティグラフィーデータに対してアルゴリズム5000を用いて推定されたTSTの
グラフ8000を含む。グラフ8000は、推定されたTSTと、スコア付けされたTS
Tとの間にほぼ線形の相関関係を示す。全体的な相関係数は0.9914であった。表3
は、36セッションにわたって推定およびスコア付けされたTST値間の統計的な比較デ
ータを示す。
【表3】
【0079】
表3によれば、TSTの場合、スコア付けされたデータと比較すると、アルゴリズム5
000によって若干過大評価されていた。その原因としては、2つのアクティグラフを身
体の異なる部分(手首および胴体)に配置したためであり得る。1つの過大評価シナリオ
としては、例えば、患者が読書をしていたとき、患者の胴体はほとんど動きが無い一方患
者の手首はページをめくるなどの動きがあった場合があり得る。
【0080】
8.2 呼吸波形
図9Aは、患者のノンレム睡眠呼吸時の睡眠ポリグラフを示す。その際、通常は、約9
0秒間の期間において、呼吸が約34回行われる。上側チャンネルは、酸素飽和度測定(
SpO)を示し、スケールは、垂直方向における90~99%の範囲の飽和を有する。
図示の期間全体において、患者は、約95%の飽和を維持した。第2のチャンネルは、定
量的呼吸気流を示し、スケールは、垂直方向における-1~+1LPSの範囲であり、呼
気は正である。胸部および腹部の動きを第3および第4のチャンネル中に示す。
【0081】
図9Bは、SDB患者の約6分間の期間にわたる睡眠ポリグラフを示す。上側から下側
において、6分間の水平方向スパンの間隔をもつ11個の信号チャンネルがある。上側の
2つのチャンネルはどちらとも、異なる頭皮位置からのEEG(脳波図)である。第2の
EEGの周期的スパイクは、皮質覚醒および関連活動を示す。下方の第3のチャンネルは
、頤下EMG(筋電図)である。覚醒時間周囲における活動の増加は、頤舌筋神経の動員
を示す。第4および第5のチャンネルは、EOG(電子頤舌筋)である。第6のチャンネ
ルは、心電図である。第7のチャンネルは、不飽和化を約90%から70%未満まで繰り
返したときのパルス酸素飽和度測定(SpO)を示す。第8のチャンネルは、差圧力変
換器へ接続された鼻カニューレを用いた呼吸気流である。25~35秒間の無呼吸の反復
と、回復呼吸の10~15秒の突発と共に、EEG覚醒およびEMG活動増加が発生して
いる。第9のチャンネルは、胸の動きを示し、第10のチャンネルは、腹部の動きを示す
。腹部は、無呼吸の長さにわたって次第に大きくなる動きを示し、その結果覚醒に繋がる
。両方とも、覚醒時において回復過呼吸時における全体的身体動きに起因して不揃いにな
っている。そのため、無呼吸は閉塞になり、状態は深刻である。1番下側のチャンネルは
姿勢であり、本例において変化は示していない。
【0082】
8.3 用語
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が
適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0083】
8.3.1 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態におい
て、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味
し得る。
【0084】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システム
または患者の外部および(ii)治療システムまたは患者の直接周囲を意味するものとし
てとられるべきである。
【0085】
呼吸圧力治療(RPT):典型的には大気に対して正である処置圧力において気道への
入口への空気供給の付与。
【0086】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:処置圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定で
ある呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼気時におい
て若干上昇し、吸入時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の
異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の指示の検出に応
答して増加され、部分的な上気道閉塞の指示の不在時において低減される)。
【0087】
患者:呼吸疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0088】
自動気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の指示の存在または不在に応じて、例えば
呼吸間に最小限界と最大限界との間で処置圧力を自動的に調節することが可能なCPAP
療法。
【0089】
8.3.2 呼吸サイクルの態様
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば1
0秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患
者の努力にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生す
ると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下また
は呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合無呼吸とは
、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0090】
呼吸数:通常は1分当たりの呼吸回数で測定される、患者の自発呼吸数。
【0091】
デューティサイクル:吸入時間Tiの合計呼吸時間Ttotに対する比。
【0092】
努力(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動き
を指すと言われる。
【0093】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流の開始から吸気流の開始までの期間。
【0094】
流量制限:流量制限は、患者による努力の増大が流量の対応する増大を引き起こさない
患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流量制限
が発生した場合、当該流量制限は吸気流量制限と称することができる。呼吸サイクルの呼
気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は呼気流量制限と称することがで
きる。
【0095】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量および換気量
は、単位時間あたりに同じ規模の量または質量を持つが、流量は、かなり短時間にわたっ
て測定される。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大
きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル
量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。符号付きの量として言及された
場合、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに正であり得るため、患
者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RTデバイスから
送出される空気の流量である。流量には、符号Qが付与される。「流量」を簡略的に「流
れ」と呼ぶ場合もある。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である
。通気孔流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空
気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムからの漏洩の流量であ
る。呼吸流量Qrは、患者の呼吸系中に受容される空気の流量である。
【0096】
呼吸低下:好適には、呼吸低下は、流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形
態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が
発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸
低下が発生したと言われる。成人の一形態において以下のうちいずれかが発生した場合、
呼吸低下と見なされ得る:
(i)患者呼吸の30%の低下が少なくとも10秒+関連する4%の脱飽和、または、
(ii)患者呼吸の(50%未満の)低下が少なくとも10秒間継続し、関連して脱飽和
が少なくとも3%であるかまたは覚醒が発生する。
【0097】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0098】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から吸気流れの開始までの期間が、呼吸サイ
クルの吸気部分としてとられる。
【0099】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。開通気道は開
いている。気道開通性は、以下の値のうち1つによって定量化され得る(1)開通してい
る、ゼロ(0)の値、閉じているとき(閉塞されているとき)。
【0100】
呼気終末陽圧(PEEP):肺中の大気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0101】
ピーク流量(Qピーク):呼吸流れ波形の吸気部分における流量最大値。
【0102】
呼吸流量、空気流量、患者空気流量、呼吸空気流量(Qr):これらの同義の用語は、
RPTデバイスの呼吸空気流量の推定を指すものとして理解され得、通常リットル/分で
表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流れ」または「真の呼吸気流」と対照的
に用いられる。
【0103】
1回換気量(Vt):余分な努力をせずに通常の呼吸時に吸い込まれたかまたは吐き出
された空気の量である。
【0104】
(吸入)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0105】
(呼気)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0106】
(合計)時間(Ttot):1つの呼吸流量波形の吸気部分の開始と次の呼吸流量波形
の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0107】
典型的な直近換気:所定の時間スケールにわたる直近値が密集する傾向となる換気値(
すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0108】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。上側気
道上の圧力差の増加(スターリングレジスタ挙動)と共に流れレベルがわずかに増加する
かまたは低下し得る流量制限の状態と関連し得る。
【0109】
8.4 他の注意事項
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何
者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイ
ルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的
については全ての著作権を保持する。
【0110】
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の
単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値ま
たは介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立
的に含まれ得るこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超え
た場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む
場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0111】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として実行される場合、他
に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する
範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であることが理解され
る。
【0112】
他に明記無き限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分
野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法お
よび材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験にお
いて用いることが可能であるが、限られた数の例示的方法および材料が本明細書中に記載
される。
【0113】
特定の材料が構成要素の構築に用いられるものとして記載されているが、特性が類似す
る明白な代替的材料が代替物として用いられ得る。さらに、それとは反対に記載無き限り
、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解され
るため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0114】
本明細書中に用いられるように、添付の特許請求の範囲において、単数形である「a」
、「an」および「the」は、文脈から明らかにならない限り、その複数の均等物を含
む点に留意されたい。
【0115】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/
または材料の開示および記載のために参考のために援用される。本明細書中に記載の公開
文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中
のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していないもの
であると認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際
の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0116】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要
素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の
要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと
共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0117】
詳細な説明において用いられる見出しは、ひとえに読者の便宜のためのものであり、本
開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべ
きではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解
釈において用いられるべきではない。
【0118】
本明細書中の技術について、特定の実施形態を参照して述べてきたが、これらの実施形
態は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。い
くつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る
。例えば、「第1の」および「第2の」という用語が用いられ得るが、他に明記無き限り
、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために
用いられ得る。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順
序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このよう
な順序が変更可能でありかつ/またはその態様を同時にまたはさらに同期的に行うことが
可能であることを認識する。
【0119】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示の実施形態において多数の変更例が可能であり、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1~18の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
複数のエポックを含む監視セッション時の患者の合計睡眠時間を推定する方法であって、
前記患者の前記監視セッション時に得られたアクティグラフィー信号を用いて前記セッションの各エポック時の前記患者の眠り込み/覚醒状態を決定することと、
各エポック時の前記患者の前記睡眠/覚醒状態から前記合計睡眠時間を推定することと、を含み、
エポック時に前記患者の前記睡眠/覚醒状態を決定することは、
各エポックについての活動カウントを前記アクティグラフィー信号から決定することと、
前記エポックについての前記活動カウントの先行エポックについての前記活動カウントに対する比が第1の活動閾値よりも高い場合、前記エポック時の前記患者の前記睡眠/覚醒状態を「覚醒」と決定することと
を含む、方法。
(請求項2)
エポック時に前記患者の前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記エポックの前記活動カウントが第2の活動閾値よりも高い場合、前記睡眠/覚醒状態を「覚醒」と決定することをさらに含む、請求項1の方法。
(請求項3)
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記患者の呼吸流量信号にさらに依存する、請求項1の方法。
(請求項4)
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記エポック時の前記呼吸流量信号が安定している場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することをさらに含む、請求項3の方法。
(請求項5)
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記呼吸流量信号が前記エポック時にSDB発症が発生した指示を含む場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することをさらに含む、請求項3の方法。
(請求項6)
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記患者の呼吸努力信号にさらに依存する、請求項1の方法。
(請求項7)
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記エポック時に前記呼吸努力信号が安定している場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することをさらに含む、請求項6の方法。
(請求項8)
前記睡眠/覚醒状態を決定することは、前記呼吸努力信号が前記エポック時にSDB発症が発生した指示を含む場合、前記睡眠/覚醒状態を「睡眠」と決定することさらに含む、請求項6の方法。
(請求項9)
前記SDB発症は、いびき、流量制限、呼吸努力に関連する覚醒、閉塞性呼吸低下、および閉塞性無呼吸のうち1つを含む、請求項5および8のうちいずれか1つの方法。
(請求項10)
前記患者の睡眠呼吸障害の重症度の指数を前記推定された合計睡眠時間から計算することをさらに含む、請求項1~9のうちいずれか1つに記載の方法。
(請求項11)
前記コンピューティング前記指数は、
前記セッション時に無呼吸および呼吸低下を検出することと、
前記セッション時の検出された無呼吸および呼吸低下の数を前記推定された合計睡眠時間で除算することと
を含む、請求項10に記載方法。
(請求項12)
前記エポックに対して活動カウントを決定することは、
前記アクティグラフィー信号の各チャンネルを修正することと、
前記修正されたチャンネルを合計して、単一のアクティグラフィー信号を得ることと、
前記エポックに対して前記単一のアクティグラフィー信号の平均平方根値を計算することと
を含む、請求項1~11のうちいずれか1つに記載の方法。
(請求項13)
複数のエポックを含む監視セッション時の患者の合計睡眠時間を推定するシステムであって、
3つの直交軸それぞれにおける前記アクティグラフの加速を示すアクティグラフィー信号を生成するように構成されたアクティグラフと、
プロセッサであって、
前記アクティグラフィー信号から各エポックについての活動カウントを決定することと、
前記エポックについての前記活動カウントの先行エポックについての前記活動カウントに対する比が第1の活動閾値よりも高い場合、各エポック時の前記患者の眠り込み/覚醒状態を「覚醒」と決定することと、
各エポック時の前記患者の前記睡眠/覚醒状態から前記合計睡眠時間を推定することと、を行うようにプログラムされた、プロセッサと
を含む、システム。
(請求項14)
前記患者の呼吸を示す信号を生成するように構成された呼吸センサーをさらに含み、前記睡眠/覚醒状態の決定は、前記生成された信号にさらに依存する、請求項13に記載のシステム。
(請求項15)
前記患者の呼吸努力を示す信号を生成するように構成された呼吸努力センサーをさらに含み、前記睡眠/覚醒状態の決定は、前記生成された呼吸努力信号にさらに依存する、請求項13に記載のシステム。
(請求項16)
前記プロセッサは、リモートコンピューティングデバイスの一部を形成する、請求項13に記載のシステム。
(請求項17)
通信インターフェースと、
前記アクティグラフィー信号を、前記通信インターフェースを介して前記リモートコンピューティングデバイスの前記プロセッサへリレーするように構成されたローカルプロセッサと
をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
(請求項18)
前記アクティグラフィー信号を保存するように構成された取り外し可能なメモリをさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【符号の説明】
【0120】
8.5 参照符号のリスト
患者 1000
ヘッドボックス 2000
接地電極 2010
EOG電極 2015
EEG電極 2020
ECG電極 2025
頤下EMG電極 2030
いびきセンサー 2035
呼吸インダクタンスプレチスモグラム 2040
呼吸インダクタンスプレチスモグラム 2045
口腔鼻カニューレ 2050
フォトプレチスモグラフ 2055
身体位置センサー 2060
スクリーニング/診断/監視システム 3000
呼吸センサー 3010
鼻カニューレ 3020
プロング 3025
可撓性カテーテル 3028
プロセッサ 3030
A/D変換器 3040
呼吸努力センサー 3050
腹帯 3055
アクティグラフ 3060
通信インターフェース 3070
メモリ 3080
エネルギー源 3090
ハウジング 3095
方法 5000
ステップ 5010
ステップ 5020
ステップ 5030
ステップ 5040
ステップ 5050
ステップ 5060
方法 6000
ステップ 6010
ステップ 6050
ステップ 6050
ステップ 6060
方法 7000
ステップ 7010
ステップ 7020
ステップ 7030
ステップ 7040
ステップ 7050
ステップ 7060
ステップ 7070
ステップ 7080
グラフ 8000
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B