(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】時計用の表示装置及びこのような装置を備えた時計
(51)【国際特許分類】
G04F 7/06 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G04F7/06 A
(21)【出願番号】P 2021511652
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 IB2019057249
(87)【国際公開番号】W WO2020044258
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】クリュトリ アントニー
(72)【発明者】
【氏名】デホン ニコラス
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257480(US,A1)
【文献】特開2009-150891(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公開第00706208(CH,A3)
【文献】欧州特許出願公開第01024416(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 7/00-7/10
G04B 19/02
G04B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンティングホイール(125;225a、225b;325;425)と、前記カウンティングホイールの周期的な始動、停止及びリセットを可能にするように構成された手動制御機構(25、135;235;335;435)とを備えた時計(1)用の表示装置であって、前記表示装置は、指示部材(15、17;115;215、217;315;415)と、前記指示部材を前記カウンティングホイールの停止後に読み取り位置に移動させることを可能にする手段とを備え、前記読み取り位置は、前記カウンティングホイールの位置によって決定され、
前記表示装置は、前記カウンティングホイールがリセットされているときに前記指示部材を第1の所定位置(0)に移動させ、前記カウンティングホイールが始動しているときに、前記指示部材を前記第1の所定位置とは異なる第2の所定位置(始動)に移動させる手段を備える、
ことを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
前記指示部材(15、17;115;215、217;315;415)を前記カウンティングホイールの停止後に前記読み取り位置に移動させることを可能にする手段は、前記カウンティングホイール(125;225a、225b;325;425)が停止しているときに、前記指示部材を自動的に前記読み取り位置に移動させるように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記指示部材(15、17;115;215、217;315;415)は、レトログラード指示部材である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記指示部材(15、17;115;215、217;315;415)を前記読み取り位置に移動させることを可能にする前記手段は、スネイル(125;225a、225b;325;425)と、前記スネイルの周縁と協働するように構成されたフィーラースピンドル(131;231a、231b;331;431)とを含む、
ことを特徴とする、請求項1、2及び3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記指示部材(15、17;115;215、217;315;415)を前記読み取り位置に移動させることを可能にする前記手段は、前記指示部材に運動学的に接続されてその駆動を可能にするピニオン(123;223a、223b;323;423)を含む、
ことを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記指示部材(15、17;115;215、217;315;415)は、前記ピニオン(123;223a、223b;323;423)の
スピンドルに取り付けられる、ことを特徴とする、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記指示部材(15、17;115;215、217;315;415)を前記読み取り位置に移動させることを可能にする手段は、ラック(127;227a、227b;327;427)と、前記ラックに固定的に取り付けられたフィーラースピンドル(131;231a、231b;331;431)と、を備え、前記ラックの歯付きセクター(129;329;429)が、前記ピニオン(123;223a、223b;323;423)と噛み合うように構成され、前記ラックは、前記フィーラースピンドルが前記スネイル(125;225a、225b;325;425)の周縁に当接して前記指示部材の角度位置が前記スネイルの角度位置によって決定されるようになる読み取り位置と、前記フィーラースピンドルが前記スネイルから離された状態に保たれ、前記ラックが前記ピニオンから切り離された状態に保たれる待機位置との間を移動するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項4及び6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記時計(1)の前記手動制御機構は、プッシュボタン(25)及びコラムホイール(135;235;335;435)を備え、前記ラック(127;227a、227b;327;427)は、前記コラムホイールに押し付けられるビーク(141;341)を備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示装置が更に、前記ピニオン(123;223a、223b;323;423)のスピンドルに取り付けられたハートピース(448)と、前記ハートピースに接して押し付けられるハンマー(345、347;445)と、を備え、前記ハンマーは、前記コラムホイール(135;235;335;435)と協働して、前記カウンティングホイール(125;225a、225b;325;425)がリセットされているときに2つのコラムの間のスペースに入り、前記カウンティングホイールが始動しているときに前記コラムの1つによって上昇されるように構成されたビーク(353、355;453)を有し、前記ハンマーはまた、前記ビークが前記2つのコラムの間の前記スペースに入るときに前記ハートピースに対して降下し、前記ビークが前記コラムによって上昇されたときに上昇するような形状にされる、
ことを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記ハンマー(345)は第1のハンマーであり、前記ハートピース(448)は第1のハートピースであり、前記表示装置は、前記カウンティングホイールが始動しているときに第2のハートピースに対して降下され、前記カウンティングホイールが停止しているときに上昇されるように構成された第2のハンマー(347)を備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示装置は、制御レバー(151; 251)と、スプリングリーフ(159; 259a、259b)と、
別のラック(145; 245a、245b)とを備え、これらが共に双安定システムを形成し、
前記
別のラックは、前記ピニオン(123;223a、223b)と噛み合い、前記双安定システムがその2つの安定位置のうちの第1の安定位置に切り替わるときに、前記指示部材(115; 215、217)を前記第1の所定位置に移動させるようにし、前記双安定システムがその2つの安定位置のうちの前記第1の安定位置から第2の安定位置に切り替わるときに、前記指示部材(115; 215、217)を前記第2の所定位置に移動させるように構成される、
ことを特徴とする、請求項7又は請求項7及び8に記載の表示装置。
【請求項12】
前記時計(1)はクロノグラフであり、前記カウンティングホイール(125; 225a、225b; 325; 425)がクロノグラフカウンティングホイールである、ことを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記クロノグラフカウンティングホイール(125; 225a、225b; 325; 425)は、1秒の分数カウンティングホイールである、
ことを特徴とする、請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記
1秒の分数カウンティングホイールは、第1の1秒の分数(225a)のカウンティングホイールであり、前記表示装置は、第2の1秒の分数(225b)のカウンティングホイールを含み、前記第1の1秒の分数、前記第2の1秒の分数の倍数に等しい、ことを特徴とする、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記表示装置は、互いに角度を形成する2つのスプリングリーフ(259a、259b)を備え、前記角度は、30°から150°の
範囲にある、ことを特徴とする、請求項11及び14に記載の表示装置。
【請求項16】
カウンティングホイール(125;225a、225b;325;425)と、前記カウンティングホイールの周期的な始動、停止及びリセットを可能にするように構成された手動制御機構(25、135;235;335;435)を備えた時計(1)であって、請求項1~15の何れか1項に記載の表示装置を備える、時計(1)。
【請求項17】
前記時計は、「カウントダウン」又は「レガッタ」モードを有し、前記カウンティングホイールは、カウントダウンカウンティングホイールである、ことを特徴とする、請求項1から11の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項18】
カウンティングホイール(125;225a、225b;325;425)と、前記カウンティングホイールの周期的な始動、停止及びリセットを可能にするように構成された手動制御機構(25、135;235;335;435)を備えた時計(1)であって、請求項17に記載の表示装置を備える、時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、カウンティングホイールと、カウンティングホイールの周期的な始動、停止、及びリセットを可能にするように配置された手動制御機構とを備える時計用の表示装置に関し、表示装置は、指示部材と、カウンティングホイールの停止後に指示部材を読み取り位置に移動させることを可能にする手段とを備え、読み取り位置は、カウンティングホイールの位置によって決定される。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による表示装置を備えた時計に関する。
【背景技術】
【0003】
上記の定義による表示装置を備えた時計は公知である。特許文献EP1024416A2には、特に、クロノグラフに取り付けることを目的とした表示装置が記載されている。従来、このクロノグラフはまた、制御装置とクロノグラフ時回り輪列とを備える。クロノグラフ時回り輪列自体は、1分当たりに1回転の速度で駆動するように配置された秒カウンティングホイールと、10秒で1回転の速度で駆動するように配置された5分の1秒カウンティングホイールとを備える。従来、クロノグラフ針は、秒カウンティングホイールのスピンドルに取り付けられる。一方、5分の1秒カウンティングホイールは、円弧に沿って配置された目盛り上で5分の1秒を示すのに提供されたレトログラード針に関連付けられる。
【0004】
上記の従来文献に記載の表示装置は、共に回転するように5分の1秒カウンティングホイールのスピンドルに取り付けられたスネイルと、クロノグラフが停止時のみ使用可能な専用のプッシュボタンと、フィーラースピンドル及び歯付きセクターが装着されたメインレバーアームと、を備えている。歯付きセクターは、レトログラード針に接続されてメインレバーアームがこのレトログラード針の位置を制御できるように歯車列と係合するように配置される。リターンスプリングはまた、メインレバーアームに力を及ぼすように配置されており、この力は、1秒の時限分数を読み取るために、フィーラースピンドルをスネイルの周縁に押し付ける傾向がある。プッシュボタンが作動するまで、メインレバーアームが上昇位置でブロックされ、フィーラースピンドルがスネイルから離れた状態にされて、レトログラード針が、文字盤のニュートラル(範囲外)ゾーンの情報にある非作動位置にあるようになる。プッシュボタンを作動させると、メインレバーアームが解放されて枢動し、フィーラースピンドルがスネイルの周縁に当接するようになる。レバーアームを枢動させると、レトログラード針が、指示される5分の1秒に相当する目盛りの位置より上に移動する作用がある。プッシュボタンを解放すると、メインレバーアームが上昇位置に戻り、レトログラード針が、文字盤の中立ゾーン上で非作動位置に戻る。
【0005】
この従来の解決策の欠点は、ユーザがクロノグラフをリセットしたときに、レトログラード針が他のカウント針でゼロに戻らないことである。多くのユーザは、クロノグラフがリセットされた後、全ての針が実際にゼロに戻ったことを一目見て確認することにより、クロノグラフの動作を監視する習慣がある。この状況では、レトログラード針がゼロに戻るように設計されていないという事実は、クロノグラフが最適に動作していないという誤った印象をユーザに与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、ここで記載された従来技術の欠点を克服することである。本発明は、添付の請求項1に記載の表示装置を提供すること、及び添付の請求項15に記載の時計を提供することにより本目的及びその他を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、表示装置は、カウンティングホイールがリセットされているときに「ゼロ」値に関連付けられた第1の所定位置に指示部材を移動させる手段と、カウンティングホイールが始動したときに、第1の所定位置とは異なる第2の所定位置に指示部材を移動させる手段とを備える。
【0009】
上記に挙げられた本発明の特徴の1つの利点は、カウンティングホイールが始動されているときに、指示部材が1つの固定位置から別の固定位置に移動することである。この移動は、カウンティングホイールが実際に始動したことをユーザに確認させる。他方、自分の時計をよく知っているユーザは、指示部材が第2の所定位置にあるときは、カウンティングホイールが回転していることを示していることを認識している。中央に大きなクロノグラフ針を備えた従来技術の時計の場合、クロノグラフ時回り輪列が作動していることを示すには、通常は針の動きで十分である。対照的に、従来技術の時計に大きなクロノグラフ針が装着されていない場合、ユーザは、機構が動作していることが確信できない可能性がある。本発明は、特にこの問題を克服することは理解されるであろう。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な実施例としてのみ与えられ且つ添付図面を参照して与えられる以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1つの特定の実施形態による、表示装置が装着されたクロノグラフ時計の文字盤側の平面図である。
【
図2A】本発明の第1の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフのリセット後の1秒の分数インジケータを示している。
【
図2B】本発明の第1の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフの始動後の1秒の分数インジケータを示している。
【
図2C】本発明の第1の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、及びクロノグラフの停止後の1秒の分数インジケータを示している。
【
図3】
図2A、2B及び2Cに示される第1の実施形態の変形形態による、表示装置の部分概略図であり、この表示装置の変形形態は、1秒の第1及び第2の分数をそれぞれ示すために2つのレトログラード針を制御するように配置された2つのスネイルを備え、表示装置はクロノグラフのリセット後が示されている。
【
図4A】本発明の第2の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフのリセット後の装置を示している。
【
図4B】本発明の第2の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフの始動後の装置を示している。
【
図4C】本発明の第2の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフの及び停止後の装置を示している。
【
図5A】本発明の第3の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフのリセット後のデバイスを示している。
【
図5B】本発明の第3の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、クロノグラフの始動後のデバイスを示している。
【
図5C】本発明の第3の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図であり、及びクロノグラフの停止後のデバイスを示している。
【
図5D】
図5A、5B、及び5Cの1秒の分数インジケータのハートピース及びフィンガーを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の3つの例示的な実施形態について、以下の記載にて説明する。これらの3つの実施形態は、クロノグラフ機構に組み込まれることを目的としている。しかしながら、本発明の表示装置は、他のタイプの時計にも組み込むことができる点は理解されるであろう。詳細には、これらは、カウントダウン時計及びレガッタモードを有する時計を含む。
図1は、本発明の1つの特定の実施形態による、表示装置を装着したクロノグラフ時計の文字盤側の平面図である。クロノグラフ時計1は、第1に、ブレスレット(図示せず)の2つのストラップの各々のためのアタッチメントとして機能することを目的とした、2対のホーン5を備えた時計ケース3を備える。ケースはまた、時刻設定及び巻上機構のクラウン23及びプッシュボタン25を有し、両方とも中央の3時の位置に配置されていることが分かる。既知の方法では、プッシュボタン25は、クラウン23と同心状に配置されている。プッシュボタン25を作動させることにより、クロノグラフの起動、停止、リセットを行うことができる。
図1はまた、文字盤7と、現在時刻を示すために設けられ、文字盤の中央にあるスピンドルの周りに回転するように配置された時間用9と分用11の2つの針と、同様に文字盤の中央に取り付けられたクロノグラフ針13と、偏心スピンドルに取り付けられたレトログラード針を各々が含む2つの1秒の分数インジケータと、を示す。第1のレトログラード針15は、7:30の位置の付近で文字盤から突出して立ち上がるスピンドルを中心に枢動するように配置され、第2のレトログラード針17は、4:30の位置の付近で文字盤から突出して立ち上がるスピンドルを中心に枢動するように配置される。本実施例の実施形態によれば、本発明の表示装置は、レトログラード針によって形成された2つの指示部材を備える。しかしながら、指示部材は、必ずしも針の形態で製造される訳ではないことは理解されるであろう。例えば、指示部材は、ディスク又は液体などとすることができる。
【0013】
第1のレトログラード針15は、クロノグラフによって測定される時間間隔の小数部分内で10分の1秒を示すために円弧の形で第1の目盛り19と協働するように設けられ、第2のレトログラード針17は、小数部の残りの部分内の100分の1秒を示すために円弧の形で第2の目盛り21と協働するように設けられる。目盛り19は、目盛り21とは異なり、反時計回り方向に増加していることが分かる。本実施例によって保護される実施形態によれば、円弧の形の2つの目盛り19及び21は各々、1から9までの番号が付与された9つのマーキングによって互いに分離された等しい幅の10個のギャップを含む。更に、各目盛り19、21はまた、その両端に各々エンドマーキングを含む。目盛りの始点(「1」の前)に付けられたエンドマーキングは、「0」又は「リセット」表示に関連付けられ、目盛りの終わり(「9」の後)に付けられたエンドマーキングは、「始動」表示に関連付けられている。
【0014】
図1に示されるクロノグラフ時計のクロノグラフ時回り輪列(図示せず)は、10分の1秒カウンター及び100分の1秒カウンターを駆動するように配置されているという点で、ほとんどの既知のクロノグラフ機構の時回り輪列とは異なる。このため、クロノグラフ時回り輪列(図示せず)の秒ディスクは、第1中間ホイールのピニオンと噛み合うように配置され、この中間ホイールのディスクは、10分の1秒のカウンティングホイールのピニオンと噛み合うように配置される。更に、10分の1秒のカウンティングホイールのディスクは、第2の中間ホイールのピニオンと噛み合うように配置され、この第2の中間ホイールのディスクは、100分の1秒のカウンティングホイールのピニオンと噛み合うように配置される。今説明したクロノグラフ時回り輪列の部分のギア比は、クロノグラフ秒ディスクが1分当たりに1回転の速度で回転するときに、10分の1秒のカウンティングホイールが1秒あたり1回転の速度で回転し、100分の1秒のカウンティングホイールが1秒あたり10回転の速度で回転するように選択される。例として、クロノグラフ秒ディスクの歯は、80個の歯を含むことができ、第1中間ホイールのピニオン及びディスクは、それぞれ10個の歯及び75個の歯を含むことができ、10分の1のカウンティングホイールのピニオン及びディスクは、それぞれ10個の歯及び60個の歯を含むことができ、第2の中間ホイールのピニオンとディスクは、それぞれ20個の歯及び40個の歯を含むことができ、最後に、100分の1カウンターのピニオンは12個の歯を含むことができる。また、スネイルがより多数のステップで選択された場合、カウンティングホイールをより低速で駆動することが可能であることを指摘しておきたい。例えば、100分の1秒カウンターのスネイルを2つの連続した10個のステップを対称的に配置するように分割することにより、1秒あたり10回転ではなく5回転の速度で100分の1秒カウンターを駆動することが可能となる。
【0015】
図2A、2B及び2Cは、本発明の第1の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図である。これらの3つの図は、それぞれ、クロノグラフのリセット後、始動後、停止後の構成における1秒の分数インジケータを示している。図の各々は、ピニオン123と、ピニオンのスピンドルに堅固に取り付けられたレトログラード針115と、目盛り119を形成するように円弧に沿って配置された一連のマーキングと、共に一体部品として回転するように1秒の分数のカウンティングホイール(図示せず)のスピンドルに取り付けられたスネイル125と、歯付きセクター129を備えたラック127と、ラックに堅固に取り付けられたフィーラースピンドル131と、を示している。
【0016】
上記の図はまた、18個の歯137を備えたラチェットホイールと、ラチェットホイールのプレート上に直立する6個のコラム139とを備えるコラムホイール135とを示している。以下により詳細に示すように、コラムホイール135は、特に表示装置の1秒の分数インジケータの制御を可能にするために設けられている。しかしながら、当業者は、コラムホイール135はまた、クロノグラフ全体の周期的な始動、停止、及びリセットを可能にするように配置された手動制御機構の一部でもあることを理解するであろう。従来の手法では、この実施例において、クロノグラフの手動制御機構はまた、コラムホイールをステップバイステップ方式でインクリメントできるように配置されたプッシュボタン(
図1の25を参照)を備える。コラムホイール135が1ステップずつインクリメントされる度に、1つのラチェット歯の角度値(すなわち、20°)だけ時計回りに回転する(図に示すように)。
【0017】
図2A、2B及び2Cは、3つの異なる角度位置でのコラムホイールを示している点に留意されたい。実際に、コラムホイール135が
図2Aに示す構成であり、1ステップだけインクリメントした場合、コラムホイール135は、1つのラチェット歯の角度値だけ時計回りに枢動する。従って、
図2Bに示す構成では、コラムホイールが停止する。ここで更にもう1ステップインクリメントした場合、今回は
図2Cに示す構成で、再度枢動して停止する。最後に、3回目にインクリメントした場合、コラムホイールは、1つのラチェット歯の角度値だけ再び枢動し、
図2Aに示す構成に戻る。このように、コラムホイール135は、3ステップインクリメントすると始動構成に戻ることが分かる。換言すると、コラムホイール135は、3回コラムホイールである。しかしながら、本発明の他の実施形態によれば、コラムホイールは、2回コラムホイールとすることができる点に留意されたい。
【0018】
ここで1秒の分数インジケータに戻ると、ラック127は、スピンドル133の周りを枢動するように取り付けられ、スプリング143によるコラムホイール135のコラムの方向に押し付けられるビーク141を備えることが分かる。
図2Aに示すように、クロノグラフをリセットした後、ビーク141は、コラムホイールのコラムに当接し降下できなくなる。この状況では、ラックは、フィーラースピンドル131がスネイル125から離れた状態に保たれ、歯付きセクター129がピニオン123から切り離された状態に保たれる待機位置にある。ここでクロノグラフを始動させるために、コラムホイールが1ステップインクリメントした場合、コラムホイールが20°枢動し、ラック127のビーク141が力を受けて、カラム139の外面に接して滑動するようになる。
図2Bを参照すると、ビーク141は、1つのラチェット歯の角度値だけコラム139に接して滑動しても、このコラムには依然として当接していることが分かる。従って、ラック127は、クロノグラフが始動しても依然として待機位置にある。クロノグラフを停止させるために、コラムホイールを更に1ステップインクリメントすると、コラムホイールは、再度20°枢動し、今回はビーク141が2つのコラムの間のスペースに落下する。従って、ラック127は、時計回りに自在に枢動できる。ここで
図2Cを参照すると、クロノグラフの停止後、ラック127は、読み取り位置にあり、ここではフィーラースピンドル131がスネイル125の周縁に当接し、歯付きセクター129がピニオン123と噛み合う。ラック127が読み取り位置にあるときに、レトログラード針115の角度位置は、スネイル125の角度位置によって決定されることが理解されよう。ここでクロノグラフをリセットするために、コラムホイールをもう1ステップインクリメントした場合、コラムホイール135が再び20°枢動し、ビーク141が、コラムホイールの新しいコラム139によって上昇し、これによりラック127の反時計回りの枢動が生じる。このように、1秒の分数インジケータは、
図2Aに示されている構成に戻る。
【0019】
本発明によれば、表示装置の1秒の分数インジケータはまた、クロノグラフがリセットされているときにレトログラード針を第1の所定位置に移動させ、クロノグラフが始動されているときには、レトログラード針を第1の所定位置とは異なる第2の所定位置に移動させる手段を含む。これに関連して、
図2A、2B及び2Cを更に参照すると、スピンドル147の周りに枢動し、ピニオン123と恒久的に噛み合うように配置されたラック145と、ラック145が自在に枢動できるセクターを定める2つのストップ149a及び149bと、スピンドル153の周りを枢動するように配置され且つビーク155を有する制御レバー151と、ビーク155をコラムホイール135のコラム139の方向に押し付けるように配置されたスプリング157と、その一端により制御レバー151の枢動スピンドル153に固定され、他端によりラック145の枢動スピンドル147に堅固に固定されたスプリングリーフ159と、を確認することができる。
【0020】
本発明の第1の例示的な実施形態によれば、制御レバーの枢動スピンドル153とラックの枢動スピンドル147との間の距離は、スプリングリーフ159の変形されていない長さよりも短い。この状況では、それ自体が周知の方法で、スプリングリーフは、非変形構成(すなわち言い換えれば、真っ直ぐな)を採用することを妨げる応力を受ける。応力を最小限に抑え、安定した構成を回復するために、スプリングリーフ159は、座屈形状を採用している(すなわち言い換えれば、2つの枢動スピンドル153及び147を含む平面に垂直な方向に変形によって湾曲している)。「安定した構成」という表現は、十分に小さな振幅の力によってスプリングリーフがそこから離れて移動した場合に、スプリングリーフが常に戻る形状に関連する構成を意味すると理解される。スプリングリーフ159の座屈の結果としての丸い形状は、一方向又は他方向に向けることができる。従って、スプリングリーフ159は、対称である2つの安定した構成のうちの一方又は他方を占めることができる点を理解されるであろう。
【0021】
既に述べたように、スプリングリーフ159の一方の端部は、制御レバー151の枢動スピンドル153に堅固に固定され、他方の端部は、同じ方法でラック145の枢動スピンドル147に固定される。再度
図2A、2B及び2Cを参照すると、スプリングリーフ159の丸い形状が第1の方向(図の右方向)に向けられている場合、スプリングリーフは、ラック145を時計回りに押し付けており、制御レバー151を反時計回りに押し付けていることが理解できる(
図2A及び2Cに示されているように)。逆に、スプリングリーフ159の丸い形状が他の方向(図の左方向)に向けられている場合、スプリングリーフは、ラック145を反時計回りに押し付け、制御レバー151を時計回りに押し付ける(
図2Bに示されているように)。当業者であれば、スプリングリーフ159、ラック145、及び制御レバー151によって形成されるシステムが双安定システムであり、システムの2つの安定した構成のうちの1つが、
図2A及び2Cに示されており、他の安定した構成が
図2Bに示されていることは理解されるであろう。この状況では、システムが2つの安定した構成の一方にあり、制御レバー151が強制的に枢動すると、双安定システム全体が強制的に切り替えられて、他の構成に変更される。
【0022】
クロノグラフがリセットされているときにレトログラード針を第1の所定位置に移動させ、クロノグラフが始動されているときにレトログラード針を第1の所定位置とは異なる第2の所定位置に移動させる手段は、以下のように動作する。制御レバー151は、ビーク155がコラム139の1つによって上昇される第1の位置とビーク155が2つのコラムの間のスペース内に降下される第2の位置との間で一方向又は他方向に枢動するように、コラムホイール135によって制御されるように配置される。最初に
図2Aを参照すると、クロノグラフをリセットした後、制御レバー151が第1の位置にあることが分かる。この状況では、制御レバー、スプリングリーフ159、及びラック145によって形成される双安定システムが、2つの安定した構成のうちの第1の構成を占める。
図2Aに示すように、この第1の構成では、ラックは、時計回りに完全に回転し、ストップ149bに当接する。更に、ラック145の歯付きセクターがピニオン123と噛み合うと、レトログラード針115は、その一部が反時計回りに完全に回転し、目盛り119の「ゼロ」表示に関連付けられたエンドマーキングの反対側に配置されるようになる。
【0023】
ここで、クロノグラフを始動させるために、コラムホイールを1ステップインクリメントした場合、コラムホイールが20°枢動し、制御レバーのビーク155が2つのコラム139の間のスペースに入り、従って、制御レバー151は、その第2の位置に変化する。ここで
図2Bを参照すると、制御レバー、スプリングリーフ159、及びラック145によって形成される双安定システムが、これら2つの安定した構成の一方から他方に変更されていることが分かる。この新しい構成では、ラックが反時計回りに完全に回転し、ストップ149a当接するようになる。レトログラード針115は、その一部が時計回りに完全に回転して、目盛り119の「始動」表示に関連するエンドマーキングの反対側に配置されるようになる。クロノグラフを停止させるために、コラムホイールを更に1ステップインクリメントした場合、コラムホイールが再び20°枢動して、ビーク155がコラム139の1つによって再び上昇され、制御レバー151はその第1の位置に戻るようになる。ここで
図2Cを参照すると、クロノグラフを停止した後、制御レバー、スプリングリーフ159、及びラック145によって形成された双安定システムは、第1の安定した構成に戻っていないが、対照的に不安定な中間位置にある。実際に、これまで見てきたように、クロノグラフの停止後、ラック127の歯付きセクター129は、ピニオン123と噛み合い、レトログラード針115の角度位置がスネイル125の角度位置によって決定されるようになる。実際には、スプリングリーフ159の力は、リターンスプリング143の力よりも低くなるように選択されている。この状況では、クロノグラフの停止後、ラック145の位置を制御するのはピニオン123であり、その逆はない。
【0024】
図3は、今説明した実施形態の変形形態による、2つの1秒の分数インジケータを有する表示装置の部分概略図である。これら2つのインジケータの各々の動作原理は、
図2A、2B及び2Cに関して既に説明した1秒の分数インジケータの動作原理と極めて類似している。従って、以下の説明は、基本的には、2つの1秒の分数インジケータがどのように関連付けられているかを説明することに限定されている。
【0025】
理解できるように、
図3の1秒の分数インジケータは、それぞれ、スネイルを備える(それぞれ225a及び225bを参照)。2つのスネイルは、クロノグラフによって測定された時間間隔の分数部分を示すために、2つのレトログラード針215及び217を制御するように配置されている。スネイル225aは、10分の1秒のカウンティングホイール(図示せず)のスピンドルに取り付けられて、1秒あたり1回転の速度で回転するようになり、スネイル225bは、100分の1秒のカウンティングホイール(図示せず)のスピンドルに取り付けられて、1秒あたり10回転の速度で回転するようになる。従って、針215及び217は、それぞれ10分の1秒と100分の1秒を示す。
図3はまた、そのスピンドルにレトログラード針が取り付けられている2つのピニオン223a、223bと、それぞれ一連のマーキングによって形成された、円弧の形の2つの目盛り219、221と、それぞれ歯付きセクターとフィーラースピンドル231a、231bを備えた2つのラック227a、227bと、それぞれのスピンドル247a又は247bを中心に回転し且つ2つのピニオン223a、223bのうちの1つと各々が恒久的に噛み合うように配置された2つのラック245a、245bと、ビーク225を有し且つそのスピンドル253を中心に枢動するように配置された単一の制御レバー251と、両方の端部の一端によって制御レバー251の枢動スピンドル253に、及び他端によって2つのラック245a及び245bの枢動スピンドル247a及び247bにそれぞれ堅固に固定された2つのスプリングリーフ259a及び259bと、を示している。
図3はまた、2つのスプリングリーフ259a、259bが互いの延長として配置されていないが、対照的に、これらが互いに約90°の角度を成していることを示している。実際に、本実施例の対象である1つの実施形態によれば、枢動スピンドル253に堅固に固定されなければならない2つのスプリングリーフの端部間の角度値を自由に選択することが可能である。
【0026】
当業者であれば、制御レバー251、2つのスプリングリーフ259a、259b、及び2つのラック245a、245bによって形成されるシステムが双安定システムであることは理解するであろう。
図3は、クロノグラフのリセット後の表示装置が、双安定システムの2つの安定した構成のうちの1つを表すことを示している。この構成では、ラック245a、245bは、完全に反時計回りに回転し、レトログラード針215、217は両方とも、目盛り219、221の一方の「ゼロ」表示に関連付けられたエンドマーキングの反対側にある。ここで、クロノグラフを始動させるために、コラムホイール235を1ステップインクリメントした場合、制御レバー251のビーク255は、コラムホイールの2つのコラム間のスペースに入り、制御レバー251が反時計回りに枢動するようになる。この枢動により、双安定システム全体が切り替わり、これら2つの安定した構成の一方から他方に変化する。当業者であれば、双安定システムがこの第2の安定した構成にあるときに、レトログラード針215、217がそれぞれ、目盛り219及び221の一方の「始動」表示に関連するエンドマーキングの反対側にあることを理解するであろう。
【0027】
図4A、4B及び4Cは、本発明の第2の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータの概略図である。これら3つの図は、クロノグラフのリセット後、始動後、及び停止後のインジケータをそれぞれ示している。
図4A、4B、4Cに示される1秒の分数インジケータは、
図2A、2B、2Cの1秒の分数インジケータと共通する多くの特徴を有する。
図2A、2B及び2Cに関して既に説明された要素と同一又は類似する
図4A、4B及び4Cの要素は、同じ数字に200だけ増加した数字よって参照される。
【0028】
図4A、4B及び4Cは、詳細には、ピニオン323と、ピニオンのスピンドルに堅固に取り付けられたレトログラード針315と、目盛り319を形成するように円弧に沿って配置された一連のマーキングと、1秒の分数カウンティングホイール(図示せず)のスピンドルに取り付けられたスネイル325と、歯付きセクター329を備えたラック327と、ラックに堅固に取り付けられたフィーラースピンドル331と、コラムホイール335と、を示す。また、ラック327は、コラムホイール335の方向に押し出されるビーク341を備えることを確認できる。
図4A及び
図4Bに示すように、クロノグラフのリセット後及び始動後、ビーク341がコラムホイールのコラムに当接して、降下できないようになっている。従って、
図4A及び4Bは、フィーラースピンドル331がスネイル325から離れた状態に保たれ、歯付きセクター329がピニオン323から切り離された状態に保たれた待機位置にあるラック327を示している。ここで
図4Cを参照すると、クロノグラフの停止後、ラック327は、フィーラースピンドル331がスネイル325の周縁に当接し、歯付きセクター329がピニオン323と噛み合う読み取り位置にあることが分かる。
【0029】
第2の実施形態は、クロノグラフがリセットされているときにレトログラード針を第1の所定位置に移動させ且つクロノグラフが始動されているときにレトログラード針を第1の位置とは異なる第2の所定位置に移動させるために備える手段が、異なる方式で動作するという点で、第1の実施形態とは本質的に異なる。従って、以下の説明は、これらの手段に焦点を当てている。この点に関して、
図4A、4B及び4Cは、2つのスプリング349及び351によって2つの同軸ハートピース(図示せず)の方向にそれぞれ押し付けられる第1及び第2のハンマー(それぞれ345及び347を参照)を示す。ハートピースは両方とも、ピニオン323のスピンドルに堅固に固定される。ハンマー345及び347は各々、コラムホイール335のコラムと連動するように配置されたビーク(それぞれ353及び355を参照)を有することが分かる。
【0030】
ここで
図4Aを参照すると、クロノグラフのリセット後、ハンマー345のビーク353が、コラムホイールの2つのコラムの間に入り、ハンマー345が関連付けられているハートピースに接してハンマー345が降下するようになることが分かる。ハンマー345とハートピースの協働により、レトログラード針315は、目盛り319の「ゼロ」表示に関連するエンドマーキングの反対側に移動する。ここで
図4Bを参照すると、クロノグラフの始動後、ビーク353は、コラムホイールのコラムの1つによって上昇されており、ハンマー345が関連付けられているハートピースとの接触がもはやないことが分かる。一方、現在では、ハンマー347のビーク355が2本のコラムの間に入り、ハンマー347が関連するハートピースに接して降下している。ハンマー347とハートピースの協働により、レトログラード針315は、目盛り319の「始動」表示に関連するエンドマーキングの反対側に移動する。最後に、
図4Cを参照すると、クロノグラフの停止の後、2つのハンマー345及び347が上昇し、レトログラード針315の角度位置がスネイル325の角度位置によって決定されることが分かる。
【0031】
図4A、4B及び4Cはまた、ピニオン323のスピンドルの周りに巻かれ、一端によってプレートに固定され且つ他端によってレトログラード針を支持するピニオン323のスピンドルに固定されて、レトログラード針315を反時計回りに押し付けるようにする、スプリングリーフ352を示す。スプリングリーフ352の存在により、歯付きセクター329の歯とピニオン323の歯との間に存在する遊びを相殺することができる。
【0032】
図5A、5B及び5Cは、本発明の第3の特定の実施形態による、表示装置の1秒の分数インジケータに関する。これらの図に示される1秒の分数インジケータは、
図4A、4B及び4Cの1秒の分数インジケータと共通する多くの特徴を有する。
図4A、4B及び4Cに関して既に説明した要素と同一又は類似する
図5A、5B及び5Cの要素は、同じ数字に100だけ増加した数字よって参照される。
【0033】
第3の実施形態は、クロノグラフがリセットされているときにレトログラード針を第1の所定位置に移動させ、クロノグラフが始動されているときにレトログラード針を第1の位置とは異なる第2の所定位置に移動させる手段を含むという点で、第1及び第2の実施形態とは本質的に異なる。従って、以下の説明はこれらの手段に焦点を当てている。この点に関して、
図5A、5B及び5Cは、ハートピース448及びフィンガー450(
図5D、及びまた
図5A、5B、及び5Cの破線で見える)によって形成された一体部品カムの方向でスプリング449によって押し付けられる単一のハンマー(445で参照)を示している。一体部品カム自体は、ピニオン423のスピンドルに堅固に固定されている。また、ハンマー445は、コラムホイール435のコラムと協働するように配置されたビーク453を有することも分かる。
【0034】
特に
図5Dを参照すると、一体部品カムがハートピース448及びフィンガー450によって形成されることが分かる。本実施例では、フィンガー450は、通常、ハートピースの先端部が占める位置に配置される。
図5A、5B及び5Cはまた、フィンガー450と協働することができるように配置されたストップ454と、ピニオン423のスピンドルの周りに巻かれ、一端によってプレートに固定され、他端によってレトログラード針415に固定され、レトログラード針415及びフィンガー450を反時計回りに押し付けるようにするスプリングリーフ452と、を示す。
図5Bに示すように、ストップ454は、レトログラード針415が「スタート」表示の上にあるときに、フィンガーがストップに接触するように配置されている。1つの有利な変形形態では、ストップ454は、第2の所定位置のより細かい調整を可能にするために、偏心の形で製造することができる。
【0035】
ここで、特に
図5Aを参照すると、クロノグラフのリセット後、ハンマー445のビーク453がコラムホイールの2つのコラムの間に入り、ハンマー445がハートピースに接して降下するようになることが分かる。ハンマー445とハートピースの協働により、レトログラード針415は、目盛り419の「ゼロ」表示に関連するエンドマーキングの反対側に移動する。
図5Bを参照すると、クロノグラフの始動後、ビーク453がコラムホイールのコラムの1つによって上昇されており、ハンマー445は、ハートピースとの接触がもはやないことが分かる。この状況では、レトログラード針415は、スプリングリーフ452の作用を受けて反時計回りに自在に回転する。レトログラード針415を反時計回りに枢動させると、このレトログラード針は、目盛り419の「始動」表示に関連するエンドマーキングの反対側に移動する。最後に、
図5Cを参照すると、クロノグラフの停止後、レトログラード針415の角度位置は、スネイル425の角度位置によって決定されることが分かる。実際に、リターンスプリング443は、スプリングリーフ452よりも強いように選択されている。
【0036】
また、当業者には明らかな様々な修正及び/又は改善は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して行うことができることは理解されるであろう。既に示されたように、本発明の表示装置は、クロノグラフ用として排他的に確保されたものではない。例えば、カウントダウン機構又はレガッタ時計など、他のタイプの時計にも好適とすることができる。レガッタ時計には、競技始動直前の数分を表示することを可能にするカウントダウン機能が搭載されていることを念頭に置かれたい。