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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】再生型燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/043 20160101AFI20231129BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231129BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231129BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231129BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20231129BHJP
   C25B 9/05 20210101ALI20231129BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231129BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M8/043
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
C25B1/04
C25B9/23
C25B9/05
C25B9/00 A
C25B15/08 302
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022020130
(22)【出願日】2022-02-14
(65)【公開番号】P2023117525
(43)【公開日】2023-08-24
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼杉 將司
(72)【発明者】
【氏名】福間 一教
(72)【発明者】
【氏名】河野 匠
(72)【発明者】
【氏名】保志 祐太
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-060625(JP,A)
【文献】特開2011-149074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池を有する再生型燃料電池システムであって、
昇圧された前記酸素ガスおよび昇圧された前記水素ガスのいずれか一方のガスを生成する昇圧装置と、前記燃料電池に前記ガスを供給するための供給機構と、制御装置と、を備え、
前記供給機構は、
前記ガスを、前記昇圧装置から前記燃料電池に供給するガス供給路と、
前記ガス供給路に設けられる流量調整弁と、
前記ガス供給路に供給される前記ガスの圧力を検出する圧力センサと、
を備え、
前記制御装置は、前記昇圧装置による昇圧停止動作が開始された場合には、前記圧力に基づいて単位時間あたりの減圧速度を計測し、前記減圧速度と目標減圧速度との差分が小さくなるように前記流量調整弁の流量を設定し、設定した前記流量に応じた電力を前記燃料電池に発生させる、再生型燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の再生型燃料電池システムであって、
水の分解により昇圧された前記酸素ガスを生成する前記昇圧装置である水電解装置と、
前記水電解装置で生成された前記酸素ガスを供給するための前記供給機構である酸素供給機構と、
を備え、
前記水電解装置は、アノード電極とカソード電極とに電解質膜が挟持される膜電極接合体を有し、前記カソード電極に前記水素ガスを生成し、前記水素ガスよりも圧力が高い前記酸素ガスを前記アノード電極に生成する、再生型燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の再生型燃料電池システムであって、
前記水電解装置によって生成される前記水素ガスを昇圧する前記昇圧装置である水素昇圧装置と、
前記水素昇圧装置で生成された前記水素ガスを供給するための前記供給機構である水素供給機構と、
を備える、再生型燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の再生型燃料電池システムであって、
前記供給機構は、
前記ガス供給路上に設けられ、前記昇圧装置により昇圧された前記ガスが貯留されるタンクと、
前記昇圧装置と前記タンクとの間の前記ガス供給路から分岐し、前記タンクと前記燃料電池との間の前記ガス供給路に合流するバイパス路と、
前記バイパス路に設けられる第1開閉弁と、
前記バイパス路が前記ガス供給路に合流する合流部分と前記タンクとの間の前記ガス供給路に設けられる第2開閉弁と、
を備え、
前記流量調整弁は、前記合流部分と前記燃料電池との間の前記ガス供給路に設けられ、
前記制御装置は、前記昇圧装置による昇圧動作が実行されている場合には、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を閉じて、前記昇圧装置から前記タンクに前記ガスを供給し、
前記昇圧停止動作が開始された後に、前記第1開閉弁を開けて、前記昇圧装置から前記燃料電池に前記ガスを供給する、再生型燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の再生型燃料電池システムであって、
前記バイパス路が前記ガス供給路から分岐する分岐部分と前記タンクとの間の前記ガス供給路に設けられ、前記ガスに含まれる水蒸気を分離する気液分離機を備える、再生型燃料電池システム。
【請求項6】
請求項3に従属する請求項4または、請求項5に記載の再生型燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記酸素供給機構と、前記水素供給機構とのうち、前記昇圧停止動作によって減圧される前記ガスの前記圧力が所定の圧力閾値に達するタイミングが速い前記供給機構の前記第2開閉弁を開け、前記タイミングが遅い前記供給機構の前記圧力が前記圧力閾値に達すると、前記タイミングが遅い前記供給機構の前記第2開閉弁を開ける、再生型燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生型燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、燃料電池と、水電解装置と、ガス貯蔵タンクとを有する再生型燃料電池システムが開示されている。燃料電池は、水素と酸素とを用いて発電する。水電解装置は、水を分解して高圧の水素と酸素を生成する。特許文献1の再生型燃料電池システムでは、水電解装置への給水効率を高めるため、水電解装置に供給される水が循環される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-015282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、水電解装置が昇圧動作から昇圧停止動作に移行すると、当該昇圧停止動作時に生成されたガスは排気される。なお、昇圧動作は、水を分解して高圧の水素と酸素を生成する動作である。昇圧停止動作は、昇圧動作の停止が開始されてから終了するまでの動作である。
【0005】
昇圧停止動作時に生成されるガスが燃料電池に供給可能であれば、水電解装置で生成されるガスの排気がなくなるため、当該ガスを効率的に利用することができる。
【0006】
しかし、昇圧停止動作直後に水電解装置で生成されるガスのガス圧は高圧である。このため、昇圧停止動作時に生成される高圧のガスが燃料電池に供給されると、水電解装置が有する電解質膜にブリスタ等が生じ、水電解装置が劣化することが懸念される。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の形態は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池を有する再生型燃料電池システムであって、昇圧された前記酸素ガスおよび昇圧された前記水素ガスのいずれか一方のガスを生成する昇圧装置と、前記燃料電池に前記ガスを供給するための供給機構と、制御装置と、を備え、前記供給機構は、前記ガスを、前記昇圧装置から前記燃料電池に供給するガス供給路と、前記ガス供給路に設けられる流量調整弁と、前記ガス供給路に供給される前記ガスの圧力を検出する圧力センサと、を備え、前記制御装置は、前記昇圧装置による昇圧停止動作が開始された場合には、前記圧力に基づいて目標減圧速度となるように前記流量調整弁の流量を調整し、前記流量に応じた電力を前記燃料電池に発生させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、昇圧装置の電解質膜にブリスタが発生することを抑制しながら、燃料電池を発電させることができる。その結果、燃料電池を安定して発電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態による再生型燃料電池システムを示す概略図である。
図2図2は、再生型燃料電池システムの制御装置による運転シーケンスを示すタイムチャートである。
図3図3は、図2の運転シーケンスにしたがって運転した場合の酸素ガス、水素ガス、水、および、発電電力の挙動を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態による再生型燃料電池システム10を示す概略図である。再生型燃料電池システム10は、燃料電池12と、昇圧装置14と、供給機構16と、制御装置18と、を有する。
【0012】
燃料電池12は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する。燃料電池12は、複数の単位セルを有する。各単位セルは、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体(MEA)を有する。燃料電池12は、各単位セルのアノード電極に水素ガスを供給する。燃料電池12は、各単位セルのカソード電極に酸素ガスを供給する。燃料電池12は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により各単位セルで生成される発電電力を集め、バッテリ20に蓄積する。
【0013】
燃料電池12は、水素ガスと電気化学反応が行われなかった余剰の酸素ガスを集め、当該酸素ガスを含む酸素含有排ガスを排出する。酸素含有排ガスの大部分は、再び燃料電池12に循環され、再利用される。また、燃料電池12は、酸素ガスと電気化学反応が行われなかった余剰の水素ガスを集め、当該水素ガスを含む水素含有排ガスを排出する。水素含有排ガスの大部分は、再び燃料電池12に循環され、再利用される。
【0014】
昇圧装置14は、昇圧された酸素ガスおよび昇圧された水素ガスのいずれか一方のガスを生成する装置である。本実施形態の再生型燃料電池システム10は、昇圧装置14として水電解装置22と水素昇圧装置24とを有する。水電解装置22は、昇圧された酸素ガスを生成する昇圧装置14である。水素昇圧装置24は、昇圧された水素ガスを生成する昇圧装置14である。
【0015】
水電解装置22は、水の電気分解により昇圧された酸素ガスを生成する。水は、水供給装置26から水供給路28を介して供給される。水供給路28は、水を、水供給装置26から水電解装置22に供給するための経路である。水供給路28上には気液分離機30が設けられる。気液分離機30と水電解装置22との間の水供給路28にはポンプ31が設けられる。ポンプ31は、気液分離機30に貯留される水を水電解装置22に供給する。
【0016】
水供給装置26は、水を貯留可能なタンクであってもよいし、給水装置であってもよい。本実施形態では、水供給装置26は、タンクである。水供給装置26がタンクである場合、水供給装置26と気液分離機30との間の水供給路28にポンプが設けられてもよい。
【0017】
水電解装置22は、複数の単位セルを有する。各単位セルは、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体(MEA)を有する。水電解装置22に用いられる電解質膜は、アニオン交換膜である。各単位セルのアノード電極とカソード電極とには電圧印加装置23が接続される。電圧印加装置23は、アノード電極とカソード電極との間に印加する電圧の電圧値を変更可能に構成される。電圧印加装置23は、アノード電極とカソード電極との間に印加する電圧の電源をバッテリ20から得てもよいし、バッテリ20以外の他の電源装置から得てもよい。また、水電解装置22に用いられる電解質膜は、プロトン交換膜であってもよい。
【0018】
水電解装置22は、水供給路28から流入する水を、各単位セルのカソード電極に供給する。各単位セルは、電圧印加装置23によって印加される電圧に基づいて水を電気分解する。これにより、アノード電極では酸素ガスが生成され、カソード電極では水素ガスが生成される。水電解装置22で生成される酸素ガスは高圧である。例えば、1~100MPaの範囲に酸素ガスが圧縮される。
【0019】
水電解装置22は、各単位セルで生成される酸素ガスを集め、当該酸素ガスを含む排出ガスを供給機構16に出力する。なお、排出ガスには、水電解装置22の熱等によって気化した水蒸気が含まれる。一方、水電解装置22は、各単位セルで生成される水素ガスと、電気分解が行われなかった余剰の水(未反応水)とを集め、当該水素ガスおよび未反応水を含む排出流体を水素供給路32に出力する。なお、排出流体には、水電解装置22の熱等によって気化した水蒸気が含まれる。
【0020】
水素供給路32は、水素ガスを、水電解装置22から水素昇圧装置24に供給するための経路である。水素供給路32は、気液分離機30を通る。気液分離機30と水素昇圧装置24との間の水素供給路32にはポンプ34が設けられる。
【0021】
水電解装置22から水素供給路32に出力される水素ガスおよび未反応水は、気液分離機30に流入する。気液分離機30は、排出流体を気体成分(水素ガスおよび水蒸気)と、液体成分(液水)とに分離する。気体成分は、ポンプ34によって水素昇圧装置24に供給される。
【0022】
水素昇圧装置24は、水素供給路32から流入する水素ガスを昇圧し、昇圧された水素ガスを生成する。水素供給路32から流入する水素ガスは、水電解装置22によって生成される水素ガスである。
【0023】
水素昇圧装置24は、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体(MEA)を有する。水素昇圧装置24に用いられる電解質膜は、プロトン交換膜である。アノード電極とカソード電極とには電圧印加装置25が接続される。電圧印加装置25は、アノード電極とカソード電極との間に印加する電圧の電圧値を変更可能に構成される。電圧印加装置25は、アノード電極とカソード電極との間に印加する電圧の電源をバッテリ20から得てもよいし、バッテリ20以外の他の電源装置から得てもよい。
【0024】
水素昇圧装置24は、水素供給路32から流入する水素ガスをアノード電極に供給する。水素昇圧装置24は、電圧印加装置25によって印加される電圧に基づいて水素ガスをイオン化する。水素ガスのイオン化により得られるプロトンは、電解質膜(プロトン交換膜)を介してカソード電極に到達することで水素ガスに戻る。水素昇圧装置24は、アノード電極からカソード電極にプロトンを移動させることで、昇圧された水素ガスを生成し得る。例えば、1~100MPaの範囲に水素ガスが圧縮される。このように、水素昇圧装置24は、電気化学的に水素ガスを圧縮することができる電気化学的水素圧縮機(EHC:Electrochemical Hydrogen Compressor)である。
【0025】
水素昇圧装置24は、昇圧された水素ガスを含む排出ガスを供給機構16に出力する。なお、排出ガスには、水素昇圧装置24の熱等によって気化した水蒸気が含まれる。一方、水素昇圧装置24は、水素ガスのイオン化が行われなかった余剰の水素ガスを、水素排出路35に出力する。水素排出路35は、水素ガスを、水素昇圧装置24から気液分離機30に排出するための経路である。
【0026】
供給機構16は、燃料電池12にガスを供給するための機構である。本実施形態の再生型燃料電池システム10は、供給機構16として酸素供給機構36と水素供給機構38とを有する。酸素供給機構36は、水電解装置22で生成された酸素ガスを燃料電池12に供給するための供給機構16である。水素供給機構38は、水素昇圧装置24で生成された水素ガスを燃料電池12に供給するための供給機構16である。
【0027】
酸素供給機構36の構成と水素供給機構38の構成とは基本的に同じである。したがって、特段の場合を除き、酸素供給機構36と水素供給機構38とに共通する供給機構16について説明する。
【0028】
以下の説明において、「供給機構16」と称する場合には、酸素供給機構36および水素供給機構38のいずれか一方を指す。同様に、「ガス」と称する場合には、酸素ガスおよび水素ガスのいずれか一方を指す。同様に、「昇圧装置14」と称する場合には、水電解装置22および水素昇圧装置24のいずれか一方を指す。
【0029】
ただし、「供給機構16」が酸素供給機構36を指す場合、「ガス」は水素ガスではなく酸素ガスを指すことに留意されたい。また、「供給機構16」が酸素供給機構36を指す場合、「昇圧装置14」は、水素昇圧装置24ではなく水電解装置22を指すことに留意されたい。同様に、「供給機構16」が水素供給機構38を指す場合、「ガス」は酸素ガスではなく水素ガスを指すことに留意されたい。また、「供給機構16」が水素供給機構38を指す場合、「昇圧装置14」は、水電解装置22ではなく水素昇圧装置24を指すことに留意されたい。
【0030】
供給機構16は、ガス供給路40と、タンク42と、バイパス路44と、第1開閉弁46と、第2開閉弁48と、第1減圧弁50と、第2減圧弁52と、第1逆止弁54と、第2逆止弁56と、背圧弁58と、流量調整弁60と、圧力センサ62と、気液分離機64と、を有する。
【0031】
ガス供給路40は、昇圧装置14から燃料電池12にガスを供給するための経路である。ガス供給路40の一端は昇圧装置14に接続され、ガス供給路40の他端は燃料電池12に接続される。
【0032】
タンク42は、ガス供給路40上に設けられる。タンク42には、昇圧装置14により生成されるガスが貯留される。このガスは、昇圧されている。
【0033】
バイパス路44は、昇圧装置14とタンク42との間のガス供給路40から分岐し、タンク42と燃料電池12との間のガス供給路40に合流する。
【0034】
第1開閉弁46は、バイパス路44に設けられる。第1開閉弁46は、開閉可能に構成される。第1開閉弁46は、制御装置18の制御にしたがって開閉する。本実施形態では、第1開閉弁46は、遮断弁である。遮断弁は、異常が検知されると、制御装置18の制御によらずバイパス路44を遮断する。
【0035】
第2開閉弁48は、バイパス路44がガス供給路40に合流する合流部分MPと、タンク42との間のガス供給路40に設けられる。第2開閉弁48は、開閉可能に構成される。第2開閉弁48は、制御装置18の制御にしたがって開閉する。本実施形態では、第2開閉弁48は、遮断弁である。
【0036】
第1減圧弁50は、合流部分MPと、タンク42との間のガス供給路40に設けられる。第1減圧弁50は、タンク42から供給されるガスの圧力を減圧する。
【0037】
第2減圧弁52は、合流部分MPと、燃料電池12との間のガス供給路40に設けられる。第2減圧弁52は、第1減圧弁50またはバイパス路44から供給されるガスの圧力を減圧する。
【0038】
第1逆止弁54は、分岐部分BPと気液分離機64との間のガス供給路40に設けられる。第2逆止弁56は、合流部分MPと第1開閉弁46との間のバイパス路44に設けられる。
【0039】
背圧弁58は、バイパス路44がガス供給路40から分岐する分岐部分BPとタンク42との間のガス供給路40に設けられる。背圧弁58は、昇圧装置14に圧力(背圧)を付与する。これにより、昇圧装置14が水電解装置22である場合、各単位セルのアノード電極に発生する酸素ガスの圧力が上昇し、カソード電極に発生する水素ガスの圧力よりも高圧となる。
【0040】
すなわち、水電解装置22は、カソード電極に生成される水素ガスよりも圧力が高い酸素ガスをアノード電極に生成する。したがって、カソード電極からアノード電極に向かって水素ガスが電解質膜を透過するクロスオーバを抑制することができる。その結果、水電解装置22から水素昇圧装置24に供給される水素ガスの量が低減することを抑制することができる。
【0041】
流量調整弁60は、合流部分MPと燃料電池12との間のガス供給路40に設けられる。流量調整弁60は、燃料電池12に流れるガスの流量を調整可能に構成される。流量調整弁60は、制御装置18の制御にしたがって流量を調整する。
【0042】
圧力センサ62は、ガス供給路40に供給されるガスの圧力を検出する。圧力センサ62は、検出された圧力を示す信号を制御装置18に出力する。圧力センサ62は、好ましくは、水電解装置22の近くのガス供給路40に設けられる。本実施形態では、圧力センサ62は、水電解装置22と分岐部分BPとの間のガス供給路40に設けられる。
【0043】
気液分離機64は、背圧弁58と第1逆止弁54との間のガス供給路40上に設けられる。上記のように、昇圧装置14からガス供給路40に排出される排ガスにはガスの他に水蒸気が含まれる。気液分離機64は、排ガス中のガスをタンク42に供給する。これにより、タンク42が湿潤になることを抑制することができる。その結果、タンク42を過剰に耐錆にしなくてもタンク42の耐久性を向上させることができる。
【0044】
一方、気液分離機64は、排ガス中の水蒸気を冷却して液水を生成する。気液分離機64は、液水供給路65を介して、気液分離機30と接続される。液水供給路65は、気液分離機64に貯留される液水を、気液分離機30に供給するための経路である。水電解装置22から排出される排ガス中の水蒸気から得られる液水は、液水供給路65を介して、水電解装置22に供給される水を貯留する気液分離機30に供給される。したがって、水電解装置22に用いられる水を節約することができる。
【0045】
酸素供給機構36は、上述した供給機構16の構成に加えて、酸素排ガス流路66と、気液分離機68と、循環ポンプ70と、を有する。酸素排ガス流路66は、燃料電池12から排出される酸素含有排ガスを再び燃料電池12に戻すための経路である。酸素排ガス流路66の一端は、燃料電池12に接続される。酸素排ガス流路66の他端は、燃料電池12と流量調整弁60との間のガス供給路40に接続される。
【0046】
気液分離機68および循環ポンプ70は、酸素排ガス流路66上に設けられる。気液分離機68は、燃料電池12から酸素排ガス流路66に排出される酸素含有排ガスを、気体成分(酸素ガスおよび水蒸気)と、液体成分(液水)とに分離する。気体成分は、循環ポンプ70によって燃料電池12に再び供給される。一方、液体成分は、水供給装置26に供給される。
【0047】
水素供給機構38は、上述した供給機構16の構成に加えて、水素排ガス流路72と、気液分離機74と、循環ポンプ76と、を有する。水素排ガス流路72は、燃料電池12から排出される水素含有排ガスを再び燃料電池12に戻すための経路である。水素排ガス流路72の一端は、燃料電池12に接続される。水素排ガス流路72の他端は、燃料電池12と流量調整弁60との間のガス供給路40に接続される。
【0048】
気液分離機74および循環ポンプ76は、水素排ガス流路72上に設けられる。気液分離機74は、燃料電池12から水素排ガス流路72に排出される水素含有排ガスを、気体成分(水素ガスおよび水蒸気)と、液体成分(液水)とに分離する。気体成分は、循環ポンプ76によって燃料電池12に再び供給される。一方、液体成分は、水供給装置26に供給される。
【0049】
図2は、再生型燃料電池システム10の制御装置18による運転シーケンスを示すタイムチャートである。図3は、図2の運転シーケンスにしたがって運転した場合の酸素ガス、水素ガス、水、および、発電電力の挙動を示すタイムチャートである。図2における「T1」の時点と、図3における「T1」の時点とは一致している。図2および図3における「T2」~「T8」についても同じである。
【0050】
また、図2における「O2第1開閉弁」は、酸素供給機構36の第1開閉弁46を指す。図2における「O2第2開閉弁」は、酸素供給機構36の第2開閉弁48を指す。図2における「H2第1開閉弁」は、水素供給機構38の第1開閉弁46を指す。図2における「H2第2開閉弁」は、水素供給機構38の第2開閉弁48を指す。
【0051】
また、図3における「H2ガス圧」は、水素昇圧装置24で生成される水素ガスのガス圧を指す。図3における「O2ガス圧」は、水電解装置22で生成される酸素ガスのガス圧を指す。図3における「セパレータH2O貯蔵量」は、気液分離機30に貯留する水の量を指す。図3における「セパレータH2貯蔵量」は、気液分離機30に貯留する水素ガスの量を指す。図3における「H2タンク貯蔵量」は、水素供給機構38のタンク42に貯留する水素ガスの量を指す。図3における「O2タンク貯蔵量」は、酸素供給機構36のタンク42に貯留する酸素ガスの量を指す。
【0052】
再生型燃料電池システム10の運転は、制御装置18によって実行される。制御装置18は、再生型燃料電池システム10を統括する。再生型燃料電池システム10が停止している状態では、酸素供給機構36および水素供給機構38の第1開閉弁46および第2開閉弁48は閉じている。また、燃料電池12、水電解装置22および水素昇圧装置24は停止している。
【0053】
再生型燃料電池システム10の運転を開始する場合、まず、制御装置18は、水供給装置26を制御して、水供給装置26に水の出力を開始させる。水供給装置26から出力される水は、水供給路28を介して、水電解装置22の各単位セルのカソード電極に供給される。
【0054】
次に、制御装置18は、電圧印加装置23を制御して、水電解装置22に昇圧準備動作を実行させる(図2のA-1)。この場合、制御装置18は、水電解装置22の各単位セルのカソード電極とアノード電極に、所定の電解待機電流を供給する。
【0055】
その後、水電解装置22が水素ガスおよび酸素ガスの各々を発生し得る状態になると、制御装置18は、水電解装置22に昇圧動作を実行させる(図2のA-2)。この場合、制御装置18は、水電解装置22の各単位セルのカソード電極とアノード電極に、所定の電解運転電流を供給する。
【0056】
水電解装置22が昇圧動作を開始すると、水の電気分解により昇圧された酸素ガスがアノード電極で生成される。この酸素ガスは、酸素供給機構36のガス供給路40を介して、酸素供給機構36のタンク42に供給される。一方、水電解装置22が昇圧動作を開始すると、水の電気分解により水素ガスがカソード電極で生成される。この水素ガスは、水素供給路32を介して、水素昇圧装置24の各単位セルのアノード電極に供給される。
【0057】
制御装置18は、水素昇圧装置24の近くの水素供給路32に設置されるセンサ等に基づいて、水素供給路32への水素ガスの供給を確認する。水素供給路32への水素ガスの供給が確認されると、制御装置18は、電圧印加装置25を制御して、水素昇圧装置24に昇圧準備動作を実行させる(図2のB-1)。この場合、制御装置18は、水素昇圧装置24の各単位セルのカソード電極とアノード電極に、所定のイオン化待機電流を供給する。
【0058】
その後、水素昇圧装置24が水素ガスをイオン化し得る状態になると、制御装置18は、水素昇圧装置24に昇圧動作を実行させる(図2のB-2)。この場合、制御装置18は、水素昇圧装置24の各単位セルのカソード電極とアノード電極とに、所定のイオン化運転電流を供給する。
【0059】
水素昇圧装置24が昇圧動作を開始すると、水素ガスをイオン化により昇圧された水素ガスがカソード電極で生成される。この水素ガスは、水素供給機構38のガス供給路40を介して、水素供給機構38のタンク42に供給される。
【0060】
制御装置18は、バッテリ20に設置されるセンサ等に基づいて、バッテリ20に蓄積される電力量を監視する。電力量が所定の電力下限値を下回ると、制御装置18は、燃料電池12に第1起動動作を実行させる(図2のC-1)。
【0061】
すなわち、制御装置18は、酸素供給機構36の第1開閉弁46を開ける(図2のD-1)。これにより、水電解装置22から燃料電池12への酸素ガスの供給が開始される。同様に、制御装置18は、水素供給機構38の第1開閉弁46を開ける(図2のE-1)。これにより、水素昇圧装置24から燃料電池12への水素ガスの供給が開始される。
【0062】
酸素供給機構36の第1開閉弁46が開くと、水電解装置22の水電気分解により昇圧される酸素ガスは、酸素供給機構36のバイパス路44を介して、燃料電池12に供給される。一方、水素供給機構38の第1開閉弁46が開くと、水素昇圧装置24のイオン化により昇圧される水素ガスは、水素供給機構38のバイパス路44を介して、燃料電池12に供給される。燃料電池12では、酸素供給機構36から供給される酸素ガスと、水素供給機構38から供給される水素ガスとの電気化学反応による発電が開始され、当該ガス量に対応する電力が得られる。
【0063】
上記のように、水電解装置22からガス供給路40に排出される排ガスには酸素ガスの他に水蒸気が含まれる。このため、燃料電池12には、酸素ガスとともに水蒸気が供給される。同様に、水素昇圧装置24からガス供給路40に排出される排ガスには水素ガスの他に水蒸気が含まれる。このため、燃料電池12には、水素ガスとともに水蒸気が供給される。したがって、燃料電池12が有する膜電極接合体の電解質膜の乾燥が抑制され、その結果、燃料電池12の発電効率が低下することが抑制される。
【0064】
また、制御装置18は、昇圧装置14に昇圧停止動作を開始させる。昇圧停止動作を開始させるタイミングは、燃料電池12に第1起動動作を実行させる起動タイミングと同じであってもよいし、当該起動タイミングより速くてもよいし、当該起動タイミングより遅くてもよい。図2では、昇圧停止動作を開始させるタイミングは、燃料電池12に第1起動動作を実行させる起動タイミングと同じである。
【0065】
本実施形態では、制御装置18は、電圧印加装置23を制御して、水電解装置22に昇圧停止動作(脱圧動作)を開始させる(図2のA-3)。この場合、制御装置18は、水電解装置22の各単位セルのカソード電極とアノード電極に供給する電流を、徐々に低下させる。これにより、水電解装置22で生成される高圧の酸素ガスは、徐々に減少する。同様に、制御装置18は、電圧印加装置25を制御して、水素昇圧装置24に昇圧停止動作(脱圧動作)を開始させる(図2のB-3)。この場合、制御装置18は、水素昇圧装置24の各単位セルのカソード電極とアノード電極に供給する電流を、徐々に低下させる。これにより、水素昇圧装置24で生成される高圧の水素ガスは、徐々に減少する。
【0066】
昇圧停止動作によって、昇圧装置14(水電解装置22または水素昇圧装置24)で生成される高圧のガス(酸素ガスまたは水素ガス)の減圧速度が過度に速い場合、昇圧装置14の膜電極接合体の電解質膜にブリスタ等が生じ、昇圧装置14が劣化する傾向がある。
【0067】
そこで、制御装置18は、圧力センサ62によって検出される圧力に基づいて、目標減圧速度となるように流量調整弁60の流量を調整し、当該流量に応じた電力(発電電圧)を燃料電池12に発生させる。この場合、制御装置18は、圧力センサ62によって検出される圧力に基づいて、単位時間あたりの減圧速度を計測し、当該減圧速度と目標減圧速度との差分を演算する。目標減圧速度は、ブリスタ等の発生を抑制するための減圧速度の目標値であり、予め制御装置18のメモリに設定される。制御装置18は、目標減圧速度との差分が小さくなるように、流量調整弁60の流量を設定する。流量調整弁60の流量は、目標減圧速度との差分が大きいほど小さく設定される。
【0068】
これにより、昇圧装置14(水電解装置22または水素昇圧装置24)から供給される高圧のガス(酸素ガスまたは水素ガス)によって昇圧装置14の電解質膜にブリスタ等が生じることを抑制することができる。その結果、昇圧装置14が劣化することが抑制される。
【0069】
燃料電池12に供給されるガスのガス量は、昇圧装置14による昇圧停止動作の時間の経過に伴って少なくなり、ガス圧が小さくなる。圧力センサ62によって検出される圧力が所定の圧力閾値を下回ると、制御装置18は、燃料電池12に第2起動動作を実行させる(図2のC-2)。
【0070】
すなわち、酸素供給機構36の圧力センサ62によって検出される圧力が所定の酸素ガス圧閾値を下回った場合、制御装置18は、酸素供給機構36の第2開閉弁48を開ける(図2のF-1)。これにより、酸素供給機構36のタンク42から燃料電池12への酸素ガスの供給が開始される。同様に、水素供給機構38の圧力センサ62によって検出される圧力が水素ガス圧閾値を下回った場合、制御装置18は、水素供給機構38の第2開閉弁48を開ける(図2のG-1)。これにより、水素供給機構38のタンク42から燃料電池12への水素ガスの供給が開始される。
【0071】
したがって、昇圧装置14による昇圧停止動作の時間の経過に伴って昇圧装置14から燃料電池12に供給されるガスが少なくなっても、当該燃料電池12にガスを安定して供給することができる。その結果、燃料電池12の発電効率が低下することを抑制することができる。なお、上記の圧力閾値(酸素ガス圧閾値または水素ガス圧閾値)は、制御装置18のメモリに予め設定される。
【0072】
その後、圧力センサ62によって検出される圧力が所定の圧力閾値を下回ると、制御装置18は、燃料電池12に発電動作を実行させる(図2のC-3)。この場合、制御装置18は、流量調整弁60の流量を、所定の電力(発電電圧)を得るために予め設定された流量値に固定する。これに加えて、制御装置18は、第1開閉弁46を閉じて、タンク42のみから燃料電池12へのガスの供給を開始する。
【0073】
すなわち、酸素供給機構36の圧力センサ62によって検出される圧力が酸素ガス圧閾値を下回った場合、制御装置18は、酸素供給機構36の流量調整弁60の流量を所定の酸素流量値に固定する。これに加えて、制御装置18は、酸素供給機構36の第1開閉弁46を閉じる(図2のD-2)。これにより、酸素供給機構36のタンク42のみから燃料電池12への安定した酸素ガスの供給が開始される。
【0074】
同様に、水素供給機構38の圧力センサ62によって検出される圧力が水素ガス圧閾値を下回った場合、制御装置18は、素供給機構3の流量調整弁60の流量を所定の水素流量値に固定する。これに加えて、制御装置18は、水素供給機構38の第1開閉弁46を閉じる(図2のE-2)。これにより、水素供給機構38のタンク42のみから燃料電池12への安定した水素ガスの供給が開始される。
【0075】
第1開閉弁46が閉じると、タンク42からガス供給路40を介して燃料電池12に供給されるガスのガス圧は、当該ガス供給路40に設けられる第1減圧弁50および第2減圧弁52によって、所定値に調整される。なお、上記の圧力閾値(酸素ガス圧閾値または水素ガス圧閾値)は、制御装置18のメモリに予め設定される。
【0076】
燃料電池12による発電によって蓄積されるバッテリ20の電力量が所定の電力上限値を超えると、制御装置18は、酸素供給機構36および水素供給機構38の第2開閉弁48を閉じる(図2のF-2、G-2)。これにより、燃料電池12による発電動作が停止される。
【0077】
以上のように、制御装置18は、運転シーケンスを実行して再生型燃料電池システム10を統括する。
【0078】
ところで、水電解装置22による昇圧停止動作にしたがって減圧する酸素ガスの減圧速度と、水素昇圧装置24による昇圧停止動作にしたがって減圧する水素ガスの減圧速度とは異なる傾向がある。酸素ガスの減圧速度と水素ガスの減圧速度とが異なると、昇圧停止動作によって減圧されるガスの圧力が上記の圧力閾値に達するタイミングが、酸素供給機構36と水素供給機構38とでずれる。
【0079】
そこで、本実施形態では、上記の圧力閾値に達するタイミングのずれが酸素供給機構36と水素供給機構38とで生じないように、制御装置18は、第1開閉弁46および第2開閉弁48を制御する。
【0080】
例えば、酸素供給機構36において上記の圧力閾値に達するタイミングが、水素供給機構38において上記の圧力閾値に達するタイミングより速い場合を仮定する。この場合、まず、制御装置18は、酸素供給機構36の第1開閉弁46を閉じ、酸素供給機構36の第2開閉弁48を開ける。一方、制御装置18は、水素供給機構38の第1開閉弁46を開け、水素供給機構38の第2開閉弁48を閉じる。その後、水素供給機構38の圧力センサ62によって検出される圧力が上記の圧力閾値を下回った場合に、制御装置18は、水素供給機構38の第1開閉弁46を閉じ、水素供給機構38の第2開閉弁48を開ける。
【0081】
逆に、水素供給機構38において上記の圧力閾値に達するタイミングが、酸素供給機構36において上記の圧力閾値に達するタイミングより速い場合を仮定する。この場合、まず、制御装置18は、水素供給機構38の第1開閉弁46を閉じ、水素供給機構38の第2開閉弁48を開ける。一方、制御装置18は、酸素供給機構36の第1開閉弁46を開け、酸素供給機構36の第2開閉弁48を閉じる。その後、酸素供給機構36の圧力センサ62によって検出される圧力が上記の圧力閾値を下回った場合に、制御装置18は、酸素供給機構36の第1開閉弁46を閉じ、酸素供給機構36の第2開閉弁48を開ける。
【0082】
このように、制御装置18は、昇圧停止動作によって減圧されるガスの圧力が上記の圧力閾値に達するタイミングが速い供給機構16の第2開閉弁48を開けて、タンク42からガスを供給する。その後、制御装置18は、昇圧停止動作によって減圧されるガスの圧力が上記の圧力閾値に達するタイミングが遅い供給機構16の圧力が上記の圧力閾値に達すると、当該供給機構16の第2開閉弁48を開ける。上記の圧力閾値に達するタイミングのずれが酸素供給機構36と水素供給機構38とで生じなくなる。これにより、昇圧装置14(水電解装置22または水素昇圧装置24)が有する膜電極接合体の電解質膜にブリスタ等が生じることを抑制することができ、その結果、燃料電池12に安定して発電させることができる。
【0083】
本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0084】
例えば、水電解装置22および水素昇圧装置24の一方は、設けなくてもよい。水素昇圧装置24を設けない場合、水素昇圧装置24および水素供給機構38に代えて、減圧された水素ガスを燃料電池12に供給可能に構成された水素供給ユニットが燃料電池12に接続されてもよい。逆に、水電解装置22を設けない場合、水電解装置22および酸素供給機構36に代えて、減圧された酸素ガスを燃料電池12に供給可能に構成された酸素供給ユニットが燃料電池12に接続されてもよい。
【0085】
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0086】
(1)本発明は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池(12)を有する再生型燃料電池システム(10)であって、昇圧された前記酸素ガスおよび昇圧された前記水素ガスのいずれか一方のガスを生成する昇圧装置(14)と、前記燃料電池に前記ガスを供給するための供給機構(16)と、制御装置(18)と、を備え、前記供給機構は、前記ガスを、前記昇圧装置から前記燃料電池に供給するガス供給路(40)と、前記ガス供給路に設けられる流量調整弁(60)と、前記ガス供給路に供給される前記ガスの圧力を検出する圧力センサ(62)と、を備え、前記制御装置は、前記昇圧装置による昇圧停止動作が開始された場合には、前記圧力に基づいて目標減圧速度となるように前記流量調整弁の流量を調整し、前記流量に応じた電力を前記燃料電池に発生させる。
【0087】
これにより、昇圧装置にブリスタが発生することを抑制しながら、燃料電池を発電させることができる。その結果、昇圧装置の劣化を抑制することができる。また、昇圧停止動作時に生成されるガスは水蒸気とともにガス供給路に出力され得る。したがって、燃料電池にガスとともに水蒸気を供給することができる。その結果、水分不足による燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0088】
(2)本発明は、再生型燃料電池システムであって、水の分解により昇圧された前記酸素ガスを生成する前記昇圧装置である水電解装置(22)と、前記水電解装置で生成された前記酸素ガスを供給するための前記供給機構である酸素供給機構(36)と、を備え、前記水電解装置は、アノード電極とカソード電極とに電解質膜が挟持される膜電極接合体を有し、前記カソード電極に前記水素ガスを生成し、前記水素ガスよりも圧力が高い前記酸素ガスを前記アノード電極に生成してもよい。これにより、カソード電極からアノード電極に向かって水素ガスが電解質膜を透過するクロスオーバを抑制することができる。その結果、水電解装置において、水素ガスおよび酸素ガスの生成効率を向上することができる。
【0089】
(3)本発明は、再生型燃料電池システムであって、前記水電解装置によって生成される前記水素ガスを昇圧する前記昇圧装置である水素昇圧装置(24)と、前記水素昇圧装置で生成された前記水素ガスを供給するための前記供給機構である水素供給機構(38)と、を備えてもよい。これにより、水電解装置で生成される水素ガスを排気することなく有効に利用することができる。
【0090】
(4)本発明は、再生型燃料電池システムであって、前記供給機構は、前記ガス供給路上に設けられ、前記昇圧装置により昇圧された前記ガスが貯留されるタンク(42)と、前記昇圧装置と前記タンクとの間の前記ガス供給路から分岐し、前記タンクと前記燃料電池との間の前記ガス供給路に合流するバイパス路(44)と、前記バイパス路に設けられる第1開閉弁(46)と、前記バイパス路が前記ガス供給路に合流する合流部分(MP)と前記タンクとの間の前記ガス供給路に設けられる第2開閉弁(48)と、を備え、前記流量調整弁は、前記合流部分と前記燃料電池との間の前記ガス供給路に設けられ、前記制御装置は、前記昇圧装置による昇圧動作が実行されている場合には、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を閉じて、前記昇圧装置から前記タンクに前記ガスを供給し、前記昇圧停止動作が開始された後に、前記第1開閉弁を開けて、前記昇圧装置から前記燃料電池に前記ガスを供給してもよい。これにより、水素ガスを高圧の状態でタンクに貯留することができ、その結果、燃料電池をより長時間運転させることができる。また、第1開閉弁および第2開閉弁によりガスの給排を遮断する操作のみで、昇圧停止動作時に生成されるガスを燃料電池に供給することができる。
【0091】
(5)本発明は、再生型燃料電池システムであって、前記バイパス路が前記ガス供給路から分岐する分岐部分(BP)と前記タンクとの間の前記ガス供給路に設けられ、前記ガスに含まれる水蒸気を分離する気液分離機(64)を備えてもよい。これにより、タンクが湿潤になることを抑制することができる。その結果、タンクを過剰に耐錆にしなくてもタンクの耐久性を向上させることができる。
【0092】
(6)本発明は、再生型燃料電池システムであって、前記制御装置は、前記酸素供給機構と、前記水素供給機構とのうち、前記昇圧停止動作によって減圧される前記ガスの前記圧力が所定の圧力閾値に達するタイミングが速い前記供給機構の前記第2開閉弁を開け、前記タイミングが遅い前記供給機構の前記圧力が前記圧力閾値に達すると、前記タイミングが遅い前記供給機構の前記第2開閉弁を開けてもよい。これにより、酸素ガスの圧力および水素ガスの圧力の両方のガスの圧力を確実に所定値以下に下げることができる。その結果、昇圧装置にブリスタが発生することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0093】
10…再生型燃料電池システム 12…燃料電池
14…昇圧装置 16…供給機構
18…制御装置 22…水電解装置
24…水素昇圧装置 30、64、68、74…気液分離機
36…酸素供給機構 38…水素供給機構
40…ガス供給路 42…タンク
44…バイパス路 46…第1開閉弁
48…第2開閉弁 50…第1減圧弁
52…第2減圧弁 54…第1逆止弁
56…第2逆止弁 58…背圧弁
60…流量調整弁 62…圧力センサ
図1
図2
図3