(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】細胞内生体発光共鳴エネルギ移動を用いた生物活性剤による細胞ターゲット結合の認知
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20231129BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20231129BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231129BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20231129BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231129BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/66
C12N15/12
C07K14/435
C12N5/10
G01N33/53 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022020320
(22)【出願日】2022-02-14
(62)【分割の表示】P 2019007974の分割
【原出願日】2013-12-12
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2012-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593089149
【氏名又は名称】プロメガ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ヒトコ カロリン ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】カークランド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マヒライド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】オハナ ラチェル エフ
(72)【発明者】
【氏名】ロバース マット
(72)【発明者】
【氏名】ウッド キース
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/034054(WO,A2)
【文献】特許第7092691(JP,B2)
【文献】ACS Chem. Biol.,2012年08月15日,Vol.7,pp.1848-1857
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2006年,Vol.45,pp.4936-4940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイシステムであって、
(a)小分子蛍光体に結合された異なる生物活性小分子のライブラリ、
(b)細胞ターゲットと生物発光リポータのタンパク質融合体を発現する細胞、
ここで、該生物活性小分子は、該細胞ターゲットと相互作用したときに、該細胞ターゲットに非共有結合的に結合することができ、かつ
該生物発光リポータの発光スペクトラムが該小分子蛍光体の励起スペクトルと重なる;及び
(c)該生物発光リポータの基質;
を含
み、
前記蛍光体は、カルボキシローダミン類似体である、前記システム。
【請求項2】
前記生物発光リポータは、SEQ ID No.1のポリペプチドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生物活性小分子が細胞透過性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
生物発光リポータに融合された異なる細胞ターゲットを発現する複数の細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年12月12日に出願の米国仮特許出願61/736,429号、2013年3月15日に出願の米国仮特許出願第61/794,461号及び2013年9月19日に出願の米国仮特許出願第61/880,048号の優先権を主張するものであり、これらそれぞれの全体は、参照事項としてここに包含される。
技術分野
【0002】
本発明は、生物活性剤の細胞ターゲットとの細胞内結合の検出及び分析のための組成物及び方法を提供する。特に、蛍光体、生物発光リポータと融合される細胞ターゲット、又は生物発光リポータの部分、成分又はサブユニットに結合される生物活性剤と、細胞ターゲットと生物活性剤との相互作用を検出及び解析する方法が、ここに提供される。
【背景技術】
【0003】
細胞ターゲットによる分子種の相互作用は、細胞生理の理解と、新しい合成薬及び生物薬剤等の治療的介入の開発とに対して、きわめて重要である。特に、上記の相互作用が表現型の応答を媒介する生体細胞内において、ターゲットの関わりを正確かつ効率的に決定するための方法が、必要である。ターゲットの関わりを効率よく調べる能力は、処理のスクリーニングから始まり、薬物リードにヒットするスクリーニングの最適化、並びに治療関連した細胞ターゲットの発見及びキャラクタリゼーションまで網羅する発見プロセスに対して、幅広い影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小分子ライブラリによる表現型のベースのスクリーニングは、薬剤を発見する分野において重要な役割を演じている。このスクリーニングのアプローチを用いて、根底となっている細胞ターゲットの事前知識無しに、例えば病徴の緩和等、表現型の応答を引き出す能力に対して、化合物ライブラリをスクリーニングする。細胞生理を調整することが可能な、例えば小分子等の、生物活性剤を確認するため、このアプローチを用いることができるが、これらの小分子ヒットの生物学的関連性ターゲットを決定することは、大きな技術的な挑戦である。加えて、望ましい表現型の応答を促進する小分子は、オフターゲット相互作用により、生体内での負担をもたらし得る。薬剤選択性を予測し、かつ、潜在的副作用を最小にするためには、オフターゲット相互作用(例えば親和性の低下)を確認することも重要である。今日、生物活性剤のターゲットの特定に用いられる方法の大部分は、選択的部分(例えば、生物活性剤又は関連した化合物)及び選別部分(例えば、親和性タグ又は固体担体)を有する「二官能化」化合物を用いた複合細胞ライセートからのこれらのターゲットの濃縮に頼っている。この濃縮は、これらの化合物のターゲットに対する固有の親和性が不十分であるという化合物の結合特性に基づいているため、共有結合してターゲット(例えば、光クロスリンク)と結合するように、化合物類似体が設計されている。いずれのアプローチによっても、ターゲット分離の有効性及び特異性は重要であり、これらの方法の失敗率は高い。これらのアプローチの失敗は、ターゲットの捕捉が不十分なこと、又は非特異的捕捉のためにバックグラウンドが高いことが原因であり得る。この失敗への寄与因子としては、検出困難なこれらの相対的な弱い相互作用で、低~中程度の親和性により、複数のターゲットを結合している化合物と、検出された相互作用を特徴づけるための、着実で、直接的で、不偏の技術の不足と、相互作用が左右され得る本来の細胞環境内で、ターゲット分離を実行することができないことと、細胞内ターゲットの結合潜在能について、限られた情報しか提供されないことと、固体担体又は官能化小分子へ非特異的に結合することによる偽陽性相互作用の高いバックグラウンドと、が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、本発明は、(a)発色団(例えば蛍光体)に結合される生物活性剤と、(b)生物発光リポータに融合される細胞ターゲットと、(c)生物発光リポータのための基質と、を含むBRETアッセイシステムを提供する。ある実施形態では、生物活性剤は、小分子である。ある実施形態では、生物活性剤は、タンパク機能、例えば、酵素阻害剤又はレセプタ阻害剤、の阻害剤である。ある実施形態では、発色団は蛍光体である。ある実施形態では、蛍光体はカルボキシローダミン類似体である。ある実施形態では、生物発光リポータは、SEQ ID NO.1との配列同一性が、少なくとも70 %(例えば、75 %の同一性...80 %の同一性...85 %の同一性...90 %の同一性、95 %の同一性...98 %の同一性...99 %の同一性)のポリペプチドを含む。ある実施形態では、(b)は、生物発光リポータの、部分、又はサブユニット、又は成分に融合される細胞ターゲットである。ある実施形態では、(b)は、発光を生じるために他のポリペプチドと相互作用を必要とするポリペプチドに融合される細胞ターゲットである。ある実施形態では、(a)及び(b)は、細胞中に存在する。ある実施形態では、(b)は、例えば細胞ターゲット等、着目のタンパクとの融合タンパクとして、細胞内に表現される。ある実施形態では、例えば細胞ターゲットがタンパク錯体である等、細胞ターゲットは、2つ以上の成分、サブユニット又はポリペプチドから成る。ある実施形態では、例えば生物発光リポータはタンパク錯体である等、生物発光リポータは、2つ以上の成分、サブユニット又はポリペプチドから成る。ある実施形態では、(a)は細胞外で加えられ、細胞に進入する。ある実施形態では、(a)は、細胞内及び細胞を囲む培地の両方に存在する。ある実施形態では、(a)は、細胞に結合されて存在し、及び、細胞を囲む培地中に存在する。ある実施形態では、周囲培地の中に存在する(a)の量は、細胞中の量又は細胞に結合される量よりも非常に多く、例えば、少なくとも2倍多く、少なくとも5倍、10倍、30倍又は100倍多い。ある実施形態では、細胞ターゲットは、生物活性剤の結合のパートナーである。ある実施形態では、生物発光リポータの発光スペクトルは、蛍光体の吸収スペクトルと重なる。ある実施形態では、生物活性剤の細胞ターゲットとの結合において、生物発光リポータによる基質の反応生成物への転換により、BRETによる蛍光体の励起及び蛍光体からの発光が、生じる。ある実施形態では、(a)は、発色団に結合される薬剤又は化合物のライブラリの1つである。ある実施形態では、(a)は、蛍光体に結合される薬剤又は化合物のライブラリの1つである。ある実施形態では、(b)は、生物発光リポータに融合される複数の潜在的な細胞ターゲットの1つである。ある実施形態では、(b)は、生物発光リポータに融合される複数の潜在的な細胞ターゲットの1つを表現する細胞のライブラリである。
【0006】
ある実施形態では、本発明は、生物活性剤の細胞ターゲットへの結合を、検出し、分析し、特徴づける等の方法を提供する。ある実施形態では、細胞ターゲットは、主薬剤ターゲットであってもよい。ある実施形態では、細胞ターゲットは、生体内で好ましくない副作用を引き起こし得るオフターゲットの負担である。ある実施形態では、生物活性剤による細胞ターゲットへの結合は、識別可能な生体影響を有しなくてもよい。ある実施形態では、本発明は、(a)発色団(例えば、蛍光体)に結合される生物活性剤と、(b)生物発光リポータに融合される細胞ターゲットと、(c)生物発光リポータのための基質との1つ以上(例えばこれらそれぞれ)を含む細胞を提供する。ある実施形態では、生物活性剤の細胞ターゲットへの結合は、非共有結合である。ある実施形態では、発色団は蛍光体である。ある実施形態では、本発明は、(a)前記細胞ターゲットの、第1の波長(例えば、波長、分光分布等の範囲)でエネルギを発する生物発光リポータとの融合を、細胞内に発現させることと、(b)蛍光体に結合した前記生物活性剤を、前記細胞に接触させることと、ここで、前記蛍光体は前記第1の波長でエネルギを受け取り、かつ、第2の波長(例えば、波長、分光分布などの範囲)でエネルギを発し、(c)前記生物発光リポータのための基質を前記細胞に接触させることと、(d)前記第2の波長でエネルギを検出することと、ここで、前記第2の波長での前記エネルギの存在は、前記細胞ターゲットで前記生物活性剤の相互作用を示し、を含む、生物活性剤と細胞ターゲットとの間の相互作用を検出するための方法を提供する。
【0007】
ある実施形態では、本発明は、(a)前記細胞ターゲットと生物発光リポータとの融合体を提供することと、(b)前記融合体を、発色団(例えば、蛍光体)に結合される前記生物活性剤に、接触させることと、(c)前記融合体を、前記リポータのための基質と接触させることと、(d)前記発色団無しに前記基質と接触された前記融合体と比較した、放射光線の分光分布の変化を検出することと、を含む、生物活性剤と細胞ターゲットとの間の相互作用を検出するための方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、(a)前記細胞ターゲットと生物発光リポータとの融合体を提供することと、(b)前記融合体を、発色団(例えば、蛍光体)に結合した第1の生物活性剤と、前記第2の生物活性剤と、の両方に、接触させることと、(c)前記融合体を、前記リポータのための基質に接触させることと、(d)前記第2の生物活性剤無しに前記第1の生物活性剤及び前記基質に接触された前記融合体と比較した、放射光線の分光分布の変化を検出することを含む、第2の生物活性剤と細胞ターゲットとの相互作用を検出するための方法を提供する。ある実施形態では、放射光線の分光分布の変化は、前記第2の生物活性剤による前記第1の生物活性剤の置換に起因する。ある実施形態では、前記置換は、競合置換である。ある実施形態では、放射光線の分光分布の変化は、細胞ターゲットと生物活性剤との結合能を評価するために用いられる。ある実施形態では、前記第2の生物活性剤は、複数の生物活性剤の1つである。ある実施形態では、放射光線の分光分布の変化は、複数の生物活性剤の細胞ターゲットへの相対的な結合能を評価するために用いられる。ある実施形態では、前記第1及び前記第2の生物活性剤は、合成分子である。ある実施形態では、前記細胞ターゲットは、生体細胞、透過処理された細胞又は細胞ライセートである。ある実施形態では、放射光線の分光分布の変化は、2つの異なる波長又は2つの異なる波長範囲での光強度の比率を計測することで測定される。ある実施形態では、分光分布の変化は、経時的に検出される。ある実施形態では、発色団は蛍光体である。
【0008】
ある実施形態では、本発明は、(a)蛍光体に結合される生物活性剤と、(b)生物発光リポータの構造上補完的なペプチドに融合される第1の相互作用パートナーと、(c)生物発光リポータの構造上補完的なポリペプチドに融合される第2の相互作用パートナーと、(d)生物発光リポータのための基質と、を含み、第1及び第2の相互作用パートナーは相互作用して、相互作用錯体を形成し、第1の相互作用パートナー、第2の相互作用パートナー及び/又は相互作用錯体は、生物活性剤のための結合パートナーであるBRETアッセイシステムを提供する。ある実施形態では、第1の相互作用パートナー及び第2の相互作用パートナーは、タンパク錯体を形成するために相互作用するタンパク又はポリペプチドである。ある実施形態では、第1の相互作用パートナー及び第2の相互作用パートナーは、構造上補完的なポリペプチドの相互作用によって接合される。ある実施形態では、構造上補完的なポリペプチド同士は、第1の相互作用パートナー及び第2の相互作用パートナーの相互作用によって接合される。ある実施形態では、第1の相互作用パートナー及び第2の相互作用パートナーの相互作用は、発光量の増加により測定される。ある実施形態では、第1及び第2の相互作用パートナーは、生物活性剤の存在下又は不存在下で、相互作用錯体を形成する。ある実施形態では、相互作用錯体は、生物活性剤のための結合パートナーであるが、第1又は第2の相互作用パートナー単独ではいずれも、生物活性剤のための結合パートナーとはならない。ある実施形態では、相互作用パートナーの一方は、生物活性剤のための結合パートナーであるが、他方はそうではない。ある実施形態では、相互作用錯体の生成は、生物活性剤の相互作用パートナーへの結合を必要とする。ある実施形態では、相互作用錯体生成は、生物活性剤の結合から独立してなされる。ある実施形態では、本発明は、(a)蛍光体に結合される生物活性剤と、(b)生物発光リポータの構造上補完的なペプチドに融合される細胞ターゲットと、(c)生物発光リポータの構造上補完的なポリペプチドと、(d)生物発光リポータのための基質と、を含むBRETアッセイシステムを提供する。ある実施形態では、生物発光リポータの補完的なペプチド及びポリペプチドは、協働して、活性生物発光リポータ酵素を生成する。ある実施形態では、補完的なペプチド並びにポリペプチドの細胞ターゲット及び対合に、生物活性剤を結合すれば、生物発光リポータ酵素により基質が反応生成物に転換し、これにより、BRETによる蛍光体の励起及び蛍光体から蛍光発光が生じる。
【0009】
ある実施形態では、本発明は、(a)蛍光体に結合される生物活性剤と、(b)生物発光リポータの補完的なペプチドに融合される第1の結合パートナーと、(c)生物発光リポータの補完的なポリペプチドに融合される第2の結合パートナーと、(c)生物発光リポータのための基質と、を含むアッセイシステムが提供される。ある実施形態では、生物発光リポータの補完的なペプチド及びポリペプチドは、協働して、活性生物発光リポータ酵素を生成する。ある実施形態では、第1及び第2の結合パートナーが相互作用すれば、生物活性剤は、相互作用のパートナーと結合して、補完的なペプチド及びポリペプチドの対合が発生し、生物発光リポータ酵素により、基質が反応生成物に転換して、その結果、BRETによる蛍光体の励起及び蛍光体からの蛍光発光が生じる。
【0010】
ある実施形態では、生物活性剤は、蛍光又は発光クエンチャ(例えば、Dabcyl)に結合される。この実施形態では、結合していない生物活性剤の滴定は、シグナルにゲインを生じさせる。
【0011】
ある実施形態では、本発明は、ここに記載されるシステムのいずれか(例えば、BRETイメージング、電荷結合素子カメラによる等)のイメージングを提供することにより、蛍光の位置(例えば、細胞内、細胞外の、その他)及び/又はシステムの成分(例えば、生物活性剤、細胞ターゲット等)の存在並びに/若しくは相互作用から生じるBRETシグナルを、確認並びに/若しくは識別する。
ある実施形態では、ここに記載されるシステム及び方法(典型的な実施形態については実施例23参照)は、細胞内選択性及び推定上の細胞ターゲットのパネルに対する生物活性剤の親和性の測定のために有用である。ある実施形態では、BRETに対する効果は、生物活性剤としてモニターされ/細胞ターゲット錯体は、競合的に阻害される。ある実施形態では、親和性は、競合破壊を介して発生するIC50値によって推量される。ある実施形態では、阻害剤の、細胞ターゲットの個々の領域への親和性は、生物発光リポータの遺伝子を細胞ターゲットの分別された領域に融合させることを介して、決定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の略図を示す。(A)蛍光体が結合した生物活性剤及び生物発光リポータが結合された細胞ターゲット。(B)生物活性剤の細胞ターゲットへの結合。(C)リポータ基質を添加してBRETを行う。(D)過剰な未結合生物活性剤による置換は、結果としてBRET及び蛍光の損失になる。
【
図2】
図2は、生体細胞中のNANOLUC-HDAC6融合に対するBRETアクセプタとして、2つの異なる蛍光体-SAHA誘導体のBRETプロファイルを比較するグラフを示す。
【
図2-2】
図2は、生体細胞中のNANOLUC-HDAC6融合に対するBRETアクセプタとして、2つの異なる蛍光体-SAHA誘導体のBRETプロファイルを比較するグラフを示す。
【
図3】
図3は、アッセイパフォーマンスにおける発現の希釈の効果を表すグラフを示す。第1のグラフは、NANOLUC融合HDAC6から蛍光体を結合されたSAHAの競合置換を用いて、BRETアッセイウインドウ上の発現の低下の効果を実証する。第2のグラフは、BRETアッセイウインドウ上の発現の低下の効果とともに、NanoLuc-ヒスタミンHIレセプタへの薬剤トレーサ結合に対して観察された化合物潜在能(EC50)を示す。
【
図3-2】
図3は、アッセイパフォーマンスにおける発現の希釈の効果を表すグラフを示す。第1のグラフは、NANOLUC融合HDAC6から蛍光体を結合されたSAHAの競合置換を用いて、BRETアッセイウインドウ上の発現の低下の効果を実証する。第2のグラフは、BRETアッセイウインドウ上の発現の低下の効果とともに、NanoLuc-ヒスタミンHIレセプタへの薬剤トレーサ結合に対して観察された化合物潜在能(EC50)を示す。
【
図4】
図4は、プロドラッグ処理のための細胞環境の必要条件を実証するグラフを示す。
【
図5】
図5は、不浸透性の薬剤トレーサのエントリを強化する透過化処理薬剤の使用の能力を実証するグラフを示す。
【
図5-2】
図5は、不浸透性の薬剤トレーサのエントリを強化する透過化処理薬剤の使用の能力を実証するグラフを示す。
【
図6】
図6は、NANOLUC融合p38からの蛍光体結合BIRB-誘導体の競合置換を表しているグラフを示す。
【
図7】
図7は、NANOLUC融合p38からの蛍光体結合BIRB誘導体の反応速度の測定を表しているグラフを示す。
【
図8】
図8は、典型的な蛍光体結合生物活性剤及びここに記載される実施形態において使用される他の化合物を示す。
【
図8-2】
図8は、典型的な蛍光体結合生物活性剤及びここに記載される実施形態において使用される他の化合物を示す。
【
図9】
図9は、ここに記載される実施形態におけるレニラルシフェラーゼ及びNanoLucルシフェラーゼとのp38融合の比較を示す。
【
図9-2】
図9は、ここに記載される実施形態におけるレニラルシフェラーゼ及びNanoLucルシフェラーゼとのp38融合の比較を示す。
【
図10】
図10は、NANOLUC融合の発現が内因性のレベルに近ければ、薬剤トレーサとの高親和性相互作用が、最適なS/B比で実現されることを示す。
【
図10-2】
図10は、NANOLUC融合の発現が内因性のレベルに近ければ、薬剤トレーサとの高親和性相互作用が、最適なS/B比で実現されることを示す。
【
図11】
図11は、BIRB-TOM接合体へ結合するNanoLuc-p38alphaの、BIRB-TMR接合体と比較したドーズ応答曲線を示す。
【
図12】
図12は、BIM-TOM接合体に結合するPKCアルファ-NanoLucの、BIM-TMR接合体と比較したドーズ応答曲線を示す。
【
図13】
図13は、生体細胞中の具体的なBRET応答の検出を表すグラフを示す。
【
図14】
図14は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファに対するPBI-4838の親和性を示す。
【
図14-2】
図14は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファに対するPBI-4838の親和性を示す。
【
図14-3】
図14は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファに対するPBI-4838の親和性を示す。
【
図15】
図15は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファに対するPBI-4838の親和性を示す。
【
図15-2】
図15は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファに対するPBI-4838の親和性を示す。
【
図15-3】
図15は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファに対するPBI-4838の親和性を示す。
【
図16】
図16は、野生型BRD4対変異体BRD4に対するPBI-4966の相対親和性を示す。
【
図16-2】
図16は、野生型BRD4対変異体BRD4に対するPBI-4966の相対親和性を示す。
【
図17】
図17は、本発明の方法を用いた薬剤トレーサの競合置換により、構造的に異なる化合物を特定することができることを示す。
【
図17-2】
図17は、本発明の方法を用いた薬剤トレーサの競合置換により、構造的に異なる化合物を特定することができることを示す。
【
図17-3】
図17は、本発明の方法を用いた薬剤トレーサの競合置換により、構造的に異なる化合物を特定することができることを示す。
【
図18】
図18は、細胞内で蛍光体薬剤接合体を用いて薬剤/ターゲット相互作用をモニターする能力を示す。
【
図19】
図19は、TNTにおける具体的なBRET応答を表するグラフを示す。
【
図20】
図20は、NanoLuc-EGFRへの蛍光ラベルサイトカインの結合の測定を表するグラフを示す。治療用抗体、ベクティビックス、アービタックス及びハーセプチンの親和性は、サイトカインの競合置換によっても実証される。
【
図20-2】
図20は、NanoLuc-EGFRへの蛍光ラベルサイトカインの結合の測定を表するグラフを示す。治療用抗体、ベクティビックス、アービタックス及びハーセプチンの親和性は、サイトカインの競合置換によっても実証される。
【
図21】
図21は、補完的なペプチド(SEQ ID NO:4)単独で補完され、又はTMRに接合される補完的なペプチド(SEQ ID NO:4)で補完される、補完的なポリペプチド(SEQ ID NO:5)に対する、波長スキャンを含むものであり、効率的なエネルギ移動を実証する。
【
図21-2】
図21は、補完的なペプチド(SEQ ID NO:4)単独で補完され、又はTMRに接合される補完的なペプチド(SEQ ID NO:4)で補完される、補完的なポリペプチド(SEQ ID NO:5)に対する、波長スキャンを含むものであり、効率的なエネルギ移動を実証する。
【
図22】
図22は、HaloTag(NL-HT)に融合されるNanoLuc、及び、蛍光ノンクロロTOM(NCT)ダイ(PBI-5074)に結合される補完的なペプチドで補完される補完的なポリペプチド(SEQ ID NO:6)、に対する波長スキャンを含む。
【
図23】
図23は、三成分の相互作用の概略図を示し、ここでは、構造上補完的なペプチド及び生物発光タンパクのポリペプチドの錯体によるエネルギ移動を用いて、相互作用パートナーの相互作用を計測することが可能であることが示される。この概略図では、生物発光タンパクの補完的なポリペプチドに融合されるGPCR(第1の相互作用パートナー)及び生物発光タンパクの補完的なペプチドに融合されるGPCR相互作用タンパク(第2の相互作用パートナー)は、これらが(相互作用錯体を生成するために)相互作用する際に、生物発光錯体を生成する。これにより、二成分相互作用の測定が可能になる。エネルギ移動のための蛍光部分を支持する小分子GPCRリガンドが、このシステムと相互作用するならば、エネルギ移動が生じる。したがって、二成分タンパク-タンパク相互作用及び三成分の薬剤-タンパク-タンパク相互作用は、同じ実験で計測することができる。
【
図24】
図24は、11Sペプチド及びBRD4の細胞発現融合体とBRD4リガンドに接合される外因付加NCTとの間のBRETデータが、PEP-80(11Sへの構造補完体)の存在に依存することを実証しているグラフを示すものであり、(A)移植用提供強度、(B)アクセプタ強度である。
【
図25】
図25は、11Sペプチド及びBRD4の細胞発現融合体とiBETに接合される外因付加NCTとの間のBRETデータが、PEP-80(11Sへの構造補完体)の存在に依存することを実証しているグラフを示すものであり、(A)IμMPEP-80、(B)PEP-80対照が無い場合である。
【
図26】
図26は、BRETシグナル(アクセプタ及びドナー強度)が、促進性11S-BRD4/114-ヒストンH3.3錯体に依存することを示す。
【
図27】
図27は、蛍光BRD4リガンド(iBET-NCT/PBI-4966)が、11S-BRD4/114-ヒストンH3.3錯体を置換することができることを示す。
【
図27-2】
図27は、蛍光BRD4リガンド(iBET-NCT/PBI-4966)が、11S-BRD4/114-ヒストンH3.3錯体を置換することができることを示す。
【
図28】
図28は、11S-BRD4/114-ヒストンH3.3錯体の非蛍光性iBET-151IC50競合置換を示す。
【
図29】
図29は、クラスI HDACs(HDAC1、2、3及び8)が、SAHAのこれらの個々のターゲットに対する親和性及び選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う具体的なBRETシグナルを発生することを示す。
【
図29-2】
図29は、クラスI HDACs(HDAC1、2、3及び8)が、SAHAのこれらの個々のターゲットに対する親和性及び選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う具体的なBRETシグナルを発生することを示す。
【
図30】
図30は、クラスIIb HDACs(HDAC6及び10)は、HDAC6の分別された領域と同様に、SAHAのこれらの個々のターゲットに対する親和性及び選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMによる具体的なBRETが発生することを示す。
【
図30-2】
図30は、クラスIIb HDACs(HDAC6及び10)は、HDAC6の分別された領域と同様に、SAHAのこれらの個々のターゲットに対する親和性及び選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMによる具体的なBRETが発生することを示す。
【
図31】
図31は、クラスIIa HDACsは、SAHAのクラスI及びIIb HDACsに対する選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う大きなBRETを発生しないことを示す。
【
図31-2】
図31は、クラスIIa HDACsは、SAHAのクラスI及びIIb HDACsに対する選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う大きなBRETを発生しないことを示す。
【
図31-3】
図31は、クラスIIa HDACsは、SAHAのクラスI及びIIb HDACsに対する選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う大きなBRETを発生しないことを示す。
【
図31-4】
図31は、クラスIIa HDACsは、SAHAのクラスI及びIIb HDACsに対する選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う大きなBRETを発生しないことを示す。
【
図31-5】
図31は、クラスIIa HDACsは、SAHAのクラスI及びIIb HDACsに対する選択性の報告に基づき予測される通りに、SAHA-TOMを伴う大きなBRETを発生しないことを示す。
【
図32】
図32は、BRETを介して決定される、SAHA- TOMと錯体化される個々のHDAC- NanoLuc融合体に対するSAHAの競合置換の結果を示す。これらの濃度反応曲線から、グラフの隣の表に示すようにIC-50値は算出可能である。
【
図33】
図33(左)は、BRETを介して決定される、個々のHDAC-NanoLuc融合体に対するIC-50値とKi値の間の変換を示す。Cheng-Prusoff方程式は、この変換に用いられた。
図33(右)は、BRETを介して決定される、個々のHDAC/NanoLuc融合タンパクに対するSAHAの相対親和性を表している図を示す。
【
図34】
図34は、特異性対照として、SAHAの存在下又は不存在下における、細胞内HDAC10-NLuc/PBI-4968+/-SAHA錯体のBRETイメージングを示す。
【
図35】
図35は、特異性対照として、SAHAの存在下又は不存在下における、細胞内NLuc-HDAC6/PBI-4968+/-SAHA錯体のBRETイメージングを示す。
【
図36】
図36は、SAHA結合細胞内SAHA-TOM(PBI-4968)のHDAC10及びHDAC6によるBRETイメージング試験のドットプロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、生物活性剤の細胞ターゲットへの細胞内結合の検出及び分析のための組成物及び方法を提供する。特に、蛍光体等の発色団に結合される生物活性剤、生物発光リポータタンパクに融合される潜在的な細胞ターゲット、及び、それらを有する細胞ターゲットと生物活性剤との相互作用(
図1参照)を検出及び分析する方法が、ここに提供される。
【0014】
第1の実体(例えば生物活性剤)と、第2の実体(例えば細胞ターゲット)との相互作用は、第1の実体に接続され、融合され、結合され、リンク等される第3の実体(例えば蛍光体)と、第2の実体に接続され、融合され、結合され、リンク等される第4の実体(例えば生物発光リポータタンパク)との間の、シグナル伝達(例えば、エネルギ伝達(例えば、蛍光、光エネルギ、共鳴、BRETによる等))によって生じるシグナルの検出/測定を通して、検出、特徴づけ、定量、分析等される。第1及び第2の実体の相互作用及び/又は結合は、第3及び第4の実体を、十分な程に近接させることにより、一方から他方へのシグナル伝達(例えば、エネルギ移動)を可能にする。ある実施形態では、第4の実体(例えば生物発光リポータタンパク)は、エネルギ(例えばその基質との相互作用に)を発し、発されたエネルギは、第3の実体(例えば、蛍光体)によって吸収されることにより、第3の実体が、第4の実体とははっきりと異なるエネルギ(例えば波長の異なる光)を発するようになる。この実施形態では、第4の実体の基質(例えば生物発光リポータ)のシステムへの添加に際して、第3の実体から発されるエネルギ(例えば第3の実体の放出最大光)の検出は、第1及び第2の実体の相互作用を示す。ある実施形態では、第4の実体(例えば、生物発光リポータタンパク)のシグナル出力の様々な状況下での測定に基づき、第1及び第2の実体の結合の所要時間、反応速度、親和性、強度及び/又は特異性が検出、計測、定量、決定、取調べ等される。
【0015】
個別の実施形態では、生物発光リポータタンパクに融合される細胞ターゲット及び例えば蛍光体等の発色団に結合される生物活性剤が、提供される(例えば、細胞内、細胞外、ライセート内及び生体外等)。生物発光リポータタンパクの基質が、システムに加えられる。生物活性剤と細胞ターゲットとの間で相互作用(例えば結合)が発生したならば、生物発光リポータタンパク及び発色団(例えば蛍光体)は、BRETが発生するために十分な程に近接され、発色団(例えば、蛍光体)から検出可能なシグナルが発される。
【0016】
ある実施形態では、相互作用(例えば錯体を生成する)して生物発光リポータタンパク(又はタンパク錯体)を生成することができる補完的なペプチド及びポリペプチドが、用いられる。ある実施形態では、補完的なペプチドは第1の相互作用パートナーに融合され、補完的なポリペプチドは第2の相互作用パートナーに融合される。ある実施形態では、第1及び第2の相互作用パートナーは、錯体(例えば相互間の結合による)を生成する。ある実施形態では、第1及び第2の相互作用パートナーは、その一方又は両方が生物活性剤と相互作用する場合は、相互作用錯体を生成する。ある実施形態では、第1及び第2の相互作用パートナーは、生物活性剤の存在下又は不存在下で、相互作用錯体を生成する。ある実施形態では、相互作用錯体の形成が、補完的なペプチド及びポリペプチドを接合し、生物発光リポータを生成する。ある実施形態では、生物発光リポータの形成は、相互作用錯体の形成の検出を可能にする。ある実施形態では、蛍光体は、生物活性剤に結合される。ある実施形態では、相互作用錯体が生成される際に、エネルギが蛍光体から生物発光リポータへ移動し、生物活性剤が、相互作用パートナーの一方又は相互作用錯体に結合される。ある実施形態では、蛍光体は、第1及び第2の相互作用パートナーの相互作用の検出又は測定を可能にする。ある実施形態では、蛍光体は、生物活性剤のその結合パートナー(例えば、第1の相互作用パートナー、第2の相互作用パートナー及び/又は相互作用錯体)への結合の検出又は測定を可能にする。
【0017】
ある実施形態では、生物発光リポータの補完的なペプチドは、着目のターゲットに融合される。生物活性剤の着目のターゲットへの相互作用を検出又は計測するため、補完的なポリペプチド及び蛍光体に結合される生物活性剤が、提供される。ある実施形態では、生物発光リポータの補完的なペプチドは、着目のターゲットに融合され、生物発光リポータタンパクの補完的なポリペプチド及び蛍光体に結合される生物活性剤は、錯体のメンバーを多成分発光ドナーの成分にリンクすることにより、蛍光標識された例えば生物活性剤等のリガンドのタンパク錯体への近接度を検出する(例えばヘテロダイマー又はホモダイマーレセプタへの選択的リガンド結合を検出する)ために適用される。本出願を、このように用いて、疾患病理学における役割を有し得るタンパク錯体内で、ターゲットの関わりをモニターすることができる。
【0018】
ある実施形態では、細胞ターゲット及び生物発光リポータ融合体は、アッセイを実行しようとする細胞内に発現される。ある実施形態では、融合体は、細胞ターゲットに対する本来の存在率で又はその付近で、発現される。ある実施形態では、蛍光体結合生物活性剤は、細胞外で加えられ(例えば培地に加えられ)、拡散、能動輸送、受動輸送、エンドサイトーシス又はあらゆる適切なメカニズムにより細胞に進入する。ある実施形態では、様々な量の蛍光体結合生物活性剤を細胞に加えて、結合反応速度論をアッセイし、結合親和力をアッセイし、十分なシグナルを提供等する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、生物活性剤と細胞ターゲット(例えば既知の又は未知の)との間の細胞内相互作用の検出のための、組成物、方法及びシステムを提供する。ある実施形態では、生物発光リポータ及び細胞ターゲットの融合体が、細胞内に発現される。生物活性剤は、蛍光体に結合され、細胞に導入される(例えば、蛍光体と生物活性剤との接合体は、細胞透過性である、細胞は透過処理される、等。)。生物発光リポータタンパクの基質は、生物活性剤の添加の前に、同時に、又は後に、細胞に添加される。蛍光体からの蛍光発光(BRETの結果として)の検出は、生物活性剤と細胞ターゲットとの間での細胞内相互作用(例えば結合)を示す。ある実施形態では、生物発光リポータに融合される細胞ターゲットは、自然な細胞存在率で(例えば、本来の細胞ターゲットと比較して、又は融合されたターゲットの固有の生物学的機能に適切なレベルで)、発現される。ある実施形態では、生物活性剤の細胞ターゲットとの相互作用が、細胞内で検出される。
【0020】
ある実施形態では、生物活性剤と細胞ターゲットとの間の相互作用の特徴が、細胞の条件又はシステムの条件を変えることによって調べられる。例えば、ある実施形態では、細胞ターゲットの競合結合剤(例えば未結合の生物活性剤)を、細胞に加えて、蛍光体結合生物活性剤と競合させる。
【0021】
ある実施形態では、生体発光リポータタンパクタグが付加された細胞ターゲットのライブラリが、提供される(例えば、溶液中、ライセート中、表面に固定、細胞内に発現、等。)。ある実施形態では、既知の細胞ターゲットが無い、又は、細胞ターゲットについての知識が不確かな又は不完全である状況で、生物活性剤が提供される。生物活性剤の細胞ターゲットは、ライブラリに生物活性剤を加えて、どの細胞ターゲット融合体が、生物活性剤が結合された蛍光体のBRETによって誘発された蛍光を生じるかを決定することにより、決定される。ある実施形態では、タンパク融合体をコード化する核酸又は核酸を含んだベクター(例えば、プラスミド、BacMamウイルス、レンチウイルスなど)の収集として、生体発光リポータタグ付加細胞ターゲットのライブラリが、提供される。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクタグ付加細胞ターゲットが、細胞内に発現される。ある実施形態では、無細胞翻訳反応中の核酸を翻訳することにより、生物発光リポータタグ付加細胞ターゲットのライブラリが、提供される。ある実施形態では、細胞ターゲット融合体又は細胞ターゲット融合体を発現している細胞のライブラリは、マイクロプレートフォーマットで提供される。この実施形態では、生物活性剤(例えば、表現型のアッセイ又はスクリーンを通して確認されるもの等)の細胞ターゲットのライブラリ全体との相互作用を、ハイスループットな方法で調べる(例えば、細胞内に、ライセート中、溶液中等。)ことができる。ある実施形態では、生物発光リポータタグ付加細胞ターゲットは、タンパク集積を形成するために、固体表面に固定される。例えば、ある実施形態では、生物発光リポータに加えて、細胞ターゲットは、タグを有する又はタンパク(例えば、HALOTAG、プロメガ)に結合される融合体としても発現され、これにより、タンパクが固体表面(例えば、適切なリガンド(例えば、HALOTAGリガンド)を示す表面)に共有結合で固定できるようになる。特定の実施形態では、潜在的な生物活性剤のライブラリ(例えばヒット化合物又は薬らしい小分子)が、システム(例えば、配列)に加えられ、そして、BRETを生じることができるあらゆるペアが識別される。ある実施形態では、生物活性剤のライブラリの全体又は一部の細胞ターゲットは、未知である。
【0022】
特定の実施形態では、ここにおける組成物、方法及びシステムは、生物活性剤とエネルギアクセプタ(例えば、蛍光体、発色団)との接合体を提供する。ある実施形態では、生物活性剤は、細胞のバイオロジーと相互作用可能な、あらゆる小分子(例えば、>2000ダルトン、>1000ダルトン、>500ダルトン等)、巨大分子、合成分子又は分子複合体である。ある実施形態では、エネルギアクセプタは、エネルギ吸収(例えば共鳴エネルギ移動)によって誘発される場合に、シグナル(例えば、光、熱、化学反応、蛍光、共鳴エネルギ等)を発生、提示及び/又は発することができる実体である。ある実施形態では、生物活性剤及びエネルギアクセプタ(例えば、蛍光体、発色団)は、あらゆる適切な構造体又はメカニズム(例えば、融合体構築体として(例えばペプチドリンカーの存在下又は不存在下で)表現し、化学的に(例えば、直接又は間接的に)リンクし、酵素処理でリンクし、リンカー(例えば、ペプチド、核酸、ポリマー、エステル結合、PEGリンカー、炭素鎖等)によってリンクし等)により、融合、接続、結合その他がなされる。ある実施形態では、生物活性剤とエネルギアクセプタ(例えば、蛍光体に結合される生物活性剤)との接合体が、非自然の化学合成(例えば、自然細胞中に存在しない化学反応の意図的な実行)によって生成される。リンケージのタイプは、制限的であってはならない。
【0023】
ここで用いられる例では、用語「生物活性剤」は一般に、あらゆる生理的又は薬理的に活性な物質又は検出のために適切な物質のことをいう。ある実施形態では、生物活性剤は、潜在的な治療的化合物(例えば小分子、ペプチド、核酸等)又は薬らしい分子である。ある実施形態では、生物活性剤は、非自然の化学合成(例えば、自然細胞中に存在しない化学反応の意図的な実行)によって生成される。ここに記載される実施形態で用いられる生物活性剤は、サイズ又は構造により制限されない。
特定の実施形態では、生物活性剤のライブラリ(例えば、>10の薬剤、>50の薬剤、>100の薬剤、>500の薬剤、>1000の薬剤、>5000の薬剤、>10,000の薬剤、>50,000の薬剤等)が、提供される。ある実施形態では、生物活性剤のライブラリをスクリーニングするためのシステム、方法及び組成物が、提供される。ある実施形態では、本発明は、表現型の効果及び/又は活性を発生させ、引き起こし、誘導する等の原因となるライブラリ中の生物活性剤を識別する手段を提供する。ある実施形態では、本発明は、生物活性剤(例えば、表現型の効果や活性の原因である生物活性剤)の細胞ターゲットを識別する手段を提供する。
【0024】
ここで用いられる例では、用語「エネルギアクセプタ」は、あらゆる小分子(例えば、発色団)、巨大分子(例えば、自動蛍光タンパク、フィコビリンタンパク、ナノ粒子、表面等)、又はエネルギ吸収(例えば共鳴エネルギ移動)に応じて迅速に検出可能なシグナルを生成する分子複合体のことをいう。特定の実施形態では、エネルギアクセプタは、蛍光体又はその他の検出可能な発色団である。適切な蛍光体の非限定的な例としては、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシン、テキサスレッド等)、シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン等)、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシル及びプロダン誘導体)、オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンズオキサジアゾール、ベンゾオキサジアゾール等)、ピレン誘導体(例えば、カスケードブルー)、オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170等)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー等)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等)、テトラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン等)、CF dye(Biotium)、BODIPY(インビトロゲン)、ALEXA FLuoR(インビトロゲン)、DYLIGHT FLUOR(サーモサイエンティフィック、Pierce)、ATTO及びTRACY(シグマアルドリッチ)、FluoProbes(Interchim)、DY及びMEGASTOKES(Dyomics)、SULFO CY dye(CYANDYE、LLC)、SETAU及びSQUARE DYES(SETA BioMedicals)、QUASAR及びCAL FLUOR dyes(Biosearch Technologies)、SURELIGHT DYES(APC、RPE、PerCP、フィコビリソーム)(Columbia Biosciences)、APC、APCXL、RPE、BPE(Phyco-Biotech)、自動蛍光タンパク(例えば、YFP、RFP、mCherry、mKate)、量子ドットナノクリスタル、等が挙げられる。ある実施形態では、蛍光体は、ローダミン類似体(例えば、カルボキシローダミン類似体)であり、これは例えば米国特許出願第13/682,589号に記載されるそれら等であり、この文献の全体は、参照事項として本願に包含される。いくつかのこういった蛍光体はここでは、実施例8に記載される。ある実施形態では、BRET効率は、エネルギアクセプタとしてのローダミン類似体(例えば、カルボキシローダミン類似体)の技術的な特徴によって、他の蛍光体と比較して大きく高められる。例えば、これらのダイは、EC50が左方にシフトし、非特異的なバックグラウンドが低いが、それは、一部の実施形態で使用するためには有利である。
【0025】
ここで用いられる例では、用語「TOM」及び「NonChloroTOM」(又は、「NCT」)は、同じタイプの蛍光体のことをいい、用途を通じて互換可能に用いられる。
【0026】
特定の実施形態では、組成物、方法及びシステムは、ここでは、細胞ターゲットと生物発光リポータタンパク(例えば、ルシフェラーゼ)との融合体を提供する。ある実施形態では、細胞ターゲット及び生物発光リポータタンパクは、あらゆる適切な構造体又はメカニズム(例えば、融合体構築体として発現(例えば、ペプチドリンカーの存在下又は不存在下で)され、化学的にリンク(例えば、共有結合性又は非共有結合により)され、酵素にリンクされ、リンカー(例えば、ペプチド、核酸、他のポリマー(例えば、エステル結合、PEGリンカー、炭素鎖等))によってリンクされ、等)によって、融合、結合、接続等される。ある実施形態では、アミノ酸鎖(例えば、3~100個アミノ酸)が、細胞ターゲットと生物発光リポータタンパクとを接続するために用いられる。ある実施形態では、細胞ターゲットも生物発光リポータも、その構造及び/又は機能について、融合体又はリンカーの存在によって影響を受ける(例えば大きく影響を受ける)ことはない。特定の実施形態では、リンカーは、活性又はこれら要素の一方又は両方ともを失わずに、融合を可能にする。別の実施形態では、アミノ酸リンカーは、蛍光体とのエネルギ移動のために伝えられる生物発光体を、適切に、離間及び/又は配向させる。
【0027】
ある実施形態では、細胞ターゲットは、生物活性剤(例えば、小分子、タンパク、核酸、脂質等)のためのあらゆる適切な結合/相互作用パートナー(例えば、レセプタ、酵素、タンパク錯体)を含む。しかしながら、ある実施形態では、本発明を実行するためには、細胞ターゲットと生物活性剤間の相互作用についての知識が要求されない。特定の実施形態では、細胞ターゲットは、タンパク又はタンパク錯体であり、これは、生物活性剤に結合し、又はそうでなければ生物活性剤と相互作用(例えば、結合親和力を有した)する。さらなる特定の実施形態では、細胞ターゲットは、受容体タンパク又は酵素であり、これは、小分子生物活性剤に結合し、又はそうでなければ小分子生物活性剤と相互作用(例えば、結合親和力を有した)する。本発明は、細胞ターゲットの同一性、タイプ又はクラスによって制限されない。特定の実施形態では、何百、数千、数万の、さらにこれ以上の異なる細胞ターゲットのライブラリは、本発明への使用が見出される。細胞ターゲットの例としては、核酸(例えば、DNA又はRNA)、多糖類又はポリペプチドを有するこれらのいずれかを含む錯体が含まれ得る。ある実施形態では、細胞ターゲットは、Gタンパク結合レセプタ又はプロテインキナーゼである。
【0028】
特定の実施形態では、生物発光リポータは、ルシフェラーゼである。ある実施形態では、ルシフェラーゼは、ガウシア、鞘翅類(例えば、ホタル)、ウミシイタケ、ウミホタル、発光エビ、エクオリン、その変異体、その一部、その変形、及びここに記載されるシステム及び方法のために適切なあらゆる他のルシフェラーゼ酵素に見出されるそれらから選択される。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクは、発光エビからの改質、改良されたルシフェラーゼ酵素(例えば、Promega CorporationからのNANOLUC酵素、SEQ ID NO:1、又は、少なくともそれとの同一性が70%のシーケンス(例えば、>70 %、>80 %、>90 %、>95 %))である。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクは、熱安定性のPhoturis pennsylvanicaルシフェラーゼ又はそれと少なくとも70 %(例えば、>70 %、>80 %、>90 %、>95 %)の同一性を有する配列である。典型的な生物発光リポータは、例えば、米国特許出願番号第2010/0281552号及び米国特許出願番号第2012/0174242号に記載され、これらの文献の全体は、参照事項として本願に包含される。
【0029】
ある実施形態では、生物発光リポータタンパクは、NANOLUCを含む(米国特許出願番号第2010/0281552号及び米国特許出願番号第2012/0174242号を参照のこと、これらの文献の全体は、参照事項として本願に包含される)。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクは、生物発光特徴を保持するSEQ ID NO:1に対しての同一性が、少なくとも70 %(例えば、>70 %、>80 %、>90 %、>95 %)のポリペプチドを含む。特定の実施形態では、NANOLUC酵素又はその変形例の使用は、ここに記載されるBRETアッセイの使用を可能にする特徴(例えば、シグナル強度、輝度、高い光出力、狭いスペクトラム等)を提供する。ある実施形態では、NANOLUCの光出力が高いため、例えばDNAエンコードNANOLUC等、生理的に関連性のある状況下でのアッセイを遂行するために有用なアッセイ成分を、低濃度(例えば>1μΜ、>100nM、>10nm、>1nm等)とすることができる。ある実施形態では、NANOLUCは、表現型スクリーンで識別される細胞ターゲットのキャラクテリゼーションにおいて、BRETが使用できるようになる。
【0030】
ある実施形態では、生物発光リポータタンパクのための基質が提供される。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクは基質を反応生成物に変換し、副生成物として光エネルギを発する。ある実施形態では、基質は、ルシフェラーゼ酵素のための基質である。ある実施形態では、基質は、セレンテラジン(例えばフリマジン)の構造変異種又は誘導体である。ある実施形態では、基質は、例えばPromega社からのNANOLUC酵素(例えば、SEQ ID NO:1)等、発光エビからの改質、改良されたルシフェラーゼ酵素のための基質である。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクのためのプロ基質が提供され、これは、化学又は物理プロセス(例えば、加水分解、酵素反応、光開裂等)によって基質を生成する。ある実施形態では、プロ基質は、セレンテラジン、セレンテラジン誘導体、セレンテラジンの構造的又は機能的な等価物、セレンテラジンに実質的に(例えば構造的に及び/又は機能的に)等価な分子、又は機能的又は構造的にセレンテラジンと類似の分子、を含む。ある実施形態では、生物発光リポータタンパクは、セレンテラジン、セレンテラジン誘導体、セレンテラジンの構造又は機能的等価性、又はセレンテラジンの実質的な等価物を、セレンテラミド、セレンテラミド誘導体、セレンテラミドの構造的又は機能的な等価物、又はセレンテラミドの実質的な等価物に変換し、副生成物として光エネルギを放つ。
【0031】
ある実施形態では、蛍光体及び生物発光リポータは、(例えば生物発光リポータの)発光と(例えば蛍光体の)励起スペクトラムとの十分な重複部分を示して、これら2つの間に(例えば無放射ダイポールダイポールカップリングにより)効率的なエネルギ移動を提供するように、選択される。ある実施形態では、生物発光リポータのピークの発光は、蛍光体のピークの発光によって、実質的に隔てられ、例えば波長で、少なくとも80nm、100nm、120nm、140nm等隔てられている。特定の実施形態の中に、蛍光体及び生物発光リポータペアのフォースター距離は、小さい(例えば、>20nm、>10nm、>5nm、>3nm等)。この実施形態では、フォースター距離が短いため、蛍光体と生物発光リポータとが、エネルギ移動発生するために非常に近接されなければならなくなるという要求が生じる。したがって、短いフォースター距離は、異常及び/又はバックグラウンドシグナル(例えば、蛍光体及び/又はリポータを拡散させることにより形成される)を引き下げる。
【0032】
特定の実施形態では、着目のタンパクの及び/又は生物発光リポータに融合される細胞ターゲットの本来の存在率(又は本来の存在率に近い率)で伝達シグナルの検出が可能になるよう、十分に明るい蛍光体と生物発光リポータとのペアが、選択される。ある実施形態では、選択された蛍光体又は生物発光リポータが、不十分なエネルギ(光)発光しか生成しない場合、細胞ターゲットと生物発光リポータとの融合体を(例えば、本来の存在率を越え、生物学的に関連性のあるレベルを越え等)過剰発現させる必要があり、及び/又は、蛍光体結合生物活性剤の量を(例えば、潜在的毒性レベル、生理的に関連性のあるレベルを越え、速度実験が実行されることができる量より高く等)増加させなければならない。ある実施形態では、生物発光リポータ及び蛍光体の十分な輝度は、濃度及び比率の範囲で、生物活性剤及び細胞ターゲット相互作用の検出を可能にする。
【0033】
ある実施形態では、表現型のアッセイ又は表現型のスクリーンから現れるヒット化合物の細胞ターゲットの識別のための組成物、方法及びシステムが提供される。ある実施形態では、表現型を引き起こすことができる生物活性剤の識別に続いて、蛍光体に結合される「ヒット化合物」を用いて、生体発光リポータタンパクへのリンケージを通して(例えば、生物活性剤が細胞ターゲットに結合する結果、生体発光リポータタンパクと蛍光体との間のBRETになる)細胞ターゲットを識別する。この実施形態では、表現型は特定の生物活性剤と関連しているものの、その生物活性剤に対する相互作用パートナー(例えば、細胞ターゲット)は、知られていないか、又は、不確かである。ある実施形態では、蛍光体に結合される生物活性剤が、表現型を再生させることができるため、生物活性剤を蛍光体(又は生物発光リポータへの細胞ターゲット)に結合することが、細胞製本見本に影響を及ぼさず、及び/又は、その生物学的活性度を阻害しないことが、確認される。ある実施形態では、それぞれ生物発光リポータタンパク(例えば、NANOLUC)に融合される細胞ターゲットのライブラリの使用により、細胞ターゲットが難溶性であること又は本来の存在率が低いため、他の検査法(例えば、質量分析分析)と比較して、障害が少なくなる。ある実施形態では、このような検査法は、感度又は特異性のより大きな程度を提供する。ある実施形態では、生体発光リポータタンパクへのリンケージを通してのターゲット識別により、ターゲットの結合が非能率な又は不完全な場合においても、エネルギ移動を通しての検出が可能となる。ある実施形態では、生物活性剤(例えば、小分子)の細胞ターゲットへの結合は、競合バインディングアッセイ(
図1C及び1Dを参照)を用いて特徴付けられる。ある実施形態では、BRETを用いれば、細胞ターゲットの上の同じ部位に結合する蛍光トレーサ(例えば蛍光体)の競合置換を用いて、生体細胞におけるヒット化合物の結合親和力の分析を行うことが可能になる。ある実施形態では、ここに記載されるシステム及び方法は、2つの異なる方法をターゲット識別に用いる能力を提供し、このように、細胞ターゲットを識別するためのより高い厳密性と、他のアプローチでの限界に取り組む補完的な方法とを提供する(例えば、BRETは、試験を通してターゲットとの平衡において生物活性剤を維持するという長所を提供する)。
【0034】
ここに記載した実施形態の中では、薬剤の発見、薬剤の確認、薬剤ターゲットの発見又は薬剤ターゲットの確認に用いられることがわかったものもある。特定の実施形態では、生物活性剤(例えば薬らしい小分子)と細胞ターゲットとの間の結合相互作用が、検出、確認、及び/又は、特徴づけられる。ある実施形態では、細胞ターゲット(例えば、溶液中、ライセート中、表面上、細胞内等)に対する生物活性剤の相対的な結合親和力は、蛍光体に結合されていた生物活性剤を置換する能力により、決定が可能である。具体的に、第2の生物活性剤に対する第1の生物活性剤の結合親和力がより高いことが、結合された生物活性剤を置換するための第1の生物活性剤の濃度が、第2の生物活性剤と比べて低いことが要求されることにより、示される。結合された生物活性剤の置換は、細胞ターゲットに融合される生物発光リポータタンパクからのエネルギ移動の損失又は減少により、決定される。ある実施形態では、結合された生物活性剤を置換するために必要な生物活性剤の濃度を用いて、生物活性剤のための結合EC50又は阻害定数(Ki)を評価する。ある実施形態では、それぞれが生物発光リポータタンパクに融合される1つ以上の細胞ターゲットから、それぞれが蛍光体に結合される1つ以上の生物活性剤を外す能力によって、新しい又は改質生物活性剤の発現は、導かれる。
【0035】
ある実施形態では、細胞ターゲットに未知の結合親和力を有し得る化合物の収集は、蛍光体に結合される生物活性剤を置換する能力を決定することにより、生物発光タンパクに融合されるターゲットを結合する能力に対してスクリーニングされてもよい。ある実施形態では、化合物は、第2の細胞ターゲットと比較して優先的に第1の細胞ターゲットを結合する能力に対して、第2の生物活性ターゲットから第2の結合された生物活性剤を外すことと比較した、第1の結合された生物活性剤を第1の細胞ターゲットから外す彼らの能力によって、スクリーニングされる。ある実施形態では、第1及び第2の結合された生物活性剤は、同じである。
【0036】
ある実施形態では、ここに記載されるシステム及び方法は、(例えば、ヒット化合物、研究リード、リード化合物等)生物活性剤の、野生型及び例えば標的タンパク等の細胞ターゲットの変異体バージョンに対しての親和性を決定する能力を提供する。ある実施形態では、親和性のキャラクタリゼーション及び蛍光ラベル生物活性剤(例えば、薬剤)の疾患関連性のある変異タンパクに対する選択性が、細胞内で実行されてもよい。このシステム及び方法は、選択的に、特異に、野生型又は変異タンパクを結合する生物活性剤(例えば、薬剤)を識別するためには、有用であり得る。
【0037】
一次ターゲットに加えて、着目するターゲット、及び/又は既知のターゲット、生物活性剤(例えばヒット化合物)は、予想外の及び/又は意図しない細胞ターゲット(オフターゲット)に結合してもよい。場合によっては、生物活性剤のオフターゲット結合は、生物活性剤の投与に関する治療的効果及び/又は副作用の一部の原因となる。ある実施形態では、ここに記載されるシステム及び方法は、生物活性剤のオフターゲットを識別する能力を提供する。オフターゲット生物活性剤結合の同一性及び範囲を理解することにより、薬剤の薬理学に関する価値ある情報が提供される。
【0038】
ある実施形態では、ここに記載されるシステム及び方法は、蛍光体で結合される生物活性剤が、生物発光リポータに融合される細胞ターゲットに結合される特徴(例えば、EC50、Kd、結合率、環境の影響等)を評価する能力を提供する。ある実施形態では、結合の特性は、細胞ターゲットに関連した生化学、物理又は表現型の特性に関連する。ある実施形態では、BRET錯体の形成又は溶解の速度論的特徴を用いて、結合していない生物活性剤の対合率又は分離率を推量することができる。ある実施形態では、これらの対合率/分離率は、無傷細胞内における個々のターゲットの薬剤滞留時間を評価するために用いることができる。ある実施形態では、このシステム及び方法は、エントロピ対エンタルピ相互作用に関する熱力学分子作用機構(MMOA)の研究に有用である。ある実施形態では、結合された生物活性剤は、細胞ターゲット上の別々の部位を通して、別々の薬剤によって取り外されてもよい。ある実施形態では、結合された生物活性剤の結合特性を用いて、細胞ターゲット上での、翻訳後修飾(例えば、開裂、リン酸エステル化、メチル化、アセチル化、脂質化等)、細胞内転位(例えば、核、ミトコンドリア、膜等への運動)、又はタンパク相互作用(例えば、他のタンパク、核酸、脂質等に対する相互作用)の影響を決定することができる。一例では、抗体の細胞ターゲットに対する結合特性を、結合された生物活性剤の結合特性に対するその影響により、決定する。ある実施形態では、結合された生物活性剤の結合特性を用いて、生物活性剤又は結合された蛍光体の化学修飾又は変化(例えば、細胞内物質代謝、イオン状態の変化等)の影響を決定してもよい。
【0039】
ある実施形態では、細胞ターゲットは、一つ以上の分子成分を含んでいてもよい。例えば、ターゲットは、2つ以上のポリペプチドを含んでもよく、他の天然分子又は合成分子(例えば、接合団、コファクター、代謝産物、核酸、脂質、炭水化物等)をさらに備えてもよい。ある実施形態では、蛍光体に結合される生物活性剤は、最初に分子成分を結合し、結合された生物活性剤からのシグナルは、第1の分子成分に結合されるときに発生し、かつ、第1の分子成分は、第2の分子成分に隣接するように、生物発光リポータは第2の分子成分に融合される。
【0040】
生物活性剤と細胞ターゲットとの間の相互作用の存在についての推測的な知識は、本発明を実行するために必要ではない。ある実施形態では、エネルギ移動による未知又はあらかじめ未確認の相互作用の検出及び/又は特徴付けが、提供される。ここに記載されるシステム、組成物及び方法の、ターゲット発見の他の方法に対する長所としては、(ある実施形態では)細胞内に発現される必要はない(例えば、検出可能なシグナルを発生させるのに十分なアクセプタ蛍光体の添加が可能)ために、使用可能な生物活性剤濃度の範囲が幅広いことと、細胞ターゲットの自然のタンパク濃度(例えば、過剰発現が検出のために十分なシグナルを得る必要がない)、プレートリーダ上で検出可能なシグナル(例えば、スループット検出が高く、イメージングが必要でない)、細胞中の相互作用の検出等が挙げられる。
【0041】
ある実施形態では、生物活性剤(例えば、ヒット化合物)は、蛍光エネルギ受容体ダイに接合され、したがって、そのルシフェラーゼを融合された(例えば、NANOLUC融合)細胞ターゲットへの改質薬剤の結合により、NANOLUCから受容体ダイへエネルギが移動する。このようなシステムは、生体細胞中で実行することができる同種のアッセイを提供する。ある実施形態では、標識化生物活性剤は、試験を通して細胞ターゲットとの平衡を維持し、親和性の低いヒット化合物と相互作用するターゲットの検出が可能になる。ある実施形態では、BRETにより、同じ結合部位に対して設計される蛍光トレーサの競合置換によって、生体細胞中の結合親和力の測定が可能になる。
【0042】
ある実施形態では、エネルギドナーとしてNANOLUCの他のルシフェラーゼと比較した技術的な特徴により、BRET効率は、大きく改良される。例えば、BRETに一般に用いられる他のルシフェラーゼに比べて、NANOLUCは非常に明るいため、エネルギ移動が、細胞内に関連性のある生体活動を維持するためより適切である低い発現レベルでも定量化できるようになる。ある実施形態では、NANOLUCの狭い発光スペクトラムは、受容体チャネル中のスペクトルの重なりを小さくすることにより、ダイナミックレンジを大きくする。ある実施形態では、スペクトラムの赤色に近い領域(600~650nm)で放射する長波長受容体を用いて、ダイナミックレンジをさらに上げることができる。ある実施形態では、本発明の実施形態の開発中に複数のダイリガンドを評価した結果、その全体が参照事項として本願に包含される米国特許出願番号第13/682,589号に記載される等のローダミン類似体(例えば、カルボキシローダミン類似体)は、NANOLUCとの使用及び/又はここに記載されるBRET用途において、最適なダイナミックレンジをもたらすことが明らかになった。
【実施例】
【0043】
実施例1
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、PBIトレーサ接合体の向上した性能が実証され、また、薬剤トレーサ用途の標準的なダイを有する接合体と比較された。この実施例では、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)の接合体、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)の阻害剤、及びPBIダイ(SAHA-TOM(PBI-4968)、
図8参照)又は標準的なダイ(SAHA-TAMRA(PBI-4967)、
図8参照)が、NanoLuc-HDAC融合タンパク(SEQ ID NO:3)を用いた細胞内BRETアッセイに利用された。
【0044】
NanoLuc-HDAC6融合タンパクをコード化するプラスミドDNAを有するFuGene HD(Promega社)を用いて、HEK293細胞がトランスフェクトされた。NanoLuc-HDAC6 DNAは、プロモーターを持たないキャリヤーDNA(pGEM3Z)で1:1000に希釈され、96-ウエルプレートフォーマット(20,000細胞/ウェルの接種密度)で、50ng/ウェルの合計DNAの最終濃度を生成する。24時間のトランスフェクション後、次いで、細胞は、モル過剰の非標識SAHA(特異性対照として)の存在下又は不存在下で、段階希釈トレーサにより培養された。薬剤トレーサによる平衡化の後、フリマジン(NanoLucのためのセレンテラジン誘導体基質,Promega社)が、20uMの濃度で加えられ、BRETが、Varioskanルミノメータ上で定量された。非特異的シグナル(非標識SAHAの存在下で)をSAHAトレーサ単独で発生するシグナルから減算することによって、特異的なBRETシグナルが計算された。
【0045】
図2の結果により、SAHA-TOM(PBI-4968)接合体/トレーサは、SAHA-TMR(PBI-4967)と比較して優れた特異的なBRETシグナルを発生したことと、また、生体細胞内での結合に対して左にシフトされたEC
50値を発生させたこととが、実証された。BRET用途のための薬剤接合体として、他の一般的に用いられる蛍光体に対するPBI-4968TOMダイの利点は、競合バインディングアッセイ又はNANOLUC融合タンパクライブラリを用いたターゲット識別(化学プロテオミクス)スクリーニングに適用することができる点である。
【0046】
この実施例では、薬剤トレーサの既知の高親和性ターゲットに対する結合を示しているが、別の実施形態では、そのようなトレーサは、NANOLUC融合タンパクのライブラリと組み合わせて、ターゲットファミリーの中の相対的な薬剤親和性及び特異性をプロファイリングする。この実施形態では、プロファイリングの取り組みが、生体内での好ましくない薬剤副作用に関連し得る雑多な結合プロファイルを有する薬剤の識別に役立つ。
【0047】
実施例2
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、BRET用途のためのNanoLucの低い発現レベルの予想外の利点を実証した。
【0048】
A)HEK293細胞は、Fugene HDを用いて、NanoLuc-HDAC6 DNAの量を変えてトランスフェクトされ、96-ウエルプレートフォーマットで接種された。トランスフェクションのため、NanoLuc-HDAC6 DNAは、プロモーターを持たないキャリヤーDNA(pGEM3Z)で希釈された。最終的なDNA濃度/ウェルは、50ng/ウェルに維持されたが、NanoLuc-HDAC6 DNAは、1:10、1:100及び1:1000(96ウェルフォーマットで20,000の細胞/ウェルの接種密度)に希釈された。24時間のトランスフェクション後、細胞は固定濃度(1μM)のSAHA-TOMの存在下で、段階希釈SAHA(PBI-4968,
図8参照)接合体で処理された。2時間の培養の後、フリマジンを20uMまで加え、BRETがVarioskanルミノメータ上に検出された。
図3の結果では、BRET用途のために適切なS/B比を実現するためには、NanoLuc融合をコード化するDNAの予想外に高い希釈が必要とされたことが実証された。
【0049】
B)NanoLuc-ヒスタミンHI(GPCR)融合タンパクをコード化するDNAは、未希釈から1:10,000までの範囲(プロモーターを持たないキャリヤーDNA(pGEM3Z上記のように)で希釈して、一定量のDNA/トランスフェクションを上記のように維持する)でDNAの量を変えて、HEK293細胞にトランスフェクトされた。24時間のトランスフェクション後、細胞を、メピラミン-ボディパイ-633(CellAura)で段階希釈して、処理し、2時間平衡させた。次いで細胞は、20uMの濃度のフリマジンで処理され、BRETがVarioskanルミノメータで検出された。
【0050】
図3Bの結果では、最適なシグナル対バックグラウンドで高い親和性相互作用を発生させるためには、NanoLuc融合をコード化するDNAの大量希釈が必要であることが示された。NanoLuc融合タンパクを非常に低いレベルに希釈する能力は、競合バインディングアッセイ又はNanoLuc融合タンパクのターゲット識別(化学プロテオミクス)スクリーニングを含めて、様々なBRET用途の中に有益である。
【0051】
実施例3
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、プロドラッグの結合を定量するための細胞内BRET測定の予測値が、伝統的な生化学(活性ベースの)フォーマットと比較して実証された。この実施例は、天然プロドラッグ、FK228を含み、これは、HDAC6に活性化及び結合ができるようになるために細胞原形質の還元環境を必要とする。
【0052】
前述のとおりHEK293細胞は、キャリヤーDNAとの1:1000希釈度で、NanoLuc-HDAC6をコード化するDNAでトランスフェクトされた。24時間のトランスフェクション後、細胞は、固定濃度(1μM)のSAHA-TOM(PBI-4968)接合対の存在下で、段階希釈天然プロドラッグ(FK-228)で培養された。比較のために、生化学、活性ベースのHDAC6アッセイを、並行して行った。簡潔にいうと、FK-228(Selleckchemカタログ番号S3020)の3段階希釈が、96-ウエルプレートのウェル内で、100 %のDMSO中に100Xで実行された。この100X/100 %のDMSO滴定シリーズのアリコート5μLを、245μLのHDAC- Glo(商標)Ι/IIアッセイバッファ(Promega社)単独に加え、又は2X(0.5mM)DTTを補充した245μLのHDAC-Glo(商標)I/IIアッセイバッファに加え、96-ウエルプレートのウェル内に、FK-228の2X/2% DMSOマスター中間滴定系列を作った。このマスター中間滴定系列から、5つの複製が、白色の384-ウェルアッセイプレート(コーニング3673)のウェルから移動された。2X(2nM)HDAC 6(BPS Bioscience社のカタログ番号50006)の5μL添加物を、InM HDAC6/ウェルの最終濃度のために、全てのウェルに加えた。酵素/阻害剤混合物10μLを、室温で45分間、プレインキュベートさせた。HDAC-Glo(商標)I/IIと等しい容量(10μL)で、Final Detection Reagent(Promega社)を、全てのウェル(20μL最終アッセイ容量)に加え、そして、室温で10分の培養の後、発光を計測した。全ての試験条件に対して、HDAC-Glo(商標)の I/II基質の最終濃度は、50μΜであった。GraphPadからのプリズム(商標)ソフトウェアを用いて、データをプロットした(S字形ドーズ応答 ― 傾斜が変化)(DTT無し:塗り潰し丸; 0.25mM DTT:白四角)。
【0053】
図4A及び4Bの結果には、活性化するよう細胞により処理する必要のあるプロドラッグの結合を計測するための、細胞環境の必要条件を示す。
【0054】
実施例4
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、透過化処理薬剤を使用して、細胞に不浸透性の薬剤トレーサを導入することが実証された。
【0055】
HEK293細胞は、前述のように、PKCアルファ(PKCa)-NanoLuc又はNanoLuc-PKCアルファをコード化するDNAで、DNAのプロモーターを持たないキャリヤーDNAとの1:1000の希釈で、トランスフェクトされた。24時間のトランスフェクション後、細胞は、ジギトニン有り又は無しで、50ug/mLの最終濃度に処理された。細胞は、次いで、段階希釈したスタウロスポリン-PBI-ダイ接合体で処理された(PBI-5129,
図8参照)。細胞は、結合のための特異性対照として、非抱合型スタウロスポリン5μMの存在下又は不存在下で、共同培養された。トレーサによる2時間の平衡化の後、フリマジンが20uMの最終濃度に加えられ、BRET比が、Varioskanルミノメータ(
図5A及び5B)で計測された。
【0056】
第2の実験では、全く同じにトランスフェクトされたPKCa- NanoLuc細胞は、5uM非標識スタウロスポリン(特異性対照)の存在下又は不存在下でのスタウロスポリン-TOM(PBI-5129,
図8参照)トレーサの固定濃度による処理(5uM最終濃度)の前に、段階希釈ジギトニンで処理された(
図5C)。
【0057】
図5A~Cは、不浸透性の薬剤トレーサのエントリを強化する透過化処理薬剤を使用する能力及びNanoLuc(商標)融合タンパクライブラリのBRET-ベースの化学プロテオミクススクリーニングに適用することを実証する。
【0058】
実施例5
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、生体細胞中の相対的な薬剤親和性を計測するためのNanoLuc/BRETの使用を実証した。ある実施形態では、類似の実験が、ハイスループットな化学スクリーニングからリードを最適化するために構成される。
【0059】
HEK293細胞は、NanoLuc-p38融合タンパクをコード化するDNAでトランスフェクトされた(96ウェルフォーマット中に50ng/ウェルDNAの最終濃度)。24時間のトランスフェクション後、細胞は、0.5uM PBI-4838の存在下で、段階希釈BIRB-796又はPBI-4835で処理された(BIRB接合誘導体,例えば、その全体が参照事項として本願に包含されるUS13/682,589を参照)。
【0060】
2時間の平衡化の後、フリマジンを20uMの濃度に加え、BRETがVarioskanルミノメータで計測された。
【0061】
図6は、ドーズ応答BRET曲線が、PBI-4835(「BIRB誘導体」)に対して、BIRB-796の既知の親和性を高く裏付けたことを実証する。非標識薬剤の相対親和性を計測する能力は、HTSスクリーニング、リード最適化、又は化学プロテオミクス用途に適用することができる。ある実施形態では、ハイスループットな化学スクリーニングから最適化されたヒット化合物を特徴づけるように、類似の実験が構成される(例えば、トレーサ置換に対してIC50値が低い化合物は、着目のターゲットに対する結合効率をより高く示す)。
【0062】
実施例6
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、生体細胞中の薬剤結合の反応速度をモニターするためのNanoLuc/BRETの使用を実証した。ある実施形態では、ハイスループットな化学スクリーニングからリードを最適化するため、類似の実験が構成される。
【0063】
HEK293細胞は、NanoLuc-p38融合体をコード化するDNAでトランスフェクトされた(96ウェルフォーマット中に50ng/ウェルDNAの最終濃度で)。24時間のトランスフェクション後、細胞が、保護されたフリマジンにより、最終濃度が20uMとなるよう、2時間、前処理された(PBI-4378、
図8参照)。BRETは、37°Cに設定されたVarioskanルミノメータで、経時的に計測された。短い前読み出しの後、細胞は、(特異性対照として1μM BIRB796の存在下又は不存在下)PBI-4838の濃度を変化させることで、刺激された。次いで、BRET中の投与量及び時間依存性の増加が、速度論的に4時間モニターされた。
【0064】
別個の実験では、トランスフェクトされた細胞は、安定したBRETシグナルを発生させるために、20μMのPBI-4377及び1μMのPBI-4838で前処理された。
短い前読み出しの後、細胞は、1μM非標識BIRB-796で刺激され、競合置換は、BRETによってリアルタイムでモニターされた。
【0065】
図7A-Bの結果は、生体細胞中のターゲットの関わりに関する反応速度の測定のために、BRETの使用が支持される。このフォーマットは、生体細胞中のNanoLuc融合タンパクのHTS又は化学プロテオミクススクリーニングのために利用することができる。ある実施形態では、ハイスループットな化学スクリーニングから最適化されたリード化合物を特徴づけるために、類似の実験が構成される(例えば、着目のターゲットに対する対合又は分離の反応速度を変化させる化合物)。一定量の相対的な化合物親和性を提供することに加えて、この速度論的BRET測定法は、生化学的又は無傷細胞内でのターゲット滞留時間の定量評価を実現することができた。
【0066】
実施例7
以下の実施例は、BRETを用いてイベントを結合する薬剤の細胞下局在化を識別するために、特異的なNANOLUC基質(
図8参照)又は酵素成分の使用に関するものである。
【0067】
補完的なNANOLUC酵素ポリペプチド又はペプチドの物理的分離により、NANOLUC(ドナー)シグナルの細胞外空間への分離を可能にする。例えば、小さなシグナルペプチドは、細胞表面受容体に遺伝子的に結合される。細胞培地への大型のシグナルポリペプチドの外因性添加と同時に、ドナーシグナルは、細胞外空間に分離される。このシグナル分離は、薬剤トレーサ結合/置換を含む様々なBRET用途で発生するシグナル/バックグラウンドを高める。
【0068】
ある実施形態では、不浸透性のNANOLUC基質が適用される場合は、完全長NANOLUCタンパク融合体が利用される。
【0069】
実施例8
以下は、本発明の実施形態において使用が見出される典型的な化合物の合成スキームを提供する。
【0070】
Boc保護されたSAHAアミン
7-トリチロキシカルバモイルヘプタン酸(200mg、463μmol)が、3mlのDMF中で、4-[(N-Boc)アミノメチル]アニリン(113mg、510μmol)、HBTU(352mg、927μmol)及びトリエチルアミン(194uL、1.4mmol)と混合された。反応物を終夜撹拌し、その後、セライト上に吸着させ、ヘプタン中0~>100 %の酢酸エチルの勾配で溶離するカラムクロマトグラフィにより、生成物が得られた。M+H計算値:635.3;実測値:635.9
【0071】
SAHAアミン
0.25mlのTISを加えた2mlのDCM中に、スベロイル(4-[(N-Boc)アミノメチル]アニリド)ヒドロキサム酸(286mg、450mmol)を溶解した。次いでトリフルオロ酢酸(0.9ml)を加え、反応物を30分間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、予備HPLCにより未加工反応生成物を精製し、又は、これを更なる精製を行わずに用いた。
【0072】
PBI-4967 SAHA-TAMRA
5滴のTEAを加えたDMF1ml中4mg(7.6のμmol)のテトラメチルローダミン6-スクシンイミジルエステルに、スベロイル[4-(アミノメチル)アニリド]ヒドロキサム酸の未加工反応生成物(27mg)を、混合した。30分後、反応物をH
2O及びMeCNで希釈し、予備HPLC(0.1 %の水性TFA中5~>60 %のMeCN)により、生成物を分離した。
【0073】
適切な画分を真空凍結乾燥し、マゼンタ固体として望ましい生成物を生成した。M+H計算値:706.3;実測値:706.6.
【0074】
PBI-4968 SAHA-TOM
3滴のTEAを加えたDMF0.8ml中の5mg(7.6μmol)のTOM 6-スクシンイミジルエステルに、スベロイル[4-(アミノメチル)アニリド]ヒドロキサム酸未加工反応生成物(8mg)を混合した。30分後、反応物をH
2O及びMeCNで希釈し、予備HPLC(0.1 %の水性TFA中5~>60 %のMeCN)により、生成物を分離した。適切な画分を真空凍結乾燥し、望ましい生成物を生成した。M+H計算値:838.4;実測値:838.7
【0075】
スタウロスポリン-アミン
スタウロスポリンp-ニトロフェニルカルバマート(3mg、4.8のμmol)を、0.5mlのDMF中に溶解し、過剰なカダベリンで処理した。反応物を、 70℃の油浴中で2時間加温し、次いでH2Oで希釈し、ギ酸で酸性化し、25%~>75%のMeCNで溶離する予備高速液体クロマトグラフィを、10mM水性NH4OAc中で行った。
適切な画分を凍結乾燥し、わずかに黄色の固体を提供した。M+H計算値:595.3;実測値:595.5
【0076】
PBI-5129スタウロスポリン-TOM
スタウロスポリン5-アミノペンチルカルボキサミド(5mg、8.4μmol)を、1mlのDMF中に溶解し、トリエチルアミン及びTOM 6-SE(4mg、6μmol)で処理した。反応物を、分析的HPLCによってモニターした。反応終了後、MeCN及びH
2Oを加え、そして、少量のAcOHの添加により、TEAを中和した。予備HPLC(10mMのNH4OAc中に25%~>100 %のMeOH)及び引き続いて濃縮を行うことにより、濃青色の固体1.8mgを生成した。M+H計算値:1139.5;実測値:1139.8.
【0077】
ダサチニブ-TOM
TOMペンチルアミン
TOM 6-カルボキシル酸(26mg、46μmol)を、トリエチルアミン2当量を含むDMF1ml中で撹拌し、TSTU(17mg、56.5μmol、1.2当量)で処理し、反応物を、HPLCによってモニターした。40分後、反応物を、DMF0.5ml中のカダベリン(94mg、0.92mmol、20当量)の溶液に加え、20分間撹拌した。次いで、TFAの添加によって反応物を中和し、MeCN及び水で希釈した。
予備HPLC(0.1 %の水性TFA中25~>100 %のMeCN)及び引き続いて真空凍結乾燥を行い、紫色の固体として望ましい製品を提供した。LCMS:((M+2H)/2)計算値:324.4;実測値:324.3.
【0078】
ダサチニブ-TOM
ダサチニブ(25mg、51μmol)を、p-ニトロフェニルクロロホルマート(14mg、69μmol、1.36当量)及びDMF:THFが2:1の液0.9ml中30uLのTEAと混合した。反応物を終夜撹拌し、次いで、35mgの追加のp-ニトロフェニルクロロホルマートを添加した。更に24h撹拌した後、0.5mlのDMF及び30uLのTEA中TOMペンチルアミンが7mg(10μmol)の溶液に、反応物の1/2の容量を加えた。次いで、反応物を1時間撹拌し、その後、MeCN及び水による希釈及び予備HPLCによる精製を行った。真空凍結乾燥は、紫色の固形として望ましい生成物を提供した。MS:((M+2H)/2)計算値:580.8;実測値:581.0.
【0079】
パーバラノール-TOM PBI 5077
20mgのTEA(198μmol)を含むDMF1ml中で、パーバラノール(10mg、23μmol)を撹拌し、7.7mg(25.4μmol、1.1当量)のTSTUで処理した。30分後、反応物をEt2Oで希釈し、全反応物容量の1/2を、6mg(9μmol)のTOM(5アミノペンチル)-6-カルボキサミドを含むバイアルに加えた。反応物3時間撹拌し、不安定な有機化合物類を、減圧下で除去した。得られたDMF溶液を水及びMeCNで希釈し、TFAで酸性化し、次いで生成物を、予備HPLC(0.1 %の水性TFA中に25~>100%のMeCN)によって分離し、引き続いて真空凍結乾燥を行い、3.5mgの紫色の固体を生成した。
MS:M+H計算値:1061.5,実測値:1061.6.
【0080】
実施例9
本発明の化合物識別方法におけるウミシイタケルシフェラーゼ又はNanoLucルシフェラーゼの使用
HEK293細胞に、脂質:DNA比が3:1のFugene HD(Promega社)を用いてNanoLuc-p38アルファ又はウミシイタケリュック-p38アルファをコード化するプラスミドDNAをトランスフェクトし、1ウェルにつき20,000セルの密度(DNAで50ng/ウェルを生成)で、96-ウエルプレートに接種した。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、1μMのBIRB796の存在/不存在下で、段階希釈PBI-4838(TOMダイに接合されるBIRB796誘導体)で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。ウミシイタケリュック-発現サンプルに、天然のセレンテラジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。
【0081】
図9は、ウミシイタケルシフェラーゼ及びNanoLucルシフェラーゼの双方を、本発明の方法に用いることができることを実証する。NanoLuc-p38アルファ又はウミシイタケリュック-p38アルファを発現する細胞の段階希釈PBI-4838での処理の際、BRETのドーズ依存性増加が観察される。非標識BIRB-796の飽和濃縮が、このBRETシグナルをブロックすることができ、p38アルファのいずれかへのルシフェラーゼ融合体を用いた結合の特異性を示している。
【0082】
実施例10
NanoLuc-p38アルファに対するTOM-BIRB対TMR-BIRBの比較 上記のように、Fugene HDを用いて、HEK293細胞を、NanoLuc-p38アルファをコード化するプラスミドDNAでトランスフェクトし、96-ウエルプレート(DNAの50ng/ウェルを生成)に接種した。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、1μMのBIRB796の存在/不存在下で、段階希釈PBI-4838(TOMダイに接合されるBIRB796誘導体)又はPBI-4836(TMRダイに接合されるBIRB誘導体)で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。
【0083】
図11は、細胞ベースのフォーマットでの標的タンパクへの結合に関して、TMR付加体に対するTOM付加体の能力が向上している他の実施例を実証する。NanoLuc-p38アルファ結合のドーズ応答曲線は、BIRB-TMR接合体のための450nMのEC50と比較したBIRB-TOM接合体のための438nMのEC50を示している。この報告でのBIRB-TOMの親和性は、BIRB-TMRと比較した文献報告とよく一致している(Chem Biol Drug Des 2009; 74:547-559)。
【0084】
実施例11
BIM-TOMの比較対PKCアルファ-NanoLucに対するBIM-TMR
上記のように、Fugene HDを用いて、HEK293細胞を、PKCアルファ-NanoLuc(pGEM3ZキャリヤーDNAに1:1000で希釈)をコード化するプラスミドDNAでトランスフェクトし、96-ウエルプレート(全DNAの50ng/ウェルを生成)に接種した。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、5uMのスタウロスポリンの存在/不存在下、段階希釈PBI-5075(TOMダイに接合するBIM)又はPBI-5051(TMRダイに接合するBIM)で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。特異的なBRETシグナルを決定するため、トレーサ+非標識スタウロスポリンの各々の濃度でのBRET比を、非標識スタウロスポリンの無いトレーサの各々の濃度のBRET比から減算した。
【0085】
図12は、透過処理された細胞フォーマットでの標的タンパクへの結合に関して、TMR付加体に対するTOM付加体の能力が向上している他の実施例を実証する。PKCアルファ-NanoLuc結合のドーズ応答曲線は、BIM-TMR接合体の極端に右側にシフトした能力と比較した、BIM-TOM接合体の483nMのEC50を示す。この報告でのBIM-TOMの親和性は、BIM-TMRと比較した文献報告とよく一致している(J Biol Chem. 1991 Aug 25; 266(24):15771-81.)。
【0086】
実施例12
P38/MAPKの選択的な経路決定におけるターゲット識別
以下の実施例は、所与の系統学的ターゲットファミリー内での推定上のターゲットのパネルに対して、薬剤トレーサの選択性をプロファイリングする能力を実証することに役立つ。同様の実験的な構成を用いて、細胞内のBRETを用い蛍光標識された薬剤のターゲットを識別してもよい。この構成は、オフターゲットインタラクタと同様に、結果として主薬剤の識別に導くことができる。複数のターゲットの関わりは、薬剤の雑多性及び潜在的な薬剤副作用を示し得る。この実施例は、一次及び二次ターゲットの両方のBRETを介した相互作用を計測する能力を実証するのに役立つ。
【0087】
HEK293細胞を、脂質:DNA比が3:1のFugene HD(Promega Corporation)を用いて、N末端又はC末端NanoLuc融合体をコード化するプラスミドDNAでトランスフェクトして、MAPK経路の様々なメンバー(Jnkl、Jnk2、Jnk3、p38アルファ、p38ベータ、p38ガンマ、P38デルタ、又は、PKCアルファ又はMAPK 8、9、10、14、11、12又は13、PKCアルファのそれぞれ)を得て、1ウェルにつき20,000セルの密度で、96-ウエルプレートに接種された(DNAの50ng/ウェルを生成)。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、4μMのBIRB796の存在下又は不存在下、2μMPBI-4838で培養される。細胞を、2時間37℃で培養した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。応答比を決定するため、トレーサのみによるBRET値を、トレーサ+未改質BIRB796のBRET値で除した。
【0088】
図13は、Jnk2、p38ベータ及びp38アルファ(文献報告と一致)に対するPBI-4838の選択性を示す。p38アルファは、BIRB796の一次ターゲットとして認識される。しかしながら、Jnk2及びp38ベータ等のターゲットに対する相互作用は、潜在的なオフターゲット負担を示すことができた。予想されるように、PBI-4838に結合したPKCアルファ-NanoLuc融合体は、BIRB796のこのターゲットの方への親和性が低いため、比較的小さい特異的なBRETシグナルを示した。
【0089】
実施例13
親和性のp38/MAPK経路決定におけるターゲット識別
以下の実施例は、所与の系統学的ターゲットファミリー内に推定上のターゲットのパネルに対して、薬剤トレーサの親和性をプロファイリングする能力を実証するのに役立つ。同様の実験的な構成を用いて、細胞中のBRETを用いて、蛍光標識された薬剤の所与のターゲットへの親和性を特徴づけてもよい。
【0090】
Fugene HD(Promega Corporation)を用いて、脂質:DNA比が3:1で、HEK293細胞を、NanoLuc-p38アルファ、NanoLuc-p38ベータ、Jnk2-NanoLuc、PKCアルファ-NanoLuc又はNanoLuc-HDAC6をコード化するプラスミドDNAにより、トランスフェクトし、1ウェルにつき20,000セルの密度(DNA50ng/ウェルを生成)で、96-ウエルプレートに接種した。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を、無血清培地(Opti-MEM)と交換し、4uMのBIRB796の存在下又は不存在下、段階希釈PBI-4838で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。サンプルの別々のセットに対して、1μMのPBI-4838の存在下、トランスフェクト細胞を、段階希釈BIRB796で処理した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。
【0091】
図14及び15は、PBI-4838のJnk2、p38ベータ及びp38アルファに対する見かけの親和性を実証する。予想されるように、PKCアルファ及びHDAC6は、これらのターゲットへのPBI-4838の親和性が低いため、比較的小さい特異的なBRETシグナルを示した。更に、Jnk2、p38アルファ及びp38ベータに対するBIRB796の高い親和性は、細胞中の競合置換によって実証される。ターゲットの所与のセットへの薬剤トレーサの親和性(BRETの中に増加により)又は未改質の薬剤(競合置換により)を、順位づけるために、同様の実験を構成することができた。上記のように、Jnk2及びp38ベータ等のターゲットに対する高い親和性相互作用は、潜在的なオフターゲット負担を示すことができた。
【0092】
実施例14
野生型用薬剤トレーサ対標的タンパクの変異体バージョンの親和性決定
以下の実施例は、野生型対変異体標的タンパクに対する薬剤トレーサの相対親和性を計測する能力を実証することに役立つ。この実施例では、BRD4(ブロモドメインを含有するタンパク4)の野生型及び変異体(N140A/N433A; iBETへの全結合能力が欠乏)に対しての、蛍光ラベルiBET化合物の親和性(BRD4が結合した小分子阻害剤が、アセチル化ヒストンとの相互作用を防止する)を決定した。細胞内の疾患関連性の変異タンパクに対する、蛍光ラベル薬剤の親和性及び選択性を特徴づけるために、同様の実験的な構成を用いてもよい。このような実験は、特異に野生型又は変異体にタンパクを選択的に結合する薬剤を識別するために有用となり得る。
【0093】
Fugene HD(Promega Corporation)を用いて、脂質:DNA比が3:1で、HEK293細胞を、NanoLuc-BRD4又はNanoLuc-BRD4(N140A/N433A)をコード化するプラスミドDNAでトランスフェクトし、1ウェルにつき20,000セルの密度(DNA50ng/ウェルを生成)で、96-ウエルプレートに接種した。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、10μMのiBETの存在下/不存在下で、段階希釈PBI-4966(TOMダイに接合されるiBET)で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。
【0094】
図16は、野生型BRD4対変異体BRD4に対するPBI-4966の相対親和性を示す。予想されるように、変異体BRD4で、右側にシフトした能力が観察され、PBI-4966に対する親和性が低下することを示している。ターゲットの疾患関連性のある変異体への薬剤トレーサの親和性の順位をランク付けするために、同様の実験を構成することができた。この原理を、競合トレーサ置換により、野生型又は変異タンパクへの薬剤の相対親和性を計測することまで拡げることができた。BRETシグナルの増加が、NanoLuc融合体への結合のみを表すので、この方法は、アッセイサンプル中に存在する同様の抗原の複雑な混合物中におけるターゲットの関わりを測定する測定法を可能にする。これらの抗原は、同様の特性を持つターゲットを含むことができたが、着目のターゲットと同一ではない(例えば、異種分析物対内在分析物又は変異体分析物対重量分析物等を識別する等)。
【0095】
実施例15
ターゲットの関わりを決定するための化合物パネルのスクリーニング
以下の実施例は、本発明の方法は、化合物パネルをスクリーニングすることにより、ターゲットの関わりを決定するために用いることができることを実証する。このスクリーニング方法を、同様に、より大きな化合物ライブラリ(例えばLOPAC)に拡げることができた。
【0096】
Fugene HDを用いて、HEK293細胞をNanoLuc-HDAC6 DNAでトランスフェクトし、96-ウエルプレートのウェルに接種した。トランスフェクションのため、NanoLuc-HDAC6 DNAを、プロモーターを持たないキャリヤーDNA(pGEM3Z)で希釈した。最終的なDNA濃度/ウェルは、50ng/ウェルのままであったが、NanoLuc-HDAC6 DNAは、1:1000(96ウェルフォーマット中、20,000細胞/ウェルの接種密度で)で希釈された。24時間のトランスフェクション後、固定濃度(1μM)のSAHA-TOM接合体(PBI-4968)の存在下で、細胞を、段階希釈阻害剤(
図17参照)で処理した。2時間の培養の後、フリマジンを20uMまで加え、BRETがVarioskanルミノメータ上に検出された。
【0097】
図17の結果によれば、本発明の方法を用いた薬剤トレーサの競合置換により、構造的に異なる化合物を識別することができることが実証される。更に、様々な化合物分類の相対的な能力を確かめることができる。この結果は、パノビノスタット又はSAHAのHDAC6への高い結合効率と比較して、アピシジンのHDAC6への結合効率は、ごく僅かである/無いことを示している。これは、直交アッセイフォーマットを使用した文献報告と一致している。所与のターゲットに対して、阻害剤ポテンシャルを有する新しい化学物を識別/特徴づけるために、このスクリーニング方法を、大きな化学ライブラリのハイスループットなスクリーニングを含むところにまで拡大することができた。
【0098】
実施例16
薬剤-ターゲット相互作用のモニタリング
スペクトルの重複部分の大きな蛍光体の存在下で、高レベルな非特異的BRETが、ルシフェラーゼを含んだ培地中で行われることが、一般に受け取られている(クーチュリエ,2012)。これは、BRETをハイスループットな化学スクリーニングに用いることへの負担として、記載されていた。以下の実施例は、ルシフェラーゼ、NanoLucの存在下、BRETのためには問題であると一般に認識される濃度範囲の培地中で、蛍光体-薬剤接合体を用いて薬剤/ターゲット相互作用をモニターする能力を実証することに役立つ。
【0099】
Fugene HD(Promega Corporation)を用いて、脂質:DNA比が3:1で、HEK293細胞を、CDK2-NanoLucをコード化するプラスミドDNA(pGEM3ZキャリヤーDNAに1:100を希釈した)でトランスフェクトし、そして、1ウェルにつき20,000セル(全DNAで50ng/ウェルを生成)の密度で、96-ウエルプレートのウェルに接種した。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、10μMのパーバラノールBの存在下/不存在下、段階希釈PBI-5077(TOMダイに接合されるパーバラノールB)で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。
【0100】
NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び630nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した(
図18)。
【0101】
この実施例は、BRETを介して薬剤/ターゲット相互作用をモニターするために、培地の中に蛍光体トレーサの使用を支持する。サンプル(+薬剤トレーサ)をパーバラノールB(未改質の薬剤)で共同培養することにより、NanoLucとトレーサとの間の非特異的BRETシグナルを計測することができる。試験を行う痕跡濃度の範囲に亘って、このバックグラウンドBRETシグナルは低かった。これらの結果は、NanoLuc(ドナー)と蛍光体(受容体)との間のスペクトルの重複部分大きいにも拘わらず、薬剤トレーサとナノリュック-ターゲット融合体と間の特異的な結合を、細胞培地中でモニターすることが可能であることを実証する。
【0102】
実施例17
タンパク集積を用いたターゲットIDスクリーニング
以下の実施例では、無細胞発現を用いてNanoLuc融合体配列を発生させる能力及びBRETによる薬剤結合及び相対親和性を測定する能力を実証する。
【0103】
BIRB796の推定上のターゲット(MAPK及びJnkファミリーのメンバー等)、ダサチニブの推定上のターゲット(Src及びLCK等)並びに無関係なHDAC6ネガティブ対照を含む11のキナーゼ(N末端及びC末端NanoLuc融合体)のパネルが、メーカーによって推薦されるTnT(商標登録)T7高速結合網状赤血球転写/翻訳システム(Promega Corporation)で発現され、23の異なるNanoLuc融合体を有する配列を形成した。それぞれのTNT(商標登録)反応物を、PBS中、1:100で希釈し、96-ウエルプレートのウェルへ反復標本を配置した。過剰な関連性の無い薬剤の存在下及び不存在下で、NanoLuc融合体配列を、2つの異なるTOM薬剤トレーサ(BIRB-TOM; PBI- 4838及びダサチニブ-TOM; PBI-5170)で、スクリーニングした。それぞれのTNT(商標登録)反応物に対し、2μMのBIRBTOMを有する4つの反復試験/2μM BIRB-TOM+4μM BIRB796を有する4つの反復試験(合計2x96-ウエルプレート)、並びに、1μMのダサチニブ-TOMを有する4つの反復試験/1μMダサチニブ-TOM+5μMダサチニブによる4つの反復試験(合計2x96-ウエルプレート)、が実行された。反応物を、室温で2時間、一定混合で培養した。培養の後、フリマジンを、20μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び610nmのロングパスフィルタを備えたVarioskanルミノメータで計測された。610チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。応答比を決定するため、トレーサのみによるBRET値を、トレーサ+未改質物のBRET値で除した。
【0104】
結果(
図19)は、JNk2、JNk3、MAPK14、MAPK11及びMAPK13に対するBIRB-TOMトレーサの選択性、並びに、ABL1、Src、LCK、MEK5、MAPK11及びMAPK14に対するダサチニブ-TOMトレーサの選択性を実証し、これらは文献報告に一致していた。これらの結果は、細胞のない発現系に発現される推定上のターゲットのパネルに対して、薬剤トレーサのものをプロファイリングする能力、及び、ヒットを識別する能力、を実証する。この無洗浄タンパクNanoLuc融合体配列の構成により、主薬剤ターゲットの識別、並びにオフターゲットインタラクタが導かれ得る。
【0105】
上記のスクリーニングの後、BIRB-TOMヒットを、BIRB-TOMトレーサへの結合親和力及びBIRBTOMトレーサのBIRB796との競合置換に関して、更に分析した。10μMのBIRB796の存在下/不存在下で、段階希釈BIRB-TOMトレーサにより、希釈TNT反応物の3つの反復試験体を培養することにより、BIRB-TOMトレーサへの結合親和力の実験を実行した。反応物を、一定混合により室温で2時間培養し、20μMの最終濃度でフリマジンを加えた後に、上記のように分析を行った。希釈TNT反応物の3つの反復試験体を、2μMのBIRB-TOMトレーサの存在下、段階希釈BIRB796で培養することにより、競合置換実験を実行した。反応物を、一定混合により室温で2時間培養し、20μMの最終濃度でフリマジンを加えた後に、上記のように分析を行った。
図19の競合置換実験の結果によれば、BIRB796は、MAPK14及びJnk2に対して最も高い親和性を示す一方、MAPK11、MAPK13及びJnk3に対しての親和性は低かったことが示される。文献報告に一致するように、BIRB796は、効率的にMAPK14と結合するが、他のMAPK及びJnkファミリーメンバーとも関わりを持つため、BIRB-796に対するオフターゲット負担を示している。薬剤への結合親和力について、細胞のない発現系に発現されかつタンパク配列スクリーニングで識別されるヒットを、BRETによりさらに分析することが可能であることを、これらの結果は実証する。更に、これらの結果は、ターゲットに関わる用途に対しての適切な分析物としてNanoLucタンパク融合体を発生させるためには、無細胞発現系を使用することを支持する。
【0106】
実施例18
NanoLuc融合体の発現レベル
以下の実施例では、NanoLuc融合体の発現が内因性のレベルに近い場合は、最適S/B比での薬剤トレーサとの高い親和性の相互作用が実現されることが実証される。前述のとおり、高い親和性の相互作用を実現するためには、NanoLucHDAC6DNAをキャリヤーDNAで1:1000に希釈することが必要であることが、実証された。この実施例では、NanoLuc HDAC6 DNAの系列希釈の発現を、ウエスタンブロット解析を用いた内因性HDAC6の発現と比較した。
【0107】
HEK293細胞を、2.5x10
5細胞/ウェルで、6穴プレートのウェルに接種し、NanoLuc HDAC6 DNAの量を変えて、PEIでトランスフェクトした。NanoLuc HDAC6 DNAを、非発現キャリヤーDNA(pCI neo)で希釈した。DNAの最終濃度を2μg/ウェルのままとする一方、NanoLuc HDAC6 DNAを、1:0、1:10、1:100、1:1000及び1:10000に希釈した。対照は、形質導入されなかった細胞であった。24時間のトランスフェクション後、メディアを除去し、細胞を、PBSで洗浄し、400μlの哺乳類の溶解バッファ(Promega)+1:50のRQ1 DNA分解酵素(Promega)+1xRQ1バッファで、10分間溶解させた。溶解に続いて、133μlの4XSDS-ローディングバッファを、それぞれのウェルに加え、細胞ライセートを収集し、SDS-PAGEジェルで分析し、PVDF膜(インビトロゲン)へと電子移動させた。TBSバッファ中5%のBSA(Promega)で、膜を1時間ブロックし、0.1 %のトゥイーン(TBST)を補ったTBS中のHDAC6抗体(Millipore)の1:500の希釈物により、4℃で、終夜プローブした。TBST中で3回洗浄した後、TBST中、抗ウサギHRP抗体(ジャクソン)で1時間、膜を培養した後、TBSTで5回、TBSで1回、洗浄を行った。その後、膜をPromegaからのECL基質で1分間培養し、イメージクワントLAS4000(GE)でスキャンを行った。結果(
図10)は、NanoLuc HDAC6 DNAの1:1000の希釈物が、内因性HDAC6の発現レベルと同程度の発現レベルであったことを示している。これは、最適S/B比で薬剤トレーサとの高い親和性相互作用を提供したと同じ希釈度である。
【0108】
実施例19
細胞表面受容体とNanoLucとの融合体への蛍光サイトカインの結合の定量化
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、蛍光ラベルサイトカインの競合置換により、細胞表面受容体に対する治療的抗体の相対親和性を計測する能力が実証された。この実施例では、市販品が入手可能なTAMRA-上皮成長因子(TMR-EGF; Life Technologies)が、NanoLuc-EGFR(Herl)融合タンパクを発現する安定した細胞系を用いた細胞BRETアッセイに適用された。EGFの結合に干渉することが知られる治療的抗体との処理に際して、TMR-EGFとNanoLuc-EGFRとの間でのBRETシグナルの発生を、防止することができる。
【0109】
pF5 NanoLuc-EGFRプラスミドDNA(Promega社)及びFuGene HD(Promega社)のトランスフェクションにより、HEK293安定した細胞系を発生させた。トランスフェクションの後、G418選択により、安定した細胞系が発生し、その後、限定された希釈クローニングが行われた。NanoLuc-EGFRを発現するクローン由来細胞が、ウェル当たり20,000セルの密度で、96-ウエルプレートに接種された。接種の20時間後、培地を無血清OptiMEMと交換し細胞は、血清欠乏状態になった。欠乏状態の後、細胞を、段階希釈TMR-EGF(Life Technologies)で処理した。TMR-EGFとの平衡化に続いて、フリマジン(NanoLuc; Promega社のためのセレンテラジン誘導体基質)を、20μMの濃度で加え、VarioskanルミノメータでBRETを定量した。その後の実験において、TMR-EGF(10ng/mlの最終濃度)による刺激への前に、ベクティビックス、アービタックス又はハーセプチン(ネガティブ対照)で細胞を前処理することにより、TMR-EGFの抗体媒介置換を計測した。
【0110】
図20の結果により、NanoLucに結合される細胞表面受容体への蛍光サイトカインの結合を定量するために、BRETを用いることができることが実証される。更に、サイトカイン結合を抑制することが可能な治療的抗体の親和性を、蛍光サイトカインの競合置換により、計測することができる。ベクティビックス及びアービタックスは、TMR-EGFのNanoLuc-EGFRへの結合を抑制することができた一方、ハーセプチン(Herlへの親和性が無視できるHer2バインダー)は、TMR-EGF結合を抑制することができなかった。この実施例では、蛍光サイトカインの競合置換により、治療的抗体(例えばベクティビックス、アービタックス等)又は他のバインダー(例えばサイトカイン生物系)の結合をモニターするために迅速に再構成可能なフォーマットで、蛍光サイトカインの既知の高親和性ターゲットへの結合を、BRETにより定量することができることが実証される。これは、細胞フォーマット中の生物学的製剤の相対的な能力を計測する技術として、BRETを使用する能力を実証する。
【0111】
実施例20
BRET用途
ある実施形態では、本発明は、同時に、以下の3つの部分を検出/測定することが可能になる。(1)生体発光リポータタンパクのペプチド、及び(2)錯体を生成するための構造的補完体を通して相互作用する生物発光リポータタンパクのポリペプチド、及び(3)蛍光性の第3の部分(例えば、蛍光小分子)。
【0112】
A)この実施例は、構造上補完的なペプチド(SEQ ID NO:6)及び生物発光錯体を生成するポリペプチド(SEQ ID NO:7)から生成される生物発光錯体からのエネルギ移動を実証する。蛍光性ダイを、補完的なペプチドシーケンスに結合させた。代替的には、蛍光性タンパクは、ペプチド又はポリペプチド(例えば、遺伝子構造体から形成される)と融合(例えば、融合タンパク)することができた。
【0113】
補完的なポリペプチドシーケンスを発現する大腸菌溶解ライセートが、調製された(ポリライセート)。40μLのポリライセートを、10μL補完ペプチド(pep)又は蛍光標識補完ペプチド(pep-TMR)と混合し、室温で10分間培養した。50mM HEPES pH 7.4中の錯体(フリマジン)の100μM基質50μLを加え、室温で30分間培養した。TECAN M1000により、400~700nmに亘って、発光を計測した。
【0114】
図21は、ポリ/Pep錯体(ドナー)からTMR(受容体)への非常に効率の良いエネルギ移動及び発光する光の波長に対応するレッドシフトを例示する。
【0115】
B)この実施例は小分子濃度又は酵素活性を検出すること等の検出に、BRETを用いることを実証する。エネルギ移動は、距離に大きく依存するため、エネルギ移動の程度はしばしば、システムの配置に関連し得る。例えば、カルシウムをキレート化するポリペプチドの挿入を用いて、エネルギ移動の調節を通してカルシウム濃度を計測することができる。
【0116】
上記のようにセンサーの立体配置的を変更することを通して、又は蛍光性部分からのセンサーの切断を通して、距離をも変える酵素が、ここに記載されるシステムによって測定可能である。錯体の1つの構造上補完的なメンバーが、生物発光リポータタンパクの構造上補完的なペプチド及びポリペプチドが相互作用する際にエネルギが移動する蛍光性部分に、結合される。これの一例は、ペプチドが、リンカー(例えば、DEVDカスパーゼ-3切断部位)を介して、蛍光性ダイに接合されるように作製されたペプチドセンサーである。補完的なポリペプチドに曝露されるとき、エネルギ移動は観察される。カスパーゼ-3に曝露されるとき、蛍光性部分は錯体から放たれ、エネルギ移動は排除されるが、460nmの発光は維持される。
【0117】
補完的なポリペプチド(SEQ ID NO:8)及びNL-HT(HaloTagに融合されるNanoLuc)が、精製された。8pMのNL-HT20μLを、100nΜのPBI-378120μLと混合し(その全体が参照事項として本願に包含される米国特許出願番号第13/682,589号参照)、室温で10分間培養した。NanoGlo 40μL+100μMのフリマジンを加え、TECAN M1000により、300~800nmに亘って、発光を計測した。
【0118】
33ng/uLの補完的なポリペプチド(SEQ ID NO:6)20μLを、約500μMのPBI-5074(蛍光性ダイ-リンカー-相補ペプチド)20μLと混合した。NanoGlo 40μL+100μMのフリマジンを加え、TECAN M1000により、300~800nmに亘って、発光を計測した。
【0119】
図22は、相補ペプチド/ポリペプチド錯体(ドナー)からPBI-5074のTOMダイ(アクセプタ)へのエネルギ移動、及び、発光する光の波長に対応するレッドシフトを例示する。
【0120】
C)三成分の相互作用
生物発光リポータタンパクの構造上補完的なペアによるエネルギ移動を用いて、相互作用する3つの分子を計測することも可能である。一例は、生物発光リポータタンパクの補完的なポリペプチドに融合されるGPCR及び相互作用の際に生物発光錯体生成する生物発光リポータタンパクの補完的なペプチドに融合されるGPCR相互作用タンパクである。これにより、二成分相互作用の測定が可能になる。エネルギ移動のために蛍光性部分を支持する小分子GPCRリガンドが錯体と相互作用するなら、エネルギ移動が発生する。したがって、二成分タンパク-タンパク相互作用及び三成分の薬剤-タンパク-タンパク相互作用は、同じ実験で計測される。また、蛍光分子は、タンパクペアとの相互作用の際に、シグナルを発生させるのみであり、これは不活性タンパク(
図23)と相互作用しているリガンドから、あらゆるシグナルを除去する。
【0121】
実施例21
多成分ドナーとのBRET
以下の実施例は、リガンド-レセプタ相互作用は、各ドナー成分が同時に存在することが、発光には必要である多成分発光ドナーからのエネルギ移動を介して、モニター可能であることを実証する。この実施例では、ドナーは、2つの補完的なサブユニット、11Sポリペプチド及びPEP-80ペプチドから成る。11SポリペプチドはBRD4のN末端基に遺伝子的に結合され、融合タンパクが、HEK293細胞中に発現した。発光は、フリマジン()及びPEP-80相補ポリペプチドの両方の存在下でのみ、融合タンパクから生じた(
図24A)。フリマジンのみ(pep-80ペプチド無し)で培養された細胞ライセートは、大きなドナーシグナル又はアクセプタシグナルを発生させなかった(
図24A、25A)。蛍光性BRD4リガンド(iBET-NCT)の溶液が適用される場合は、PEP-80ペプチド(
図24B、25A、25B)の存在下でのみ、ドーズ依存性BRETシグナルが発生する。更に、シグナル特異性(
図25A)を示す非蛍光性BRD4リガンドにより、このBRETシグナルは、競合結合の間に低減され得る。
【0122】
Fugene HDを用い、HEK293細胞を11S-BRD4 DNAでトランスフェクトし、96-ウエルプレートフォーマットに接種した。トランスフェクションのため、11S-BRD4 DNAを、プロモーターを持たないキャリヤーDNA(pGEM3Z)で希釈した。最終的なDNA濃度/ウェルは、50ng/ウェルに維持されたが、11S-BRD4 DNAは、1:10(96ウェルフォーマットにおいて20,000の細胞/ウェルの接種密度)に希釈された。20時間のトランスフェクション後、細胞は、1μMのPEP-80ペプチドの存在下又は不存在下、OptiMEM+50ug/mLジギトニンに溶解された。細胞は次いで、特異性対照としての10μMのiBETの存在下又は不存在下、段階希釈iBET-NCT(PBI-4966)で処理された。1時間の培養の後、フリマジンを10μMで加え、VarioskanルミノメータでBRETを検出した。
【0123】
この実施例で例示される概念は、錯体のメンバーを多成分発光ドナーの成分にリンクすることにより、蛍光標識されたリガンドのタンパク錯体への近接度を検出することにも適用可能である(例えばヘテロダイマー又はホモダイマーレセプタへ選択的に結合するリガンドを検出する)。疾患関連性のあるタンパク錯体内のターゲットの関わりをモニターするため、本出願をこのように用いることができた。
【0124】
実施例22
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、タンパク錯体からのエネルギ移動を介して、細胞内リガンド-レセプタ相互作用をモニターすることができることを実証し、この場合、2つのタンパクの間の相互作用が容易になるよう、発光ドナー成分が近接であることが、発光のためには必要となる。この実施例では、ドナーは、2つのサブユニット、11Sペプチド及び114ペプチドを備えている。11Sペプチドは、BRD4のN末端基に遺伝子的に結合され、114ペプチドは、ヒストンH3.3のC末端に遺伝子的に結合された。これらの融合タンパクは、HEK293細胞内で同時に発現された。両方の融合体構築体(
図26A)の存在下でのみ、融合タンパクから発光が生じた。11S-BRD4単独、H3.3-114単独、又は様々な対照構築体を発現する細胞では、大きなドナーシグナル又はアクセプタシグナル(
図26)が発生しなかった。蛍光性BRD4リガンド(iBET-NCT/PBI-4966)の溶液を適用する場合、ドーズ依存性アクセプタシグナルは、11S-BRD4及びヒストンH3.3-114で同時トランスフェクトされるサンプルにのみ、発生した(
図27)。BRET比(610/450)として発現される場合、11S及び114のサブユニット及びiBET-NCTの促進性錯体、又はNANOLUC-BRD4及びiBET-NCT促進性錯体からのみ、特異的なBRETが観察された。更に、シグナル特異性を示す非蛍光性BRD4リガンド(IBET 151)の競合結合を通して、このBRETシグナルは、ドーズ依存の様式で低減した(
図28)。
【0125】
BRD4 DNA融合体構築体+/-ヒストンH3.3 DNA融合体構築体と共にFugene HDを用いて、HEK293細胞をトランスフェクトし、96-ウエルプレートフォーマットの中に接種した。トランスフェクションのため、リポータ構築体は、プロモーターを持たないキャリヤーDNA(pGEM3Z)で希釈された。最終的なDNA濃度/ウェルは、50ng/ウェルに維持されたが、しかしながら、それぞれのDNA発現構築体は、1:10に希釈された(96ウェルフォーマット中20,000の細胞/ウェルの接種密度)。20時間のトランスフェクション後、細胞を、特異性対照としての10μMのiBET151の存在下又は不存在下、段階希釈iBET-NCT(PBI-4966)で処理した。iBET-151がドーズ依存性の様式でiBET-NCTトレーサと競合可能であったかを決定するため、固定濃度のiBET-NCT/PBI-4966トレーサ(2μM)の存在下で、トランスフェクト細胞を、順次希釈iBET-151で処理した。1時間の培養の後、フリマジンを10μMで加え、VarioskanルミノメータでBRETを検出した。
【0126】
この実施例で例示される概念は、錯体のメンバーを多成分発光ドナーの成分にリンクすることにより、蛍光標識されたリガンドのタンパク錯体への近接度を検出することにも適用可能である(例えばヘテロダイマー又はホモダイマーレセプタへ選択的に結合するリガンドを検出する)。本出願を、タンパク錯体内でのターゲットの関わりをモニターするために、用いることができた。更に、この技術は、疾患関連性の細胞内タンパク錯体に対して選択的な化合物の識別又はキャラクタリゼーションを実現することができた。
【0127】
実施例23
本発明の実施形態の開発中に、実験が行われ、BRETを用いた所与の系統学的ターゲットファミリーの中での推定上のターゲットのパネルに対して、薬剤の細胞内選択性及び親和性をプロファイリングする能力を実証した。この実施例では、細胞中のクラスI/II/IV(非sirtuin)HDACsのパネル全体に対して、ボリノスタット(SAHA)の関わりがプロファイリングされる。先ず、BRETを用いた様々なNANOLUC/HDAC融合体に対して、蛍光性SAHA誘導体(SAHA-NCT)をプロファイリングする。個々のNANOLUC/HDAC融合体とSAHAトレーサとの間でエネルギ移動が一旦確認されれば、それぞれのエネルギ移動錯体の競合破壊により、SAHAの親和性が決定される。次いで親和性を、それぞれの実験で生じたIC50値により、推量することができる。更に、個々の領域への阻害剤の親和性を、ターゲットタンパクの分別された領域へのNANOLUCの遺伝子の融合を介して、決定することができる。
【0128】
細胞中の個々のHDACsへのSAHAトレーサ親和性の決定。非サーチュインヒストンデアセチラーゼ(HDACs 1-11)の全体のファミリーで、NANOLUC融合体をコード化するプラスミドDNAにより、ヒーラー細胞をトランスフェクトした。1:100の質量比でそれぞれのDNA構築体を希釈することにより、細胞をトランスフェクトしてpGEM3ZキャリヤーDNAとし、3:1の脂質:DNA比で、Fugene HD(Promega Corporation)を用いて、脂質DNA錯体を生成した。次いでトランスフェクト細胞を、1ウェルにつき20,000セルの密度で、96-ウエルプレートに接種した(全収率がDNA50ng/ウェル)。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、20μMのSAHA(非特異的BRETを定量するために用いられる後者のサンプル)の存在下又は不存在下、段階希釈PBI-4968で培養した。細胞を、37℃で2時間培養した。NANOLUC-発現サンプルに対して、フリマジンを10μMの最終濃度で加えた。次いでBRETが、450nmのバンドパスフィルタ及び610nmのロングパスフィルタを備えたBMG Clariostarルミノメータで計測された。630チャネルのシグナルを450チャネルのシグナルで除して、BRET比を決定した。具体的なバックグラウンド補正BRET値を決定するため、トレーサのそれぞれの濃度の非特異的なBRET値を、トレーサ単独でのBRET値から減じた。
【0129】
実施例24
以下の実施例は、BRETイメージングを用いた単細胞溶解での化合物の細胞内ターゲットへの結合を計測する能力を実証することに役立つ。この実施例は、生体細胞内における、SAHA及びその蛍光性誘導体、SAHA-NCT(PBI-4968)の、NanoLuc-HDAC6及びHDACl0-NanoLucへの結合を示す。
【0130】
BRETイメージングによる生体細胞中におけるSAHA及びSAHA-NCTのHPAC6及びHDAC10への結合の測定。それぞれHDAC6及びHDAC10でNanoLuc融合体をコード化するプラスミドDNAで、ヒーラー細胞をトランスフェクトした。1:100の質量比でそれぞれのDNA構築体を希釈することにより、細胞をトランスフェクトしてpGEM3ZキャリヤーDNAとし、3:1の脂質:DNA比でFugene HD(Promega Corporation)を加えることによって脂質DNA錯体を生成した。トランスフェクション錯体を、細胞懸濁液(細胞1x10
5個/ml)に混合し、その後、底部がガラスの35mmディッシュに、ディッシュ当たり200,000セルの密度で表面被覆をした(全収率がDNAで50ng/ウェル)。24時間のトランスフェクション後、細胞培地を無血清培地(Opti-MEM)と交換し、10mMのSAHAの存在下又は不存在下、2mMのPBI-4968で培養した。細胞を、2時間37℃で培養した。NanoLuc-発現サンプルに、フリマジンを10μMの最終濃度で加えた。オリンパスLV200バイオ発光顕微鏡を用いて、サンプルを撮像した。BRETによりNanoLuc-HDAC6又はHDAC10-Nanolucのいずれかに対するPBI-4968の結合及び置換を計測するため、495nmのショートパスフィルタ及び590nmのロングパスフィルタをそれぞれ用いて、順次的なイメージを取得した(
図34及び35)。イメージ分析プログラムイメージを使用して、個々の細胞を代表するイメージセクションを量的に分析した。590のチャネルで得られた値を、450のチャネルの値で除すことにより、BRET比を決定した。それぞれのサンプルに対して、最低100個の細胞を分析した。全てのデータを、ドットプロットフォーマットで纏めた(
図36)。以下の3つの異なるサンプルから得られるBRET値の比較分析により、SAHA及びSAHA-NCTの特異的な結合を実証した。
サンプル1-ネガティブ対照(非処理)。
サンプル2-ポジティブ対照(2mM PBI-4968)。
サンプル3-トレーサ置換(2mM PBI-4968+10mm SAHA)。
【0131】
これらの結果により、単一細胞レベル上での、PBI-4968並びにSAHAの、HDACファミリー(HDAC6及び10)の異なるメンバーへの細胞取り込み及び特異的な結合が、実証される。これらの結果は、取り込みや結合の程度が細胞集団内で大きく変化することを、示唆している。イメージベースのBRETアッセイフォーマットにより、単一細胞レベルでターゲットに特異的な化合物結合を分析して、細胞型、細胞集密度、細胞周期状態及び分析のために単細胞溶解を必要とする他の生理学的パラメータに基づく相違を決定することが可能になる。
【0132】
本出願の中に説明され、及び/又は以下に列挙される、全ての出版物及び特許は、参照事項として本願に包含される。ここに記載された本発明の方法及び組成物の様々な修正及び変更が、本発明の範囲及び本質を逸脱しない範囲で、当業者に明らかである。本発明を、具体的な好ましい実施形態に関連して記載してきたが、請求の範囲で主張される本発明が、この具体的な実施形態に過度に限定されてはならないことを理解すべきである。実際、本発明を遂行するための記載されたモードの、関連性のある分野の当業者に明らかな様々な修正は、以下の特許請求の範囲内に収まることを意図するものである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕アッセイシステムであって、
(a)蛍光体に結合される生物活性剤と、
(b)生物発光リポータに融合される細胞ターゲットと、
(c)生物発光リポータの基質と、
を有するアッセイシステム。
〔2〕前記生物活性剤は、小分子である、前記〔1〕に記載のシステム。
〔3〕前記蛍光体は、カルボキシローダミン類似体である、前記〔1〕に記載のシステム。
〔4〕前記生物発光リポータは、SEQ ID No.1と少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、前記〔1〕に記載のシステム。
〔5〕前記(a)及び前記(b)が、細胞中に存在する、前記〔1〕に記載のシステム。
〔6〕前記(b)が、融合体として細胞内に発現される、前記〔5〕に記載のシステム。
〔7〕前記(a)が、細胞外で加えられ、かつ、細胞に進入する、前記〔5〕に記載のシステム。
〔8〕前記細胞ターゲットが、生物活性剤の結合パートナーである、前記〔1〕に記載のシステム。
〔9〕前記生物発光リポータの発光スペクトラムが、前記蛍光体の吸収スペクトルと重なる、前記〔8〕に記載のシステム。
〔10〕前記生物活性剤の前記細胞ターゲットへの結合において、前記生物発光リポータによる前記基質の反応生成物への変換により、BRETによる前記蛍光体の励起及び前記蛍光体からの蛍光発光が生じる、前記〔9〕に記載のシステム。
〔11〕前記(a)は、前記蛍光体に結合される前記生物活性剤のライブラリの1つである、前記〔1〕に記載のシステム。
〔12〕前記(b)は、前記生物発光リポータに融合される複数の細胞ターゲットの1つである、前記〔1〕に記載のシステム。
〔13〕前記生物活性剤又は前記蛍光体に結合される前記生物活性剤が、非自然の化学合成によって生成される、前記〔1〕に記載のシステム。
〔14〕生物活性剤の細胞ターゲットへの結合を検出する方法であって、前記〔1〕~〔13〕の一つに記載のシステムを有する、方法。
〔15〕前記〔1〕~〔13〕の一つに記載のシステムを有する、細胞。
〔16〕生物活性剤と細胞ターゲットと間の相互作用を検出するための方法であって、
(a)前記細胞ターゲットの融合体及び第1の波長でエネルギを発光する生物発光リポータが、細胞内で発現することと、
(b)蛍光体に結合した前記生物活性剤に、前記細胞を接触させることと、ここで、前記蛍光体は前記第1の波長でエネルギを受け、かつ、第2の波長でエネルギを発光し、
(c)前記生物発光リポータの基質に、前記細胞を接触させることと、
(d)前記第2の波長のエネルギを検出することと、ここで、前記第2の波長での前記エネルギの存在は、前記細胞ターゲットで前記生物活性剤の相互作用を示し、
を有する方法。
【配列表】