IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不動テトラの特許一覧

<>
  • 特許-地盤改良装置及び地盤改良方法 図1
  • 特許-地盤改良装置及び地盤改良方法 図2
  • 特許-地盤改良装置及び地盤改良方法 図3
  • 特許-地盤改良装置及び地盤改良方法 図4
  • 特許-地盤改良装置及び地盤改良方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】地盤改良装置及び地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
E02D3/10 104
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022022198
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119345
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】原田 健二
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-041851(JP,A)
【文献】特開2015-052253(JP,A)
【文献】特開2010-013885(JP,A)
【文献】特開昭61-151309(JP,A)
【文献】特開平02-132219(JP,A)
【文献】特開平04-115011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中にケーシングパイプを回転させながら貫入し、引き抜く際の砂杭材料の排出と打ち戻しを繰り返すことで砂杭を造成する地盤改良装置であって、
前記ケーシングパイプの外周に長手方向に沿って延びるように長溝状の凹部を設け、
前記長溝状の凹部に排水材を収容し、
前記排水材を収容した前記長溝状の凹部の開口を水浸入孔を有する蓋体で閉塞し、
前記ケーシングパイプの貫入・引き抜き時に静水圧を超える間隙水圧が発生した際に、前記蓋体の水浸入孔から地下の土粒子間の間隙水を前記長溝状の凹部内に浸入させ、前記排水材を介して前記間隙水を地上へ排出するようにしたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤改良装置であって、
前記蓋体に前記水浸入孔を長手方向に沿って複数設けたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項3】
請求項1記載の地盤改良装置であって、
前記排水材として帯状のドレーン材を用いたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の地盤改良装置であって、
前記長溝状の凹部の下端部に、劣化した前記排水材を交換する際に用いる作業用の開口部を設けたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項5】
地盤中にケーシングパイプを回転させながら貫入し、引き抜く際の砂杭材料の排出と打ち戻しを繰り返すことで砂杭を造成する地盤改良方法であって、
前記ケーシングパイプの貫入・引き抜き時に静水圧を超える間隙水圧が発生した際に、前記ケーシングパイプの外周に長手方向に沿って延びるように設けた排水機構を介して地下の土粒子間の間隙水を地上へ排出しながら前記地盤中に圧縮した砂杭を造成することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項6】
請求項5記載の地盤改良方法であって、
前記排水機構は、前記ケーシングパイプの外周に長手方向に沿って延びるように設けられた長溝状の凹部と、前記長溝状の凹部に収容された排水材と、前記排水材を収容した前記長溝状の凹部の開口を閉塞する水浸入孔を有した蓋体と、で構成されていることを特徴とする地盤改良方法。
【請求項7】
請求項記載の地盤改良方法であって、
前記排水材として帯状のドレーン材を用いることを特徴とする地盤改良方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の地盤改良方法であって、
前記排水材が劣化した場合に、前記長溝状の凹部の下端部に設けられた作業用の開口部を介して新しい排水材に交換することを特徴とする地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングパイプの回転・貫入によって砂杭を造成する地盤改良装置及び地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良方法として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載の地盤改良方法は、中空管を所定の深度まで貫入する貫入工程と、該貫入工程後、中空管を適宜の長さ引き抜き、該引き抜き跡に中空管内の砂杭材料を排出する引き抜きと、中空管の打ち戻しを順次、地表に至るまで繰り返す造成工程とを行い、軟弱地盤中に複数の締固め砂杭を打設する高い改良効果が得られる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-82468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の地盤改良方法では、1本の砂杭の打設において、造成工程に要する時間が貫入工程に要する時間の3倍以上となるように貫入工程と造成工程を行うため、造成時間の増大を招くこととなり、砂杭の造成時間の短縮化を図る技術の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、砂杭を造成する際に静水圧を超える過剰間隙水圧を確実に低減させることができ、かつ、造成時間の短縮化を図ることができる地盤改良装置及び地盤改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る地盤改良装置は、地盤中にケーシングパイプを回転させながら貫入し、引き抜く際の砂杭材料の排出と打ち戻しを繰り返すことで砂杭を造成する地盤改良装置であって、前記ケーシングパイプの外周に長手方向に沿って延びるように長溝状の凹部を設け、前記長溝状の凹部に排水材を収容し、前記排水材を収容した前記長溝状の凹部の開口を水浸入孔を有する蓋体で閉塞し、前記ケーシングパイプの貫入・引き抜き時に静水圧を超える間隙水圧が発生した際に、前記蓋体の水浸入孔から地下の土粒子間の間隙水を前記長溝状の凹部内に浸入させ、前記排水材を介して前記間隙水を地上へ排出するようにしたものである。
【0007】
本発明の他の態様に係る地盤改良方法は、地盤中にケーシングパイプを回転させながら貫入し、引き抜く際の砂杭材料の排出と打ち戻しを繰り返すことで砂杭を造成する地盤改良方法であって、前記ケーシングパイプの貫入・引き抜き時に静水圧を超える間隙水圧が発生した際に、前記ケーシングパイプの外周に長手方向に沿って延びるように設けた排水機構を介して地下の土粒子間の間隙水を地上へ排出しながら前記地盤中に圧縮した砂杭を造成する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地盤中に砂杭を造成する際に、地下の土粒子間の間隙水を地上へ排出することで、静水圧を超える過剰間隙水圧を確実に低減(消散)させることができ、かつ、造成時間の短縮化を図ることができる。また、砂杭周囲の地盤の変位を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のケーシングパイプを用いる地盤改良装置の斜視図である。
図2】上記ケーシングパイプの断面図である。
図3図2中III-III線に沿う断面図である。
図4】上記ケーシングパイプの要部を断面で示す斜視図である。
図5】上記ケーシングパイプの外周に設けられた排水機構より地上へ間隙水が排出される状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態のケーシングパイプを用いる地盤改良装置の斜視図、図2はケーシングパイプの断面図、図3図2中III-III線に沿う断面図、図4はケーシングパイプの要部を断面で示す斜視図、図5はケーシングパイプの外周に設けられた排水機構より地上へ間隙水が排出される状態を示す部分断面図である。
【0012】
図1に示すように、地盤改良装置10は、前部にリーダ12を立設した施工機本体11と、ワイヤ13の巻き回しによりリーダ12に沿って昇降動して砂杭材料としての砂Sを搬送する昇降バケット14と、強制昇降装置15によりリーダ12に沿って昇降動すると共に、回転駆動装置16により回転自在に支持された肉厚で円筒状のケーシングパイプ(中空管)20と、強制昇降装置15と回転駆動装置16とに連結される連結管17と、強制昇降装置15に取り付けられ、ケーシングパイプ20に砂Sを供給するホッパー18と、このホッパー18の排出口側と連結管17との間に設けられ、ホッパー18内に供給された砂Sをケーシングパイプ20側へ自然落下により供給する供給用配管19と、を備えている。
【0013】
図1に示すように、ホッパー18は四角枠状に形成されていて、強制昇降装置15に取り付けられている。そして、ホッパー18の供給口18aに昇降バケット14の排出口14bより砂Sが供給されるようになっている。尚、図1中符号14aは昇降バケット14の供給口を示す。また、供給用配管19は連結管17に斜めに貫通するように取り付けられていて、ホッパー18から供給された砂Sを連結管17内に自然落下により供給する。
【0014】
図1図4に示すように、ケーシングパイプ20は、金属製で一重の円筒状に形成されていて、その肉厚部20aの中央から外周面20bにかけて長手方向(軸方向)Yに沿って延びるように長溝状の凹部21形成されている。この長溝状の凹部21には帯状のドレーン材(排水材)22が収容されている。この帯状のドレーン材22を収容した長溝状の凹部21の開口21aは、複数の水浸入孔23aを有する金属長板状の蓋体23で閉塞されている。これら長溝状の凹部21と、この長溝状の凹部21に収容された帯状のドレーン材22と、この帯状のドレーン材22を収容した長溝状の凹部21の開口21aを閉塞する金属長板状の蓋体23と、で排水機構Hが構成されている。この排水機構Hにより、図5に示すように、ケーシングパイプ20の貫入・引き抜き時に静水圧を超える間隙水圧が発生した際に、地下の土粒子間の間隙水Wをケーシングパイプ20の上端から地上へ排出して、静水圧を超えた過剰間隙水圧を低減(消散)させるようになっている。ここで、過剰間隙水圧とは、土粒子間の間隙水Wに繰り返しのせん断力や打設時の打設荷重が作用して静水圧を超える間隙水圧となった状態の水圧をいう。
【0015】
尚、図1図2に示すように、ケーシングパイプ20の下端(先端)には、円筒状の取付リング24が溶接により固定されている。この円筒状の取付リング24には、地盤Dを掘削する掘削ビット25が一対取り付けられている。この円筒状の取付リング24が円筒状のケーシングパイプ20よりも大径に形成されているのは、貫入時のケーシングパイプ20のフリクション軽減と土圧の軽減を図るためである。また、ケーシングパイプ20の長溝状の凹部21の下端部には、劣化した帯状のドレーン材22を交換する際に使用する作業用の開口部26(凹部21の開口21aが蓋体23で閉塞されていない部分)が設けられている。
【0016】
以上実施形態のケーシングパイプ20を用いた地盤改良装置10によれば、地盤D中に強制昇降装置15と回転駆動装置16を介してケーシングパイプ20を回転しながら貫入し、ケーシングパイプ20を引き抜く際に砂Sを排出し、ケーシングパイプ20の打ち戻しと砂Sの排出とを順次地表に至るまで繰り返すことで、無振動・無騒音にて圧縮した拡径の砂杭Kを造成することができる。
【0017】
そして、図5に示すように、ケーシングパイプ20の貫入・引き抜き時に静水圧を超える過剰間隙水圧が発生した際に、ケーシングパイプ20の外周に長手方向に沿って延びるように設けた排水機構Hを介して地下の土粒子間の間隙水Wを地上へ排出しながら地盤D中に圧縮した拡径の砂杭Kを造成することができる。このように、地盤D中に砂杭Kを造成する際に、地下の土粒子間の間隙水Wを地上へ排出することで、静水圧を超える過剰間隙水圧を確実に消散させることができ、かつ、造成時間の短縮化を図ることができる。また、砂杭周囲の地盤Dの変位を低減させることができる。
【0018】
また、帯状のドレーン材22が劣化した場合には、ケーシングパイプ20を地上に引きぬいた状態で、ケーシングパイプ20の長溝状の凹部21の下端部の開口部26より劣化した帯状のドレーン材22を引き出す。そして、長溝状の凹部21と金属長板状の蓋体23との間の空間内に通したワイヤ13の先端に新しい帯状のドレーン材22を取り付け、ケーシングパイプ20の上部に設置した図示しないウィンチによりワイヤ13を巻き上げて長溝状の凹部21と金属長板状の蓋体23との間の空間内に新しい帯状のドレーン材22を設置して交換する。
【0019】
以上実施形態の地盤改良装置10及び地盤改良方法によれば、砂杭Kの造成にかかる時間を従来より延長することなく、また、付帯工事を必要とせずに、周辺地盤の強度を従来工法より高めることができ、より条件の厳しい工区での施工が可能となると共に、従来より砂杭Kの打設本数を減らすことが可能となり、より経済的な施工を低コストで提供することができる。
【0020】
尚、前記実施形態によれば、排水材として帯状のドレーン材を使用したが、帯状の織物や編物または透水性を備えた薄くて長い不織布のような可撓性素材により構成されたものを排水材として使用しても良い。
【符号の説明】
【0021】
10 地盤改良装置
20 ケーシングパイプ
21 長溝状の凹部
21a 開口
22 帯状のドレーン材(排水材)
23 蓋体
23a 水浸入孔
26 作業用の開口部
D 地盤
S 砂(砂杭材料)
K 砂杭
Y 長手方向
W 土粒子間の間隙水
H 排水機構
図1
図2
図3
図4
図5