(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ブッシング
(51)【国際特許分類】
H01B 17/36 20060101AFI20231129BHJP
H01F 27/04 20060101ALI20231129BHJP
H01F 27/42 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01B17/36
H01F27/04 B
H01F27/42 120
(21)【出願番号】P 2022054143
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福濱 大河
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-128934(JP,A)
【文献】特開2022-102150(JP,A)
【文献】実開昭60-73119(JP,U)
【文献】特開2011-87447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/00-17/54
H01F 27/04
H01F 27/42
H02G 1/14
H02G 15/00-15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器用変圧変流器用のブッシングであって、
ケーブル導体及びケーブル絶縁層を有する絶縁ケーブルと、
前記絶縁ケーブルの外側を覆う導体パイプと、
前記導体パイプの外側を覆う補強絶縁部と、
前記ケーブル導体に電気的に接続される第1接続端子と、
前記導体パイプに電気的に接続される第2接続端子と、
軸方向における端部に設けられ、前記ブッシングの内部を封止する固定部材と、を備え、
前記ケーブル導体及び前記導体パイプにより、高圧電路から電流を引き込む第1通電経路、及び前記高圧電路に電流を帰還させる第2通電経路が形成されており、
前記固定部材は、
前記第1接続端子と、
前記第1接続端子の周面を囲繞する絶縁部と、
前記絶縁部に埋設され前記導体パイプの外周面に取り付けられる埋込金具と、が一体的に形成された構造を有し、
前記絶縁部は、内周面に、前記軸方向において前記ケーブル導体の外周から前記ケーブル絶縁層の外周に跨るように形成されたバリア部を有し、
前記バリア部と前記埋込金具との間に前記導体パイプが挿嵌されている、
ブッシング。
【請求項2】
前記第1接続端子及び前記埋込金具は、径方向に離間し、軸方向に重なるように配置されている、
請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記第1接続端子及び前記埋込金具は、円筒形状を有し、前記ブッシングの中心軸に関して同心状に配置される、請求項1又は2に記載のブッシング。
【請求項4】
前記第1接続端子及び/又は前記埋込金具は、それぞれの円筒部分の周面に、座ぐりを有する、請求項3に記載のブッシング。
【請求項5】
前記絶縁ケーブルにおいて、前記ケーブル絶縁層は、軸方向における端部に、前記ブッシングの軸方向中央側から軸方向端部側に向かって縮径するように形成されたペンシリング部を有し、
前記ペンシリング部の外周と前記導体パイプの内周とで形成される空間に前記バリア部が配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載のブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計器用変圧変流器用のブッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧電路の高電圧・大電流を電気計器で計測できるように、低電圧・小電流に変成する機器として、計器用変圧変流器(VCT:Voltage and Current Transformer)が知られている。VCTでは、高圧電路から電流を引き込む第1通電経路と、高圧電路に電流を帰還させる第2通電経路とを、1つのブッシング内に設けることにより、構造の簡素化及び小型化が図られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、第1及び第2通電経路として、中心銅管と中心銅管の内側に配置されたロッドとからなる二重構造を利用したVCT用のブッシングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のブッシングでは、中心銅管とロッドとの間は空気絶縁であり、中心銅管とロッドを十分に離間させて絶縁耐力を確保する必要があるため、小型化(細径化)が困難である。また、中心銅管とロッドを同心状に位置調整することが困難であることも、小型化を阻害する要因となっている。
一方で、VCT用ブッシングとして、導体パイプ内に2本の紙巻きより線を配置して第1及び第2通電経路を形成する構造も知られているが、この場合も、2本の紙巻きより線を配置するため、導体パイプが大径となり、さらなる小型化、軽量化は困難である。
【0005】
本発明の目的は、小型化及び軽量化を図ることができる計器用変圧変流器用のブッシングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブッシングは、
計器用変圧変流器用のブッシングであって、
ケーブル導体及びケーブル絶縁層を有する絶縁ケーブルと、
前記絶縁ケーブルの外側を覆う導体パイプと、
前記導体パイプの外側を覆う補強絶縁部と、
前記ケーブル導体に電気的に接続される第1接続端子と、
前記導体パイプに電気的に接続される第2接続端子と、
軸方向における端部に設けられ、前記ブッシングの内部を封止する固定部材と、を備え、
前記ケーブル導体及び前記導体パイプにより、高圧電路から電流を引き込む第1通電経路、及び前記高圧電路に電流を帰還させる第2通電経路が形成されており、
前記固定部材は、
前記第1接続端子と、
前記第1接続端子の周面を囲繞する絶縁部と、
前記絶縁部に埋設され前記導体パイプの外周面に取り付けられる埋込金具と、が一体的に形成された構造を有し、
前記絶縁部は、内周面に、前記軸方向において前記ケーブル導体の外周から前記ケーブル絶縁層の外周に跨るように形成されたバリア部を有し、
前記バリア部と前記埋込金具との間に前記導体パイプが挿嵌されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブッシングの小型化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るブッシングを備える計器用変圧変流器の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るブッシングの全体構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係るブッシングの高圧電路側端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るブッシングを、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態に係るブッシング1(
図2参照)を適用しうる計器用変圧変流器A(VCT)の概要を示す図である。
【0011】
図1に示すように、計器用変圧変流器Aは、三相交流の架空リード線Cの高電圧・大電流を電気計器で計測できるように低電圧・小電流に変成する機器であり、3つのブッシングBU、BV、BW及びVCT回路2を備える。架空リード線Cの公称電圧は、例えば、66kVである。
【0012】
3つのブッシングのうち、U相とW相の2つのブッシングBU、BWは、それぞれ、架空リード線Cの電流を相ごとに引き込む第1通電経路10及び架空リード線Cに電流を帰還させる第2通電経路20を有する(
図2参照)。これらのブッシングBU、BWに、実施の形態に係るブッシング1が適用される。また、V相の1つのブッシングBVは、通常の中心導体を有するブッシングであり、電流を帰還させる第2通電経路を有していない。
【0013】
VCT回路2は、ブッシングBU、BV、BWを介して引き込まれた高電圧・高電流を低電圧・小電流に変成する回路であり、公知の技術を適用できる。
【0014】
図2は、実施の形態に係るブッシング1の全体構成を示す図である。
図3は、ブッシング1の高圧電路側端部の拡大図である。以下の説明において、図中、下方を「機器側」、上方を「高圧電路側」と称する。
【0015】
また、ブッシング1の高圧電路側に設けられる第1、第2の高圧電路接続端子12、22及び高圧電路側固定部材41の説明においては、高圧電路側(
図2、
図3の図中上方)を「先端側」、機器側(
図2、
図3の図中下方)を「後端側」と称する。さらに、ブッシング1の機器側に設けられる第1、第2の機器接続端子13、23、機器側固定部材42及びシールド電極43の説明においては、機器側(
図2の図中下方)を「先端側」、高圧電路側(
図2の図中上方)を「後端側」と称する。
ブッシング1は、例えば、高圧電路側が気中、機器側が油中に配置される、気中―油中ブッシングである。ブッシング1は、ケーブル導体111及びケーブル絶縁層112を有する絶縁ケーブル11と、絶縁ケーブル11の外側を覆う導体パイプ21と、導体パイプ21の外側を覆う第1の補強絶縁部30と、を備える。さらに、ブッシング1は、計器用変圧変流器Aに取り付けるためのフランジ部50を有する。ブッシング1は、フランジ部50より基端部側(
図2では機器側)に第2の補強絶縁部33を有する。第2の補強絶縁部33は、第1の補強絶縁部30における絶縁筒31と同一材料で絶縁筒31と一体的に形成される。第2の補強絶縁部33は、ブッシング1を計器用変圧変流器Aのケースに設置した際に、計器用変圧変流器Aの内側に配置される。絶縁ケーブル11により第1通電経路10が形成され、導体パイプ21により第2通電経路20が形成される。
【0016】
絶縁ケーブル11において、ケーブル導体111は、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等の通電に適した導電性材料からなる線材のより線で構成される。ケーブル導体111は、電流に応じて、導体断面積が設定される。ケーブル導体111は、ケーブル絶縁層112の先細にペンシリング処理が施された両端部から露出する。
ケーブル絶縁層112は、例えば、架橋ポリエチレン等の絶縁材料で形成される。ケーブル絶縁層112は、絶縁耐圧に応じて材質及び厚さが設定される。
絶縁ケーブル11には、架空リード線Cの公称電圧(例えば、66kV)よりも低電圧のケーブル(例えば、6kV級のケーブル)が適用される。
【0017】
導体パイプ21は、例えば、銅やアルミニウムなどの導電性材料で形成される。導体パイプ21は、ケーブル導体111と同様に、電流に応じて断面積(パイプ厚さ)が設定される。
【0018】
絶縁ケーブル11及び導体パイプ21は、同心状に配置されており、ケーブル導体111と導体パイプ21は、ケーブル絶縁層112によって絶縁される。ケーブル絶縁層112は、絶縁材料で形成され、空気絶縁より絶縁耐力が高いので、特許文献1の場合に比較して、ブッシングの小型化(細径化)を図ることができる。
【0019】
ここで、絶縁ケーブル11の外周面と導体パイプ21の内周面との離間距離は、2mm以下(接触する場合を含む)であることが好ましい。これにより、絶縁ケーブル11と導体パイプ21とが確実に同心状となるように配置されるので、容易に所望の絶縁耐力を実現することができる。
【0020】
第1通電経路10において、絶縁ケーブル11のケーブル導体111の高圧電路側の端部は、第1の高圧電路接続端子12を介して、引き込み側の架空リード線Cのケーブル導体と電気的に接続される。また、ケーブル導体111の機器側の端部は、第1の機器接続端子13を介して、VCT回路2と接続される。ここでは、ケーブル導体111の先端に金属製の圧縮プラグ113が取り付けられており、圧縮プラグ113と第1の高圧電路接続端子12とが、例えば、マルチラムバンド等の導体接触子(図示略)を介して接触するように配置され、電気的に接続されている。機器側の端部においても同様である。
第1の高圧電路接続端子12及び第1の機器接続端子13は、それぞれ、高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42に一体的に設けられており、導体パイプ21に対して高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42を取り付けることに伴い、ケーブル導体111(圧縮プラグ113)と電気的に接続されるようになっている。
【0021】
第2通電経路20において、導体パイプ21の高圧電路側の端部は、第2の高圧電路接続端子22を介して、帰還側の架空リード線Cのケーブル導体と接続される。また、導体パイプ21の機器側の端部は、第2の機器接続端子23を介して、VCT回路2と接続される。第2の高圧電路接続端子22及び第2の機器接続端子23は、それぞれ、導体パイプ21の外周面に取り付けられ、導体パイプ21と電気的・機械的に接続される。
【0022】
実施の形態では、第2の高圧電路接続端子22は、第1の補強絶縁部30より高圧電路側(先端側)に取り付けられ、高圧電路側固定部材41より機器側(後端側)に取り付けられる。また、第2の高圧電路接続端子22の先端側(高圧電路側)は、帰還側の架空リード線Cのケーブル導体と接続される、例えば板状の接続部を有する。第2の機器接続端子23も同様に、第2の補強絶縁部33より機器側(先端側)に取り付けられ、機器側固定部材42より高圧電路側(後端側)に取り付けられる。また、第2の機器接続端子23の先端側(機器側)は、VCT回路2と接続される、例えば板状の接続部を有する。
【0023】
また、ブッシング1の機器側には、第1の機器接続端子13及び第2の機器接続端子23を覆うように、コロナ放電を抑制するためのシールド電極43が配置されている。
【0024】
ブッシング1の両端部には、ブッシング1の内部を封止する高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42が設けられている。これにより、水等の導体パイプ21内への浸入を防ぐことができ、導体パイプ21内の絶縁ケーブル11により電気的に安定した第1通電経路10を形成することができる。
また、高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42により、第1の高圧電路接続端子12及び第1の機器接続端子13と導体パイプ21が絶縁され、ブッシング1の端部における絶縁性が確保されるので、ブッシングの信頼性が向上する。
高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42の具体的な構成については、後述する。
【0025】
第1の補強絶縁部30は、例えば、導体パイプ21の外側に配置される絶縁筒31、及び絶縁筒31の外側に一体的に設けられるポリマー被覆体32を有する二重絶縁構造のポリマー套管で構成される。絶縁筒31、第2の補強絶縁部33及びポリマー被覆体32は、導体パイプ21とともに、例えば、モールド成型により一体的に形成される。これにより、第2通電経路20となる導体パイプ21と第1の補強絶縁部30を容易に作製することができる。
【0026】
導体パイプ21の両端部は、第1の補強絶縁部30、第2の補強絶縁部33からそれぞれ露出する。なお、図示を省略するが、絶縁筒31及びポリマー被覆体32とともに、遮へい金具や電界緩和層が、モールド成型により一体的に形成されてもよい。本実施の形態では、絶縁筒31内に埋設された遮へい金具によってフランジ部50が形成されている。
【0027】
絶縁筒31は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)など)で形成される。
ポリマー被覆体32は、電気絶縁性能に優れる材料(例えば、シリコーンポリマーなどの高分子材料)で形成される。ポリマー被覆体32は、絶縁筒31の外周を覆う胴部(符号略)と、胴部の外周に長手方向に離間して形成される複数の傘状の襞部(符号略)とを有する。襞部は、
図2に示すように、突出長の異なる複数の襞が長手方向に離間して交互に形成されてもよいし、突出長の同じ複数の襞が長手方向に離間して形成されてもよい。
【0028】
以下に、高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42について、詳細に説明する。高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42は、ほぼ同様の構造を有するため、ここでは、高圧電路側固定部材41を例に挙げて説明する。
【0029】
高圧電路側固定部材41は、第1の高圧電路接続端子12と、第1の高圧電路接続端子12の周面を囲繞する絶縁部411と、絶縁部411に埋設され導体パイプ21の外周面に取り付けられる埋込金具412とが、一体的に形成された構造を有する。第1の高圧電路接続端子12、絶縁部411、及び埋込金具412は、例えば、モールド成型により一体的に形成される。
【0030】
第1の高圧電路接続端子12が高圧電路側固定部材41に一体化されているため、架空リード線Cのケーブル導体と電気的に接続される接続端子を別部材として設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。また、第1の高圧電路接続端子12が高圧電路側固定部材41に一体化されることで、必要以上に接続端子を長手方向に長くする必要がなく、ひいてはブッシング1の小型化及び軽量化を図ることができる。高圧電路側固定部材41(絶縁部411)の外周面は、シリコーンゴム等のゴム材料からなる保護層で覆われていてもよい。なお、ブッシング1の機器側は油中に設置されるため、機器側固定部材42には、保護層はなくてもよい。
【0031】
第1の高圧電路接続端子12の後端側(機器側)は、円筒形状を有し、内部に絶縁ケーブル11の先端(圧縮プラグ113)を挿入可能となっている。第1の高圧電路接続端子12の内周面は、絶縁部411の内周面と連設され、高圧電路側固定部材41の内周面の一部を形成する。また、第1の高圧電路接続端子12の先端側(高圧電路側)は、例えば板状の接続部を有し、架空リード線Cのケーブル導体と電気的に接続される。
【0032】
絶縁部411は、エポキシ樹脂等の絶縁材料で形成される。絶縁部411は、内周面に、ケーブル導体111の外周(実施の形態ではケーブル導体111に電気的に接続される圧縮プラグ113の外周)からケーブル絶縁層112の外周に跨るように形成されたバリア部411aを有する。バリア部411aの後端側(機器側、すなわちブッシング1の軸方向中央側)への突出長は、要求される絶縁耐圧に応じて設定され、例えば、7~8kVの絶縁耐圧を確保する場合、10mm程度に設定される。また、バリア部411aの厚さは、所定の機械的強度を有するように設定される。
【0033】
埋込金具412は、円筒形状を有し、後端側(機器側)の端部が絶縁部411から突出するように絶縁部411に埋設されている。埋込金具412は、内周面に、導体パイプ21の雄ネジ21aに螺合する雌ネジ412aが形成されている。埋込金具412は、絶縁部411よりも曲げ強度の高い材料(例えば、銅)で形成される。
【0034】
絶縁部411のバリア部411aと埋込金具412との間に、円筒形状の凹部が形成される。この凹部に導体パイプ21が挿嵌される。また、高圧電路側固定部材41の内部への水又は空気の侵入を防止するために、導体パイプ21と絶縁部411及び埋込金具412との接触面には、シール部材(図示略)が配置される。
【0035】
バリア部411aにより、導体パイプ21とケーブル導体111またはケーブル導体111に電気的に接続される圧縮プラグ113(以下、「ケーブル導体111等」と称す。)との間に絶縁部411が介在することとなり、導体パイプ21とケーブル導体111等との間の絶縁が確保される。これにより、導体パイプ21の端部とケーブル導体111等とが近接するように配置することができ、ブッシング端部における軸方向長さを短くすることができる。
【0036】
第1の高圧電路接続端子12及び埋込金具412は、絶縁部411により、適切な端子間絶縁が確保される。第1の高圧電路接続端子12及び埋込金具412は、例えば、それぞれの円筒部分が、径方向に離間し、軸方向に重なるように配置されている。第1の高圧電路接続端子12と埋込金具412とが重なり合うラップ長さは、例えば、5mm以上(例えば、10mm)であることが好ましい。第1の高圧電路接続端子12と埋込金具412が軸方向に重なるように配置し、両者の間に絶縁部411が介在するように構成することにより、外力が負荷されたときに高圧電路側固定部材41の内部に生じる応力は分散される。したがって、高圧電路側固定部材41の径を大きくすることなく、径方向における曲げ応力を低減することができる。また、曲げ応力と同様に、せん断応力についても同様の効果を期待できる。
【0037】
また、第1の高圧電路接続端子12における絶縁部411との境界面、及び埋込金具412における絶縁部411との境界面には、座ぐりが設けられることが好ましい。これにより、第1の高圧電路接続端子12及び埋込金具412と絶縁部411とのせん断強度が向上するとともに、界面距離が長くなり内部への水や空気の侵入を抑制することができる。なお、第1の高圧電路接続端子12及び埋込金具412の座ぐりの位置及び数は特に限定されない。せん断強度や成型の容易さを考慮して適宜に設定されればよく、いずれか一方だけに設けられてもよい。
【0038】
また、絶縁ケーブル11において、ケーブル絶縁層112は、軸方向における端部に、ブッシング1の軸方向中央側から軸方向端部側に向かって縮径するように形成されたペンシリング部112aを有する。具体的には、ケーブル絶縁層112の高圧電路側のペンシリング部112aは、機器側から高圧電路側に向かって縮径するようにテーパ状にペンシリング処理が施されている。ペンシリング部112aの外周と導体パイプ21の内周とで形成される空間にバリア部411aが配置される。これにより、バリア部411aの厚さ分、高圧電路側固定部材41の外径を大きくすることなくバリア部411aを形成することができる。
【0039】
更に、ペンシリング部112aを設けることにより、バリア部411aの内径を、絶縁ケーブル11の外径(具体的には、ペンシリング部112aを除いた部分のケーブル絶縁層112の外径)より小径に形成することができる。これにより、絶縁ケーブル11と導体パイプ21とが確実に同心状となるように絶縁ケーブル11の外周面と導体パイプ21の内周面との離間距離を2mm以下(接触する場合を含む)とする場合でも、バリア部411aの厚さ分、高圧電路側固定部材41の外径を大きくすることなく、所定の機械的強度を有する厚さを確保することができる。
【0040】
このように、実施の形態に係るブッシング1は、計器用変圧変流器用のブッシングであって、ケーブル導体111及びケーブル絶縁層112を有する絶縁ケーブル11と、絶縁ケーブル11の外側を覆う導体パイプ21と、導体パイプ21の外側を覆う補強絶縁部30と、ケーブル導体111に電気的に接続される第1の高圧電路接続端子12及び第1の機器接続端子13(第1接続端子)と、導体パイプ21に電気的に接続される第2の高圧電路接続端子22及び第2の機器接続端子23(第2接続端子)と、軸方向における端部に設けられ、ブッシング1の内部を封止する高圧電路側固定部材41及び機器側固定部材42(固定部材)と、を備え、ケーブル導体111及び導体パイプ21により、高圧電路から電流を引き込む第1通電経路10、及び高圧電路に電流を帰還させる第2通電経路20が形成されている。高圧電路側固定部材41は、第1の高圧電路接続端子12と、第1の高圧電路接続端子12の周面を囲繞する絶縁部411と、絶縁部411に埋設され導体パイプ21の外周面に取り付けられる埋込金具412と、が一体的に形成された構造を有する。そして、絶縁部411は、内周面に、軸方向においてケーブル導体111の外周からケーブル絶縁層112の外周に跨るように形成されたバリア部411aを有し、バリア部411aと埋込金具412との間に導体パイプ21が挿嵌されている。ブッシング1の機器側においても同様である。
【0041】
ブッシング1によれば、絶縁ケーブル11のケーブル絶縁層112により第1通電経路10と第2通電経路20とが絶縁されるので、ブッシング1の細径化を図ることができる。また、高圧電路側固定部材41の絶縁部411に設けられたバリア部411aによりケーブル導体111と導体パイプ21との絶縁が確保されるので、ブッシング端部の軸方向長さを短くすることができる。したがって、ブッシング1によれば、容易に小型化及び軽量化を図ることができる。
【0042】
また、ブッシング1において、第1の補強絶縁部30は、気中絶縁構造のため、導体パイプ21の外側に配置される絶縁筒31と、絶縁筒31の外側に配置されるポリマー被覆体32と、を有する、いわゆるポリマー套管で構成されている。固体絶縁構造の気中絶縁において実績のあるポリマー套管を適用することで、VCT用ブッシングとしても好適な特性を得ることができる。また、ブッシング1は完全乾式の固体絶縁構造であることにより、従来の磁器製ブッシングのように内部に絶縁油あるいはSF6ガスなどを使用しない環境に配慮した技術であり、磁器製ブッシングに比較して耐震性に優れ災害に強い。よって、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」及び目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に貢献することが可能となる。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0044】
例えば、実施の形態では、絶縁ケーブル11及び導体パイプ21を、それぞれ第1通電経路10、第2通電経路20として利用しているが、絶縁ケーブル11を第2通電経路20、導体パイプ21を第1通電経路として利用してもよい。
【0045】
また例えば、実施の形態では、気中―ガス中ブッシングについて説明したが、本発明は、気中―油中ブッシング、ガス中-ガス中ブッシング、油中-油中ブッシングに適用することもできる。高圧電路側がガス中又は油中に配置されるブッシングの場合、第1の補強絶縁部30は絶縁筒31とポリマー被覆体32の二重絶縁構造とする必要はなく、例えば第1の補強絶縁部30を絶縁筒31のみで形成し、第1の補強絶縁部30及び第2の補強絶縁部33をエポキシ樹脂でモールド成型したいわゆるエポキシブッシングであってもよいし、コンデンサー型であってもよい。
【0046】
また、第1の補強絶縁部30および/又は第2の補強絶縁部33をポリマー被覆体32の材料(例えばシリコーンポリマー)のみで形成してもよいし、第2の補強絶縁部33を、円筒状のエポキシ樹脂で形成した外周にゴム製のストレスコーンを装着することで形成してもよい。
【0047】
また、例えば、実施の形態では、第1接続端子12、13が固定部材41、42に一体化された場合について説明したが、固定部材41、42に一体化する第1接続端子12、13とは別部材で、架空リード線Cのケーブル導体またはVCT回路2と電気的に接続される接続用端子を設けてもよい。この場合、固定部材41、42に一体化された第1接続端子12、13と接続用端子は電気的・機械的に接続される。これにより、架空リード線Cのケーブル導体との接続位置の配置の自由度が増す。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 U相及びW相のブッシング
10 第1通電経路
11 絶縁ケーブル
12 第1の高圧電路接続端子(第1接続端子)
13 第1の機器接続端子(第1接続端子)
20 第2通電経路
21 導体パイプ
22 第2の高圧電路接続端子(第2接続端子)
23 第2の機器接続端子(第2接続端子)
30 第1の補強絶縁部(補強絶縁部)
31 絶縁筒
32 ポリマー被覆体
33 第2の補強絶縁部(補強絶縁部)
41 高圧電路側固定部材(固定部材)
42 機器側固定部材(固定部材)
A 計器用変圧変流器