(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/00 20060101AFI20231129BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231129BHJP
【FI】
E04G21/00 ESW
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2022054553
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172788(JP,A)
【文献】特開昭57-184160(JP,A)
【文献】特開2021-188419(JP,A)
【文献】特開2018-035626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/32
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設終了からの経過時間である第1打設時間を計時する第1打設時間計時部と、
前記第1小ブロックに対して、前記第1小ブロックの上面に接する未打設の第2小ブロックと、前記第1小ブロックの側面に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、前記第3小ブロックに優先して前記第2小ブロックに第2コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックの前記第1打設時間を前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設終了からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する第2打設時間計時部と、
を備えたコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
前記第2小ブロックの側面および前記第3小ブロックの上面に接する未打設の第4小ブロックが存在し、前記第2小ブロックの次に前記第3小ブロックに第3コンクリートが打設された場合、前記第2小ブロックの前記第2打設時間を前記第3小ブロックに対する前記第3コンクリートの打設終了からの経過時間である第3打設時間に置き換えて、計時する第3打設時間計時部をさらに備えた請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記第2打設時間計時部は、前記第1小ブロックの側面の前記第1打設時間を前記第2打設時間に置き換えて、計時する請求項1または2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設終了の時間である第1打設終了時間と、前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設開始の時間である第2打設開始時間と、の間の第1第2小ブロック間時間差、および、前記
第2打設終了時間と、前記第3小ブロックに対する第3コンクリートの打設開始の時間である第3打設開始時間と、の間の第2第3小ブロック間時間差を記録する時間差記録部と、
前記第1第2小ブロック間時間差と前記第2第3小ブロック間時間差とを比較して、長い方の時間差を前記第1小ブロックの側面に対するコンクリートの打設終了からの経過時間として記録する経過時間記録部と、
をさらに備えた請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項5】
前記時間差記録部は、前記第1小ブロックと、前記第1小ブロックよりも上に打設される複数の小ブロックのそれぞれと、の間の小ブロック間時間差を記録し、
前記経過時間記録部は、記録された前記各小ブロック間時間差のうち最長の時間差を前記第1小ブロックの側面に対するコンクリートの打設終了からの経過時間として記録する、請求項4に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項6】
前記第2打設時間計時部は、前記第3小ブロックのコンクリートが打設された場合、前記第3小ブロックが接する前記第1小ブロックの側面に対する経過時間の計時を停止する請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項7】
前記第2打設時間に応じて、アラートを報知する報知部をさらに備えた請求項1~6のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項8】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設終了からの経過時間である第1打設時間を計時する第1打設時間計時ステップと、
前記第1小ブロックに対して、前記第1小ブロックの上面側に接する未打設の第2小ブロックと、前記第1小ブロックの側面側に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、前記第3小ブロックに優先して前記第2小ブロックに第2コンクリートが打ち重ねられた場合、前記第1小ブロックの前記第1打設時間を前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設終了からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する第2打設時間計時ステップと、
を含むコンクリート打設管理方法。
【請求項9】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設終了からの経過時間である第1打設時間を計時する第1打設時間計時ステップと、
前記第1小ブロックに対して、前記第1小ブロックの上面側に接する未打設の第2小ブロックと、前記第1小ブロックの側面側に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、前記第3小ブロックに優先して前記第2小ブロックに第2コンクリートが打ち重ねられた場合、前記第1小ブロックの前記第1打設時間を前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設終了からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する第2打設時間計時ステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリート打設管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、管理者が、リフト領域を指定し、指定されたリフト領域について、所定値以下であって、ほぼ均等分割となる位置を指定し、指定された高さ位置を境界面として、リフト領域を各層に分割して輪切りモデルを生成し、生成した輪切りモデルの上面図において、所定の個数となるように複数のブロックに分割し、他の各層についても、同様にブロックに分割することにより、領域分割処理を行うことが開示されている(同文献段落[0056]~[0059]、
図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、ある小ブロックの上面に接する小ブロックにコンクリートが打設された場合、当該ある小ブロックの側面について、上面に接する小ブロックに対するコンクリート打設時間に置き換えて計時できないので、柔軟なコンクリートの打設管理を行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理装置は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設開始からの経過時間である第1打設時間を計時する第1打設時間計時部と、
前記第1小ブロックに対して、前記第1小ブロックの上面に接する未打設の第2小ブロックと、前記第1小ブロックの側面に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、前記第3小ブロックに優先して前記第2小ブロックに第2コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックの前記第1打設時間を前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設開始からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する第2打設時間計時部と、
を備えた。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理方法は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設開始からの経過時間である第1打設時間を計時する第1打設時間計時ステップと、
前記第1小ブロックに対して、前記第1小ブロックの上面側に接する未打設の第2小ブロックと、前記第1小ブロックの側面側に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、前記第3小ブロックに優先して前記第2小ブロックに第2コンクリートが打ち重ねられた場合、前記第1小ブロックの前記第1打設時間を前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設開始からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する第2打設時間計時ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理プログラムは、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打設された場合、前記第1小ブロックに対する前記第1コンクリートの打設開始からの経過時間である第1打設時間を計時する第1打設時間計時ステップと、
前記第1小ブロックに対して、前記第1小ブロックの上面側に接する未打設の第2小ブロックと、前記第1小ブロックの側面側に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、前記第3小ブロックに優先して前記第2小ブロックに第2コンクリートが打ち重ねられた場合、前記第1小ブロックの前記第1打設時間を前記第2小ブロックに対する前記第2コンクリートの打設開始からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する第2打設時間計時ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ある小ブロックの上面に接する小ブロックにコンクリートが打設された場合、当該ある小ブロックの側面について、上面に接する小ブロックに対するコンクリート打設時間に置き換えて計時するので、より柔軟なコンクリートの打設管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の前提技術におけるコンクリート打設管理の概要を説明するための図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割基準点設定の概要を説明するための図である。
【
図1C】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による軸線設定の概要を説明するための図である。
【
図1D】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割操作の概要を説明するための図である。
【
図1E】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による複数モデルを含む場合の分割基準点設定の概要を説明するための図である。
【
図1F】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の動作の概要について説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置が有するアラートテーブルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の動作の概要を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのコンクリート打設管理装置100について、
図1A~
図5を用いて説明する。コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設計画に合わせて構造物を所定サイズの小ブロックに分割して、コンクリートの打設計画等を立て、効率的なコンクリート打込みを管理するための装置である。
【0012】
通常、構造物のコンクリート打設を行う場合、アジテータ車(コンクリート運搬車)で未硬化のコンクリートを運搬し、例えば、1日の施工領域に組み立てられた型枠内に、順次、未硬化のコンクリートを打ち込む。そして、先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ね、バイブレータなどによりコンクリートを締め固め、打ち重ねたコンクリートと打ち重ねられたコンクリートとの両方のコンクリートを一体化させる。この打込みから一体化までの作業を繰り返すことで、施工領域へのコンクリート打込みが完了する。コンクリートの打込み完了後は、一定期間養生して硬化させ、組み立てた型枠の脱型を行う。
【0013】
この場合、例えば、
図1Aに示したような構造物に、コンクリートを順次打ち込むときに、先行して打込んだコンクリートが硬化する前に、打ち重ねられたコンクリートと打ち重ねたコンクリートとをバイブレータなどによって一体化させる必要がある。なお、打重ね時間とは、先のコンクリートの打込が終了してから次のコンクリートの打込が始まるまでの時間をいう。打重ね時間の開始は、先の未硬化のコンクリートの流し込みが終わった時刻とし、バイブレータなどによる締固めが続いたとしても、この打重ね時間の計測はスタートさせる。これは、未硬化のコンクリートの流し込みが終了した時点から、既にコンクリートの硬化が始まっているからである。このとき、コンクリートの打重ね時間が管理時間(例えば、コンクリート標準示方書に準ずる管理時間)を超過すると、コンクリートの打継ぎ部分にコールドジョイントなどが発生し、弱部となるおそれがある。そのため、構造物のコンクリート打込みにおいては、材料練り混ぜからの時間管理や、コンクリートの打込み順序、打重ね時間の管理などが重要となる。
【0014】
ここで、コンクリートの施工領域の規模が大きくなると、多量のコンクリートが必要となり、コンクリートを運搬するために必要となるアジテータ車の台数が多くなる。さらに、大規模構造物のコンクリートを打ち込むためには、アジテータ車の運搬可能量などに応じて、当該構造物を複数の層に分けるなどして、順序立ててコンクリートを打ち込まなければならず、コンクリートの層数も多くなる傾向にある。そのため、打ち継ぎ部も多くなるので、コールドジョイント150などの弱部が発生することがないように、コンクリートの打重ね時間などを考慮した上で、打設順序や打設層厚などを決めてコンクリートの打設計画160を立てる必要があった。
【0015】
しかしながら、コンクリートの打設計画160を立てるために、構造物をいくつかの層へ分割したり、所定サイズの小ブロックへ分割したりする作業は、構造物の2次元設計図を用いて、現場において現場作業者の手作業で行われていた。そのため、層分割や小ブロック分割を行ってどういった順序で打ち込むかという打設計画を立てることは困難な場合が多く、現場作業者の負担になっていた。そこで、ユーザは、コンクリート打設管理装置100を用いることにより、コンクリートの供給量や打込み速度などの基本条件に基づいて、層分割や小ブロック分割、各小ブロックの打込み順序の設定を容易に行えるようになる。
【0016】
次に、
図1B~
図1Eを参照して、コンクリート打設管理装置100を用いた、打設計画の管理について説明する。まず、
図1Bに示したように、3次元CAD(Computer-Aided Design)などを用いて設計した構造物の3次元データ等を含む3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100に接続されたモニターやディスプレイ、ユーザが所持するタブレットやスマートフォンなどの携帯端末等のディスプレイ140などに表示される。なお、3次元設計情報120には、例えば、工区や工期などの情報も含まれている。また、3次元設計情報120は、予め3次元CADなどを用いて作成されている。
【0017】
3次元設計情報120は、所定期間に打設可能なコンクリートの量に応じて設定された施工領域であり、を示す複数の大ブロック123,124,125,126に分けられている。施工領域は、例えば、1日で打設可能なコンクリートの打設範囲として設定される。例えば、大ブロック123に着目して、この大ブロック123を所定サイズの小ブロックに分割する場合を考える。
【0018】
まず、
図1Bに示したように、ユーザは、小ブロックへの分割対象として着目する大ブロック123(着目大ブロック)において、小ブロックへの分割の基準となる分割基準点121を指定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが指定した位置に分割基準点121を設定する。ここで、分割基準点121は、大ブロック123を、どの位置を基準にどの方向へ分割するかの基準となる点である。
【0019】
図1Bに示した例では、大ブロック123の頂点部分(底面左下)に、分割基準点121を設定している。なお、分割基準点121は、頂点部分以外にも設定することが可能であり、例えば、頂点と頂点との間の辺の部分や、側面部分(表面部分)の任意の位置、大ブロック123の内部の任意の位置などに設定することができる。ユーザは、他の大ブロック124,125,126についても、大ブロック123と同様の操作を行って、分割基準点を設定することができる。
【0020】
次に、
図1Cに示したように、軸線の設定を行う。すなわち、分割基準点121を原点と考えて、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが、指定した位置にX軸方向の端点122を設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、端点122を通過する線分として、X軸127を生成させる。生成された軸線(X軸127)は、図示したように、例えば、大ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。
【0021】
また、Y軸、Z軸についても同様に、ユーザが、指定した各軸線の端点の位置に基づいて、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、指定した各端点を通過する線分として、Y軸、Z軸を生成させる。そして、生成された各軸線(Y軸、Z軸)は、大ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)は、大ブロック123の縦横高さ方向に平行な線分となっている。
【0022】
続いて、
図1Dに示したように、ユーザは、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割するために必要なパラメータの設定を行う。ユーザが設定するパラメータは、例えば、等幅分割(分割の間隔)、均等分割(分割数及び丸め幅)、層厚などである。これらのパラメータは、例えば、ディスプレイ140の右側に表示されたパラメータ設定用ウィンドウの所定のボックスに数値を入力することにより設定される。
【0023】
ここで、等幅分割は、所定幅(所定の分割間隔)で構造物を分割して、所定サイズの小ブロックを得る場合をいう。この場合、例えば、分割基準点121から、800mm間隔で構造物の分割線が生成され、表示されるようになる(
図1D参照)。
【0024】
また、均等分割は、所定の分割数の小ブロックが生成されるように構造物を分割する場合をいう。丸め幅は、例えば、均等分割する際の、分割により生成される各小ブロックの大きさの単位を決めるものである。例えば、丸め幅を100mmと設定すると、生成される小ブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、100mm刻みの単位である、600mm、700mm、800mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。同様に、例えば、丸め幅を10mmと設定すると、生成されるブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、10mm刻みの単位である、810mm、820mm、830mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。
【0025】
このように、丸め幅を設定して、小ブロックのサイズの端数を調整することにより、各小ブロックの体積等の管理が容易になるため、コンクリートの打設管理を容易に行えるようになる。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定されたパラメータに従って、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割する。所定サイズの小ブロックに分割したら、小ブロックのそれぞれに、打込み順を設定することにより、コンクリートの打設を適切に管理することができる。打込み順の設定は、例えば、層毎に行われるが、これには限定されない。
【0026】
図1Eに示したように、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物が含まれている場合には、例えば、それぞれの構造物に対して分割基準点を設定することにより、構造物全体として、小ブロックに分割する。なお、このような、1つの構造物として、複雑な形状を有している構造物と考えられる場合には、複数の異なる形状を有する構造物同士が結合したものと考えることが可能である。
【0027】
そして、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物を含む場合、それぞれの構造物の接続部分は、Z軸方向から、構造物全体を見た場合、断面変化が不連続となる位置である断面変化面となっている。
【0028】
そして、このような断面変化面が存在するときに、例えば、1つの分割基準点131を基準に、構造物を分割する場合、断面変化面を跨る部分で連続してコンクリートを打ち込むことになり、断面変化面が弱部となってしまう。そのため、この断面変化面に境界を設けて管理する必要がある。したがって、断面変化面が出現するたびに、分割基準点131の設定が必要となる。例えば、断面変化面を跨いでコンクリートを打ち込んだ場合、未硬化のコンクリートからの水分上昇(ブリーディング)等が発生し、断面変化面にブリーディングが集中して、弱部となる恐れがある。よって、断面変化面が存在する場合には、断面変化面が境界面となるように、分割基準点131を設定することが好ましい。このように、断面変化面に分割基準点131を設定することで(断面変化面を境界面とすることで)、断面変化面を跨ぐ小ブロックが生成されることを抑制することができる。
【0029】
以上のように、ユーザは、3次元設計情報130に対して、分割基準点131を複数設定し、設定した分割基準点131のそれぞれについて、分割幅や分割数などのパラメータを設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定された分割基準点131やパラメータに基づいて、構造物を所定サイズの小ブロックに分割する。
【0030】
次に、
図1Fを参照して、コンクリート打設の時間管理について説明する。
図1F(a)に示したように、小ブロックA1と小ブロックB1とが横並びとなっている場合を考える。すなわち、ある小ブロックに対して横方向に存在する小ブロックにコンクリートを打設する(打ち込む)場合、小ブロックA1と小ブロックB1とが接触する面において、コールドジョイントなどの弱部が発生し易くなる。そのため、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックA1と小ブロックB1とが接触する面の時間を管理する。
【0031】
例えば、小ブロックB1にコンクリートを打ち込んだ後に小ブロックA1にコンクリートを打ち重ねる場合、小ブロックB1に打ち込んだコンクリートが硬化するまでの間に、小ブロックA1にコンクリートを打ち重ねなければならない。つまり、小ブロックB1に打ち込んだコンクリートが硬化してから、小ブロックA1にコンクリートを打ち重ねても、両者の接触面(接合面)にコールドジョイントなどの弱部が発生する可能性が高まる。
【0032】
そのため、コンクリート打設管理装置100は、「小ブロックA1と小ブロックB2の接触面の打設時間」=「小ブロックA1の打込み開始時刻」-「小ブロックB1の打重ね終了時刻」を、コンクリートの打設時間として管理する。コンクリート打設管理装置100は、ある小ブロックに接する(隣接する)小ブロックが存在する場合(隣接小ブロックが、上下左右いずれかの方向に存在する場合)、これらの小ブロックの間の接触面においては通常の打設時間の管理を行う。つまり、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックB1の打込み終了時刻からの経過時間を基に時間管理を行えばよい。
【0033】
図1F(b)に示したように、2層の合計3つの小ブロックついて、「小ブロックB1→小ブロックB2→小ブロックA1」の順番でコンクリートを打設する場合を考える。この場合、小ブロックB1と小ブロックA1との接触面のコンクリートの打設時間を管理しなければならない。なお、小ブロックB1の上面と小ブロックB2の底面との間も接触面となるが、これらの小ブロックの間では、比較的短時間でコンクリートが打設されるため、通常の時間管理を行えばよい。
【0034】
しかしながら、
図1F(b)に示したように、小ブロックB1にコンクリートを打ち込んだ後、小ブロックB1の上に接する(上面に接する)小ブロックB2にコンクリートを打ち重ねる場合には、上述したような小ブロックB1と小ブロックA1と接触面の時間管理を行っても正確な時間管理を行うことはできない。つまり、この場合、小ブロックB2に打設されたコンクリートは、コンクリートの粘性と重力の影響とにより、小ブロックB1の上面から側面方向へ流れ落ちる(
図1F(b)下図参照)。小ブロックB2に打ち重ねられたコンクリートが零れ落ちるので、下層の小ブロックB1の側面を覆うようになり、コンクリート打設管理装置100は、通常の打設時間の管理ではなく、次のようにして、コンクリートの打設時間の管理を行う。
【0035】
すなわち、コンクリート打設管理装置100は、上記
図1F(a)とは異なり、小ブロックB2と小ブロックA1との接触面のコンクリートの打設時間を管理しなければならない。コンクリート打設管理装置100は、「小ブロックA1と小ブロックB2との接触面の打設時間」=「小ブロックA1の打重ね開始時刻」-「小ブロックB2の打重ね終了時刻」として、小ブロックA1と小ブロックB2との接触面の打設時間を管理する。
【0036】
コンクリート打設管理装置100は、小ブロックA1と小ブロックB2との接触面においては、小ブロックB2にコンクリートが打設されたタイミングで、小ブロックB1の打設終了時刻からの経過時間として管理していた管理時間を小ブロックB2のコンクリート打設開始からの経過時間を管理の基準時間に変更する。
【0037】
これにより、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックB2に打設されたコンクリートにより小ブロックB1が覆われてしまうことを考慮した時間管理を行うことが可能となる。よって、作業者は、コンクリートの打重ねにかかる時間計算を正確に行うことが可能となり、より確実に打設作業を行うことが可能となる。
【0038】
次に、
図1F(c)を参照して、小ブロックA2と小ブロックB2との接触面の打設時間の管理について説明する。
図1F(c)に示した、ブロック構成においては、例えば、次の2通りの打設順を考える。すなわち、打設順は、「小ブロックB1→小ブロックB2→小ブロックA1→小ブロックA2」と、「小ブロックB1→小ブロックA1→小ブロックB2→小ブロックA2」との2通りを考える。
【0039】
まず、小ブロックB1に対して小ブロックB2を打ち重ねる場合、「小ブロックA2と小ブロックB2との接触面の打設時間」=「小ブロックA2の打設開始時刻」-「小ブロックA1の打設終了時刻」として、小ブロックA2と小ブロックB2との接触面の打設時間を管理する。すなわち、小ブックB1の次に小ブロックB2を打ち重ねると、上述した、
図1F(b)と同様に、小ブロックB2に打ち重ねたコンクリートが、零れ落ちて、小ブックB1の側面を覆うこととなる。この状態で、小ブロックA1にコンクリートを打ち重ねると、ポンプ車のコンクリート圧送管の筒先から排出されたコンクリートが、図示したように、小ブロックB2の側面全体に付着するようになる。したがって、小ブロックB1→小ブロックB2→小ブロックA1の順にコンクリートを打ち込む場合、上述のような時間管理を行うこととなる。
【0040】
次に、小ブロックB1に対して小ブロックA1を打ち込む場合、「小ブロックA2と小ブロックB2との接触面の打設時間」=「小ブロックA2の打設開始時刻」-「小ブロックB2の打設終了時刻」として、小ブロックA2と小ブロックB2との接触面の打設時間を管理する。すなわち、下層の小ブロックから順番にコンクリートを打ち込み、これが終了したら、上層の小ブロックへとコンクリートを打ち込む場合には、
図1F(a)に示したコンクリート打込みが繰り返されることとなる。そのため、コンクリート打設管理装置100は、上述した
図1F(a)と同様の時間管理を行うこととなる。
【0041】
このように、
図1F(c)の場合には、コンクリート打設管理装置100は、「小ブロックA2と小ブロックB2との接触面の打設時間」について、小ブロックA1または小ブロックB2の打設終了時刻のうち遅い方の時刻で管理することとなる。
【0042】
次に
図2を参照して、コンクリート打設管理装置100の構成について説明する。コンクリート打設管理装置100は、取得部201、第1打設時間計時部202、第2打設時間計時部203および報知部204を有する。
【0043】
取得部201は、コンクリートを打設する構造物の3次元設計情報120であって、3次元設計情報120を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報120を取得する。
【0044】
3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100とは異なる装置で生成された場合、取得部201は、3次元設計情報120を有線接続または無線接続により当該装置から取得する。また、取得部201は、3次元設計情報120が記録された記録媒体等を介して3次元設計情報120を取得してもよい。
【0045】
第1打設時間計時部202は、取得した3次元設計情報120に従ってコンクリートを打ち込んでいる間において、小ブロックのうち第1小ブロックに第1コンクリートが打ち込まれた場合、第1小ブロックに対する第1コンクリートの打込み開始からの経過時間である第1打設時間を計時する。
【0046】
例えば、
図1F(c)に示した例においては、まず初めに、小ブロックB1(第1小ブロック)に対してコンクリート(第1コンクリート)が打ち込まれる。その際に、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックB1に対してコンクリートが打ち込まれてからの経過時間(第1打設時間)を計時する。
【0047】
第1打設時間計時部202は、例えば、作業者が、携帯端末を操作したことをトリガーとして、計時の開始および終了を実行し、経過時間を計時する。また、例えば、第1打設時間計時部202は、作業者が、携帯端末を用いて入力した開始時間および終了時間に基づいて、経過時間を計時してもよい。さらに、例えば、コンクリート打設管理装置100は、ポンプ車からコンクリートが供給されている間の時間を経過時間として計時してもよい。なお、第1打設時間計時部202による経過時間の計時は、ここに示した方法には限定されない。
【0048】
第2打設時間計時部203は、第1小ブロックに対して、第1小ブロックの上面に接する未打設の第2小ブロックと、第1小ブロックの側面に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、第3小ブロックに優先して第2小ブロックに第2コンクリートが打設された場合、第1小ブロックの第1打設時間を第2小ブロックに対する第2コンクリートの打込み開始からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する。
【0049】
図1F(c)に示した例を参照すると、小ブロックB1(第1小ブロック)に対しては、小ブロックB1の上面に接する未打設の小ブロックB2(第2小ブロック)と、小ブロックB1の側面に接する未打設の小ブロックA1(第3小ブロック)とが存在している。
【0050】
ここで、小ブロックA1よりも先に小ブロックB2にコンクリート(第2コンクリート)が打ち込まれた場合を考えると、小ブロックB2に打ち込まれたコンクリートは、コンクリートの粘性などにより、小ブロックB1の側面方向に流れ落ちることとなる。小ブロックB2に打設されたコンクリートが流れ落ちると、小ブロックB2の下に存在する小ブロックB1に打ち込まれたコンクリートが小ブロックB2に打設されたコンクリートにより覆われる。つまり、小ブロックB1に打ち込まれたコンクリートの全ての面が外部に露出しなくなる。
【0051】
そのため、第2打設時間計時部203は、小ブロックB1について、コンクリート打込みからの経過時間(第1打設時間)を小ブロックB2に対するコンクリート打込みを開始してからの経過時間(第2打設時間)に置き換えて、計時する。すなわち、第2打設時間計時部203は、小ブロックB1について、コンクリート打込みからの経過時間を一旦リセットして、小ブロックB2に対するコンクリート打込み開始からの経過時間を、小ブロックB1の側面に接する小ブロックA1のコンクリート打込み時間として管理する。したがって、小ブロックA1については、小ブロックB2に対するコンクリートの打込み終了から所定時間以内にコンクリートを打ち込む必要がある。
【0052】
なお、第2打設時間計時部203は、第3小ブロックのコンクリートが打ち込まれた場合、第3小ブロックが接する第1小ブロックの側面に対する経過時間の計時を停止する。つまり、第2打設時間計時部203は、小ブロックA1にコンクリートが打ち込まれれば、小ブロックB2に対するコンクリートの打ち込みからの経過時間を計時する必要がなくなるので、小ブロックB2のコンクリート打込みからの経過時間の計時を停止する。
【0053】
報知部204は、第2打設時間に応じて、アラートを報知する。すなわち、報知部204は、小ブロックB2の打込み開始からの経過時間に応じて、小ブロックA1の打込み開始時間が迫っていることを、作業者に知らせるためのアラートを報知する。報知するアラートは、例えば、作業者が所持する携帯端末のディスプレイに表示されている小ブロックについて、色を付けたり、点滅させたりして表示する。色は、例えば、小ブロックA1の打込み開始までの残り時間の残量に応じて、青→黄→赤のように変化させて表示させてもよい。
【0054】
図3は、コンクリート打設管理装置100が有するアラートテーブル301の一例を示す図である。アラートテーブル301は、経過時間311に関連付けてアラート内容312を記憶する。経過時間311は、小ブロックのそれぞれについて、コンクリートが打設されてからの時間である。アラート内容312は、報知すべきアラートの内容を示しており、色や表示、音などを含む。そして、報知部204は、アラートテーブル301を参照して、アラートを報知する。また、経過時間311に応じて、報知すべきアラートの内容が変化するため、現場の作業者は、小ブロックのそれぞれに対するコンクリート打込みの状況を正確に知ることができる。
【0055】
図4を参照して、コンクリート打設管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0056】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。3次元設計情報データ441は、コンクリートの打設対象となる構造物の3次元CADデータなどを含むデータである。打設順データ442は、小ブロックのそれぞれに付与された打込み順を示すブロック番号などのデータである。打設時間データ443は、コンクリート打込みが行われた場合の、小ブロックのそれぞれについての打込み開始時間および打込み終了時間に関するデータである。経過時間データ444は、小ブロックのそれぞれについて、コンクリートが打ち込まれてから経過した時間についてのデータである。
【0057】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0058】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、アラートテーブル301を格納する。アラートテーブル301は、
図3に示した、経過時間311とアラート内容312との関係を管理するテーブルである。
【0059】
ストレージ450は、さらに、取得モジュール451、第1打設時間計時モジュール452、第2打設時間計時モジュール453および報知モジュール454を格納する。取得モジュール451は、分割データを有する3次元設計情報120における大ブロックの高さ方向に垂直な平面で分割された各層のうち所定層における第1小ブロック群に対して、コンクリートの打設順を示すブロック番号が当該小ブロック群に属する小ブロックのそれぞれに付与された3次元設計情報120を取得するモジュールである。第1打設時間計時モジュール452は、第1小ブロックに第1コンクリートが打ち込まれた場合、第1小ブロックに対する第1コンクリートの打設開始からの経過時間である第1打設時間を計時するモジュールである。第2打設時間計時モジュール453は、第1小ブロックの上面に接する未打設の第2小ブロックと、第1小ブロックの側面に接する未打設の第3小ブロックと、が存在し、第3小ブロックに優先して第2小ブロックに第2コンクリートが打設された場合、第1小ブロックの第1打設時間を第2小ブロックに対しる第2コンクリートの打設開始からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時するモジュールである。報知モジュール454は、第2打設時間に応じてアラートを報知するモジュールである。これらのモジュール451~454は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム455は、コンクリート打設管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0060】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート打設管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0061】
次に
図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。
【0062】
ステップS501において、取得部201は、3次元設計情報120を取得する。ステップS503において、第1打設時間計時部202は、第1小ブロックに対する第1コンクリートの打込み開始からの経過時間である第1打設時間を計時する。ステップS505において、第2打設時間計時部203は、第3小ブロックに優先して第2小ブロックに第2コンクリートが打ち込まれた場合、第1小ブロックの第1打設時間を第2小ブロックに対する第2コンクリートの打込み開始からの経過時間である第2打設時間に置き換えて、計時する。ステップS507において、コンクリート打設管理装置100は、第2打設時間と所定の基準時間とを比較する。第2打設時間が所定の基準時間を超えていない場合(ステップS507のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS505へ戻る。第2打設時間が所定の基準時間を超えている場合(ステップS507のYES)、コンクリート打設管理装置100は、次のステップへ進む。
【0063】
ステップS509において、報知部204は、所定の基準時間を超えた第2打設時間に応じて、アラートを報知する。ステップS511において、第2打設時間計時部203は、第3小ブロックに対する第3コンクリートの打設が終了したか否か判断する。第3コンクリートの打設が終了していないと判断した場合(ステップS511のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS505へ戻る。第3コンクリートの打込みが終了していると判断した場合(ステップS511のYES)、コンクリート打設管理装置100は、次のステップへ進む。ステップS513において、第2打設時間計時部203は、第1小ブロックの側面に対する経過時間の計時を停止する。第1小ブロックの側面に対する経過時間を停止したら、コンクリート打設管理装置100は、処理を終了する。
【0064】
本実施形態によれば、ある小ブロックの上層に存在する小ブロックにコンクリートが打設された場合、上層の小ブロックに打設されたコンクリートによる当該ある小ブロックに対する影響を考慮してコンクリートの打設管理を行うことができる。また、当該ある小ブロックへの影響を考慮するので、より安全でかつ余裕を持ったコンクリートの打設管理を行える。
【0065】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置について、
図6~
図9を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係るコンクリート打設管理装置の動作の概要を説明するための図である。本実施形態に係るコンクリート打設管理装置は、上記第1実施形態と比べると、時間差記録部および打設時間記録部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0066】
まず、
図6を参照して、コンクリートの打重ね時間についてより具体的に説明する。ある小ブロックの上面に接するまたは上層に存在する小ブロックにコンクリートが打設された場合のコンクリートの打設時間(打重ね時間)の考え方について説明する。なお、
図6(a)には、コンクリートを打設するブロックが2層の場合、
図6(b)は、コンクリートを打設するブロックが多層(5層)の場合をそれぞれ示している。
【0067】
ここに示したように、ある小ブロックに対して、横方向(ある小ブロックの側面方向)に存在する小ブロックにコンクリートを打ち込む場合には、ある小ブロックのコンクリートの打設終了時間を基準に横方向の小ブロックの打設時間を管理すればよい。
【0068】
しかしながら、ある小ブロックの上面に接する(上面側に存在する)小ブロックにコンクリートを打ち込んだ後に、横方向に存在する小ブロックにコンクリートを打ち込むような場合には、横方向に存在する小ブロックの打設時間の管理の仕方が異なる。すなわち、型枠等を配置せずに、ある小ブロックに対して上方向に存在する小ブロックにコンクリートを打ち込むと、コンクリートの粘性と重力との関係で、打ち込んだコンクリートが、ある小ブロックの側面側に流れ落ちてくる。
【0069】
そして、この流れ落ちてきたコンクリートが、ある小ブロックの側面を覆うようになる。そのため、ある小ブロックに対して、横方向に存在する小ブロックに先んじて上方向に存在する小ブロックにコンクリートを打ち込んだ場合には、横方向に存在する小ブロックの打設開始時間が遅くなる。
【0070】
図6(a)に示した、小ブロックが2層積み重なるパターンでは、例えば、「小ブロックA1→(20分休み)→小ブロックA2→(10分休み)→小ブロックA3」の順番でコンクリートが打ち込まれる。なお、コンクリート打設のタイムスケジュールは、図示したものとする。
【0071】
この場合、小ブロックA1のコンクリートを打ち込んだ後、小ブロックA1の上面側に接する小ブロックA2のコンクリートが、小ブロックA1の側面側に接する小ブロックA3に先んじて打ち込まれることとなる。
【0072】
ここで、小ブロックA1の打込み終了から小ブロックA2の打込み開始までの時間(時間差)は、20分であり、小ブロックA2の打込み終了から小ブロックA3の打込み開始までの時間は、10分である。なお、小ブロックA1の打込み終了から小ブロックA3の打込み開始までの時間(時間差)は、35分となっている。
【0073】
ここで、小ブロックA2の打込みは、小ブロックA3に先んじて行われるため、小ブロックA1の側面は、小ブロックA2に打ち込まれたコンクリートにより覆われるため、小ブロックA1の側面については、コンクリート打込みから20分経過している。しかしながら、実際には、小ブロックA1の側面は、小ブロックA2に打ち込まれるコンクリートに覆われるため、小ブロックA1の側面については、小ブロックA2への打込みにより、経過時間がリセットされ、10分経過していると考える。
【0074】
よって、コンクリート打設管理装置100は、この場合、小ブロックA1と小ブロックA3との接触面(隣接面)のコンクリートの打重ね時間としては、安全を考慮して、長い方の時間差である20分が採用され、記録される。
【0075】
図6(b)に示したように、小ブロックが5層積み重なるパターンでは、例えば、「小ブロックA2→小ブロックA4→小ブロックA6→小ブロックA8→小ブロックA11→小ブロックA13」の順番でコンクリートが打ち込まれる。なお、コンクリート打設のタイムスケジュールは、図示したものとする。
【0076】
ここで、小ブロックA2のコンクリート打込み終了から小ブロックA4のコンクリート打込み開始までの時間(時間差)は、10分である。小ブロックA4のコンクリート打込み終了から小ブロックA6のコンクリート打込み開始までの時間(時間差)は、13分である。そして、小ブロックA6のコンクリート打込み終了から小ブロックA8のコンクリート打込み開始までの時間(時間差)は、10分である。また、小ブロックA8の打込み終了から小ブロックA11の打込み開始までの時間(時間差)は、31分である。小ブロックA11のコンクリートの打込み終了から小ブロックA13のコンクリートの打込み開始までの時間(時間差)は、16分である。
【0077】
ここに示した、5つの時間差のうち、最長の時間差は、小ブロックA8のコンクリートの打込み終了から小ブロックA11のコンクリートの打込み開始までの時間差である、31分が最長となっている。したがって、この場合、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックA2(の側面)から、小ブロックA2に横方向で接する小ブロックA13の打重ね時間として、最も長い時間差である31分を採用して、記録する。
【0078】
次に
図7を参照して、コンクリート打設管理装置700の構成について説明する。コンクリート打設管理装置700は、時間差記録部701および経過時間記録部702をさらに有する。
【0079】
時間差記録部701は、第1小ブロックに対する第1コンクリートの打設終了の時間である第1打設終了時間と、第2小ブロックに対する第2コンクリートの打設開始の時間である第2打設開始時間と、の間の第1第2小ブロック間時間差、および、第1打設終了時間と、第3小ブロックに対する第3コンクリートの打設開始の時間である第3打設開始時間と、の間の第1第3小ブロック間時間差を記録する。
【0080】
時間差記録部701は、まず、小ブロックB1(第1小ブロック)に対するコンクリートの打込み終了の時間である第1打設終了時間を取得する。次に、時間差記録部701は、小ブロックB2(第2小ブロック)に対するコンクリートの打込み開始の時間である第2打設開始時間を取得する。そして、時間差記録部701は、取得した、第1打設終了時間と第2打設終了時間との差分である、第1第2小ブロック間時間差(小ブロックB1と小ブロックB2との間の時間差)を導出して、記録する。つまり、時間差記録部701は、小ブロックB1へのコンクリートの打込み終了から、次に打ち込まれる小ブロックである小ブロックB2へのコンクリートの打込みが開始されるまでの間の時間を導出する。この時間が、長ければ長いほど、小ブロックB1へ打ち込まれたコンクリートの硬化が進むこととなり、コールドジョイントなどの弱部発生の原因となる。
【0081】
同様にして、時間差記録部701は、小ブロックA1(第3小ブロック)に対する第3コンクリートの打込み開始の時間である第3打設開始時間を取得する。そして、時間差記録部701は、既に取得している第1打設終了時間と、取得した第3打設開始時間との差分である、第1第3小ブロック間時間差(小ブロックB1と小ブロックA1との間の時間差)を導出して、記録する。すなわち、ここで導出された第1第3小ブロック間時間差が、小ブロックのそれぞれに打設されるコンクリート打込の管理時間よりも短くなるようすることで、コールドジョイントなどの弱部の発生を防ぎ、コンクリートの打重ね部分に悪影響のないコンクリートの打設を行うことができる。
【0082】
経過時間記録部702は、時間差記録部701で導出され記録された、第1第2小ブロック間時間差と第1第3小ブロック間時間差とを比較して、長い方の時間差を第1小ブロックの側面に対するコンクリートの打設終了からの経過時間として記録する。すなわち、経過時間記録部702は、例えば、
図6(a)に示した例では、長い方の時間差である20分を小ブロックA1の側面に対するコンクリートの打込み終了からの経過時間として記録する。同様に、経過時間記録部702は、
図6(b)に示した例では、最長の時間差である31分を小ブロックA2の側面に対するコンクリートの打込み終了からの経過時間として記録する。
【0083】
図8を参照して、コンクリート打設管理装置700のハードウェア構成について説明する。RAM840は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM840には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。時間差データ841は、基準となる小ブロックのコンクリート打込み終了時間から、基準小ブロックに隣接する小ブロックに対するコンクリートの打込み開始時間までの間の時間である。
【0084】
ストレージ850には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ850は、時間差記録モジュール851および経過時間記録モジュール852を格納する。時間差記録モジュール851は、基準となる小ブロックのコンクリート打込み終了時間から、基準小ブロックに隣接する小ブロックに対するコンクリートの打込み開始時間までの時間差を記録するモジュールである。経過時間記録モジュール852は、記録された時間差のうち、長い時間差を基準小ブロックの側面に対するコンクリートの打込み終了からの経過時間として記録するモジュールである。
【0085】
次に
図9のフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置700の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図8のCPU410がRAM840を使用して実行し、
図7のコンクリート打設管理装置700の各機能構成を実現する。
【0086】
ステップS901において、時間差記録部701は、第1小ブロックの打設終了時間と第2小ブロックの打設開始時間との間の時間差と、第1小ブロックの打設終了時間と第3小ブロック打設開始時間との間の時間差をそれぞれ記録する。ステップS903において、経過時間記録部702は、第1第2小ブロック間時間差と第1第3小ブロック間時間差とを比較して、長い方の時間差を第1小ブロックの側面に対するコンクリートの打設終了からの経過時間として記録する。
【0087】
本実施形態によれば、ある小ブロックの側面に対するコンクリートの打込み終了からの経過時間を記録するので、より正確な打設(打重ね)時間の算出が可能になり、コールドジョイントのない高品質なコンクリート構造物の施工ができる。
【0088】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0089】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。