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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置及び鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/10 20060101AFI20231129BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20231129BHJP
   B62K 23/04 20060101ALI20231129BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20231129BHJP
【FI】
F02D11/10 U
F02D11/02 R
B62K23/04
B62J45/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022060657
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023151186
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 直人
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176999(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005374(WO,A1)
【文献】特開2017-44081(JP,A)
【文献】国際公開第2013/175680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/00
B62K 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記制御手段(301)は、前記駆動源(21)の回転数が、予め定められたマップの閾値に基づいて規制される燃費優先の制御状態において、前記駆動源(21)の回転数が前記マップの閾値に到達した場合に、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する回転負荷(404)を発生させて前記スロットルグリップ(8a)に出力することを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記制御手段(301)は、前記駆動源(21)の回転数が、予め定められたマップの閾値により規制されない走行優先の制御状態では、前記駆動源(21)の回転数が前記マップの閾値に到達した場合であっても、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する制御信号を生成しないことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項3】
回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記スロットルグリップ(8a)には、前記回転角度が最大となる全開位置(401)の方向から前記回転角度が最小となる全閉位置(402)の方向に、弾性部材による付勢負荷(405、701)が作用しており、
前記駆動源(21)の回転数が、予め定められたマップの閾値により規制されない走行優先の制御状態において、前記回転負荷発生手段(350)から出力される回転負荷(PS1~PS5)と前記付勢負荷(405、701)との差分は、前記スロットルグリップ(8a)の回転角が大きくなるに従い小さくなることを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御手段(301)から供給される電力によって、前記回転負荷を発生させることを特徴とする請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷の大きさ、前記回転負荷の出力タイミング、及び前記回転負荷(404)の出力周期を変化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記スロットルグリップ(8a)には、前記回転角度が最大となる全開位置(401)の方向から前記回転角度が最小となる全閉位置(402)の方向に、弾性部材による付勢負荷(405、701)が作用しており、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記付勢負荷(405、701)に対して所定の大きさの回転負荷(404)を出力することを特徴とする請求項1または2に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項7】
前記制御手段(301)は、前記スロットルグリップ(8a)の前記回転角度の増加に応じて、前記回転負荷が増加するように前記制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転角度の増加に応じて増加する前記回転負荷を発生することを特徴とする請求項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項8】
前記回転負荷発生手段(350)は、前記付勢負荷(405、701)に比べて一定の大きさを有する回転負荷(PS1~PS5)を出力することを特徴とする請求項またはに記載のスロットルグリップ装置。
【請求項9】
前記駆動源(21)の回転数の検出情報または前記駆動源(21)により走行する車両(1)の車速の検出情報が所定の条件を満たす走行安定状態において、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷(PS1~PS5)を出力することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項10】
前記駆動源(21)の駆動により走行する鞍乗型車両(1)は、前記マップの閾値に基づいて規制される前記燃費優先の制御状態と、
前記駆動源(21)の回転数が、前記マップの閾値により規制されない走行優先の制御状態とのうち、選択された制御状態で走行可能であり、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記選択された制御状態に応じて前記回転負荷を出力することを特徴とする請求項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項11】
前記制御手段(301)は、前記燃費優先の制御状態における出力周期(Δ1)を前記走行優先の制御状態における出力周期(Δ2)に比べて短くするように前記制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号の出力周期に基づいて、前記回転負荷を出力することを特徴とする請求項10に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項12】
前記駆動源(21)により走行する車両(1)の車速の検出情報が所定の速度以下の場合に、前記制御手段(301)は、所定の角度以上の回転を規制する制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は前記制御信号に基づいて、前記所定の角度以上の回転を規制する回転負荷を発生することを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項13】
乗員により加えられる、前記スロットルグリップ(8a)の前記全開位置(401)の方向に向けられた力の検出情報が検出されなくなった場合に、前記制御手段(301)は、前記回転負荷の出力をゼロにする制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷をゼロにすることを特徴とする請求項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項14】
前記駆動源(21)の回転数の検出情報または前記駆動源(21)により走行する車両(1)の車速の検出情報が所定の条件を満たす走行安定状態において、
前記制御手段(301)は、前記付勢負荷(405、701)から回転負荷(1110)を減算した差分(1120)が前記回転角度の変化に応じて一定となるような制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷を出力することを特徴とする請求項3または13に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項15】
前記回転負荷発生手段(350)は、
イグニションオフ時におけるスロットルグリップ(8a)の回転操作により、内部電源に基づいた起電力を発生させて、
前記スロットルグリップ(8a)を開く方向に回転させる開操作に対応したビット信号と、前記スロットルグリップ(8a)を閉じる方向に回転させる閉操作に対応したビット信号とを組み合わせた操作信号を、前記起電力を用いて生成し、
前記起電力に基づいて起動した前記制御手段(301)は、
メモリ(303)に予め記憶されている暗証番号と、前記操作信号との比較に基づいた制御信号を生成し、
前記制御手段(301)は、
前記操作信号と前記暗証番号とが一致しない場合に、前記回転負荷発生手段(350)の回転負荷をONにする制御信号を生成し、
前記操作信号と前記暗証番号とが一致した場合に、前記回転負荷発生手段(350)の回転負荷をOFFにする制御信号を生成することを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項16】
回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置を有する鞍乗型車両であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記制御手段(301)は、前記駆動源(21)の回転数が、予め定められたマップの閾値に基づいて規制される燃費優先の制御状態において、前記駆動源(21)の回転数が前記マップの閾値に到達した場合に、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する回転負荷(404)を発生させて前記スロットルグリップ(8a)に出力することを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップ装置及び鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中立位置から正方向または負方向に回動可能なハンドルグリップにおけるアクセル開度検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2018/173254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スロットルグリップの操作感は、スロットルワイヤの設定により決められており、アクセルワークにおいて、スロットルグリップを必要以上に開けすぎると燃費低下の要因になり得る。スロットルグリップの回転に応じた回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することができれば、スロットルグリップの開けすぎによる燃費低下を抑制することができ、CO2削減や環境改善の観点で好ましい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、スロットルグリップの回転角度に応じた回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るスロットルグリップ装置は、回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記制御手段(301)は、前記駆動源(21)の回転数が、予め定められたマップの閾値に基づいて規制される燃費優先の制御状態において、前記駆動源(21)の回転数が前記マップの閾値に到達した場合に、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する回転負荷(404)を発生させて前記スロットルグリップ(8a)に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スロットルグリップの回転角度に応じた回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る鞍乗型車両の右側の側面図。
図2】乗員側から見た鞍乗型車両の車幅方向の図。
図3】制御指令を生成する制御回路の構成を模式的に示すブロック図。
図4】スロットルグリップの回転操作と回転負荷の関係を示す図。
図5】回転負荷発生デバイスの制御処理の流れを説明する図。
図6A】盗難防止処理の流れを説明する図。
図6B】盗難防止処理の流れを説明する図。
図7】回転負荷発生デバイスから出力される回転負荷の制御例を示す図。
図8】走行優先モードにおける回転負荷発生デバイスの制御例を示す図。
図9】燃費優先モードにおける回転負荷発生デバイスの制御例を示す図。
図10】回転負荷発生デバイスの回転負荷の出力周期の制御例を示す図。
図11】回転負荷発生デバイスの制御例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
各図において、矢印X、Y、Zは互いに直交する方向を示し、X方向は鞍乗型車両の前後方向、Y方向は鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)、Z方向は上下方向を示す。鞍乗型車両の左、右は前進方向で見た場合の左、右である。以下、鞍乗型車両の前後方向の前方または後方のことを単に前方または後方と呼ぶ場合がある。また、鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)の内側または外側のことを単に内側または外側と呼ぶことがある。
【0011】
[鞍乗型車両の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両1の右側の側面図、図2は乗員側から見た鞍乗型車両1の車幅方向の図である。
【0012】
鞍乗型車両1は、長距離の移動に適したツアラー系の自動二輪車であるが、本発明は他の形式の自動二輪車を含む各種の鞍乗型車両に適用可能である。また、内燃機関を駆動源とする鞍乗型車両のほか、モータを駆動源とする電動の鞍乗型車両にも適用可能である。例えば、バッテリから供給される電力によって駆動される電動機によって走行するEV(Electric Vehicle)や、燃料電池から供給される電力によって駆動される電動機によって走行するFCV(Fuel Cell Vehicle)などの鞍乗型車両にも適用可能である。以下、鞍乗型車両1のことを車両1と呼ぶ場合がある。
【0013】
車両1は、前輪FWと後輪RWとの間にパワーユニット2を備える。駆動源21は、例えば、内燃機関(エンジン)、または電動機としての機能と発電機としての機能を兼ね備えた電動発電機(モータジェネレータ)であってもよい。駆動源21の回転軸は、変速機22の所定の変速段を介して車両1の後輪RW(駆動輪)と機械的に接続されており、後輪RW(駆動輪)を回転する。
【0014】
パワーユニット2は車体フレーム3に支持されている。車体フレーム3は、X方向に延設された左右一対のメインフレーム31を含む。メインフレーム31の上方には、乗員に対して各種の情報を表示するメーターパネルMPが設けられている。
【0015】
メインフレーム31の前側端部には、スロットルグリップ8a、8bによって回転される操向軸(不図示)を回転自在に支持するヘッドパイプ32が設けられている。メインフレーム31の後端部には、左右一対のピボットプレート33が設けられている。ピボットプレート33の下端部とメインフレーム31の前端部とは左右一対のロワアーム(不図示)により接続され、パワーユニット2はメインフレーム31とロワアームとに支持される。メインフレーム31の後端部に設けられた左右一対のシートレールは乗員が着座するシート4aや同乗者が着座するシート4b及びリアトランク7b等を支持する。後輪RWの上部側方には左右のサドルバック7aが設けられている。
【0016】
メインフレーム31の前端部には、前輪FWを支持するフロントサスペンション機構9が構成されている。フロントサスペンション機構9は、アッパリンク91、ロワリンク92、フォーク支持体93、クッションユニット94、左右一対のフロントフォーク95を含む。
【0017】
アッパリンク91及びロワリンク92は、それぞれメインフレーム31の前端部に上下に間隔を開けて配置されている。アッパリンク91及びロワリンク92の各前端部は、フォーク支持体93に揺動自在に連結されている。アッパリンク91及びロワリンク92は、それぞれ前後方向に延びるとともに実質的に平行に配置されている。
【0018】
クッションユニット94は、コイルスプリングにショックアブソーバを挿通した構造を有し、その上端部は、メインフレーム31に揺動自在に支持されている。クッションユニット94の下端部は、ロワリンク92に揺動自在に支持されている。
【0019】
フォーク支持体93は、筒状をなすとともに後傾している。フォーク支持体93の上部前部には、アッパリンク91の前端部が回転可能に連結されている。フォーク支持体93の下部後部には、ロワリンク92の前端部が回転可能に連結されている。
【0020】
フォーク支持体93には操舵軸96がその軸回りに回転自在に支持されている。操舵軸96はフォーク支持体93を挿通する軸部(不図示)を有する。操舵軸96の下端部にはブリッジ(不図示)が設けられており、このブリッジには左右一対のフロントフォーク95が支持されている。前輪FWはフロントフォーク95に回転自在に支持されている。操舵軸96の上端部は、リンク97を介して、スロットルグリップ8a、8bによって回転されるハンドルバー11に連結されている。スロットルグリップ8a、8bの操舵によって操舵軸96が回転し、前輪FWが操舵される。前輪FWの上部は、フェンダ10で覆われており、このフェンダ10はフロントフォーク95に支持されている。
【0021】
車両1の前部はフロントカバー12で覆われ、車両1の前側の側部は左右一対のサイドカバー14で覆われている。フロントカバー12の上方にはスクリーン13が配置されている。スクリーン13は走行中に乗員が受ける風圧を軽減する風防であり、例えば、透明な樹脂部材で形成されている。フロントカバー12の側方には左右一対のサイドミラーユニット15が配置されている。サイドミラーユニット15には乗員が後方を視認するためのサイドミラーが支持されている。
【0022】
ハンドルバー11は、車体左右中心(車幅方向中心)に対して左右対称に設けられ、例えば互いに別体の左右ハンドル部材からなる。左右ハンドル部材により構成されるハンドルバー11は、それぞれ操舵軸96の上端部から左右外側に向けて斜め上方に延出されている。左右のスロットルグリップ8a、8bは、ハンドルバー11の端部から車両の後方かつ下方に向けて先端下がりに延出されている。左右のスロットルグリップ8a、8bは、それぞれ直線状に延びる円筒部材により構成される。なお、ハンドルバー11は左右一体のハンドル部材により構成してもよい。
【0023】
右側のハンドルバー11の先端側(車体左右外側)にはスロットルグリップ8aが回転可能に支持される。車両1は油圧式のブレーキ装置を備え、ブレーキ装置の一操作子であるフロントブレーキレバー16aが右側のスロットルグリップ8aの前方に設けられる。また、車両1は油圧式のクラッチ装置を備え、クラッチ装置の操作子であるクラッチレバー16bが左側のスロットルグリップ8bの前方に設けられる。スロットルグリップ8aの基端部には、スロットルグリップ8aを回転可能に保持するハウジング200が設けられている。
【0024】
[制御回路の構成]
本実施形態のスロットルグリップ装置300は、回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ8aの開度に応じて駆動源21の出力を制御する。
【0025】
図3はスロットルグリップ装置300において、制御指令を生成する制御回路の構成を模式的に示すブロック図である。制御回路は、車両1の全体を統括する制御部301(ECU)を有する。制御部301は、内部構成として、プロセッサ302とメモリ303によって構成される。この場合に、制御部301による動作は、メモリ303に格納されたプログラムをプロセッサ302が実行することによって実現される。制御部301の動作の一部又は全部は、ASIC(特定用途向け集積回路)やFPGA(フィールドプログラマブルゲートウェイ)のような専用回路によって実現されてもよい。
【0026】
車両1には、車両1の状態を示す車両情報を検出する検出部が設けられている。検出部は、各種センサにより構成され、検出部は検出した車両情報を制御部301に入力する。制御部301は検出部から取得した情報に基づいて車両1の状態を判定することが可能である。また、制御部301は検出部から取得した情報に基づいて制御信号を出力し、車両1を構成する各種のデバイスを制御することが可能である。ここで、検出部の構成としては、一例として、車速センサ311、クランクパルサ312、Oセンサ313、スロットル回転角センサ314などが含まれる。この他、検出部には、スロットルグリップ8aの回転トルクを検出するトルクセンサや、駆動源21の温度を検出する温度センサや車両1の加速度を検出するGセンサなども含み得る。
【0027】
回転負荷発生デバイス350は、制御部301から供給された電力信号(以下、単に制御信号ともいう)に基づいて、スロットルグリップ8aの回転方向に対して逆方向の抵抗力となる回転負荷を生成する。スロットル回転角センサ314は、スロットルグリップ8aの回転角度を検出し、制御部301は、回転角度に基づいた制御信号を生成する。回転負荷発生デバイス350は、制御信号に基づいて、スロットルグリップ8aの回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷を発生する。
【0028】
ここで、図4は、乗員によるスロットルグリップ8aの回転操作と回転負荷の関係を模式的に示す図である。スロットルグリップ8aは、ハウジング200内において、ベアリング等の不図示の回転支持機構により支持されているものとする。スロットルグリップ8aは、全閉位置402と全開位置401との間で回転中心400回りに回転可能に支持されている。ここで、全開位置401とは、スロットル開度(回転角度)が最大となる位置であり、全閉位置402とは、スロットル開度(回転角度)が最小となる位置である。矢印403は、車両1の乗員による回転操作方向を例示するものであり、矢印404は、回転負荷発生デバイス350により生成される回転負荷の方向を示す。回転負荷の方向は、スロットルグリップ8aの回転方向に対して逆方向の抵抗力となる。スロットルグリップ8aには、回転角度が最大となる全開位置401の方向から回転角度が最小となる全閉位置402の方向に、弾性部材による付勢負荷405が作用しており、回転負荷発生デバイス350は、付勢負荷405に対して所定の大きさの回転負荷404を出力する。
【0029】
制御部301は検出部の検出出力に基づいて生成した制御信号により、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)の大きさ、出力タイミング、出力周期(ON-OFF周期)を変化させることが可能である。また、制御部301は、生成した制御信号により、抵抗力(回転負荷)を間欠的に発生させたり、間欠的に発生させた抵抗力(回転負荷)を漸次大きくしたり、漸次小さくしたりすることが可能である。
【0030】
矢印405は、板バネ、コイルバネ、スプリングなどの弾性部材により、スロットルグリップ8aに付与される付勢負荷(以下、付勢力ともいう)を示す。付勢力405は、スロットルグリップ8aが開く方向(全開位置401の方向)から閉じる方向(全閉位置402の方向)に向けて一方向に付与される。例えば、乗員がスロットルグリップ8aを全閉位置402から全開位置401の方向に回転させると、スロットルグリップ8aの回転角度に応じて、付勢力405も大きくなり得る。付勢力405に比べて回転負荷404が大きくなると、この差分が乗員の手の触覚を刺激する操作感(クリック感)になり得る。すなわち、スロットルグリップ8aの回転角度に応じた回転負荷を、スロットルグリップ8aを介した操作感として乗員に伝達(出力)することができる。スロットルグリップ8aの回転角度、回転負荷404および付勢力405の関係は、図7図11を参照して説明する。
【0031】
本実施形態の回転負荷発生デバイス350は、詳細な図示は省略するが、例えば、作動油として磁性粘性流体(Magneto-Rheological Fluid:MRF)を用いて構成することが可能である。MRFが充填された円筒状のシリンダに対してピストンロッド351が軸方向に回転可能に挿入されているものとする。回転負荷発生デバイス350の内部に設けられたコイルに、制御部301から電力信号(制御信号)が供給されると、MRFに磁界が印可されて磁性粒子がクラスタを形成することにより、シリンダ内におけるピストンロッド351の回転負荷(抵抗力)が変化する。
【0032】
なお、回転負荷発生デバイス350の構成は、MRFに印加する磁界により回転負荷を変化させる構成に限られず、例えば、ソレノイドバルブやステッピングモータなどのアクチュエータの制御により、回転負荷を制御することも可能である。ピストンロッド351には駆動ギア352が取付けられており、スロットルグリップ8aの回転軸には、スロットルグリップ8aと一体に回転可能に構成されている従動ギア353が取付けられている。駆動ギア352は従動ギア353と噛合うことにより、回転負荷を伝達することが可能である。回転負荷発生デバイス350で生成された回転負荷は、駆動ギア352および従動ギア353を介して、スロットルグリップ8aに伝達される。
【0033】
スロットルグリップ8aは中空構造を有し、その内層を構成する樹脂製のスリーブと、スリーブの外周に一体的に装着されるゴム製のグリップ本体とを有する。図3に示した回転負荷発生デバイス350は、例えば、ハウジング200の内部に設けてもよいし、中空構造を有するスロットルグリップ8aの内部に設けてもよい。
【0034】
[回転負荷発生デバイス350の制御処理の流れ]
図5は、回転負荷発生デバイス350の制御処理の流れを説明する図である。ステップS510において、クランクパルサ312により駆動源21の駆動回転軸の回転数を検出する。また、スロットル回転角センサ314により、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))を検出する。
【0035】
ステップS520において、制御部301は、車両1が走行を開始した後に、車両1の走行状態が走行安定状態になったか否かを判定する。例えば、Oセンサ313の検出出力に基づいて、制御部301は、Oフィードバック条件に合致しているか否かを判定することにより、車両1の走行状態が走行安定状態になったか否かを判定することができる。なお、Oフィードバック条件は一例であり、制御部301は、検出部に含まれる各種センサの検出出力に基づいて、車両1の走行状態が走行安定状態になったか否かを判定することができる。この場合、制御部301は、検出部で検出された車両1の走行パラメータが所定の条件を満たす場合に、車両1の走行状態が走行安定状態になったと判定し、検出部で検出された車両1の走行パラメータが所定の条件を満たさない場合に、車両1の走行状態が走行安定状態に達していないと判定する。例えば、車速センサ311で検出された車速の変化が閾値以下になった場合に、車両1の走行状態が走行安定状態になったと判定してもよい。
【0036】
ステップS520の判定で、車両1の走行状態が走行安定状態に達していない場合(S520-NO)、ステップS560に処理を進める。
【0037】
ステップS560において、制御部301は、回転負荷発生デバイス350における回転負荷出力をOFFの状態のまま維持し、処理をステップS510に戻し、同様の処理を繰り返す。
【0038】
一方、S520の判定で、車両1の走行状態が走行安定状態になった場合(S520-YES)、制御部301は処理を、ステップS530またはステップS540に進める。乗員は、不図示の走行モード選択スイッチにより、車両1の走行モードを、燃費優先モードまたは走行優先モードに設定することができる。制御部301は、選択されている走行モード(燃費優先モードまたは走行優先モード)に応じて、回転負荷発生デバイス350に出力する制御信号を制御(変更)する。回転負荷発生デバイス350は、選択された制御状態に応じて回転負荷を出力する。
【0039】
燃費優先モード(電費優先モード)は、駆動源21の燃料消費(又は電力消費)を最適化する走行モードである。以下、燃費優先モードおよび電費優先モードをまとめて、燃費優先モード(燃費優先の制御状態)という。メモリ303には、駆動源21の回転数毎に最適燃費マップが記憶されており、制御部301はメモリ303の最適燃費マップを参照して、回転負荷発生デバイス350に出力する制御信号を生成する。駆動源21の回転数が最適燃費マップの閾値(最適燃費閾値)に到達した場合には、これ以上、スロットルグリップ8aを開きにくくするために、制御部301は抵抗力(回転負荷)を急激に増大させる制御信号を生成し、回転負荷発生デバイス350は生成された制御信号に基づいて、スロットルグリップ8aの回転を規制する。なお、閾値(最適燃費閾値)に到達していない場合には、制御部301は、スロットルグリップ8aの回転角度の増加に応じて、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が増加するように制御信号を生成する。
【0040】
一方、走行優先モード(走行優先の制御状態)では、最適燃費マップによる制限を設けずに、駆動源21の回転数が最適燃費マップの閾値(最適燃費閾値)に到達していても、制御部301は、燃費優先モードのようにスロットルグリップ8aの回転を規制しない。走行優先モードでは、制御部301は、スロットルグリップ8aの回転角度の増加に応じて、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が増加するように制御信号を生成する。
【0041】
駆動源21の駆動により走行する車両1は、駆動源21の回転数が、予め定められたマップの閾値に基づいて規制される燃費優先の制御状態と、駆動源21の回転数が、マップの閾値により規制されない走行優先の制御状態とのうち、選択されたいずれか一方の制御状態で走行可能であり、回転負荷発生デバイス350は、選択された制御状態に応じた回転負荷を出力する。
【0042】
説明を図5に戻し、ステップS550では、選択された走行モードに応じて、制御部301は、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)を制御する制御信号を生成する。回転負荷発生デバイス350は、制御信号に基づいて可変の回転負荷を発生させてスロットルグリップに出力する。
【0043】
[制御例]
図7は回転負荷発生デバイス350から出力される抵抗力(回転負荷)の制御例を示す図である。横軸は、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))を示し、縦軸は回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷を示す。
【0044】
図7において、一点鎖線701はスロットルグリップ8aに作用するスプリングトルクであり、スプリングトルク701は図4で説明した付勢力405に対応する。スロットルグリップ8aの回転角(TH開度)が増加するに従い、スプリングトルク701も増加していく。TH開度の開度領域703の間では、制御部301は、回転負荷発生デバイス350における回転負荷出力をOFFの状態のまま維持する。この処理は、図5のステップS560に対応するもので、車両1の走行状態が走行安定状態に達していない場合、回転負荷発生デバイス350は回転負荷を出力せず、車両1の走行状態が走行安定状態に達した状態で、回転負荷発生デバイス350は、制御信号に基づいて、回転負荷を出力する。
【0045】
PS1~PS5は、回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷であり、負荷出力(ON)、出力停止(OFF)が所定の周期で繰り返されている。制御部301は、スロットルグリップ8aの回転角度の増加に応じて、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が増加するように制御信号を生成する。h1~h5は、回転負荷の大きさ(負荷強度)を示しており、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))が大きくなるに従い、回転負荷の大きさ(負荷強度)も大きくなる。駆動源21の回転数が最適燃費マップの閾値(最適燃費閾値)に到達していない状態では、燃費優先モード、走行優先モードのいずれにおいても同様に制御することが可能である。なお、図7の制御例は一例であり、燃費優先モード、走行優先モードにおいて、回転負荷の大きさ(負荷強度)を変えたり、回転負荷の出力周期を変更してもよい。
【0046】
回転負荷PS1~PS5と、一点鎖線701のスプリングトルクとの差分が、乗員の手の触覚を刺激する操作感(クリック感)になり得る。走行安定状態(クルーズ状態)では、乗員の腕の力が抜けるために、無意識にスロットルグリップ8aを動かしてしまう場合が生じ得る。それに対して、走行安定状態(クルーズ状態)では、回転負荷発生デバイス350からの回転負荷による操作感を生じさせることで、不要なアクセル変化を乗員に認識させることができる。これにより、不要な開度変化に伴う、燃費への影響を低減ことができる。また、回転負荷による操作感を生じさせることで、走行安定状態におけるスロットル操作の最適化を実現することができる。
【0047】
(走行優先モードの制御例)
図8は走行優先モードにおける回転負荷発生デバイス350の制御例を示す図である。横軸は、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))を示し、縦軸は回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷を示す。一点鎖線701は図7と同様であり、スロットルグリップ8aに作用するスプリングトルクを示す。
【0048】
PS1~PS5は、回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷であり、負荷出力(ON)、出力停止(OFF)が所定の周期で繰り返されている。図8の制御例では、制御部301は、スロットルグリップ8aの回転角度の増加によらず、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が一定の出力となるように制御信号を生成する。hは、回転負荷の大きさ(負荷強度)を示しており、PS1~PS5における回転負荷の大きさ(負荷強度)は一定である。
【0049】
スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))が大きくなるに従い、回転負荷PS1~PS5と、一点鎖線701のスプリングトルクとの差分は小さくなる。すなわち、操作感(クリック感)はTH開度の増加に従い相対的に低減される。このように、走行優先モード(走行優先の制御状態)では、回転負荷発生デバイス350の回転負荷の出力を制御することにより、スロットルグリップ8aの摺動抵抗を疑似的に減らすことができる。これにより、スロットルグリップ8aの回転角度(TH開度)が小さい低出力状態に比べて、回転角度(TH開度)が大きい高出力状態での乗り心地を向上させることが可能になる。なお、図8の例では、PS1~PS5における回転負荷の大きさ(負荷強度)が一定の場合を例示しているが、この例に限定されず、例えば、スロットルグリップ8aの回転角の増加に応じて、スプリングトルクとの差分が小さくなるように、回転負荷発生デバイス350の回転負荷を漸次増加させてもよい。
【0050】
(燃費優先モードにおける制御例)
図9は燃費優先モードにおける回転負荷発生デバイス350の制御例を示す図である。横軸は、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))を示し、縦軸は回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷を示す。一点鎖線701は図7と同様であり、スロットルグリップ8aに作用するスプリングトルクを示す。
【0051】
PS1~PS6は、最適燃費閾値に到達前の状態において、回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷であり、負荷出力(ON)、出力停止(OFF)が所定の周期で繰り返されている。制御部301は、スロットルグリップ8aの回転角度の増加に応じて、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が増加するように制御信号を生成する。h1~h6は、最適燃費閾値に到達前の状態において、回転負荷の大きさ(負荷強度)を示しており、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))が大きくなるに従い、回転負荷の大きさ(負荷強度)も漸次大きくなる。
【0052】
駆動源21の回転数が最適燃費閾値に到達すると、これ以上、スロットルグリップ8aを開きにくくするために、制御部301は抵抗力(回転負荷)を急激に増大させて、スロットルグリップ8aの回転を規制する。回転を規制する回転負荷として、例えば、制御部301は、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が最大値になるように制御信号を生成する。
【0053】
図9の制御例では、最適燃費閾値に到達以後、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷900)の大きさはhmax(最大値)となり、直前の回転負荷PS6の大きさh6に比べて急激に抵抗力(回転負荷)が増大している。燃費優先モードにおいては、最適燃費閾値に到達以後、スロットルグリップ8aの回転は、抵抗力(回転負荷)の急激な増加により規制されるため、必要以上にTH開度が開くことを抑制することができ、燃費を向上させることが可能になる。更に開度が増加する状態で、回転負荷発生デバイス350は、回転負荷900の出力を維持する。
【0054】
図9においては、比較例として、走行優先モードにおける回転負荷の出力例も示している。PS7~PS9は、走行優先モードにおいて、回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷を示している。
【0055】
走行優先モードでは、最適燃費マップによる制限を設けずに、駆動源21の回転数が最適燃費マップの閾値(最適燃費閾値)に到達していても、制御部301は、燃費優先モードのようにスロットルグリップ8aの回転を規制しない。走行優先モード(走行優先の制御状態)では、駆動源21の回転数が最適燃費マップの閾値(最適燃費閾値)に到達した場合であっても、制御部301は、スロットルグリップ8aの回転を規制する制御信号を生成しない。このため、走行優先モードでは、制御部301は、スロットルグリップ8aの回転角度の増加に応じて、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)が増加するように制御信号を生成する。なお、PS10はTH開度の全開位置における回転負荷出力を示している。図9においては制御部301の制御信号に基づいて、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)を増加させているが、スロットルグリップ8aの回転は機械的に規制されるため、電気的な制御信号による回転規制のためにPS10を出力しなくてもよい。
【0056】
(出力周期の制御例)
図10は、回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)の出力周期の制御例を示す図である。横軸は、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))を示し、縦軸は回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷を示す。一点鎖線701は図7と同様であり、スロットルグリップ8aに作用するスプリングトルクを示す。
【0057】
図10において、実線1010で示すのは、燃費優先モードにおける回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)であり、破線1020で示すのは、走行優先モードにおける回転負荷発生デバイス350の抵抗力(回転負荷)である。図10に示す制御例では、制御部301は、燃費優先モードおよび走行優先モードにおいて、回転負荷(出力ON)の出力周期をそれぞれ異なる周期で出力するように制御信号を生成する。例えば、制御部301は、燃費優先モード(燃費優先の制御状態)における回転負荷の出力周期Δ1を、走行優先モード(走行優先の制御状態)における回転負荷の出力周期Δ2に比べて短くするように制御信号を生成してもよい。
【0058】
この場合、図10に示すように、燃費優先モード(実線1010)では、最適燃費閾値まで、負荷出力(ON)が所定の出力周期Δ1で繰り返されている。また、走行優先モードでは、負荷出力(ON)が、周期Δ1よりも長い所定の周期Δ2で繰り返されている。
【0059】
燃費優先モードでは、駆動源21の回転数が最適燃費閾値に到達すると、制御部301は、出力周期Δ1によらず、回転を規制するための制御信号を生成し、回転負荷発生デバイス350は、生成された制御信号に基づいて、図9と同様にhmax(最大値)の回転負荷900を出力する。更に開度が増加する状態で、回転負荷発生デバイス350は、回転負荷900の出力を維持する。
【0060】
走行優先モードでは、最適燃費マップによる制限を設けずに、駆動源21の回転数が最適燃費マップの閾値(最適燃費閾値)に到達していても、制御部301は、負荷出力(ON)の出力周期Δ2で負荷出力を出力するように制御信号の生成を制御する。
【0061】
燃費優先モードにおける負荷出力の出力周期を走行優先モードの負荷出力の出力周期に比べ短くすることより、操作感(クリック感)を乗員に小刻みに与えることができる。これにより、スロットルグリップ8aを必要以上に回転する操作を抑制することができるため、燃費を向上させることが可能になる。
【0062】
(アシストモードの制御例)
先の説明では、燃費優先モードと、走行優先モードについて説明したが、車両1の走行モードとして、図11に示すような走行モード(アシストモード)を追加してもよい。
【0063】
図11はアシストモードにおける回転負荷発生デバイス350の制御例を示す図である。図11において、横軸は、スロットルグリップ8aの回転角(スロットル開度(TH開度))を示し、縦軸は回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷を示す。一点鎖線701は図7と同様であり、スロットルグリップ8aに作用するスプリングトルクを示す。
【0064】
車速センサ311で検出された車速の変化が閾値以下になった場合、制御部301は、スプリングトルク701より小さい回転負荷1110を出力するように、制御信号を生成する。図11の制御例では、TH開度がθ1で、車速の変化が閾値以下になったものとする。このとき、回転負荷発生デバイス350は、制御部301の制御信号に基づいて、スプリングトルク701より小さい回転負荷1110を出力する。TH開度がθ1より大きいTH開度の開度領域1130において、スプリングトルク701と回転負荷1110との差分1120は略一定の状態が維持される。駆動源21の回転数の検出情報または駆動源21により走行する車両1の車速の検出情報が所定の条件を満たす走行安定状態において、制御部301は、スプリングトルク701(付勢負荷)から回転負荷1110を減算した差分1120が回転角度の変化に応じて略一定となるとなるような制御信号を生成し、回転負荷発生デバイス350は、制御信号に基づいて、回転負荷を出力する。
【0065】
回転負荷発生デバイス350は、スプリングトルク701(付勢負荷)による戻りを穏やかにするような回転負荷(付勢負荷に対する抵抗負荷)を発生する。乗員がスロットルグリップ8aを操作して、スプリングトルク701と釣り合う状態にする場合、乗員がスロットルグリップ8aを保持する力は回転負荷発生デバイス350から出力される回転負荷(抵抗負荷)によりアシストされる。差分1120のトルク差を乗員が手を添える程度に負荷を負担することで補うことができる。すなわち、スプリングトルク701と同等の回転負荷を維持するために、乗員は差分1120のトルク差を負担すればよい。これにより、車速の変化が閾値以下になった走行安定状態において、乗員の負担を軽減することができる。なお、走行安定状態の判定は、車速センサ311の検出出力を用いる場合の他、Oフィードバック条件に合致しているか否かを判定することにより、車両1の走行状態が走行安定状態になったか否かを判定することができる。回転負荷発生デバイス350の回転負荷に比べて、スプリングトルク701が大きいため、乗員がスロットルグリップ8aから手を離せば、スプリングトルク701によりスロットルグリップ8aは閉じる。これにより、乗員の負担を軽減しつつ乗員の安全性を確保することができる。
【0066】
トルクセンサの検出情報を用いて、乗員により加えられる、スロットルグリップ8aの全開位置401の方向に向けられた力の検出情報が検出されなくなった場合に、制御部301は、回転負荷の出力をゼロにする制御信号を生成し、回転負荷発生デバイス350は、制御信号に基づいて、回転負荷をゼロにする。この構成によれば、スロットルグリップの開方向の力の検出情報が検出されなくなった場合、すなわち、車速を減速させる場合には、回転負荷の出力をゼロすることで、回転負荷による拘束を受けることなく、スロットルグリップを閉方向に回転させることができる。
【0067】
図11に示すように、走行安定状態における開度領域1130では、スプリングトルク701が回転負荷1110よりも大きいので、乗員が手を離せば、スプリングトルク701の付勢力により自動的にスロットルグリップ8aが閉じる方向に回転する。これにより安全性を、より一層高めることが可能になる。
【0068】
[盗難防止]
先の説明では、運転操作時において、回転負荷発生デバイス350からの回転負荷をクリック感として出力する構成を説明したが、回転負荷発生デバイス350を車両1の盗難防止用のデバイスとして使用することも可能である。
【0069】
回転負荷発生デバイス350は、内部電源を有しており、車両1のイグニションオフ時におけるスロットルグリップ8aの回転操作により、内部電源に基づいた起電力を発生させる。起電力は制御部301に通電され、制御部301は起動する。内部電源は、バッテリセルとして、例えば、リチウム(Li)イオン電池からなるセルを内蔵している。内部電源としては、リチウム(Li)イオン電池以外にもナトリウムイオン二次電池やカリウムイオン二次電池などを内部電源のセルとして用いることも可能である。
【0070】
回転負荷発生デバイス350は、内部電源に基づいた起電力を用いて、スロットルグリップ8aの回転操作に基づいたON-OFF信号を生成する。回転負荷発生デバイス350は、スロットルグリップ8aを開く方向に回転させる開操作に対応したビット信号と、スロットルグリップ8aを閉じる方向に回転させる閉操作に対応したビット信号とを組み合わせた操作信号を、起電力を用いて生成する。
【0071】
スロットルグリップ8aを開く操作に対応するビット信号はON信号(「1」)を示し、スロットルグリップ8aを閉じる操作に対応するビット信号はOFF信号(「0」)を示すものとする。
【0072】
例えば、乗員が、スロットルグリップ8aの開き操作(ON信号)、閉じ操作(OFF信号)を交互に2回繰り返した場合、ON-OFF信号に基づいたビット列「1010」の操作信号が生成される。
【0073】
制御部30のメモリ303には、ビット列により構成された暗証信号(暗証番号)が予め記憶されているものとする。
【0074】
起電力に基づいて起動した制御部301は、メモリ303の暗証番号と、スロットルグリップ8aのON-OFF操作に基づいた操作信号とを比較して、両者が一致した場合にイグニションONを可能とする。また、制御部301は、暗証番号と操作信号とが一致しない場合にイグニションONにさせない。
【0075】
(処理例1)
図6Aは回転負荷発生デバイス350を車両1の盗難防止に用いる盗難防止処理の流れを説明する図である。
【0076】
ステップS610において、乗員がスロットルグリップ8aを操作(TH操作)する。車両1のイグニションオフ時にスロットルグリップ8aが回転操作されると、回転負荷発生デバイス350の内部電源は起電力を発生させて、制御部301に通電する。
【0077】
ステップS611において、スロットルグリップ8aの操作により、ON-OFF信号に基づいたビット列の操作信号が生成される。
【0078】
ステップS612において、制御部301は、メモリ303の暗証番号と、スロットルグリップ8aのON-OFF操作に基づいた操作信号とを比較する。操作信号と暗証番号が一致した場合に(S612-YES)、制御部301は処理をステップS613に進める。
【0079】
ステップS613において、制御部301は、操作信号と暗証番号が一致した場合にイグニションONを可能とする。そして、ステップS614において、乗員はキーにより駆動源21を始動する。
【0080】
一方、ステップS612の比較処理で、操作信号と暗証番号が一致しない場合に(S612-NO)、制御部301は処理をステップS615に進める。
【0081】
ステップS615において、制御部301は、操作信号と暗証番号が一致しない場合にイグニションONさせず、処理をステップS611に戻す。
【0082】
本処理例1によれば、スロットルグリップ8aのON-OFF操作に基づいた操作信号と暗証番号とが一致しない限り、イグニションONが可能な状態にならないため、車両1の盗難を効果的に防止することが可能になる。
【0083】
(処理例2)
盗難防止処理は上記の処理例1の他、以下の処理の流れでもよい。例えば、起電力に基づいて起動した制御部301は、メモリ303に予め記憶されている暗証番号と、操作信号との比較に基づいた制御信号を生成する。制御部301は、操作信号と暗証番号とが一致しない場合に、回転負荷発生デバイス350の回転負荷をONにする制御信号を生成し、操作信号と暗証番号とが一致した場合に、回転負荷発生デバイス350の回転負荷をOFFにする制御信号を生成する。
【0084】
図6Bは回転負荷発生デバイス350を車両1の盗難防止に用いる盗難防止処理の流れを説明する図である。
【0085】
ステップS620において、乗員がキーON操作を行う。キーON操作により、制御部301は回転負荷発生デバイス350の回転負荷をONにする制御信号を生成する。回転負荷発生デバイス350は生成された制御信号に基づいて、回転負荷をONにする。回転負荷がONの状態では、スロットルグリップ8aの回転可能な範囲が制限された制限状態(ロック状態)となる。
【0086】
そして、ステップS621において、回転可能な範囲が制限された状態で、乗員がスロットルグリップ8aを操作すると、ON-OFF信号に基づいたビット列の操作信号が生成される。
【0087】
ステップS622において、制御部301は、メモリ303の暗証番号と、スロットルグリップ8aのON-OFF操作に基づいた操作信号とを比較する。操作信号と暗証番号が一致した場合に(S622-YES)、制御部301は処理をステップS623に進める。
【0088】
そして、ステップS623において、制御部301は回転負荷発生デバイス350の回転負荷をOFFにする制御信号を生成し、回転負荷発生デバイス350は生成された制御信号に基づいて、回転負荷をOFFにする。回転負荷がOFFにされることにより、ステップS620で設定された制限状態(ロック状態)は解除され、スロットルグリップ8aは全閉位置と全開位置との間で回転可能な状態になる。
【0089】
一方、ステップS622の比較処理で、操作信号と暗証番号が一致しない場合に(S622-NO)、制御部301は処理をステップS624に進める。
【0090】
ステップS624において、制御部301は回転負荷発生デバイス350の回転負荷をONする制御信号を生成し、回転負荷発生デバイス350は生成された制御信号に基づいて、回転負荷をONにする。回転負荷がONの状態では、全閉位置と全開位置との間でスロットルグリップ8aの回転可能な範囲が制限された制限状態(ロック状態)は維持される。
【0091】
本処理例2によれば、スロットルグリップ8aのON-OFF操作に基づいた操作信号と暗証番号とが一致しない限り、スロットルグリップ8aの回転可能な範囲が制限された制限状態(ロック状態)は解除されないため、車両1の盗難を効果的に防止することが可能になる。
【0092】
上記の実施形態のスロットルグリップ装置300は、スロットルグリップ8aの操作をスロットルケーブルで伝達する構成の他に、TBW(throttle-by-wire)システムに適用可能である。すなわち、スロットルグリップ装置300は、スロットルグリップ8aの操作を電気信号に変換し、乗員が操作するスロットルグリップ8aの開度および各種センサからの信号に基づいて駆動源21の出力を電子制御するTBWシステムにも適用可能である。
【0093】
(実施形態のまとめ)
上記実施形態は、少なくとも以下のスロットルグリップ装置および、スロットルグリップ装置を有する鞍乗型車両を開示する。
【0094】
構成1.上記実施形態のスロットルグリップ装置は、回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいた回転負荷(404)を発生させて前記スロットルグリップ(8a)に出力する。
【0095】
構成1のスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップの回転角度に応じた回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することができる。これにより、スロットルグリップの開けすぎによる燃費低下を抑制することができる。
【0096】
スロットルグリップに対して、任意のタイミングで、任意の大きさのトルクを瞬時に生じさせることができるため、乗員に対する操作感をわかりやすく伝達することができる。
【0097】
構成2.前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御手段(301)から供給される電力によって、前記回転負荷を発生させる。
【0098】
構成2のスロットルグリップ装置によれば、制御部から供給される電力によって、抵抗力を発生できるため、簡易な機構で回転負荷を生じさせることができる。
【0099】
構成3.前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷の大きさ、前記回転負荷の出力タイミング、及び前記回転負荷(404)の出力周期を変化させる。
【0100】
構成3のスロットルグリップ装置によれば、回転負荷の大きさ、回転負荷の出力タイミング、及び回転負荷の出力周期を変化させることで、車両の走行状態に応じた回転負荷を出力することが可能になる。
【0101】
構成4.前記スロットルグリップ(8a)には、前記回転角度が最大となる全開位置(401)の方向から前記回転角度が最小となる全閉位置(402)の方向に、弾性部材による付勢負荷(405、701)が作用しており、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記付勢負荷(405、701)に対して所定の大きさの回転負荷(404)を出力する。
【0102】
構成4のスロットルグリップ装置によれば、付勢負荷に対して所定の大きさの回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することができる。
【0103】
構成5.前記制御手段(301)は、前記スロットルグリップ(8a)の前記回転角度の増加に応じて、前記回転負荷が増加するように前記制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転角度の増加に応じて増加する前記回転負荷を発生する。
【0104】
構成5のスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップの回転操作に応じた回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することができる。
【0105】
構成6.前記回転負荷発生手段(350)は、前記付勢負荷(405、701)に比べて一定の大きさを有する回転負荷(PS1~PS5)を出力する。
【0106】
構成6のスロットルグリップ装置によれば、付勢負荷(405、701)に比べて一定の大きさを有する回転負荷を操作感として乗員に伝達することができる。
【0107】
構成7.前記駆動源(21)の回転数の検出情報または前記駆動源(21)により走行する車両(1)の車速の検出情報が所定の条件を満たす走行安定状態において、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷(PS1~PS5)を出力する。
【0108】
構成7のスロットルグリップ装置によれば、走行安定状態で、回転負荷を操作感として乗員に伝達することで、不要なアクセル変化を乗員に認識させることができる。これにより、不要な開度変化に伴う、燃費への影響を低減ことができる。また、回転負荷による操作感を生じさせることで、走行安定状態におけるスロットルの最適化を実現することができる。
【0109】
構成8.前記駆動源(21)の駆動により走行する鞍乗型車両(1)は、
前記駆動源(21)の回転数が、予め定められたマップの閾値に基づいて規制される燃費優先の制御状態と、
前記駆動源(21)の回転数が、前記マップの閾値により規制されない走行優先の制御状態とのうち、選択された制御状態で走行可能であり、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記選択された制御状態に応じて前記回転負荷を出力する。
【0110】
構成8のスロットルグリップ装置によれば、燃費優先の制御状態と、走行優先の制御状態とのうち、選択された制御状態に応じた回転負荷を操作感として乗員に伝達することができる。
【0111】
構成9.前記燃費優先の制御状態において、前記駆動源(21)の回転数が前記マップの閾値に到達した場合に、前記制御手段(301)は前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する回転負荷を発生する。
【0112】
構成9のスロットルグリップ装置によれば、燃費優先モード(燃費優先の制御状態)においては、最適燃費閾値(マップの閾値)に到達以後、スロットルグリップの回転は、回転負荷の急激な増加により規制されるため、必要以上にスロットルグリップが開くことを抑制することができ、燃費を向上させることが可能になる。
【0113】
構成10.前記走行優先の制御状態では、前記駆動源(21)の回転数が前記マップの閾値に到達した場合であっても、前記制御手段(301)は、前記スロットルグリップ(8a)の回転を規制する制御信号を生成しない。
【0114】
構成10のスロットルグリップ装置によれば、最適燃費閾値(マップの閾値)に到達した場合であっても、スロットルグリップの回転は規制されないため、選択された制御状態に応じた回転負荷を操作感として乗員に伝達することができる。
【0115】
構成11.前記制御手段(301)は、前記燃費優先の制御状態における回転負荷の出力周期(Δ1)を前記走行優先の制御状態における回転負荷の出力周期(Δ2)に比べて短くするように前記制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号の出力周期に基づいて、前記回転負荷を出力する。
【0116】
構成11のスロットルグリップ装置によれば、燃費優先の制御状態における回転負荷の出力周期を走行優先の制御状態の回転負荷の出力周期に比べ短くすることより、操作感を乗員に小刻みに与えることができる。これにより、スロットルグリップを必要以上に回転する操作を抑制することができるため、燃費を向上させることが可能になる。
【0117】
構成12.前記走行優先の制御状態において、前記回転負荷発生手段(350)から出力される回転負荷(PS1~PS5)と前記付勢負荷(405、701)との差分は、前記スロットルグリップ(8a)の回転角が大きくなるに従い小さくなる。
【0118】
構成12のスロットルグリップ装置によれば、走行優先の制御状態において、回転負荷の出力を制御することにより、スロットルグリップの摺動抵抗を疑似的に減らすことができる。これにより、スロットルグリップの回転角度が小さい低出力状態に比べて、回転角度が大きい高出力状態での乗り心地を向上させることが可能になる。
【0119】
構成13.前記駆動源(21)により走行する車両(1)の車速の検出情報が所定の速度以下の場合に、前記制御手段(301)は、所定の角度以上の回転を規制する制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は前記制御信号に基づいて、前記所定の角度以上の回転を規制する回転負荷を発生する。

構成13のスロットルグリップ装置によれば、車両1の走行速度が所定の速度以下の場合、例えば、始動時や徐行走行時など、スロットルグリップを開けすぎることによる急発進を防止することができる。
【0120】
構成14.乗員により加えられる、前記スロットルグリップ(8a)の前記全開位置(401)の方向に向けられた力の検出情報が検出されなくなった場合に、前記制御手段(301)は、前記回転負荷の出力をゼロにする制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷をゼロにする。
【0121】
構成14のスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップの開方向の力の検出情報が検出されなくなった場合、すなわち、車速を減速させる場合には、回転負荷の出力をゼロすることで、回転負荷による拘束を受けることなく、スロットルグリップを閉方向に回転させることができる。
【0122】
構成15.前記駆動源(21)の回転数の検出情報または前記駆動源(21)により走行する車両(1)の車速の検出情報が所定の条件を満たす走行安定状態において、
前記制御手段(301)は、前記付勢負荷(405、701)から回転負荷(1110)を減算した差分が前記回転角度の変化に応じて一定となるような制御信号を生成し、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいて、前記回転負荷を出力する。
【0123】
構成15のスロットルグリップ装置によれば、乗員がスロットルグリップを保持する力は回転負荷によりアシストされる。また、差分のトルク差を乗員が手を添えることで補うことができる。付勢負荷(スプリングトルク701)と同等の回転負荷を維持するために、乗員は差分のトルク差を負担すればよい。これにより、車速の変化が閾値以下になった走行安定状態において、乗員の負担を軽減することができる。
【0124】
構成16.前記回転負荷発生手段(350)は、
イグニションオフ時におけるスロットルグリップ(8a)の回転操作により、内部電源に基づいた起電力を発生させて、
前記スロットルグリップ(8a)を開く方向に回転させる開操作に対応したビット信号と、前記スロットルグリップ(8a)を閉じる方向に回転させる閉操作に対応したビット信号とを組み合わせた操作信号を、前記起電力を用いて生成し、
前記起電力に基づいて起動した前記制御手段(301)は、
メモリ(303)に予め記憶されている暗証番号と、前記操作信号との比較に基づいた制御信号を生成し、
前記制御手段(301)は、
前記操作信号と前記暗証番号とが一致しない場合に、前記回転負荷発生手段(350)の回転負荷をONにする制御信号を生成し、
前記操作信号と前記暗証番号とが一致した場合に、前記回転負荷発生手段(350)の回転負荷をOFFにする制御信号を生成する。
【0125】
構成16のスロットルグリップ装置によれば、スロットルグリップのON-OFF操作に基づいた操作信号と暗証番号とが一致しない限り、スロットルグリップの回転可能な範囲が制限された制限状態は解除されないため、車両の盗難を効果的に防止することが可能になる。
【0126】
構成17.上記実施形態の鞍乗型車両は、回転操作が可能に支持されたスロットルグリップ(8a)の開度に応じて駆動源(21)の出力を制御するスロットルグリップ装置を有する鞍乗型車両であって、
前記スロットルグリップ(8a)の回転角度を検出する開度検出手段(314)と、
前記回転角度に基づいた制御信号を生成する制御手段(301)と、
前記制御信号に基づいて、前記スロットルグリップ(8a)の回転操作方向に対して逆方向の抵抗力である回転負荷(404)を発生する回転負荷発生手段(350)と、を備え、
前記回転負荷発生手段(350)は、前記制御信号に基づいた回転負荷(404)を発生させて前記スロットルグリップ(8a)に出力する。
【0127】
構成17の鞍乗型車両によれば、スロットルグリップの回転角度に応じた回転負荷を、スロットルグリップを介した操作感として乗員に伝達することができる。これにより、スロットルグリップの開けすぎによる燃費低下を抑制することができる。
【0128】
スロットルグリップに対して、任意のタイミングで、任意の大きさのトルクを瞬時に生じさせることができるため、乗員に対する操作感をわかりやすく伝達することができる。
【0129】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0130】
1:、8a:スロットルグリップ、301:ECU(制御部)、303:メモリ、311:車速センサ、312:クランクパルサ、313:Oセンサ、314:スロットル回転角センサ(開度検出センサ)、350:回転負荷発生デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11