(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】前立腺特異的膜抗原(PSMA)の標識インヒビター、前立腺癌の治療のための画像化剤および薬剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20231129BHJP
C07F 5/00 20060101ALN20231129BHJP
C07B 59/00 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
C07D257/02
C07F5/00 Z
C07B59/00
(21)【出願番号】P 2022122499
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2020203704の分割
【原出願日】2014-10-17
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2013-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2014-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500030655
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(73)【特許権者】
【識別番号】516113861
【氏名又は名称】ループレヒト-カールス-ウニヴェルジテート ハイデルベルク
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】エーデル,マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】コプカ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,マルティーン
(72)【発明者】
【氏名】バウデル-ヴュスト,ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】ハーベルコルン,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンフット,ミヒァエル
(72)【発明者】
【氏名】ミール,ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ベネゾーファ,マルティーナ
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/108125(WO,A2)
【文献】特表2010-532754(JP,A)
【文献】特表2006-514961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0008649(US,A1)
【文献】国際公開第2013/060793(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/022797(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/174136(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
またはその塩に、放射性核種を複合体化させる工程を含む、下記式の放射性標識化合物(II)またはその塩:
【化2】
(式中、R’は、下記式のキレート剤:
【化3】
であり、
前記放射性核種は、キレート剤R’と複合体化されている。)
を製造する方法。
【請求項2】
前記放射性核種が
89
Zr,
44
Sc,
111
In,
90
Y,
66
Ga,
67
Ga,
68
Ga,
177
Lu,
99m
Tc,
61
Cu,
62
Cu,
64
Cu,
67
Cu,
149
Tb,
152
Tb,
155
Tb,
161
Tb,
153
Gd,
155
Gd,
157
Gd,
213
Bi,
225
Ac,
230
U,
223
Ra,および
165
Erからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射性核種が
89
Zr,
44
Sc,
111
In,
90
Y,
68
Ga,
177
Lu,
99m
Tc,
64
Cu,
67
Cu,
153
Gd,
155
Gd,
157
Gd,
213
Bi,および
225
Acからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記放射性核種が
68
Gaである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放射性核種が
177
Luである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記放射性核種が
225
Acである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記放射性核種が
90
Yである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記放射性核種が
64
Cuおよび
67
Cuからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式(I’)の化合物:
【化4】
またはその塩に、放射性核種を複合体化させる工程を含む、下記式の放射性標識化合物(II’)またはその塩:
【化5】
(式中、R’は、下記式のキレート剤:
【化6】
であり、
前記放射性核種は、キレート剤R’と複合体化されている。)
を製造する方法。
【請求項10】
前記放射性核種が
89
Zr,
44
Sc,
111
In,
90
Y,
66
Ga,
67
Ga,
68
Ga,
177
Lu,
99m
Tc,
61
Cu,
62
Cu,
64
Cu,
67
Cu,
149
Tb,
152
Tb,
155
Tb,
161
Tb,
153
Gd,
155
Gd,
157
Gd,
213
Bi,
225
Ac,
230
U,
223
Ra,および
165
Erからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記放射性核種が
89
Zr,
44
Sc,
111
In,
90
Y,
68
Ga,
177
Lu,
99m
Tc,
64
Cu,
67
Cu,
153
Gd,
155
Gd,
157
Gd,
213
Bi,および
225
Acからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記放射性核種が
68
Gaである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記放射性核種が
177
Luである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記放射性核種が
225
Acである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記放射性核種が
90
Yである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記放射性核種が
64
Cuおよび
67
Cuからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
式(I”)の化合物:
【化7】
またはその塩に、放射性核種を複合体化させる工程を含む、下記式の放射性標識化合物(II”)またはその塩:
【化8】
(式中、R’は、下記式のキレート剤:
【化9】
であり、
前記放射性核種は、キレート剤R’と複合体化されている。)
を製造する方法。
【請求項18】
前記放射性核種が
89
Zr,
44
Sc,
111
In,
90
Y,
66
Ga,
67
Ga,
68
Ga,
177
Lu,
99m
Tc,
61
Cu,
62
Cu,
64
Cu,
67
Cu,
149
Tb,
152
Tb,
155
Tb,
161
Tb,
153
Gd,
155
Gd,
157
Gd,
213
Bi,
225
Ac,
230
U,
223
Ra,および
165
Erからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放射性核種が
89
Zr,
44
Sc,
111
In,
90
Y,
68
Ga,
177
Lu,
99m
Tc,
64
Cu,
67
Cu,
153
Gd,
155
Gd,
157
Gd,
213
Bi,および
225
Acからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記放射性核種が
68
Gaである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記放射性核種が
177
Luである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記放射性核種が
225
Acである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記放射性核種が
90
Yである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記放射性核種が
64
Cuおよび
67
Cuからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、放射性医薬品の分野、および前立腺癌の種々の病期の治療のため
のトレーサー、画像化剤としての核医学におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺癌(PCa)は、米国および欧州諸国の住人において主要な癌である。西半球で少な
くとも100~200万人の男性が前立腺癌に苦しみ、該疾患は55歳~85歳の6人に一人に見ら
れると推定される。米国において毎年、前立腺癌と診断された30万を超す新たな症例が見
られる。該疾患の死亡率は肺癌に次いで2番目である。コンピューター連動断層撮影(CT)
、磁気共鳴(MR)画像化および超音波などの現在の解剖学的方法は、前立腺癌の臨床画像化
の主流である。手術、放射線治療、薬物療法および最小侵襲性治療に対して世界規模で現
在推定20億ドルが使われている。しかしながら、現在、再発性、転移性、アンドロゲン独
立型の前立腺癌については効果的な治療法はない。
【0003】
放射線標識コリンアナログ[18F]フルオロジヒドロテストステロン([18F]FDHT)、抗1-ア
ミノ-3-[18F]フルオロシクロブチル-1-カルボン酸(抗[18F]F-FACBC、[11C]アセテートお
よび1-(2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-L-アラビノフラノシル)-5-メチルウラシル(-[18F]F
MAU)などの多様な実験的低分子量PCa画像化剤が現在臨床的に追求されている(非特許文献
1; 非特許文献2; 非特許文献3; 非特許文献4; 非特許文献5; 非特許文献6; 非特許
文献7; 非特許文献8)。それぞれは、異なる機構で機能し、特定の利点、例えば[11C]コ
リンについては低尿排出、および陽電子放射性放射線核種の短い物理的半減期などの欠点
を有する。
【0004】
腫瘍は、それらの悪性表現型に関連する特有のタンパク質を発現し得るか、または正常
細胞よりも多くの正常構成タンパク質を過剰発現し得ることがよく知られている。腫瘍細
胞の表面上の異なるタンパク質の発現は、腫瘍の表現型的同定および生化学的組成および
活性を探査することにより疾患を診断および特徴付けるための機会を提供する。特定の腫
瘍細胞表面タンパク質に選択的に結合する放射性分子は、非侵襲性症状にある腫瘍の画像
化および治療のための魅力的な経路を提供する。低分子量画像化剤の有望な新規のシリー
ズは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的化する(非特許文献9;非特許文献10; 非特許
文献11; 非特許文献12; 特許文献1)。
【0005】
PSMAは、PCa、特にアンドロゲン独立型進行性かつ転移性疾患の表面上で豊富で限定的
な発現を有する膜貫通750アミノ酸II型糖タンパク質である(非特許文献13)。ほとんど
全てのPCaは、経時的にアンドロゲン独立型になるので、後者(latter)が重要である。PSM
Aは、治療のための有望な標的の基準、すなわち疾患の全ての病期において豊富で(前立腺
に)限定的な発現を有し、循環へは流されず細胞表面での提示および酵素またはシグナル
伝達の活性との関連を有する(非特許文献13)。PSMA遺伝子は、第11染色体の短腕に局在
し、葉酸ヒドロラーゼおよびニューロペプチダーゼの両方として機能する。該遺伝子は、
グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)と同等のニューロペプチダーゼ機能を有
し、「脳PSMA」と称され、N-アセチルアスパルチルグルタミネート(NAAG)をN-アセチルア
スパルテート(NAA)とグルタミン酸に分解することによりグルタミン酸(glutamatergic)転
移を調節し得る(非特許文献14)。1癌細胞当たり106個までのPSMA分子が存在し、放射性
核種に基づく技術を用いた画像化および治療のための理想的な標的としてさらに示唆され
る(非特許文献15)。
【0006】
抗PSMAモノクローナル抗体(mAb)7E11の放射性免疫コンジュゲート(PROSTASCINT(登録商
標)スキャンとして公知)は現在、前立腺癌の転移および再発を診断するために使用される
。しかしながら、この薬剤は、解釈が困難な画像を生じる傾向がある(非特許文献16;
非特許文献17; 非特許文献18)。より最近では、PMSAの細胞外ドメインに結合するモ
ノクローナル抗体が開発されており、該抗体は放射線標識され、動物においてPMSA陽性前
立腺腫瘍モデルに蓄積することが示されている。しかしながら、モノクローナル抗体を使
用した診断および腫瘍検出は、モノクローナル抗体の固形腫瘍中への低い浸透性のために
制限されている。
【0007】
画像化目的または治療目的のいずれかの放射性医薬品を用いた癌細胞の選択的な標的化
は困難である。111In、90Y、68Ga、177Lu、99mTc、123Iおよび131Iなどの種々の放射性核
種は、放射性画像化または癌放射線療法に有用であることが知られている。近年、放射線
核種リガンドコンジュゲートに結合したグルタミン酸-尿素-グルタミン酸(GUG)またはグ
ルタミン酸-尿素-リシン(GUL)認識因子を含むいくつかの化合物は、PSMAに対して高い親
和性を発揮することが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
【文献】Scher, B.; et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2007, 34, 45-53
【文献】Rinnab, L.; et al. BJU Int 2007, 100, 786,793
【文献】Reske, S.N.; et al. J Nucl Med 2006, 47, 1249-1254
【文献】Zophel, K.; Kotzerke, J. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2004, 31,756-759
【文献】Vees, H.; et al. BJU Int 2007, 99, 1415-1420
【文献】Larson, S. M.; et al. J Nucl Med 2004, 45, 366-373
【文献】Schuster, D.M.; et al. J Nucl Med 2007, 48, 56-63
【文献】Tehrani, O.S.; et al. J Nucl Med 2007, 48, 1436-1441
【文献】Mease R.C. et al. Clin Cancer Res. 2008, 14, 3036-3043
【文献】Foss, C.A.; et al. Clin Cancer Res 2005, 11, 4022-4028
【文献】Pomper, M.G.; et al. Mol Imaging 2002, 1, 96-101
【文献】Zhou, J.; etr al. Nat Rev Drug Discov 2005, 4, 1015-1026
【文献】Schulke, N.; et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2003, 100, 12590-12595
【文献】Nan, F.; et al. J Med Chem 2000, 43, 772-774
【文献】Tasch, J.; et al. Crit Rev Immunol 2001, 21, 249-261
【文献】Lange, P.H. PROSTASCINT scan for staging prostate cancer. Urology2001, 57, 402-406
【文献】Haseman, M.K.; et al. Cancer Biother Radiopharm 2000, 15, 131-140
【文献】Rosenthal, S.A.; et al. Tech Urol 2001, 7, 27-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前立腺癌への迅速な可視化および特異的な標的化を可能にして放射線療法を提示する新
規の薬剤が必要である。
【0011】
したがって、本発明の課題は、PSMAと相互作用し、前立腺癌の検出、治療および管理の
ための有望で新規の標的化の選択肢を提供する適切な放射性核種を有するリガンドを開発
することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
特許請求の範囲において特徴付けられる態様を提供することにより、前記の課題の解決
は達成される。
【0013】
発明者らは、有用な放射性医薬品である新規の化合物、および前立腺癌の種々の病期の
治療のための核医学におけるトレーサー、画像化剤としてのそれらの使用を発見した。
【0014】
リンカー領域に構造的修飾を有する新規の画像化剤は、腫瘍標的化特性および薬物動態
学を向上させた。ファーマコフォア(pharmacophore)は、PSMAのそれぞれの側鎖と相互作
用し得る3つのカルボキシル基および活性中心内の亜鉛複合体(complex)の一部としての1
つの酸素を提示する。これらの強制的な(obligatory)相互作用の他に、発明者らは、リン
カー領域における脂肪親和性の相互作用を最適化し得た。
【0015】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕式(Ia)または(Ib):
【化A-1】
、式中
【表A-1】
の化合物、
〔2〕R'-リンカー-R構造を有する化合物であり、ここでR'=
-DOTAであり、R=
-Glu-尿素-L
ys:
【化A-2】
であり、
式中、
R'-リンカー-Rは、
【化A-3】
【化A-4】
【化A-5】
から選択される、〔1〕記載の化合物、
〔3〕以下:
【化A-6】
【化A-7】
【化A-8】
【化A-9】
【化A-10】
から選択される、〔1〕または〔2〕記載の化合物、
〔4〕放射線標識化合物の調製のための〔1〕~〔3〕いずれか記載の化合物の使用、
〔5〕放射線核種および〔1〕~〔3〕いずれか記載の化合物を含む、金属複合体、
〔6〕放射線核種が、
111In、
90Y、
68Ga、
177Lu、
99mTc、
64Cu、
153Gd、
155Gd、
157Gd、
2
13Bi、
225AcまたはFeである、〔5〕記載の金属複合体、
〔7〕〔1〕~〔3〕いずれか記載の化合物、または〔5〕または〔6〕記載の金属複合
体、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステル、および薬学的に許容され得る
担体を含む、医薬組成物、
〔8〕患者における画像化方法における使用のための、〔1〕~〔3〕いずれか記載の化
合物または〔5〕または〔6〕記載の金属複合体、
〔9〕前立腺癌および/またはその転移の診断方法における使用のための、〔1〕~〔3
〕いずれか記載の化合物または〔5〕または〔6〕記載の金属複合体、
〔10〕前立腺癌および/またはその転移の治療方法における使用のための、〔1〕~〔
3〕いずれか記載の化合物または〔5〕または〔6〕記載の金属複合体
に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、前立腺特異的膜抗原(PSMA)の標識インヒビター、前立腺癌の治療のため
の画像化剤および薬剤としてのその使用が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1:MB17のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体(Whole-body)冠状(coronal)microPET画像。[
68Ga]MB17の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を、動的microPETスキャンにより評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。グラフAは、腎臓および膀胱(baldder)のそれぞれの時間-活性曲線を示し、グラフBは、心臓、筋肉および腫瘍のそれぞれの時間-活性曲線を示す。値は平均SUV(標準化取り込み値)で表す。
【
図2】
図2:注射1時間後の臓器分布。0.06nmolの
68Ga標識PSMAインヒビターMB17の注射1時間後の臓器分布。2mg/体重kgの2-PMPAの共投与によるPSMAブロッキングにより、腫瘍および腎臓におけるPMSA特異的取り込みが示される。データは、平均% ID/g組織±SDで表す(n=3)。
【
図3】
図3:MB4のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB4腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を、動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。グラフAは、腎臓および膀胱のそれぞれの時間-活性曲線を示し、グラフBは、心臓、筋肉および腫瘍のそれぞれの時間-活性曲線を示す。値は、平均SUV(標準化取り込み値)で表す。
【
図4】
図4:0.06nmolの
177Lu-標識MB17の注射24時間後の% ID/組織g±SD(n=5)で表す臓器分布。
177Luを用いた臓器分布により、高い初期の腎臓取り込みは24時間後にはほぼ完全に消失する(2.13±1.36% ID/g)が、腫瘍取り込みは高いままでありさらに増加した(10.58±4.50% ID/g)ことが示される。肝臓(0.08±0.03% ID/g)、肺(0.11±0.13% ID/g)および脾臓(0.13±0.05% ID/g)などの他の臓器は非常に低い取り込みを示した。好適な薬物動態学は、24時間後に非常に高い腫瘍 対 バックグラウンド比(腫瘍/血液:1058;腫瘍/筋肉;529)をもたらした。
【
図5】
図5:MB2のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB2の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図6】
図6:MB3のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB3の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図7】
図7:MB10のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB10の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図8】
図8:MB17.DのPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB17.Dの腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15 MBqを注射した。MB17D:MB17(L)の立体異性体: Fmoc-3(2-ナフチル)-D-アラニンに基づいて合成。
【
図9】
図9:MB22のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB22の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図10】
図10:MB24のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB 24の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図11】
図11:MB25のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB25の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図12】
図12:MB31のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB31の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図13】
図13:MB33のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB33の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図14】
図14:MB35のPET画像化。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。[
68Ga]MB35の腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を動的microPETスキャンで評価した。マウス1匹当たり約15MBqを注射した。
【
図15】
図15:
68Ga-CHX-DTPAを注射したマウスのPETスキャン。左尾部、中心背側および右側方図。写真は、20~40分(上段)、40~60分(中段)および120~140分(下段)の時間経過をカバーする。
【
図16】
図16:MB-17 対 MB-17.D。LNCaP腫瘍異種移植片を有する無胸腺雄ヌードマウスの全体冠状microPET画像。立体異性体MB-17およびMB-17Dの腫瘍標的化効率および薬物動態学特性を注射の2時間後に直接比較した。
【
図17a】
図17:ヒトPET/CT画像化
68Ga-標識MB17。(a)
68Ga-標識MB17 PET/CTを用いた第1の臨床実験は、主に高放射線トレーサーの取り込みによる注射1時間後の小リンパ節転移の検出を示す。赤色の矢印は、注射の1時間後の36.5のSUVmaxを有する代表的な病変および52.1の腫瘍 対 バックグラウンド比を示す。MIP=注射1時間後のPETの最大強度放射。
【
図17b】(b)
68Ga-標識MB17 PET/CTの有意な利点は、低いPSAレベルであっても感度の高い病変の検出である。
【
図18】
図18:複数の前立腺癌転移を有する患者のPET画像化。(a)第1のスキャンは、14の血液PSA値を有する複数の前立腺癌転移を有する患者の初期のPET画像化を示す。2か月後、3.3GBqの
177Lu-標識MB17を適用した。この時点で血中のPSAの量は、38の値に達した。第1サイクル後、PSAレベルは8に低下した。第1サイクルの3か月後、さらに4GBqの
1
77Lu-標識MB17を適用した。第2サイクルの1か月後に対照PETスキャンを行った。該治療は腫瘍病変およびPSA値に有意な影響を示し、骨の痛みの減少をもたらした。(b)グラフは、治療用量の
177Lu-標識MB17の第1の適用後に減少したPSA値に対する有意な影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、前立腺癌の種々の病期の治療のための放射性医薬品、およびトレーサー、画
像化剤としての核医学におけるその使用に関する。
【0019】
したがって、本発明は、一般式(Ia)または(Ib):
【化1】
で表され、式中
【表1】
である化合物に関する。
【0020】
そうではないと記載されなければ、本発明において、「アルキル」基(好ましくは、C1
~C10)は、直鎖または分岐、非置換または置換であり得る。好ましいアルキル基は、メチ
ル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンタニル、n-ヘ
キサニルである。好ましくは3~10個の炭素原子を有する対応するシクロアルキル化合物
にも同じことが適用される。
【0021】
「アリール」は、6~14個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を有する芳香族単
環式または多環式環系をいう。該アリール基は、適切に、アルキル基などの1または複数
の環置換基で置換され得る。好ましいアリール基は、フェニル、ベンジルまたはナフチル
である。
【0022】
Z基は-CO2Hであることが好ましいが、-SO2H、-SO3H、-SO4H、-PO2H、-PO3H、-PO4H2な
どの生体立体(biosteric)置換基で容易に置換され得る、例えば「The Practice ofMedic
inalChemistry」(Academic Press New York, 1996)、203頁参照。
【0023】
発明の意味において、基の定義においてそうではないと記載されなければ、全ての基は
組合せ可能とみなされる。それらの全ての考えられ得る下位群が開示されるとみなされる
。
【0024】
好ましい態様において、新生物細胞の細胞膜に特異的に結合するモチーフは、癌性細胞
の細胞膜に特異的に結合するモチーフであり、ここで好ましくは、前記モチーフは、前立
腺特異的膜抗原(PSMA)を含み、特に、前記PSMAは、スキーム1における以下の式に従った
グルタミン酸-尿素-リシンモチーフを含む。
【0025】
したがって、本発明の好ましい分子は、3つの主要な構成要素(スキーム1):親水性PSMA
結合モチーフ(Glu-尿素-Lys;=Glu-NH-CO-NH-Lys)、可変リンカーおよび好ましくはDOTA
であるキレート剤からなる。
【0026】
スキーム1:本発明の好ましい化合物の構造
【化2】
【0027】
異なる好ましいリンカーを以下に示し、上述のように、式中、R=
-Glu-尿素-Lysであり
、
R'=
-DOTA(キレート剤についての好ましい例として)である。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0028】
本発明の好ましい化合物は例えば、
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
である。
【0029】
該発明はまた、一般式(Ia)および/または(Ib)の化合物の薬学的に許容され得る塩に関
する。該発明はまた、該化合物の塩および活性代謝物を含む、該化合物の溶媒和物、なら
びに適切な場合、プロドラッグ製剤を含む一般式(Ia)および/または(Ib)の化合物の互変
異性体に関する。
【0030】
「薬学的に許容され得る塩」は、該発明の化合物の薬学的に許容され得る有機または無
機の酸または塩基の塩である。代表的な薬学的に許容され得る塩としては、例えばアルカ
リ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニア塩、水溶性および水不溶性の塩、例えば酢酸塩、
炭酸塩、塩化物、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩ま
たは酒石酸塩が挙げられる。
【0031】
用語「プロドラッグ」は、患者への投与時に代謝プロセスによる化学的変換を受け、そ
の後活性医薬剤になるはずの化合物である薬物の前駆体をいう。式(Ia)および/または(Ib
)の化合物の例示的なプロドラッグは、エステルおよびアミド、好ましくは脂肪酸エステ
ルのアルキルエステルである。ここで、プロドラッグ製剤は、酵素的、代謝的または任意
の他の様式のいずれかでの加水分解、酸化または還元を含む単純な変換により形成される
全ての物質を含む。適切なプロドラッグは、例えば酵素分解可能リンカー(例えば、カル
バメート、ホスフェート、N-グリコシドまたはジスルフィド基)を介して溶解向上物質(例
えば、テトラエチレングリコール、多糖類、蟻酸またはグルクロン酸等)に結合した一般
式(Ia)および/または(Ib)の物質を含む。該発明の化合物のかかるプロドラッグは患者に
適用することができ、このプロドラッグは、所望の医薬効果が得られるような一般式(Ia)
および/または(Ib)の物質に変換され得る。
【0032】
式(Ia)および/または(Ib)のいくつかの化合物は、ラセミ化合物、それらのエナンチオ
マーおよび任意にそれらのジアステレオマーの形態、ならびにそれらの全ての可能な混合
物の形態で包含される。
【0033】
該発明によると、全てのキラルC原子は、D-および/またはL-配位を有し、また1つの化
合物の中での組合せも可能であり、すなわちキラルC原子のいくつかは、D配位であっても
よく、その他はL配位であってもよい。
【0034】
得られる化合物は、それらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーにおいて
、任意に公知の方法により分離され得る(例えば、Allinger, N.L. und Elliel E.L. in"
Topicsin Stereochemistry“ Vol. 6, Wiley Interscience, 1971)。エナンチオマー分
離の1つの可能な方法は、クロマトグラフィーの使用である。
【0035】
該発明はまた、治療有効量の有効成分(該発明の式(Ia)または(Ib)の化合物)と一緒に、
意図される投与に適しており、かつ障害を起こすことなく有効成分と相互作用する有機ま
たは無機の固体または液体性の薬学的に許容され得る担体を含む医薬製剤に関する。
【0036】
句「薬学的に許容され得る」は、本明細書において、信頼できる医学的判断の範囲内で
、過度な毒性、刺激性、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なく、妥当な利
益/リスク比と釣り合って、患者の組織と接触させた使用に適切な化合物、物質、組成物
および/または剤型を指すように使用される。
【0037】
「患者」としては、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ネコまたはイヌなどの動物が挙げられる
。該動物は、非霊長類および霊長類(例えばサルおよびヒト)などの哺乳動物であり得る。
一態様において、患者はヒトである。
【0038】
一般に、式(Ia)または(Ib)の化合物またはその医薬組成物は、経口的に、または非経口
経路、通常注射または注入により投与され得る。
【0039】
「非経口投与経路」は、経腸および局所投与以外の通常注射による投与の形態を意味し
、限定されることなく、静脈内、筋内、動脈内、鞘内、嚢内、眼内、心臓内、皮内、腹腔
内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射およ
び注入が挙げられる。
【0040】
該発明による化合物の用量は、年齢、体重、性別、疾患の重症度などの患者特異的パラ
メーターに基づいて医師により決定される。該用量は、好ましくは0.00001mg/体重kg~10
0mg/体重kg、好ましくは0.001~50mg/体重kg、最も好ましくは0.01~10mg/体重kgである
。
【0041】
投与の種類に対応して、医薬は、例えば、一般的な生薬(galenic)法に従って調製され
る溶液または懸濁液、単純な錠剤またはドラジェ、硬質または軟質のゼラチンカプセル、
坐剤、卵(ovules)、注射用製剤の形態で適切に製剤化される。
【0042】
該発明の化合物は、適切な場合、さらなる活性物質、ならびに医薬組成物に共通の賦形
剤および担体と一緒に製剤化され得、例えば製造される製剤に応じて、タルク、アラビア
ゴム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ココアバター、水性および非
水性の担体、動物または植物起源の脂肪体、パラフィン誘導体、グリコール(特に、ポリ
エチレングリコール)、種々の可塑剤、分散剤または乳化剤、薬学的に適合性の気体(例え
ば、空気、酸素、二酸化炭素等)、保存剤と一緒に製剤化され得る。
【0043】
液体製剤を製造するために、塩化ナトリウム溶液、エタノール、ソルビトール、グリセ
リン、オリーブ油、ラッカセイ油、プロピレングリコールまたはエチレングリコールなど
の添加剤を使用し得る。
【0044】
注入または注射用の溶液を使用する場合、該溶液は、好ましくは水溶液または懸濁液で
あり、例えば有効成分そのものまたはマンニトール、ラクトース、グルコース、アルブミ
ン等の担体を一緒に含む凍結乾燥製剤から使用前に製造することが可能である。既成の溶
液は滅菌され、適切な場合、賦形剤、例えば保存剤、安定化剤、乳化剤、可溶化剤、緩衝
剤および/または浸透圧を調節するための塩と混合される。滅菌は、適切な場合、組成物
が凍結乾燥され得る小口径のフィルターを使用して、濾過滅菌により得られ得る。滅菌の
維持を確実にするために、少量の抗生物質も添加され得る。
【0045】
句「有効量」または「治療有効量」は、本明細書で使用する場合、任意の医学的治療に
適用可能な妥当な利益/リスク比で動物中の細胞の少なくとも下位集団においていくつか
の望ましい治療効果を生じるのに有効な該発明の化合物または他の有効成分を含む、化合
物、物質または組成物の量を意味する。該発明の化合物に関する治療有効量は、疾患の予
防の治療において治療利益をもたらす治療剤単独または他の治療剤と組み合わせた量を意
味する。該発明の化合物に関して使用する場合、該用語は、全体的な治療を向上するか、
疾患の症状もしくは原因を低減もしくは回避するか、または別の治療剤の治療有効性もし
くは相乗効果を高める量を包含し得る。
【0046】
本明細書使用する場合、用語「治療する」または「治療」は、診断、予防(prophylaxis
)、予防(prevention)、治療(therapy)および治療(cure)も含むことを意図する。
【0047】
用語「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」および「予防(prevention
)」は、予防剤または治療剤の投与によって生じる、患者における疾患の開始、再発また
は拡散の予防をいう。
【0048】
該発明の式(Ia)および/または(Ib)の化合物を放射性画像化剤として使用するかまたは
放射性医薬品として使用するかに応じて、異なる放射性核種をキレート剤と複合体化する
。例示的な放射性核種としては、例えば89Zr、44Sc、111In、90Y、66Ga、67Ga、68Ga、17
7Lu、99mTc、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、153Gd、155Gd、15
7Gd、213Bi、225Ac、230U、223Ra、165ErおよびFeが挙げられる。この発明の一局面によ
ると、放射性核種は111In、90Y、68Ga、64Cu、153Gd、155Gd、213Bi、225Ac、Feまたは17
7Luである。
【0049】
上述のように、式(Ia)または(Ib)の化合物の複合体は、迅速に増殖する細胞、例えばPS
MA発現前立腺癌細胞の治療のための放射性画像化剤または治療剤としての使用に適切であ
る1つ以上の放射性核種を含み得る。本発明によると、該複合体は、「金属複合体」また
は「放射性医薬品」と称される。
【0050】
好ましい画像化方法は、陽電子断層撮影法(PET)または一光子放射コンピューター連動
断層撮影法(SPECT)である。
【0051】
したがって、一態様において、放射性核種および式(Ia)または式(Ib)の化合物、その塩
、溶媒和物、立体異性体または互変異性体、ならびに薬学的に許容され得る担体を含む複
合体を含む医薬組成物が提供される。
【0052】
別の局面によると、インビボ画像化および放射線療法に適した医薬組成物が提供される
。適切な医薬組成物は、元素、すなわち放射性ヨウ素として、または式(Ia)および/また
は(Ib)の化合物の放射性金属キレート複合体のいずれかとして、薬学的に許容され得る放
射性ビヒクルと一緒に画像化に十分な量で放射線核種を有する放射性画像化剤または放射
線療法剤を含み得る。ヒト血清アルブミン;水性バッファ溶液、例えばトリス(ヒドロメ
チル)アミノメタン(およびその塩)、リン酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩等;滅菌生理学的
食塩水;ならびに塩化物塩およびまたは重炭酸塩もしくはカルシウム、カリウム、ナトリ
ウムおよびマグネシウムなどの通常の血漿カチオン(cautions)を含む調整されたイオン溶
液などの放射性ビヒクルは、注射または吸引に適切であるべきである。
【0053】
該放射性ビヒクル中の画像化剤または治療剤の濃度は、満足のいく画像化を提供するの
に十分であるべきである。例えば、水溶液を使用する場合、該用量は、約1.0~100ミリキ
ュリーである。しかしながら、画像化または治療の目的で実際に患者に投与される用量は
、治療を施す医師により決定される。画像化剤または治療剤は、約1時間~10日間患者内
で維持されるように投与されるべきであるが、より長くてもより短くても許容可能である
。そのため、1~10mLの水溶液を含む都合のよいアンプルが調製され得る。
【0054】
画像化は、例えば適切な画像化を提供するのに十分な量の画像化組成物を注射して、断
層撮影機またはγ線カメラなどの適切な画像化またはスキャンの機械によりスキャンする
ことにより、通常の様式で実施され得る。特定の態様において、患者の領域を画像化する
方法は、(i)患者に、診断有効量の放射線核種と複合体化された化合物を投与する工程;
患者の領域をスキャンデバイスに曝す工程;および(ii)患者の領域の画像を得る工程を含
む。特定の態様において、画像化された領域は頭部または胸部である。他の態様において
、式(Ia)および/または(Ib)の化合物および複合体はPSMAタンパク質を標的化する。
【0055】
したがって、いくつかの態様において、脾臓組織、腎臓組織、またはPSMA発現腫瘍組織
などの組織を画像化する方法であって、該組織と、放射線核種および式(Ia)および/また
は式(Ib)の化合物を接触させることにより合成された複合体を接触させることを含む方法
が提供される。
【0056】
患者に投与される、本発明の化合物の量、または金属および式(Ia)および/または(Ib)
の化合物もしくはその塩、溶媒和物、立体異性体または互変異性体の複合体を含む製剤の
量は、実施される画像化、画像化または治療のために標的化される組織の性質、ならびに
放射性医薬品を使用して画像化または治療される患者の体重および病歴など、医師により
常套的に使用される生理学的ないくつかの因子に依存する。
【0057】
したがって、別の局面において、該発明は、患者に、治療有効量の放射性核種と複合体
化した式(Ia)および/または(Ib)の化合物、または該複合体の薬学的に許容され得る塩も
しくは溶媒和物を投与して、細胞増殖性の疾患または障害に苦しむ患者を治療することに
より、患者を治療する方法を提供する。具体的に、この発明の化合物、医薬組成物または
放射性医薬品を使用して治療または画像化される細胞増殖性の疾患または障害は、例えば
、肺、肝臓、腎臓、骨、脳、脊髄、膀胱等における癌、例えば前立腺癌および/または前
立腺癌転移である。
【0058】
本発明の化合物の合成は、実施例の区分で詳細に記載される。合成の概観は、DOTAコン
ジュゲートPSMAインヒビターに関するスキーム2に例示される。しかしながら、当業者は
、例えば、別のキレート剤を使用して反応を改変し得る。したがって、このスキームは、
本発明の化合物をDOTAキレート剤のみに限定するように理解されるべきではない。
【0059】
【0060】
合成された化合物は、RP-HPLC、MSおよび/またはNMRにより化学的に特徴付けられる。
【0061】
リンカー領域に構造的修飾を有する新規のキレート剤コンジュゲート(chelator-conjug
ated)画像化剤は、向上した腫瘍標的化特性および薬物動態学を有する。ファーマコフォ
アは、PSMAのそれぞれの側鎖と相互作用し得る3つのカルボキシル基、および活性中心中
の亜鉛錯体の一部としての酸素を提示する。これらの強制的な(obligatory)相互作用の他
に、発明者らは、リンカー領域における脂肪親和性の相互作用を最適化し得た。
【0062】
前臨床評価は、インビトロアッセイ(親和性、内在化(internalization))およびインビ
ボ実験(μPETスクリーニングおよび臓器分布)を含む。
【0063】
本発明の化合物は、腎臓クリアランスおよび腫瘍中の富化に関して公知の参照化合物よ
りも優れる。本発明のPSMAインヒビターの結合親和性はリンカー修飾により影響を受け得
る。物質のリンカー領域中の2つの環状動因(motives)および少なくとも1つの芳香族部分
は、好ましく、かつ高親和性化合物MB4およびMB17中をもたらすと思われる。このことに
関して、非常に有望な化合物はMB17である。
【0064】
したがって、本発明の化合物は、臓器分布および小動物PET画像化によっても確認され
た最適な特徴を有する新規のPSMA標的プローブを提示する。本発明の化合物は高いPSMA特
異的腫瘍取り込みを示す。また、それらは、膀胱における初期の富化およびまた腎臓にお
ける最大取り込みを特徴とする。治療的使用に関して、このことは、他のPSMAインヒビタ
ーと比較して、本発明の化合物についての明確な臨床的な利点を与える。PET模式図にお
いて、本発明の化合物、特にMB17は、2時間後に迅速なバックグラウンドクリアランスお
よび腎臓における富化の実質的な減少を示すが、該化合物はPSMA発現腫瘍中にさらに蓄積
して残る。また、MB17を用いた第1のインビボ治療は有望なデータを示した(
図17および18
参照)。
【0065】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するが、いかなる場合においても本発明を例
示された態様のみに限定することを意図しない。
【実施例】
【0066】
実施例
実施例1:DOTAコンジュゲートインヒビターの合成
DOTAコンジュゲートPSMAインヒビターは、固相ペプチド合成を介して合成する(スキー
ム2参照)。第1の工程において、3mmolのビス(tert-ブチル)-L-グルタミン酸塩酸塩および
3mLのN-エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)の200mL 乾燥CH2Cl2中の混合物を、1mmolト
リホスゲンの10mL 乾燥CH2Cl2の溶液に、5℃で3時間かけて添加して、グルタミル部分の
イソシアネートをインサイチュで生成した。反応後、0.5mmolの樹脂固定(2-クロロ-トリ
チルレジン)ε-アリルオキシカルボニル保護リシンを添加して緩やかに撹拌しながら16時
間反応させた。樹脂をろ過して除き、4mL CH2Cl2中50mgテトラキス-(トリフェニル)パラ
ジウムおよび400μLモルホリンを使用して2時間かけてアリルオキシ保護基を除去した。
【0067】
ペプチド模倣PSMA結合モチーフのその後の合成は標準的なFmocプロトコルに従って行っ
た。以下のリンカー部のカップリングは、最終容量4mL DMF中2mmolの対応Fmoc保護酸、3.
96mmolのHBTUおよび2mmolのN-エチル-ジイソプロピルアミンを使用して行った。3.95当量
のHBTUおよびDIPEAを用いた2時間の活性化後、樹脂負荷に対して4当量のトリス(t-bu)-DO
TA(Chematech)を最終容量の3mL DMFで反応させた。トリフルオロ酢酸、トリイソプロピ
ルシランおよび水(95:2.5:2.5)からなる2mL混合物中で樹脂から生成物を切断した。
【0068】
HBTU活性化DOTA-NHSエステル(CheMatech)またはDOTA-TFPエステルを使用してキレート
剤もコンジュゲートさせた(Mier W., Hoffend J., Kraemer S., Schuhmacher J., Hull W
.E., Eisenhut M., Haberkorn U., Bioconjugate Chem. 2005, 16: 237-240).
【0069】
合成した分子の分析は、直線A-B勾配(0% B~100% B、6分)、流速4mL/分(分析)または6m
L/分(精製)により、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC; ChromolithRP-18e, 100
×4.6 mm; Merck, Darmstadt, Germany)を使用して行った。溶媒Aは0.1%水性TFAからなり
、溶媒BはCH3CN中0.1%TFAからなった。HPLC系(L6200 A;Merck-Hitachi, Darmstadt, Ge
rmany)は、UVおよびγ線検出器(Bioscan; Washington, USA)を備えた。UV吸光度は214nm
で測定した。MALDI-MS Daltonics Microflex系(BrukerDaltonics, Bremen, Germany)を
用いて質量分析を行った。
【0070】
実施例2:放射線標識
典型的に、容量100μL中1.5nmolの合成した実施例1の化合物(0.1M HEPESバッファpH7.
5に溶解)を10μL 2.1M HEPES溶液および40μL[68Ga]Ga3+溶離液(40MBq)の混合物に添加し
た。標識溶液のpHを4.5に調整した。
【0071】
化合物の放射線標識により95℃で15分後、>97%の放射線化学収率が得られ、RP-HPLCお
よびTLCで測定した。Sep-Pak C18カートリッジを使用してその後の精製を行った。
【0072】
実施例3:化合物MB4およびMB17の合成
200mLの乾燥CH2Cl2中3mmolのビス(tert-ブチル)L-グルタミン酸塩酸塩および1.5mLのN-
エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)の混合物を10mLの乾燥CH2Cl2中1mmolトリホスゲンの
溶液に0℃で4時間かけて添加して、インサイチュでグルタミル部分のイソシアネートを生
成した。反応混合物を25℃で1時間撹拌後、4mL DCM中0.5mmolの樹脂固定(2-クロロ-トリ
チルレジン)ε-アリルオキシカルボニル保護リジンを添加して、緩やかに撹拌しながら16
時間反応させた。樹脂をろ過して除き、4mL CH2Cl2中30mgテトラキス(トリフェニル)パラ
ジウム(0)および400μLモルホリンを使用してアリルオキシ保護基を3時間かけて除去した
。以下、4-(Fmoc-アミノメチル)安息香酸(MB4の場合)またはFmoc-3-(2-ナフチル)-L-アラ
ニンおよびトランス-4-(Fmoc-アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸(MB17の場合)それ
ぞれの3回のカップリングを、最終容量4mL DMF中2mmolのFmoc保護酸、1.96mmolのHBTUお
よび2mmolのN-エチルジイソプロピルアミンを使用して段階的に行った。3.95当量のHBTU
およびDIPEAでの2時間の活性化後、樹脂負荷に対して4当量のトリス(t-bu)-DOTA(Chemate
ch)を、最終容量3mLDMF中で3時間反応させた。トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシ
ランおよび水(95:2.5:2.5)からなる2mLの混合物中、生成物を樹脂から切断した。RP-HPLC
を用いて精製を行い、精製した生成物を分析用RP-HPLCおよびMALDI-MSを用いて分析した
。
【0073】
MB17(L)の立体異性体であるMB-17Dを調製するために、合成はFmoc-3(2-ナフチル)-D-ア
ラニンに基づいた。そうではないと記載されなければ、この記載においてMB17はL立体異
性体を意味する。
【0074】
実施例4:種々のキレート剤へのカップリング
【化13】
固相合成によりキレート剤(DOTA、NOTA、NODAGA、DTPA、CHX-DTPA、PCTA、Do3A)をMB17
リンカーにカップリングさせた。一般的に、PSMA結合モチーフにカップリングした13μmo
lの樹脂は、フィルターを有するシリンジ中DCMにより膨潤した。樹脂をDMFで5回洗浄後、
DMF中20%のピペリジンで5分間×2回インキュベートしてN末端を脱保護した。DMFでさらに
5回洗浄を続けた。
【0075】
1.5~4当量のキレート剤(キレート剤に依存する)、0.98×nキレート剤HATU(必要な場合
)および10当量のDIPEAを500μlのDMFに溶解し、溶液を、樹脂を含むシリンジに汲み上げ
、一晩インキュベートした。次いで、この樹脂をそれぞれDMF、メタノール、DCMおよびジ
エチルエーテルで5回洗浄し、真空で乾燥させた。
【0076】
反応の状態を調べるために、試験分離を使用した。これは、少量の樹脂をDCMでフィル
ターの先端に洗い流し、95% TFA、2.5%水および2.5%TIPSを含む100μlの分離液を添加し
て達成した。30分のインキュベーション後、溶液を氷冷ジエチルエーテルにピペッティン
グし、遠心分離した。ジエチルエーテルを廃棄し、残ったペレットを35μlのACN:H2O(1:1
)に溶解し、HPLC(水中0~100% ACN、5分以内)およびLC/MSで分析した。
【0077】
所望の生成物を得た場合、樹脂から完全ペプチドを分離した。乾燥樹脂を500μlの分離
溶液(95% TFA、2.5% H2O、2.5% TIPS)で2時間インキュベートした。得られた溶液を氷冷
ジエチルエーテルと混合し、遠心分離した(4000min-1、5分)。上清を廃棄し、新しいジエ
チルエーテルを添加して、容器を激しく振り、ペレットを再懸濁した。再度溶液を遠心分
離(4000min-1、5分)し、得られた上清を廃棄した。次いでペレットを真空乾燥して、最後
に1mlのACN:H2O(1:1)に再懸濁した。
【0078】
精製は、予備的HPLCにより達成し、ピークは分析用HPLC(水中0~100% ACN、5分以内)お
よびLC/MSで分析し、生成物を含むものをプールして凍結乾燥した。
【0079】
実施例5:放射線標識
177Lu標識
177Lu(約100MBq)を、Chelexを含む200μlの0.4M酢酸ナトリウムバッファ(pH=5)と混合
した。10% DMSO水中10μlの1mM化合物溶液、2μlのアスコルビン酸飽和溶液および40μl
の177Lu含有溶液を混合して、95℃に10分間加熱した。放射性HPLC(水中0~100% ACN、5分
以内、Monolithカラム)で標識を調べた。
【0080】
68Ga標識
PETスキャンのために、CHX-DTPAを68Gaで標識した。1mlの68Gaを、0.6M HClを用いて68
Ge/68Ga発生物質から溶出させた。298μl NaOAcバッファおよび1μlのDMSO中10mMのCHX-D
TPA溶液を添加して、5分間インキュベートした。その後、SOLAカートリッジを用いて生成
物を精製した。0.9% NaCl溶液を用いて洗浄を行い、溶出にはエタノールを使用した。次
いでエタノールを蒸発させ、残った生成物を100μlの0.9% NaCl溶液および10μlのリン酸
バッファに溶解した。
【0081】
実施例6:IC50値の測定
フィルタープレートMultiScreenHTS-DVを、1ウェル当たり1% BSAを添加した100μl PBS
と30分間室温でインキュベートした。PBS/BSA溶液を除去後、50μl Opti-MEM中の105LNC
aP細胞を各ウェルに適用した。300μl Opti-MEM中異なる濃度の化合物(各ウェルにおいて
0、0.5、1、2.5、5、10、25、50、100、500、1000および5000nMの濃度を生じる)を、Opti
-MEM中3μl 150nM 125I標識MIP-1466の溶液と混合した。50μlの得られた溶液を各ウェル
に添加し、各濃度をピペッティングで4倍希釈した(in quadruples)。ここで各ウェルは、
0.75nMの濃度の放射活性標識リガンドおよび上述の濃度の標識されていないリガンドであ
る競合物を含んだ。次いでプレートを振盪器上、室温で45分間インキュベートした。
【0082】
インキュベーション後、細胞を2×100μlの氷冷PBSと1×200μlの氷冷PBSで洗浄した。
最終的に、フィルターを回収して残りの放射能をγ線測定器で測定した。それぞれのチュ
ーブは5分間測定した。
【0083】
γ線測定器で測定したデータをGraphpad Prismで評価して、放射能標識されたMIP-1095
に対する阻害濃度50(IC
50)を達成した。
【表2】
【0084】
実施例7:CHX-DTPA-MB17を使用したμPET画像化
マウスへの注射前に、精製した
68Ga-CHX-DTPAカップリングPSMAインヒビターを含む溶
液をろ過滅菌した。100μlのこの溶液をシリンジに吸い上げ、BALB/cヌードマウスLNCaP
異種移植片の尾部静脈に静脈内注射した。Siemens Inveon PETを使用してPETスキャンを1
40分間記録した(
図15)。
【0085】
実施例8:競合結合親和性(competitive binding affinity)の測定
一連の新規の化合物を比較するために、PSMA発現細胞株LNCaPを使用して競合結合親和
性および特異的内在化を分析した。特異的細胞取り込みを測定するために、細胞を2-(ホ
スホノメチル)-ペンタン二酸(PMPA)でブロッキングした。酵素系NAALADaseアッセイによ
り阻害能力も調べた。
【0086】
細胞培養
結合試験およびインビボ実験のために、LNCaP細胞(ヒト前立腺癌の転移性病変、ATCC C
RL-1740)を、10%ウシ胎仔血清およびGlutamax(PAA, Austria)を補充したRPMI培地で培養
した。細胞培養の間、細胞は湿潤空気、5%CO2で平衡化したインキュベーター中37℃で増
殖させた。トリプシン-エチレンジアミン四酢酸(トリプシンEDTA;0.25%トリプシン、0.0
2%EDTA、全てPAA, Austria)を用いて細胞を回収し、PBSで洗浄した。
【0087】
細胞結合および内在化
競合細胞結合アッセイおよび内在化実験を前述(Eder et al. 2012)の通りに行った。簡
潔に、それぞれの細胞(1ウェル当たり105)を放射性リガンド(68Ga標識[Glu-尿素-Lys(Ahx
)]2-HBED-CC(Schaferet al., 2012)と、12の異なる濃度の検体(0~5000nM、100μL/ウェ
ル)の存在下でインキュベートした。インキュベーション後、マルチスクリーン真空マニ
ホールド(Millipore, Billerica, MA)を使用して洗浄を行った。γ線測定器(PackardCob
raII, GMI, Minnesota, USA)を用いて細胞結合放射能を測定した。50%阻害濃度(IC50)は
、非線形回帰アルゴリズム(GraphPad Software)を使用してデータを適合させて計算した
。実験は3回行った。
【0088】
特異的細胞取り込みおよび内在化を測定するために、インキュベーションの24時間前に
105個の細胞をポリ-L-リシンコート24ウェル細胞培養プレートに播種した。洗浄後、細胞
を25nMの放射線標識化合物と、37℃および4℃のそれぞれで45分間インキュベートした。2
-(ホスホノメチル)ペンタン二酸(500μM終濃度、PMPA、Axxora, Loerrach, Germany)での
競合ブロッキングにより特異的細胞取り込みを測定した。1mLの氷冷PBSで4回洗浄して細
胞取り込みを終結させた。続いて、細胞をPBS中0.5mLグリシンHCl(50mM、pH=2.8)、5分間
で2回インキュベートして、表面結合画分を除去した。細胞を1mLの氷冷PBSで洗浄して、0
.3NNaOH(0.5mL)で溶解した。表面結合画分および内在化画分をγ線測定器で測定した。1
06個の細胞に結合した最初に添加した放射能の百分率として細胞取り込みを計算した[%ID
/106細胞]。
【0089】
Naaladaseアッセイ
組み換えヒトPSMA(rhPSMA, R&D systems, Wiesbaden, Germany)をアッセイバッファ(50
mMHEPES、0.1M NaCl、pH 7.5)で0.4μg/mLまで希釈した。基質Ac-Asp-Glu(Sigma, Taufk
irchen,Germany、40μM終濃度)を、natGa標識験体と、最終容量125μLのアッセイバッフ
ァ中0.05nM~1000nMの範囲の濃度で混合した。混合物を125μLのrhPSMA溶液(0.4μg/mL)
と合わせて、37℃で1時間インキュベートした。95℃で5分間加熱して反応を停止した。25
0μLの15mMのオルト-フタルジアルデヒド(Sigma,Taufkirchen, Germany)溶液を全てのバ
イアルに添加して、周囲温度で10分間インキュベートした。最終的に、200μLの反応液を
F16Black Maxisorpプレート(Nunc, Langenselbold, Germany)上に充填して、330nmおよ
び450nmそれぞれの励起および放射の波長で、マイクロプレートリーダー(DTX-880,Beckm
anCoulter, Krefeld, Germany)を使用して読み取りを行った。GraphPad(GraphPad Softw
are,California, USA)の1部位全体(one site-total)結合回帰アルゴリズムによりデータ
を分析した。
【0090】
生体分布
7~8週齢の雄BALB/c nu/nuマウス(Charles River Laboratories)の右側の体幹に5×106
個のLNCaP細胞(50%マトリゲル中;BectonDickinson, Heidelberg, Germany)を皮下接種
した。約1cm3の大きさまで腫瘍を成長させた。放射線標識化合物を尾静脈に注射した(1マ
ウス当たり約1MBq;0.06nmol)。注射の1時間後、動物を屠殺した。目的の臓器を切除して
、吸い取らせて(blotted)乾燥させて計量した。γ線測定器を使用して放射能を測定し、%
ID/gとして計算した。
【0091】
MicroPET
microPET試験について、0.15mlの容量の10~25MBqの放射線標識化合物(約0.5nmol)を、
側方尾静脈から、LNCaP腫瘍異種移植片を有するマウスに注射した。麻酔した動物(2%セボ
フルラン、Abbott, Wiesbaden, Germany)をInveon小動物PETスキャナー(Siemens, Knoxvi
lle,Tenn, USA)にうつむけの姿勢で配置し、動的microPETスキャンおよび20分静的スキ
ャンを行った;
図1、3、5~14参照。
【表3】
【表4】
【0092】
本実施例により、PSMAインヒビターの結合親和性は、リンカー修飾の影響を受け得るこ
とが示される。物質のリンカー領域中の2つの環状動因(motives)および少なくとも1つの
芳香族部分が好ましく、高親和性化合物MB4およびMB17中に生じるものと思われる。これ
らの新規のバリアントは、LNCap細胞株に対して低いナノモルの親和性を示し、37℃で48%
ID/10
6細胞まで特異的に内在化された。前者の試験により、結合親和性に加えて、PSMA標
的化プローブの内在化特性が非常に重要であり、高いインビボ腫瘍取り込みおよび保持に
は高い内在化率が必須であることが示された。したがって、MB17は、臓器分布および小動
物PET画像化によっても確認された最適な特徴を有する新規のPSMA標的化プローブに相当
する。MB17は、高いPSMA特異的腫瘍取り込みを示す(
図2)。また、MB17の動的PET画像化(
図2)は、膀胱における初期富化を示し、また最大腎臓取り込み(時間-活性曲線の最高点)
は、放射性トレーサーの注射の15分後と同程度に早く、かつ20分後には実質的にすでに減
少する。治療的使用に関して、これは、他のPSMAインヒビターと比較して、MB17の明らか
な臨床的利点を示す。PET模式図(
図1)において、MB17は、迅速なバックグラウンドクリア
ランスおよび2時間後の腎臓における富化の実質的な減少を示すが、PSMA発現腫瘍におい
てはさらに蓄積し、維持される。
【0093】
また、
177Luでの臓器分布(
図4)は、高い初期腎臓取り込みは、24時間後にはほぼ完全に
消失する(2.13±1.36% ID/g)が、腫瘍取り込みは高いままでありさらに上昇する(10.58±
4.50%ID/g)ことを示した。肝臓(0.08±0.03% ID/g)、肺(0.11±0.13% ID/g)および脾臓(
0.13±0.05%ID/g)などの他の臓器は、非常に低い取り込みを示した。好ましい薬物動態
は、24時間後に極めて高い腫瘍 対 バックグラウンド比をもたらした(腫瘍/血液:1058;
腫瘍/筋肉:529)。
【0094】
表Aにより、分子のリンカー領域における化学的修飾は、生物学的特性、例えば親和性
および内在化効率に影響を及ぼすことが明確に確認される。MB17およびMB4は、細胞に対
して最も有望な結合特性を示す。
【0095】
実施例9:MB17に関する臨床データ
Ga-68で標識した放射性トレーサーMB17を用いてPET/CT画像化を行った(
図17参照)。
【0096】
放射性医薬製品に使用した68Ge/68Ga発生物質は、IDB-Holland BV (Baarle-Nassau, Th
eNetherlands)から購入した。放射性合成に使用した使い捨てカセットキットおよびGMP-
コンプライアント等級の前駆体を含む化学物質は、ABX advanced biochemical compounds
(Radeberg,Germany)から入手した。Chromolith Performance RP-18eカラム(100x4.6mm
、Merck)およびNaI放射線検出器(Raytest)を備えたUltimate 3000 HPLC系(Dionex)(アセ
トニトリル(A)、水+0.1% TFA(B);勾配:0.5分95% B、10.0分80% A、流速:2mL/分)を使
用して、放射線化学純度を測定した。残りの溶媒は、6850 Seriesガスクロマトグラフ(Ag
ilentTechnologies)を使用して測定した。エンドトキシン試験は、Endosafe(登録商標)-
PTSデバイス(CharlesRiver)を用いて行った。
【0097】
2μgのMB17を1.5M酢酸バッファpH 4.5(1mL)および1Mアスコルビン酸(10μL)に溶解して
、反応容器に移した。68Ge/68Ga発生物質を10mLの0.6M HClおよび9mLの超純水で希釈した
溶離液で溶出した。次いで混合物をカチオン交換カートリッジ (Macherey-Nagel PS-H+,
SizeM)に移して、5M NaCl溶液(1.2mL)を用いて予備加熱した反応容器(100℃)に溶出した
。反応混合物を10分加熱した。次いで粗製反応混合物を反応容器から除去し、予め条件づ
けた(10mL EtOH/10mL超純水)C18カートリッジ(Waters Sep-Pak light)に移した。9mLの超
純水を使用して反応容器をすすぎ、C18カートリッジに通した。C18カートリッジをさらに
5mLの超純水で洗浄した。最終生成物を、2mLのEtOH/H2O(v:v 1:1)でC18カートリッジから
溶出し、濾過滅菌し(Millipore Cathivex-GV、0.22μm)、10mLのリン酸緩衝化食塩水(PBS
)溶液pH7.4(Eur. Ph. 8.0 (4005000)に従う)で希釈した。68Ga-MB17複合体溶液を静脈内
ボーラスで患者に適用した。
【0098】
実施例10:177Lu標識MB17を用いたヒト治療
治療のために、PSMAリガンドMB17をLu-177で放射線標識した。177LuCl3はPerkin Elmer
(4GBq,NEZ307D, 0.04M HCl)から入手した。80nモルのMB17を5μLの20%アスコルビン酸
を補充した400μLの酢酸ナトリウムバッファ(0.4M、pH 5)に溶解した。溶液を177LuCl3に
移し、95℃で10分間インキュベートした。最後に2mLの0.9% NaClを添加した。品質管理の
ためにITLCおよび放射線HPLCを行った。
【0099】
177Lu標識MB17を静脈内ボーラスで患者に適用した(5mL、30秒以内にゆっくり)。注射の
0.5時間前に開始して、4.5時間の0.9% NaClの注入により静脈内適用を達成した。
図18を
参照。