(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20231129BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20231129BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231129BHJP
【FI】
B28C7/04
G01N33/38
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2022135332
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2018085100の分割
【原出願日】2018-04-26
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梶田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文則
(72)【発明者】
【氏名】小原 孝之
(72)【発明者】
【氏名】宮野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 健司
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 友基
(72)【発明者】
【氏名】刈田 祥彦
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142532(JP,A)
【文献】特開平11-114942(JP,A)
【文献】特開平04-014408(JP,A)
【文献】特開昭63-257609(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105046346(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
G01N 33/38
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、水及び骨材を含むコンクリート材料を混練してコンクリートを製造するための
コンクリートの製造方法であって、
前記コンクリート材料の各々について、1バッチ当たりの設計配合量を決定する配合設計ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記設計配合量よりも少量の投入量である1次投入量をミキサに投入する第1混練ステップと、
前記第1混練ステップ中に、前記第1混練ステップ中におけるコンクリートの混練状態に関する情報である第1混練状態情報を取得する第1混練状態情報取得ステップと、
前記第1混練状態情報に基づいて、前記第1混練ステップにおいて混練されたコンクリートの性状に関する情報である第1性状情報を取得する第1性状情報取得ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記第1性状情報に基づいて、前記設計配合量を修正して修正設計配合量を決定する修正設計配合量決定ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記修正設計配合量と前記1次投入量とに基づいて決定される2次投入量を前記ミキサに投入する第2混練ステップと、
を備え、
前記第1性状情報は、スランプ値またはスランプフロー値の少なくとも一方であり、
前記第1性状情報取得ステップでは、前記第1混練状態情報と前記コンクリートの性状に関する情報である性状情報とを関連付けた第1関連付け情報に基づいて、前記第1混練状態情報から前記第1性状情報が取得され、
前記第1関連付け情報は、前記第1混練状態情報と前記性状情報とを学習データとして前記第1混練状態情報と前記性状情報との関係性を学習する機械学習により生成され、
前記第1混練状態情報は、撮影装置により撮影された前記第1混練ステップ中におけるコンクリートの撮影画像と、前記第1混練ステップ中における前記ミキサの電流値又はトルク値と、を含む、
コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記第1混練ステップよりも前に、前記第1混練ステップにて混練される前記コンクリート材料の各々を計量する第1計量ステップと、
前記第1計量ステップ中における前記骨材に関する情報である第1骨材情報を取得する第1骨材情報取得ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記第1骨材情報に基づいて前記1次投入量を修正する1次投入量修正ステップと、をさらに備える請求項1に記載の
コンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記第2混練ステップよりも前に、前記第2混練ステップにて新たに混練される前記コンクリート材料の各々を計量する第2計量ステップと、
前記第2計量ステップ中における前記骨材に関する情報である第2骨材情報を取得する第2骨材情報取得ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記第2骨材情報に基づいて前記2次投入量を修正する2次投入量修正ステップと、をさらに備える請求項1又は2に記載の
コンクリートの製造方法。
【請求項4】
前記骨材に関する情報は、前記骨材の表面水率及び前記骨材の粒度分布の少なくとも一方を含む請求項2又は3に記載の
コンクリートの製造方法。
【請求項5】
前記1次投入量は、前記設計配合量の20%以上80%以下の量である請求項1乃至4の何れか1項に記載の
コンクリートの製造方法。
【請求項6】
前記第2混練ステップ中に、前記第2混練ステップ中におけるコンクリートの混練状態に関する情報である第2混練状態情報を取得する第2混練状態情報取得ステップと、
前記第2混練状態情報に基づいて、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートの性状に関する情報である第2性状情報を取得する第2性状情報取得ステップと、
前記第2性状情報に基づいて、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートの品質を判定する品質判定ステップと、
前記品質判定ステップにて前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートが要求品質を満たさないと判定された場合に、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートに混和材料を添加する混和材料添加ステップと、をさらに備え、
前記第2性状情報は、スランプ値またはスランプフロー値の少なくとも一方であり、
前記第2混練状態情報は、前記撮影装置により撮影された前記第2混練ステップ中におけるコンクリートの撮影画像と、前記第2混練ステップ中における前記ミキサの電流値又はトルク値と、を含む、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の
コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメント、水及び骨材を含むコンクリート材料を混練してコンクリートを製造するためのコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの主な材料は、セメント、水、細骨材及び粗骨材である。また、コンクリートには、強度や耐久性の向上、流動性や凝結速度の調整などを目的として混和材料が混和されることがある。コンクリート(フレッシュコンクリート)は、セメントなどのコンクリート材料をミキサで練り混ぜることにより製造される。そして、製造後に品質検査を行い、製造されたコンクリートが要求品質を満たしているかが確認される。品質検査で確認されるコンクリートの性状としては、硬化後のコンクリートの強度に関する指標である28日材齢強度、コンクリートの流動性に関する指標であるスランプ値、コンクリートの強度、耐久性及び流動性に関する指標である空気量、及び、塩害に対する耐久性に関する指標である塩化物イオン濃度などがある。
【0003】
コンクリートが目的とする要求品質を満たすように、コンクリート材料の配合が決定される。より具体的には、コンクリートの製造工場において予め作成された配合設計モデル(配合設計基準)に基づいて配合計算が行われて、コンクリート材料の各々の1バッチ当たりの配合量である設計配合量が決定される。なお、特許文献1に記載されているように、細骨材の表面水率の実測値などに応じて設計配合量の修正が行われることもある。
【0004】
特許文献1には、砂などの計量中に水分計により砂の表面水率を測定し、測定した表面水率により、当該バッチにおいて計量した砂及び混練水の標準配合値を補正して計量し、計量した材料をミキサに投入することが開示されている。また、特許文献1には、コンクリートを混練するミキサの負荷電力を検出することで、標準配合の混練水量に対する実混練水量を推定し、補正水量を追加投入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法では、1バッチに相当する量のコンクリートが製造されるが、製造されたコンクリートについて品質検査を行い、コンクリートの品質を確認するまでは、コンクリートが要求品質を満たすかが判らないという問題がある。また、品質検査の結果、コンクリートが要求品質を満足しない場合には、製造したコンクリートを廃棄して、再度コンクリートを製造する必要があるので、コンクリートの製造に労力や時間、材料費などの費用がかかる。この際に産業廃棄物であるコンクリートを廃棄するので環境負荷の増加を招く虞がある。また、コンクリートの練り混ぜ中におけるコンクリートの性状を調整することができないので、良好な結果を得るまでにコンクリートの製造を複数回にわたり行う事態も発生する。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能なコンクリートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかるコンクリートの製造方法は、
セメント、水及び骨材を含むコンクリート材料を混練してコンクリートを製造するためのコンクリートの製造方法であって、
前記コンクリート材料の各々について、1バッチ当たりの設計配合量を決定する配合設計ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記設計配合量よりも少量の投入量である1次投入量をミキサに投入する第1混練ステップと、
前記第1混練ステップ中に、前記第1混練ステップ中におけるコンクリートの混練状態に関する情報である第1混練状態情報を取得する第1混練状態情報取得ステップと、
前記第1混練状態情報に基づいて、前記第1混練ステップにおいて混練されたコンクリートの性状に関する情報である第1性状情報を取得する性状情報取得ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記第1性状情報に基づいて、前記設計配合量を修正して修正設計配合量を決定する修正設計配合量決定ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記修正設計配合量と前記1次投入量とに基づいて決定される2次投入量を前記ミキサに投入する第2混練ステップと、を備える。
【0009】
上記(1)の方法によれば、コンクリートの製造方法は、コンクリート材料の各々について、1バッチ当たりの設計配合量を決定する配合設計ステップと、コンクリート材料の各々について、設計配合量よりも少量である1次投入量がミキサに投入される第1混練ステップと、第1混練ステップ中に第1混練状態情報を取得する第1混練状態情報取得ステップと、第1混練状態情報に基づいて第1性状情報を取得する第1性状情報取得ステップと、を備えている。このため、第1混練ステップでは、コンクリート材料の各々について、1バッチに相当する量よりも少ない量(1次投入量)がミキサに投入され、投入されたコンクリート材料はミキサにより混練される。この際、第1混練状態情報取得ステップ及び第1性状情報取得ステップにより、第1混練ステップにおいて混練中のコンクリートの性状に関する情報である第1性状情報を取得可能である。
【0010】
そして、コンクリートの製造方法は、コンクリート材料の各々について、第1性状情報に基づいて設計配合量を修正した修正設計配合量を決定する修正設計配合量決定ステップと、コンクリート材料の各々について、修正設計配合量と1次投入量とに基づいて決定される量(2次投入量)をミキサに投入する第2混練ステップと、をさらに備えている。このため、修正設計配合量決定ステップでは、コンクリート材料の各々について、上述した第1性状情報に基づいて、上述した設計配合量よりも適切な1バッチ当たりの配合量である修正設計配合量を決定することができる。また、第2混練ステップでは、修正設計配合量及び1次投入量に基づいて、ミキサに追加投入されるコンクリート材料の各々の2次投入量が決定される。よって、コンクリートの製造方法は、ミキサに追加投入されるコンクリート材料を適切な量にすることで、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0011】
また、修正設計配合量及び1次投入量に基づいて、ミキサにコンクリート材料を追加投入することで、混練中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、品質検査において良好ではない結果になることを抑制することができ、ひいてはコンクリートの製造にかかる労力や時間、費用を削減することができる。また、混練中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、製造されるコンクリートのバッチ毎の品質のバラツキを抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記第1性状情報取得ステップでは、前記第1混練状態情報と前記コンクリートの性状に関する情報である性状情報とを関連付けた関連付け情報に基づいて、前記第1混練状態情報から前記第1性状情報が取得される。
【0013】
上記(2)の方法によれば、第1混練状態情報と性状情報とを関連付けた関連付け情報は、第1混練状態情報と性状情報との関連性を表す情報である。このため、関連付け情報に基づくことにより、第1混練状態情報から第1性状情報を精度良く取得可能である。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、
前記関連付け情報は、前記第1混練状態情報と前記性状情報とを学習データとする機械学習により生成された。
【0015】
上記(3)の方法によれば、第1混練状態情報と性状情報とを学習データとし、該学習データを蓄積することにより、関連付け情報における第1混練状態情報と性状情報との関連性の精度を向上させることができるので、上述した関連付け情報に基づいて、第1混練状態情報から第1性状情報を精度良く推定可能である。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の方法において、
前記第1混練状態情報は、撮影装置により撮影された前記第1混練ステップにおけるコンクリートの撮影画像を含む。
【0017】
上記(4)の方法によれば、第1混練状態情報には、第1混練ステップにおけるコンクリートの撮影画像が含まれる。ここで、コンクリートの撮影画像は、コンクリートの流動性や強度、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。このため、第1混練状態情報にコンクリートの撮影画像を含むことで、第1混練状態情報から第1性状情報を精度良く取得可能である。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の方法において、
前記第1混練ステップよりも前に、前記第1混練ステップにて混練される前記コンクリート材料の各々を計量する第1計量ステップと、
前記第1計量ステップ中における前記骨材に関する情報である第1骨材情報を取得する第1骨材情報取得ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記第1骨材情報に基づいて前記1次投入量を修正する1次投入量修正ステップと、をさらに備える。
【0019】
上記(5)の方法によれば、第1骨材情報取得ステップにおいて、第1混練ステップよりも前の第1計量ステップ中における骨材に関する情報である第1骨材情報を取得可能である。第1骨材情報は、コンクリートの流動性や強度、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。例えば、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの流動性や空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、骨材(粗骨材)の粒度分布はコンクリートの流動性や強度などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、第1骨材情報は、第1混練ステップに実際に投入される骨材の情報であるので、第1骨材情報に基づいて、第1混練ステップにて投入される量である1次投入量を修正することにより、1次投入量を適切な量にすることができる。よって、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の方法において、
前記第2混練ステップよりも前に、前記第2混練ステップにて新たに混練される前記コンクリート材料の各々を計量する第2計量ステップと、
前記第2計量ステップ中における前記骨材に関する情報である第2骨材情報を取得する第2骨材情報取得ステップと、
前記コンクリート材料の各々について、前記第2骨材情報に基づいて前記2次投入量を修正する2次投入量修正ステップと、をさらに備える。
【0021】
上記(6)の方法によれば、第2骨材情報取得ステップにおいて、第2混練ステップよりも前の第2計量ステップ中における骨材に関する情報である第2骨材情報を取得可能である。第2骨材情報は、第1骨材情報と同様に、コンクリートの流動性や強度、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、第2骨材情報は、第2混練ステップに実際に投入される骨材の情報であるので、第2骨材情報に基づいて、第2混練ステップにて投入される量である2次投入量を修正することにより、2次投入量を適切な量にすることができる。よって、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)の方法において、
前記骨材に関する情報は、前記骨材の表面水率及び前記骨材の粒度分布の少なくとも一方を含む。
上述したように、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの流動性や空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、骨材(粗骨材)の粒度分布はコンクリートの流動性や強度などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。上記(7)の方法によれば、骨材に関する情報として、骨材の表面水率や粒度分布を含むことにより、1次投入量や2次投入量を目的とするコンクリートの性状に対応するような適切な量にすることができるため、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の方法において、
前記1次投入量は、前記設計配合量の20%以上80%以下の量である。
上記(8)の方法によれば、2次投入量は、設計配合量の20~80%程度の量になるので、第2混練ステップでミキサに追加投入される2次投入量のコンクリート材料により、第1混練ステップにおいて混練されたコンクリートの性状を広範囲に調整可能である。よって、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の方法において、
前記第2混練ステップ中に、前記第2混練ステップ中におけるコンクリートの混練状態に関する情報である第2混練状態情報を取得する第2混練状態情報取得ステップと、
前記第2混練状態情報に基づいて、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートの性状に関する情報である第2性状情報を取得する第2性状情報取得ステップと、
前記第2性状情報に基づいて、前記第2混練ステップにおける混練時間を決定する混練時間決定ステップと、をさらに備える。
【0025】
上記(9)の方法によれば、第2混練状態情報取得ステップ及び第2性状情報取得ステップにより、第2混練ステップにおいて混練中のコンクリートの性状に関する情報である第2性状情報を取得可能である。そして、第2性状情報に基づいて、第2混練ステップにおける混練時間を決定することで、該混練時間を要求されるコンクリートの性状に応じた適切な時間にできるので、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0026】
また、第2性状情報に基づいて、第2混練ステップにおける混練時間を決定することで、第2混練ステップ中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、品質検査において良好ではない結果になることを抑制することができ、ひいてはコンクリートの製造にかかる労力や時間、費用を削減することができる。また、第2混練ステップ中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、製造されるコンクリートのバッチ毎の品質のバラツキを抑制することができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の方法において、
前記第2混練ステップ中に、前記第2混練ステップ中におけるコンクリートの混練状態に関する情報である第2混練状態情報を取得する第2混練状態情報取得ステップと、
前記第2混練状態情報に基づいて、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートの性状に関する情報である第2性状情報を取得する第2性状情報取得ステップと、
前記第2性状情報に基づいて、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートの品質を判定する品質判定ステップと、
前記品質判定ステップにて前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートが要求品質を満たさないと判定された場合に、前記第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートに混和材料を添加する混和材料添加ステップと、をさらに備える。
【0028】
上記(10)の方法によれば、品質判定ステップでは、第2性状情報に基づいて、第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートが要求品質を満たすかを判定することができる。また、混和材料添加ステップでは、品質判定ステップにおいて第2混練ステップにおいて混練されたコンクリートが要求品質を満たさないと判定された場合に、該コンクリートが要求品質を満たすように混和材料を添加することで、第2混練ステップ中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。また、第2混練ステップ中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、品質検査において良好ではない結果になることを抑制することができ、ひいてはコンクリートの製造にかかる労力や時間、費用を削減することができる。また、第2混練ステップ中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、製造されるコンクリートのバッチ毎の品質のバラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能なコンクリートの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法を実施するための製造システムの構成を概略的に示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法を実施するための製造システムの電気的構成の一例を概略的に示す概略ブロック図である。
【
図4】本発明にかかるコンクリートの製造方法の各ステップにおけるデータの流れを説明するための説明図であって、
図4(a)は、配合設計ステップにおけるデータの流れを示す図であり、
図4(b)は、第1混練ステップにおけるデータの流れを示す図である。
【
図5】本発明にかかるコンクリートの製造方法の各ステップにおけるデータの流れを説明するための説明図であって、
図5(a)は、性状情報取得ステップにおけるデータの流れを示す図であり、
図5(b)は、修正設計配合量決定ステップにおけるデータの流れを示す図であり、
図5(c)は、第2混練ステップにおけるデータの流れを示す図である。
【
図6】本発明にかかるコンクリートの製造方法における性状情報取得ステップを説明するためのグラフであって、混練状態情報と性状情報との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、第1計量ステップや1次投入量修正ステップなどを備えるフロー図である。
【
図8】本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、第2計量ステップや2次投入量修正ステップなどを備えるフロー図である。
【
図9】本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、混練時間決定ステップなどを備えるフロー図である。
【
図10】本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、品質判定ステップなどを備えるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図である。
図1に示されるように、コンクリートの製造方法100は、セメント、水、粗骨材(骨材)及び細骨材(骨材)を含むコンクリート材料を混練してコンクリートを製造するための方法であって、配合設計ステップS101と、第1混練ステップS102と、第1混練状態情報取得ステップS103と、第1性状情報取得ステップS104と、修正設計配合量決定ステップS105と、第2混練ステップS106と、を備えている。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法を実施するための製造システムの構成を概略的に示す概略構成図である。
図3は、本発明の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法を実施するための製造システムの電気的構成の一例を概略的に示す概略ブロック図である。
図2に示されるように、コンクリートの製造システム1は、ミキサ5を含むコンクリート製造装置2を備えている。コンクリート製造装置2は、
図2に示されるように、コンクリート材料を貯蔵可能な貯蔵容器3(貯蔵ビン)と、貯蔵容器3から送られたコンクリート材料を計量可能な計量器4(計量ビン)と、計量器4から送られたコンクリート材料を混練可能なミキサ5と、を備えている。計量器4は、開閉可能な開閉弁などを有しており、ミキサ5に投入されるコンクリート材料の量である投入量を調整可能に構成されている。
【0034】
図2に示されるように、コンクリート製造装置2は、コンクリート材料の種類ごとに異なる複数の貯蔵容器3及び計量器4を備えている。貯蔵容器3は、セメントを貯蔵可能なセメント貯蔵容器31と、水を貯蔵可能な水貯蔵容器32と、粗骨材を貯蔵可能な粗骨材貯蔵容器33と、細骨材を貯蔵可能な細骨材貯蔵容器34と、を含んでいる。また、計量器4は、セメントを計量可能なセメント計量器41と、水を計量可能な水計量器42と、粗骨材を計量可能な粗骨材計量器43と、細骨材を計量可能な細骨材計量器44と、を含んでいる。なお、コンクリート製造装置2は、コンクリート材料の各々の種類ごと(例えばセメントの種類ごと)に異なる複数の貯蔵容器3及び計量器4を備えていてもよい。また、計量器4は、粗骨材計量器43と細骨材計量器44の代わりに、粗骨材と細骨材が混合された骨材を貯蔵可能であり、且つ、骨材の投入量を調整可能な骨材計量器を含んでいてもよい。
【0035】
ミキサ5(コンクリートミキサ)は、
図2に示されるように、撹拌軸51と、撹拌軸51の径方向外側に設けられてコンクリートを撹拌する撹拌羽根52と、撹拌軸51を回転駆動させる電動モータを含む駆動源53と、を含んでいる。
【0036】
図2に示されるように、コンクリート材料の各々は、貯蔵容器3から計量器4に送られて計量される。そして、計量器4により計量されたコンクリート材料の各々が、ミキサ5に投入されて撹拌羽根52により混練されることで、コンクリートが製造される。製造されたコンクリートは、コンクリートの性状を確認するための性状試験(品質検査)が行われて、要求品質を満たすかが確認される。
【0037】
コンクリートの製造システム1は、
図2に示されるように、ミキサ5により混練中のコンクリートの混練状態に関する情報である混練状態情報(混練状態情報IK、第2混練状態情報IK2)を取得可能な混練状態情報取得装置6と、コンクリート材料に関する情報である材料情報IMを取得可能な材料情報取得装置7と、コンクリート製造装置2を制御可能な第1情報処理装置8と、第2情報処理装置9と、をさらに備えている。
図3に示されるように、第1情報処理装置8は、コンクリート製造装置2、混練状態情報取得装置6、材料情報取得装置7及び第2情報処理装置9に電気的に接続されている。電気的に接続されているとは、有線による物理的な接続だけでなく、無線により通信を含んでおり、接続された装置間における信号やデータなどの送受信が可能に構成されていることをいう。
【0038】
第1情報処理装置8は、
図3に示されるように、入出力装置81(入出力インターフェース、通信装置)、記憶装置82(ROM、RAM)、表示装置83(ディスプレイ)、演算装置84を含むマイクロコンピュータから構成されているが、一般的な構成および制御については適宜割愛することとする。第1情報処理装置8の入出力装置81、記憶装置82、表示装置83及び演算装置84のそれぞれは、バス80に電気的に接続されている。
【0039】
第1情報処理装置8の入出力装置81は、コンクリートの製造システム1において用いられる各構成要素(ミキサ5など)からの各種情報が入力され、且つ、演算結果などに基づく各種情報を上述した各構成要素に出力する。また、入出力装置81は、キーボードやマウス、無線通信装置などを含んでいる。記憶装置82は、入力された各種情報や制御実施のために必要な各種プログラムや演算結果などを記憶可能に構成されている。演算装置84は、上述した各種情報に基づいて演算処理を行う。表示装置83は、入力された各種情報や上述した演算装置84による演算結果などの情報を表示する。
【0040】
第1情報処理装置8は、配合量決定装置86と、性状情報推定装置87と、関連付け情報作成装置88と、画像処理装置89と、をさらに備えている。配合量決定装置86、性状情報推定装置87、関連付け情報作成装置88及び画像処理装置89は、バス80に電気的に接続されている。なお、配合量決定装置86、性状情報推定装置87、関連付け情報作成装置88及び画像処理装置89の各々は、記憶装置82に記憶されて演算装置84により動作するプログラムであってもよい。
【0041】
また、第2情報処理装置9(データサーバ)は、第1情報処理装置8と同様に、記憶装置91、不図示の入出力装置及び不図示の演算装置を含むマイクロコンピュータから構成されているが、一般的な構成および制御については適宜割愛することとする。第2情報処理装置9には、
図3に示されるように、目標品質TQ、配合情報IF、混練状態情報IK(第1混練状態情報IK1、第2混練状態情報IK2)、材料情報IM(第1骨材情報IA1、第2骨材情報IA2)、性状情報IP(第1性状情報IP1、第2性状情報IP2)、関連付け情報IR(第1関連付け情報IR1、第2関連付け情報IR2)及び配合設計モデルMDなどが記憶されるようになっている。記憶装置91には、コンクリートの製造を繰り返すことにより、配合情報IF、混練状態情報IK、材料情報IM及び性状情報IPが蓄積され、蓄積された配合情報IFなどの情報に基づいて、関連付け情報IR及び配合設計モデルMDが適宜更新されるようになっている。
【0042】
図4及び
図5は、本発明にかかるコンクリートの製造方法の各ステップにおけるデータの流れを説明するための説明図である。
図4(a)は、配合設計ステップにおけるデータの流れを示す図であり、
図4(b)は、第1混練ステップにおけるデータの流れを示す図である。また、
図5(a)は、性状情報取得ステップにおけるデータの流れを示す図であり、
図5(b)は、修正設計配合量決定ステップにおけるデータの流れを示す図であり、
図5(c)は、第2混練ステップにおけるデータの流れを示す図である。
【0043】
配合設計ステップS101では、コンクリート材料の各々について、1バッチ当たりの設計配合量QDが決定される。設計配合量QDは、目的とする要求品質を満たすコンクリートを1バッチ分製造するために必要なコンクリート材料の量である。
図4(a)に示されるように、設計配合量QDは、目標品質TQに基づいて配合量決定装置86により決定される。配合量決定装置86は、予め作成されて記憶装置91に記憶された配合設計モデルMDに基づいた配合設計を実行可能に構成されており、目標品質TQに基づいて配合設計を行うことで、設計配合量QDを決定する。ここで、目標品質TQは、目標とするコンクリートの品質に関する情報であり、目標とする強度に関する指標である目標強度指標TS、及び目標とする流動性に関する指標である目標流動性指標TFを含んでいる。目標品質TQは、配合設計ステップS101よりも前に入力され、記憶装置91に記憶されている。また、
図4(a)におけるQD1は、セメントの設計配合量であり、QD2は、水の設計配合量であり、QD3は、粗骨材の設計配合量であり、QD4は、細骨材の設計配合量である。
【0044】
第1混練ステップS102では、コンクリート材料の各々について、設計配合量QDよりも少量の投入量である1次投入量QPがミキサ5に投入される。投入されたコンクリート材料はミキサ5により混練される(1次混練)。よって、1次投入量QPは、ミキサ5に投入された際に、ミキサ5によりコンクリート材料を混ぜ合わせて練ることができる量であることを要する。第1混練ステップS102において、設計配合量QDの全量を投入しないため、第2混練ステップS106で、コンクリート材料の各々についての追加投入が可能である。
図4(b)に示されるように、コンクリート材料の各々の1次投入量QPは、演算装置84によりコンクリート材料の各々の設計配合量QDよりも少量に決定される。例えば、1次投入量QPは、設計配合量QDに対して所定割合に相当する量に決定される。
図4(b)におけるQP1は、設計配合量QD1よりも少量のセメントの1次投入量であり、QP2は、設計配合量QD2よりも少量である水の1次投入量であり、QP3は、設計配合量QD3よりも少量である粗骨材の1次投入量であり、QP4は、設計配合量QD4よりも少量である細骨材の1次投入量である。
【0045】
第1混練状態情報取得ステップS103では、第1混練ステップS102中に第1混練状態情報IK1を取得する。ここで、第1混練状態情報IK1は、第1混練ステップS102中におけるコンクリートの混練状態に関する情報(混練状態情報)であり、混練状態情報取得装置6により取得される。
【0046】
混練状態情報取得装置6は、
図2に示されるように、ミキサ5で混練されているコンクリートを撮影可能な第1撮影装置61を含んでいる。第1撮影装置61により、第1混練ステップS102中におけるコンクリートの画像(撮影画像CI)が撮影される。第1情報処理装置8が備える画像処理装置89(
図2参照)は、撮影画像CIを二値化処理やエッジ検出などの画像処理することで、コンクリートの形状や挙動などの情報ICを取得可能に構成されている。撮影画像CIや撮影画像CIから取得される情報ICには、混練されているコンクリートの流動状態を表す情報が含まれ、該情報には、コンクリートの強度、流動性及び空気量などのコンクリートの性状に関する情報が含まれる。また、第1混練状態情報IK1には、撮影画像CIや撮影画像CIから取得される情報ICが含まれる。
【0047】
第1性状情報取得ステップS104では、第1混練状態情報IK1に基づいて、第1性状情報IP1を取得する。第1性状情報IP1は、第1混練ステップS102において混練されたコンクリートの性状に関する情報(性状情報IP)であり、コンクリートの強度に関する指標である強度指標値、及びコンクリートの流動性に関する指標である流動性指標値を含んでいる。
図5(a)に示されるように、第1性状情報IP1は、第1混練状態情報IK1に基づいて性状情報推定装置87により推定される。性状情報推定装置87は、第1混練状態情報IK1と性状情報IPとを予め関連付けた第1関連付け情報IR1に基づいて、第1混練状態情報IK1から第1性状情報IP1を推定する。ここで、性状情報IPは、コンクリートの強度に関する指標である強度指標値VI、及び前記コンクリートの流動性に関する指標である流動性指標値VF、の少なくとも一方を含んでいる。性状情報IPは、強度試験やスランプ試験などの品質検査(性状試験)により取得される強度指標値VIや流動性指標値VFの実測値を含んでいる。強度指標値VIは、目標強度指標TSに対応するものであり、圧縮強度試験により取得される7日材齢圧縮強度及び28日材齢圧縮強度の少なくとも一方を含んでいる。流動性指標値VFは、目標流動性指標TFに対応するものであり、スランプ試験やスランプフロー試験で取得されるスランプ値及びスランプフロー値の少なくとも一方を含んでいる。第1関連付け情報IR1は、混練状態情報IKと性状情報IPとの相関関係を示す式やグラフ、表などを含んでいる。また、関連付け情報作成装置88は、混練状態情報IKや性状情報IPが追加される度に第1関連付け情報IR1を更新する。
【0048】
図6は、本発明にかかるコンクリートの製造方法における性状情報取得ステップを説明するためのグラフであって、混練状態情報と性状情報との関係の一例を示すグラフである。
図6における横軸は、撮影画像CIから取得される情報ICであり、縦軸は、コンクリートの強度に関する指標であるVIである。また、
図6におけるIC2やIC3は、撮影画像CIから取得される情報であり、VI2やVI3は、情報IC2やIC3を取得したコンクリートの各々について、コンクリートの製造後に強度試験(性状検査)を行うことにより実測された強度指標値である。関連付け情報作成装置88は、情報IC2、IC3及び強度指標値VI2、VI3に基づいて、
図6において回帰直線で示されるような、撮影画像CIから取得される情報ICと強度指標値VIとを関連付けた第1関連付け情報IR1を作成する。性状情報推定装置87は、第1関連付け情報IR1に基づいて、ミキサ5により混練中のコンクリートの撮影画像CIから取得した情報IC1から、混練中のコンクリートの強度指標値VI1を推定する。なお、コンクリートの撮影画像CIから取得した情報について、パターンマッチングを行うことで、強度指標値VI1を推定してもよい。
【0049】
関連付け情報IR(第1関連付け情報IR1、第2関連付け情報IR2)は、性状情報IPを推定するための基礎となる情報(材料情報IM、混練状態情報IK)が複数ある場合には、基礎となる情報と性状情報IPとの相関性の強弱を示す情報を含んでいてもよく、該相関性の強弱に基づいて、性状情報推定装置87は複数の基礎となる情報のうちの、少なくとも一つから性状情報IPを推定してもよい。
【0050】
修正設計配合量決定ステップS105では、コンクリート材料の各々について、第1性状情報IP1に基づいて、設計配合量QDを修正して修正設計配合量QMを決定する。修正設計配合量QMは、目的とする要求品質を満たすコンクリートを1バッチ分製造するために必要なコンクリート材料の量である。
図5(b)に示されるように、修正設計配合量QMは、目標品質TQ及び第1性状情報IP1に基づいて、配合量決定装置86により決定される。配合量決定装置86は、目標品質TQ及び第1性状情報IP1に基づいて配合設計を行うことで、修正設計配合量QMを決定する。配合量決定装置86は、第1性状情報IP1が目標品質TQに近づくように設計配合量QDを修正すればよく、第1性状情報IP1のみに基づいて、修正設計配合量QMを決定してもよい。また、
図5(b)におけるQM1は、セメントの修正設計配合量であり、QM2は、水の修正設計配合量であり、QM3は、粗骨材の修正設計配合量であり、QM4は、細骨材の設計配合量である。修正設計配合量QMの各々は、設計配合量QDの各々より増量してもよいし、減量してもよい。
【0051】
第2混練ステップS106では、コンクリート材料の各々について、修正設計配合量QMと1次投入量QPとに基づいて2次投入量QSを決定し(ステップS106A)、決定された2次投入量QSのコンクリート材料をミキサ5に投入し混錬する(2次混練、ステップS106B)。
図5(c)に示されるように、QS1は、セメントの2次投入量であり、QS2は、水の2次投入量であり、QS3は、粗骨材の2次投入量であり、QS4は、細骨材の2次投入量である。
図5(c)に示されるように、コンクリート材料の各々について、演算装置84により修正設計配合量QMから1次投入量QPを引くことで2次投入量QSが算出される。例えば、セメントの2次投入量QS1は、セメントの修正設計配合量QM1から1次投入量QP1を引くことで算出される。
【0052】
上述したように、幾つかの実施形態にかかるコンクリートの製造方法100は、
図1に示されるように、上述した配合設計ステップS101と、上述した第1混練ステップS102と、上述した第1混練状態情報取得ステップS103と、上述した第1性状情報取得ステップS104と、上述した修正設計配合量決定ステップS105と、上述した第2混練ステップS106と、を備えている。
【0053】
上記の方法によれば、コンクリートの製造方法100は、コンクリート材料の各々について、1バッチ当たりの設計配合量QDを決定する配合設計ステップS101と、コンクリート材料の各々について、設計配合量QDよりも少量である1次投入量QPがミキサ5に投入される第1混練ステップS102と、第1混練ステップS102中に、第1混練ステップS102中におけるコンクリートの第1混練状態情報IK1を取得する第1混練状態情報取得ステップS103と、第1混練状態情報IK1から、第1混練ステップS102において混練されたコンクリートの性状に関する情報である第1性状情報IP1を取得する第1性状情報取得ステップS104と、を備えている。このため、第1混練ステップS102では、コンクリート材料の各々について、1バッチに相当する量よりも少ない量(1次投入量QP)がミキサ5に投入され、投入されたコンクリート材料はミキサ5により混練される。この際、第1混練状態情報取得ステップS103及び第1性状情報取得ステップS104により、第1混練ステップS102において混練中のコンクリートの性状に関する情報である第1性状情報IP1を取得可能である。
【0054】
そして、コンクリートの製造方法100は、コンクリート材料の各々について、第1性状情報IP1に基づいて設計配合量QDを修正した修正設計配合量QMを決定する修正設計配合量決定ステップS105と、コンクリート材料の各々について、修正設計配合量QMと1次投入量QPとに基づいて決定される量(2次投入量QS)をミキサ5に投入する第2混練ステップS106と、をさらに備えている。このため、修正設計配合量決定ステップS105では、コンクリート材料の各々について、上述した第1性状情報IP1に基づいて、上述した設計配合量QDよりも適切な1バッチ当たりの配合量である修正設計配合量QMを決定することができる。また、第2混練ステップS106では、修正設計配合量QM及び1次投入量QPに基づいて、ミキサ5に追加投入されるコンクリート材料の各々の2次投入量QSが決定される。よって、コンクリートの製造方法100は、ミキサ5に追加投入されるコンクリート材料を適切な量にすることで、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0055】
また、修正設計配合量QM及び1次投入量QPに基づいて、ミキサ5にコンクリート材料を追加投入することで、混練中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、品質検査において良好ではない結果になることを抑制することができ、ひいてはコンクリートの製造にかかる労力や時間、費用を削減することができる。また、混練中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、製造されるコンクリートのバッチ毎の品質のバラツキを抑制することができる。
【0056】
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した第1性状情報取得ステップS104において、第1混練状態情報IK1と性状情報IPとを関連付けた第1関連付け情報IR1(関連付け情報IR)に基づいて、第1混練状態情報IK1から第1性状情報IP1が取得される。この場合には、第1混練状態情報IK1と性状情報IPとを関連付けた第1関連付け情報IR1は、第1混練状態情報IK1と性状情報IPとの関連性を表す情報である。このため、第1関連付け情報IR1に基づくことにより、第1混練状態情報IK1から第1性状情報IP1を精度良く取得可能である。
【0057】
幾つかの実施形態では、上述した第1関連付け情報IR1は、上述した第1混練状態情報IK1と、性状情報IPと、を学習データとする機械学習により生成されている。この場合には、第1混練状態情報IK1と性状情報IPとを学習データとし、該学習データを蓄積することにより、第1関連付け情報IR1における第1混練状態情報IK1と性状情報IPとの関連性の精度を向上させることができるので、上述した第1関連付け情報IR1に基づいて、第1混練状態情報IK1から第1性状情報IP1を精度良く推定可能である。
【0058】
他の幾つかの実施形態では、上述した第1関連付け情報IR1は、上述した第1混練状態情報IK1を説明変数とし、且つ、上述した性状情報IPを目的変数とする多変量解析により生成されている。多変量解析として、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の少なくとも一つが行われる。この場合には、第1混練状態情報IK1と性状情報IPとを多変量解析の変数として、多変量解析を行うことにより、第1関連付け情報IR1における第1混練状態情報IK1と性状情報IPとの関連性の精度を向上させることができるので、上述した第1関連付け情報IR1に基づいて、第1混練状態情報IK1から第1性状情報IP1を精度良く推定可能である。
【0059】
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した第1混練状態情報IK1は、第1撮影装置61により撮影された第1混練ステップS102におけるコンクリートの撮影画像CIを含んでいる。この場合には、第1混練状態情報IK1には、第1混練ステップS102におけるコンクリートの撮影画像CIが含まれる。ここで、コンクリートの撮影画像CIは、コンクリートの流動性や強度、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。このため、第1混練状態情報IK1にコンクリートの撮影画像CIを含むことで、第1混練状態情報IK1から第1性状情報IP1を精度良く取得可能である。
【0060】
他の幾つかの実施形態では、上述した混練状態情報取得装置6は、
図2に示されるような、混練中のミキサ5の電流値を計測可能な電流計62を含んでいる。電流計62により、第1混練ステップS102中におけるミキサ5の電流値が取得される。混練中におけるミキサ5の電流値は、第1混練ステップS102中に混練されているコンクリートの流動性(スランプ値)などのコンクリートの性状に関する情報が含まれる。このため、混練状態情報IKに混練中におけるミキサ5の電流値を含むことで、コンクリートの性状を精度良く推定可能である。なお、混練状態情報取得装置6は、電流計62の代わりに混練中のミキサ5のトルク値を検出可能なトルク検出器を含んでいてもよく、上述した混練状態情報IKは、トルク検出器により取得される混練中のミキサ5のトルク値を含んでいてもよい。
【0061】
なお、上述した混練状態情報取得装置6は、第1撮影装置61及び電流計62の両方を含んでいてもよいし、混練中のコンクリートの温度を検出可能な温度計や混練中のコンクリートの歪みを検出可能な歪み計などの第1撮影装置61や電流計62以外の装置(計測器)をさらに含んでいてもよい。また、混練状態情報IKは、混練中のコンクリートの温度や歪みを含んでいてもよい。混練状態情報IKが多種の情報を含むことで、コンクリートの性状の推定精度を向上させることができる。
【0062】
図7は、本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、第1計量ステップや1次投入量修正ステップなどを備えるフロー図である。幾つかの実施形態では、上述したコンクリートの製造方法100は、
図7に示されるように、第1計量ステップS201と、第1骨材情報取得ステップS202と、1次投入量修正ステップS203と、をさらに備えている。
【0063】
第1計量ステップS201では、第1混練ステップS102よりも前に、第1混練ステップS102にて混練されるコンクリート材料の各々について計量が行われる。より具体的には、第1計量ステップS201では、
図2に示されるように、コンクリート材料の各々が貯蔵容器3から計量器4に送られて、コンクリート材料の各々について計量器4により1次投入量QPの計量が行われる。
【0064】
第1骨材情報取得ステップS202では、第1計量ステップS201中に第1骨材情報IA1を取得する。ここで、第1骨材情報IA1は、第1計量ステップS201中における骨材に関する情報であり、材料情報取得装置7により取得される。材料情報取得装置7は、
図2に示されるように、貯蔵容器3から計量器4に送られる骨材を撮影可能な第2撮影装置71を含んでいる。第2撮影装置71により、第1計量ステップS201中における細骨材及び粗骨材の少なくとも一方の画像が撮影される。第1骨材情報IA1は、第2撮影装置71により撮影された撮影画像から取得される第1計量ステップS201中における骨材の情報を含んでおり、該情報には、コンクリートの強度、流動性及び空気量などのコンクリートの性状に関する情報が含まれる。
【0065】
第1骨材情報IA1は、骨材(細骨材)の表面水率、及び骨材(粗骨材)の粒度分布の少なくとも一方を含んでいる。骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの流動性に影響を与えるコンクリート材料における水の割合や、コンクリートの強度や空気量に影響を与えるコンクリートの水セメント比に関連するパラメータである。換言すると、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの強度や流動性、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、骨材の粒度分布が大きい場合には、粗骨材の間に細骨材が入り込むので、骨材の粒度分布が小さい場合に比べて密な状態になり、骨材間の付着力が大きくなる。このため、骨材の粒度分布が大きい場合には、骨材の粒度分布が小さい場合に比べて、セメントや水の量が少なくてもコンクリートの強度を大きくすることができる。換言すると、骨材の粒度分布は、コンクリートの強度や流動性などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。
【0066】
1次投入量修正ステップS203では、コンクリート材料の各々について、第1骨材情報IA1に基づいて1次投入量QPを修正する。修正後の1次投入量QPは、目標品質TQに近づくように、上述した配合量決定装置86により第1骨材情報IA1に基づいて配合設計を再度行うことで、修正後の1次投入量QPが決定される。修正後の1次投入量QPの各々は、修正前の1次投入量QPよりも増量してもよいし、減量してもよい。1次投入量修正ステップS203は、第1計量ステップS201中に行われるので、上述した第1計量ステップS201では、コンクリート材料の各々について、1次投入量修正ステップS203にて修正後の1次投入量QPの計量が行われる。
【0067】
上記の方法によれば、第1骨材情報取得ステップS202において、第1混練ステップS102よりも前の第1計量ステップS201中における骨材に関する情報である第1骨材情報IA1を取得可能である。第1骨材情報IA1は、コンクリートの強度や流動性、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。例えば、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの強度や流動性、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、骨材の粒度分布はコンクリートの強度や流動性などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、第1骨材情報IA1は、第1混練ステップS102に実際に投入される骨材の情報であるので、第1骨材情報IA1に基づいて、第1混練ステップS102にて投入される量である1次投入量QPを修正することで、1次投入量QPを適切な量にすることができる。よって、上記の方法によれば、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0068】
図8は、本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、第2計量ステップや2次投入量修正ステップなどを備えるフロー図である。幾つかの実施形態では、上述したコンクリートの製造方法100は、
図8に示されるように、第2計量ステップS301と、第2骨材情報取得ステップS302と、2次投入量修正ステップS303と、をさらに備えている。
【0069】
第2計量ステップS301では、第2混練ステップS106(ステップS106B)よりも前に、第2混練ステップS106にて新たに混練されるコンクリート材料の各々について計量が行われる。より具体的には、第2計量ステップS301では、
図2に示されるように、コンクリート材料の各々が貯蔵容器3から計量器4に送られて、コンクリート材料の各々について計量器4により2次投入量QSの計量が行われる。
【0070】
第2骨材情報取得ステップS302では、第2計量ステップS301中に第2骨材情報IA2を取得する。ここで、第2骨材情報IA2は、第2計量ステップS301中における骨材に関する情報であり、上述した第1骨材情報IA1と同様に、第2撮影装置71(材料情報取得装置7)により取得される。第2撮影装置71により、第2計量ステップS301中における細骨材及び粗骨材の少なくとも一方の画像が撮影される。第2骨材情報IA2は、第2撮影装置71により撮影された撮影画像から取得される第2計量ステップS301中における骨材の情報を含んでおり、該情報には、コンクリートの強度、流動性及び空気量などのコンクリートの性状に関する情報が含まれる。
【0071】
また、第2骨材情報IA2は、骨材(細骨材)の表面水率、及び骨材(粗骨材)の粒度分布の少なくとも一方を含んでいる。上述したように、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの強度や流動性、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、上述したように、骨材の粒度分布は、コンクリートの強度や流動性などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。
【0072】
2次投入量修正ステップS303では、コンクリート材料の各々について、第2骨材情報IA2に基づいて2次投入量QSを修正する。修正後の2次投入量QSは、目標品質TQに近づくように、上述した配合量決定装置86により第2骨材情報IA2に基づいて配合設計を再度行うことで、修正後の2次投入量QSが決定される。修正後の2次投入量QSの各々は、修正前の2次投入量QSよりも増量してもよいし、減量してもよい。1次投入量修正ステップS303は、第2計量ステップS301中に行われるので、上述した第2計量ステップS301では、コンクリート材料の各々について、2次投入量修正ステップS303にて修正後の2次投入量QSの計量が行われる。
【0073】
上記の方法によれば、第2骨材情報取得ステップS302において、第2混練ステップS106(ステップS106B)よりも前の第2計量ステップS301中における骨材に関する情報である第2骨材情報IA2を取得可能である。第2骨材情報IA2は、コンクリートの強度や流動性、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。例えば、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの強度や流動性、空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、骨材の粒度分布はコンクリートの強度や流動性などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、第2骨材情報IA2は、第2混練ステップS106に実際に投入される骨材の情報であるので、第2骨材情報IA2に基づいて、第2混練ステップS106にて新たに投入される量である2次投入量QSを修正することで、2次投入量QSを適切な量にすることができる。よって、上記の方法によれば、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0074】
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した骨材に関する情報(第1骨材情報IA1、第2骨材情報IA2)は、骨材の表面水率及び骨材の粒度分布の少なくとも一方を含んでいる。上述したように、骨材(細骨材)の表面水率は、コンクリートの流動性や空気量などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。また、骨材(粗骨材)の粒度分布はコンクリートの流動性や強度などのコンクリートの性状に関する情報を含んでいる。上記の方法によれば、骨材に関する情報(第1骨材情報IA1、第2骨材情報IA2)として、骨材の表面水率や粒度分布を含むことにより、1次投入量QPや2次投入量QSを目的とするコンクリートの性状に対応するような適切な量にすることができるため、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0075】
幾つかの実施形態では、上述した1次投入量QPは、設計配合量QDの20%以上80%以下の量である。この場合には、2次投入量QSは、設計配合量QDの20~80%程度の量になるので、第2混練ステップS106でミキサ5に追加投入される2次投入量QSのコンクリート材料により、第1混練ステップS102において混練されたコンクリートの性状を広範囲に調整可能である。よって、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0076】
また、幾つかの実施形態では、上述した1次投入量QPの配合比は、設計配合量QDの配合比と同一である。この場合には、設計配合量QDの配合比に則した混練状態情報IKから精度の高い性状情報IPを取得できるので、修正設計配合量を適切な量にすることができる。
【0077】
図9は、本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、混練時間決定ステップなどを備えるフロー図である。幾つかの実施形態では、
図9に示されるように、第2混練状態情報取得ステップS401と、第2性状情報取得ステップS402と、混練時間決定ステップS403と、をさらに備えている。
【0078】
第2混練状態情報取得ステップS401では、第2混練ステップS106中に第2混練状態情報IK2を取得する。ここで、第2混練状態情報IK2は、第2混練ステップS106中におけるコンクリートの混練状態に関する情報であり、上述した第1混練状態情報IK1と同様に、混練状態情報取得装置6により取得される。
【0079】
第2性状情報取得ステップS402では、第2混練状態情報IK2に基づいて、第2性状情報IP2を取得する。第2性状情報IP2は、第2混練ステップS106において混練されたコンクリートの性状に関する情報(性状情報IP)であり、上述した第1性状情報IP1と同様に、コンクリートの強度に関する指標である強度指標値、及びコンクリートの流動性に関する指標である流動性指標値を含んでいる。第2性状情報IP2は、上述した第1性状情報IP1と同様に、第2混練状態情報IK2に基づいて性状情報推定装置87により推定される。性状情報推定装置87は、第2混練状態情報IK2と性状情報IPとを予め関連付けた第2関連付け情報IR2に基づいて、第2混練状態情報IK2から第2性状情報IP2を推定する。
【0080】
混練時間決定ステップS403では、第2性状情報IP2に基づいて、第2混練ステップS106における混練時間Tを決定する。
【0081】
上記の方法によれば、第2混練状態情報取得ステップS401及び第2性状情報取得ステップS402により、第2混練ステップS106において混練中のコンクリートの性状に関する情報である第2性状情報IP2を取得可能である。そして、第2性状情報IP2に基づいて、第2混練ステップS106における混練時間Tを決定することで、該混練時間Tを要求されるコンクリートの性状に応じた適切な時間にできるので、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。
【0082】
また、第2性状情報IP2に基づいて、第2混練ステップS106における混練時間Tを決定することで、第2混練ステップS106中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、品質検査において良好ではない結果になることを抑制することができ、ひいてはコンクリートの製造にかかる労力や時間、費用を削減することができる。また、第2混練ステップS106中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、製造されるコンクリートのバッチ毎の品質のバラツキを抑制することができる。
【0083】
図10は、本発明の他の一実施形態にかかるコンクリートの製造方法のフロー図であって、品質判定ステップなどを備えるフロー図である。他の幾つかの実施形態では、
図10に示されるように、上述した第2混練状態情報取得ステップS401と、上述した第2性状情報取得ステップS402と、品質判定ステップS501と、混和材料添加ステップS502と、をさらに備えている。
【0084】
品質判定ステップS501では、第2性状情報IP2に基づいて、第2混練ステップS106において混練されたコンクリートの品質を判定する。より具体的には、品質判定ステップS501では、第2性状情報IP2が現時点において目標品質TQを満足する、又は、第2混練ステップS106におけるコンクリートの混練を継続することで第2性状情報IP2が目標品質TQを満足する、という何れかの条件を満たすかが判断され、何れかの条件を満たす場合には、第2混練ステップS106において混練されたコンクリートが要求品質を満たすと判定される(S501にて「YES」)。なお、第2混練ステップS106におけるコンクリートの混練を継続することで、第2性状情報IP2が目標品質TQを満たすようになる範囲である調整可能範囲RAを設定し、第2性状情報IP2が調整可能範囲RAであるか否かを判断の基準にしてもよい。
【0085】
第2混練ステップS106において混練されたコンクリートが要求品質を満たすと判定された場合には(S501にて「YES」)、即座に、又は所定の混練時間Tを経過後に、第2混練ステップS106におけるコンクリートの混練を終了し(ステップS503)、ミキサ5から製造されたコンクリートが排出される。
【0086】
第2混練ステップS106において混練されたコンクリートが要求品質を満たさないと判定された場合には(S501にて「NO」)、第2混練ステップS106において混練されたコンクリートに混和材料を添加する(混和材料添加ステップS502)。
図1に示されるように、計量器4は、混和材料の投入量を調整可能な混和材料計量器45をさらに含んでいる。ここで、混和材料とは、コンクリートの性状の改善を目的としてコンクリートに混和される骨材、セメントおよび水以外の材料であり、減水剤や流動化剤などを含むものである。なお、混和材料は、減水剤や流動化剤などの混和剤だけでなく、減水材などの混和材を含んでいてもよく、混和材のみを含むものであってもよい。
【0087】
上記の方法によれば、品質判定ステップS501では、第2性状情報IP2に基づいて、第2混練ステップS106において混練されたコンクリートが要求品質を満たすかを判定することができる。また、混和材料添加ステップS502では、品質判定ステップS501において第2混練ステップS106において混練されたコンクリートが要求品質を満たさないと判定された場合に(S501にて「NO」)、該コンクリートが要求品質を満たすように混和材料を添加することで、第2混練ステップS106中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、要求品質を満たすコンクリートを精度良く製造可能である。また、第2混練ステップS106中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、品質検査において良好ではない結果になることを抑制することができ、ひいてはコンクリートの製造にかかる労力や時間、費用を削減することができる。また、第2混練ステップS106中におけるコンクリートの性状の調整が可能であるため、製造されるコンクリートのバッチ毎の品質のバラツキを抑制することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、配合量決定装置86は、
図4(a)及び
図5(b)に示されるような、設計配合量QDや修正設計配合量QMを決定する際に、記憶装置91に記憶されている配合情報IFを参照してもよい。ここで、配合情報IFは、記憶装置91にバッチ毎に材料情報IM、混練状態情報IK及び性状情報IPに関連付けて記憶されている。配合情報IFは、セメントに関する情報、水に関する情報、粗骨材や細骨材に関する情報、混和材料に関する情報及び配合設計に関する情報を含んでいる。この場合には、配合量決定装置86は、配合情報IFを参照することで、設計配合量QDや修正設計配合量QMの推定精度を向上させることができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、関連付け情報作成装置88は、
図5(a)に示されるような、関連付け情報IRを作成する際に、記憶装置91に記憶されている配合情報IFを参照してもよい。この場合には、関連付け情報作成装置88は、配合情報IFを参照することで、関連付け情報IRの精度を向上させることができる。
【0090】
セメントに関する情報には、普通セメント、高炉セメント、早強セメント、低熱セメント、中庸熱セメントなどのセメントの種類、セメントの密度及びセメントの比表面積が含まれる。水に関する情報には、上水道水、工業用水、上澄水などの水の種類、水の密度、水のpH値が含まれる。粗骨材や細骨材に関する情報には、岩の種類や性状、岩の産地、粗骨材や細骨材の密度、粒度分布、粗粒率、微粒分量、粒形、実積率、吸水率及び安定性が含まれる。混和材料に関する情報には、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末、石こうなどの混和材の種類、混和材の密度、混和材の比表面積、AE減水剤、消泡剤、流動化剤、増粘剤などの混和剤の種類、混和剤の密度、混和剤の固形分量を含んでいる。配合設計に関する情報には、単位セメント量、単位水量、単位粗骨材量、単位細骨材量、単位結合材量、単位粉体量、水セメント比、水結合材比、水粉体比、セメント水比、結合材水比、粉体水比、細骨材率、粗骨材かさ容量、混和剤添加量、空気量などを含んでいる。ここで、結合材は、セメント及び混和材からなり、粉体は、セメント、鉱物質及びシリカフュームなどの微粉末からなる。
【0091】
幾つかの実施形態では、上述したコンクリートの製造方法100は、第2混練ステップS106で混練された後のコンクリートであって、ミキサ5から排出されたコンクリートを撮影する撮影ステップをさらに備えている。
図2に示されるように、上述したコンクリートの製造システム1は、ミキサ5からホッパ11に排出されたコンクリートを撮影可能な第3撮影装置12をさらに備えている。第3撮影装置12により、ミキサ5で混練されて製造されたコンクリートの画像(撮影画像)が撮影される。第3撮影装置12により撮影された撮影画像や該撮影画像から画像処理装置89により取得される情報には、コンクリートの強度、流動性及び空気量などのコンクリートの性状に関する情報が含まれる。この場合には、第3撮影装置12により撮影された撮影画像や該撮影画像から取得される情報を、設計配合量QDや修正設計配合量QMを決定する際や、関連付け情報IRを作成する際に参照することで、設計配合量QDや修正設計配合量QMの推定精度を向上させたり、関連付け情報IRの精度を向上させたりすることができる。
【0092】
なお、上述した幾つかの実施形態では、第1情報処理装置8と第2情報処理装置9とは別体で構成されていたが、一体的に構成されていてもよい。また、上述した第1情報処理装置8が備える構成や情報のうちの幾つかは第2情報処理装置9が備えていてもよく、上述した第2情報処理装置9が備える構成や情報のうちの幾つかは第1情報処理装置8が備えていてもよい。
【0093】
また、上述した目標品質TQ及び上述した性状情報IPは、各種の強度試験により取得される引張強度、せん断強度及び曲げ強度、並びに空気量試験により取得される空気量などをさらに含んでいてもよい。
【0094】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0095】
1 コンクリートの製造システム
2 コンクリート製造装置
3 貯蔵容器
31 セメント貯蔵容器
32 水貯蔵容器
33 粗骨材貯蔵容器
34 細骨材貯蔵容器
4 計量器
41 セメント計量器
42 水計量器
43 粗骨材計量器
44 細骨材計量器
5 ミキサ
51 撹拌軸
52 撹拌羽根
53 駆動源
6 混練状態情報取得装置
61 第1撮影装置
62 電流計
7 材料情報取得装置
71 第2撮影装置
8 第1情報処置装置
80 バス
81 入出力装置
82 記憶装置
83 表示装置
84 演算装置
86 配合量決定装置
87 性状情報推定装置
88 関連付け情報作成装置
89 画像処理装置
9 第2情報処理装置
100 コンクリートの製造方法
CI 撮影画像
IA1 第1骨材情報
IA2 第2骨材情報
IF 配合情報
IK,IK1,IK2 混練状態情報
IM 材料情報
IP,IP1,IP2 性状情報
IR,IR1,IR2 関連付け情報
QD,QD1~QD4 設計配合量
QM,QM1~QM4 修正設計配合量
QP,QP1~QP4 1次投入量
QS,QS1~QS4 2次投入量
RS 調整可能範囲
S101 配合設計ステップ
S102 第1混練ステップ
S103 第1混練状態情報取得ステップ
S104 第1性状情報取得ステップ
S105 修正設計配合量決定ステップ
S106 第2混練ステップ
S201 第1計量ステップ
S202 第1骨材情報取得ステップ
S203 1次投入量調整ステップ
S301 第2計量ステップ
S302 第2骨材情報取得ステップ
S303 2次投入量調整ステップ
S401 第2混練状態情報取得ステップ
S402 第2性状情報取得ステップ
S403 混練時間決定ステップ
S501 品質判定ステップ
S502 混和材料添加ステップ
T 混練時間
TF 目標流動性指標
TQ 目標品質
TS 目標強度指標