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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】抗菌・抗ウイルス性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/423 20060101AFI20231129BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20231129BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20231129BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20231129BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 15/356 20060101ALI20231129BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
D06M15/423
A01N25/34 B
A01N33/12 101
A01N61/00 D
A01P1/00
A01P3/00
D06M13/224
D06M13/256
D06M15/267
D06M15/356
D06M15/564
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022184372
(22)【出願日】2022-11-17
(62)【分割の表示】P 2022550201の分割
【原出願日】2022-08-03
(65)【公開番号】P2023024441
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021130291
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】上田 香奈
(72)【発明者】
【氏名】坂下 真一
(72)【発明者】
【氏名】梅村 深雪
(72)【発明者】
【氏名】堀口 泰士郎
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218148(JP,A)
【文献】特開2000-160478(JP,A)
【文献】特開平09-228242(JP,A)
【文献】特許第7206443(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
A01N 25/34
A01N 33/12
A01N 61/00
A01P 1/00
A01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維に窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを同浴処理にて接触させること、を含み、
前記同浴処理が、前記窒素を含有するポリマーと前記アニオン界面活性剤とを含む処理液を前記繊維に接触させるものであり、
前記同浴処理における前記繊維に対する前記窒素を含有するポリマーの付着量が、製品全体を基準(100質量%)として、0.01~10質量%であり、
前記同浴処理における前記繊維に対する前記アニオン界面活性剤の付着量が、製品全体を基準(100質量%)として、0.005~5質量%であり、
前記窒素を含有するポリマーが、
ポリイソシアネート及びブロックドポリイソシアネートのうちの少なくとも1種を重合させたもの、
メラミン樹脂、
下記一般式(A-1)、(B-1)、(B-2)、(C-1)及び(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を繰り返し単位として備えるポリマー、
ポリアルキレンポリアミン若しくはその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、
又は、
下記一般式(D)で示されるポリマー
である、
抗菌・抗ウイルス性繊維製品の製造方法。
【化1】
(式中、R21は水素原子又はメチル基を表し、R22は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R23は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、-Y-は-O-又は-N(H)-を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【化2】
(式中、R25は水素原子又はメチル基を表し、R26は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R27は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、-Z-は-O-又は-N(H)-を表す。)
【化3】
(式中、R28は、水素原子、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。)
【化4】
(式中、R29は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。)
【化5】
(式中、R30は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【化6】
(式中、R31は炭素数1~4のアルキレン基であり、R32はメチル基又はエチル基であり、R33はメチル基又はエチル基であり、R34は炭素数3又は4のアルキレン基であり、R35はメチル基又はエチル基であり、R36はメチル基又はエチル基であり、R37は炭素数1~4のアルキレン基であり、Z31はハロゲンであり、kは任意の自然数である。)
【請求項2】
前記窒素を含有するポリマーが、前記一般式(A-1)、(B-1)、(B-2)、(C-1)及び(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を繰り返し単位として備えるポリマーである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記窒素を含有するポリマーが、
前記一般式(A-1)及び(B-1)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位を繰り返し単位として備えるポリマー、又は、
前記一般式(B-2)に由来する構成単位を繰り返し単位として備えるポリマーである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記窒素を含有するポリマーが、前記一般式(D)で示されるポリマーである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アニオン界面活性剤が、カルボン酸型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、及び、硫酸エステル型界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は抗菌・抗ウイルス性繊維製品の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤を有効成分とする種々の抗菌・抗ウイルス剤が公知である。例えば、特許文献1には、ドデシル硫酸ナトリウムを有効成分とするウイルス不活化剤が開示されている。また、特許文献2には、所定のアニオン界面活性剤を有効成分とする抗ウイルス剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-095112号公報
【文献】特開2010-024587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、繊維製品に対して優れた抗ウイルス性を付与するとともに、その洗濯耐久性を向上させることに関して、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
繊維に窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを接触させること、
を含む、抗菌・抗ウイルス性繊維製品の製造方法
を開示する。
【0006】
本開示の製造方法において、前記ポリマーが、グリオキザール化合物、イソシアネート化合物及びメラミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0007】
本開示の製造方法において、前記ポリマーが、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、下記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0008】
【化1】
(式中、R21は水素原子又はメチル基を表し、R22は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R23は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Y-は-O-又は-N(H)-を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0009】
【化2】
(式中、R24は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0010】
【化3】
(式中、R25は水素原子又はメチル基を表し、R26は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R27は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Z-は-O-又は-N(H)-を表す。)
【0011】
【化4】
(式中、R28は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0012】
【化5】
(式中、R29は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0013】
【化6】
(式中、R30は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0014】
【化7】
(式中、R31は炭素数1~4のアルキレン基であり、R32はメチル基又はエチル基であり、R33はメチル基又はエチル基であり、R34は炭素数3又は4のアルキレン基であり、R35はメチル基又はエチル基であり、R36はメチル基又はエチル基であり、R37は炭素数1~4のアルキレン基であり、Z31はハロゲンであり、kは任意の自然数である。)
【0015】
本開示の製造方法において、前記アニオン界面活性剤が、カルボン酸型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0016】
本開示の製造方法は、
繊維に窒素を含有するポリマーを接触させること、及び、
前記ポリマーを接触させた後で、前記繊維にアニオン界面活性剤を接触させること、
を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示の方法により製造された繊維製品は抗ウイルス性に優れ、且つ、その洗濯耐久性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る抗菌・抗ウイルス性繊維の製造方法は、繊維に窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを接触させること、を含む。尚、本願において「繊維に窒素を含有するポリマー・・・を接触させる」とは、ポリマーが繊維に接触した状態となればよく、例えば、ポリマーを含む処理液を繊維に接触させる形態のほか、繊維に対してモノマー成分等を接触させた後で、当該繊維上で重合反応を生じさせることで、繊維にポリマーが接触した状態となる形態も含む概念である。
【0019】
1.繊維
本実施形態に係る製造方法においては、窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを、例えば、ウイルスと接触する可能性のある繊維製品に担持させることにより、当該繊維製品に抗ウイルス性と洗濯耐久性を付与することができる。本実施形態に係る製造方法において、抗ウイルス性を付与する対象である繊維の種類は特に限定されるものではなく、天然繊維であってもよいし化学繊維であってもよい。繊維の具体例としては、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維、及びこれらの複合繊維、混紡繊維が挙げられる。ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等が挙げられる。繊維は、糸、編物(交編を含む)、織物(交織を含む)、不織布、紙、木材などの形態を採るものであってもよい。繊維は染色されたものであってもよい。繊維は、その表面に何らかの修飾処理が施されたものであってもよい。
【0020】
2.窒素を含有するポリマー
本実施形態に係る製造方法においては、後述するアニオン界面活性剤とともに窒素を含有するポリマーを併用することで繊維製品における耐久抗ウイルス性が一層向上する。本実施形態に係る製造方法においては、窒素を含有するポリマーとして様々なポリマーを採用可能である。
【0021】
本実施形態に係る製造方法においては、窒素を含有するポリマーが、グリオキザール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である場合、その中でも、グリオキザール化合物、イソシアネート化合物及びメラミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である場合に、一層優れた抗ウイルス性と洗濯耐久性とが確保され易い。或いは、窒素を含有するポリマーが、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、下記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種である場合も、一層優れた抗ウイルス性と洗濯耐久性とが確保され易い。
【0022】
2.1 グリオキザール化合物
グリオキザール化合物としては、従来公知のグリオキザール樹脂を使用することができる。グリオキザール樹脂としては、グリオキザールに尿素又はその誘導体を反応させ、更に該反応混合物にホルムアルデヒドを反応させて得られる樹脂;グリオキザールと尿素又はその誘導体とホルムアルデヒドとを反応させて得られる樹脂;これらの方法で得た樹脂に更にアルコールを反応させて得られる化合物;グリオキザールと多価アルコールとを反応させて得られる樹脂などが挙げられる。
【0023】
グリオキザールと反応させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール及びこれらの縮合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0024】
このようなグリオキザール樹脂としては、一般に低ホルマリン系樹脂と呼ばれているジメチロールグリオキザール尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシプロピレン尿素系樹脂、一般にノンホルマリン樹脂と呼ばれている1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロキシエチレン尿素などのジメチルグリオキザール尿素系樹脂が挙げられる。
【0025】
これらの樹脂の官能基は、他の官能基で置換されていてもよい。このようなグリオキザール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンN-80、ベッカミンNS-11、ベッカミンLF-K、ベッカミンNS-19、ベッカミンLF-55Pコンク、ベッカミンNS-210L、ベッカミンNS-200、及びベッカミンNF-3、ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E、三木理研工業株式会社製のリケンレジンRGシリーズ、及びリケンレジンMSシリーズなどが挙げられる。
【0026】
このようなグリオキザール樹脂を用いる場合には、反応を促進させる観点から、触媒を更に含むことが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒として、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX-110、キャタリストGT-3、及びキャタリストNFC-1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3-P、及びユニカキャタリストMC-109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ-5などが挙げられる。
【0027】
数あるグリオキザール樹脂の中でも、特に、下記一般式(1)で示される構造を有するグリオキザール樹脂が採用された場合に、耐久抗ウイルス性が一層向上し易い。
【0028】
【化8】
【0029】
式(1)において、Rは水素、メトキシ基又はヒドロキシ基であり、Rは水素、メトキシ基又はヒドロキシ基であり、Rは水素又はメチル基であり、nは0~5の整数である。特にR及びRがヒドロキシ基であり、Rが水素であり、nが0である場合に、より高い効果が得られる。
【0030】
2.2 イソシアネート化合物
イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート及びブロックドポリイソシアネートのうちの少なくとも1種である。ポリイソシアネートは複数のイソシアネート基を有するものであればよい。ブロックドポリイソシアネートは複数のブロックドポリイソシアネート基を有するものであればよい。
【0031】
イソシアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネートであってもよいし、脂環族ポリイソシアネートであってもよいし、芳香族ポリイソシアネートであってもよいし、芳香脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。特に、イソシアネート化合物が脂肪族ポリイソシアネートである場合に、処理後の繊維製品を黄変することがないので、好適である。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートによって一層高い耐久抗ウイルス性が確保され得る。
【0033】
脂環族ポリイソシアネートとしては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製MDI、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
イソシアネート化合物は、ジイソシアネートの誘導体であってよく、この場合、誘導体は3個以上のイソシアネート基を有していてもよい。例えば、イソシアネート化合物は、イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートや、ビュレット結合を有するポリイソシアネートや、ウレタン結合を有するポリイソシアネートや、その他のポリイソシアネートであってもよい。具体的には、イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートをヌレート体としたものやビュレット体としたものであってもよいし、トリレンジイソシアネートをトリメチロールプロパンのアダクト体としたものであってもよい。また、これら誘導体として市販品が採用されてもよい。市販品としては、例えば、デュラネートTPA-100やデュラネートTHA-100(旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体)やデュラネート24A-100(旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体)やコロネートL(日本ポリウレタン社製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体)等が挙げられる。或いは、本実施形態に係る製造方法においては、ポリオールとの反応によってより多官能化されたイソシアネート化合物が採用されてもよい。
【0037】
上述の通り、イソシアネート化合物は、複数のイソシアネート基の少なくとも一部又は全部がブロック剤でブロックされたブロックドポリイソシアネートであってもよい。ブロック剤としては、例えば、イソシアネート基と反応可能な活性水素を含む化合物(活性水素含有化合物)を採用してもよい。以下、ブロックドポリイソシアネートの一例を示す。
【0038】
本実施形態に係る製造方法において、イソシアネート化合物がブロックドポリイソシアネートを含む場合、前記ブロックドポリイソシアネートが、R(-NH-CO-Xで表される構造を有してもよく、前記Rが前記ブロックドポリイソシアネートからm個のブロックドイソシアネート基を除いた残基であってもよく、前記Xがイソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素を除いた残基であってもよく、前記mが2以上の整数であってもよく、m個の前記Xのうちの少なくとも2つが、下記一般式(2)で表されるピラゾール基又はメチルエチルケトオキシム基であってもよい。
【0039】
【化9】
式(2)において、
11は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO、ハロゲン原子又は-CO-O-R14であり、R14は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、
12は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO、ハロゲン原子又は-CO-O-R14であり、R14は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、
13は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO、ハロゲン原子又は-CO-O-R14であり、R14は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、
hは0又は1であり、
iは0又は1であり、
jは0又は1である。
【0040】
式(2)で表わされるピラゾール基の具体例としては、3,5-ジメチルピラゾール基、3-メチルピラゾール基、3,5-ジメチル-4-ニトロピラゾール基、3,5-ジメチル-4-ブロモピラゾール基、ピラゾール基等が挙げられる。ブロックドポリイソシアネートは、当該ピラゾール基を1種のみ有していてもよいし、複数種類のピラゾール基を有していてもよい。特に、3,5-ジメチルピラゾール基を有するブロックドポリイソシアネートを用いた場合に、高い耐久抗ウイルス性等が確保され易い。
【0041】
上記のブロックドポリイソシアネートは全体として疎水性であってよい。例えば、ブロックドポリイソシアネートは、水中で自己乳化しないものであってよい。「自己乳化する」とは、ブロックドポリイソシアネートが、界面活性剤を外添することなく、水中に均一に乳化分散することをいい、水分散液をガラス容器に入れ密封し45℃で静置した場合、12時間以上分離や沈降などが無く均一に乳化分散していることを意味する。言い換えれば、疎水性のブロックドポリイソシアネートは、例えば界面活性剤を外添することによって水中に均一に乳化分散し得るものであってよい。
【0042】
上記のブロックドポリイソシアネートにおいて、m個のXのうちの少なくとも2つが、上記一般式(2)で表されるピラゾール基又はメチルエチルケトオキシム基である場合、ピラゾール基やメチルエチルケトオキシム基以外のXはいかなる官能基であってもよい。例えば、ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基の一部とノニオン性化合物とを反応させ、残りのイソシアネート基をピラゾール又はメチルエチルケトオキシムでブロックしてもよい。ノニオン性化合物は親水性であってもよい。親水性のノニオン性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の(ポリ)エチレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのブロック重合体、ランダム共重合体、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとブチレンオキサイドのランダム共重合体やブロック共重合体等の共重合体;ポリオキシアルキレンモノアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等のアミン類;等が挙げられる。これらノニオン性化合物は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0043】
ブロック剤としては、上記したピラゾール系やオキシム系に限定されず、例えば、活性メチレン系、フェノール系、アルコール系、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系、カルバミン酸塩系、イミン系、亜硫酸塩系の化合物であってもよく、これらは1種を単独で又は2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
上記したようなブロックドポリイソシアネートは、公知の方法により得ることができる。例えば、上記のポリイソシアネートと、活性水素含有化合物としてピラゾール化合物とを反応させることによって得てもよい。また、上述したように、イソシアネート化合物には、ポリイソシアネートとノニオン性化合物とブロック剤とを反応させて得られた親水性化合物が含まれていてもよい。イソシアネート化合物に含まれる親水性化合物の量は、例えば、イソシアネート化合物全体を100質量%として、5質量%以下であってよい。
【0045】
ポリイソシアネートと活性水素含有化合物との反応は、従来公知の方法により行えばよい。この場合、公知の触媒を用いて反応を促進させてもよい。触媒としては、有機錫化合物、有機亜鉛化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。また、反応のいずれかの段階で、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加してもよい。
【0046】
ブロックドポリイソシアネートは、遊離イソシアネート基を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0047】
ブロックドポリイソシアネートの製造方法の具体例としては、例えば、以下の反応1と任意に反応2とを有する方法が挙げられる。
反応1:ポリイソシアネートをメチルイソブチルケトンに溶解させた後、ピラゾール化合物等のブロック剤を用いてイソシアネート基の少なくとも一部と反応させる。反応1においてイソシアネート基の全体をブロックしてもよい。
反応2:反応1の後で、任意にポリイソシアネートをさらに添加してもよく、ノニオン性化合物を反応させ、残りのイソシアネート基を公知のブロック剤でブロックしてもよい。この際、得られるブロックポリイソシアネート全量に対し、反応1で得られるブロックポリイソシアネートの割合が95質量%以上となるように、仕込み量を調整してもよい。
【0048】
尚、反応1で使用されるポリイソシアネートと、反応2で使用されるポリイソシアネートとは、同一であっても異なっていてもよい。また、反応1で得られるブロックドポリイソシアネートと反応2で得られるブロックドポリイソシアネートとが別々に合成された後、これらが混合されてもよい。
【0049】
2.3 メラミン化合物
メラミン化合物としては、従来公知のメラミン化合物を使用することができる。メラミン化合物としては、メラミン骨格を有する化合物を用いることができ、例えば、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのポリメチロールメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数1~6のアルキル基を有するアルコキシメチル基となったアルコキシメチルメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数2~6のアシル基を有するアシロキシメチル基となったアシロキシメチルメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン樹脂は、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。このようなメラミン化合物としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンAPM、ベッカミンM-3、ベッカミンM-3(60)、ベッカミンMA-S、ベッカミンJ-101、及びベッカミンJ-101LF、ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380K、三木理研工業株式会社製のリケンレジンMMシリーズなどが挙げられる。
【0050】
メラミン化合物を用いる場合は、反応を促進させる観点から、これとともに触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒として、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX-110、キャタリストGT-3及びキャタリストNFC-1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3-P、及びユニカキャタリストMC-109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ-5などが挙げられる。
【0051】
2.4 式(A-1)~(C-2)
本実施形態に係る製造方法においては、窒素を含有するポリマーとして、下記一般式(A-1)、(A-2)、(B-1)、(B-2)、(C-1)及び(C-2)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位を含むポリマーを用いた場合においても、繊維製品に優れた抗ウイルス性と洗濯耐久性とを付与することができる。中でも、下記一般式(A-1)、(B-1)、(A-2)及び(B-2)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位を含むポリマーが好ましい。さらにその中でも、下記一般式(A-1)及び(B-1)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位を含むポリマーや下記一般式(A-2)及び(B-2)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位を含むポリマーがより好ましい。前者のポリマーは、例えば、下記一般式(A-1)に由来する構成単位と下記一般式(B-1)に由来する構成単位とを、モル比で、100:0~0:100の割合で含むものであってもよく、99.9:0.1~20:80の割合で含むものがより好ましく、99.9:0.1~50:50の割合で含むものであることがさらにより好ましい。後者のポリマーは、例えば、下記一般式(A-2)に由来する構成単位と下記一般式(B-2)に由来する構成単位とを、モル比で、100:0~0:100の割合で含むものであってもよく、100:0~20:80の割合で含むものであることがより好ましい。尚、当該ポリマーは、下記一般式(A-1)、(A-2)、(B-1)、(B-2)、(C-1)及び(C-2)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位に加えて、これら以外の構成単位を備えるものであってもよく、例えば、トリアリルアミンに由来する構成単位を備えるものであってもよい。
【0052】
【化10】
(式中、R21は水素原子又はメチル基を表し、R22は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R23は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Y-は-O-又は-N(H)-を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0053】
【化11】
(式中、R24は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0054】
一般式(A-1)において、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、R22は炭素数1~2のアルキレン基及びヒドロキシアルキレン基が好ましく、炭素数1~2のアルキレン基がより好ましい。また、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、R23は炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0055】
一般式(A-1)及び(A-2)において、Xp-で表されるアニオンとしては、第四級アンモニウムイオンと対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などの一価又は多価カルボン酸のイオン、アルキルリン酸イオン、アルキル硫酸イオン、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、硫酸水素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸2水素イオン、リン酸1水素イオンなどを挙げることができる。中でも、繊維製品の抗ウイルス性をより向上させるという点からは、ハロゲン化物イオン、炭素数が1~2のアルキル硫酸イオン、カルボン酸イオン、アルキルリン酸イオン、硝酸イオンが好ましく、ハロゲン化物イオン、炭素数が1~2のアルキル硫酸イオンがより好ましい。Xp-で表されるアニオンにおいてpは任意の自然数であってよいが、繊維製品の抗ウイルス性をより向上させるという観点からは、pは1~3の整数であるのが好ましく、より好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。
【0056】
一般式(A-1)で表される化合物の具体例としては、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムサルフェート、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド、(3-(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。市販品としては、例えば、DMAEA-Q(2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、DMAPAA-Q(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド)(以上、株式会社興人製)、ブレンマー(登録商標)QA(N,N,N,-トリメチル-N-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド)(日油株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
一般式(A-1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
一般式(A-2)において、R24は、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0059】
一般式(A-2)で表される化合物の具体例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。市販品としては、例えば、DADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ダイソー株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
一般式(A―2)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
【化12】
(式中、R25は水素原子又はメチル基を表し、R26は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R27は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Z-は-O-又は-N(H)-を表す。)
【0062】
【化13】
(式中、R28は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0063】
一般式(B-1)で表される化合物において、R25、R26、R27は、それぞれ一般式(A-1)のR21、R22、R23と同じであってよい。
【0064】
一般式(B-1)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。市販品としては、例えば、アクリエステルDM(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、アクリエステルDE(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)(以上、三菱ケミカル株式会社製)、アロン(登録商標)DA(アクリル酸ジメチルアミノエチル)(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0065】
一般式(B-1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
一般式(B-2)において、R28は、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、水素原子、炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子及び炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0067】
一般式(B-2)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジアリルアミン、メチルジアリルアミンなどが挙げられる。
【0068】
一般式(B-2)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
【化14】
(式中、R29は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0070】
【化15】
(式中、R30は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、Xp-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0071】
一般式(C-1)及び(C-2)において、R29及びR30は、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、水素原子、炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子及び炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0072】
一般式(C-2)において、Xp-で表されるアニオンとしては、第四級アンモニウムイオンと対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、一般式(A-1)や(A-2)におけるものと同様であっても異なっていてもよい。アニオンの具体例については、上述した通りである。
【0073】
一般式(C-1)及び(C-2)で表される化合物は、各々、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
2.5 ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物
本実施形態に係る製造方法においては、窒素を含有するポリマーとして、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩に由来する構造と、ジシアンジアミドに由来する構造とを備えるもの(ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物)を用いた場合においても、繊維製品に優れた抗ウイルス性と洗濯耐久性とを付与することができる。また、当該反応縮合物とともに、元素周期律表における第II族金属の酸塩を併用してもよい。
【0075】
ポリアルキレンポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンなどの直鎖状ポリアミンが好ましい。これらのポリアルキレンポリアミンは、その塩、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などの塩であってもよい。
【0076】
第II族金属の酸塩は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、亜鉛、カドミウム又は水銀の塩であってよく、特に亜鉛、カルシウム又はマグネシウムの塩、特に塩化物、硫酸塩、ギ酸塩、硝酸塩等が好ましい。
【0077】
2.6 式(D)
本実施形態に係る製造方法においては、窒素を含有するポリマーとして、下記一般式(D)で示されるポリマーを用いた場合においても、繊維製品に優れた抗ウイルス性と洗濯耐久性とを付与することができる。
【0078】
【化16】
【0079】
式(D)において、R31は炭素数1~4のアルキレン基であり、R32はメチル基又はエチル基であり、R33はメチル基又はエチル基であり、R34は炭素数3又は4のアルキレン基であり、R35はメチル基又はエチル基であり、R36はメチル基又はエチル基であり、R37は炭素数1~4のアルキレン基であり、Z31はハロゲンであり、kは任意の自然数である。
【0080】
3.アニオン界面活性剤
アニオン界面活性剤は繊維に対して少なくとも抗ウイルス性を付与する。本実施形態に係る製造方法においては、アニオン界面活性剤として様々な化合物を採用可能である。特に、アニオン界面活性剤が、カルボン酸型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である場合に、一層優れた抗ウイルス性と洗濯耐久性とが確保され易い。
【0081】
3.1 カルボン酸型
カルボン酸型のアニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸、N―アシルサルコシンおよび脂肪酸、ならびにこれらの塩を挙げることができる。
【0082】
3.2 スルホン酸型
スルホン酸型のアニオン界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸、アルカンスルホン酸、アルファオレフィンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、分岐アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸およびN-メチル-N-アシルタウリンならびにこれらの塩を挙げることができる。
【0083】
3.3 硫酸エステル型
硫酸エステル型のアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸および油脂硫酸エステルならびにこれらの塩を挙げることができる。
【0084】
3.4 リン酸エステル型
リン酸エステル型のアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルリン酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸ならびにこれらの塩を挙げることができる。
【0085】
3.5 好ましいアニオン界面活性剤
3.5.1 R41-(OA41-で示される構造を有するもの
アニオン界面活性剤は、R41-(OA41-で示される構造を有するものが好ましい。ここで、R41は炭素数6~40の炭化水素基であり、A41は炭素数2~4のアルキレン基であり、xは0~20の整数である。抗ウイルス性に一層優れる観点から、R41の炭素数は6以上、好ましくは8以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは16以下、特に好ましくは15以下である。R41は、直鎖であっても分岐を有するものであってもよく、環状炭化水素基を含んでいてもよいが、特に、R41が分岐を有する場合に、抗ウイルス性に一層優れたものとなり易い。また、xは0~10の整数である場合に、抗ウイルス性に一層優れたものとなり易い。
【0086】
3.5.2 R42-O-(A42O)-X42
アニオン界面活性剤は、R42-O-(A42O)-X42で示されるものも好ましい。
【0087】
42は、炭素数6~40のアルキル基、炭素数6~40のアルケニル基、炭素数6~40のアリール基又は炭素数6~40のアラルキル基を表す。アルキル基およびアルケニル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基等の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、アルキル基およびアルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。炭素数6~40のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、クミルフェニル基、ビフェニル基、置換フェニル基、置換ナフチル基、置換クミルフェニル基、置換ビフェニル基などが挙げられる。置換基としては、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基及び1~5個のスチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。R42は、置換基を含めた炭素数が6~40であればよい。炭素数は好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは16以下、特に好ましくは15以下である。
【0088】
42は、炭素数2~4のアルキレン基である。
【0089】
nは0~20の整数であり、好ましくは0~10の整数である。
【0090】
42は下記一般式(1a)~(1g)で示されるいずれかの基である。
【0091】
【化17】
(式(1a)~(1g)中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は1価のカチオン基を示す。1価のカチオン基については、「塩の種類」として後述する。)
【0092】
3.5.3 R43-X43
アニオン界面活性剤は、R43-X43で示されるものも好ましい。R43は、上述のR42-O-(A42O)-X42におけるR42と同様である。X43は、-SOMで示される基又は-COOMで示される基であり、Mはそれぞれ独立に水素原子又は1価のカチオン基を示す。1価のカチオン基については、「塩の種類」として後述する。
【0093】
アニオン界面活性剤は、上記のカルボン酸型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤のうち、特に、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である場合、中でも、スルホン酸型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である場合に、抗ウイルス性及び耐久性に特に優れる。
【0094】
3.6 塩の種類
アニオン界面活性剤について、その塩の種類は特に限定されるものではない。例えば、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0095】
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。
【0096】
アルキルアミン塩を構成するアルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルジメチルアミン等が挙げられる。
【0097】
アルカノールアミン塩を構成するアルカノールアミンとしては、ジメチルモノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロピルエタノールアミン等が挙げられる。
【0098】
4.接触方法
本実施形態に係る製造方法において、上記の繊維に上記の窒素を含有するポリマーと上記のアニオン界面活性剤とを接触させる方法は特に限定されるものではない。例えば、(1)上記の窒素を含有するポリマー(又は当該ポリマーを構成するモノマー成分等)と上記のアニオン界面活性剤とを含む処理液を繊維に接触させる方法、(2)上記の窒素を含有するポリマー(又は当該ポリマーを構成するモノマー成分等)を含む第1処理液と上記のアニオン界面活性剤を含む第2処理液とを別々に接触させる方法などが挙げられる。すなわち、本実施形態に係る製造方法においては、処理液を用いて繊維の処理を行う場合、窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを同浴で処理してもよいし、別浴で処理してもよい。繊維に対して処理液による処理を行うタイミングは特に限定されるものではない。
【0099】
4.1 同浴処理の場合
繊維に対して窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを同浴で処理する方法としては特に限定されるものではなく、例えば、パディング処理、浸漬処理、塗布処理(例えば、スプレー処理、インクジェット加工、泡加工、及びコーティング処理等から選ばれる少なくとも1種の処理であってもよい。以下同様である。)等が挙げられ、パディング処理又は塗布処理が好ましい。この場合の処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整すればよい。
【0100】
繊維に対して上記の通り同浴で処理を行った後は、適宜乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法に特に制限は無く、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度や乾燥時間も特に制限されず、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。40~190℃で20秒~10分がさらに好ましい。必要に応じて、乾燥後に100~190℃の温度で10秒~5分間程度加熱処理してもよい。130~190℃で30秒~5分がさらに好ましい。
【0101】
同浴処理の場合における繊維に対する窒素を含有するポリマーやアニオン界面活性剤の付着量は特に限定されるものではない。例えば、繊維製品は、その全体を基準(100質量%)として、窒素を含有するポリマーが0.01~10質量%付着しているものであってもよい。下限は好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、上限は好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。また、繊維製品は、その全体を基準(100質量%)として、アニオン界面活性剤が0.005~5質量%付着しているものであってもよい。下限は好ましくは0.01質量%以上であり、上限は好ましくは2質量%以下である。繊維に対する各成分の付着量は、処理液の濃度等によって適宜調整可能である。
【0102】
4.2 別浴処理の場合
別浴処理の場合、繊維に対して窒素を含有するポリマーを含む第1処理液を接触させた後で、アニオン界面活性剤を含む第2処理液を接触させるとよい。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、繊維に窒素を含有するポリマーを接触させること(第1工程)、及び、前記ポリマーを接触させた後で、前記繊維にアニオン界面活性剤を接触させること(第2工程)、を含むものであってもよい。これにより、繊維製品における抗ウイルス性及びその洗濯耐久性が一層優れたものとなり易い。
【0103】
4.2.1 第1工程
繊維に対して窒素を含有するポリマーを含む第1処理液を接触させる方法としては特に限定されるものではないが、特に、パディング処理又は塗布処理が好ましい。処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整すればよい。
【0104】
繊維に対して第1処理液を接触させた後は、適宜乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法に特に制限は無く、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度や乾燥時間も特に制限されず、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。40~190℃で20秒~10分がさらに好ましい。
【0105】
第1工程における繊維に対する窒素を含有するポリマーの付着量は特に限定されるものではない。例えば、繊維製品は、その全体を基準(100質量%)として、窒素を含有するポリマーが0.01~10質量%付着しているものであってもよい。下限は好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、上限は好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。繊維に対する窒素を含有するポリマーの付着量は、第1処理液の濃度等によって適宜調整可能である。
【0106】
第1工程においては、第1処理液中に窒素を含有するポリマーとともにカチオン化合物を併用することが好ましい。カチオン化合物としては、例えば、第4級アンモニウムカチオン基を有する化合物が挙げられる。第4級アンモニウムカチオン基を有する化合物は繊維製品の表面において抗菌及び抗ウイルス性を発現し得る。抗菌及び抗ウイルス性を有する第4級アンモニウムカチオン基としては、シラン系のアンモニウムカチオン基や、ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウムカチオン基や、アルキルアンモニウムカチオン基等が挙げられる。このような化合物は、第4級アンモニウムカチオン基を少なくとも一つ有していればよい。第4級アンモニウムカチオン基の対イオンであるアニオンの種類は特に限定されるものではない。例えば、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンであってよい。芳香族アニオンとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸又はアルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。カチオン化合物は、例えば、下記一般式(a)で示される化合物、及び、下記一般式(b)で示される化合物のうちの少なくとも一つの化合物であってよい。
【0107】
【化18】
【0108】
【化19】
【0109】
式(a)において、R61は炭素数10~22のアルキル基であり、R62はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、R63はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、R64は炭素数2~4のアルキレン基であり、R65はメチル基又はエチル基であり、R66はメチル基又はエチル基であり、R67はメチル基又はエチル基であり、Zはハロゲンである。
【0110】
61の具体例としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ウンエイコシル基、ドエイコシル基、トリエイコシル基、テトラエイコシル基等が挙げられる。R62とR63とは、互いに同じ基であってもよい。また、R65~R67は、互いに同じ基であってもよい。Zは塩素であっても、臭素であっても、これ以外のハロゲンであってもよいが、特に塩素である場合に高い性能が期待できる。式(b)におけるハロゲンについても同様である。
【0111】
式(a)で表されるシラン系第4級アンモニウム塩のうち、メトキシシラン系第4級アンモニウム塩の具体例としては、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジイソプロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジエチル(3-トリメトキシシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。中でも、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドは、抗菌・抗ウイルス性が良好となる。
【0112】
式(a)で表されるシラン系第4級アンモニウム塩のうち、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩の具体例としては、上記メトキシシラン系第4級アンモニウム塩として例示したものにおいて、トリメトキシシリル基をトリエトキシシリル基に置換したものが挙げられる。
【0113】
式(b)において、R68は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、R69はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(A61O)Hで表される基であり、A61Oは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、sは1~10の整数であり、R70はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、qは1又は2であり、rは1又は2であり、q+rは3であり、lは1又は2であり、Zはモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
【0114】
式(b)において、R68の炭素数が小さ過ぎても、大き過ぎても、抗菌・抗ウイルス性が低下し易い。R68の炭素数は10以上又は12以上であってもよく、20以下又は18以下であってもよい。
【0115】
式(b)において、R69がメチル基である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。
【0116】
式(b)において、R70が炭素数2~4のヒドロキシアルキル基、特にヒドロキシエチル基である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。
【0117】
式(b)において、Zがモノアルキルリン酸又はジアルキルリン酸である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸のアルキル基としては炭素数1~12のアルキル基を挙げることができる。その中でも炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましい。
【0118】
式(b)において、Zとなり得る芳香族アニオンの具体例としては、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸又はアルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0119】
式(b)で表される化合物の具体例としては、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩等が挙げられる。中でも、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を採用した場合、抗菌性・抗ウイルス性等が一層向上する。
【0120】
繊維に対するこのようなカチオン化合物の付着量は特に限定されるものではないが、例えば、繊維製品は、その全体を基準(100質量%)として、カチオン化合物が0.01~5質量%付着しているものであってもよい。
【0121】
4.2.2 第2工程
繊維に対してアニオン界面活性剤を含む第2処理液を接触させる方法としては特に限定されるものではなく、例えば、浸漬処理、パディング処理、塗布処理などが挙げられる。繊維に対してアニオン活性剤を含む第2処理液を接触させる場合、その処理温度は常温~100℃であるとよく、処理時間は数秒~30分であるとよい。
【0122】
尚、第1工程の後に、繊維に付着した余分な化合物を除去するために水洗等の洗浄処理を行ったうえで、第2工程を行ってもよい。また、第2工程において、繊維にアニオン活性剤を含む第2処理液を接触させた後は、湯洗や水洗等をしてもよい。
【0123】
繊維に対して第2処理液を接触させた後は、適宜乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法に特に制限は無く、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度や乾燥時間も特に制限されず、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。40~130℃で20秒~10分がさらに好ましい。
【0124】
第2工程における繊維に対するアニオン界面活性剤の付着量は特に限定されるものではない。例えば、繊維製品は、その全体を基準(100質量%)として、アニオン界面活性剤が0.001~5質量%付着しているものであってもよく、0.005~5質量%付着しているものであってもよい。下限は好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、上限は好ましくは2質量%以下である。繊維に対するアニオン界面活性剤の付着量は、第2処理液の濃度等によって適宜調整可能である。
【0125】
4.3 処理液に含まれるその他の成分
同浴処理の場合及び別浴処理の場合のいずれにおいても、処理液は、酸成分、アルカリ成分、界面活性剤、キレート剤等のその他の成分を含んでいてもよい。処理液のpHは、特に限定されないが、例えば、2以上7以下であってもよい。
【0126】
5.抗菌・抗ウイルス性繊維製品
上述の通り、本実施形態に係る製造方法によれば、窒素を含有するポリマー及びアニオン界面活性剤を有する抗菌・抗ウイルス性繊維製品が得られる。当該繊維製品は、抗ウイルス性に優れるとともに、抗ウイルス成分の洗濯耐久性にも優れる。当該繊維製品は、例えば、ウイルスと接触する可能性のある繊維製品のいずれにも適用可能である。例えば、通気性シート、医療用器具、壁材等の内装材、衣服等が挙げられる。
【実施例
【0127】
以下、本発明について、実施例を示しつつさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0128】
1.別浴処理についての検討
1.1 第1処理液の調製
下記のグリオキザール樹脂と、下記のブロックドイソシアネートの無色透明粘稠液状組成物と、下記のメラミン樹脂と、下記の組成物1~3のいずれかと、下記のドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム・ブチルリン酸エステル塩を15重量%含む組成物と、のうちの少なくとも1つ、及び、任意に触媒1(ユニオン化学工業株式会社製、ユニカキャタリストMC-109)又は触媒2(ユニオン化学工業株式会社製のユニカカタリスト P-3)を、下記表1~3に示される組成となるように混合及び希釈して第1処理液を得た。
【0129】
1.1.1 グリオキザール樹脂の用意
グリオキザール樹脂としてユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E(商品名)を用意した。
【0130】
1.1.2 ブロックドイソシアネートの合成
反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体252質量部と、メチルイソブチルケトン5質量部とを添加し、60~70℃まで加熱した。次いで、3,5-ジメチルピラゾール109.6質量部を滴下し、1時間撹拌した。さらに、エチレングリコール11.1質量部を滴下し、60~70℃で赤外分光光度計にて確認されるイソシアネート含量がゼロになるまで反応させることにより、エチレンオキシ基3質量%含有ピラゾールブロックドポリイソシアネート化合物を98.7質量%含む無色透明粘稠液状組成物を得た。
【0131】
1.1.3 メラミン樹脂の用意
メラミン樹脂としてユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380-K(商品名)を用意した。
【0132】
1.1.4 組成物1の調製
反応容器にメタクリレートDMA-200(三洋化成工業株式会社製、メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(110質量部、0.70モル)、イソプロピルアルコール(50質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で60~70℃で4級化剤としてジメチル硫酸(90質量部、0.71モル)を6時間かけて滴下した。その後、60~70℃で1時間反応させることで、上記の一般式(A-1)で表される化合物を80質量%含む組成物a1を得た。得られた組成物a1(247.3質量部、不揮発分換算で197.8質量部)、上記の一般式(B-1)で表される化合物としてメタクリレートDMA-200(0.2質量部)、イオン交換水(750.5質量部)、重合開始剤として過硫酸カリウム(1.5質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させた。次いで、グリシジル基を有する架橋剤としてデナコールEX-830(商品名、ナガセケムテックス(株)製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量482))(2質量部)を仕込み75~80℃で4時間反応させ、ポリマーを20質量%含む組成物1を得た。
【0133】
1.1.5 組成物2の調製
組成物a1(124質量部、不揮発分換算で99質量部)、一般式(B-1)で表される化合物としてメタクリレートDMA-200(99質量部)、イオン交換水(775質量部)、重合開始剤として過硫酸カリウム(1.5質量部)を仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させた。次いで、グリシジル基を有する架橋剤としてデナコールEX-830(商品名、ナガセケムテックス(株)製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量482))(2質量部)を仕込み75~80℃で4時間反応させ、ポリマーを20質量%含む組成物2を得た。
【0134】
1.1.6 組成物3の調製
上記の一般式(D)において、R31がエチレン基であり、R32がメチル基であり、R33がメチル基であり、R34がプロピレン基であり、R35がメチル基であり、R36がメチル基であり、R37がエチレン基でありZ31が塩素であり、重量平均分子量が30,000である高分子化合物を15質量%含む組成物3を用意した。
【0135】
1.1.7 ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩の合成
n-ブタノール3モルと無水リン酸1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステル143質量部と水497質量部を反応容器に仕込み、ドデシルジメチルアミン260質量部を加えて中和した。この中和物のなかにエチレンオキサイド100質量部を仕込み、100℃で3時間反応させ、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を45.3質量%含む組成物1000質量部を得た。これをドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩が15重量%となるように調整した。
【0136】
1.2 第2処理液の調製
ドデシルベンゼンスルホン酸Naを含む組成物(花王社製ネオペレックス G-15(有効成分16%))、アルカンスルホン酸NaとしてC14-C17の2級アルキルスルホン酸Naを含む組成物(WELLCHEM社製HOSTAPUR SAS-60(有効成分60%))、ドデシル硫酸エステルNaを含む組成物(花王社製エマール2F-30(有効成分濃度30質量%))、下記のイソデシルリン酸エステルNaを含む組成物、及び、下記のスルホコハク酸ジアルキルエステルNaを含む組成物のうちのいずれか1つを下記表1~3の濃度となるように希釈して第2処理液を得た。
【0137】
1.2.1 イソデシルリン酸エステルNaを含む組成物の調製
上記のイソデシルリン酸エステルNaは、以下のようにして得られたものである。すなわち、イソデカノール3モルと、無水リン酸(五酸化二リン)1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステルに、水と中和塩としての水酸化ナトリウムとを添加し、アルキルリン酸エステル塩が15質量%となるように調整した。
【0138】
1.2.2 スルホコハク酸ジアルキルエステルNaを含む組成物の調製
上記のスルホコハク酸ジアルキルエステルNaは、以下のようにして得られたものである。すなわち、無水マレイン酸98部(1モル)、イソトリデカノール400部(2モル)及びパラトルエンスルホン酸1.5部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して170~180℃にて約4時間脱水反応させ、その後冷却して、酸価9.2のジエステル化物を得た。得られたジエステル化物480部とヘキシレングリコール110部を反応容器に仕込み、80℃まで加熱昇温し、無水重亜硫酸ソーダ95部、苛性ソーダ14部及び水207部の中和溶液を加え、90~100℃にてスルホン化反応させ、その後冷却して、結合硫酸分8.5のスルホコハク酸ジ(イソトリデシル)エステルナトリウム塩を65質量%含む微黄色液状組成物を得た。
【0139】
1.3 別浴処理
上記の第1処理液及び第2処理液を用いて下記の第1工程及び第2工程を行い、繊維に対して抗ウイルス性を付与した。下記表1~3に示されるように、参考例1~16については第1工程と第2工程とをこの順に行い、比較例1~4については第1工程のみを行い、比較例5~8については第2工程のみを行うものとした。
【0140】
1.3.1 第1工程
参考例1~6、9~16、比較例1~4)
ポリエステル100%ニット(目付120g/m)を第1処理液に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間乾燥処理し、170℃で30秒間熱処理をした。
【0141】
参考例7)
綿100%ニット(目付165g/m)を第1処理液に浸漬させ、絞り率90%にて処理し、次いで、130℃で2分間乾燥処理し、150℃で30秒間熱処理をした。
【0142】
参考例8)
カチオン可染ポリエステル(CDポリエステル)100%ニット(目付140g/m)を第1処理液に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間乾燥処理し、170℃で30秒間熱処理をした。
【0143】
(比較例5~8)
第1工程を行わなかった。
【0144】
1.3.2 水洗
参考例4、5)
第1工程の後で、グリオキザール樹脂を付着させたポリエステルニットに対して60℃の流水中で5分間洗浄を行い、脱水した。
【0145】
1.3.3 第2工程
参考例1~3、6~16、比較例5、7)
第1工程後のポリエステルニット、綿ニット又はCDポリエステルニットに対して、第2処理液を用いた浸漬処理((株)テキサム技研製ミニカラー染色機 浴比1:15、80℃x15分)を行った。浸漬処理を終了した後、生地を取り出し、流水中で2分間洗浄した。その後、脱水し、130℃で2分間の乾燥処理をして、評価用の繊維製品を得た。
【0146】
参考例4、5、比較例6、8)
第1工程後のポリエステルニットを第2処理液に浸漬させ(参考例4、5に関しては第1工程後で水洗後)、絞り率100%にて処理し、次いで130℃で2分間乾燥処理をして、評価用の繊維製品を得た。
【0147】
(比較例1~4)
第2工程を行わずに、第1工程後のポリエステルニットをそのまま評価用の繊維製品とした。
【0148】
1.4 洗濯法
JIS L1930(2014) C4G法に準じて、繊維製品を洗濯した。洗剤はJAFET標準配合洗剤(繊維評価技術評議会)を使用し、洗濯液の洗剤濃度を1.33g/Lとして使用した。前記条件により、繰り返し洗濯を10回行った。
【0149】
1.5 耐久抗ウイルス性の評価
JIS L1922(2016)により抗ウイルス活性値を測定し、上記の洗濯前後における繊維製品の抗ウイルス性能を評価した。使用ウイルスとして、A型インフルエンザウイルス(H3N2) ATCC VR-1679を使用した。抗ウイルス活性値=log(Va)-log(Vc)として評価した。log(Va)はウイルス接種直後の無加工試料から回収したウイルス感染価の常用対数値であり、log(Vc)はウイルス2時間作用後の加工試料から回収したウイルス感染価の常用対数値である。結果を下記表1~3に示す。表1~3に示される活性値が高いものほど抗ウイルス性に優れる。尚、JISにおいては、抗ウイルス性の活性値が2.0以上の場合を効果ありとしている。本実施例において、洗濯前において抗ウイルス活性値が2.0を下回ったものについては、洗濯後の抗ウイルス活性値の測定を行わなかった。
【0150】
1.6 耐久抗菌性の評価
JIS L1902(2015)定量試験(8.2菌液吸収法)により抗菌活性値を測定し、上記の洗濯前後における繊維製品の抗菌性能を評価した。使用菌として黄色ぶどう球菌Staphylococcus aureus NBRC12732を用いた。結果を下記表1~3に示す。表1~3に示される活性値が高いものほど抗菌性に優れる。本実施例においては、抗菌活性値2.0以上である場合に耐久抗菌性が良好であると判断した。
【0151】
1.7 評価結果
下記表1~3に参考例1~16及び比較例1~8のそれぞれについて、第1工程及び第2工程の詳細、並びに、抗ウイルス性及び抗菌性の評価結果をまとめた。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
表1~3に示される結果から明らかなように、繊維に対して窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを接触させた参考例1~16は、窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とのうちの片方を接触させなかった比較例1~8と比べて、抗ウイルス性及びその洗濯耐久性、並びに、抗菌性及びその洗濯耐久性に優れるものであった。また、比較例2、3から明らかなように、繊維に対して窒素を含有するポリマーとともにカチオン化合物を接触させた場合、抗ウイルス性が発現するものの、上記処理条件では、その効果はアニオン界面活性剤よりも低い傾向にあった。一方で、参考例3~10のように、第1処理液において窒素を含有するポリマーとともにカチオン化合物を併用し、且つ、第2処理液においてアニオン界面活性剤を用いた場合、抗ウイルス性及びその洗濯耐久性、並びに、抗菌性及びその洗濯耐久性が顕著に向上した。すなわち、カチオン化合物とアニオン界面活性剤とを併用したことによる相乗効果が認められた。
【0156】
2.同浴処理についての検討
2.1 処理液の調製
アニオン界面活性剤として、
上記のスルホコハク酸ジ(イソトリデシル)エステルナトリウム塩を65質量%含む組成物、下記のスルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)エステルナトリウム塩を15質量%含む組成物、下記のオクチルリン酸エステルカリウム塩を15質量%含む組成物、下記のイソデシルリン酸エステルKを15質量%含む組成物、下記のイソトリデシルリン酸エステルカリウム塩を15質量%含む組成物、下記のイソヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩を15質量%含む組成物、又は、上記のC14-C17の2級アルキルスルホン酸Naを含む組成物(WELLCHEM社製HOSTAPUR SAS-60(有効成分60%))と、
窒素を含有するポリマーとして、
上記のグリオキザール樹脂(ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E)、上記のメラミン樹脂(ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380-K)、上記の組成物3、又は、下記の組成物4~9のいずれか1つと、
触媒として、
上記の触媒1又は2と、
を下記表4~6の濃度となるように希釈して処理液を得た。
【0157】
2.1.1 スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)エステルナトリウム塩を15質量%含む組成物の調製
スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)エステルナトリウム塩(東京化成工業社製、純度95.0%超)をイオン交換水に溶解して、当該塩を15質量%含む組成物を調製した。
【0158】
2.1.2 オクチルリン酸エステルKを15質量%含む組成物の調製
ノルマルオクタノール3モルと、無水リン酸(五酸化二リン)1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステルに、水と中和塩としての水酸化カリウムとを添加し、アルキルリン酸エステル塩が15質量%となるように調整した。
【0159】
2.1.3 イソデシルリン酸エステルKを15質量%含む組成物の調製
上記のイソデシルリン酸エステルKは、以下のようにして得られたものである。すなわち、イソデカノール3モルと、無水リン酸(五酸化二リン)1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステルに、水と中和塩としての水酸化カリウムとを添加し、アルキルリン酸エステル塩が15質量%となるように調製した。
【0160】
2.1.4 組成物4の調製
反応容器にジアリルアミン(広栄化学製)(435質量部)とイオン交換水(100質量部)を仕込み、工業用塩酸35%(465質量部)を滴下しながら仕込み、ジアリルアミン塩酸塩を60質量%含む組成物Aを得た。別の反応容器に組成物A(175質量部)とDADMAC(ダイソー株式会社製、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(不揮発分65質量%))(430質量部)とイオン交換水(382質量部)と重合開始剤として過硫酸アンモニウム(13質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させて、組成物4を得た。
【0161】
2.1.5 組成物5の調製
反応容器に組成物A(670質量部)とイオン交換水(318質量部)と重合開始剤として過硫酸アンモニウム(12質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させて、組成物Bを得た。続いて、別の反応容器にDADMAC(ダイソー株式会社製、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(不揮発分65質量%))(615質量部)とイオン交換水(373質量部)と重合開始剤として過硫酸アンモニウム(12質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させて、組成物Cを得た。その後、組成物B(350質量部)と組成物C(質量部650)とを混合し、組成物5を得た。
【0162】
2.1.6 組成物6の調製
反応容器にメタクリレートDMA-200(三洋化成工業株式会社製、メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(110質量部、0.70モル)と、イソプロピルアルコール(50質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で60~70℃で4級化剤としてジメチル硫酸(90質量部、0.71モル)を6時間かけて滴下した。その後、60~70℃で1時間反応させることで、上記一般式(A-1)で表される化合物を80質量%含む組成物Dを得た。当該組成物D(250質量部)と、イオン交換水(500質量部)と、重合開示剤としての過硫酸カリウム(1.5質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させ、その後イオン交換水250質量部を加えて、所定のポリマーを20質量%含む組成物6を得た。
【0163】
2.1.7 組成物7の調製
反応容器にジアリルアミン(広栄化学製)(435質量部)とイオン交換水(295質量部)を仕込み、工業用塩酸35%(465質量部)を滴下しながら仕込み、ジアリルアミン塩酸塩を60質量%含む組成物を得た。これに、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(8.8質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させて、所定ポリマーを50質量%含む組成物7を得た。
【0164】
2.1.8 組成物8の調製
206質量部のジエチレントリアミンに128質量部の塩化アンモニウムを60~140℃で撹拌しながら徐々に添加した。さらに、160℃まで昇温し、4質量部の塩化亜鉛、218質量部のジシアンジアミドを添加した。この混合反応物を230~250℃で2時間加熱して縮合させ、450質量部の淡黄色の反応縮合物を得たうえで、当該反応縮合物を45質量%含む溶液(組成物8)を得た。
【0165】
2.1.9 組成物9の用意
組成物9として、ニット―ボーメディカル株式会社製のPAS-H10L(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(4級アンモニウム塩単独、28%水溶液)を用意した。
【0166】
2.2 同浴処理
(参考例17~21、実施例22~28、参考例29、比較例9~15)
ポリエステル100%ニット(目付120g/m)を処理液に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間乾燥処理し、170℃で30秒間熱処理をして、評価用の繊維製品を得た。
【0167】
(実施例30~35)
綿100%ニット(目付165g/m)を処理液に浸漬させ、絞り率90%にて処理し、次いで、130℃で2分間乾燥処理し、150℃で1分間熱処理をして、評価用の繊維製品を得た。
【0168】
(実施例36)
ナイロン100%ニット(目付280g/m)を処理液に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間乾燥処理し、170℃で30秒間熱処理をして、評価用の繊維製品を得た。
【0169】
2.3 耐久抗ウイルス性及び耐久抗菌性の評価
別浴処理における評価と同様にして、繊維製品の耐久抗ウイルス性及び耐久抗菌性を評価した。
【0170】
2.4 評価結果
下記表4~6に参考例17~21、実施例22~28、参考例29、実施例30~36及び比較例9~15のそれぞれについて、処理液の詳細、抗ウイルス性及び抗菌性の評価結果をまとめた。
【0171】
【表4】
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
表4~6に示される結果から明らかなように、繊維に対して窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを接触させた参考例17~21、実施例22~28、参考例29、実施例30~36は、窒素を含有するポリマー及びアニオン界面活性剤のうちの一方を接触させなかった比較例9~15と比べて、耐久抗ウイルス性及び耐久抗菌性に優れるものであった。
【0175】
3.まとめ
以上の通り、別浴処理及び同浴処理のいずれにおいても、繊維に対して窒素を含有するポリマーとアニオン界面活性剤とを接触させることで、抗ウイルス性及びその洗濯耐久性、並びに、抗菌性及びその洗濯耐久性に優れる繊維製品を製造することができた。これは、以下のメカニズムによるものと推定される。すなわち、アニオン界面活性剤が窒素を含有するポリマーとともに繊維に付着した場合、当該ポリマーが繊維に比較的強固に付着し易く、且つ、当該ポリマーの窒素部分にアニオン界面活性剤が化学的に引き寄せられ易いことから、結果として、アニオン界面活性剤の繊維からの脱落が抑制されたものと考えられる。また、窒素を含有するポリマーは繊維の表面において皮膜を形成するものが多く、この場合、皮膜による物理的な作用によっても、アニオン界面活性剤の繊維からの脱落が抑制されたものとも考えられる。