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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/00 20200101AFI20231129BHJP
   D06F 58/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
D06F58/00 Z
D06F58/10 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022185445
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2019234134の分割
【原出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2023010838
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】517164556
【氏名又は名称】株式会社TOSEI
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙治
(72)【発明者】
【氏名】久保井 涼太
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 利隆
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-157795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134088(US,A1)
【文献】特開平04-144599(JP,A)
【文献】特開平09-053880(JP,A)
【文献】特開平11-276799(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062217(JP,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0008269(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F58/00-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥空間が画成される筐体と、
通気性を有するマット状部材を載置面に載置可能且つ前記乾燥空間に収容可能に構成されると共に内部空間を有し、前記内部空間と前記乾燥空間とを連通する通気孔が前記載置面に設けられている載置部と、
前記乾燥空間の上壁部から加熱された空気を前記乾燥空間に流入させる吸気流路と
前記筐体の底部であって、前記載置部の前記内部空間と連通し得る空間が画成される底部と、を備え、
前記載置部を前記筐体の乾燥空間から引き出す際の移動では前記載置部と前記底部とが離間し、前記載置部が前記筐体の乾燥空間に完全に収容された状態では、前記載置部の内部空間と前記底部の空間とが気密に接続され、前記乾燥空間の空気が前記マット状部材を通過して前記マット状部材を乾燥する乾燥機であって、
少なくとも前記乾燥空間の前記上壁部の前後方向に直交する左右方向の全域に設けられ、前記吸気流路と前記乾燥空間とを連通して前記乾燥空間に前記加熱された空気を流入させるための複数の流入孔を備えることを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
前記吸気流路には、ヒータにより加熱された空気が流入し、
前記ヒータの接続パイプが前記吸気流路の後方に位置する場合、前記上壁部の前方側に形成される前記流入孔の開口率は、前記上壁部の後方側に形成される前記流入孔開口率より大きいことを特徴とする請求項1記載の乾燥機。
【請求項3】
前記吸気流路の上方に霧生成部が更に設けられ、
前記ヒータにより加熱された空気を前記吸気流路に供給する第1接続パイプ連結され、前記霧生成部により生成された霧前記吸気流路に供給する第2接続パイプ備えることを特徴とする請求項に記載の乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄などによって水分を含んだ布団やマットレスなどのマット状部材を乾燥させる乾燥機が知られている。このような乾燥機として、その筐体に加熱された空気が流入する乾燥空間が画成され、当該乾燥空間内にマット状部材の載置部を配し、この載置部の内部に画成された内部空間と乾燥空間とを連通させ、載置されたマット状部材に加熱された空気を通過させることによって、マット状部材の乾燥を行うものがある。この種の乾燥機においては、載置部の上方に位置する壁部の一部に形成された通気孔から加熱された空気が乾燥空間に流入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-157795号公報
【文献】特開2000-288297号公報
【文献】実用新案登録第3086128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、乾燥空間において乾燥されるマット状部材の温度ムラを低減することができる乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の乾燥機は、乾燥空間が画成される筐体と、通気性を有するマット状部材を載置面に載置可能且つ前記乾燥空間に収容可能に構成されると共に内部空間を有し、前記内部空間と前記乾燥空間とを連通する通気孔が前記載置面に設けられている載置部と、前記乾燥空間の上壁部から加熱された空気を前記乾燥空間に流入させる吸気流路と、前記筐体の底部であって、前記載置部の前記内部空間と連通し得る空間が画成される底部と、を備え、前記載置部を前記筐体の乾燥空間から引き出す際の移動では前記載置部と前記底部とが離間し、前記載置部が前記筐体の乾燥空間に完全に収容された状態では、前記載置部の内部空間と前記底部の空間とが気密に接続され、前記乾燥空間の空気が前記マット状部材を通過して前記マット状部材を乾燥する乾燥機であって、少なくとも前記乾燥空間の前記上壁部の前後方向に直交する左右方向の全域に設けられ、前記吸気流路と前記乾燥空間とを連通して前記乾燥空間に前記加熱された空気を流入させるための複数の流入孔を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】乾燥機の構成を示す斜視図である。
図2】乾燥機の構成を示す正面図である。
図3】乾燥機の構成を示す平面図である。
図4】可動載置部の構成を示す斜視図である。
図5】可動載置部の構成を示す正面図である。
図6】可動載置部の構成を示す側面図である。
図7】パンチング孔群における1つの孔部の縦断面を示す断面図である。
図8図7に示すパンチング孔群の変形例を示す断面図である。
図9】布団が載置された可動載置部を示す正面図である。
図10】布団が載置された可動載置部を示す側面図である。
図11図2のA-A線断面図である。
図12】底壁部の構成を示す平面図である。
図13】押圧帯の通気孔を説明するための図である。
図14図11のB-B線断面図である。
図15図11のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の詳細について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0008】
(全体構成)
まず、本実施形態に係る乾燥機の全体構成について説明する。図1図3は、それぞれ、本実施形態に係る乾燥機の構成を示す斜視図、正面図、平面図である。以後、乾燥機1の正面側を前方、背面側を後方と称し、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と称して説明を行う。
【0009】
図1図3に示すように、本実施形態に係る乾燥機1は、本体部2と、本体部2内に収容され、乾燥機1による乾燥対象である布団を載置するための可動載置部3とを備える。
【0010】
本体部2は、筐体20と、ガスヒータ21と、排気ファン22と、霧生成部23と、制御部24とを備える。筐体20は、全体として中空略直方体の箱状に形成され、上方壁部25(図11参照)、一対の側方壁部26、後方壁部27、底壁部28、扉部29により囲われた乾燥空間Dが内部に画成される。この乾燥空間D内に可動載置部3を収容することができる。
【0011】
扉部29は、一方の側方壁部26に蝶番等により開閉可能に取り付けられ、前方側から乾燥空間Dへの可動載置部3の出し入れを可能としている。扉部29の一部は、例えばガラスなどの光透過性を有する窓部291として形成され、さらに使用者が扉部29を開閉させるための把持部292が設けられている。
【0012】
ガスヒータ21は、上方壁部25上方に且つ筐体20の最後方に設けられており、ガスバーナを有して当該ガスバーナにより空気を加熱し、接続パイプ253(図3参照)により後述する吸気流路251(図11参照)に加熱した空気を供給する。なお、ガスヒータ21は、他の方式により空気を加熱する他の装置により代替されても良い。
【0013】
排気ファン22は、ガスヒータ21の前方に設けられており、空気の逆流を防止するためのチャッキダンパ221を有して乾燥空間D内の空気を吸気し、チャッキダンパ221を介して外部へ排出する。
【0014】
霧生成部23は、ガスヒータ21と排気ファン22との間に設けられており、消臭剤、除菌剤、防ダニ剤などの薬剤を含む液体が貯留される貯液槽と、この貯液槽の底部に設けられて貯液槽に貯留された液体に超音波を発生させる超音波振動子とを有する超音波霧化装置として構成される。貯液槽は、接続パイプ231により後述する吸気流路251(図11参照)と流体的に接続される。
【0015】
制御部24は、排気ファン22の前方、即ち筐体20の最前方に設けられており、使用者が乾燥機1の動作に関する指示操作をするための操作パネル241を有し、操作パネル241が前方を向くように設けられる。制御部24は、操作パネル241になされた操作に基づいて、ガスヒータ21、排気ファン22、及び霧生成部23の動作を制御する。
【0016】
可動載置部3は、前後方向に可動に構成されている。可動載置部3を使用する際は、使用者が扉部29を開けて乾燥空間Dに収容された可動載置部3を前方に移動させてある程度乾燥空間Dから可動載置部3を引き出し、その上に布団を載置する。載置後に可動載置部3を後方(収容方向)に移動させて再度乾燥空間Dに収容し、扉部29を閉める。その後、使用者が操作パネル241を操作して乾燥機1に所望の乾燥動作をさせることにより、布団を乾燥することができる。
【0017】
なお、筐体20の底壁部28は、可動載置部3が前後に移動される際にその一部の走行経路として機能すると共に、可動載置部3が乾燥空間Dに収容された際に排気流路として機能する。この底壁部28については、次の可動載置部3の構成の説明と併せて後に詳述する。
【0018】
(可動載置部3)
可動載置部3の構成について詳細に説明する。図4図6はそれぞれ、可動載置部の構成を示す斜視図、正面図、側面図である。図7は可動載置部が備えるパンチング孔群における1つの孔部の縦断面を示す断面図であり、図8はその変形例を示す。図9図10は、それぞれ布団が載置された可動載置部を示す正面図、側面図である。図11図2のA-A線断面図であり、図12は筐体における底壁部の平面図である。図13は可動載置部が備える押圧帯の通気孔を説明するための図である。可動載置部3は、図4図6に示すように、載置台31と、台座部32と、押圧帯33とを備える。
【0019】
載置台31は、全体として、上面及び底面が前後方向に向くように横たえ、最も鋭角に形成された頂点に対向する一側面を下方に向けた中空の略三角柱状に形成される。以降の説明においては、三角柱としての上面及び底面の前方側を載置台31の前面とし、他方側を載置台31の背面とし、下方に向けられた三角柱としての一側面を載置台31の底面とする。また、他の傾斜する二側面と上端に形成された曲面とを載置台31の載置面とする。したがって載置面は、前後方向を向く仮想的な折り曲げ線が上端に位置付けられるように平面を折り曲げた形状となる。載置台31の底面は、台座部32の上面に接続される。
【0020】
図6に示すように、載置台31の両側面には、載置台31の内部空間P(図11参照)と乾燥空間Dとを連通する円形の複数の孔部からなるパンチング孔群311が設けられる。このパンチング孔群311を介して乾燥空間Dと内部空間Pとの空気の流動がなされる。これらパンチング孔群311は、載置台31の最上端から所定距離に亘って設けられ、この所定距離は、布団の長手方向幅の半分以上が好ましい。
【0021】
図7に示すように、パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、乾燥空間D側、即ち布団Fが当接する側(図中上側)の周縁部が、乾燥空間D側に向かうにつれて拡径するように曲面311aが形成されている。したがって、パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、乾燥空間D側の開口径(孔径)が内部空間P側の開口径より拡径することとなる。このような周縁部に曲面311aが形成されるパンチング孔群311は、内部空間P側の開口径が5~8φであることが好ましい。なお、パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、図8に示すように周縁部のみならず深さ方向全体に亘って曲面311aを形成してもよく、曲面311aに代わり乾燥空間D側に向かうにつれて拡径するようにテーパー面を形成してもよい。
【0022】
また、載置台31の正面には、使用者が可動載置部3を移動する際に把持する把持部312が設けられている。
【0023】
乾燥対象である布団Fを載置台31に載置する場合、図9及び図10に示すように、布団Fの短手方向を載置台31の前後方向に向け、パンチング孔群311を覆うように載置台31の載置面に載置する。この際、布団Fは載置面の傾斜に沿うように折り曲げられた状態となる。
【0024】
載置台31の上端は曲率を有する曲面に形成されており、その曲率半径は載置される布団Fの厚みの少なくとも0.9倍以上の大きさとすることが好ましい。このような曲率半径を有する曲面が形成されることにより、布団Fが折り曲げられて載置された場合、布団Fの折り曲げ部分を曲面に沿って面接触させることができ、そこに加わる応力を良好に分散することができる。もし載置台31の上方端部が鋭角、または曲率半径がより小さい曲面に形成されている場合、その上方端部に当接する布団Fの折り曲げ部分の一部に応力が集中することがある。このような応力集中が生じると、当該部分が圧縮され密度が高まることにより通気性が低下し、延いては乾燥効率が低下する可能性がある。しかしながら、載置台31が上述した曲率半径を有することにより、このような乾燥効率の低下を回避することができる。さらに、曲面においてもパンチング孔群311を形成することができるため、乾燥効率の向上も実現できる。
【0025】
台座部32は、図4及び図11に示すように、中空の略直方体状に形成されており、その内部空間Tと載置台31の内部空間Pとを接続するための開口部321aが上面に形成されている。一方、台座部32の下面には、筐体20の底壁部28内に形成された後述する下方排気流路281と内部空間Tとを接続するための開口部321bが形成されている。これら開口部321a及び開口部321bにより、内部空間P内の空気の下方排気流路281への流入を可能としている。
【0026】
台座部32には、前方端部下面に2つの前輪キャスタ322aが左右方向に離間して設けられると共に、その後方端部下面に左右方向略全域に亘って上方に窪む段差部322cが形成され、当該段差部322cに2つの後輪キャスタ322bが左右方向に離間して設けられている。前輪キャスタ322aは、後輪キャスタ322bより大径に形成され、その下方端部が後輪キャスタ322bより下方に位置するように設けられている。後輪キャスタ322bは、筐体20の底壁部28上面に走行可能に当接している。
【0027】
台座部32における前輪キャスタ322a後方には、左右方向に延在すると共に、前方から後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面323が形成されている。傾斜面323は可動載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、後述する支持キャスタ285が当接する位置に、傾斜面323の前方端部が位置している。この傾斜面323が形成されることにより、台座部32はその前方端部及び後方端部と比較して開口部321b近傍の領域、具体的には傾斜面323の後方端部から段差部322cの前方端部にかけて下方に僅かに突出した形状となっている。
【0028】
図11及び図12に示すように、後輪キャスタ322bの走行面を形成する筐体20の底壁部28にも同様に傾斜面283が形成されている。傾斜面283は、台座部32の傾斜面323と同一の傾斜角度、傾斜方向、及び傾斜長さを有しており、可動載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、後輪キャスタ322bが当接する位置に、傾斜面283の後方端部が位置するように形成されている。したがって底壁部28は、傾斜面323より前方の領域が上方に僅かに突出した形状となっている。可動載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、当該領域と開口部321b近傍の領域との間に僅かな間隙が形成されるよう、傾斜面283及び傾斜面323の高さを設定することが好ましい。
【0029】
さらに底壁部28の前方端部には、下方が開放された断面略コ字状のキャスタ台284が設けられており、その上面には台座部32の下面に走行可能に当接する2つの支持キャスタ285が左右方向に離間して設けられている。支持キャスタ285は、可動載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、傾斜面323の前方端部に位置して台座部32に当接しこれを支持している。可動載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、この支持キャスタ285により可動載置部3の前方側が支持されるため、本実施形態においては前輪キャスタ322aを乾燥機1の設置面から僅かに離間させている。キャスタ台284には台座部32の前輪キャスタ322aに接触しないよう、該当する位置に切欠き286が形成されている。
【0030】
このように台座部32の後輪キャスタ322bに対応して傾斜面283が底壁部28に形成され、底壁部28の支持キャスタ285に対応して傾斜面323が台座部32に形成されることにより、可動載置部3を乾燥空間Dから引き出す際に各キャスタが対向する傾斜面を同時に走行する。これにより、台座部32と底壁部28との平行性を保ったまま傾斜面の高さ分、台座部32を底壁部28から離間するように上方へ移動させることができると共に、安定した水平移動をすることができる。また、後輪キャスタ322bと支持キャスタ285とは左右方向において同位置に配設されている。したがって支持キャスタ285により後輪キャスタ322bの前方移動が規制されるため、使用者が可動載置部3を前方に移動させた際に、可動載置部3全体が乾燥空間Dから抜け出てしまうことを防止することができる。
【0031】
さらに、図11及び図12に示すように、底壁部28は内部に下方排気流路281が画成されており、その上面に下方排気流路281と内部空間Tとを接続するための開口部282と、当該開口部282後方に位置して後述する垂直流路271と下方排気流路281とを流体的に接続するための開口部287とが形成されている。開口部282は、可動載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、台座部32の開口部321bと対向する位置に且つ略同一形状に形成されている。
【0032】
開口部282の周縁部には、シール部材288が設けられており、可動載置部3が乾燥空間Dに収容された場合に台座部32の開口部321b周縁部がシール部材288に当接し、当該開口部282と台座部32の開口部321bとをシール部材288を介して気密に接続することができる。シール部材288は、底壁部28上にネジ等に締結具や接着剤等により移動不能に固定されており、対向する開口部間を気密に接続可能であればどのようなものを用いてもよい。例えば、フェルトや弾性部材等をシール部材288として用いることができる。なお、シール部材288は、開口部321bの周縁部に設けるようにしてもよい。
【0033】
以上のように可動載置部3は、後輪キャスタ322bが筐体20の底壁部28に当接し、支持キャスタ285により支持されることにより、筐体20に対して前後方向に相対移動して乾燥空間Dに対する収容及び引き出しが可能となっている。さらに可動載置部3は乾燥空間Dに収容された際に下方に相対移動することができ、開口部321bと開口部282とを気密に接続できる。
【0034】
なお、可動載置部3は、乾燥空間Dから引き出されるにつれ、後輪キャスタ322bが支持キャスタ285へ接近して前方側が下方に傾斜することとなる。しかしながら、当該傾斜により前輪キャスタ322aが設置面に接地することとなり、後輪キャスタ322bが常時筐体20の底壁部28に接地しているため、可動載置部3をある程度引き出したとしても可動載置部3を安定して走行させることができる。
【0035】
押圧帯33は、載置台31の前後方向両端部に設けられる可撓性を有する長尺の帯状部材であり、それぞれ布団Fの短手方向端部を載置台31の載置面に押圧する。押圧帯33は、載置台31の左右方向一方の側面(図9中左側)から載置台31の上端曲面を経由して他方の側面(図9中右側)に亘って延在し、その長手方向一端部は、載置台31の一方の側面に固定的に連結されている。一方、押圧帯33の長手方向他端部には、載置台31の他方の側面に設けられた連結装置313に対して着脱自在に連結可能な連結部材331が設けられている。
【0036】
このような連結装置313と連結部材331とを用いた連結機構としては、シートベルト等に用いられているバックル装置とタングとを用いたものが挙げられる。タングは孔部や切欠き等が形成された平板部材であり、これをバックル装置に設けられた挿入口に挿入することでバックル装置内でタングを係止することができる。一方、バックル装置の解除ボタンを押下することでタングの係止を解除することができる。その他、フックを用いて互いを係止するものや、面ファスナーを用いるなどしてもよく、着脱自在な連結機構であればどのようなものを用いてもよい。
【0037】
また、押圧帯33は、その一部に長手方向に伸縮自在な伸縮部332が形成されている。図9及び図10に示すように、載置された布団Fの短手方向端部を押圧する場合、その短手方向端部上に押圧帯33を這わせることとなるため、布団Fの厚みに応じて押圧帯33が載置面から離間し、連結部材331と連結装置313とが離間する。しかしながら当該離間距離分、伸縮部332が伸長することにより連結部材331と連結装置313とを連結することができる。さらに伸縮部332は、伸長した状態において連結部材331と連結装置313とが連結することにより、常時復元力が生じるため、当該復元力により押圧帯33が一様に布団Fを載置面側に押圧することができる。このような伸縮部332は、コイルバネやゴム体等の弾性を有する部材であることが好ましく、押圧帯33全体を伸縮部332としてもよい。
【0038】
また、図13に示すように、押圧帯33は伸縮部332を含めて一様に通気孔群333が穿設されており、押圧帯33に当接する布団Fの通気を可能としている。なお、図13においては通気孔群333が円形の孔部に形成されて孔部間に大きな間隔が形成されているが、押圧帯33を細かな孔が形成されたメッシュ部材で構成するようにしてもよい。
【0039】
(乾燥機における流路及び動作)
乾燥機における流路について図11図14、及び図15を用いて説明する。図14図15は、それぞれ、図11のB-B線断面図、C-C線断面図である。なお、説明上、図11においては切断面より左右方向に異なる位置に配設された接続パイプ253,254、及び接続パイプ231の一部が一点鎖線により仮想的に示されている。同様に、図14においては切断面より上方に位置する接続パイプ253,231が一点鎖線により仮想的に示されており、図15においては切断面より上方に位置する接続パイプ254が一点鎖線により仮想的に示されている。また、これらの各図に示す点線状の矢印は、空気の流動方向を示している。
【0040】
図11に示すように、筐体20の上方壁部25の上方には、2枚の水平に延在して互いに平行な平板部25a,25bが設けられており、最上方に位置する平板部25b上に、ガスヒータ21、排気ファン22及び霧生成部23がそれぞれ載置されている。当該平板部25bの下方に位置する平板部25aを境に、2つの空間が上下方向に分割して画成されており、平板部25aと上方壁部25との間に画成される空間が吸気流路251として用いられ、平板部25aと平板部25bとの間に画成される空間が上方排気流路252として用いられる。上方排気流路252は、吸気流路251より僅かに後方に延在して垂直流路271と流体的に接続している。なお、平板部25aを境に吸気流路251と上方排気流路252とが上下に形成されるため、平板部25aは断熱部材により構成されることが好ましい。
【0041】
垂直流路271は、後方壁部27と、この後方壁部27に平行な且つ前方に位置する平板部27aとの間隙であり、上方から見て左右方向に長尺な矩形断面が上下方向に延在する空間として形成される。垂直流路271は、上方排気流路252と下方排気流路281とに流体的に接続されており、これらが一体となって1つの排気流路を形成している。
【0042】
図11図14、及び図15に示すように、吸気流路251には接続パイプ253が連結され、上方排気流路252には接続パイプ254が連結されている。接続パイプ253は、ガスヒータ21に対応して形成され、吸気流路251と流体的に接続されることでガスヒータ21に加熱された空気を吸気流路251に吸気可能となっている。接続パイプ231は、その一端が霧生成部23の貯液槽に接続されるとともに、その他端が接続パイプ253に連結され、霧生成部23が生成した霧を接続パイプ253を介して吸気流路251に供給することができる。接続パイプ254は、排気ファン22に対応して形成され、上方排気流路252と流体的に接続されることで排気ファン22により上方排気流路252の空気を排出可能となっている。
【0043】
また、上方壁部25には、吸気流路251と乾燥空間Dとを連通し、ガスヒータ21により加熱された空気を乾燥空間Dに流入させる通気孔としての流入孔群255が形成される。この流入孔群255は複数のパンチング孔であり、乾燥空間Dの左右方向全域及び前後方向においての所定範囲に亘って形成される。ここでの所定範囲とは、吸気流路251の下方領域の略全域であり、より具体的には載置台31の前後方向後方端部上方から、吸気流路251の前後方向前方端部までの範囲である。この所定範囲に形成された流入孔群255による効果についての詳細は後述する。
【0044】
次に、乾燥機1の使用方法について説明する。先ず、乾燥空間Dから可動載置部3を引き出し、その載置面に布団Fを載置した後、扉部29を閉状態にできるように可動載置部3を所定距離、前後方向後方に移動させる。当該移動により、後輪キャスタ322b及び支持キャスタ285がそれぞれ対応する傾斜面を含む対抗面を走行し、台座部32の開口部321bと、底壁部28の開口部282とが接近してシール部材288を介してこれら開口部が接続される。この状態において扉部29を閉状態にでき可動載置部3を乾燥空間Dに完全に収容することができる。可動載置部3が乾燥空間Dに完全に収容されると、可動載置部3の内部空間P,Tと下方排気流路281とが流体的に接続され、よって内部空間P,Tと上方排気流路252とが流体的に接続されることとなる。
【0045】
可動載置部3を乾燥空間Dに収容した後、使用者が制御部24を制御し、排気ファン22が動作されると、上方排気流路252内の空気が外部に排出されることにより、垂直流路271及び下方排気流路281を介して、可動載置部3内の内部空間P,Tが負圧となる。内部空間P,Tが負圧となると、載置台31の両側面に設けられたパンチング孔群311を介して乾燥空間D内の空気が布団Fを通過して可動載置部3内に吸気される。これに応じて乾燥空間D内が負圧となり、流入孔群255により乾燥空間Dと連通された吸気流路251を介して、ガスヒータ21を通過する乾燥機1外部の空気が乾燥空間D内に吸気される。
【0046】
乾燥空間D内に空気が流入する状態において、ガスヒータ21が動作している場合、ガスヒータ21により加熱された空気が熱風として乾燥空間D内に流入することとなり、この熱風が可動載置部3に載置された布団Fを通過して可動載置部3内へ流入した後に乾燥機1の外部へ排出されることによって、布団Fの乾燥が行われる。
【0047】
乾燥空間D内に空気が流入する状態において、霧生成部23が動作している場合、霧生成部23により生成された霧を含んだ空気が接続パイプ253及び吸気流路251を介して乾燥空間D内に流入することとなり、この霧を含んだ空気が布団Fを通過することによって、消臭剤、除菌剤、防ダニ剤などの薬剤を布団Fの内部まで浸透させることができるとともに、薬剤の散布を自動化することができる。
【0048】
(所定範囲に形成された流入孔群による効果)
筐体の上方壁部における所定範囲に形成された流入孔群により得られる効果について説明する。
【0049】
上述したように、ガスヒータ21により加熱された空気である熱風が流入孔群255から乾燥空間Dに流入するため、流入孔群255を前方端部側に寄せて形成した場合、その真下に位置する布団部分は高温となるが、例えば後方端部側に位置する布団部分は、それより低い温度となる。
【0050】
一方、図11及び図14に示すように上述したような上方壁部25の所定範囲にわたって流入孔群255が形成されることにより、流入孔群255が載置台31の前後方向一端部の上方にのみ形成されている場合と比較して、上方から流入する熱風をより広範囲で布団Fに吹き下ろすことができ、前後方向において乾燥空間D内の温度分布をより均等とすることができる。このような温度分布の均等化により布団Fの温度ムラを低減することが可能となる。
【0051】
図11及び図14に示すように本実施形態では、吸気流路251前方に制御部24が配設されているため、吸気流路251は載置台31の前方端部上方にまでは延在していない。このような形態でも、熱風が一部からのみ吹き下ろされる形態と比較して温度ムラの低減を実現できることが言うまでもない。なお、吸気流路251が載置台31の前方端部上方にまで延在し、したがって載置台31の上方を完全に覆うように吸気流路251を延在(例えば制御部24の下方にまで延在)させることがより好ましく、このようにすることで載置台31の前後方向全域に亘って熱風を吹き下ろすことが可能となり、さらなる布団Fの温度ムラの低減が実現できる。
【0052】
なお、本実施形態においては吸気流路251の後方に接続パイプ253が接続されるため、流入孔群255の開口率は、後方側よりも前方側の方が大きくなるようにすることが望ましい。このようにすることで、より乾燥空間D内の温度分布を均等にすることができる。
【0053】
本実施形態においては、乾燥の対象を布団Fとして説明したがこれに限定されるものではなく、カーペット、ラグ、マットレスなど繊維素材がマット状に形成された他のマット状部材を載置して乾燥するようにしてもよい。
【0054】
また、パンチング孔群311や流入孔群255は円状の孔であると説明したが、角形の孔であってもよく、載置面や上方壁部25が網状に形成されてその網開口がパンチング孔群311や流入孔群255に相当するようにしてもよい。
【0055】
また、ガスヒータ21と排気ファン22との位置を交換して配設し、流路を逆にしてもよい。この場合、載置台31から加熱された空気が布団Fに流入し、これを通過した空気が流入孔群255に流入することとなる。
【0056】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 乾燥機
20 筐体
25 上方壁部(上壁部)
251 吸気流路(流入流路)
252 上方排気流路(排気流路)
255 流入孔群(流入孔)
3 可動載置部(載置部)
311 パンチング孔群(通気孔)
313 連結装置(連結具)
321b 開口
F 布団(マット状部材)
D 乾燥空間
図1
図2
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