(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】融合センサ測定値を判定する方法及び融合センサ測定値を用いる車両安全システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231129BHJP
A61B 5/363 20210101ALI20231129BHJP
A61B 5/18 20060101ALI20231129BHJP
A61B 5/024 20060101ALI20231129BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20231129BHJP
A61B 5/08 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
G08G1/16 F
A61B5/363
A61B5/18
A61B5/024
A61B5/00 G
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2022522730
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2020083561
(87)【国際公開番号】W WO2021105314
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ルグミニ・ナラシムハン・スリーラクシュミ
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】A. Koenig et al.,Statistical sensor fusion of ECG data using automotive-grade sensors,Advances in Radio Science,13 [online],2015年11月03日,pp.197-202,https://ars.copernicus.org/articles/13/197/2015/ars-13-197-2015.pdf,令和5年4月11日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
A61B 5/363
A61B 5/18
A61B 5/024
A61B 5/00
A61B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合センサ測定値を判定する方法であって、
a.プロセッサにより、同一種類の生理学的測定値を検出する複数のセンサの各々からある個数のセンサ測定値を取得するステップと、
b.前記プロセッサにより、各センサの信号品質指標であって、あるセンサ測定値が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定するステップを含む信号品質指標を判定するステップと、
c.前記プロセッサにより、前記各センサの信号品質指標
及び前記センサのフィルタリングされたセンサ測定値と実際のセンサ測定値との差違に基づいて各センサの重みを判定するステップと、
d.前記プロセッサにより、前記各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて前記複数のセンサからの融合センサ測定値を判定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記複数のセンサが、車両の搭乗者からの生理学的測定値を検知する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のセンサが、車両の搭乗者の心拍数又は呼吸数を検知する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各センサから取得されたセンサ測定値の前記個数が、前記センサの前記信号品質指標を判定するのに充分である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記信号品質指標が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値の分散演算を含んでいる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のセンサが、車両座席、シートベルト、着用可能機器、又はこれらの組み合わせに配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、車両電子制御ユニットの一部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
車両の搭乗者から同一種類の生理学的センサ測定値を検出する複数のセンサと、
少なくとも1個のプロセッサを含む車両電子制御ユニットを含む車両安全システムであって
、
前記少なくとも1個のプロセッサが、
同一種類の生理学的測定値を検出する複数のセンサの各々からある個数のセンサ測定値を取得し、
各センサの信号品質指標であって、あるセンサ測定値が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定して信号品質指標を判定し、
前記各センサの信号品質指標及び前記センサのフィルタリングされたセンサ測定値と実際のセンサ測定値との差違に基づいて各センサの重みを判定し、
前記各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて前記複数のセンサからの融合センサ測定値を判定し、
前記融合センサ測定値に基づいて前記搭乗者の生理学的状態を判定して、
前記生理学的状態が異常な場合、前記異常な生理学的状態に反応して少なくとも1個の車両操作を実行すべく構成されている
、車両安全システム。
【請求項9】
前記複数のセンサが、前記搭乗者の心拍数又は呼吸数を検知する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記異常な生理学的状態が心臓不整脈である、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
各センサから取得されたセンサ測定値の前記個数が、前記センサの前記信号品質指標を判定するのに充分である、請求項8~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記信号品質指標が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値の分散演算を含んでいる、請求項8~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数のセンサが、車両座席、シートベルト、又はこれらの組み合わせに配置されている、請求項8~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記車両電子制御ユニットが、前記搭乗者が着用する着用可能機器から、同一種類の生理学的センサ測定値を取得すべく構成されている、請求項8~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記車両電子制御ユニットが車両座席制御ユニットである、請求項8~14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合センサ測定値を判定する方法及び融合センサ測定値を用いる車両安全システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の眠気及び疲労により生じる事故を防ぐべく、心血管活動、脳活動、呼吸活動、閉じた瞼等から運転者の生体信号を監視及び解析するシステムが開発されてきた。車両の挙動、例えばステアリングホイールの動きの変化、車両の位置及び速度の解析と共に、車両の搭乗者又は他の関係者に運転者の疲労を警告又は通知することができる。快適性機能又は運転者支援システムはまた、運転者の疲労に反応して起動することができる。
【0003】
しかし、このような開発は往々にして、運転能力を阻害して交通事故に寄与し得る運転者の健康状態を見過ごす。研究により、死傷を伴う衝突の小さいが有意な割合が運転者の健康状態を主因とし、心臓関連事象がこのような衝突に寄与することが示されている。従って、運転中の安全性を高めるには運転者の健康に対処しなければならない。
【0004】
運転中の運転者の健康を解析する多くの公知のシステムがある。いくつかのシステムは、異なる種類の健康データを用いて運転者の健康状態を識別する。しかし、このようなシステムは複雑なアルゴリズムを伴う場合がある。公知のシステムは経済的でないか、又はその結果として処理待ち時間が生じる恐れがある。
【0005】
従って走行中の車両の安全性を高めるために健康データを用いる代替的方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、上述の課題に対処すべくセンサデータを用いる方法及び車両安全システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の及び他の目的を実現すべく、一態様において、融合センサ測定値を判定する方法を提供し、本方法は、プロセッサにより、同一種類の生理学的測定値を検出する複数のセンサの各々からある個数のセンサ測定値を取得するステップと、プロセッサにより、各センサの信号品質指標であって、あるセンサ測定値が、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定するステップを含む信号品質指標を判定するステップと、プロセッサにより、各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定するステップと、プロセッサにより、各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて複数のセンサからの融合センサ測定値を判定するステップとを含んでいる。
【0008】
別の態様において、車両の搭乗者から同一種類の生理学的センサ測定値を検出する複数のセンサと、少なくとも1個のプロセッサを含む車両電子制御ユニットとを含む車両安全システムを提供する。少なくとも1個のプロセッサは、複数のセンサからセンサ測定値を取得し、あるセンサ測定値が、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定して各センサの信号品質指標を判定し、各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定し、各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて複数のセンサからの融合センサ測定値を判定し、融合センサ測定値に基づいて搭乗者の生理学的状態を判定し、生理学的状態が異常な場合、異常な生理学的状態に反応して少なくとも1個の車両操作を実行すべく構成されている。
【0009】
本開示は、任意の種類のセンサからのデータを融合するのに役立つ場合がある。一実装において、適当なセンサとは生理学的データを検出するものであってよい。センサは、任意の被験者の生理学的データを検知できる。センサは、人間の被験者の生理学的データを検知できる。一実装において、複数のセンサが車両の搭乗者の生理学的データを検知できる。
【0010】
本開示は、センサからの測定値が互いに異なる程度を考慮に入れる。より狭い範囲のデータセットにおける測定データ点は、センサからの測定値が互いに異なる程度が低いことを示す。より狭い範囲の連続的測定データ点を与えるセンサは、センサがより信頼できるデータセットを提供し、従ってより高い重みが割り当てられてよいことを示唆する場合がある。更に、センサ測定値をセンサが検知した時刻で拾うノイズにより、センサ測定値がデータセット内の他の測定値からより大幅に変化する恐れがある。従って、ノイズが多い、すなわち不整合なデータを与えるセンサにはより低い又はゼロの重みが割り当てられてよい。平均とは整合しないか、又は大幅に異なるセンサ測定値にはより低い重み又はゼロの重みが割り当てられてよい。整合しないセンサ測定値は有利な特徴としてセンサからの受信時刻で識別することができる。このようなセンサ測定値は有利な特徴として融合センサ測定値の判定においてより低い、又はゼロの重みを割り当てられてよい。信頼できないセンサ測定値の識別は、融合センサ測定値の計算に関わる任意の不要な処理を減らすのに役立つ。有利な特徴として、融合センサ測定値の処理を最適化して処理の待ち時間が生じないようにできる。
【0011】
センサの信号品質指標は、センサにより送信される信号の品質を指す。信号の品質は、センサにより検知される測定値の品質を指す場合がある。信号品質指標は、開示するプロセッサ又はセンサにより判定することができる。センサの信号品質指標は、部分的に、センサからの測定値が互いに異なる程度を判定することにより判定することができる。センサの信号品質指標は他の要因を含んでいてよい。センサの信号品質指標は、部分的に、センサ測定値と、その前のセンサ測定値の差違を判定することにより判定することができる。連続的な測定値間の差違は、測定値の変化が自然であるか否かを示す。センサの信号品質指標は、部分的に、測定値自体を現実の測定値と比較することにより判定することができる。センサ測定値を処理する次のステップは有利な特徴として、センサの信号品質指標に基づいていてよい。センサの信号品質指標は有利な特徴として、センサ測定値をフィルタリングする演算を変更すべく用いてよい。センサの信号品質指標は有利な特徴として、センサの重みを変更すべく用いてよい。センサの信号品質指標は有利な特徴として、全てのセンサからの融合センサ測定値の計算を変更すべく用いてよい。本開示は従って有利な特徴として、複数のデータ点を与える複数のセンサから適当なデータ点を判定することに適している。本開示に従い取得された融合センサ測定値は、複数のセンサにより検知された生理学的データのより正確な測定を反映することができる。
【0012】
センサの信号品質指標は、一種類の生理学的データ、例えば車両の搭乗者の心拍数、又は別の例では車両搭乗者の呼吸速度に対して判定することができる。当該一種類の生理学的データは、当該データ種類のより正確な測定値を取得すべく、本開示に従い処理されてよい。有利な特徴として、選択されたデータ種類のより正確な融合測定値を取得することができる。更に有利な特徴として、一種類のデータが処理されるため、融合センサ測定値の取得に要する時間を短縮できる。
【0013】
センサは、1個以上の種類の生理学的データを検知すべく構成されていてよい。複数種類のデータが検知又は取得される場合、各種類のデータを本開示に従い処理することができる。
【0014】
各センサから取得された当該個数のセンサ測定値はプロセッサにより処理されるデータセットを形成することができる。データセット内のセンサ測定値の個数は、センサの信号品質指標を判定するのに充分な程度に選択されていてよい。センサ測定値の個数が大きいほど、各センサ測定値が他のものと異なる程度をよりよく判定することができる。各センサからのある個数のセンサ測定値を用いることで、各センサからの単一のデータ点から導かれた融合測定値よりも融合測定値のより良い結果が得られることが分かっている。当該程度又は範囲は、測定値が当該個数のセンサ測定値から導かれた平均測定値とどの程度異なるかを示す場合がある。各センサ測定値が他のものと異なる程度は数学演算により判定することができる。各センサ測定値が他のものと異なる程度は、センサ測定値の算術平均からのセンサ測定値の分散又は変動性により判定することができる。各センサ測定値が他のものと異なる程度はデータセットの標準偏差により判定することができる。各センサ測定値が他のものと異なる程度は、歪度、尖度及び二乗平均平方根演算を含むがこれらに限定されない他の適当な数学演算により判定することができる。信号品質指標は、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値の分散演算を含んでいてよい。信号品質指標は、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値の標準偏差演算を含んでいてよい。信号品質指標は、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値の歪度、尖度及び二乗平均平方根演算を含むがこれに限定されない他の適当な数学演算を含んでいてよい。センサの信号品質指標(SQI)を判定するのに充分なセンサ測定値の最小個数は適当に判定されてよい。センサの信号品質指標(SQI)を判定するのに充分なセンサ測定値の最小個数は各種の要因に依存し得る。例示的な要因は、判定対象のSQIの種類、SQIが計算されている生理学的測定値の種類、及びセンサのサンプリング周波数(センサによりサンプリングされる1秒当たりのデータ点の個数)を含んでいる。本開示は有利な特徴として、異なる生理学的データは値の変化が生じる時間が異なり得るため、データ点の取得に所定の時間ウインドウではなく、センサ測定値又はサンプル或いはデータ点の個数を用いる。時間ウインドウが短いことが非効率な場合がある。常に変化し得るデータ点、例えば生理学的データに合う時間ウインドウを最適化することは、不必要に処理能力を浪費する恐れがある。有利な特徴として、本開示は、センサの信号品質指標の判定にセンサ測定値自体を用いることを提案する。センサ測定値の個数を用いることにより、信号品質指標を時間要因から独立させることができる。具体的には、本開示は有利な特徴として、データセット内のある測定値が他の測定値と異なる程度を用いて、部分的に、センサから受信した測定値の品質を判定する。品質測定値を出力するセンサは有利な特徴として、融合センサ測定値の計算に際してより高い重みを有していてよい。更に有利な特徴として、本開示は、複数のセンサの信号品質の判定及び/又は複数のセンサの重みの判定にセンサ又は電極自体のパラメータを用いるのではなく、センサ測定値又は生理学的測定値を利用する。センサ測定値又は生理学的測定値の利用は、異常な生理学的状態の検知に要する時間を短縮することができる。車両は有利な特徴として、検知された任意の異常な生理学的状態により素早く反応することができる。また更に有利な特徴として、センサ又は電極自体のパラメータではなく、センサ測定値又は生理学的測定値の利用により、プラグ&プレイ機器、例えば車両搭乗者が着用する機器の組み込みがより容易になる。
【0015】
融合センサ測定値は、被験者の生理学的状態の判定に際して入力として用られてよい。有利な特徴として、複数のセンサを用いて各時刻での信頼できる単一の出力を取得することにより、開示する車両安全システムが生理学的状態を検知する際の信頼性を高めることができる。
【0016】
有利な特徴として、開示する車両安全システムは異常な生理学的状態をより正確に検知可能であってよい。有利な特徴として、開示する車両安全システムは、1個以上の適当な車両操作を、異常な生理学的状態に反応するのに適時的に指示又は実行可能であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態による、センサ202、203及び204並びに車両座席電子制御ユニット(ECU)201を含む車両安全システム200の図を示す。
【
図2】本開示の一実施形態による、ECU 201で実行された融合センサ測定値を判定する方法100のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の複数の例示的な実施形態について詳述する。本発明の詳細な説明は、本発明及びその現実的な適用の原理を説明することにより、各種の例示的な実施形態及び考察する特定の用途に適した各種の変更を通じて当業者が本発明を理解できるようにする目的で提供するものである。詳細な説明は、網羅的であること、又は本発明を開示する実施形態そのものに限定することを意図していない。変更及び等価物は当業者には明らかであり、添付の請求項の概念及び範囲に含まれる。
【0019】
一実施形態において、融合センサ測定値を判定する方法を提供する。本方法は、プロセッサにより、同一種類の生理学的測定値を検出する複数のセンサの各々からある個数のセンサ測定値を取得するステップを含んでいる。本方法は更に、プロセッサにより、各センサの信号品質指標であって、あるセンサ測定値が、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定するステップを含む信号品質指標を判定するステップを含んでいる。本方法は更に、プロセッサにより、各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定するステップを含んでいる。本方法は更に、プロセッサにより、各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて複数のセンサからの融合センサ測定値を判定するステップを含んでいる。
【0020】
別の実施形態において、車両安全システムを提供する。車両安全システムは、車両の搭乗者から同一種類の生理学的センサ測定値を検出する複数のセンサを含んでいる。車両安全システムは更に、少なくとも1個のプロセッサを含む車両電子制御ユニットを含んでいる。少なくとも1個のプロセッサは、複数のセンサからセンサ測定値を取得すべく構成されている。少なくとも1個のプロセッサは、あるセンサ測定値が、各センサから取得された当該個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定して各センサの信号品質指標を判定すべく構成されている。少なくとも1個のプロセッサは、各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定すべく構成されている。少なくとも1個のプロセッサは、各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて複数のセンサからの融合センサ測定値を判定すべく構成されている。少なくとも1個のプロセッサは、融合センサ測定値に基づいて搭乗者の生理学的状態を判定すべく構成されている。生理学的状態が異常な場合、少なくとも1個のプロセッサは、異常な生理学的状態に反応して少なくとも1個の車両操作を実行すべく構成されている。
【0021】
複数のセンサは、車両の搭乗者から生理学的測定値を検知できる。複数のセンサは、生理学的測定値が車両搭乗者から得られるように配置されていてよい。複数のセンサは、車両キャビン内に配置されていてよい。複数のセンサの1個又はいくつか或いは全部が車両の一部であってよい。複数のセンサの1個又はいくつか或いは全部が、車両搭乗者から生理学的測定値の取得に利用可能な消費者向け機器又はアフターマーケット機器であってよい。センサ測定値を取得するために車両搭乗者との接触が必要なセンサの場合、センサはそのような適当な位置に配置されていてよい。例えば、センサは、車両座席に配置されていても、又は車両座席内に埋め込まれていてよい。センサは、シートベルト又はステアリングホイール或いは他の任意の適当な位置に配置されていてよい。センサは、車両搭乗者が着用する機器、例えば生理学的測定値を取得できる着用可能機器の一部であってよい。他の種類のセンサは、センサ測定値を取得するために車両搭乗者に視線を必要とする場合がある。このようなセンサは適宜配置されていてよい。複数のセンサは、車両搭乗者から生理学的測定値を検知できる任意の種類のセンサの組み合わせであってよい。一実装において、複数のセンサは、車両座席、シートベルト、着用可能機器、又はこれらを組み合わせたものに配置されている。
【0022】
車両の安全性を高めるのに有用な種類の生理学的測定値は車両搭乗者の心拍数であってよい。上述のように、心臓関連事象は交通事故の死傷者に寄与する。特に、心臓不整脈又は不整脈は、道路の安全性を高めるべく検知可能なありふれた異常である。不整脈は心臓の不適切な不規則鼓動である。不整脈が生じるのは、鼓動を調整する電気パルスが誤作動する場合である。心臓の粗動又は激しい鼓動等、ある種の心臓不整脈は無害であり得るが、ある種の不整脈は致命的な恐れがある。
【0023】
大多数の人々が発症する不整脈は、二段脈及び三段脈を含んでいる。二段脈及び三段脈は、正常な鼓動と、正常な鼓動の直前に生じる期外鼓動とが交替するパターンである。二段脈又は三段脈を発症している人は、心臓の粗動又は鼓動の飛びを感じる、或いは胸の痛み又は息切れを感じる場合がある。二段脈及び三段脈が生じても通常は何ら重大な症状が無く、典型的には懸念する理由にならない。しかし、期外鼓動又は心室期外収縮(PVC)は、切迫した重大な問題を示す場合がある。PVCを発症する人には、時間経過に伴い、血栓を引き起こし、その血栓が脳に達したならば脳卒中を引き起こし得る心室細動等、より重大な不整脈に発展するリスクがあり得る。更なる期外鼓動に起因する心臓への更なる負担は心肥大に、及び将来的には恐らく心不全に至る恐れがある。二段脈又は三段脈の発生を監視することは、医療ベースラインの取得又は他の健康関連サービスに有用であろう。
【0024】
より速い心拍数として現れる不整脈は頻脈と称される。頻脈を発症する人は、胸の痛み又は息切れを感じる場合がある。より遅い心拍数として現れる不整脈は徐脈と称される。徐脈を発症する人はめまいを感じる場合がある。車両操作が損なわれた場合にこのような発生を監視することが有用な場合がある。
【0025】
長時間にわたり心拍数が高い状態が続くのは致命的であり得る。特に、心臓の心室が長時間にわたり心拍数が高い状態が続いた場合に心室頻拍が生じる。例えば、心拍数が150bpmの鼓動閾値を超え、且つ持続時間閾値である30秒よりも長く続くのは致命的であり得る。心室頻拍の検知は車両の安全又は是正処置が行われることを保証するのに必須である。
【0026】
鼓動が不規則且つ心拍数がより高い場合は致命的である。その結果心臓が急に停止する恐れがある。心室細動が生じるのは心室の心拍数が極めて高く、且つ鼓動が乱れている場合である。心室細動は、心拍数が250bpmの鼓動閾値を超えた場合に生じる恐れがある。心室細動は、突発的心臓死の最も多い原因である。従って、心室細動の検知は車両の安全又は是正処置が可及的速やかに行われることを保証するのに必須である。
【0027】
心拍数又は鼓動を用いて不整脈を検知することができる。いくつかのセンサは、脈拍を検知するか又は鼓動の電気信号を検知することにより心拍数を検知する。いくつかのセンサは、皮膚の血流を検知及び測定することにより心拍数を検知する。いくつかのセンサは、皮膚の色の変化を検知することにより心拍数を検知する。いくつかのセンサは、皮膚から反射された光の量を測定することにより心拍数を検知する。自動車環境において、ガルバニ又は容量センサをステアリングホイール、座席又はシートベルトに組み込むことができる。地震心電図、光電式容積脈波記録法又はインピーダンス心電図を代替的に用いてもよい。
【0028】
心拍変動(HRV)は連続する鼓動間の時間的変動である。HRVを用いてよい理由は、正常且つ健康な心臓の鼓動間の時間的変動が一定であるからである。HRVは、リラックスした活動中は増大し、ストレスが掛かる期間中は減少する場合がある。従ってHRVは、人又は車両搭乗者の感情的状態の解釈に有用な場合がある。広義には、HRVは連続する鼓動間での特定の時間(典型的には秒又はミリ秒)当たりの変化を測定するのに対し、心拍数は毎分鼓動の平均個数を与える。HRVを計算する異なる方法がある。心拍数を検知するセンサは、任意の方法を用いて検知された心拍数値からHRV値を計算することができる。複数のセンサから取得するセンサ測定値としてHRV値が選択された場合、当該センサはHRV値を出力すべく構成されていてよい。
【0029】
呼吸数もまた不整脈の検知に用いられてよい。呼吸数を心拍数と合わせて用いて不整脈を検知することができる。呼吸数及び心拍数を利用することで心肺活動のより包括的な評価が得られる。従って、呼吸数もまた、車両の安全性を高めるのに有用な種類の生理学的測定値であり得る。呼吸数は、本開示の範囲に含まれない異なる方法により検知されてよい。
【0030】
センサ測定値は周期的に取得できる。センサ測定値はプロセッサによりセンサから周期的に取得できる。周期的時間間隔は所定の値であってよい。各時間間隔でセンサ測定値を各センサから取得できる。複数のセンサの各々が測定値又はデータ点を出力する時間間隔は、複数のセンサ間で同期されていてよい。データ点は、ほぼ同時に各センサから取得できる。データ点は、全てのセンサから各所定時間間隔で取得できる。
【0031】
カルマンフィルタ演算は、センサから取得された各センサ測定値に対して実行されてよい。センサはカルマンフィルタ演算を実行すべく構成されていてよい。開示するプロセッサはカルマンフィルタ演算を実行すべく構成されていてよい。カルマンフィルタ演算を実行するステップは、信号品質指数の判定前後に実行されてよい。
【0032】
各センサから取得されたセンサ測定値は、融合可能なセンサ測定値のグループを形成することができる。各センサから取得されたフィルタリングされたセンサ測定値は、融合可能な測定値のグループを形成することができる。融合センサ測定値は、カルマンフィルタリングされた測定値を考慮に入れていてよい。融合センサ測定値は、ある時刻で複数のセンサにより検知された平均測定値を表していてよい。融合センサ測定値は、ある時刻で複数のセンサにより検知された平均測定値の数学演算を表していてよい。例えば、センサ測定値の融合は、グループ内のあるセンサ測定値が他のセンサのセンサ測定値と異なる程度を考慮してよい。平均から遠いセンサ測定値には融合センサ測定値においてより低い重みが与えられるのに対し、平均に近いセンサ測定値には融合センサ測定値においてより高い重みが与えられる。
【0033】
一実施形態において、各センサから取得されたセンサ測定値は、当該センサからの1個以上の他のセンサ測定値と合わせて処理されて、当該センサ測定値を当該融合に含めるべきか否かを判定することができる。フィルタ演算又は他の任意の種類の評価が、センサ測定値が信頼できる信号からのものではないと判定したならば、当該センサ測定値が後続ステップに含まれない場合がある。有利な特徴として、本開示に従いセンサ測定値を連続的な測定値に対して評価することにより、センサ融合で典型的に用いられるフィルタ演算、例えばカルマンフィルタ演算を補足する。上述のように、センサの信号品質指標を用いてフィルタ演算を変更してよい。
【0034】
ある個数の時間間隔からのセンサ測定値を各センサ毎に取得できる。各センサから取得されたセンサ測定値の個数はセンサの信号品質指標を判定するのに充分であってよい。従って、センサの信号品質指標は少なくとも、当該センサからの第1のセンサ測定値が取得された後でしか判定することができない。センサからの測定値及び次のいくつかの測定値を用いて、当該センサからのセンサ測定値のグループ又はデータセットを形成することができる。グループ又はデータセットを形成するのに充分な個数の過去の測定値が存在する場合、当該センサからの測定値及び過去のいくつかの測定値を当該センサのために用いることができる。各測定値はフィルタリングされていても、又はされていなくてもよい。次いで、あるセンサ測定値が、センサからのセンサ測定値のグループ又はデータセット内の他のものと異なる程度を評価して当該センサの信号品質指標を判定することができる。センサの信号品質指標は、当該センサから取得されたセンサ測定値のグループに対する、注目するセンサ測定値の分散演算又は標準偏差演算を判定することにより判定することができる。分散又は標準偏差は、注目するセンサ測定値に対して取得できる。分散又は標準偏差が大きいほど、当該センサの信号品質指標が低いことを示す。
【0035】
一実施形態において、分散は次式のように表すことができる。
【数1】
ここで、nはある時刻で各センサから取得されたセンサ測定値の個数(サンプルサイズ)であり、xは現在のセンサ測定値iの値であり、μはサンプルサイズの値の算術平均である。
【0036】
センサ測定値が他のものと異なる程度は、当該センサからの測定値を考慮すべきか否かを判定するために、そのような程度の既知の閾値又は既知の値と比較することができる。当該程度又は分散或いは標準偏差が閾値を上回る場合、当該センサからの現在の測定値iは無視できるか、或いはより低い又はゼロの重みを与えられてよい。当該程度又は分散或いは標準偏差が閾値内であれば、当該センサからの現在の測定値iにより高い重みが与えられてよい。測定値iの重み又はセンサの重みは、融合センサ測定値の計算に含まれていてよい。代替的に、程度又は分散或いは標準偏差が第1の閾値を上回るが第2の閾値内である測定値iは融合に含まれていてよいが重みは低くされ、程度又は分散或いは標準偏差が第2の閾値を上回る測定値jは無視できるか又はゼロの重みが与えられてよい。
【0037】
各センサの重みはセンサの信号品質指標に基づいてよい。重みはまた、各センサのフィルタリングされたセンサ測定値を考慮していてよい。フィルタリングされたセンサ測定値はカルマンフィルタ演算から取得できる。融合に含めるセンサから取得された測定値iはカルマンフィルタ演算の対象となり得るが、これはセンサの重みを判定する際に考慮してよい。一実施形態において、重みは
【数2】
として表すことができる。フィルタリングされた測定値と実際の測定値の差違が小さいほど、センサがより信頼できる測定値iを与えることを示唆する。上述のように、センサの信号品質指標(SQI)は、センサが、より信頼できる測定値i又は測定値のデータセットを与えることを示唆する。従って、重みは、フィルタリングされた測定値とセンサからの実際の測定値の差違、及びセンサのSQIに基づいていてよい。信頼できる測定値iを与えるセンサにより高い重みが割り当てられてよい。逆に、閾値を超える自身のフィルタリングされた値とは異なる、又は閾値を超える連続的な測定値の平均とは異なる測定値iを与えるセンサにより低い重みが割り当てられてよい。閾値を超える自身のフィルタリングされた値と異なる、及び閾値を超える自身の連続的な測定値の平均と異なる測定値iを与えるセンサには更に低い重み又はゼロの重みが割り当てられてよい。従って、各センサ毎に計算された重みは、各センサから測定値の実際の重み又は関連度を表していてよい。重みは、融合センサ測定値の計算に含められてよい。
【0038】
測定値iは融合計算に入力されてよい。カルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされた測定値iは融合計算に入力されてよい。各測定値iはスケーリングされても、又は自身の重み又は自身のセンサの重みを乗算されてもよい。ゼロの重みを有する測定値iは融合計算で無視してよい。非ゼロの重みを有する測定値iは、自身の百分率重みと共に融合計算において考慮されてよい。一実施形態において、融合された値は、当該センサからフィルタリングされたセンサ測定値が乗算された各センサの重みの和であってよい。
【0039】
時刻iでの融合センサ測定値を用いて車両搭乗者の生理学的状態を判定してよい。融合センサ測定値に基づく搭乗者の生理学的状態の判定は融合測定値を分類するステップを含んでいてよい。融合測定値は、特定の生理学的測定に適したカテゴリに分類することができる。融合測定値の分類は、特定の生理学的測定値の既知の閾値に基づく融合測定値の比較を含んでいてよい。融合測定値の分類は、既知の方法に基づく測定値の解析を含んでいてよい。融合測定値の分類は、数学モデル又は機械学習モデルを用いるステップを含んでいてよい。
【0040】
異常な生理学的状態に反応して可能な車両操作を適当に判定することができる。可能な車両操作は、検知された生理学的状態に苦しむ運転者に起因して生じ得る潜在的な事故の影響を軽減すべく行われてよい。より重大でない生理学的状態の場合、適当な車両操作は車両搭乗者に警告する車内警報を生成すること、測定値又は検知された生理学的状態を監視のためプロセッサに保存すること、測定値又は検知された生理学的状態を監視のため遠隔設備に送信すること、状態を緩和すべく快適性機能を起動すること、これらの及び/又は他の可能な車両操作との組み合わせを含んでいてよい。より重大な生理学的状態の場合、適当な車両操作は、シートベルトの事前緊張及びエアバッグ準備、医療機関又は救急サービスへの通知又は自動通話の設置、路肩又は医療機関への自動ステアリング、車両の遠隔操作の許可、周囲の車両への警報発出、これらの及び/又は他の可能な車両操作との組み合わせ等、車両内の高度な運転支援システム又は自動化された運転機能を起動する等の事故関連処置を含んでいてよい。より重大でない状態の場合の車両操作をより重大な状態の場合に実行してよく、逆も成り立つ。
【0041】
開示するプロセッサは、複数のセンサデータを処理するコンピューティング装置の一部であってよい。コンピューティング装置は車両電子制御ユニットであってよい。開示するプロセッサは車両電子制御ユニットの一部であってよい。コンピューティング装置は、一時的及び非一時的メモリを含んでいてよいコンピュータ可読記憶媒体又はコンピュータ可読メモリを含んでいてよい。コンピュータ可読記憶媒体は電子情報を保存可能な任意の電子要素を含んでいてよい。コンピュータ可読記憶媒体又はメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はキャッシュメモリ等の一時的プロセッサ可読媒体を含んでいてよい。コンピュータ可読記憶媒体又はメモリは、読出し専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラム可能読出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、磁気又は光データストレージ、レジスタ等のような非一時的プロセッサ可読媒体を含んでいてよい。メモリは、開示するプロセッサ及び/又はコンピューティング装置の他のプロセッサと電子通信状態にある。コンピュータ可読指示は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に常駐していてよい。コンピュータ可読指示は、プロセッサにより読み出し可能なプログラム又はコードとして実装されていてよい。開示する方法は、プロセッサにより読み出し可能なプログラム又はコードとして実装されていてよい。コンピューティング装置の例示的プロセッサは、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態機械、プログラム可能ゲートアレイ、システムオンチップ(SoC)、プログラム可能SoC、又は他の適当な装置を含んでいる。用語「プロセッサ」は、処理装置の組み合わせ、例えばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1個以上のマイクロプロセッサ、又は開示するシステムに適した他の任意の構成を含んでいてよい。
【0042】
車両の任意の制御ユニットが本開示の実装に適していてよい。制御ユニットは、求められる要件に応じて選択されてよい。制御ユニットは、車両操作の実装に近接して選択されていてよい。例えば、電子制御ユニットはエアバッグ制御ユニットであってよい。エアバッグ制御ユニットは本開示に従い構成されていてよい。異常な生理学的状態が検知された場合、エアバッグ制御ユニットは異常な生理学的状態に反応してエアバッグを起動して膨張させることができる。電子制御ユニットはテレマティクス制御ユニットであってよい。テレマティクス制御ユニットは本開示に従い構成されていてよい。異常な生理学的状態が検知された場合、テレマティクス制御ユニットは遠隔施設又は個人或いは主体に無線信号を送信することができる。制御ユニットは、複数のセンサに近接して選択されていてよい。電子制御ユニットは、車両内のセンサから、又は車両内のセンサを監視している運転者から、或いは車両内の生理学的センサから測定値を受信するコンピューティング装置であってよい。このような制御ユニットは、本開示に従いセンサ測定値を受信及び処理することができる。このような制御ユニットは、処理されたデータを車両の他の制御ユニットに送信することができる。電子制御ユニットは車両中央コンピュータであってよい。電子制御ユニットは車両座席制御ユニットであってよい。
【0043】
センサ202、203及び204並びに車両座席電子制御ユニット(ECU)201を含む車両安全システム200の図を
図1に示す。本開示の一実施形態による、ECU 201で実行される融合センサ測定値を判定する方法100のフロー図を
図2に示す。
【0044】
時刻iでの心拍数測定値が、2個が車両座席に組み込まれ、1個がシートベルトに配置された3個のセンサの各々から取得される。時刻iでの3個の心拍数測定値は、車両座席電子制御ユニット(ECU)201のプロセッサに送信される。ECU 201において、方法100が実行される。ステップ102において、ECU 201は、センサ202からの測定値の品質を判定すべくセンサ202から測定値iと共に過去4個の時間間隔の測定値(測定値i-1、測定値i-2、測定値i-3及び測定値i-4)を取得する。同じ動作がセンサ203、204に対して行われる。5個のセンサ測定値を用いることで融合センサ測定値の判定に際して最適な結果を与えることが分かっている。更に有利な特徴として、5個のサンプルの使用は、心拍数、心拍変動及び呼吸数を含む、融合対象である任意の種類のデータにも適用できる。更に、所定の時間ウインドウを用いるのではなく、測定値の個数を用いることにより、融合対象のデータとは独立に融合を行うことができる。心拍数測定値を取得すべく選択された、通常の鼓動間隔を下回る0.5秒の時間間隔を考える。心拍数測定値の変化は0.5秒毎に生起しないため、0.5秒のウインドウは効率的でない場合がある。時間ウインドウを最適化して生理学的データ等の可変データを取得することは困難な場合がある。従って、センサ測定値の個数を用いることにより、信号品質指標を時間要因から独立させることができる。
【0045】
ステップ104において、各センサの信号品質指標を判定する。信号品質指標を判定すべく、各センサからの5個のサンプルの分散を判定する。分散を既知の分散閾値と比較する。分散が閾値を上回る場合、値0を割り当てる。さもなければ値1を割り当てる。信号品質指標を判定すべく、現在のセンサ測定値iと先のセンサ測定値i-1の差違も判定する。差違を所定の閾値と比較する。差違が閾値を上回る場合、値0を割り当てる。さもなければ値1を割り当てる。信号品質指標を判定すべく、測定値iも考慮する。測定値iが心拍数下限を下回るか又は心拍数上限を上回る場合、値0を割り当てる。さもなければ値1を割り当てる。次いで割り当てられた値を合算して当該センサの信号品質指標を判定する。
【0046】
ステップ106において、複数のセンサから取得された全てのセンサ測定値に対してカルマンフィルタ演算を実行する。
【0047】
ステップ108において、各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定する。重みもまた、カルマンフィルタリングされた測定値iと実際の測定値iの差違に基づいている。
【0048】
ステップ110において、センサ204の重みゼロ及びセンサ202、203の重み100%に基づいて、センサ204からの測定値iが融合に際して無視され、センサ202、203からの測定値iは融合に際して考慮されるものとする。融合センサ測定値は、センサの重みによりスケーリングされた測定値iを合算することにより判定できる。融合センサ測定値は、センサの重みによりスケーリングされたカルマンフィルタリングされた測定値iを合算することにより判定できる。従って、センサ204の重みゼロは、融合センサ測定値の計算に際してセンサ204からの測定値iが無視されるか又は含まれないことを意味する。
【0049】
ステップ112において、既知の閾値に基づいて、時刻iでの融合心拍数測定値を正常な鼓動又は心室細動鼓動或いはPVC鼓動として分類する。後続の時間間隔(i+1,i+2,...)における融合心拍数測定値は適宜同様に分類される。
【0050】
ステップ114において、分類された鼓動を監視して異常な生理学的状態が発現したか否かを判定する。心室細動鼓動及び/又はPVC鼓動を含む鼓動のパターンを心臓不整脈として分類することができる。心臓不整脈の発症は、当技術分野で公知の方法を用いて特定の種類の不整脈に分類することができる。
【0051】
ステップ116において、検知不整脈に反応して少なくとも1個の車両操作を実行する。二段脈又は三段脈が発症したと判定された場合、発症をECU 201に保存する、又は保存のため遠隔箇所或いは監視のため医療従事者に送信する。遠隔箇所は、テレマティクスサービス、健康管理サービス又は病院により管理することができる。二段脈又は三段脈の保存された発症は、より深刻な状態の発現を検知すべく監視することができる。心室細動が発症して、適当な時間、例えば1分間にわたり持続すると判定された場合、ECU 201は、高度な運転支援システムに介入するように指示すること、又は即時の医療支援を要求する無線信号を送信することができる。心室頻拍の発症が持続するか否かを監視するための適当な時間は約3分であり、閾値を超えたならばECU 201により少なくとも1個の安全又は修正処置を行うことができる。頻脈又は徐脈の発症が持続するか否かを監視するための適当な時間は約5~10分であってよく、閾値を超えたならばECU 201により少なくとも1個の安全又は修正処置を行うことができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.
融合センサ測定値を判定する方法であって、
a.プロセッサにより、同一種類の生理学的測定値を検出する複数のセンサの各々からある個数のセンサ測定値を取得するステップと、
b.前記プロセッサにより、各センサの信号品質指標であって、あるセンサ測定値が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定するステップを含む信号品質指標を判定するステップと、
c.前記プロセッサにより、前記各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定するステップと、
d.前記プロセッサにより、前記各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて前記複数のセンサからの融合センサ測定値を判定するステップとを含む方法。
2.
前記複数のセンサが、車両の搭乗者からの生理学的測定値を検知する、上記1に記載の方法。
3.
前記複数のセンサが、車両の搭乗者の心拍数又は呼吸数を検知する、上記1又は2に記載の方法。
4.
各センサから取得されたセンサ測定値の前記個数が、前記センサの前記信号品質指標を判定するのに充分である、上記1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.
前記信号品質指標が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値の分散演算を含んでいる、上記1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.
前記複数のセンサが、車両座席、シートベルト、着用可能機器、又はこれらの組み合わせに配置されている、上記1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.
前記プロセッサが、車両電子制御ユニットの一部である、上記1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.
車両の搭乗者から同一種類の生理学的センサ測定値を検出する複数のセンサと、
少なくとも1個のプロセッサを含む車両電子制御ユニットを含む車両安全システムであって、前記少なくとも1個のプロセッサが、
前記複数のセンサから前記センサ測定値を取得し、
あるセンサ測定値が、各センサから取得された個数のセンサ測定値のうち他のものと異なる程度を判定して各センサの信号品質指標を判定し、
前記各センサの信号品質指標に基づいて各センサの重みを判定し、
前記各センサの重み及びカルマンフィルタ演算から取得された各センサのフィルタリングされたセンサ測定値に基づいて前記複数のセンサからの融合センサ測定値を判定し、
前記融合センサ測定値に基づいて前記搭乗者の生理学的状態を判定して、
前記生理学的状態が異常な場合、前記異常な生理学的状態に反応して少なくとも1個の車両操作を実行すべく構成されている車両安全システム。
9.
前記複数のセンサが、前記搭乗者の心拍数又は呼吸数を検知する、上記8に記載のシステム。
10.
前記異常な生理学的状態が心臓不整脈である、上記8又は9に記載のシステム。
11.
各センサから取得されたセンサ測定値の前記個数が、前記センサの前記信号品質指標を判定するのに充分である、上記8~10のいずれか1つに記載のシステム。
12.
前記信号品質指標が、各センサから取得された前記個数のセンサ測定値の分散演算を含んでいる、上記8~11のいずれか1つに記載のシステム。
13.
前記複数のセンサが、車両座席、シートベルト、又はこれらの組み合わせに配置されている、上記8~12のいずれか1つに記載のシステム。
14.
前記車両電子制御ユニットが、前記搭乗者が着用する着用可能機器から、同一種類の生理学的センサ測定値を取得すべく構成されている、上記8~13のいずれか1つに記載のシステム。
15.
前記車両電子制御ユニットが車両座席制御ユニットである、上記8~14のいずれか1つに記載のシステム。
【符号の説明】
【0052】
100 融合センサ測定値判定方法
102 測定値取得
104 信号品質指標判定
106 カルマンフィルタ演算実行
108 センサ重み判定
110 測定値判定
112 鼓動分類
114 異常生理学的状態判定
116 車両操作実行
200 車両安全システム
201 電子制御ユニット
202、203、204 センサ