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特許7393551加工性及び耐食性に優れたアルミニウム系合金めっき鋼板及びこの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】加工性及び耐食性に優れたアルミニウム系合金めっき鋼板及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/12 20060101AFI20231129BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20231129BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20231129BHJP
   C22C 30/06 20060101ALI20231129BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20231129BHJP
   C22C 38/04 20060101ALI20231129BHJP
   C23C 2/28 20060101ALI20231129BHJP
   C21D 1/18 20060101ALN20231129BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20231129BHJP
   C22C 38/14 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
C23C2/12
C22C21/00 M
C22C21/10
C22C30/06
C22C38/00 301T
C22C38/00 302X
C22C38/04
C23C2/28
C21D1/18 C
C21D9/00 A
C22C38/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022536760
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2020018692
(87)【国際公開番号】W WO2021125888
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172362
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】イ、 スク-キュ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ヒョン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ミョン-ス
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504204(JP,A)
【文献】特開2014-148715(JP,A)
【文献】特開2012-012649(JP,A)
【文献】特開2010-018860(JP,A)
【文献】特開平11-350164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/12
C22C 21/00
C22C 21/10
C22C 38/00
C22C 38/04
C22C 30/06
C23C 2/28
C22C 38/14
C21D 1/18
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;
前記素地鋼板上に形成された合金化めっき層;及び
前記合金化めっき層上に形成された非合金化めっき層を含み、
前記合金化めっき層は重量%で、Fe:35~50%、Zn:1~20%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含み、
前記非合金化めっき層は重量%で、Zn:1~30%、Si:0.1~1.8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含み、
前記合金化めっき層と前記素地鋼板との界面粗さが2.5μm以下である、アルミニウム系合金めっき鋼板。
【請求項2】
前記合金化めっき層の厚さは5~25μmであり、
前記非合金化めっき層の厚さは1~12μmである、請求項1に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板。
【請求項3】
前記非合金化めっき層中のZn含有量は、前記合金化めっき層中のZn含有量よりも大きいものである、請求項1又は2に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板。
【請求項4】
前記合金化めっき層の厚さは、前記合金化めっき層及び前記非合金化めっき層の全厚さに対して50%以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板。
【請求項5】
前記素地鋼板は重量%で、C:0.05~0.3%、Si:0.1~1.5%、Mn:0.5~8%、B:50ppm以下、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板。
【請求項6】
前記合金化めっき層内のSi含有量は重量%で、0.1~0.5%である、請求項1から5のいずれか1項に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板。
【請求項7】
熱間プレス成形に用いられるアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法であって、
素地鋼板を用意する段階;
前記素地鋼板を、重量%で、Zn:3~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウムめっき浴に浸漬してアルミニウムめっき鋼板を得る段階;
アルミニウムめっき後、200~300℃で加熱された空気を前記アルミニウムめっき鋼板に供給して前記アルミニウムめっき鋼板の表面に酸化皮膜を形成する冷却段階;及び
前記冷却段階後に連続して550℃以上650℃未満の加熱温度の範囲で1~20秒維持して熱処理するオンライン(on-line)合金化によってアルミニウム系合金めっき鋼板を得る段階;を含む、アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記合金化処理後に冷却する段階をさらに含む、請求項7に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記めっきの片面当たりのめっき量は20~100g/mである、請求項7又は8に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記合金化処理後の冷却は空冷である、請求項8に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記酸化皮膜は、表面に溶融アルミニウムめっき層の全厚さに対して10%以上形成されるものである、請求項7から10のいずれか1項に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか1項に記載のアルミニウム系合金めっき鋼板を熱間プレス成形して得られる、熱間成形部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性及び耐食性に優れたアルミニウム系合金めっき鋼板及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱間成形のためにアルミニウム(Al)めっき鋼板や亜鉛(Zn)めっき鋼板が用いられているが、マイクロクラックが発生したり、熱処理時に形成された合金相によって耐食性が劣化したりする問題点があった。また、アルミニウム(Al)めっき鋼板や亜鉛(Zn)めっき鋼板は、熱間成形時にめっき層の液化が発生してロールに融着する問題点があり、900℃まで急速に昇温させることができず生産性が低下する問題もあった。また、アルミニウムめっき鋼板の場合には、アルミニウムの犠牲防食性がないため、加工後の耐食性が問題となる場合がある。
【0003】
このような耐食性及び熱間成形性を改善するために、従来にはめっき浴中にSiを4%以下制御し、合金化温度700℃及び合金化時間20秒にしてめっき層を合金化したアルミニウム合金化めっき鋼板を開示した。
【0004】
しかしながら、上記条件では、合金化時間が20秒と長時間かかるため、実践で合金化処理することに困難があり、合金化後に強い冷却が必要であるという問題点がある。また、Si含有量が減少するにつれてめっき浴温度が700℃程度と非常に高くなるため、めっき浴に浸漬されているシンクロールなどの構造物の耐久性が著しく低下する問題点がある。
【0005】
また、めっき層が合金化されると、最終的にpay-off reelまで到達する際にめっき層は多くのロールを経て移動するが、このとき、移動中にパウダリングが発生してロールに付着するという問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開公報1997-0043250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面によると、アルミニウムめっき層が合金化する際に発生するパウダリング性を改善するとともに、熱間成形時の焼付性及び耐食性に優れたアルミニウム系合金めっき鋼板及びこの製造方法を提供しようとする。
【0008】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも本発明の明細書の全体にわたる内容から本発明のさらなる課題を理解するのに困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、
素地鋼板;
上記素地鋼板上に形成された合金化めっき層;及び
上記合金化めっき層上に形成された非合金化めっき層を含み、
上記合金化めっき層は重量%で、Fe:35~50%、Zn:1~20%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含み、
上記非合金化めっき層は重量%で、Zn:1~30%、Si:0.1~1.8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含み、
上記合金化めっき層と上記素地鋼板との界面粗さが2.5μm以下であるアルミニウム系合金めっき鋼板を提供する。
【0010】
さらに、本発明のまた別の一側面は、
熱間プレス成形に用いられるアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法であって、
素地鋼板を用意する段階;
上記素地鋼板を、重量%で、Zn:3~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウムめっき浴に浸漬してアルミニウムめっき鋼板を得る段階;
アルミニウムめっき後、200~300℃で加熱された空気を上記アルミニウムめっき鋼板に供給して上記アルミニウムめっき鋼板の表面に酸化皮膜を形成する冷却段階;及び
上記冷却段階後に連続して550℃以上650℃未満の加熱温度範囲で1~20秒維持して熱処理するオンライン(on-line)合金化によってアルミニウム系合金めっき鋼板を得る段階;を含む、アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明のまた他の一側面は、上述したアルミニウム系合金めっき鋼板を熱間プレス成形して得られる熱間成形部材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、アルミニウムめっき層が合金化する際に発生するパウダリング性を改善するとともに、熱間成形時の焼付性及び耐食性に優れたアルミニウム系合金めっき鋼板及びこの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発明例1によって製造されたアルミニウム系合金めっき鋼板の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真である。
図2】比較例1によって製造されたアルミニウム系合金めっき鋼板の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真である。
図3】各発明例1及び比較例1についてパウダリング性を評価した結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従来の技術はアルミニウムめっき浴にSiを多量添加することによって、めっき層に緻密なFe-Al-Siの合金相が形成され、素地鉄がめっき層に拡散することを抑制した。これにより、高い合金化温度及び長い合金化時間が必要であった。
【0015】
これを改善するために、Si含有量を0.5~4%の範囲に制限してオンライン(on-line)合金化を試みたが、Si含有量が減少するにつれてAl-Feの合金相が早く生成され、めっき層の融点が高くなる問題点があった。これにより、素地鉄のFeがめっき層への拡散が抑制されることによって、オンラインで合金化させ難いという問題点がある。さらに、このような方法でめっき層を合金化させる場合、ブリトル(brittle)な合金相のため、組込み時にロールによる応力発生でパウダリングが発生する問題があった。
【0016】
このような問題点を解決するために鋭意検討した結果、めっき層の構成を一定部分合金化した合金相(合金化めっき層)と合金化されていない非合金相(非合金化めっき層;Al系めっき層)の2層で構成した。これと同時に、上記合金化めっき層と素地鋼板との間の界面粗さを特定範囲に制御することで、上述した従来技術の問題点を解決し、オンライン(on-line)操業時にパウダリングが発生せず、安定した生産を行うことができるだけでなく、めっき層に形成された合金相によって耐熱性及び耐食性を向上させることができる点を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
したがって、本発明によると、20秒以下の比較的短時間でめっき層の合金化が可能となり、同時に焼付性、耐食性及びめっき層の密着性に優れるだけでなく、パウダリング性が改善されたアルミニウム系合金めっき鋼板を効果的に提供することができる。
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の一側面であるアルミニウム系合金めっき鋼板について詳細に説明する。
【0019】
[アルミニウム系合金めっき鋼板]
すなわち、本発明の一側面は、
素地鋼板;
上記素地鋼板上に形成された合金化めっき層;及び
上記合金化めっき層上に形成された非合金化めっき層を含み、
上記合金化めっき層は重量%で、Fe:35~50%、Zn:1~20%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含み、
上記非合金化めっき層は重量%で、Zn:1~30%、Si:0.1~1.8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含み、
上記合金化めっき層と素地鋼板との界面粗さが2.5μm以下であるアルミニウム系合金めっき鋼板を提供する。
【0020】
すなわち、本発明の一側面に係るアルミニウム系合金めっき鋼板は、素地鋼板及び上記素地鋼板上に形成された合金化めっき層を含むことができ、上記合金化めっき層は、素地鋼板の一面または両面に形成されることができる。また、本発明の一側面によると、上記非合金化めっき層は上記合金化めっき層上に形成されることができる。したがって、上記アルミニウム系合金めっき鋼板は、素地鋼板の少なくとも一面に上記非合金化めっき層が備えられ、上記素地鋼板と上記非合金化めっき層との間に合金化めっき層が備えられることができる。
【0021】
以下では、合金化めっき層と非合金化めっき層について分けて説明し、まず合金化めっき層について説明する。
【0022】
本発明の一側面によると、合金化めっき層は重量%で、Fe:35~50%、Zn:1~20%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含む組成を有し、上記非合金化めっき層は重量%で、Zn:1~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含む組成を有する。
【0023】
本発明の一側面によると、上記合金化めっき層において、Znはめっき鋼板の焼付性及び耐食性を向上させるだけでなく、合金化処理後の合金化めっき層の密着性を向上させる重要な役割を果たす。したがって、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層内のZn含有量が1~20%であることが好ましく、上記合金化めっき層内のZn含有量が1%未満であると、耐食性の効果が期待できず、上記合金化めっき層内Zn含有量が20%を超過すると、焼付性が劣る問題がある。
【0024】
また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層内のSi含有量は0.1~1.5%であることが好ましく、上記合金化めっき層内のSi含有量が0.1%未満であると、合金化めっき層と素地鋼板との間の界面粗さが大きくなり過ぎてめっき層が密着性確保の側面で問題が生じ、上記合金化めっき層内のSi含有量が1.5%を超えると、Fe-Alの合金上にSiが固溶されることによって、素地鉄から拡散するFeの拡散を抑制することができ、これに応じて合金化温度が高くなるため、好ましくない。
【0025】
また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層は、選択的にMnをさらに含むことができ、これは素地鋼板をアルミニウムめっき浴に浸漬してめっきした後、合金化熱処理を介して素地鋼板に含まれる成分であるMnがめっき層側に流入されるためである。このような拡散の結果、アルミニウム系合金めっき鋼板の合金化めっき層内には、2%以下のMnをさらに含むことができる。Mn含有量の上限はめっき密着性確保の面で2%以下であることが好ましい。Mnは、Al-Fe合金相形成においてFeを置換する元素として、素地鉄との密着性を向上させる役割を果たすが、2%以上の場合、Al-Feの合金相が緻密なAl-Fe(Mn)相に形成されて合金化が遅延されるおそれがある。また、合金化めっき層内のMn含有量は0%である場合を含むため、その下限は別途限定しない。
【0026】
また、本発明の一側面によると、上述した合金化処理を介して素地鋼板に含まれるFeなどの成分が拡散するにつれて、合金化めっき層におけるFe含有量は35~50%であることが好ましい。上述した組成を満たすことにより、本発明において目的とする焼付性、耐食性を確保することができ、また耐パウダリング性も確保することができる。
【0027】
また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層において、Al含有量は30~65%であることが本発明の目的達成のために好ましく、31.4~63.5%であることがより好ましい。上記合金化めっき層内のAl含有量を30%以上とすることにより、高融点を有するFe-Al合金相を形成することで、焼付性及びマイクロクラック発生抑制の効果がある。但し、上記合金化めっき層内のAl含有量が65%を超過すると、Al-base合金相の形成によって融点が低くなり、熱処理時の焼付性が劣化する問題点がある。
【0028】
また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層の厚さは5~25μmであることができる。上記合金化めっき層の厚さを5μm以上とすることで耐食性を確保することができ、25μm以下とすることで溶接性を確保することができる。したがって、本発明において合金化めっき層の厚さは5~25μmであることが好ましく、10~25μmであることがより好ましい。
【0029】
一方、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層は、めっき後の合金化熱処理により、素地鋼板に含まれるFe(またはMn)などの成分がアルミニウムめっき層に拡散し、その結果、主にFe及びAlの金属間化合物からなる合金化めっき層が形成されることができる。上記合金化めっき層は、主にFe-Al系金属間化合物の合金相からなることができ、Zn、Mn、Siなどの元素は、上記合金化めっき層内に固溶して存在することができる。具体的には、上記合金化めっき層は、FeAl、FeAlなどの上記Fe-Al系金属間化合物を80%以上含む(すなわち、上記合金化めっき層は、FeAl及びFeAlからなる群から選択された1種以上の合金相を相分率で、80%以上含むことができ、これはアルミニウム系合金めっき鋼板に対してXRD(X-Ray Diffraction)を用いて相分析することによって確認可能である)ことができ、より好ましくは90%以上含むことができる。また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層は、上述した上記Fe-Al系金属間化合物の合金相をベースにZn、Mn及び/またはSiなどが固溶した合金相からなることができる。
【0030】
また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層と素地鋼板との界面粗さが2.5μm以下であることができ、より好ましくは0.03~2.5μmの範囲であることができる。これにより、良好なめっき層の密着性を確保することができる。なお、本明細書において、上記界面粗さ(Ra)とは、合金化めっき層と素地鋼板との間に形成された界面について、下記数学式1のようにプロファイル中心線から上/下にずれる程度を算術的に計算した平均値を意味する。したがって、数学的には、粗さ曲線のすべての山(peak)と谷(vally)の面積の合計と同一面積を有する長方形の面積の高さ(振幅)に該当する。このとき、上記界面粗さ(Ra)はアルミニウム系合金めっき鋼板に対する厚さ方向(圧延方向と垂直な方向を意味する)への断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、合金化めっき層と素地鋼板の界面を観察することで測定することができる。
【数1】

(上記数学式1において、Raは上述の合金化めっき層と素地鋼板との界面粗さを表し、lは測定しようとする界面線の全長さを表し、Z(x)はx軸の長さ方向に沿った界面線の位置変化を表す関数である。)
【0031】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層と上記非合金化めっき層との間の界面に対する界面粗さ(Ra’)も上述の方法と同様に測定することができ、上記合金化めっき層と非合金化めっき層の界面粗さ(Ra’)は、上記合金化めっき層と素地鋼板の界面粗さ(Ra)よりも大きいことができる。具体的には、上記Ra’は、上記Raに比べて1.02~2倍の範囲であることができる。これにより、めっき層の密着性をより改善することができる。
【0032】
一方、本発明の一側面によると、合金化めっき層上には非合金化めっき層が形成され、上記非合金化めっき層は重量%で、Zn:1~30%、Si:0.1~1.8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含む。このように、合金化めっき層上に非合金化めっき層を形成することで、比較的軟質のめっき層を表面に形成するようになり、これによってブリトル(brittle)な合金相によって操業時のロールによる応力に起因するパウダリングの発生を抑制することができる。
【0033】
また、本発明の一側面によると、非合金化めっき層中のZn含有量は合金化めっき層中のZn含有量よりも大きいことができ、或いは非合金化めっき層中のSi含有量は合金化めっき層中のSi含有量よりも大きいか同一であることができる。または、非合金化めっき層中のAl含有量は、合金化めっき層中のAl含有量に比べて大きいことができる。上述の組成を満たすことで、パウダリング性を改善することができる。
【0034】
また、本発明の一側面によると、非合金化めっき層中のZn含有量は1.5~30%であることができ、或いは非合金化めっき層中のAl含有量は65~98.9%であることができる。
【0035】
また、本発明の一側面によると、非合金化めっき層の厚さは0.5~15μmであることが好ましく、1~12μmであることがより好ましく、非合金化めっき層の厚さは合金化めっき層の厚さよりも小さいか同一であることができる。
【0036】
また、本発明の一側面によると、上記合金化めっき層の厚さは、上記合金化めっき層及び上記非合金化めっき層の全厚さに対して50%以上であることができ、より好ましくは50~95%の範囲であることができる。これを満たすことにより、焼付性、耐食性、パウダリング性及び生産性がより改善された熱間プレス成形用めっき鋼板を提供することができる。
【0037】
本発明の一側面によると、全体めっき層においてFe-Al系金属間化合物の合金相の分率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0038】
上述した合金相の分率を満たすことにより、焼付性、耐食性、パウダリング性を改善することができる。本発明の一側面によると、非合金化めっき層の厚さは合金化めっき層の厚さよりも小さいことができ、これによりパウダリング性を改善することができる。
【0039】
また、本発明の一側面によると、上述しためっき鋼板に含まれる素地鋼板は、熱間プレス成形用鋼板として熱間プレス成形に用いられるとしたら、特に限定しない。但し、一つの非制限的な例を挙げると、素地鋼板としてMnを1~10%の範囲で含む鋼板を用いることができる。または、より好ましくは素地鋼板として、重量%で、C:0.05~0.3%、Si:0.1~1.5%、Mn:0.5~8%、B:50ppm以下、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む組成を有する素地鋼板を用いることができる。
【0040】
すなわち、本発明によると、熱間成形時に発生するプレスダイ(die)やロールに付着するめっき層の焼付を抑制することができるとともに、耐食性及びめっき層の密着性に優れたアルミニウム系合金めっき鋼板を提供することができる。
【0041】
[アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法]
以下、本発明の一側面に係る熱間プレス成形に用いられる、アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法に対する一例を説明すると、以下のとおりである。但し、下記の熱間プレス成形用アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法は、一例として本発明の熱間プレス成形用アルミニウム系合金めっき鋼板が必ずしも本製造方法によって製造する必要があるとは限らない。
【0042】
具体的には、本発明のまた他の一側面は、
熱間プレス成形に用いられるアルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法であって、
素地鋼板を用意する段階;
上記素地鋼板を、重量%で、Zn:3~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウムめっき浴に浸漬してアルミニウムめっき鋼板を得る段階;
アルミニウムめっき後、200~300℃で加熱された空気を上記アルミニウムめっき鋼板に供給してアルミニウムめっき鋼板の表面に酸化皮膜を形成する冷却段階;及び
上記冷却段階後に連続して550℃以上650℃未満の加熱温度範囲で1~20秒維持して熱処理するオンライン(on-line)合金化によってアルミニウム系合金めっき鋼板を得る段階;を含む、アルミニウム系合金めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0043】
まず、アルミニウム合金めっき鋼板を製造するために素地鋼板を用意する。上記素地鋼板については、上述の説明を同様に適用することができる。
【0044】
続いて、下記めっきを実施する前に、上記素地鋼板を650~850℃で熱処理することができるが、これを特に限定するものではない。上記熱処理は、再結晶以上の温度で行って連続めっき工程で素材の加工硬化を防止し、素地鋼板をめっき浴よりも高い温度に維持してめっき性を良好にするためのものである。上記熱処理温度が650℃未満であると、連続工程のようなロールを通過する際に加工硬化による素材変形及び蛇行が発生することがある。または、上記熱処理温度が850℃を超過すると、素地鋼板内に存在するMn及びSiが素地鋼板の表面に濃化して酸化物を形成することで、めっき性を悪化させることがある。したがって、めっき前の素地鋼板の熱処理温度は650~850℃に制御することができ、より好ましくは上記めっき前の素地鋼板の熱処理温度下限は680℃であることができ、めっき前の素地鋼板の熱処理温度上限は830℃であることができる。
【0045】
次に、本発明の一側面に係るアルミニウム系めっき鋼板は、素地鋼板の表面に重量%で、Zn:3~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウムめっき浴を用いて溶融アルミニウムめっきを行い、めっき工程に連続して冷却した後、続いてすぐ熱処理するオンライン(on-line)合金化処理を行うことで得られる。
【0046】
具体的には、素地鋼板を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬してめっきを行い、上記めっき浴の組成は、Zn:3~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むことができ、より好ましくは、Zn:5~30%、Si:0.1~1.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むことができる。または、本発明の一側面によると、上記溶融アルミニウムめっき浴は、Zn:5~30%、Si:0.1~0.5%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むことができる。
【0047】
本発明の一側面によると、上記アルミニウムめっき浴に添加されるZnは重量%で、3~30%添加することが好ましい。上記Zn含有量が30%を超過すると、めっき浴のアッシュ(ash)が多量発生するため、粉塵発生などにより作業性が劣る問題が生じる。また、上記Zn含有量が3%未満であると、めっき浴の溶融点が大きく減少せず、合金化時のZnの蒸発によってめっき層中にZnが残留しなくなって、耐食性の向上の効果が期待できない。但し、本発明の効果をより極大化するために、上記Zn含有量の下限は5%であることが好ましく、上記Zn含有量の上限は20%であることがより好ましい。
【0048】
また、本発明の一側面によると、上記アルミニウムめっき浴に添加されるSiは重量%で、0.1~1.5%であることが好ましい。上記アルミニウムめっき浴中のSi含有量が0.1%未満であると合金化めっき層と素地鋼板との界面粗さが大きくなり過ぎてめっき密着性の向上効果が得られず、上記アルミニウムめっき浴中のSi含有量が1.5%を超過するとFe-Alの合金相にSiが固溶することで、素地鉄から拡散するFeの拡散を抑制するため、合金化温度が高くなる問題点がある。
【0049】
一方、本発明の一側面によると、上記めっき浴の温度は、めっき浴の融点(Tb)に対して20~50℃程度に高く管理(すなわち、Tb+20℃以上Tb+50℃以下)することが好ましい。上記めっき浴の温度をTb+20℃以上に制御することで、めっき浴の流動性によるめっき付着量の制御が可能となり、上記めっき浴の温度をTb+50℃以下に制御することでめっき浴中の構造物浸食を防止することができる。
【0050】
また、本発明の一側面によると、上記めっきの片面当たりのめっき量(めっき層の片面当たりの付着量)は20~100g/mであることができ、これは素地鋼板を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬した後、エアワイピング(air wipping)工程を適用することで制御することができる。上記めっきの片面当たりのめっき量が20g/m以上であると、耐食性効果が発揮し、上記めっきの片面当たりのめっき量が100g/m以下であると、めっき層を全体的に合金化可能となる効果がある。
【0051】
次いで、アルミニウムめっき後、200~300℃で加熱された空気を上記アルミニウムめっき鋼板に供給してアルミニウムめっき鋼板の表面に酸化皮膜を形成するように冷却することができる。このような冷却段階は、均一な合金層を形成する手段であるという点で本発明において重要である。すなわち、冷却時に200~300℃で加熱された空気をアルミニウムめっき鋼板に供給して露出させることで、アルミニウムめっき鋼板の表面には酸化皮膜(アルミニウム酸化膜;AlO)を形成する。
【0052】
本発明の一側面によると、上述したように合金化処理前に、酸化皮膜をアルミニウムめっき鋼板の表面に溶融アルミニウムめっき層の全厚さに対して10%以上(より好ましくは10%以上20%以下)形成することができる。上述したように、酸化皮膜を10%以上形成することで、めっき層に含まれるZnが合金化処理過程で揮発することを防止することができ、これにより優れた焼付性、耐食性及びめっき層の密着性を確保することができる。
【0053】
次に、上述した冷却段階後にすぐ連続して熱処理するオンライン(on-line)合金化処理を行うことができる。このような合金化熱処理によって素地鋼板のFe及び/またはMnがアルミニウムめっき層に拡散し、合金化めっき層を形成することができる。
【0054】
具体的には、本発明において、上記合金化処理温度は550℃以上650℃未満であり、維持時間は1~20秒であることができる。本発明において、オンライン合金化処理は、溶融アルミニウムめっき後に昇温して熱処理する工程を意味する。本発明によるオンライン合金化熱処理方式では、溶融アルミニウムめっき後にめっき層が冷却されて固まる前に合金化のための熱処理が開始されるため、短時間で合金化が可能である。従来知られているアルミニウムめっき鋼板のめっき層の成分系では合金化速度が遅くて短時間で十分な合金化を完了させることができなかったため、めっき後にすぐ熱処理するオンライン(on-line)合金化方法を適用することが難しかった。しかしながら、本発明では、合金化速度に影響を及ぼすめっき浴の組成及び製造条件などを制御することで、1~20秒の比較的短い熱処理時間にも関わらず、アルミニウムめっき層の合金化を達成することができる。
【0055】
本発明の一側面によると、上記合金化熱処理温度は550℃以上650℃未満の範囲であることができる。上記合金化熱処理温度は熱処理される鋼板の表面温度を基準とし、上記合金化熱処理温度が550℃未満であるとめっき層の合金相が50%以下に形成される問題があり、上記合金化熱処理温度が650℃以上であるとめっき層が完全に合金化してパウダリング性が発生する可能性があるという問題がある。
【0056】
また、本発明の一側面によると、上記合金化熱処理時の維持時間は1~20秒の範囲で行うことができる。本発明において、上記合金化熱処理時の維持時間とは、鋼板において上記加熱温度(偏差±10℃含む)が維持される時間を意味する。上記維持時間を1秒以上とすることで十分な合金化が可能となり、上記維持時間を20秒以下とすることで生産性確保の効果がある。
【0057】
また、本発明の一側面によると、本発明により製造されるめっき鋼板において、合金化めっき層中のFe含有量は、下記関係式1で表すことができ、合金化中の熱処理温度及びめっき浴におけるZn、Si含有量を適正範囲に制御することで、優れた焼付性、耐食性及び/またはめっき層の密着性の効果を容易に発揮することができる。
[関係式1]
160-0.41×[T]+3.35×10-4×[T]-0.3×[wt%Zn]-3×[wt%Si]≦[wt%Fe]≦180-0.41×[T]+3.35×10-4×[T]-0.3×[wt%Zn]-3×[wt%Si]
[上記関係式1において、[T]は合金化熱処理温度(℃)を表し、[wt%Zn]はめっき浴におけるZn重量%含有量を表し、[wt%Si]はめっき浴におけるSi重量%含有量を表し、[wt%Fe]は合金化めっき層におけるFe重量%含有量を表す。]
【0058】
本発明の一側面によると、本発明の効果をより向上させるために、上記合金化熱処理時の維持時間の下限は2秒であり、より好ましくは5秒であることができる。同様に、上記合金化熱処理時の維持時間の上限は15秒であり、より好ましくは10秒であることができる。
【0059】
上述したように、従来技術ではSiが含まれることでFeの拡散が抑制されるため、20秒以下の短時間で合金化が行われることが不可能であったのに対し、本発明によると、めっき浴の組成及び合金化熱処理時の条件を制御することで、20秒以下という比較的短時間で合金化が行われることができる。
【0060】
一方、本発明の一側面に係るアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法は、上記合金化処理後に冷却する段階をさらに含むことができる。
【0061】
本発明の一側面によると、上記冷却は、鋼板の表面温度を基準にして、300℃以下まで5~50℃/sの平均冷却速度で冷却することができる。一方、上記冷却は空冷(Air cooling)、水冷(mist cooling)であり、本発明の一側面によると、最も好ましくは上記冷却は水冷(mist cooling)であることができる。
【0062】
一方、本発明の一側面によると、より好ましくは上記平均冷却速度を10~30℃/sとすることで、on-line上で従来の溶融めっきラインを用いて追加設備なしに冷却することができる効果がある。また、本発明の一側面によると、上記冷却は5~20秒間行うことができ、上記冷却時間を10秒以上とすることで十分な冷却効果が発揮されることができる。
【0063】
一方、本発明のまた他の一側面は、上述したアルミニウム合金めっき鋼板を熱間プレス成形して得られる熱間成形部材を提供する。
【0064】
上記熱間プレス成形は、当技術分野で一般的に用いられる方法を利用することができる。例えば、めっき鋼板を800~950℃の温度範囲で3~10分加熱した後、プレス(press)を用いて上記加熱された鋼板を所望の形状に熱間成形することができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
また、上記熱間プレス成形部材の素地鋼板の組成は、上述した素地鋼板の組成と同一であることができる。
【実施例
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示して、より詳細に説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を限定するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0067】
(実施例)
まず、素地鋼板として下記表1の組成を有する厚さ1.2mmの熱間プレス成形用冷延鋼板を用意した後、素地鋼板を浸漬して超音波洗浄して表面に存在する圧延油などの物質を除去した。
【0068】
【表1】
【0069】
この後、これを還元性雰囲気で維持されている炉(Furnace)で焼鈍温度800℃、焼鈍時間50秒で熱処理した後、上記素地鋼板をZn:3~30%、Si:0.1~1.5%、残部Alの組成を満たすめっき浴に浸漬してアルミニウムめっきを行った。上記めっき浴の浸漬時の浸漬温度はめっき浴の温度と同様に維持し、めっき浴の温度はそれぞれのめっき成分系の融点(Tb)に対して一括して40℃上向させた温度でめっき浴を維持した。めっき量は、合金化を比較するためにエアワイピング(air wipping)を用いて片面60g/mに一定に維持した。
【0070】
【表2】
【0071】
続いて、アルミニウムめっきされた鋼板を200~300℃で加熱された空気を上記アルミニウムめっき鋼板に供給して冷却し、上記冷却時に、溶融アルミニウムめっき層の全厚さを基準にして10%の酸化皮膜が形成されるように制御した。この後、合金化熱処理して下記表2に示したアルミニウム系合金めっき鋼板を製造した。なお、下記表3の実験例のうち、完全合金化で示された例は650~750℃の範囲で合金化を行い、部分合金化で示された例は550℃以上650℃未満の範囲で合金化を行った。その後、鋼板の表面温度を基準にして300℃以下まで空冷で冷却してアルミニウム合金めっき鋼板を製造した。
【0072】
【表3】
【0073】
Ra*:合金化めっき層と素地鋼板との界面粗さ[μm]
T*:全体めっき層(合金化めっき層及び非合金化めっき層)の厚さに対する合金層の厚さ分率[%]
【0074】
上述の方法で製造されたアルミニウム合金めっき鋼板において、合金化めっき層における各成分含有量及び厚さを測定して上記表3に示し、上記合金化めっき層における成分はICP(Inductive Coupled Plasma Stectroscopy)を用いて湿式方法で測定し、厚さは電子顕微鏡を用いて断面を観察して測定した。
一方、アルミニウム系合金めっき鋼板の特性評価のために、下記の方法で焼付性、耐食性、パウダリング性及び生産性を評価し、評価結果を下記表4に示した。
【0075】
[焼付性]
このように製造されためっき鋼板について、めっきの物性評価のために900℃の条件で5分間加熱した後、合金化めっき層がダイ(die)に融着しているかを目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:焼付なし
×:めっき層の溶融によるダイ吸着が発生
【0076】
[耐食性]
720時間塩水噴霧実験を行った後、表面に形成された腐食生成物を除去し、腐食によって形成された腐食の深さを測定して下記の基準値(70μm)以下である場合を良好として下記表3に示した。
○:70μm以下
×:70μm超過
【0077】
[パウダリング性]
60°ベンディング(bending)実験を用いてめっき層の剥離有無を評価し、下記表3に示した。
【0078】
[生産性]
生産性は合金化に要する時間を測定し、下記の基準で評価した。
○:15秒未満
△:15秒以上20秒以下
×:20秒超過
【0079】
【表4】
【0080】
上記表4に示したように、本発明で規定する合金化めっき層の組成、非合金化めっき層の組成及び製造条件を満たす発明例1~10は、焼付性、耐食性、パウダリング性及び生産性改善の効果に優れることを確認した。
【0081】
一方、本発明で規定する合金化めっき層の組成、非合金化めっき層の組成及び製造条件のいずれか一つでも満たさない比較例1~10は、焼付性、耐食性、パウダリング性及び生産性のいずれか一つの効果が良くなかった。
【0082】
特に、発明例1から得られるアルミニウム系合金めっき鋼板の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真を図1に示し、これによって測定される合金化めっき層と素地鋼板の界面粗さが2.5μm以下であることを確認した。さらに、上記Raの測定方法と同様の方法を適用して、上記合金化めっき層と非合金化めっき層との界面粗さ(Ra’)を測定し、上記Ra’値は上記Ra値に対して1.02~2倍の範囲であり、上記合金化めっき層と素地鋼板の界面粗さ(Ra)よりも大きいことを確認した。
【0083】
また、発明例1から得られるアルミニウム系合金めっき鋼板について、XRD(X-Ray Diffraction)を用いて相分析することにより、上記素地鋼板上に形成された合金化めっき層は、FeAl及びFeAlからなる群から選択された1種以上の合金相を相分率で、80%以上含むことを確認した。
【0084】
一方、比較例1から得られるアルミニウム系合金めっき鋼板の断面を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真を図2に示し、これによって測定される合金化めっき層と素地鋼板の界面粗さは2.5μmを超過した。このような上記発明例1及び比較例1に対するパウダリング性を評価した結果を図3に示し、図3(a)が発明例1、図3(b)が比較例1を示す。上記実験結果の比較により、発明例1の場合、比較例1に比べてパウダリング性がより改善されたことが確認された。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】