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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】高いバイオ再生可能含有量印刷インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/04 20060101AFI20231129BHJP
   C09D 11/107 20140101ALI20231129BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 7/26 20060101ALI20231129BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C09D11/04
C09D11/107
B05D7/24 301M
B05D7/24 302C
B05D7/26
B65D65/40 D
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022539696
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020066791
(87)【国際公開番号】W WO2021138184
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】62/954,767
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガイ・ファンアウデンホーフェン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107267063(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第00117452(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第109370298(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111184051(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1664039(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0100256(US,A1)
【文献】韓国特許第10-2019-0134888(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第112790221(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111621189(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110527375(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105153714(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103031021(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/04
B05D 7/24
B05D 7/26
B65D 65/40
C09D 11/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ワニスであって、
(a)前記ワニスの総重量に基づいて、5重量%~20重量%の1つ以上の中和不飽和有機酸と、
(b)前記ワニスの前記総重量に基づいて、40重量%~80重量%の水と、
(c)前記ワニスの前記総重量に基づいて、5重量%~20重量%の1つ以上のタンパク質であって、ワニス中でジスルフィド結合を形成しない化学修飾システインを形成するために、酸-水媒体中に可溶化される、タンパク質と、を含み、
前記ワニスが、ワニスの総炭素に基づいて、90%以上のバイオ再生可能炭素(BRC)含有量を含み、バイオ再生可能炭素含有量は、ASTM D6866に記載される標準方法を使用して決定され、
前記タンパク質が、中和されたアニオン性部分を含み、前記アニオン性部分が、アンモニアまたは揮発性アミンで中和される、水溶性ワニス。
【請求項2】
前記不飽和有機酸が、コロホニー(colophony)の形態にあり、前記コロホニーが、その構造において、アビエチン酸の異性体を含有する不飽和酸を含む、請求項1に記載のワニス。
【請求項3】
前記タンパク質が、ダイズ、アルブミン、アサ、エンドウマメ、ジャガイモ、コムギグルテン、米、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のワニス。
【請求項4】
1つ以上の中和剤をさらに含み、前記中和剤が、1重量%~20重量%の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のワニス。
【請求項5】
前記中和剤が、アンモニア、高級アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載のワニス。
【請求項6】
ワックス、消泡剤、シリコーン、摩擦係数調整添加剤、接着促進剤、安定剤、光学増白剤、脱気添加剤、流動促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、流動添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含み、前記添加剤が、それぞれ、前記ワニスの前記総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%の量で個別に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のワニス。
【請求項7】
前記添加剤のうちの1つ以上が、微生物、それらの反応生成物、およびそれらの組み合わせ、ならびに水に由来する、植物性(植物系)、鉱物系、動物由来の、水、天然樹脂、天然消泡剤、天然ワックス、天然着色剤、バイオ溶媒、および天然鉱物から選択される、天然材料であり、前記天然材料が、70%~100%のBRC含有量を有する、請求項に記載のワニス。
【請求項8】
前記ワックスが、アミドワックス、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルヌバ(carnuba)ワックス、ダイズワックス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項またはに記載のワニス。
【請求項9】
95%以上のBRC含有量を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のワニス。
【請求項10】
100%のBRC含有量を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のワニス。
【請求項11】
請求項1~1のいずれか一項に記載のワニスを含む、印刷基材。
【請求項12】
請求項1に記載の印刷基材を含む、物品。
【請求項13】
前記物品が、包装材料である、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
基材に印刷する方法であって、
(a)基材を提供する工程と、
(b)請求項1~1のいずれか一項に記載のワニスを提供する工程と、
(c)前記基材上に前記ワニスを塗布する工程と、
(d)前記基材上で前記ワニスを乾燥または硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~1のいずれか一項に記載のワニスと、エマルションポリマーとを含むインクビヒクルであって、前記インクビヒクルの総重量に基づいて、前記ワニスが、10重量%~80重量%の量で存在し、前記エマルションポリマーが、5重量%~50重量%の量で存在する、インクビヒクル。
【請求項16】
前記エマルションポリマーが、スチレンおよびアクリレートに基づく、請求項1に記載のインクビヒクル。
【請求項17】
炭素含有材料の45%以上が、バイオ再生可能炭素の形態にある、請求項1または1に記載のインクビヒクル。
【請求項18】
請求項1~1のいずれか一項に記載のインクビヒクルを含む仕上げインクであって、
(a)前記仕上げインクが、前記インクビヒクルからなり、透明な仕上げインクであるか、または
(b)前記仕上げインクが、
i.前記仕上げインクの総重量に基づいて、30重量%~99重量%の前記インクビヒクルと、
ii.前記仕上げインクの前記総重量に基づいて、1重量%~70重量%の1つ以上の着色剤と、を含む、仕上げインク。
【請求項19】
前記インクビヒクルが、前記仕上げインクの前記総重量に基づいて、50重量%の量で存在し、前記着色剤が、前記仕上げインクの前記総重量に基づいて、50重量%の量で存在する、請求項18に記載の仕上げインク。
【請求項20】
炭素含有材料の45%以上が、バイオ再生可能炭素の形態にある、請求項18または19に記載の仕上げインク。
【請求項21】
請求項18~2のいずれか一項に記載の仕上げインクを含む、印刷基材。
【請求項22】
請求項2に記載の印刷基材を含む、物品。
【請求項23】
前記物品が、包装材料である、請求項2に記載の物品。
【請求項24】
基材に印刷する方法であって、
(a)基材を提供する工程と、
(b)請求項1820のいずれか一項に記載の仕上げインクを提供する工程と、
(c)前記基材上に前記仕上げインクを塗布する工程と、
(d)前記基材上で前記仕上げインクを乾燥または硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項25】
水溶性ワニスであって、
(a)前記ワニスの総重量に基づいて、1つ以上の中和不飽和有機酸を含む5重量%~20重量%のコロホニーと、
(b)前記ワニスの前記総重量に基づいて、40重量%~80重量%の水と、
(c)前記ワニスの前記総重量に基づいて、5重量%~20重量%の1つ以上のタンパク質であって、ワニス中でジスルフィド結合を形成しない化学修飾システインを形成するために、酸-水媒体中に可溶化される、タンパク質と、を含み、
前記ワニスが、ワニスの総炭素に基づいて、90%以上のバイオ再生可能炭素(BRC)含有量を含み、バイオ再生可能炭素含有量は、ASTM D6866に記載される標準方法を使用して決定され、
前記タンパク質が、中和されたアニオン性部分を含み、前記アニオン性部分が、アンモニアまたは揮発性アミンで中和される、水溶性ワニス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月30日に出願された米国仮特許出願第62/954,767号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ワニス組成物、ならびにワニスを使用して調製されるインクビヒクル、インク、およびコーティングに関する。本発明のワニスは、高いバイオ再生可能含有量(すなわち、バイオ再生可能またはBRC)を有する。組成物は、最大100%のBRCを含む。組成物は、様々な基材への適用に好適である。
【背景技術】
【0003】
ファーストフードの包装材料およびパーソナルケア製品に印刷するために使用されるインクは、基材に良好な接着力を有し、湿気、化学物質、摩擦などに耐性がなければならない。パーソナルケア製品としては、例えば、女性用ケア(例えば、ナプキン製品)、ベビーケア(例えば、おむつおよびワイプ)、および他のパーソナルケア最終用途製品が挙げられる。この市場は、現在、一般的に環境に優しいとはみなされていない材料(例えば、アルコールタイプの溶剤およびアセテート、有機顔料、ならびにポリウレタンおよびニトロセルロースなどの樹脂)に主に基づいた溶媒系インクが占めている。
【0004】
近年、より多量の天然由来材料、特に水系インクを含有するインクの配合に関心が集まっている。天然由来材料は、植物、鉱物、動物、微生物、またはそれらの反応生成物に由来するものである。インク中の天然由来材料の量は、天然由来材料の量が多すぎる場合、良好な接着性、耐湿性、耐薬品性、耐摩擦性、および他の所望の特性を得ることができないために制限されている。加えて、天然由来材料がインクに使用される場合でも、一般に、必要な特性を達成するために、石油蒸留物などの非天然材料および環境に有害な材料を含むことが必要である。このため、製品が湿気、化学物質、または摩擦にさらされる用途に使用される材料に使用されることを意図しているインクの場合に特に問題である。
【0005】
CA2303075は、マレイン酸修飾ロジン樹脂を含有するインクを開示している。しかしながら、これらのインクには水は含有されておらず、一般的に環境に有害であると考えられている有機溶媒が多量に含有されている。
【0006】
US4,857,624は、グラビア印刷インクにおけるフェノール修飾ロジンエステルの使用を開示する。US5,164,446は、グラビア印刷インクに使用するためのアクリルポリマーなどのヒドロキシル官能性ポリマーで修飾されたロジンエステル樹脂を記載している。
【0007】
US5,902,389は、ロジン系樹脂インクビヒクルを開示している。しかしながら、これらのインクビヒクルは、高沸点インク油などの高量の石油蒸留物を含有していなければならない。
【0008】
US6,583,263は、アクリレート化ロジンエステルの合成を記載している。これらのアクリレート化ロジンエステルのエネルギー硬化性インクへの使用については言及されているが、インクにどの程度含まれ得るかについては教示されておらず、インクへの使用例は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】CA2303075
【文献】US4,857,624
【文献】US5,164,446
【文献】US5,902,389
【文献】US6,583,263
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的に「バイオ再生可能」または「天然」に分類される材料の使用がより重視されるにつれて、高いバイオ再生可能含有量/バイオ再生可能炭素(BRC)に基づく水系印刷インクが市場に必要とされるようになった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高いバイオ再生可能含有量/バイオ再生可能炭素(BRC)を有するワニスを提供する。本発明のワニスは、高BRCも有するコーティング、インクビヒクル、および仕上げインクを調製するために使用される。ワニスは、ワニスの総重量に基づいて、90%以上のBRCを含む。
【0012】
特定の態様では、本発明は、
(a)ワニスの総重量に基づいて、5重量%~20重量%の1つ以上の中和不飽和有機酸と、
(b)ワニスの総重量に基づいて、40重量%~80重量%の水と、
(c)ワニスの総重量に基づいて、5重量%~20重量%の1つ以上のタンパク質と、を含む水溶性ワニスを提供し、
ワニスは、90%以上のバイオ再生可能炭素(BRC)含有量を含む。
【0013】
ある特定の態様では、本発明のワニスは、約100%のBRCを含む。
【0014】
本発明はまた、ワニスから調製されたコーティング、インクビヒクル、および仕上げインクも提供する。これらの材料はまた、高いBRCを有する。
【0015】
本発明は、本発明のワニス、コーティング、および仕上げインクを含む印刷基材、ならびにそれらの調製方法を提供する。基材としては、綿、紙、および紙板、ならびに合成材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース材料などからなるスパンボンド不織布)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明は、本発明のワニス、コーティング、および仕上げインクで印刷された基材を含む印刷物を提供する。
【0017】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、以下により完全に記載されるような配合物および方法の詳細を読めば、当業者により明白になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願は、例えば、綿、紙、および紙板、ならびに合成材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース材料などからなるスパンボンド不織布)などの様々な材料および基材上で使用するための印刷インクの分野である。最終用途としては、ファーストフード包装材料、女性用ケア(婦人衛生および生理用ナプキン製品などの「フェムケア」)、ベビーケア(ベビーおむつおよびワイプなど)、および他のパーソナルケア最終用途が挙げられる。この市場は、現在、一般的に環境に優しいとはみなされていない材料(例えば、アルコールタイプの溶剤およびアセテート、有機顔料、ならびにポリウレタンおよびニトロセルロースなどの樹脂)に主に基づいた溶媒系インクが大部分を占めている。
【0019】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示的かつ説明的であり、特許請求される任意の主題を限定するものではないことを理解されたい。
【0020】
見出しは、単に整理目的のために使用され、本発明をいかなる方法でも限定することを意図しない。
【0021】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及されるすべての特許、特許出願、公開出願および刊行物、ウェブサイト、ならびに他の公開資料は、別段の定めがない限り、任意の目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法が記載される。
【0022】
定義
本出願において、単数形の使用は、特に明記しない限り、複数形を含む。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の形態も同様に含むことが意図される。
【0023】
本出願では、「または」の使用は、特に明記しない限り「および/または」を意味する。また、それが使用される文脈から明らかな場合、「および」は、すべてが真であるか、または一度に存在することが不可能である代替案のリストなどで「または」と解釈され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。さらに、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、「構成されている(composed)」、「構成されている(comprised)」という用語またはその変形が詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限り、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることが意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、範囲および量は、特定の値または範囲について「約」として表すことができる。「約」は、正確な量も含むことが意図される。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」および「5パーセント」を意味する。「約」とは、意図された用途または目的のための典型的な実験誤差内を意味する。
【0026】
数値範囲が記載されている場合、具体的に記載されているか否かにかかわらず、終点、その範囲内のすべての値、およびその範囲内のすべてのより狭い範囲を含むことを理解されたい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「基材」は、インクまたはコーティングが適用され得る任意の表面または物体を意味する。基材としては、セルロース系基材、紙、紙板、布地(例えば、綿)、皮革、織物、フェルト、コンクリート、石積み、石、プラスチック、プラスチックまたはポリマーフィルム、スパンボンド不織布(例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどからなる)、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。基材は、金属もしくは金属酸化物、または他の無機材料の1つ以上の層を有し得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「物品(article)」または「物品(articles)」という用語は、製造物の基材または製品を意味する。物品の例としては、セルロース系基材、紙、紙板、プラスチック、プラスチックまたはポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、複合材などの基材、ならびに出版物(例えば、小冊子)、ラベル、および包装材料(例えば、カードボードシートまたは段ボール)、容器(例えば、ボトル、缶)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、金属化箔(例えば、ラミネートアルミニウム箔)、金属化ポリエステル、金属容器などの製造物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本開示全体を通して、すべての部分およびパーセンテージは、重量(総重量に基づく重量%または質量%)であり、すべての温度は、別段の指示がない限り、℃である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「天然材料(複数可)」は、微生物、それらの反応生成物、およびそれらの組み合わせ、ならびに水に由来する、植物性(植物系)、鉱物系、動物由来の材料である。天然材料は、自然界で発生するように使用することができるか、または成分の元の物理的、化学的、もしくは生物学的状態を顕著に変化させない加工を受けることができる。許容される加工の例としては、脱水、抽出、押出、遠心分離、濾過、蒸留、粉砕、ふるい分け、圧縮、凍結、乾燥、ミリングなどが挙げられる。天然材料としては、水、天然樹脂、天然消泡剤、天然ワックス、天然着色剤、バイオ溶媒、天然鉱物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される場合、「BRC」は、バイオ再生可能含有量またはバイオ再生可能炭素を指し、これはさらに、地球の自然環境の一部である非古代炭素(すなわち、非化石系炭素)として定義され得る。非古代炭素(最終的な大気炭素組み込みから40,000万年未満)は放射性炭素(14C)を含有し、古代(化石系)炭素は放射性炭素を含有しない。BRCは、天然の再生可能資源を指し、天然の再生、または(ヒトの生涯などの)限られた時間内の他の繰り返しのプロセスのいずれかを通じて、使用および消費によって枯渇した部分を置き換えるために補充することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「植物系」は、植物系の供給源からの成分質量の50%以上を含有する材料を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「天然由来」は、再生可能な炭素含有量に基づいて、分子量で50%以上の天然またはバイオ系由来を有する材料を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「天然鉱物」は、独特の化学式および一貫した一連の物理的特性(例えば、結晶構造、硬度、色など)を有する、地球上に天然に存在する無機材料を指す。また、「誘導鉱物」は、天然の鉱物成分(例えば、炭酸カルシウム、シリカ、水和シリカ、フッ化ナトリウム、二酸化チタン)と同じ化学組成を有する、地球上に天然に存在する無機材料の化学処理を通じて得られる材料である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「バイオ系」は、農業、植物、動物、真菌、微生物、海洋、または林業材料から再生可能な由来の炭素を含有する材料を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「再生可能」は、地球の自然環境の一部である材料を指す。再生可能資源は、自然に発生しており、天然の再生または他の繰り返しプロセスのいずれかを通じて、限られた時間(ヒトの生涯内など)で、使用および消費によって枯渇した部分を置き換えるために補充することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「持続可能な」は、環境に有害ではない、または天然資源を枯渇させない、それによって長期的な生態的バランスをサポートする品質を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「コロホニー(colophony)」は、マツ、ジュニパー、モミ、およびスギなどの針葉樹の樹液から得られるロジン/樹脂を指す。コロホニーは、高分子量の不飽和酸を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、「短いレオロジー」は、組成物が基材への接着よりも、それ自体とのより高い凝集を有することを意味する。短いレオロジーを有する組成物が基材に適用されるとき、組成物が(例えば、ナイフ上に)引き戻されるため、より少ない材料が送達/適用される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「本発明の組成物」は概して、特定の種類の組成物が参照されない限り、本発明のワニス、コーティング、インクビヒクル、または仕上げインクを指す。したがって、「本発明の組成物」が材料を含むことが記載されている場合、それは、ワニス、コーティング、インクビヒクル、または仕上げインクのいずれかが記載された量のその材料を含むことを意味する。特定の種類の組成物、例えば、ワニスは、適切な場合、具体的に参照される。
【0041】
本発明のワニスおよび他の組成物、ならびに使用方法
天然材料の使用にますます重点が置かれるにつれて、BRC含有量の多い水系印刷インクが市場に必要とされるようになった。好ましくは、これらのインクは、50%以上のBRCを有する水系ワニスを含む。より好ましくは、ワニスは、60%以上のBRC、または70%以上のBRC、または80%以上のBRC、または90%以上のBRCを含む。ある特定の好ましい実施形態では、ワニスは、95%以上のBRC、または98%以上のBRCを含む。有利には、本発明のワニスは、99%以上のBRC、および最も好ましくは100%のBRCを含む。
【0042】
本発明の高BRC含有量ワニスは、高BRC含有量インクビヒクルを作製するために使用される。インクビヒクルは、炭素の総量に基づいて、45%以上、または50%以上のBRC含有量を有するであろう。ある特定の実施形態では、インクビヒクルは、炭素の総量に基づいて、60%以上のBRC含有量を有するか、または70%以上、もしくは80%以上、もしくは90%以上の含有率、もしくは95%以上、もしくは98%以上の、もしくは約99%~100%の含有量を有する。次いで、高BRC含有インクビヒクルを使用して、高BRC含有仕上げインクを作製する。
【0043】
好ましい実施形態では、インクビヒクルおよび仕上げインクを作製するために使用される本発明のワニスは、99.5%以上のBRC含有量を含有する。本発明のワニスおよびその後のインクビヒクルから作製された仕上げインクは、好ましくは、高いバイオ再生可能含有量を有するように配合されていない従来のインクの性能と一致するであろう。
【0044】
バイオ系炭素含有量(BRC)は、ASTM D6866(「Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis」)に記載される標準方法を使用して決定される。”Understanding biobased carbon content,”Society of the Plastics Industry Bioplastics Council(February 2012)を参照されたい。「バイオ系含有量」を測定するためのASTM D6866の適用は、放射性炭素年代測定と同じ概念に基づくが、年代方程式を使用しない。未知の試料中の放射性炭素(14C)の量の現代の参照標準の量との比率を測定する。化石炭素は放射性炭素を含有していない。「新しい」炭素の量が多いほど、14Cが高い。この比率は、「pMC」(現代炭素率)またはBRC(パーセンテージとして)の単位を用いて、現代炭素である総炭素のパーセンテージとして報告される。いくつかのサプライヤーは、生産者が使用する「レシピ」(すなわち、セルロースおよびコポリエステルを含有するワニスに存在する、セルロースなどの天然材料の量)に基づいて、重量に基づいてバイオ系含有量のパーセンテージを評価し得る。しかしながら、重量パーセントは、炭素からの重量への寄与だけでなく、材料中の他の元素からの寄与も含むことに留意されたい。本発明の目的のために、BRC含有量は、ASTM D6866を使用して評価されるBRCを指す。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明の水系ワニス、インクビヒクル、およびそれから作製されるインクは、それらの現在の溶媒系代替物と比較して、より高いレベルの温室効果ガス排出に寄与しない。
【0046】
好ましくは、本発明のワニスおよびインクビヒクルから作製されたインクならびにインクを含有する印刷物は、インクが製造および使用される特定の国の衛生および安全規制を満たすことになる。
【0047】
有利には、本発明のワニスおよびインクビヒクルから作製された仕上げインク組成物は、それらの最終用途要件に対して許容可能な性能特性(例えば、接着性、抵抗性、印刷適性など)を有することになる。好ましい実施形態では、本発明のワニスおよびインクビヒクルから作製された水系インクは、現在の溶媒系代替物と同等またはより優れた性能を発揮するが、これは、水系インクがインク性能に対する顧客の要求および仕様を満たす限り、絶対的な要件ではない。本発明のワニスおよびインクビヒクルから作製されたインクの他の好ましい有利な品質としては、良好な印刷適性および皮膚パッチ試験に合格できること(刺激なし)が挙げられる。
【0048】
本発明のワニスおよびビヒクルから作製されたインクは、好ましくは、様々な基材、例えば、全天然綿または合成材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどからなるスパンボンド不織布)、特に女性用ケア(婦人衛生および生理用ナプキン製品などの「フェムケア」)、ベビーケア(ベビーおむつおよびワイプなど)、および他のパーソナルケア最終用途の印刷に好適である。インクはまた、好ましくは、フェムケアおよびベビーケア製品に必要なものと一致する最終用途要件を満たし、そのうちの1つは、乾燥擦過および生理食塩水擦過のインク接着評価(IAR)が4.0以上である。別の実施形態では、インクはまた、4.0以上の鉱油擦過評価を有する。別の好ましい最終用途は、食品包装、ファーストフード包装、サンドイッチラップストック、PEコーティング漂白カップストックなどの包装材料であろう。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、ワニスを作製するために使用される樹脂材料は、中和不飽和有機酸、水およびタンパク質の組み合わせである。別の好ましい実施形態では、不飽和有機酸は、コロホニーの形態である。別の好ましい実施形態では、タンパク質は、アニオン性溶液タンパク質の形態である。本発明の水系インクの他の好ましい天然材料の例としては、フマル酸修飾ロジンエステルなどの樹脂;ダイズタンパク質;ESO湿式ニトロセルロース;糖類;多糖類;ダイズ油系消泡剤;カルナウバワックスおよびダイズワックスなどのワックス;ウルトラマリン、酸化物などの鉱物系顔料、スピルリナ-青緑藻由来の青色顔料;ならびにバイオプロパノール、(バイオ再生可能な非毒性溶媒のブレンド)が挙げられる。
【0050】
本発明は、固有の相乗効果が、アニオン性溶液タンパク質とコロホニーとの組み合わせで生じることが示されたのは初めてであり、それ以外の場合、いずれかの成分単独では見出すことができない。タンパク質は、典型的には、優れた耐油性を有する機械的に頑丈な高分子量骨格を含有する。アニオン性溶液タンパク質単体は、従来の皮膜形成剤ではなく、耐水性が劣る一方で、コロホニー単体では優れた耐水性を示すが、耐油性、機械的耐久性、および短いレオロジー性に劣る。コロホニーは従来の皮膜形成剤ではないが、タンパク質およびコロホニーが組み合わされて皮膜形成剤となり(化学物質の浸透を阻害)、現在の業界製品と比較して非常に良好な機械的耐性、耐油性、および耐水性を示す。
【0051】
コロホニーは、マツ、ジュニパー、モミ、およびスギなどの針葉樹の樹液に由来する。コロホニーは、アビエチン型酸およびピマル型酸の異性体を含む高分子量不飽和酸を含む。代表的な酸を以下に示す。
【化1】
【0052】
各種類の酸の比率は、コロホニーの供給源に依存する。本発明の説明においては、代表的な酸としてアビエチン酸が使用されるが、コロホニー中のすべての酸についても同様の概念が適用される。コロホニー(またはロジン)は、パーソナルケアおよび美容製品、おむつ、女性用衛生製品、外用薬、表面コーティング、潤滑剤、接着剤、シーラントなどに見出すことができる。
【0053】
植物タンパク質は、アミノ酸のポリマー構築物である。これらのアミノ酸は両性であり、少なくとも1つのイオン化可能なαアミノ基および少なくとも1つのイオン化可能なαカルボン酸基を含有する。いくつかのアミノ酸は酸性または塩基性であり、それらの側鎖上に追加の塩基または酸性基を含有する。タンパク質のアミノ酸成分に応じて、水溶性は、酸性および/または塩基性水環境で生じ得る。ダイズタンパク質のアミノ酸成分を考慮する。
【表1】
【0054】
ダイズタンパク質は、これらのアミノ酸(塩基性)側鎖のイオン化を介して酸性水環境で溶解性を提供するのに十分なアルギニン、ヒスチジン、およびリジンを含有する。ダイズタンパク質はまた、これらのアミノ酸(酸性)側鎖のイオン化を介してアルカリ水中で溶解性を提供するのに十分なグルタミン酸およびアスパラギン酸を含有する。当業者は、ダイズタンパク質が、pH中性水環境において顕著に可溶性ではなく、双性イオンの形成が、溶解性のための十分な極性を提供しないことを理解する。酸性媒体中の可溶化ダイズタンパク質(水素結合部位を増加させるために中和される)は、酸性媒体中のダイズタンパク質(非中和)とは異なる一連の物理的特性を示す。可溶化ダイズタンパク質は、水素結合部位を十分に含有しているため、固形分含有量が高くてもポリマーは水溶性である。アミノ酸は一般に水溶性である。水中での溶解度は、R基の大きさおよび性質に応じて変化する(以下を参照)。タンパク質の酸性および塩基性アミノ酸成分は、中和されたときには高度に水溶性であり、非中和されたときにははるかに溶解性が低い。ダイズタンパク質について、これらの物理的差異は、シスチン/システインアミノ酸、より具体的には、湿潤塗布中のジスルフィド結合の形成または阻害、および印刷インクの乾燥時の揮発性酸またはアミン成分の損失に根ざしている。
【化2】
【0055】
本発明は、ダイズタンパク質に限定されない。本発明の文脈において、任意の植物タンパク質を使用することができる。好適なタンパク質としては、ダイズ、アルブミン、アサ、エンドウマメ、ジャガイモ、コムギグルテン、米、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【表2】
【0056】
*Azad Singh Fitnessのウェブサイト「All you need to know about protein」
【0057】
上記の表Bは、ダイズ、乳清、米、およびエンドウマメタンパク質中のアミノ酸Cys(システイン/シスチン)、Asp(アスパラギン酸)、およびGlu(グルタミン酸)の存在を示す。これらのアミノ酸は、本発明にとって重要である。より具体的には、AspおよびGluは、タンパク質のアルカリ中和、およびアルカリ水担体中の溶解性を担う酸性アミノ酸である。Cysは、pH7.0を超えるジスルフィド結合を形成し、コロホニーと直接相互作用して正のインク性能属性を提示する、硫黄を含有する主要なアミノ酸である。この表には、乳清、ダイズ、豊富なエンドウマメのタンパク質のみが示されているが、すべてではないにしても、ほとんどのタンパク質(例えば、麻種、卵白、ジャガイモ、小麦グルテン)にもアミノ酸Cys、Glu、およびAspが含有されていると推測するのは不合理ではない。シスチンおよびシステインの構造を上に示す。GluおよびAspの構造を以下に示す。
【化3】
【0058】
ある特定の実施形態では、アルカリ性媒体ではなく、酸性媒体中にタンパク質を可溶化することが好ましい。アルカリ性媒体において、シスチンのジスルフィド結合は、可溶化タンパク質中に残存する。酸性媒体では、ジスルフィド結合は失われる。これを以下の方程式1および方程式2に示す。
【0059】
方程式1:アルカリ水媒体に可溶化されたタンパク質:
(A)R-COOH-NHOH→Rsp-COO-+NH +H
また、シスチンのジスルフィド結合でも同時に生じる:
(B)Rsp-シスチン-S-S-シスチン-Rsp→ジスルフィド結合は可溶化タンパク質中に残存する。
式中、Rは乾燥タンパク質であり、Rspは可溶化タンパク質である。
【0060】
方程式1は、タンパク質のアニオン性中和が溶液中にジスルフィド結合を作製し、印刷インク内の水の損失中にそれらの結合を維持することを示す。ジスルフィド結合は、事実上より高分子量に起因して、より低いタンパク質溶液固体を有し、したがって、後続の仕上げインクにおいて、より低い機械的抵抗および固着相互作用の望ましくない効果を有する。したがって、ジスルフィド結合は、好ましくは、本発明のワニスおよびインクビヒクル、ならびにそれらから作製された仕上げインクまたはコーティングにおいて回避される。
【0061】
方程式2:酸-水媒体中に可溶化したタンパク質
(A)R-NH+H→Rsp-NH
同時に発生しているもの:
(B)R-シスチン-S-S-シスチン-R→(2)Rsp-システイン-S-H
式中、Rは乾燥タンパク質であり、Rspは可溶化タンパク質である。
【0062】
方程式2は、シスチンの硫黄部分がシステインのR-SH構築物に変換されるため、酸性中和中に乾燥タンパク質中に生じるジスルフィドR-S-S-Rが失われることを示す。
【0063】
酸性媒体中に可溶化されたタンパク質を、コロホニーなどの有機不飽和酸と混合すると、タンパク質:コロホニー複合体が形成される。
(2)Rsp-システイン-S-H→R-システイン-SH:コロホニー複合体
【0064】
システインの酸性硫黄は、コロホニーからのリガンド供与を可能にする。コロホニーと硫黄含有アミノ酸との間の相乗効果は、安定した立体保護を生み出し、ジスルフィド結合の形成を防止し、結果として、良好な機械的抵抗特性を有する仕上げインクをもたらす。
【0065】
本発明の新規の特徴のうちの1つは、本発明のインクワニスおよびインクビヒクルから作製された高BRC含有量を有するインクの抵抗性能(例えば、機械的、水、および油抵抗)である。理論に拘束されることなく、出願人は、不飽和有機酸が、タンパク質が酸性媒体に可溶化されるときに、タンパク質のシステインアミノ酸基と会合/反応し、永続的に近接して保持され、次いで可溶化されたタンパク質がアルカリ媒体に含まれるときに、ジスルフィド結合形成の阻害を担うと理論付けしている。タンパク質を酸性媒体に可溶化する。コロホニーは酸性媒体中にも存在し、システインと反応するにつれて可溶性になる。次いで、溶液のpHを、コロホニー「キャップ」がシステイン上に配置された状態で、アンモニアで9のpHに上昇させる。ほとんどの水系インクは、アニオン性であり、最終的なpHは9付近であることが必要である。ジスルフィド結合により、粘度を維持したまま固形分を少なくする。従来技術の溶液樹脂としては、Reactol 5145E(Lawterからのポリエステル)、Filtrez 531(Lawterからのフマル酸修飾エステル)、Amberyl 890LV(トリイソからのアルコールで部分的にエステル化されたガムロジンのフマル酸付加物)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
コロホニーは、硫黄およびシステインと反応、複合体形成、または会合することができる2つの求核部位を含有する。1つの反応部位は、不飽和を生じるPI電子である。第2の部位は、カルボン酸である。理論に拘束されることなく、出願人は、システインの硫黄がコロホニーのPI電子と複合体を形成していることを示唆する。コロホニーのその複合体および近接性は、pH7.0超でのジスルフィド結合の形成を立体的に防止し、可溶化ポリマーとのジスルフィド結合の形成に関連する負の性能属性を排除する。
【0067】
ジスルフィド結合の形成の確認は、500~540cm-1のアルカリ溶液中のタンパク質単独の赤外線(IR)分析、およびアルカリ溶液中のタンパク質-コロホニーの組み合わせを介して得ることができる。ジスルフィド結合は、IR分光光度計の伸びとして検出することができる。
【0068】
酸性媒体対アルカリ培地に可溶化されたダイズタンパク質の性質、一般に測定されたインク属性を表Cに示す。
【表3】
【0069】
1ミル(25.4μm)バードアプリケーターを使用して、ガラス上に湿ったワニスを周囲に塗布して、皮膜形成を決定した。ワニスを熱風ガンで乾燥させた後、カミソリ刃で除去した。除去した乾燥ワニスが粉末を形成する場合、それは皮膜形成剤ではない。乾燥ワニスがガラスから除去されたときに連続した層またはシートを形成する場合、それは皮膜形成剤とみなされる。
【0070】
耐水性は、フレキソ200ライン7.0BCMハンドプルーフ機を使用して、40グラムのポリエステルフィルム(LBT)にワニスを塗布することによって決定した。ワニスは、熱風乾燥機で完全に乾燥させた。塗布して乾燥したワニスの上に3滴の水を垂らし、直ぐに紙ナプキンで拭き取った。ワニスの除去が観察されなかった場合、耐水性が高い。ナプキンがかなりの量のワニスを除去すると、耐水性が低くなる。
【0071】
接着性の評価にはPETと同様のワニス塗布を使用した。数インチの3M 610テープをワニスに塗布し、次いで、120度の角度でゆっくりと引き離した。テープがPETからワニスを除去した場合、これは接着性/固着性が不良であることを示す。PETからのワニスの損失がないことは、優れた固着性/接着性を示す。
【0072】
本発明の組成物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約20重量%の不飽和有機酸を含む。例えば、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約15重量%の不飽和有機酸、または1重量%~約10重量%、または1重量%~約5重量%、または約5重量%~約20重量%、または約5重量%~約15重量%約5重量%~約10重量%、または約10重量%~約20重量%、または約10重量%~約15重量%、または約15重量%~約20重量%を含み得る。
【0073】
本発明の組成物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%のタンパク質を含む。例えば、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約15重量%のタンパク質、または約5重量%~約10重量%、または約10重量%~約20重量%、または約10重量%~約15重量%、または約15重量%~約20重量%を含み得る。
【0074】
本発明の組成物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約40重量%~約80重量%の水を含有する。例えば、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、約40重量%~約75重量%の水、または約40重量%~約70重量%、または約40重量%~約65重量%、または約40重量%~約60重量%、または約40重量%~約55重量%、または約40重量%~約50重量%、または約40重量%~約45重量%、または約45重量%~約80重量%、または約45重量%~約75重量%、または約45重量%~約70重量%、または約45重量%~約65重量%、または約45重量%~約60重量%、または約45重量%~約55重量%、または約45重量%~約50重量%、または約50重量%~約80重量%、または約50重量%~約75重量%、または約50重量%~約70重量%、または約50重量%~約65重量%、または約50重量%~約60重量%、または約50重量%~約55重量%、または約55重量%~約80重量%、または約55重量%~約75重量%、または約55重量%~約70重量%、または約55重量%~約65重量%、または約55重量%~約60重量%、または約60重量%~約80重量%、または約60重量%~約75重量%、または約60重量%~約70重量%、または約60重量%~約65重量%、または約65重量%~約80重量%、または約65重量%~約75重量%、または約65重量%~約70重量%、または約70重量%~約80重量%、または約70重量%~約75重量%、または約75重量%~約80重量%を含み得る。
【0075】
本発明は、水系システムに注目されるが、少量の有機溶媒も存在し得る。有機溶媒が存在する場合、本発明の組成物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約6重量%の有機溶媒を含む。例えば、組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約5.5重量%の有機溶媒、または約0.01重量%~約5重量%、または約0.01重量%~約4重量%、または約0.01重量%~約3重量%、または約0.01重量%~約2重量%、または約0.01重量%~約1重量%、または約0.01重量%~約0.5重量%、または約0.5重量%~約6重量%、または約0.5重量%~約5重量%、または0.5重量%~約4重量%、または約0.5重量%~約3重量%、または約0.5重量%~約2重量%、または約0.5重量%~約1重量%、または約1重量%~約6重量%、または約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%、または約1重量%~約2重量%、または約2重量%~約6重量%、または約2重量%~約5重量%、または約2重量%~約4重量%、または約2重量%~約3重量%、または約3重量%~約6重量%、または約3重量%~約5重量%、または約3重量%~約4重量%、または約4重量%~約6重量%、または約4重量%~約5重量%、または約5重量%~約6重量%を含み得る。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明のインクに使用される1つ以上の有機溶媒は、バイオ系溶媒(天然材料)である。バイオ溶媒は再生可能であり、非毒性である。バイオマスは、バイオ溶媒を製造するための再生可能資源である。例えば、デンプン、リグノセルロース、植物油、動物油脂およびタンパク質を使用して、酸、アルカン、芳香族化合物、イオン液体(IL)、フラン、エステル、エーテル、液体ポリマーおよび深共晶溶媒(DES)を含むがこれらに限定されない様々なバイオ由来溶媒を合成することができる。バイオ溶媒としては、バイオアルコール、バイオエーテル、バイオエステル、バイオ酸、バイオ脂肪酸メチルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、バイオアルコールが好ましい。好ましいバイオアルコールは、バイオプロパノールである。バイオ溶媒のブレンドはまた、本発明のインクにおける使用に好適である。好適なバイオ溶媒としては、PRO-100(商標)(chimista Specialty Chemicals)、Augeo(商標)(Solvay)、およびCyrene(商標)(ジヒドロレボグルコセノン、Circa Group)が挙げられるが、これらに限定されない。コーティング業界では、PRO-100(商標)は、産業用、建築用、DTM(金属に直接)、および他のコーティングおよびコーティング用途で使用することができる有用なバイオ溶剤ブレンドである。PRO-100(商標)の溶解度パラメータは、n-プロパノールの溶解度パラメータと類似しており、配合物中のバイオ再生可能炭素含有量を増加させたい製剤化者にとって優れたバイオ系性能代替物となる。PRO-100(商標)は、95%以上のバイオ再生可能炭素を含有している。
【0077】
好ましくは、本発明のインクの有機溶媒は、溶媒の総重量に基づいて、1重量%以上のバイオ溶媒を含有する。例えば、溶媒は、溶媒の総重量に基づいて、約1重量%~約100重量%のバイオ溶媒を含有する。例えば、バイオ溶媒は、溶媒の総重量に基づいて、約1重量%~約90重量%、または約1重量%~約80重量%、または約1重量%~約70重量%、または約1重量%~約60重量%、または約1重量%~約50重量%、または約1重量%~約40重量%、または約1重量%~約30重量%、または約1重量%~約20重量%、または約1重量%~約10重量%、または約10重量%~約100重量%、または約10重量%~約90重量%、または約10重量%~約80重量%、または約10重量%~約70重量%、または約10重量%~約60重量%、または約10重量%~約50重量%、または約10重量%~約40重量%、または約10重量%~約30重量%、または約10重量%~約20重量%、または約20重量%~約100重量%、または約20重量%~約90重量%、または約20重量%~約80重量%、または約20重量%~約70重量%、または約20重量%~約60重量%、または約20重量%~約50重量%、または約20重量%~約40重量%、または約20重量%~約30重量%、または約30重量%~約100重量%、または約30重量%~約90重量%、または約30重量%~約80重量%、または約30重量%~約70重量%、または約30重量%~約60重量%、または約30重量%~約50重量%、または約30重量%~約40重量%、または約40重量%~約100重量%、または約40重量%~約90重量%、または約40重量%~約80重量%、または約40重量%~約70重量%、または約40重量%~約60重量%、または約40重量%~約50重量%、または約50重量%~約100重量%、または約50重量%~約90重量%、または約50重量%~約80重量%、または約50重量%~約70重量%、または約50重量%~約60重量%、または約60重量%~約100重量%、または約60重量%~約90重量%、または約60重量%~約80重量%、または約60重量%~約70重量%、または約70重量%~約100重量%、または約70重量%~約90重量%、または約70重量%~約80重量%、または約80重量%~約100重量%、または約80重量%~約90重量%、または約90重量%~約100重量%の量で存在し得る。
【0078】
本発明の組成物は、任意選択で、1つ以上の中和剤を含む。好適なアニオン性中和剤としては、アンモニア、高級アミン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、中和剤は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約20重量%の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、中和剤は、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約15重量%、または約1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%、または約5重量%~約20重量%、または約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%、または約10重量%~約20重量%、または約10重量%~約15重量%、または約15重量%~約20重量%の量で本発明の組成物中に存在し得る。
【0079】
本発明の組成物は、ワックス、消泡剤、シリコーン、摩擦係数調整添加剤、接着促進剤、安定剤、光学増白剤、脱気添加剤、流動促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、流動添加剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない1つ以上の添加剤を任意選択で含む。
【0080】
ある特定の実施形態では、1つ以上の添加剤は、天然材料である。例えば、消泡剤およびワックスは、有利には天然材料である。好適な消泡剤としては、ダイズ系消泡剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適なワックスとしては、アミドワックス、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルヌバ(carnuba)ワックス、ダイズワックス、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
存在する場合、添加剤はそれぞれ、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%の量で、本発明の組成物中に個別に存在する。
【0082】
ワニスは、例えばコーティングなどの基材自体に塗布することができ、またはそれらを使用してインクビヒクルまたは仕上げインクを作製することができる。本発明のインクビヒクルおよび仕上げインクは、本発明のワニス、加えてインクおよびコーティングにおいて典型的に使用される他の材料を含む。
【0083】
特定の態様では、本発明は、本発明のワニスおよびエマルションポリマーを含むインクビヒクルを提供する。好適なエマルションポリマーとしては、Indulor BRC Induprint SE 1611(スチレンおよびアクリレートに基づくエマルションポリマー)、Hydrite Hydriprint 605 NV(スチレン-アクリルエマルションポリマー)、およびBASF Joncryl LMV 7031(pH安定なアクリルエマルション)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、エマルションポリマーは、スチレンおよびアクリレートに基づく。
【0084】
本発明のインクビヒクルは、典型的には、インクビヒクルの総重量に基づいて、約10重量%~約80重量%の量で本発明のワニスを含む。例えば、ワニスは、インクビヒクルの総重量に基づいて、約10重量%~約70重量%、または約10重量%~約60重量%、または約10重量%~約50重量%、または約10重量%~約40重量%、または約10重量%~約30重量%、または約10重量%~約20重量%、または約20重量%~約80重量%、または約20重量%~約70重量%、または約20重量%~約60重量%、または約20重量%~約50重量%、または約20重量%~約40重量%、または約20重量%~約30重量%、または約30重量%~約80重量%、または約30重量%~約70重量%、または約30重量%~約60重量%、または約30重量%~約50重量%、または約30重量%~約40重量%、または約40重量%~約80重量%、または約40重量%~約70重量%、または約40重量%~約60重量%、または約40重量%~約50重量%、または約50重量%~約80重量%、または約50重量%~約70重量%、または約50重量%~約60重量%、または約60重量%~約80重量%、または約60重量%~約70重量%、または約70重量%~約80重量%の量でインクビヒクル中に存在し得る。
【0085】
本発明のインクビヒクルは、典型的には、インクビヒクルの総重量に基づいて、エマルションポリマーを約5重量%~約50重量%の量で含有する。例えば、エマルションポリマーは、インクビヒクルの総重量に基づいて、約5重量%~約40重量%、または約5重量%~約30重量%、または約5重量%~約20重量%、または約5重量%~約10重量%、または約10重量%~約50重量%、または約10重量%~約40重量%、または約10重量%~約30重量%、または約10重量%~約20重量%、または約20重量%~約50重量%、または約20重量%~約40重量%、または約20重量%~約30重量%、または約30重量%~約50重量%、または約30重量%~約40重量%、または約40重量%~約50重量%の量で存在し得る。
【0086】
本発明のインクビヒクルは、有利には、インクビヒクル内の総炭素に基づいて、約45%以上のBRC含有量を有する(すなわち、炭素含有材料の45%以上がバイオ再生可能炭素の形態にある)。例えば、インクビヒクルは、インクビヒクルの総炭素に基づいて、約50%以上のBRC含有量、または約55%以上、または約60%以上を有し得る。
【0087】
別の態様では、本発明は、本発明のインクビヒクルを含む仕上げインクを提供する。インクビヒクルが着色剤を含有しない実施形態では、透明な仕上げインクとして使用され得ることに留意されたい。ある特定の実施形態では、本発明の仕上げインクは、本発明のインクビヒクルおよび1つ以上の着色剤を含む。ある特定の実施形態では、着色剤は、分散剤またはエマルション、例えば、顔料分散剤として提供される。好適な着色剤としては、顔料(例えば、限定されないが、鉱物質顔料)および染料(例えば、限定されないが、植物系染料)が挙げられる。好適な着色剤としては、ラピスラズリに由来するウルトラマリンブルー、スピルリナに由来するLinablue、酸化鉄顔料、銅顔料、チタン顔料、亜鉛顔料、アルミニウム顔料、炭素顔料、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の仕上げインクは、通常、仕上げインクの総重量に基づいて、約30重量%~約99重量%の量で本発明のインクビヒクルを含有する。例えば、仕上げインクは、仕上げインクの総重量に基づいて、約30重量%~約95重量%のインクビヒクル、または約30重量%~約90重量%、または約30重量%~約80重量%、または約30重量%~約70重量%または約30重量%~約60重量%、または約30重量%~約50重量%、または約30重量%~約40重量%、または約40重量%~約99重量%、または約40重量%~約95重量%、または約40重量%~約90重量%、または約40重量%~約80重量%、または約40重量%~約70重量%、または約40重量%~約60重量%、または約40重量%~約50重量%、または約50重量%~約99重量%、または約50重量%~約95重量%、または約50重量%~約90重量%、または約50重量%~約80重量%、または約50重量%~約70重量%、または約50重量%~約60重量%、または約60重量%~約99重量%、または約60重量%~約95重量%、または約60重量%~約90重量%、または約60重量%~約80重量%、または約60重量%~約70重量%、または約70重量%~約99重量%、または約70重量%~約95重量%、または約70重量%~約90重量%、または約70重量%~約80重量%、または約80重量%~約99重量%、または約80重量%~約95重量%、または約80重量%~約90重量%、または約90重量%~約99重量%、または約90重量%~約95重量%、または約95重量%~約99重量%を含み得る。
【0089】
本発明の仕上げインクは、典型的には、仕上げインクの総重量に基づいて、約1重量%~約70重量%の量の着色剤である。例えば、仕上げインクは、仕上げインクの総重量に基づいて、約1重量%~約60重量%、または約1重量%~約50重量%、または約1重量%~約40重量%、または約1重量%~約30重量%、または約1重量%~約20重量%、または約1重量%~約10重量%、または約10重量%~約70重量%、または約10重量%~約60重量%、または約10重量%~約50重量%、または約10重量%~約40重量%、または約10重量%~約30重量%、または約10重量%~約20重量%、または約20重量%~約70重量%、または約20重量%~約60重量%、または約20重量%~約50重量%、または約20重量%~約40重量%、または約20重量%~約30重量%、または約30重量%~約70重量%、または約30重量%~約60重量%、または約30重量%~約50重量%、または約30重量%~約40重量%、または約40重量%~約70重量%、または約40重量%~約60重量%、または約40重量%~約50重量%、または約50重量%~約70重量%、または約50重量%~約60重量%、または約60重量%~約70重量%の量の着色剤を含み得る。
【0090】
ある特定の実施形態では、本発明の仕上げインクは、仕上げインクの総重量に基づいて、50重量%の本発明のインクビヒクル、および50重量%の着色剤を含む。
【0091】
本発明の仕上げインクは、仕上げインクの総炭素に基づいて、有利には、約45%以上のBRC含有量を有する(すなわち、炭素含有材料の45%以上がバイオ再生可能炭素の形態にある)。例えば、仕上げインクは、仕上げインクの総炭素に基づいて、約50%以上のBRC含有量、または約55%以上、または約60%以上を有し得る。
【実施例
【0092】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するものであり、いかなる点においてもその範囲を限定することを意図せず、そのように解釈されるべきではない。
【0093】
試験方法
塗布強度係数
インク試料を水で25秒EZ Zahn#2カップ粘度まで減少させ、200ライン7.8BCMハンドプルーフ機で30#漂白MGサンドイッチラップストックに塗布した。インクを120°F(約49℃)の対流オーブンで30秒間乾燥させ、次いで周囲条件で16~24時間硬化させた。乾燥および硬化したインクの色密度を、X-Rite939分光光度計で測定した。X-Riteは、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒色(K)の密度を測定する。最大値はドミナント色、すなわち、正規化係数の計算に使用される密度値である主密度である。対照試料は、実施例10(赤色)および実施例11(青色)であった。密度は以下のように正規化係数を決定する。
試験試料の密度/対照試料の密度
【0094】
この値は、同じ色の制御に対して100.0%に設定され、すべての変数は、適用される制御強度に対して密度%で記述される。この密度パーセンテージは、以下に記載されるように、「乾燥サイクル」および「ウォーターキネティック」列(すなわち、インク転移データ)における密度値を正規化するために使用される。
【0095】
乾燥サイクル
乾燥サイクル試験は、塗布強度係数試験の印刷試料を使用したSutherland摩擦機械的転移試験である。
【0096】
印刷シートは、2#スレッド、インク側下部に取り付けられ、同じストック基材のシートの印刷されていない裏面は、Sutherlandベースに取り付けられた。試験は、25サイクルの擦過で構成された。バックグラウンド密度は、インク転移のない領域(すなわち、プレーン基材)の密度である。最も高いインク転移を有する領域の主な寄与V、C、M、Y(バイオレット、シアン、マゼンタ、黄色)密度からバックグラウンド密度を減算して、インク転移のみを決定した(すなわち、転移インクのみから寄与した密度)。インク転移密度値は、塗布強度係数を使用して正規化した。最大インク転移領域における測定されたインク転移密度を、インク試料の塗布強度係数で割った。例えば、赤色インクが、乾燥サイクル試験のための主要なX-Rite939インク転移密度(M-マゼンタ)測定値0.030を有し、塗布強度係数試験における対照の90%での塗布を示す場合、表の乾燥サイクル試験の正規化値は、0.030/0.9=0.033である。正規化された転移密度は、確立された/過去の印刷業界の機械的摩擦要件を満たすために0.100未満でなければならない。
【0097】
乾燥湿潤
このタイプのSutherland摩擦試験は、コールドカップ塗布で印刷されたインクの業界標準として使用される。インク試料を水で25秒EZ Zahn#2カップ粘度まで減少させ、200ライン7.8BCMハンドプルーフ機でPEコーティング漂白カップストックのポリエチレン(PE)側に塗布した。硬化方法は上述と同様であった。印刷されていないストックを、4#スレッドに取り付けた(PE側下)。印刷試料をラン試験機のベース上に表向きに配置した(すなわち、カップのネスティングアライメント)。最初の25サイクルを乾燥させ、続いて5gの水で濡らした同じ領域上で25サイクルを行った。印刷されていないストックまたは水たまり内の色へのインクの転移がないことが、「合格」の評価となる。肉眼で見ることができるかどうかで、顕著なインクの転移は判断されない。ヒトの眼は、一般的に、V、C、M、Yについて、0.015未満のX-Rite939密度を検出することができないため、転移されたインク密度が0.015未満であれば、転写されたインクを見ることができず、試料は乾燥湿潤試験に合格する。
【0098】
ウォーターキネティック
これは水に濡れたナプキン-定量的機械的摩擦転移試験である。30#漂白サンドイッチラップストックの代わりに、16#漂白サンドイッチラップストックを使用したことを除いて、上述のように、インクを塗布し、硬化させた。完全に水に濡れたナプキンを、2#Sutherlandスレッドを備えた4インチの印刷ストックの上部を横方向に引っ張った。3インチ×4インチのコピー用紙をスレッドと濡れたナプキンとの間に配置し、試験中にすべての層を一緒に保持した。ナプキンを乾燥させた。X-Rite939密度(主要寄与度V、C、M、Y)を、インクなしのバックグラウンド、および最大インク転移面積について測定した。バックグラウンド密度をインク転移領域から減算し、インクのみの転移密度を決定した。次いで、インクのみの転移密度を、塗布強度係数を使用して正規化した。業界標準で許容されるには、過去のインク転移密度値が0.050未満でなければならない。
【0099】
ケチャップ、マスタード、マヨネーズ
この試験は、印刷インクの上から調味料を優しく拭き取り、ナプキンへのインクの転移を評価した。PEコーティング漂白カップストックのPE側をインクで印刷した。各調味料を、直径1インチ(2.54cm)の円形に印刷されたストックのインク領域上に置いた。15秒後、ナプキンを使用して調味料を除去した。ナプキンをインク転移のために検査した。合格結果は、ナプキンにインクがほとんど残っていないか、まったく残っていない状態である。
【0100】
コーラ(登録商標)
インクを塗布し、PEコーティング漂白カップストックのPE側で硬化させた。ソーダを直径1インチ(2.54cm)の水たまりに塗布した。5分後、ソーダを優しく拭き取った。ナプキンは、非積極的な拭き取りで転移またはブリードを評価した。合格とするためには、インク除去は許可されない。
【0101】
植物油
インクを塗布し、上述のようにPEコーティング漂白カップストックのPE側で硬化させた。ファーストフードには、植物油が豊富である。植物油を印刷試料の印刷(インク)上に置き、次いで5秒間指で擦ってインクの可動性を定性的に評価し、最後にナプキンで拭き取った。印刷物またはナプキンへの色の大きな転移がないものを合格とする。
【0102】
400Fスレッド
これは、印刷シートを段ボールに熱積層する、プリントクラムシェル用途の機械的耐熱性試験方法である。インクを#16漂白サンドイッチラップストックに塗布し、上述のように硬化させた。Sutherland摩擦試験機400Fで加熱した2#スレッドを印刷インク上に直接置き、100サイクルの加熱接触を行った。印刷物は、インクおよび非インク領域を通って熱ソリッドが移動するように配向された。熱接触部を検査した場合、非印刷部へのインク転移がないことが合格となる。
【0103】
PE/水/綿ワイプ
これは、コールドカップ塗布内での水濡れ性機械的摩擦試験である。インクを塗布し、上述のようにPEコーティング漂白カップストックのPE側で硬化させた。印刷した試料を室温の水に15分間浸した。印刷物を水から取り出し、濡れた綿ワイプで積極的に拭いた。この試験に合格するには、除去または転移は許されない。
【0104】
キャリーアップ/インクレイ
印刷物は、顕著なインク付着の問題がないか観察された。インクを塗布し、PEコーティング漂白カップストックのPEコーティング側、および16#漂白サンドイッチラップストックで硬化させた。200ライン7.8BCMハンドプルーフ機を使用して、25秒EZ Zahn#2の粘度でインクを塗布した。合格するには、斑点、ピンホール、すじ、スキップ、または不均一なレイは認められない。
【0105】
120°F(約49℃)でのエージング
この試験を使用して、インクの湿潤安定性を決定した。初期インク粘度を、水を使って#2EZ Zahnカップで24秒まで減少させ、インクを120°F(約49℃)で24時間保存した後に再測定した。最初の粘度および24時間の粘度の両方を、70°F(約21℃)でインクで測定した。24時間の保存後の粘度の上昇は、インク成分間の反応性を示した。合格グレードを得るために、120°F(約49℃)で24時間にわたって、インクの粘度が5秒を超えて上昇してはならない。
【0106】
実施例1.ダイズタンパク質-コロホニーワニス
ワニス(R4181-46A)をダイズ-コロホニー複合体を用いて調製した。ワニスは、ワニス中の炭素の総量に基づいて、99%以上のBRC含有量を含有した。実施例1のワニス(R4181-46A)の配合物を表1に示す。
【表4】
【0107】
*水源が>pH7.0である場合、0.1%クエン酸を添加して初期pHを低くすることができる。
【0108】
実施例1のワニスR4181-46Aは、可溶性形態がpH9.5である一方で、皮膜形成、耐水性、および機械的耐性を含む、酸性可溶化タンパク質に見出されるいくつかのタンパク質属性を模倣する。当該技術分野内のほとんどすべての水系インク、色分散液、および樹脂は、アニオン性であり、アミン水溶液に可溶性である。多くの理論が可能であるが、コロホニーがシステインを支持し、ジスルフィド結合形成(シスチン)の負の性能属性を防止していることが考えられる。コロホニーが、タンパク質中に見出されるシステインの硫黄部分と会合する、かつ/またはそれと反応する追加の裏付けとなる証拠がある。等量のダイズタンパク質およびコロホニーを窒素下で200℃に加熱すると、室温に冷却した後、異なる刺激性HS生成物が存在する。
【0109】
実施例2.実施例1のワニスから作製したダイズタンパク質-コロホニーインクビヒクル。
高BRC含有インクビヒクル(R4181-46B)を、実施例1のワニスを使用して調製した。実施例2のインクビヒクルの配合物を表2Aに示す。
【表5】
【0110】
炭素含有材料の62.39%は、バイオ再生可能炭素(すなわち、非古代または非化石系炭素)の形態にある。
【0111】
実施例2のインクビヒクルを、現在(従来技術)の持続可能な市販インクビヒクル(Sun Chemical製品)と比較した。結果を表2Bに示す。
【表6】
【0112】
表2Bのデータは、現在利用可能な、持続可能なSun Chemicalビヒクルを形成する皮膜のBRC比較を示す。実施例1の例外的に高いBRC含有量は、同様の使用のために設計された現在の商業的オプションよりも実質的に高いBRC含有量を有するインクビヒクル、実施例2をもたらす。
【0113】
実施例3.実施例2のインクビヒクルで調製したダイズタンパク質-コロホニー仕上げインク
仕上げインクを、50%の色分散液および50%の実施例2のインクビヒクルをブレンドすることによって調製した。配合物を表3に示す。
【表7】
【0114】
Flexiverse(登録商標)は、Sun Chemical Corp.によって供給される顔料調製物の商標名である。表3は、本発明の湿潤安定性/生存性をすべての一般的な色素顔料化オプションで実証するために含まれている。
【0115】
実施例4~6.アルブミン-コロホニー複合体を用いて調製した組成物。
ワニス(実施例4、R4181-48A)をアルブミン-コロホニー複合体から調製した。実施例4のワニスを使用して、アルブミン-コロホニーインクビヒクル(実施例5、R4181-48B)を調製した。実施例5のインクビヒクルを使用して、アルブミン-コロホニー仕上げレッドインク(実施例6、R4181-48C)を調製した。実施例4~6の配合物をそれぞれ表4~6に示す。
【表8】
【表9】
【表10】
【0116】
実施例7~9.麻タンパク質-コロホニー複合体で調製した組成物
ワニス(実施例7、R4181-49A)を、麻タンパク質-コロホニー複合体から調製した。麻タンパク質-コロホニーインクビヒクル(実施例8、R4181-49B)を、実施例7のワニスを使用して調製した。麻タンパク質-コロホニー仕上げ青色インク(実施例9、R4181-49C)を、実施例8のインクビヒクルを使用して調製した。実施例7~9の配合物をそれぞれ表7~9に示す。
【表11】
【0117】
*不溶性セルロース(葉および茎材料)6.6%を、50ミクロンの濾過材料で最終溶液から除去した。
【表12】
【表13】
【0118】
なお、上記の仕上げインクの実施例(実施例3A~3K、6、および9)はすべて着色剤を含んでいるが、同じ材料をすべて含んでいる仕上げコーティングを提供すると同時に、着色剤を排除して、オーバープリントワニスとして使用するための非着色コーティングを提供することも可能であろう。
【0119】
実施例10および11.比較 仕上げインク
比較実施例10は、50%RFD5104 Flexiverse Red269色分散液/50%GP37000030A SunVisto(登録商標)Aquagreen GR Tech Vehicle(Sun Chemical Corp.)で配合される。これは、過去に本明細書に記載され、表13に列挙されているすべての試験に合格した、商業的な標準インク性能制御である。
【0120】
比較実施例11は、50%BFD8153 Flexiverse Blue15:4色分散液/50%GP37000030A SunVisto(登録商標)Aquagreen GR Tech Vehicle(Sun Chemical Corp.)で配合される。これは、過去に本明細書に記載され、表13に列挙されているすべての試験に合格した、商業的な標準的性能制御である。
【0121】
実施例12.本発明のワニスと市販の溶液樹脂との比較。
本発明のタンパク質-コロホニー複合体(実施例1、4、および7)で調製した高BRC含有本発明のワニスを、市販の再生可能な高BRC含有溶液樹脂と比較した。これらの特性を表12に示す。
【表14】
【0122】
BRCは、存在する非古代炭素のパーセンテージを示す。固形分の動きをトレースするために1%の青色分散液(BFD8153)を含む各樹脂の組み合わせをガラスに塗布し、乾燥させて、ガラス上に1ミル(25.4μm)皮膜を得た。各樹脂の組み合わせの完全に乾燥した皮膜上に水または植物油を3滴滴下し、着色されたワニスをQチップで10秒間軽く擦ることによって、耐水性および耐油性を決定した。Qチップに青色が転移されない場合、耐性は良好である。少量の青色がQチップに転移された場合、結果は平均である。Qチップ上の青色の色合いが、塗布されたワニスの密度に近い場合、結果は不良である。機械的耐性を試験するために、各ワニスを40グラムのポリエステルフィルムに塗布し、次いで完全に乾燥させた。乾燥したワニスを有するポリエステルフィルムを、右手と左手の親指の間で15秒間にわたってシワを付けた。不良の評価は、ワニスがポリエステルから容易に剥がれてしまうことを示す。良好な評価は、試験後にポリエステルフィルムから樹脂が剥離されていないことを示す。平均評価では、屈曲時にわずかにワニスが失われることが示された。
【0123】
実施例13.本発明の仕上げインクと市販の仕上げインクの比較。
本発明の実施例3F、6、および9の性能を、一連の標準試験における比較実施例10および11の性能と比較した。結果を表13に示す。
【表15】
【0124】
表13は、持続可能なインク性能試験に現在採用されているすべての重要な性能試験方法をまとめたものである。調味料の多くはファーストフードの包装業界固有のものであり、他の欄は物理的なインク特性である。表13のデータは、本発明のタンパク質-コロホニーベースの仕上げインク(実施例3F、6、および9)が、すべての試験仕様に関して確立された市販インク(比較実施例10、および11)と同様に性能を発揮することを示す。
【0125】
本発明は、その好ましい実施形態を含めて詳細に記載されている。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲および趣旨に含まれる本発明の変更および/または改善を行うことができることを理解されたい。