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特許7393563非アルコール性脂肪性肝炎の治療のためのセマグルチド
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  • 特許-非アルコール性脂肪性肝炎の治療のためのセマグルチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎の治療のためのセマグルチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20231129BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P1/16
A61P3/06
A61K47/02
A61K47/10
A61K9/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022561387
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021060827
(87)【国際公開番号】W WO2021219543
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】20171536.4
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20173341.7
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ランデール、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ペイル、マッツ、スンビ
(72)【発明者】
【氏名】ダムゴール、ラルス、ホルム
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、モルテン
(72)【発明者】
【氏名】トルステンソン、カール リチャード
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/018610(WO,A1)
【文献】Hepatology,2017年,vol.66, issue S1,p.1096A(2078)
【文献】Hepatology,2019年,vol.70, issue S1,p.1268A(2142)
【文献】NCT02970942 Investigationof Efficacy and Safety of Three Dose Levels of Subcutaneous Semaglutide Once Daily Versus Placebo in Subjects With Non-alcoholic Steatohepatitis,ClinicalTrials.gov,2020年04月15日,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02970942?V_105=View#StudyPageTop
【文献】NCT03987451 A Research Study on How Semaglutide Works in People With Fatty Liver Diseaseand Liver Damage,ClinicalTrials.gov,2020年04月15日,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT03987451?V_35=View#StudyPageTop
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/26
A61P 1/16
A61P 3/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セマグルチドを含む、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のヒト対象者の治療方法において使用するための医薬組成物であって、前記セマグルチドが、週当たり24~2.8mgの範囲内の量で投与される、医薬組成物。
【請求項2】
前記対象者が、Kleiner線維症分類に従う肝線維症段階1~3をさらに有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記対象者が、Kleiner線維症分類に従う肝線維症段階2または3をさらに有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、NASHの慢性管理のために使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記セマグルチドが、前記対象者に投与される唯一の活性成分または唯一のGLP-1受容体作動薬である、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、皮下投与によって投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記セマグルチドが、週当たり2.4mgの量で投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記セマグルチドが、週当たり2.8mgの量で投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、1日1回またはそれより少ない頻度で投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、週1回投与される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記セマグルチドが、2.4mgの量で、週1回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記方法が、前記対象者において肝線維症の悪化をもたらさない、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む水溶液の形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、1.0mg/mLのセマグルチド、1.42mg/mLのリン酸水素二ナトリウム二水和物、14.0mg/mLのプロピレングリコール、5.50mg/mLのフェノールをpH7.4で含む水溶液である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記使用が、小葉炎症の改善をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎を含む非アルコール性脂肪性肝疾患におけるGLP-1受容体作動薬セマグルチドの投与を含む、医学療法に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)として定義される状態は、肝臓内の脂肪の過剰蓄積を伴い、肝臓脂肪症とも呼ばれる。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、過剰なアルコール消費以外の原因による肝臓への脂肪の蓄積を特徴とし、さらに炎症および場合によっては肝線維症も特徴とする、NAFLDに該当する疾患である(非特許文献1)。NASHはさらに肝硬変に至る場合があり、肝臓に関連する原因から死亡するリスクを高める(非特許文献2)。一部の患者においてNAFDLがなぜNASHに進行するかは知られていない。一部の推定では、NASHは、肝臓移植を必要とする末期肝疾患の主要な病因として、近い将来、C型肝炎ウイルス感染を上回ると予測される(非特許文献3)。
【0003】
GLP-1受容体作動薬リラグルチドを、NASHを有する対象者において試験した(非特許文献4)。しかしながら、NASHに罹患している患者を治療するための薬物療法を開発する数多くの試みにもかかわらず、現在利用可能なそのような承認された療法はない。そのような療法を開発するための以前の試みの例としては、異なる化合物:BI1467335(AOC3阻害剤)、エムリカサン(カスパーゼ阻害剤)、セロンセルチブ(ASK1阻害剤)、シロフェクサー(ファルネソイドX受容体)、およびフィルソコスタット(アセチル-CoAカルボキシラーゼ阻害剤)を伴う臨床治験が挙げられる。したがって、NASHに対する承認された医学的療法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
非特許参考文献
【文献】Diehl et al.N Engl J Med2017;377:2063-72
【文献】Estes et al.Hepatology2018;67:123-133
【文献】Oseini et al.Liver Int.2017;37(Suppl1):97-103
【文献】Armstrong et al.Lancet2016;387:679-690
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象者へのセマグルチドの投与を含む、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本明細書の臨床治験Aに記載されるように、ベースラインでNASHおよび肝線維症段階1~3を有する対象者におけるセマグルチド(セマ)またはプラセボの投与後の、治験終了時の肝細胞の風船化の改善に対する効果を示す。
図2図2は、本明細書の臨床治験Aに記載されるように、ベースラインでNASHおよび肝線維症段階1~3を有する対象者におけるセマグルチド(セマ)またはプラセボの投与後の、治験終了時のNASHの消失および肝線維症の悪化なしの観察を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは驚くべきことに、セマグルチドの投与が、セマグルチドが週当たり0.7、1.4、または2.8mgの量で投与された臨床治験において、NASHならびにKleiner線維症分類に従う段階1~3以内の肝線維症の程度を有すると診断された患者におけるプラセボと比較して、NASHを有すると診断された患者におけるNASHの症状を顕著に低減したことを見出した。
【0008】
本発明者らはまた、セマグルチドの投与が、セマグルチドが週当たり2.8mgの量で投与された臨床治験において、NAFLDならびに肝臓脂肪症および肝硬直の程度を有すると診断された対象者におけるプラセボと比較して、NAFLDを有すると診断された患者において肝臓脂肪症を顕著に低減し、この効果は少なくとも約48週間の治療の継続期間中に増加したことを見出した。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象者へのセマグルチドの投与を含む、NASHの治療方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象者へのセマグルチドの投与を含む、NASHの治療方法に関し、当該対象は、Kleiner線維症分類に従う肝線維症段階1~3をさらに有する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象者へのセマグルチドの投与を含む、NASHの治療方法に関し、当該対象は、Kleiner線維症分類に従う肝線維症段階2または3をさらに有する。いくつかの実施形態では、方法は、NASHの慢性管理のためのものである。いくつかの実施形態では、方法は、NASHの慢性管理のためのものである。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、本発明の方法で投与される唯一のGLP-1受容体作動薬である。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、本発明の方法で投与される唯一の活性成分である。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回または週1回など、週当たり約0.7~約5mgの範囲内の量などで、皮下投与によって投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回または週1回など、週当たり約2.0~約3.5mgの範囲内の量などで、皮下投与によって投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回約5~約45mgの範囲内の量などで、経口投与によって投与される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、当該対象者における肝線維症の悪化をもたらさない。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「治療」は、言及される疾患の症状を低減、遅延、または除去することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「治療」は、言及される疾患の症状を低減または除去することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「治療」は、言及される疾患の症状を低減することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「治療」は、言及される疾患の症状を遅延することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「治療」は、言及される疾患の症状を除去することを指す。
【0010】
当業者であれば、日常的な方法を用いて、かつ通常、肝生検に基づく決定を伴って、対象者がNASHを有するかどうかを決定することができるであろう。例えば、NASHの診断には、(i)脂肪症、小葉炎症、および肝細胞の風船化の存在を示す肝生検組織診断、ならびに(ii)実質的なアルコール消費のないことが必要とされ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「実質的なアルコール消費のないこと」は、女性では1日当たり20g以下のエタノール、男性では1日当たり30g以下のエタノールの消費を指す。NASHが進行する場合、NASHを有すると診断された対象者は、肝線維症をさらに有し得る。簡略化のために、肝線維症は、本明細書において線維症と呼ばれ得、肝脂肪症は、本明細書において脂肪症と呼ばれ得る。
【0011】
NASHの診断には、4を超えるNAFLD活性スコア(NAS)を有するNASHの組織学的証拠がさらに含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「NAFLD活性スコア」は、NASH-CRNに従う肝生検組織診断によって決定される脂肪症(スコア0~3)、小葉炎症(スコア0~3)、および肝細胞風船化(スコア0~2)の個々のスコアの加重されていない合計を指し、したがってNASは0~8の範囲内である。いくつかの実施形態では、NASH-CRNは、Kleiner et al.Hepatology.2005;41(6):1313-21(例えば、表1)およびBrunt et al.World J Gastroenterol.2010;16(42):5286-96に公開されている通りである。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「脂肪症」は、脂肪症による実質関与の低~中程度の力の評価を示す肝生検組織診断を指し、NASH-CRNに従う「0」(<5%)、「1」(5%~33%)、「2」(>33%~66%)、および「3」(>66%)から成る群から選択されるスコアを有する段階の1つである。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「小葉炎症」は、肝生検組織診断における全ての炎症性病巣の全体的評価を指し、NASHN-CRNに従う「0」(病巣なし)、「1」(200倍倍率視野当たり<2病巣)、「2」(200倍倍率視野当たり2~4病巣)、および「3」(200倍倍率視野当たり>4病巣)から成る群から選択されるスコアを有する段階の1つである。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「肝細胞風船化」は、NASH-CRNに従う「0」(なし)、「1」(少数の風船様細胞)および「2」(多数の細胞/顕著な風船化)から成る群から選択されるスコアを有する段階の1つを示す肝生検組織診断を指す。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、NASHの改善を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「NASHの改善」は、NASH-CRNに従う肝生検組織診断によって決定されるNAFLD活性スコア(NAS)の減少、すなわち、脂肪症の個々のスコア(スコア0~3)、小葉炎症(スコア0~3)、または肝細胞風船化(スコア0~2)のうちの少なくとも1つの減少、例えば、NASスコア6からNASスコア5への低減を指す。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、NASHの消失を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「NASHの消失」は、NASHの診断の基準をもはや満たしていない対象者を指す。いくつかの実施形態では、用語「NASHの消失」は、(i)軽度以下の残留炎症細胞(すなわち、NASH-CRNに従う炎症スコア0または1)、(ii)肝細胞風船化なし(すなわち、NASH-CRNに従う肝細胞風船化スコア0)、および(iii)脂肪症に対する任意の値(すなわち、NASH-CRNに従う脂肪症スコア0~3)を示す肝生検組織診断を指す。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、小葉炎症および/または肝細胞風船化の改善を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「小葉炎症の改善」は、本明細書に定義される小葉炎症(スコア0~3)の少なくとも1段階の低減、例えば、スコア3からスコア1への低減を指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「肝細胞風船化の改善」、本明細書に定義される肝細胞風船化(スコア0~2)の少なくとも1段階の低減、例えば、スコア2からスコア0への低減を指す。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「線維症」は、Kleiner線維症分類によって記載されるNASHにおける線維症段階を指す。いくつかの実施形態では、用語「Kleiner線維症分類」または「線維症段階」は、本明細書で互換的に使用され、Kleiner et al.Hepatology,2005;41(6):1313-21に定義される分類を指し、それは、「0」(線維症なし)、「1」(門脈/類洞周囲線維症)、2(類洞周囲および門脈/門脈周囲線維症)、「3」(隔壁性または架橋性線維症)、および「4」(肝硬変)から成る群から選択される段階から成る。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、肝線維症の悪化をもたらさない。いくつかの実施形態では、本明細書で互換的に使用される場合、用語「肝線維症の悪化なし」または「肝線維症段階の悪化なし」は、Kleiner線維症分類の少なくとも1つの段階の増加がないことを指す。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、促進された肝線維症(ELF)の強化を低減する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「促進された肝線維症」(ELFとも呼ばれる)は、式(I)に記載のヒアルロン酸(HA)、III型コラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P3NP)、およびメタロプロテイナーゼ1(TIMP1)の組織阻害剤の血液試料レベルに基づいて、対数線形結合として誘導されるスコアを指す。
ELF=-7.412+0.681×ln(cHA)+0.775×ln(cP3NP)+0.494×ln(cTIMP1)(I)
(式中、cHAは、ng/mL単位のHAの血清濃度であり、cP3NPは、ng/mL単位のP3NPの血清濃度であり、cTIMP1は、ng/mL単位のTIMP1の血清濃度である。)
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象者へのセマグルチドの投与を含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療方法に関する。
【0017】
本発明に従ってセマグルチドを投与される対象者は、成人のヒト(大人とも呼ばれる)などのヒトであり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象者は、肝線維症段階1~3(すなわち、肝線維症段階1、2、および3から成る群から選択される肝線維症段階)を有し、肝線維症は、Kleiner線維症分類に従って定義され得る。いくつかの実施形態では、対象者は、肝線維症段階2または3を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、肝線維症段階1を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、肝線維症段階2を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、肝線維症段階3を有する。本明細書で言及される肝線維症の段階は、Kleiner線維症の分類に従って定義され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象者は、2型糖尿病、過体重(BMI≧27)、および肥満(BMI≧30)から成る群から選択されるものなど、1つ以上のさらなる適応症を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病にさらに罹患している。本明細書で使用される用語「BMI」は、対象者の身長および体重に基づく体脂肪の尺度であり、BMI=(体重キログラム)/(身長メートル)として計算される。いくつかの実施形態では、対象者は、2型糖尿病をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象者は、さらに過体重である。いくつかの実施形態では、対象者は、肥満をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象者は、少なくとも27kg/m、少なくとも30kg/m、または30~50kg/mなど、少なくとも25kg/mのBMIを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に示された肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の濃度は、1リットル当たりの国際単位(U/L)での血清濃度として示される。
【0021】
セマグルチド
本発明の方法は、GLP-1受容体作動薬セマグルチドを含む。セマグルチドは、N-イプシロン26-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイル-アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)であり、WO2006/097537の実施例4に記載されるように調製され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「GLP-1受容体作動薬」は、ペプチドおよび非ペプチド化合物を含む任意の化合物を指し、それは、当該技術分野で公知の方法によって決定された場合、100nM未満の効力(EC50)でヒトGLP-1受容体に結合し、例えば、WO98/08871を参照されたい。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬を特定する方法は、WO93/19175に記載されている。
【0022】
投与レジメン
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回または週1回など、1日1回またはそれより少ない頻度で投与される。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、1日の任意の時間で投与される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約1年間など、少なくとも約48週間継続される。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明に従う方法は、NASHの慢性管理のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「慢性管理」は、少なくとも1年以上など、長期間にわたって、本発明の方法に従うセマグルチドの投与を継続することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「慢性管理」は、少なくとも10年または少なくとも20年など、少なくとも5年間にわたって、本発明の方法に従うセマグルチドの投与を継続することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「慢性管理」は、対象者の残りの寿命の間、本発明の方法に従うセマグルチドの投与を継続することを指す。いくつかの実施形態では、本発明に従う方法は、少なくとも約48週間継続される。いくつかの実施形態では、慢性管理は、例えば、本明細書に指定されるように、NASHの治療に十分な量および頻度でのセマグルチドの投与を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、本発明の方法で投与される唯一のGLP-1受容体作動薬である。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、本発明の方法で投与される唯一の活性成分である。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、本発明の方法で投与される唯一の活性成分である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、GLP-1受容体作動薬ではない1つ以上の追加の活性成分を対象者に投与することを含む。
【0025】
非経口投与
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、非経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、非経口投与は、皮下投与、例えば皮下注射である。セマグルチドは、3mlの使い捨てペン型注射器などのペン型注射器を使用して投与され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり0.5~5mgのセマグルチド、例えば、週当たり1.0~4.5mgまたは2.0~3.0mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約0.7~5mgのセマグルチド、例えば、週当たり約0.7~3.5mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約2.0~4.0mgのセマグルチド、例えば、週当たり約2.0~3.5mgまたは約2.0~3.0mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約1.2~3.5mgのセマグルチド、例えば、週当たり約1.8~3.2mgまたは約2.4~3.0mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約1.4mg、例えば、約1.5mgまたは約1.6mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約1.7mg、例えば、約1.8mgまたは約1.9mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約2.0mg、例えば、約2.1mgまたは約2.2mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約2.3mg、例えば、約2.4mgまたは約2.5mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約2.6mg、例えば、約2.7mgまたは約2.8mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約2.9mg、例えば、約3.0mgまたは約3.1mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週当たり約3.2mg、例えば、約3.3mgまたは約3.4mgのセマグルチドの量で投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回0.1~1mgのセマグルチド、例えば、1日1回0.2~0.9mgまたは0.3~0.8mgまたはセマグルチドの量で、皮下投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回約0.4~0.9mgのセマグルチド、例えば、1日1回約0.5~0.8mgまたは約0.6~0.7mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回約0.2mg、例えば、約0.3mgまたは約0.4mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回約0.5mg、例えば、約0.6mgまたは約0.7mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回約0.8mg、例えば、約0.9mgまたは約1.0mgのセマグルチドの量で投与される。
【0028】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回0.5~5mgのセマグルチド、例えば、週1回1.0~4.5mgまたは2.0~3.0mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約0.7~5mgのセマグルチド、例えば、週1回約0.7~3.5mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約2.0~4.0mgのセマグルチド、例えば、週1回約2.0~3.5mgまたは約2.0~3.0mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約1.2~3.5mgのセマグルチド、例えば、週1回約1.8~3.2mgまたは約2.4~3.0mgまたはセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約1.4mg、例えば、約1.5mgまたは約1.6mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約1.7mg、例えば、約1.8mgまたは約1.9mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約2.0mg、例えば、約2.1mgまたは約2.2mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約2.3mg、例えば、約2.4mgまたは約2.5mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約2.6mg、例えば、約2.7mgまたは約2.8mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約2.9mg、例えば、約3.0mgまたは約3.1mgのセマグルチドの量で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、週1回約3.2mg、例えば、約3.3mgまたは約3.4mgのセマグルチドの量で投与される。
【0029】
経口投与
セマグルチドは、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、小袋、またはカプセル(硬質または軟質ゼラチンカプセルなど)から成る群から選択される固体経口剤形の形態で経口投与され得る。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、1日1回経口投与を介して投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、5~45mg、例えば、10~40mgまたは15~35mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、7~44mg、例えば、12~43mgまたは18~42mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、20~41mg、例えば、22~40mgまたは24~39mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約26~38mg、例えば、約28~37mgまたは約30~36mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約30mg、例えば、約31mgまたは約32mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約33mg、例えば、約34mgまたは約35mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約36mg、例えば、約37mgまたは約38mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約39mg、例えば、約40mgまたは約41mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約3、約7、または約14mgの量で、経口投与を介して投与される。いくつかの実施形態では、経口投与のための治療用量は、1日当たり3~50mgのセマグルチド、例えば、1日当たり10~40mgまたは15~40mgのセマグルチドの範囲内である。
【0031】
用量漸増
セマグルチドの投与は、用量漸増を介して開始されてもよく、すなわち、治療用量よりも低い量で始まり、経時的に治療用量に向かって徐々に増加させる。用量漸増は、1つ以上の望ましくない副作用を回避するのに役立ち得る。本明細書で使用される場合、用語「治療用量」は、セマグルチドの用量(すなわち、量および投与頻度)を指す。いくつかの実施形態では、治療用量は、参照される医学的適応症における治療的効果をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、用量漸増の最初の工程を含み、対象者は、(i)治療用量の約10分の1~半分の範囲内のセマグルチドの用量を、次いで、(ii)約4週間毎などの2~6週間毎に投与され、用量は、治療用量まで、約2倍など、1.5~2.5倍増加される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、非経口投与を介して用量漸増の最初の工程を含み、対象者は、(i)週当たり約0.2~0.5mgのセマグルチドの範囲内のセマグルチド、例えば、週当たり0.35mgのセマグルチドの用量を、次いで、(ii)約4週間毎などの2~6週間毎に投与され、用量は、治療用量まで、約2倍など、1.5~2.5倍増加される。いくつかの実施形態では、別段の指定がない限り、本明細書に記載されるセマグルチドの量および/または投与頻度は、治療用量を指す。いくつかの実施形態では、皮下投与の治療用量は、週当たり0.5~5mgのセマグルチド、例えば、週当たり1.0~4.5mgまたは2.0~4.0mgまたはセマグルチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、治療用量は、週当たり1.2~3.5mgのセマグルチド、例えば、週当たり1.8~3.2mgまたは2.4~3.0mgまたはセマグルチドの範囲内である。
【0032】
組成物
本発明の方法では、セマグルチドは、医薬組成物の形態で投与されてもよく、本明細書では組成物とも呼ばれる。医薬組成物は、液体または固体形態であり得る。
【0033】
非経口投与
医薬組成物は、0.1mg/mL~100mg/mLの濃度のセマグルチドを含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.01~50mg/mL、または0.01~20mg/mL、または0.01~10mg/mLのセマグルチドを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1~20mg/mLのセマグルチドを含む。
【0034】
本明細書に説明される医薬組成物は、例えば、緩衝液系、防腐剤、等張化剤、キレート剤、安定剤、および界面活性剤から成る群から選択される、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、緩衝液、等張剤、および防腐剤から成る群から選択される1つ以上などの、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。様々な賦形剤を伴った薬学的に活性な成分の製剤は、当該技術分野で公知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第19版(1995年)、および任意のそれ以降の版)を参照されたい。用語「賦形剤」は、活性治療成分、例えばセマグルチド以外の任意の構成成分を幅広く指す。賦形剤は、不活性物質、非活性物質、および/または医薬的に活性でない物質であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約7.0~約9.5または約7.2~約9.5など、約7.0~10.0の範囲内のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約7.0~約7.8または約7.8~約8.2など、7.0~8.5の範囲内のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約7.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、リン酸ナトリウム緩衝液などのリン酸緩衝液、例えば、リン酸二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プロピレングリコールなどの等張剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、フェノールなどの防腐剤を含む。
【0036】
医薬組成物は、溶液または懸濁液の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、水溶液または水性懸濁液などの水性組成物である。用語「水性組成物」は、少なくとも50%w/wの水を含む組成物として定義される。同様に、用語「水溶液」は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、用語「水性懸濁液」は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義される。水性組成物は、少なくとも50%w/wの水、または少なくとも60%、70%、80%、もしくはさらに少なくとも90%w/wの水を含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、リン酸緩衝液およびプロピレングリコールを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約2~15mMのリン酸緩衝液および約2~25mg/mLのプロピレングリコールを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約0.1~20mg/mLのセマグルチド、約2~15mMのリン酸緩衝液、約2~25mg/mLのプロピレングリコール、および約7.0~9.0の範囲内のpHを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約0.1~20mg/mLのセマグルチド、約2~15mMのリン酸緩衝液、約2~25mg/mLのプロピレングリコール、約1~18mg/mLのフェノール、および約7.0~9.0の範囲内のpHを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約1.0mg/mLのセマグルチド、約1.42mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mLのプロピレングリコール、約5.5mg/mLのフェノール、および約7.4のpHを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約0.5~4mg/mLのセマグルチド、約1.42mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mLのプロピレングリコール、約5.5mg/mLのフェノール、および約7.4のpHを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約0.5~1.5mg/mLのセマグルチド、約1.42mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mLのプロピレングリコール、約5.5mg/mLのフェノール、および約7.4のpHを含む医薬組成物の形態で投与される。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、約1.0~3.5mg/mLのセマグルチド、約1.42mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mLのプロピレングリコール、約5.5mg/mLのフェノール、および約7.4のpHを含む医薬組成物の形態で投与される。
【0038】
経口投与
本発明の方法では、セマグルチドは、経口投与を介して固体組成物の形態で投与され得る。固体組成物は、例えば、本明細書にさらに記載される、経口経路による投与に好適であり得る。いくつかの実施形態では、固体組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む。本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」は、活性治療成分または活性医薬成分(API)以外の任意の構成成分を幅広く指す。賦形剤は、薬学的に不活性な物質、非活性物質、および/または治療的もしくは医薬的に活性でない物質であり得る。経口投与について、賦形剤は、例えば、担体、ビヒクル、充填剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、流量制御剤、結晶化抑制剤可溶化剤、安定剤、着色剤、香味剤、界面活性剤、乳化剤、もしくはそれらの組み合わせとして、ならびに/または治療活性物質もしくは活性医薬成分の投与および/もしくは吸収を改善するために、様々な目的を果たし得る。使用される各賦形剤の量は、当該技術分野の従来の範囲内で変化し得る。経口剤形を製剤化するために使用され得る技法および賦形剤については、Handbook of Pharmaceutical Excipients,8th edition,Sheskey et al.,Eds.,American Pharmaceuticals Association and the Pharmaceutical Press,publications department of the Royal Pharmaceutical Society of Great Britain(2017)、およびRemington:the Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Remington and Allen,Eds.,Pharmaceutical Press(2013)に記載されている。いくつかの実施形態では、経口投与のための賦形剤は、結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン(ポビドン)など;充填剤、例えば、セルロース粉末、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、二塩基性リン酸カルシウム、コーンスターチ、アルファー化デンプンなど;潤滑剤および/または滑剤、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、トリベヘン酸グリセロールなど;流量制御剤、例えば、コロイダルシリカ、タルクなど;結晶化抑制剤、例えば、ポビドンなど;可溶化剤、例えば、プルロニック、ポビドンなど;着色剤、染料および色素、例えば、べんがらまたは鉄黄、二酸化チタン、タルクなどを含む;pH調整剤、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸ナトリウム、二塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸ナトリウムなど;界面活性剤および乳化剤、例えば、プルロニック、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエトキシ化および水添ヒマシ油など;ならびにこれらの賦形剤および/またはアジュバントのうちの2つ以上の混合物から選択され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、結合剤、例えば、ポビドン;デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、微結晶性セルロース、例えば、FMC(Philadelphia,PA)製のAvicel PH、Dow Chemical Corp.(Midland,MI)製のヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースMETHOCEL;スクロース;デキストロース;コーンシロップ;ポリサッカライド;ならびにゼラチンを含む。結合剤は、乾燥結合剤および/または湿式造粒結合剤から成る群から選択されてもよい。好適な乾燥結合剤は、例えば、セルロース粉末および微結晶性セルロース、例えば、Avicel PH102およびAvicel PH200である。いくつかの実施形態では、固体組成物は、Aavicel PH102などのAvicelを含む。湿式造粒または乾式造粒に好適な結合剤は、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(コポビドン)、ならびにセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシ-プロピルメチルセルロースである。いくつかの実施形態では、固体組成物は、ポビドンを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、ラクトース、マンニトール、エリスリトール、スクロース、ソルビトール、リン酸カルシウム、例えば、カルシウム水素リン酸、微結晶性セルロース、粉末セルロース、粉砂糖、圧縮性糖、デキストレート、デキストリン、およびデキストロースから選択され得る充填剤を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、Avicel PH102またはAvicel PH200などの微結晶性セルロースを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、潤滑剤および/または滑剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、潤滑剤および/または滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、デベヘン酸グリセリル、ベヘノイルポリオキシル-8グリセリド、ポリエチレンオキシドポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、水添植物油、二酸化ケイ素、および/またはポリエチレングリコールなどを含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、ステアリン酸マグネシウムまたはデベヘン酸グリセリル(製品Compritol(登録商標)888ATOなど)を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、崩壊剤、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または乾燥コーンスターチを含む。固体組成物は、1つ以上の界面活性剤、例えば、界面活性剤、少なくとも1つの界面活性剤、または2つの異なる界面活性剤を含んでもよい。用語「界面活性剤」は、水溶性(親水性)部分、および脂溶性(親油性)部分から成る、任意の分子またはイオンを指す。界面活性剤は、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および/または両性イオン界面活性剤から成る群から選択されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、送達剤または吸収促進剤をさらに含み得、本発明に関しては、セマグルチドの経口曝露を増加させることができる賦形剤である。送達剤は、アニオンN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリレートを含む、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩(本明細書ではNACの塩とも呼ばれる)であり得る。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリレートの構造式を式(II)に示す。
【化1】
【0044】
いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、1つの一価陽イオン、2つの一価陽イオン、または1つの二価陽イオンを含む。いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸のナトリウム塩、カリウム塩、および/またはカルシウム塩から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、および/またはアンモニウム塩から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩である。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリレートの塩は、例えば、WO96/030036、WO00/046182、WO01/092206、またはWO2008/028859に記載される方法を使用して調製され得る。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、結晶性であってもよく、かつ/または非晶質であってもよい。いくつかの実施形態では、送達剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の無水物、一水和物、二水和物、三水和物、溶媒和物、または水和物の3分の1、ならびにそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、送達剤は、WO2007/121318に記載されるように、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。いくつかの実施形態では、送達剤は、8-(サリチロイルアミノ)オクタン酸ナトリウムとしても公知である、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸ナトリウム(本明細書では「SNAC」と呼ばれる)である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための組成物は、経口投与のために、錠剤などの固体組成物の形態である。いくつかの実施形態では、固体組成物は、0.5~40mgまたは1~30mgなど、0.1~50mgの範囲内の量のセマグルチドを含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、3~18mgまたは5~15mgなど、2~20mgの範囲内の量のセマグルチドを含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約7mgまたは約14mgなど、約3mgの範囲内の量のセマグルチドを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、固体組成物(例えば、錠剤)の少なくとも30%(w/w)は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。いくつかの実施形態では、固体組成物(例えば、錠剤)の少なくとも50%(w/w)は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。いくつかの実施形態では、組成物の用量単位当たりのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の量は、0.20~.5mmol、0.25~1.0mmol、0.30~0.75mmol、または0.45~0.65mmolなどの範囲内である。いくつかの実施形態では、組成物中のSNACの量は、75~600mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、組成物中のSNACの量は、用量単位当たり、約100~約300mgなど、80~350mgなど、75~400mgの範囲内である。
【0047】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物の単位用量は、0.1~50mgのセマグルチド、25~600mgのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸(NAC)(NAC(SNAC)のナトリウム塩など)、および0~25mgの潤滑剤を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、錠剤などの用量単位の形態である。いくつかの実施形態では、単位用量の重量は、50~750mgの範囲内など、または約100~500mgなど、50mg~1000mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、単位用量の重量は、50~300mgまたは100~400mgの範囲内など、75mg~350mgの範囲内である。錠剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸(SNAC)のナトリウム塩など、30%(w/w)のN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、錠剤へと圧縮される前に造粒され得る。組成物は、顆粒部および/または粒外部を含み得、顆粒部は造粒されており、粒外部は造粒後に追加されている。セマグルチドは、顆粒部または粒外部に含まれ得る。いくつかの実施形態では、粒外部は、セマグルチドを含む。一実施形態では、粒外部は、潤滑剤および/または滑剤をさらに含み得る。一実施形態では、顆粒部は、潤滑剤および/または滑剤をさらに含み得る。一実施形態では、顆粒部および粒外部は、潤滑剤および/または滑剤を含み得る。
【0049】
別段の定めのない限り、本明細書における範囲は、その終点を含む。いくつかの実施形態では、用語「1つ(a)」は、「1つ以上」を意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に別段示されない限り、単数形で提示される用語は、複数の状況も含む。本明細書では、用語「約」は、言及される値の±10%を意味し、その値を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「含む」は、「から成る」を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で言及されるpH値は、25℃で測定される。
【0050】
本発明の非限定的な実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態によってさらに説明される。
【0051】
1.対象者へのセマグルチドの投与を含む、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療方法。
2.当該方法が、当該対象者において肝線維症の悪化をもたらさない、実施形態1に記載の方法。
3.当該方法が、促進された肝線維症(ELF)を低減する、実施形態1または2に記載の方法。
4.ELFが、本明細書の式(I)によって定義される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.対象者へのセマグルチドの投与を含む、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療方法。
6.当該対象者が、ヒトである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.当該対象者が、成人である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.当該対象者が、肝線維症段階1~3をさらに有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.当該対象者が、肝線維症段階2または3をさらに有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.当該肝線維症が、Kleiner線維症分類に従って定義される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.当該対象者が、Kleiner線維症分類に従う肝線維症段階1~3をさらに有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.当該対象者が、Kleiner線維症分類に従う肝線維症段階2または3をさらに有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.当該方法が、NASHの慢性管理のためのものである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.当該方法が、少なくとも約1年間にわたって継続される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.当該方法が、少なくとも約48週間にわたって継続される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.当該セマグルチドが、当該対象者に投与される唯一の活性成分である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.当該セマグルチドが、当該対象者に投与される唯一のGLP-1受容体作動薬である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.当該対象者が、GLP-1受容体作動薬ではない1つ以上の追加の活性成分を投与される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.当該セマグルチドが、非経口投与によって投与される、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
20.当該セマグルチドが、皮下投与によって投与される、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.当該セマグルチドが、週当たり約0.7~約5mgの範囲内の量で投与される、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.当該セマグルチドが、週当たり約0.7~約3.5mgの範囲内の量で投与される、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.当該セマグルチドが、週当たり約2.0~約4.0mgの範囲内の量で投与される、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
24.当該セマグルチドが、週当たり約2.0~約3.5mgの範囲内の量で投与される、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.当該セマグルチドが、週当たり約2.0~約3.0mgの範囲内の量で投与される、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.当該セマグルチドが、週当たり約2.4mgの量で投与される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
27.当該セマグルチドが、週当たり約2.6mgの量で投与される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
28.当該セマグルチドが、週当たり約2.8mgの量で投与される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
29.当該セマグルチドが、週当たり約3.0mgの量で投与される、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.当該セマグルチドが、1日1回またはそれより少ない頻度で投与される、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
31.当該セマグルチドが、1日1回投与される、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.当該セマグルチドが、週1回投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
33.当該セマグルチドが、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
34.当該セマグルチドが、当該医薬組成物中の唯一の活性成分である、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
35.当該医薬組成物が、GLP-1受容体作動薬ではない1つ以上の追加の活性成分を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
36.当該医薬組成物が、水溶液の形態である、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
37.当該医薬組成物が、0.5~5.0mg/mLのセマグルチドを含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
38.当該医薬組成物が、約7.4など、約7.2~約7.6の範囲内のpHを有する、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
39.当該医薬組成物が、リン酸緩衝液およびプロピレングリコールをさらに含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
40.当該医薬組成物が、約2~15mMのリン酸緩衝液および約2~25mg/mLのプロピレングリコールをさらに含む、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
41.当該医薬組成物が、約1.0mg/mLのセマグルチド、約1.42mg/mLのリン酸水素二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mLのプロピレングリコール、約5.50mg/mLのフェノールをpH約7.4で含む水溶液である、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
42.当該セマグルチドが、経口投与によって投与される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
43.当該セマグルチドが、経口投与によって1日1回投与される、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
44.当該セマグルチドが、5~45mgのセマグルチドの量で、経口投与によって1日1回投与される、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
45.当該セマグルチドが、錠剤の形態で経口投与によって投与される、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
46.当該セマグルチドが、錠剤などの固体組成物の形態で経口投与によって投与される、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
47.当該セマグルチドが、少なくとも30%(w/w)のSNACなどのSNACを含む固体組成物の形態で経口投与によって投与される、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0052】
方法
臨床治験A
NASHを有する対象者において、3つの異なる用量(0.1mg、0.2mg、および0.4mg)のセマグルチドの1日1回(OD)投与をプラセボと比較する、72週間、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、6群、並行群、多施設、多国籍第2相試験を実施した。合計319人の対象者が治験製品を受け、302人の対象者が治験を完了し、277人の対象者が治験72週目に肝生検を受けた。対象者は、1日1回、(a)(i)4週間にわたって0.05mgおよび残りの治験期間にわたって0.1mg、(ii)4週間にわたって0.05mg、4週間にわたって0.1mg、および残りの治験期間にわたって0.2mg、(iii)4週間にわたって0.05mg、4週間にわたって0.1mg、4週間にわたって0.2mg、4週間にわたって0.3mg、および残りの治験期間にわたって0.4mgのセマグルチド、または(b)(i)、(ii)、もしくは(iii)に対応する注射体積のプラセボを受けた。(a)1.0mg/mLのセマグルチド、1.42mg/mLのリン酸水素二ナトリウム二水和物、14.0mg/mLのプロピレングリコール、5.50mg/mLのフェノールを含む水溶液をpH7.4で含む水性溶液、または(b)セマグルチドなしであることを除いて(a)と同じ成分を含むプラセボ溶液を使用して、皮下注射を介して投与を行った。治験の対象者の選択基準は、(i)スクリーニングの21週間前までに得られた肝生検の評価に基づくNASHの組織学的証拠、(ii)スコアの各サブコンポーネントにおいて1以上のスコアを有する組織学的NAS>4、および(iii)NASH-CRNに従う肝線維症段階1、2、または3から構成された。スクリーニングは、対象者の適格性を判定するために使用した評価を行うために、ベースライン前に実施した。治験の対象者の除外基準は、(i)NASH以外の慢性肝疾患の文書化された原因、および(ii)女性では1日当たり20g以下のエタノール、または男性では1日当たり30g以下のエタノールとして治験で定義される実質的なアルコール摂取がないことから構成された。治験の無作為化された全対象者のベースライン特性は、表Aに示される通りであった。本明細書で使用される場合、用語「ベースライン」は、セマグルチドまたはプラセボの投与前の治験の開始を指す。本明細書で臨床治験Aに関して使用される場合、用語「治験の終了」は、治験72週目を指す。本明細書で使用される場合、用語「無作為化された全対象者」は、臨床治験においてセマグルチドまたはプラセボを受けるように割り当てられた対象者を指す。線維症段階は、Kleiner線維症分類に従って決定した。
【表1-1】
【表1-2】
【0053】
臨床治験B
無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群、多施設第1相試験を実施して、NAFLDおよび増加した肝硬直を有する67人の対象者において、1日1回(OD)の0.4mgのセマグルチドの効果を調査した。対象者は、1日1回、(i)4週間にわたって0.05mg、4週間にわたって0.1mg、4週間にわたって0.2mg、4週間にわたって0.3mg、および次いで、残りの治験期間にわたって0.4mgのセマグルチド、または(ii)(i)に対応する注射体積のプラセボのいずれかを受けた。(a)1.0mg/mLのセマグルチド、1.42mg/mLのリン酸水素二ナトリウム二水和物、14.0mg/mLのプロピレングリコール、5.50mg/mLのフェノールを含む水溶液をpH7.4で含む水性溶液、または(b)セマグルチドなしであることを除いて(a)と同じ成分を含むプラセボ溶液を使用して、皮下注射を介して投与を行った。治験の対象者の選択基準は、(i)スクリーニング時の磁気共鳴画像プロトン密度脂肪分画(MRI-PDFF)により測定された少なくとも10%の肝脂肪症、(ii)スクリーニング時の磁気共鳴エラストグラフィーにより測定された2.50~4.63kPa(両方を含む)の肝硬直、(iii)スクリーニング時に、25.0~40.0kg/m(両方を含む)のBMI、(iv)スクリーニング時にFibroscan(登録商標)(Echosens(Paris,France)により製造)を介して測定された>6.50kPaの肝硬直、および(v)2型糖尿病のみを有する対象者について、2型糖尿病の診断が、スクリーニングの少なくとも180日前であり、スクリーニング時にHbA1cが9.5%以下であったことから構成された。スクリーニングは、対象者の適格性を判定するために使用した評価を行うために、ベースライン前に実施した。治験の対象者の除外基準は、(i)NASHを含むNAFLD以外の慢性肝疾患の文書化された原因、および(ii)女性では1日当たり20g以下のエタノール、または男性では1日当たり30g以下のエタノールとして治験で定義される実質的なアルコール摂取がないことから構成された。治験の無作為化された全対象者のベースライン特性を表Bに示した。MRI-PDFFは、肝臓全体の脂肪の割合の決定であり、方法は、例えば、Caussy et al.Hepatology.2018 Aug;68(2):763-772に記載されている。
【表2】
【0054】
結果
臨床治験Aの結果
上に記載される臨床治験Aの結果を、以下の表1~6に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0055】
表1~3の結果は、セマグルチドによる治療が、全てのコンポーネント、ならびに特に小葉炎症および肝細胞風船化が改善されたため、NASHを有する患者の非アルコール性脂肪性肝炎の組織学的な消失をもたらしたことを示す。これらの結果はまた、無作為化された全対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象者によって、NASHの改善または消失が達成されたことも示す。図1はまた、無作為化された全対象者に基づいて、ベースラインと比較して、治験終了時の肝細胞風船化の改善に関する結果も示す。表1~3の結果はまた、1日1回の0.4mgのセマグルチド用量、および特に線維症段階1~3、線維症段階2もしくは3、線維症段階2、または線維症段階3を有する対象者において、プラセボと比較して、NASHの有意な改善を示す。
【表6】
【0056】
表4Aの結果は、セマグルチドによる治療が、NASHおよび線維症段階1~3またはNASHおよび線維症段階2~3を有する患者において、非アルコール性脂肪性肝炎の組織学的な消失をもたらすことを示す。NASHの消失は、ベースラインでの肝線維症段階1~3を有する対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象によって達成された。NASHの消失は、線維症段階2または3を有する対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象によって達成された。NASHの消失は、線維症段階1、線維症段階2、または線維症段階3を有する対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象によって達成された。表4Aの結果はまた、1日1回の0.4mgのセマグルチド用量について、および特に線維症段階1~3、線維症段階2もしくは3、線維症段階2、または線維症段階3を有する対象者において、プラセボと比較して、NASHの消失の有意な改善および肝線維症の悪化がないことを示す。
【表7】
【0057】
表4Bの結果は、セマグルチドによる治療が、NASHおよび線維症段階1~3またはNASHおよび線維症段階2~3を有する患者において、非アルコール性脂肪性肝炎の組織学的な消失をもたらすことを示す。NASHの消失および肝線維症の悪化なしは、ベースラインでの肝線維症段階1~3を有する対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象によって達成され、これらの結果も図2に示す。NASHの消失とは、対象者がもはやNASHの診断基準を満たさなくなることを意味する。NASHの消失および肝線維症の悪化なしは、線維症段階2または3を有する対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象によって達成された。NASHの消失および肝線維症の悪化なしは、線維症段階1、線維症段階2、または線維症段階3を有する対象者に基づいて、全ての試験されたセマグルチド用量について、プラセボと比較して有意により多くの対象によって達成された。表4Bの結果はまた、1日1回の0.4mgのセマグルチド用量について、プラセボと比較して、NASHの消失の有意な改善および肝線維症の悪化がないことを示す。
【表8】
【0058】
表5の結果は、試験された全てのセマグルチド用量にわたるより低い割合の対象者に、プラセボと比較して、肝線維症段階の悪化があったことを示す。
【表9】
【0059】
表6の結果は、全ての試験されたセマグルチド用量で、プラセボと比較して、セマグルチドがELFを有意に低減したことを示す。
【0060】
全体的に、表1~6の結果は、セマグルチドが、プラセボと比較してNASHの重症度を有意に減少させただけでなく、NASHの診断の基準をもはや満たしていない有意に大きな群の患者ももたらしたことを示す。
【0061】
臨床治験Bの結果
磁気共鳴画像プロトン密度脂肪分画(MRI-PDFF)によって決定される肝脂肪症に関する上に記載される臨床治験Bの結果を、表7~8に示し、無作為化された全対象者に基づいている。
【表10】
【0062】
表7の結果は、セマグルチドが肝脂肪症を有意に低減したことを示す。すでに治験の24週間で、セマグルチドは、プラセボと比較して肝脂肪症を30%低減し、治験の48および72週間で、セマグルチドは、プラセボと比較して肝脂肪症を約50%低減した。
【表11】
【0063】
表8の結果は、治験の24週で約65%の対象者において、ならびに治験の48および72週で約74~77%の対象者において、セマグルチドで肝脂肪症の少なくとも30%の低減が達成され、これらの結果は、プラセボと比較して統計的に有意である。
【0064】
本発明のある特定の特徴を本明細書に例示および記載してきたが、多くの修正、置き換え、変更、および均等物が当業者には想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるこうした全ての修正および変更を網羅することを意図していることが理解されるべきである。
図1
図2