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特許7393577ロータリーエンコーダ及びそれを用いたサーボ制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ロータリーエンコーダ及びそれを用いたサーボ制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01D5/245 110A
G01D5/245 W
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023086807
(22)【出願日】2023-05-26
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508069512
【氏名又は名称】デルタ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 純一
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6966143(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/188859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定されるマグネットと、前記マグネットに対向して配置された磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度、回転方向に関する情報を生成する機能とを備えたロータリーエンコーダであって、
前記ロータリーエンコーダは、電源ユニットとして大バルクハウゼン効果発電ユニットを備えており、
前記回転軸に固定されるマグネットは、その中心を通る境界線を境にして半径方向に一組のN極領域とS極領域が形成された1個の円板状のマグネットであり、一組の前記N極領域と前記S極領域とが、1つの平な表面を形成しており、
前記大バルクハウゼン効果発電ユニットは、強磁性ワイヤ及び発電用コイルと、前記強磁性ワイヤの両端に接続された第1磁性板及び第2磁性板を備えており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記強磁性ワイヤの両端から前記マグネットを挟んで前記マグネットの両側面の外側まで伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記マグネットの前記両側面に沿って離間して伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記回転軸の軸心方向において、前記マグネットを挟んで、線対称の形状をなしていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項2】
回転軸に固定されるマグネットと、前記マグネットに対向して配置された磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度、回転方向に関する情報を生成する機能とを備えたロータリーエンコーダであって、
前記ロータリーエンコーダは、電源ユニットとして大バルクハウゼン効果発電ユニットを備えており、
前記回転軸に固定されるマグネットは、その中心を通る境界線を境にして半径方向に一組のN極領域とS極領域が形成された1個の円板状のマグネットであり、一組の前記N極領域と前記S極領域とが、1つの平な表面を形成しており、
前記大バルクハウゼン効果発電ユニットは、強磁性ワイヤ及び発電用コイルと、前記強磁性ワイヤの両端に接続された第1磁性板及び第2磁性板を備えており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記強磁性ワイヤの両端から、前記回転軸の軸心方向において前記マグネットと前記磁気センサの間の位置まで伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記強磁性ワイヤの両端から前記マグネットの前記表面の上において前記マグネットの両側面付近まで伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記マグネットの前記表面の上で離間して伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記マグネットの前記表面の上において線対称の形状をなしていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項3】
請求項1又は2おいて、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、主に前記マグネットの前記表面に対して平行もしくはそれに近い外回りの方向の磁束線を受け入れ、前記磁気センサに対する磁場干渉による影響を抑制するように構成されていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項4】
請求項1又は2おいて、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板の、前記強磁性ワイヤとは反対側の各他端は、前記マグネットを挟んで、解放端となっており、前記各解放端は、先細り状に突出していることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項5】
請求項1又は2おいて、
前記マグネットの前記N極領域と前記S極領域の前記境界線上の一方の端の位置が、原点位置(Z0)であり、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記原点位置において前記境界線に直交する対称の軸(OmgR-OmgR)に沿って伸びた、板状若しくは棒状の部材であることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記大バルクハウゼン効果発電ユニットの前記強磁性ワイヤ及び前記発電用コイルは、中空部を有するエンコーダハウジングに保持されていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項7】
請求項6において、
前記大バルクハウゼン効果発電ユニットにより充電されるコンデンサを含む、バックアップ電源を備えていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項8】
請求項1において、
前記マグネットに対向して配置された前記磁気センサの出力であるアナログ信号を、AD変換し、前記回転軸の前記回転角度、前記回転方向に関する、アブソリュート信号とインクリメンタル信号の2系統の情報を含む、デジタルデータを生成する磁気センサ信号の処理ユニットを備え、
前記磁気センサ及び前記処理ユニットは、中空部を有するエンコーダハウジングに保持されており、
前記磁気センサは、第1TMRセンサと第2TMRセンサを備えており、
前記第1TMRセンサは、前記エンコーダハウジングに保持されたプリント基板上でかつ前記マグネット面する位置に設置され、前記第2TMRセンサは、前記プリント基板上の前記第1TMRセンサの裏面側に設置され、
前記ロータリーエンコーダは、独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備えていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項9】
請求項1において、
前記磁気センサとしてのTMRセンサと、光学センサとを備えており、
前記TMRセンサは、中空部を有するエンコーダハウジングに保持されたプリント基板上で前記マグネット面する位置に設置され、
前記光学センサのインクリメンタルスケール及びアブソリュートスケールが前記回転軸に固定されたディスク上に形成されており、
前記光学センサの発光素子及び受光素子が前記エンコーダハウジングに保持され、
前記ロータリーエンコーダは、独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備えていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項10】
回転電気機器を用いたサーボ制御装置であって、
前記回転電気機器は、請求項1又は2に記載の前記ロータリーエンコーダを備えていることを特徴とするサーボ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーエンコーダ及びそれを用いたサーボ制御装置に係り、特に、大バルクハウゼン効果発電ユニットを備えたロータリーエンコーダ及びこれを用いたサーボ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーエンコーダは、回転電気機器で駆動される回転軸の角度位置や回転数に関する情報を生成するために使用される。ロータリーエンコーダで検知された回転軸の角度位置や回転数に基づき、角度位置に関する高精度のアブソリュートデジタル信号やインクリメンタルデジタル信号を生成して出力し、これらの信号が、例えばエンコーダ付きのモータをサーボ制御装置のサーボモータとして制御するのに用いられている。
システムの冗長性が重視される産業用ロボットなどの機器を制御するサーボ制御装置に用いられるロータリーエンコーダには、独立した2系統のロータリーエンコーダ機能を備えたもの、例えばセーフティエンコーダと称されるものもある。
ロータリーエンコーダでは、主電源の供給が絶たれた場合において、位置データ情報を失うことが無いようにバックアップ電源を備えている。このバックアップ電源には、大バルクハウゼン効果を利用した発電装置が用いられ、これによりアブソリュートエンコーダの多回転情報などの検出を行っている。
【0003】
特許文献1には、複合磁気ワイヤとピックアップコイルを用いた自己発電による回転検出装置が開示されている。この装置は、回転軸に取り付けられた1個の検出用磁石と、この検出用磁石に対向して配置され、回転軸の回転を検出する検出部とを備えている。検出部は、回転軸の延長線上に中心を有し回転軸に直交するようにして回路基板内に設けられた大バルクハウゼン効果を有する複合磁気ワイヤと、この複合磁気ワイヤを囲むピックアップコイルとで構成されている。
【0004】
特許文献2には、電気信号発生部に、大バルクハウゼン効果を有する複合磁気ワイヤを採用した、光学式または磁気式の角度検出部を備えたエンコーダが開示されている。このエンコーダは、移動部の位置を検出する位置検出部と、前記移動部の移動方向に沿って複数の極性を持つ磁石と、前記移動部の移動に伴う磁界の変化によって磁気特性が変化する感磁性部と、前記磁石の磁束線を前記感磁性部に導くための第1磁性体と、前記感磁性部の磁気特性に基づいて電気信号を発生する電気信号発生部と、前記磁石と前記感磁性部との間に配置され、前記磁石の一つの極性の部分の磁束線を前記磁石の他の極性の部分に導くための第2磁性体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016/170648A1
【文献】WO2019/188859A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された回転検出装置は、大バルクハウゼン効果を利用した発電装置を備え、複合磁気ワイヤのパルス信号を検知して回転方向や回転数を検知している。しかし、高精度のアブソリュートデジタル信号やインクリメンタルデジタル信号を生成して出力することの開示はない。
【0007】
特許文献2に記載されたエンコーダの発電装置は、高精度のアブソリュートデジタル信号やインクリメンタルデジタル信号を生成し、かつ、十分な電力を確保する機能を有する半面、電気信号発生部に回転軸の周囲に配置された複数個の永久磁石を使用し、各永久磁石はN極とS極が軸方向に重ねて構成されている。そのため、装置が複雑で大型になっている。
【0008】
磁気式エンコーダを備えたロータリーエンコーダの高精度化、コンパクト化を図るうえで考慮すべき事項の1つに、磁気センサの出力が磁場干渉を受けないようにすることが挙げられる。
また、ロータリーエンコーダの用途によっては、光学式の高精度のエンコーダと発電装置とを備え、さらに、角度位置や回転数に関する信号を生成する磁気式エンコーダを備えた2系統のロータリーエンコーダも知られている。このようなロータリーエンコーダにおいて、磁気式エンコーダには、光学式のエンコーダに匹敵する高い精度が要求される場合もあれば、補助的に使用されるため高い精度が要求されない場合もある。
【0009】
本発明の1つの課題は、回転軸の角度位置や回転数に関して高精度の信号を生成する機能を備え、バックアップ電源を有し、かつ、コンパクトな構成のロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することにある。
本発明の他の課題は、回転軸の角度位置や回転数に関して高精度の信号を生成する機能を備え、バックアップ電源を有し、かつ、磁気式エンコーダの磁場干渉に配慮したロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、磁気式エンコーダを含む独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備え、かつ、安価で、コンパクトな構成の、ロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様によれば、回転軸に固定されるマグネットと、前記マグネットに対向して配置された磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度、回転方向に関する情報を生成する機能を有するロータリーエンコーダであって、前記ロータリーエンコーダは、電源ユニットとして大バルクハウゼン効果発電ユニットを備えており、
前記回転軸に固定されるマグネットは、その中心を通る境界線を境にして半径方向に一組のN極領域とS極領域が形成された1個の円板状のマグネットであり、一組の前記N極領域と前記S極領域とが、1つの平な表面を形成しており、
前記大バルクハウゼン効果発電ユニットは、強磁性ワイヤ及び発電用コイルと、前記強磁性ワイヤの両端に接続された第1磁性板及び第2磁性板を備えており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記強磁性ワイヤの両端から前記マグネットを挟んで前記マグネットの両側面の外側まで伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記マグネットの前記両側面に沿って離間して伸びており、
前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記回転軸の軸心方向において、前記マグネットを挟んで、線対称の形状をなしていることを特徴とする。
本発明によれば、磁気センサが、回転軸の角度位置や回転数に関して高精度の信号を生成する機能を有し、さらにバックアップ電源を備え、かつ、コンパクトな構成のロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、主に前記マグネットの前記表面に対して平行もしくはそれに近い外回りの方向の磁束線を受け入れ、前記磁気センサに対する磁場干渉による影響を抑制するように構成されている。
これにより、1個のマグネットを、磁気センサ用のマグネットと、大バルクハウゼン効果発電ユニットのマグネットに兼用しながら、磁気センサの精度を確保できる。そのため、回転軸の角度位置や回転数に関して高精度の信号を生成する機能を備え、バックアップ電源を有し、かつ、磁気式エンコーダの磁場干渉に配慮したロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
【0012】
本発明の他の態様によれば、前記第1磁性板及び前記第2磁性板の、前記強磁性ワイヤとは反対側の各他端は、前記マグネットを挟んで、解放端となっており、前記各解放端は、先細り状に突出していることを特徴とする。
これにより、1個の円板状のマグネットを磁気センサ用のマグネットと、大バルクハウゼン効果発電ユニットのマグネットに兼用しながら、バックアップ電源としての大バルクハウゼン効果を利用した発電装置を、コンパクトな構成ながら高出力にすることができる。
【0013】
本発明の態様として、前記ロータリーエンコーダは、セーフティエンコーダとして構成されるのがより好ましい。例えば、磁気センサとして、第1TMRセンサと第2TMRセンサを備え、前記第1TMRセンサは、エンコーダハウジングに保持されたプリント基板上でかつ前記マグネット面する位置に設置され、前記第2TMRセンサは、前記基板上の前記第1TMRセンサの裏面側に設置されている。
これにより、独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備え、かつ、コンパクトな構成の、セーフティエンコーダを提供することができる。
なお、セーフティエンコーダとして用いる場合、一対のTMRセンサの組み合わせの他、TMRセンサとGMRセンサ、一対のGMRセンサ、あるいは、TMRセンサと光学式センサとの組み合わせなど、多種のセンサの組み合わせが可能であり、用途に応じた、適切なセーフティエンコーダを提供することができる。

【0014】
本発明の他の態様によれば、前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記強磁性ワイヤの両端から前記マグネットの前記表面の上において前記マグネットの両側面付近まで伸びており、前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記マグネットの前記表面の上で離間して伸びており、前記第1磁性板及び前記第2磁性板は、前記マグネットの前記表面の上において線対称の形状をなしている。
これにより、1個のマグネットを、磁気センサ用のマグネットと、大バルクハウゼン効果発電ユニットのマグネットに兼用しながら、磁気式エンコーダを含む独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備え、かつ、安価で、コンパクトな構成の、ロータリーエンコーダ及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例に係るロータリーエンコーダの構成例を示す、機能ブロック図である。
図2】第1の実施例における、磁気センサ及び電源ユニットの構成例を示す縦断面図である。
図3】第1の実施例における、大バルクハウゼン効果発電ユニットの構成例を示す、エンコーダハウジングの平面図である。
図4図2に示したマグネット、磁気センサ、及び電源ユニットの位置関係、及び磁束線の関係を示す図である。
図5】第1の実施例における、マグネットの回転と、大バルクハウゼン効果発電ユニットの、第1磁性板及び第2磁性板との位置関係を示す図である。
図6】第1の実施例における、大バルクハウゼン効果発電ユニットの機能を、概念的に説明する図である。
図7A】第1の実施例における、マグネットと、第1磁性板及び第2磁性板との関係の一例を示す図である。
図7B】マグネットと、第1磁性板及び第2磁性板との関係の他の例を示す図である。
図7C】マグネットと、第1磁性板及び第2磁性板との関係の他の例を示す図である。
図7D】マグネットと、第1磁性板及び第2磁性板との関係の他の例を示す図である。
図7E】マグネットと、第1磁性板及び第2磁性板との関係の他の例を示す図である。
図7F】第1の実施例における、第1磁性板及び第2磁性板の特性の一例を示す図である。
図8A】第1の実施例における、電源ユニットの回路の1つの構成例を示す図である。
図8B】第1の実施例における、電源ユニットの回路の他の構成例を示す図である。
図9】前記電源ユニットの動作を示すタイムチャートであり、主電源の電源が正常な状態から停電した場合の、電源とロータリーエンコーダの出力信号の関係の一例を示す図である。
図10】第1の実施例における、マグネットの回転と、磁気センサ(TMRセンサ)の出力の関係を示す図である。
図11】第1、第2TMRセンサ信号のデジタル化、アブソリュート化の処理を示す図である。
図12】第1の実施例における、第1TMRセンサ信号の処理ユニットにおける信号処理を示す、フローチャートである。
図13図12の信号処理に基づく、A相、B相の信号と、これらの信号に基づいて生成される、インクリメンタルZ相、U相,V相,W相の信号の例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施例における、大バルクハウゼン効果発電ユニットの構成例を示す、エンコーダハウジングの平面図である。
図15】本発明の第3の実施例に係るロータリーエンコーダの構成例を示す、機能ブロック図である。
図16】第3の実施例における、TMRセンサ、光学センサ及び電源ユニットの構成例を示す縦断面図である。
図17】第4の実施例における、磁気センサ及び電源ユニットの構成例を示す縦断面図である。
図18】第4の実施例における、大バルクハウゼン効果発電ユニットの構成例を示す、エンコーダハウジングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のロータリーエンコーダは、回転軸の角度位置や回転数に関する情報を生成する手段として、回転軸に固定される1個の円板状のマグネットと、前記マグネットに対向して配置された少なくとも1つの磁気センサとを備えている。すなわち、本発明のロータリーエンコーダは、少なくとも1つの磁気センサを備えており、アブソリュートデータ及びインクリメンタルA,B,Zのデータ等を必要とする各種の回転電機に適用できる。以下、本発明の各実施例について説明する。
【0017】
最初に、本発明の第1の実施例に係るロータリーエンコーダについて説明する。まず、図1図4を参照しながら、本発明の第1の実施例に係るロータリーエンコーダの、全体の構成及び機能について説明する。
図1は、ロータリーエンコーダの構成例を示す、機能ブロック図であり、図2は、TMRセンサ及び電源ユニットの構成例を示す図である。
ロータリーエンコーダ10は、TMRセンサユニット11、電源ユニット12、温度センサ13、システムコントロールユニット14、磁気センサ信号の2組の処理ユニット(第1TMRセンサ信号の処理ユニット15、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16)を備えている。すなわち、ロータリーエンコーダ10は、独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備えている。
ロータリーエンコーダ10は、さらに、N極性,S極性、各1極着磁された、すなわち、一組の極性N,Sだけを有する、1個の平らな円板状のマグネット110を備えている。この1個の円板状のマグネットは、その中心を通る境界線1101(図3参照)を境にして半径方向に一組のN極領域とS極領域とが形成され、平な表面と裏面、及び側面とを有している。このマグネット110は、例えばネオジム磁石であり、図2に示したように、回転軸510の一端面に、非磁性の保持部材1102や接着剤等により固定される。なお、ネオジム磁石の代わりに、サマリウムコバルト磁石やフェライト磁石を採用しても良い。回転軸510は、ロータリーエンコーダの出力や運転指令などが入力されるサーボ制御装置により駆動されるモータなどの回転電機により、直接あるいは変速機構等を介して間接的に、駆動される。
【0018】
TMRセンサユニット11は、プリント基板19上に配置された第1TMRセンサ111と第2TMRセンサ112、及び温度センサ113を有している。第1TMRセンサ111と第2TMRセンサ112は、同一仕様を有し、従って同一の出力特性を有する、2組のTMRセンサである。
プリント基板19は、円筒状のエンコーダハウジング40の上端に固定されている。エンコーダハウジング40は、例えば非磁性のアルミニウムやその他の材料製であり、エンコーダの装着対象である回転機器、例えばモータのエンドカバーに固定される。あるいはまた、エンコーダハウジング40に相当するものが、回転機器のエンドカバーや収納容器等を構成する部材と一体に形成されても良い。本発明では、便宜上、このようなハウジングも、エンコーダハウジングと定義する。このエンコーダハウジング40の中空部41に、回転機器の回転軸510が位置し、この回転軸の端に、マグネット110が固定される。エンコーダハウジング40は、磁性材料からなるカバー46で覆われており、さらにモータのエンドカバー側も磁性材料で覆われ、従って、エンコーダハウジング40内部は磁気シールドされる。
第1TMRセンサ111は、回転軸510の軸心OS-OSに対応する位置において、プリント基板19の下側、すなわち、1個のマグネット110に対向する下側の面に配置され、第2TMRセンサ112は、軸心OS-OSに対応する位置でプリント基板19の上側の面に配置されている。第1、第2TMRセンサ111、112は、マグネット110の回転に伴い、Sin波,Cos波のアナログ信号を出力する。
【0019】
電源ユニット12は、主電源121、大バルクハウゼン効果発電ユニット115により充電される大バルクハウゼン効果発電電源122、及びバックアップ電源123を含んでおり、これらは、主電源121と共に、ロータリーエンコーダ10に電力を供給する電源として機能する。
大バルクハウゼン効果発電ユニット115は、その本体がエンコーダハウジング40の一部を凹設した収納部42内に設置されている。この大バルクハウゼン効果発電ユニット115は、ウィーガントワイヤ等の強磁性ワイヤ(若しくは複合磁性ワイヤ)1152と、その周囲に設けられた発電用コイル1154と、強磁性ワイヤ1152の両端に接続された第1磁性板1156及び第2磁性板1158とを備えている。
これらの磁性板1156、1158は、同じ磁性材料からなり、回転軸510の軸心OS-OS方向において、マグネット110と同じ位置(高さ)に配置されており、円板状のマグネット110の両側面の外側まで伸びており、これらの磁性板は、マグネットの両側面に沿って離間して伸びている。すなわち、第1磁性板1156及び第2磁性板1158の厚さ(軸方向長さ)の中間点は、マグネット110の厚さ(軸方向長さ)の中間点と、強磁性ワイヤ1152の中心を結ぶ直線OmgR-OmgR上にある。ただし、これは、理想的な場合である。実用的には、第1磁性板及び第2磁性板が、同等の高さにある、すなわち、主に前記マグネットの前記表面に対して平行もしくはそれに近い外回りの方向の磁束線を受け入れ、磁気センサに対する磁場干渉による影響を抑制するように構成されていればよい。そのため、これらの磁性板の厚さの中間点は、マグネットの表面と裏面の範囲内もしくはその近傍にあればよい。本発明では、このような範囲を含めて、第1磁性板及び第2磁性板が、マグネットと同じ位置(高さ)にあると定義する。
【0020】
第1磁性板1156と第2磁性板1158は、マグネット110の回転に伴う回転磁場により、N極領域からの磁束線とS極領域からの磁束線とが、第1磁性板1156と第2磁性板1158に適切に導かれるように、マグネット110の両側面との間に所定の間隙Gaを有している。すなわち、これらの磁性板は、対称の軸に平行な円板状のマグネットの両側面の接線110a,110bに沿って、この接線から間隙Gaだけ離間して伸びている。間隙Gaが狭いと、これらの磁性板が、TMRセンサユニット11の出力への影響を及ぼす磁場干渉が発生し易くなる。他方、間隙が広すぎると、これらの磁性板が、N極、S極の両領域からの磁束線を十分に得られなくなる。これらのことを考慮して、間隙Gaを適宜設定すればよい。また、これらの磁性板のマグネット側の端は、マグネット110を挟んで、解放端となっている。
【0021】
図3は、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の構成例を示す図である。回転軸510が、モータの原点位置に対応する位置にあるとき、マグネットのN極領域とS極領域の境界線1101は、マグネットの平な表面の中心を通る。すなわち、境界線1101は、回転軸510の軸心OS-OS図2参照)を通る直線OmgV-OmgV上にある。ここに示した第1磁性板1156及び第2磁性板1158は、帯板状の角部材であり、マグネット110の側面上では、それらの中心線OG1、OG2は、直線OmgR-OmgR(対称の軸)に沿ってその両側に平行に伸びている。すなわち、これらの磁性板の対称の軸OmgR-OmgRは、直線OmgV-OmgVに直交し、円板状のマグネット110の中心を通っている。製造上の許容誤差を考慮して、実用上は、対称の軸が、円板状のマグネット110の中心若しくはその近傍(以下、マグネットの中心付近)を通っていればよい。また、第1磁性板1156及び第2磁性板1158は、軸心OS-OS方向に厚みを有しているので、この厚みの各位置の平面で、対称の軸に対して、線対称の形状になっていることは言うまでもない。
このように、第1磁性板1156と第2磁性板1158は、少なくともマグネット110の側面付近において、マグネットを挟んで線対称の形状をなしている。すなわち、図3に示したように、第1磁性板1156と第2磁性板1158は、対称の軸に対して、線対称の形状になっている。従って、第1磁性板1156と第2磁性板1158は、1個のマグネット110の側面に対して、同じ条件の磁気特性で、対面している。
【0022】
なお、第1磁性板1156と第2磁性板1158は、線対称の条件を満たす限りにおいて、その断面形状は、矩形、円、楕円、台形など任意の板状若しくは棒状の形状を選定できる。また、線対称の条件を満たす限りにおいて、非平行の部分があってもよい。さらに、第1磁性板1156と第2磁性板1158は、マグネット110から離れた、大バルクハウゼン効果発電ユニット115に近い区間では、構造上の制約がある場合等には両者の形状が若干異なっていても良い。ただし、磁束線を導く磁気特性としては同じ条件であることが望ましい。
また、第1磁性板1156と第2磁性板1158の解放端、すなわち各先端1156a、1158aは、先細り状、例えば四角錐状や円錐形状のように、突出しているのが望ましい。これにより、磁束線を集磁しやすくなる。なお、各解放端の先端の突出方向は、マグネット110の方向、すなわち、マグネット110の中心方向、あるいは、対称の軸に直角な方向を向いていても良い。これにより、1個の円板状のマグネットを磁気センサ用のマグネットと、大バルクハウゼン効果発電ユニットのマグネットに兼用しながら、バックアップ電源としての大バルクハウゼン効果を利用した発電装置を、コンパクトな構成ながら高出力にすることができる。
【0023】
図4に、マグネット、TMRセンサ及び電源ユニットの位置関係、及び磁束線の関係を示している。回転磁場により、磁束線φ1が第1TMRセンサ111、磁束線φ2が第2TMRセンサ112、磁束線φ3が第1、第2磁性板1156、1158を通過する。そのため、マグネットのN極からS極に向かう磁束線φ1、磁束線φ2により、第1、第2TMRセンサ111、112を適切に動作可能な状態に保持しつつ、大バルクハウゼン効果発電ユニットの出力に影響する、磁束線φ3が最適になるように、第1磁性板1156及び第2磁性板1158を構成する必要がある。すなわち、φ1~φ3は、マグネット110のサイズ(回転軸の直径)やマグネットにより供給される磁界の強さH、磁束密度B、TMRセンサの特性や、大バルクハウゼン効果発電ユニットに要求される出力などに応じて、適宜設定すればよい。また、これらの磁性板の形状材料の透磁率なども考慮する必要がある。
【0024】
本発明において、第1TMRセンサに向かう磁束線φ1は、主に、マグネットの境界線1101に近いN極領域の内側から軸方向上向き(マグネットの表面に垂直な方向)へ、さらにS極領域の内側へと向かう磁束線で構成され、第2TMRセンサに向かう磁束線φ2は、主に、境界線1101から離れたN極領域の外側から軸方向上向き、さらにS極領域の外側へと向かう磁束線で構成される。
これに対し、大バルクハウゼン効果発電ユニットで利用する磁束線φ3は、主に、マグネットのN極領域の外側や側面から、マグネットの表面に対して水平方向もしくはそれに近い外回りの方向、さらには磁性板を経て、S極領域の外側や側面へと外回りで戻る磁束線を利用するものである。このように、第1TMRセンサに向かう磁束線φ1や第2TMRセンサに向かう磁束線φ2に対して、磁場干渉による影響を抑制するために、第1磁性板及び第2磁性板は、主に、マグネットの表面に対して水平方向もしくはそれに近い外回りの方向の磁束線φ3を受け入れるように構成されている。
一例として、回転軸510の直径が6.0~8.0mm程度、プリント基板の厚みが1.0~1.2mm程度、マグネットの直径が5.0~10.0mm程度、マグネットの厚みが3mm程度の場合、間隙Gは、0.5~3.0mm程度が望ましい。また、間隙Gaも0.5~3.0mm程度が望ましい。
【0025】
図1に戻り、システムコントロールユニット14は、初期設定部141、エンコーダ入出力制御ユニット144、セーフティ制御ユニット145、シリアル/パラレル信号送受信ユニット147などを備えている。初期設定部141は、ユーザインタフェース142を介して入力された条件に従って、モータの種類、極数、原点位置、ロータリーエンコーダの出力条件等を設定する機能を有する。エンコーダ入出力制御ユニット144は、初期設定された条件に従って、ロータリーエンコーダ10の入出力を制御する機能を有する。
【0026】
本実施例のエンコーダは、独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備えており、セーフティ制御ユニット145は、第1TMRセンサ111、第2TMRセンサ112、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16の出力状態を監視し、2系統のロータリーエンコーダの機能のいずれかが故障した場合には、ロータリーエンコーダの動作を安全に停止させるために必要な処理を行う。これにより、ロータリーエンコーダをセーフティエンコーダとして機能させる。シリアル/パラレル信号送受信ユニット147は、ロータリーエンコーダ10とサーボ制御装置の間で、各種の情報を、パラレル信号若しくはシリアル信号に変換し、送受信する機能を有している。
【0027】
第1TMRセンサ信号の処理ユニット15は、第1のアナログ信号の処理を行うアナログ信号処理部151と、AD変換器152と、デジタル信号処理部153を備えており、マグネット110に対向して配置された第1TMRセンサの出力である第1のアナログ信号を、AD変換し、このAD変換データに基づき、回転軸の回転角度、回転方向に関する第1のデジタルデータを生成する。すなわち、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15は、回転軸の回転角度情報に関して、第1TMRセンサ111のアナログ出力が所定の条件で量子化された、高分解能(例えば、27bit/回転)のアブソリュート信号とインクリメンタル信号の2系統の情報を、第1のデジタルデータとして、高精度に生成する機能を備えている。
【0028】
アナログ信号処理部151は、第1TMRセンサ111の、第1のアナログ信号(Sin信号,Cos信号)のサンプリングデータを時系列データとして受け取り、回転軸の回転数Nx、温度センサ13及び113のデータと関係づけてメモリに記録する。すなわち、第1TMRセンサ111のアナログ信号のサンプリングデータは、64ビットのAD変換器152(ADC-1(Sin)1521、ADC-2(Cos)1522)に入力されてデジタル値に変換され、それらの変換値が時系列データとしてEEPROM-1(1523)に記録される。
【0029】
デジタル信号処理部153の第1TMRセンサのインクリメンタルA,B,Z,(U,V,W)信号生成ユニット1531は、EEPROM-1から、第1のデジタルデータである回転軸の回転角度のアブソリュート信号のデジタル値を取得し、インクリメンタルA,B,Z,(U,V,W)信号を生成し、時系列データとしてEEPROM-2に記録する。第1TMRセンサの1回転アブソリュート信号生成ユニット1532は、EEPROM-1から、回転軸のAD変換のデータを取得し、1回転アブソリュート信号を生成し、EEPROM-2に記録する。また、第1TMRセンサの多回転アブソリュート信号生成ユニット1533は、多回転アブソリュート信号を生成し、EEPROM-2に記録する。
【0030】
また、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16は、アナログ信号処理部161、AD変換器162、及び、デジタル信号処理部163を備えている。
第2TMRセンサ信号の処理ユニット16では、アナログ信号のサンプリングデータが、64ビットのAD変換器162(ADC-1(Sin)1621、ADC-2(Cos)1622)に入力されてデジタル値に変換され、それらの変換値が時系列データとしてEEPROM-3(1623)に記録される。
【0031】
デジタル信号処理部163の第2TMRセンサのインクリメンタルA,B,Z,(U,V,W)信号生成ユニット1631は、EEPROM-3から、デジタル値を取得し、その周波数を算出し、それを回転方向のデータと共に、EEPROM-4に記録する。第2TMRセンサのアブソリュート信号生成ユニット1632は、EEPROM-3から、回転軸のAD変換のデータを取得し、1回転アブソリュート信号を生成し、時系列データとしてEEPROM-4に記録する。また、第2TMRセンサの多回転アブソリュート信号生成ユニット1633は、多回転アブソリュート信号を生成し、EEPROM-4に記録する。
すなわち、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16は、第2TMRセンサの出力である第2のアナログ信号をAD変換し、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15と同じ条件で、高分解能(例えば、27bit/回転)のアブソリュート信号とインクリメンタル信号の2系統の情報を、第2のデジタルデータとして生成する。
【0032】
ロータリーエンコーダ10からは、エンコーダ入出力制御ユニット144の出力にもとづき、第1のデジタルデータまたは第2のデジタルデータの一方が、例えば、アブソリュート信号とインクリメンタル信号として、シリアル伝送用の送信データ(BUS)に変換され、シリアル/パラレル信号送受信ユニット147から通信ケーブルを介してロータリーエンコーダ10の外部の機器、例えば、サーボ制御装置へ送信される。
【0033】
なお、図1に示した各機能ブロックは、一例として表示したものである。各機能ブロックの区分は任意であり、上記複数の機能ブロックを共通のプログラムで実現しても良く、或いは、特定の上記機能ブロックを異なる複数のプログラムやIC回路で実現しても良いことは言うまでもない。
あるいはまた、CPUやメモリを備えたマイクロコンピュータに、上記各機能を実行するためのプログラムを実装することで、上記各機能を実現することも可能である。
【0034】
図2に示したように、ロータリーエンコーダ10の殆ど、すなわち、TMRセンサユニット11の円板状のマグネット110を除く部分と、電源ユニット12、温度センサ13、システムコントロールユニット14、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15、及び、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16は、プリント基板19上に形成、若しくは実装される。
特に、システムコントロールユニット14、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16は、専用のFPGA18(Field Programmable Gate Array)として、あるいは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として、あるいは、汎用のシングルチップマイコンを用いたIC回路のチップとして実現され、プリント基板19上に実装される。また、AD変換器152やAD変換器162も、ASIC(若しくはFPGA)としてプリント基板19上に実装される。また、バックアップ電源123を構成するコンデンサもプリント基板19上に実装される。
【0035】
なお、システムコントロールユニット14、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15、及び第2TMRセンサ信号の処理ユニット16は、機能的に分割されたブロックであり、これらの機能は、FPGAやASICの、デジタル信号処理ユニット、SSCインターフェース、インクリメンタルインターフェース等における、プログラムの記述により、実現される。
また、FPGAには、ROMRAM、及び、少なくとも1つの書き換え(重ね書き)可能な不揮発性のメモリが含まれており、バスを介してCPUと接続されている。また、書き換え(重ね書き)可能な不揮発性のメモリとして、EEPROMやFRAM(登録商標)、(Ferroelectric Random Access Memory、)などを採用すればよい。以下の説明では、このようなメモリを、単にEEPROMとして記載する。
【0036】
なお、マグネット110の、N極領域とS極領域の境界線1101上の一方の端の位置が、回転軸上の周方向上の特定の位置、すなわち、A相のパルスの立ち上がり時点に相当する原点位置(Z)である。
【0037】
次に、図5図6を参照しながら、第1の実施例における、大バルクハウゼン効果発電ユニットの、マグネットの回転磁場すなわち回転軸の回転角度と、第1磁性板及び第2磁性板との関係について、説明する。
図5は、マグネットの回転に伴う、その磁場のN極領域とS極領域の回転と、大バルクハウゼン効果発電ユニットの、第1磁性板及び第2磁性板との位置関係を示す図である。すなわち、マグネット110が、(A)~(I)の各回転位置にあるときの、マグネット110と第1磁性板1156及び第2磁性板1158とが、それぞれN極領域及びS極領域と対向している領域を、1つの矩形内の斜線で示している。この対向している領域の面積の大小は、マグネット110のN極領域から第1、第2磁性板1156、1158を経てS極領域へ向かう磁束線φ3の密度と関係する。すなわち、第1、第2磁性板1156、1158における磁束線φ3の方向と関係する。
図5の(A)は、マグネット110が原点位置(Z)、すなわち回転角度0度の位置の状態を示している。この状態では、第1磁性板1156と第2磁性板1158とが、マグネット110のN極領域とS極領域に同じ条件で対向している。すなわち、第1磁性板1156と第2磁性板1158は、同じ条件で、N極領域とS極領域から磁束線φを受けている。
この状態から、マグネット110が45度回転した図5の(B)では、第1磁性板1156は広い面積でN極領域に対向し、第2磁性板1158は広い面積でS極領域に対向している。さらに、マグネット110が90度回転した図5の(C)では、第1磁性板1156はN極領域のみに対向し、第2磁性板1158はS極領域のみに対向している。このように、0度から90度まで回転するにつれ、第1磁性板1156はN極領域に、第2磁性板1158はS極領域により広い面積で対向するようになる。さらに、135度回転した図5の(D)では、第1磁性板1156はN極領域への対向面積が減少し、第2磁性板1158はS極領域への対向面積が減少する。
このように、マグネット110が回転するにつれ、第1磁性板1156及び第2磁性板1158と、N極領域及びS極領域との対向面積が変化する。以下、同様に、マグネット110が図5の(E)、(F)、(G)に示すように180度を超えて回転するのに伴い、第1磁性板1156、第2磁性板1158が、N極領域とS極領域に対向する領域の面積が周期的に大きく増減する。このことは、マグネット110の回転に伴い、これららの磁性板における磁束線φ3の密度や方向が変化することを意味している。
なお、実際には、図5に示した矩形の面積の大小関係だけで、磁束線φ3方向や密度が決まるわけではないことは勿論である。例えば、矩形の右側にも第1、第2磁性板が伸びており、その部分にも集磁効果がある。また、第1、第2磁性板の解放端が先細りとなっている場合には、その集磁効果を考慮する必要がある。ただ、図5から、マグネットの回転に伴う磁束線φ3の密度の変化について、大凡の傾向を知るのことはできる。
【0038】
図6は、大バルクハウゼン効果発電ユニットの機能を、概念的に説明する図である。
第1磁性板156、第2磁性板1158の各一端は大バルクハウゼン効果発電ユニット115の強磁性ワイヤ1152に接続され、これとは反対側の各他端は、マグネット110を挟んで、解放端となっている。
図5から明らかなとおり、マグネット110が0度から90度まで回転するにつれ、図6の(A)、(B)、(C)に示すように、マグネットのN極領域からS極領域へ、すなわち、マグネットのN極領域から出て第1磁性板1156、第2磁性板1158を経てS極領域へ戻る磁束線φ3の密度が増加する。すなわち、90度までは、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の発電用コイル1154に供給される磁束が増大し、その後、90度を超えると、マグネットのN極領域から第1磁性板1156を経て第2磁性板1158、S極領域へと向かう方向の磁束線φ3の密度が減少し、さらに、マグネットが回転すると、第2磁性板1158から第1磁性板1156へ向かう方向に逆方向に、すなわち、マグネットのN極領域から第2磁性板1158、第1磁性板1156を経てS極領域へ向かう、磁束線φ3の密度が増加する。
【0039】
さらに、マグネット110が図5の(H)、(I)と、360度まで回転するのに伴い、第2磁性板1158から第1磁性板1156へ向かう磁束線φ3の密度が減少する。このような、マグネット110の1回転毎の磁束線φ3の向きの反転に伴い、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の強磁性ワイヤ1152を流れる磁束線の向きが反転し、発電用コイル1154に、図6の(D)に示すように、パルス状の発電出力が得られる。
【0040】
本発明の特徴の1つは、半径方向に着磁された一組の極性N,Sだけを有し回転軸510に固定される1個の円板状のマグネット110を、磁気センサのアナログ信号源と、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の発電装置として利用することにある。大バルクハウゼン効果発電ユニットの第1磁性板及び第2磁性板は、第1TMRセンサに向かう磁束線φ1や第2TMRセンサに向かう磁束線φ2に対して、磁場干渉による影響を抑制するために、主にマグネットの表面に対して平行もしくはそれに近い外回りの方向の磁束線φ3を利用し、磁気センサに対する磁場干渉による影響を抑制するように構成されている。これにより、1個のマグネットが回転するのに伴い、図5図6に示したように、大バルクハウゼン効果発電ユニットの第1磁性板1156、第2磁性板1158における磁束線φ3方向との密度が周期的に大きく増減し、第1磁性板1156、第2磁性板1158が受ける磁束線φ3の極性と密度も変化する。回転軸510の端面に固定される1個のマグネットと、その両側面の外側に伸びた第1磁性板1156及び第2磁性板1110との組み合わせにより、大バルクハウゼン効果発電ユニット115をコンパクトな構成としながら、大きな発電出力を得ることができる。
【0041】
次に、第1磁性板及び第2磁性板の構成について、説明する。
図7A図7Eは、第1の実施例における、円板状のマグネットと、第1磁性板1156及び第2磁性板1158との関係の一例を示す図である。先にも述べたとおり、第1磁性板1156及び第2磁性板1158は、マグネット110の側面において、このマグネットを挟んで、対称の軸に対して線対称の形状になっており、かつ、マグネットの両側面の外側まで伸びており、第1磁性板及び第2磁性板は、マグネットの両側面に沿って離間して伸びている。マグネットの直径をDmとし、第1磁性板及び第2磁性板が、マグネットの両側面の外側に離間して伸びている長さをLm1とすると、一例として、図7Aに示すように、Lm1は、Dmにほぼ等しい。これにより、図5図6に示したような、マグネットの1回転360度において、正負の両側に周期的に変化する特性が得られる。
【0042】
ただ、大バルクハウゼン効果発電ユニット115から所定の出力を得るために、図5図6に示した特性が、正負の両側で完全に一致している必要はなく、若干、差異があってもよい。そのため、図7Bに示したように、第1磁性板及び第2磁性板がマグネットの両側面の外側に離間して伸びている長さLm2が、Dmより若干短くてもよい。あるいはまた、Lm1がDmより若干長くても、マグネットの1回転360度において、正負の両側に周期的に変化する特性が得られる。しかし、長さが長くなると強度を確保する対策が必要になってくるので、あまり長くすることは、実用的ではない。また、図7Cに示したように、第1磁性板と第2磁性板とが非平行であっても、それらの間の傾斜角度Θが小さく(例えば10度以内)、かつ、線対称の条件を満たしていれば、良い。同様の理由で、第1磁性板と第2磁性板とが互いに内側あるいは外側へ、若干湾曲していても良い。
さらに、図7Dに示したように、マグネットの両側面の外側に伸びている長さLs1が、Dmの半分の場合でも、マグネットの1回転360度において、正負の両側に同じ大きさの周期的な特性が得られる。なお、図7Eに示したように、長さLs2が、Dmの3/4の場合、周期的に変化する特性は得られ難くなるが、大バルクハウゼン効果発電ユニット115から所定の出力を得ることは可能である。
【0043】
次に、図7Fは、第1の実施例における、第1磁性板及び第2磁性板の特性を示す図である。大バルクハウゼン効果発電は、マグネットの回転に伴う磁束密度の正から負へ、あるいは負から正への急激な変化によって、パルス出力が得られるものである。逆に、磁束密度が同じ極性にある状態での大きな磁束密度、例えば図6に示した90度や270度前後の位置における大きな磁束密度は、大バルクハウゼン効果発電の出力にあまり寄与しない。そのため、90度や270度の前後の位置では、第1磁性板及び第2磁性板の磁束密度が飽和するように構成するのが望ましい。
【0044】
次に、第1の実施例における、電源ユニットの回路の構成例について、図8Aを参照しながら説明する。
電源ユニット12の主電源121は、例えば商用電源から供給された電力が直流電源に変換され、所定の直流電圧Vcc、例えば5Vに制御される主電源部1211を備えている。この主電源部1211は、ダイオード1221を経て出力端子124に電力を供給する。
大バルクハウゼン効果発電電源122は、大バルクハウゼン効果発電ユニット115から、回転軸の1回転毎に、180度間隔で正負のパルス状の波形として出力される。この電力を、全波波形回路1222、平滑回路1223、ダイオード1231を介して、出力端子124に、所定の電圧Vccの直流電力を供給する。
【0045】
バックアップ電源123は、電流制限回路1232、コンデンサ1233、電圧制限回路1234を備え、出力端子124に、所定の電圧Vccの直流電力を供給する。コンデンサ1233は、主電源121と大バルクハウゼン効果発電電源122の双方から、個別に、電力を供給される。バックアップ電源123は、主電源の代わりに電力を供給し、さらに、停電状態にも、ロータリーエンコーダ10に電力を供給する電源として機能する。電流制限回路1232は、モータの回転数が高く、大バルクハウゼン効果発電ユニット115により発電される電力量が多い場合に、コンデンサ1233に供給される電流を制限することで、コンデンサ1233に許容範囲の電荷が蓄積されるように制御するものである。コンデンサ1233には、例えば、電気二重層キャパシタを採用しても良い。コンデンサ1233は、電圧低下を緩やかにするために、複数のコンデンサを並列接続して構成しても良い。
電源ユニット12の出力端子124に接続された電源ラインは、電気的には独立した3系統のラインとして構成され、システムコントロールユニット14、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15、及び、第2TMRセンサ信号の処理ユニット16に電力が供給される。
【0046】
図8Bは、電源ユニット12の回路の他の構成例を示す図である。
この電源ユニットでは、バックアップ電源123のコンデンサ1233が、複数のコンデンサC1(12331),C2(12332),C3(12333),C4(12334)を並列接続して構成されている。コンデンサC2,C3,C4は、平滑コンデンサC0に対して、ツェナー電圧(Vz)の異なる複数のツェナーダイオードZ2,Z3,Z4を介して接続され、コンデンサの電圧の上昇に伴い、コンデンサC2,C3,C4は、順次、Vccより若干高い電圧に、充電されるように構成されている。コンデンサC1、C2,C3,C4の間には、トランジスタスイッチSW1(1236),SW2(1237),SW3(1238)が設けられ、制御回路(図示略)により、コンデンサC1の出力電圧がVccに維持されるように制御される。
【0047】
大バルクハウゼン効果発電ユニット115により得られる電力は、バックアップ電源123を構成するコンデンサ1233に蓄積される。このバックアップ電源123の電力は、主電源の代わりに、さらには、主電源の停電後も長期間、ロータリーエンコーダの電源として使用することができる。
図9は、電源ユニットの動作を示すタイムチャートであり、主電源の電源が正常な状態から停電した場合の、バックアップ電源とロータリーエンコーダの出力信号の関係の一例を示す図である。
ロータリーエンコーダには、起動時のみ、主電源から電力が供給される。起動後は、大バルクハウゼン効果発電電源122によりバックアップ電源123からロータリーエンコーダに電力が供給される。
主電源部1211が、時刻t1で、例えば停電や故障により電力を供給できなくなった時にも、回転軸の回転に伴い発電される大バルクハウゼン効果発電電源122からロータリーエンコーダ10に電力が供給される。
【0048】
停電後、時間の経過と共に回転軸の回転数が低下すると、大バルクハウゼン効果発電の出力は小さくなり、時刻t2で、バックアップ電源に所定の電圧Vccの直流電力を供給できなくなる。この状態になるとバックアップ電源123のコンデンサに1233に蓄積されていた電荷により、ロータリーエンコーダ10に電圧Vccの電力が供給される。
これにより、ロータリーエンコーダ10は、長時間、例えば、回転軸の回転が完全に停止する時刻t3で、まで、回転軸の回転角度の情報を生成し、記録することができる。
さらに、停電により回転軸が停止した後も、外力、例えば、人の力により、ロボットアームを介して回転軸が強制的に回転された場合には、大バルクハウゼン効果発電の出力とコンデンサに1233に蓄積されていた電荷により、時刻t4~t6の間、ロータリーエンコーダ10に電力が供給される。そのため、停電等により回転軸が停止した後に、外力で回転軸が回転した状態でも、回転軸の回転角度の情報が記録される。
【0049】
図10は、第1の実施例における、マグネットの回転と、TMRセンサの出力の関係を示す図である。マグネットの回転に伴い、そのN極、S極と対向する関係の変化に伴い、TMRセンサのフリー層とピン層の各磁化の向きが、変化する。これに伴い、TMRセンサから、サイン波、コサイン波の信号が出力される。
【0050】
次に、図11図12図13を参照しながら、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15における、第一のTMRセンサ信号のデジタル化、アブソリュート化の処理について、説明する。
第1TMRセンサ信号の処理ユニット15は、初期設定値から、モータの極数、回転軸の原点の情報を取得する(S1201)。
図11の(A)に示すように、第1TMRセンサ(TMRセンサ)111からは、回転軸の1回転に対応して、SIN波、COS波の各々で360度(機械角)、各々1周期分の第1のアナログ信号が出力される。これら第1のアナログ信号の回転角(機械角)と振幅、及び、回転数Nxのデータは、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15のアナログ信号処理部151により、温度センサ13の温度Ta等と関係づけてられて、メモリに記録される。
【0051】
図11の(B)に示すように、アナログ信号(Sin信号,Cos信号)は、AD変換器152に入力されて、量子化され内挿処理により多分割されたデジタル信号に変換され、A相、B相の情報を含むデジタル値に変換され、それらの変換値が、回転数Nx、回転方向、温度Ta等と関係づけてられて、EEPROM-1に記録される。
【0052】
図12のフローチャートに示すように、第1TMRセンサ信号の処理ユニット15は、まず、初期設定値から、回転軸の原点の情報を取得する(S1201)。さらに、EEPROM-1から、第1TMRセンサ信号(Sin, Cos波)のAD変換のデータを取得する(S1202)。第1TMRセンサ信号の処理ユニット15は、処理がアブソリュート化の場合(S1203でYES)、さらに、AD変換データと原点情報に基づき、回転方向、回転角度のアブソリュート値を算出し(S1204)、アブソリュート値にメモリの番地付けを行い、メモリに記録する(S1205)。そして、1回転アブソリュート情報を生成し、1回転アブソリュートデータとして、EEPROM2に記録する(S1206)。さらに、多回転アブソリュート情報を生成し、多回転アブソリュートデータとして、EEPROM2に記録する(S1207)。
このようにして、図11の(C)に示すように、正逆1回転毎のアブソリュート値が生成され、回転数Nx、温度Ta及び回転方向のデータと共に、EEPROM-2に記録される。
【0053】
一方、処理がインクリメンタル化の場合(S1203でNO)、AD変換データから、AD変換データから、図11の(B)に示したA相、B相の情報に基づき、A相、B相の立ち上がりに同期するZ相の幅のデータを算出し(S1212)、A相、B相、Z相の幅のデータを基にU,V,W相のデータを生成する(S1213)。さらに、図13に示すような、A相、B相、Z相、U,V,W相のデータに番地付けを行い、インクリメンタルデータとして、EEPROM2に記録する(S1214)。この処理を、運転終了まで、継続する。
【0054】
第1の実施例におけるロータリーエンコーダは、セーフティ制御ユニット145が、2系統のロータリーエンコーダ機能の出力状態を監視し、いずれ一方のロータリーエンコーダ機能が故障した場合には、ロータリーエンコーダの動作を停止させるために必要な処理を行う。このように、第1の実施例におけるロータリーエンコーダは、2系統のロータリーエンコーダ機能と、主電源のほかにバックアップ電源を備えた、セーフティエンコーダである。
なお、2系統のロータリーエンコーダの機能のいずれかが故障した場合に、故障していないロータリーエンコーダの機能を、安全その他所定の条件を満たす範囲で継続して使用するように構成しても良い。
【0055】
次に、本発明の第2の実施例について、図14を参照しながら説明する。この実施例では、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の第1磁性板1156及び第2磁性板1158がマグネット110の両側面の外側において離間して、リング状に伸びており、マグネット110の側面と第1磁性板1156及び第2磁性板1158との間隙Gaが、一定である。この構成により、第1磁性板1156、第2磁性板1158と、グネット110のN極領域、S極領域との対向面積の変化が、緩やかになり、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の出力の変動がより規則的になる。リング状の部分の円周方向の長さは、図7A図7Eに示したように、適宜、選定可能である。また、各解放端の先端の突出方向は、マグネット110の中心方向を向いていても良い。
【0056】
次に、本発明の第3の実施例について、図15図16を参照しながら説明する。
第3の実施例では、第1の実施例の第2TMRセンサに代えて、光学センサを採用している。
図15は、ロータリーエンコーダの機能ブロック図であり、図16は、第3の実施例における、TMRセンサ、光学センサ及び電源ユニットの構成例を示す縦断面図である。
図15において、TMRセンサ111の信号を処理する、TMRセンサ信号の処理ユニット15の構成・機能は、第1の実施例の第1TMRセンサ信号の処理ユニット15の構成・機能と同じである。光学センサ118の信号を処理する、光学センサ信号の処理ユニット17は、受光センサ(インクリメンタル信号及びアブソリュート信号)の検出処理部171と、AD変換器172と、デジタル信号処理部173を備えている。
【0057】
図16に示すように、マグネット110の下方において、回転軸510に保持部1104を介して樹脂材料製のディスク119が固定されており、このディスク119上には、ディスク119の円周方向の角度を検出するためのアブソリュートスケール116及びインクリメンタルスケール117が形成されている。一方、プリント基板19には光学センサ118が設けられ、この光学センサ118は、アブソリュートスケール116及びインクリメンタルスケール117の各パターンを検知するために、パターンに検出光を照射する発光素子及びパターンからの反射光を受光する受光素子(受光センサ)を備えている。なお、光学センサとして、透過型の光学センサを使用してもよい。
【0058】
図15に戻り、光学センサ信号の処理ユニット17のAD変換器172では、TMRセンサ信号の処理ユニット15と同様に、アナログ信号のサンプリングデータが、64ビットのAD変換器172(ADC-1(インクリメンタル)1721、ADC-2(アブソリュート)1722)に入力されてデジタル値に変換され、それらの変換値が時系列データとしてEEPROM-3(1723)に記録される。
【0059】
第3の実施例のロータリーエンコーダでも、第1の実施例のロータリーエンコーダと同様に、一組の極性N,Sだけを有する1個の円板状のマグネット110を、磁気センサのアナログ信号源と、大バルクハウゼン効果発電ユニット115の発電装置として利用することができる。1個のマグネットが回転するのに伴い、図5図6に示したように、大バルクハウゼン効果発電ユニットの第1磁性板1156、第2磁性板1158における磁束線φ3方向との密度が周期的に大きく増減し、これに伴って、第1磁性板1156、第2磁性板1158が受ける磁束線φ3の極性と密度も変化する。この1個のマグネット110は、回転軸510の端面に固定されるものであり、大バルクハウゼン効果発電ユニット115をコンパクトに構成しながら、大きな発電出力を得ることができる。
【0060】
本発明のロータリーエンコーダは、回転軸に固定される1個のマグネットを前提としたセーフティエンコーダとして、実施例で述べた、一対のTMRセンサの組み合わせや、TMRセンサと光学式センサとの組み合わせ以外の、種々の組み合わせにも、採用できる。例えば、TMRセンサとGMRセンサ、AMRセンサとTMRセンサ、一対のAMRセンサ、一対のGMRセンサ、一対のホール素子センサ、あるいは、TMRセンサとホール素子センサとの組み合わせでも良い。
また、本発明のロータリーエンコーダを、1個のマグネットを前提とした磁気センサを利用した1系統のロータリーエンコーダの機能と、大バルクハウゼン効果発電ユニットとを備えた構成としても良い。
【0061】
以下では、GMRセンサと光学式センサとの組み合わせになる、本発明の第4の実施例のエンコーダについて、図17図18を参照しながら説明する。
図17は、第4の実施例における、磁気センサ及び電源ユニットの構成例を示す縦断面図であり、図18は、エンコーダハウジングの平面図である。
この実施例の大バルクハウゼン効果発電ユニット115では、強磁性ワイヤ1152の両端に接続された第1磁性板1156及び第2磁性板1158が、回転軸510の軸心OS-OS方向において、マグネット110とGMRセンサ1110の中間の位置まで伸びており、各磁性板の先端はマグネット110の外周付近まで伸びている。
各磁性板の先端は、図7A図7Eに示したのと同様な関係で、マグネット110の表面上で外周付近まで伸びている。すなわち、これらの磁性板は、マグネット110の表面の上では、それらの中心線OG1、OG2が、対称の軸に沿って平行に伸びており、これらの磁性板は、マグネットの両側面付近の表面の上において線対称の形状をなしている。
なお、本実施例では、図15に示した第3の実施例のロータリーエンコーダの機能ブロック図における、TMRセンサ信号の処理ユニット15に代えて、GMRセンサ信号の処理ユニットを設けると共に、第3の実施例の光学センサ信号の処理ユニット17と同じ機能を備えている。GMRセンサからは、サイン波、コサイン波の信号が出力される。このGMRセンサ信号の処理ユニットも、第3の実施例における,TMRセンサ信号の処理ユニット15と同様な機能を備え、アナログ信号のサンプリングデータが、AD変換器(ADC-1(インクリメンタル)、ADC-2(アブソリュート))に入力されてデジタル値に変換され、それらの変換値が時系列データとしてEEPROMに記録される。
【0062】
本実施例では、ロータリーエンコーダの磁気センサとしてGMRセンサを採用し、さらに、第1磁性板及び第2磁性板を、マグネット110の表面上でかつその外周付近まで伸ばす構成としている。これにより、大バルクハウゼン効果発電ユニットに必要な磁束線φ3の変動を確保すると共に、主にマグネットの表面に対して平行もしくはそれに近い外回りの方向の磁束線φ3を受け入れることで、GMRセンサ1110に対する磁場干渉による影響を抑制できる。これにより、独立した2系統のロータリーエンコーダの機能を備え、かつ、コンパクトな構成のエンコーダとすることができる。
軸心方向における、マグネット110の表面と各磁性板との間隙をG2、各磁性板とGMRセンサ1110との間隙をG3とした場合、一例として、回転軸510の直径が6.0~8.0mm程度、マグネットの直径が5.0~10.0mm程度の場合、G2、G3は、各々、0.5~3.0mm程度が望ましい。
本実施例は、第1~第3の実施例に比べて、第1磁性板及び第2磁性板による磁場干渉による影響を受けやすい。そのため、予め、GMRセンサの回転位置毎の出力に対する第1磁性板及び第2磁性板による磁場干渉の影響を測定し、この影響を補正するための回転位置毎の補正データを生成し、システムコントロールユニット14の初期設定部141に保持しておくように構成してもよい。
本実施例によれば、高い精度が要求される、あるいは補助的に使用される、磁気式エンコーダを含む2系統のロータリーエンコーダを備え、かつ、安価で、コンパクトな構成の、ロータリーエンコーダ及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
【0063】
本発明のロータリーエンコーは、他の種類のモータ、例えば、ステッピングモータにも採用できる。また、同期型モータ、誘導モータ等、種々の回転電気機器に広く適用できる。また、これらの回転電気機器を用いたサーボ制御装置にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0064】
10 ロータリーエンコーダ
11 TMRセンサユニット
110 マグネット
111 第1TMRセンサ
1110 GMRセンサ
112 第2TMRセンサ
115 大バルクハウゼン効果発電ユニット
1156 第1磁性板
1158 第2磁性板
116 アブソリュートスケール
117 インクリメンタルスケール
118 光学センサ
12 電源ユニット
121 主電源
122 大バルクハウゼン効果発電電源
123 バックアップ電源
13 温度センサ
14 システムコントロールユニット
141 初期設定部
144 エンコーダ入出力制御ユニット
145 セーフティ制御ユニット
147 シリアル/パラレル信号送受信ユニット
15 第1TMRセンサ信号の処理ユニット
151 第1TMRセンサのアナログ信号処理部
152 AD変換器
153 デジタル信号処理部
16 第2TMRセンサ信号の処理ユニット
161 第2TMRセンサのアナログ信号処理部
162 AD変換器
163 デジタル信号処理部
17 光学センサ信号の処理ユニット
18 FPGAあるいは、ASIC
19 プリント基板
510 回転軸
mgR-OmgR 対称の軸
【要約】      (修正有)
【課題】回転軸の角度位置や回転数に関し高精度の信号を生成する機能を有し、バックアップ電源を備えかつコンパクトな構成のロータリーエンコーダを提供する。
【解決手段】回転軸に固定されるマグネットと、マグネットに対向し配置された磁気センサ出力から回転軸の回転角度、回転方向に関する情報を生成する機能を備え、マグネットはその中心を通る境界線を境にし半径方向に一組のNとS極領域が形成された1個の円板状であり、一組のNとS極領域とが1つの平な表面を形成し、大バルクハウゼン効果発電ユニットは、強磁性ワイヤ及び発電用コイルと強磁性ワイヤ両端に接続された第1及び第2磁性板を備え、第1及び第2磁性板は強磁性ワイヤ両端からマグネットを挟んでマグネットの両側面の外側まで伸び、第1及び第2磁性板はマグネットの両側面に沿って離間し伸び、記第1及び第2磁性板は回転軸の軸心方向においてマグネットを挟み線対称形状をなす。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18