(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】角型二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/586 20210101AFI20231129BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20231129BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20231129BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20231129BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231129BHJP
H01M 10/04 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/103
H01M50/15
H01M10/058
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2023505090
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035487
(87)【国際公開番号】W WO2022190439
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021036042
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸芳
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125109(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035395(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027296(WO,A1)
【文献】特開2014-063569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/10ー50/198
H01M 10/058
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型二次電池において、
一面側が開口した直方体形状に形成された導電性を有する容器と、
前記容器の前記一面側を封止する蓋と、
前記容器内に収容され、
夫々帯状の電極とセパレータが巻回されて成る巻回電極群と、
当該巻回電極群の幅方向の両側に夫々形成された
電極と、
を備える充放電体と、
前記充放電体を被覆し、前記充放電体及び前記容器間を絶縁する絶縁性部材と
を備え、
前記絶縁性部材は、
一面側が開口した直方体形状に形成され、前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の側面のうちの少なくとも一方の前記側面が、高さ方向に沿って前記充放電体から離反する方向に折り曲げられた
ことを特徴とする角型二次電池。
【請求項2】
前記絶縁性部材は、
絶縁部材から形成された絶縁シートを折り畳むようにして形成され、
前記絶縁シートにおける前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する各前記側面のうちの少なくとも一方の前記側面に、開口した前記一面から
底面に向けた方向に沿って、当該側面を前記充放電体から離反する方向に折り曲げるための折り目が形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の角型二次電池。
【請求項3】
前記絶縁性部材は、
前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の前記側面のうちの前記充放電体から離反する方向に折り曲げられた前記側面における
底面側の端部に、当該底面との境界に向けて傾斜する傾斜面が形成された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の角型二次電池。
【請求項4】
角型二次電池の製造方法において、
前記角型二次電池は、
一面側が開口した直方体形状に形成された導電性を有する容器と、
前記容器の前記一面側を封止する蓋と、
前記容器内に収容され、
夫々帯状の電極とセパレータが巻回されて成る巻回電極群と、
当該巻回電極群の幅方向の両側に夫々形成された
電極と、
を備える充放電体と、
前記充放電体を被覆し、前記充放電体及び前記容器間を絶縁する絶縁性部材と
を有し、
前記絶縁性部材は、
絶縁材料から形成された絶縁シートを折り畳むことにより一面側が開口した直方体形状に形成され、前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の側面のうちの少なくとも一方の前記側面が、高さ方向に沿って前記充放電体から離反する方向に折り曲げられており、
前記絶縁シートを作成する第1の工程と、
前記絶縁シートを折り畳むようにして前記絶縁性部材を形成する第2の工程と、
前記絶縁性部材の開口した前記一面側から前記充放電体を当該絶縁性部材内に挿入するようにして収容する第3の工程と
を備えることを特徴とする角型二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁性部材に収容された前記充放電体を、前記容器の開口した前記一面側から挿入するようにして当該容器に収容する第4の工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載の角型二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程では、
前記絶縁シートにおける前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する各前記側面のうちの少なくとも一方の前記側面に、開口した前記一面から
底面に向けた方向に沿って、当該側面を前記充放電体から離反する方向に折り曲げるための折り目を形成する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の角型二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程では、
前記絶縁性部材における前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の前記側面のうちの前記充放電体から離反する方向に折り曲げられた前記側面の
底面側の端部に、当該底面との境界に向けて傾斜する傾斜面を形成する
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の角型二次電池
の製造方法。
【請求項8】
角型二次電池の製造方法において、
前記角型二次電池は、
一面側が開口した直方体形状に形成された導電性を有する容器と、
前記容器の前記一面側を封止する蓋と、
前記容器内に収容され、
夫々帯状の電極とセパレータが巻回されて成る巻回電極群と、
当該巻回電極群の幅方向の両側に夫々形成された
電極と、
を備える充放電体と、
前記充放電体を被覆し、前記充放電体及び前記容器間を絶縁する絶縁性部材と
を有し、
前記絶縁性部材は、
絶縁材料から形成された絶縁シートを折り畳むことにより一面側が開口した直方体形状に形成され、前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の側面のうちの少なくとも一方の前記側面が、高さ方向に沿って前記充放電体から離反する方向に折り曲げられており、前記絶縁シートを作成する第1の工程と、
前記充放電体を被覆するように前記絶縁シートを折り畳むことにより前記絶縁性部材を形成する第2の工程と
を備えることを特徴とする角型二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁シートからなる前記絶縁性部材に被覆された前記充放電体を、前記容器の開口した前記一面側から挿入するようにして当該容器に収容する第3の工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項8に記載の角型二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程では、
前記絶縁シートにおける前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する各前記側面のうちの少なくとも一方の前記側面に、開口した前記一面から
底面に向けた方向に沿って、当該側面を前記充放電体から離反する方向に折り曲げるための折り目を形成する
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の角型二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記第2の工程では、
前記絶縁性部材における前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の前記側面のうちの前記充放電体から離反する方向に折り曲げられた前記側面の
底面側の端部に、当該底面との境界に向けて傾斜する傾斜面を形成する
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の角型二次電池
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角型二次電池及びその製造方法に関し、例えば、電池容器及び捲回電極群間が絶縁性部材により絶縁された角型二次電池に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやノート型パーソナルコンピュータ等の携帯型の電子機器が普及し、またハイブリッド自動車や電気自動車の開発及び実用化も進められるなど、二次電池に対する需要が高まっている。これに伴い二次電池に関する技術の研究・開発も進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁性部材で被覆した電極体を外装缶に挿入する際の絶縁性部材と外装缶との干渉を低減させることを目的として、絶縁性部材における少なくとも対向する一対の側面の幅を、当該一対の側面が対向する電極体の幅よりも小さくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された角形密閉二次電池では、上述のように絶縁性部材の寸法を電極体よりも小さく形成するため、製造面において、絶縁性部材に電極体を挿入する際の挿入不良が発生し易く、歩留まりが悪いという問題があった。
【0006】
またかかる角形密封二次電池は、製品状態における信頼性面において、電極体の集電部が押し当てられることに起因する押圧力が絶縁性部材の小面積側の側面に常に生じるために、充放電時における電極体の膨潤時にその側面への引張応力が発生し、絶縁性部材の長期信頼性が低くなるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、歩留まり低下を抑制しながら絶縁性部材の長期信頼性をも向上させ得る角型二次電池及びその製造方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、角型二次電池において、一面側が開口した直方体形状に形成された導電性を有する容器と、前記容器の前記一面側を封止する蓋と、前記容器内に収容され、幅方向の両側に電極がそれぞれ形成された充放電体と、前記充放電体を被覆し、前記充放電体及び前記容器間を絶縁する絶縁性部材とを設け、前記絶縁性部材は、一面側が開口した直方体形状に形成され、前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の側面のうちの少なくとも一方の前記側面が、高さ方向に沿って前記充放電体から離反する方向に折り曲げるようにした。
【0009】
また本発明においては、角型二次電池の製造方法において、前記角型二次電池は、一面側が開口した直方体形状に形成された導電性を有する容器と、前記容器の前記一面側を封止する蓋と、前記容器内に収容され、幅方向の両側に電極がそれぞれ形成された充放電体と、前記充放電体を被覆し、前記充放電体及び前記容器間を絶縁する絶縁性部材とを有し、前記絶縁性部材は、絶縁材料から形成された絶縁シートを折り畳むことにより一面側が開口した直方体形状に形成され、前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の側面のうちの少なくとも一方の前記側面が、高さ方向に沿って前記充放電体から離反する方向に折り曲げられており、前記絶縁シートを作成する第1の工程と、前記絶縁シートを折り畳むようにして前記絶縁性部材を形成する第2の工程と、前記絶縁性部材の開口した前記一面側から前記充放電体を当該絶縁性部材内に挿入するようにして収容する第3の工程とを設けるようにした。
【0010】
さらに本発明においては、角型二次電池の製造方法において、前記角型二次電池は、一面側が開口した直方体形状に形成された導電性を有する容器と、前記容器の前記一面側を封止する蓋と、前記容器内に収容され、幅方向の両側に電極がそれぞれ形成された充放電体と、前記充放電体を被覆し、前記充放電体及び前記容器間を絶縁する絶縁性部材とを有し、前記絶縁性部材は、絶縁材料から形成された絶縁シートを折り畳むことにより一面側が開口した直方体形状に形成され、前記充放電体の各前記電極とそれぞれ対向する一対の側面のうちの少なくとも一方の前記側面が、高さ方向に沿って前記充放電体から離反する方向に折り曲げられており、前記絶縁シートを作成する第1の工程と、前記充放電体を被覆するように前記絶縁シートを折り畳むことにより前記絶縁性部材を形成する第2の工程とを設けるようにした。
【0011】
本発明において、充放電体は、角型二次電池の外部電極と電気的に接続され、外部電極を介して電気を充放電する蓄電体である。一形態として、充放電体は、電気を充放電する捲回電極群と、捲回電極群及び正極側の外部電極間を接続する正極集電板と、捲回電極群及び負極側の外部電極間を接続する負極集電板とから構成される。
【0012】
本発明の角型二次電池及びその製造方法によれば、充放電体を絶縁性部材で被覆する際や被覆した後の充放電体と絶縁性部材との間のクリアランスを確保することができる。従って、本発明によれば、例えば、充放電体を絶縁性部材で被覆するに際して絶縁性部材に充放電体を挿入する場合であっても充放電体が絶縁性部材の開口部の縁部と干渉することに起因する挿入不良の発生を抑制することができ、さらに充放電時における充放電体の膨潤に伴って絶縁性部材に発生する引張応力を緩和することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歩留まり低下を抑制しながら絶縁性部材の長期信頼性をも向上させ得る角型二次電池及びその製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1~第3の実施の形態による角型二次電池の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の角型二次電池の内部構成を示す分解斜視図である。
【
図4】(A)は、第1の実施の形態による絶縁性部材の展開図であり、(B)は、その組立図である。
【
図5】第1の実施の形態において、捲回電極群を絶縁性部材で被覆して電池缶に挿入するまでの工程の説明に供する工程図である。
【
図6】第2の実施の形態による絶縁性部材の構成を示す展開図である。
【
図7】第3の実施の形態において、捲回電極群を絶縁性部材で被覆して電池缶に挿入するまでの工程の説明に供する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0016】
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態による角型二次電池の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による角型二次電池を示す。この角型二次電池1は、密封容器を形成する電池缶2及び電池蓋3を備えて構成される。電池缶2及び電池蓋3は、例えばアルミニウム合金などの金属材料から構成され、深絞り加工又はプレス加工により形成される。
【0017】
電池蓋3は、略矩形平板状に形成され、電池缶2を封止するように電池缶2に溶接されている。電池蓋3には、インサート成型又はプレス成型により成型された絶縁部材からなるガスケット4を介して正極外部端子5が固定されると共に、同様のガスケット6を介して負極外部端子7が固定されている。
【0018】
これら正極外部端子5及び負極外部端子7は、
図2に示すように、それぞれガスケット4,6の上方に露出する外部端子基部5A,7Aと、外部端子基部5A,7Aの下側に形成されたピン部5B,7Bとを備えて構成される。そして正極外部端子5及び負極外部端子7の外部端子基部5A,7Aには電池蓋3と平行な平坦面5AA,7AAが設けられており、これらの平坦面5AA,7AAにバスバー等が接面されて溶接接合される。
【0019】
また電池蓋3には、電池缶2内に電解液を注入するための注液孔8(
図2)が穿設されている。注液孔8は、電池缶2に電池蓋3を溶接して電池容器を形成し、その電池容器内に電解液を注入した後にレーザ溶接により注液栓9が接合されて封止される。なお電池缶2内に注入される電解液としては、例えば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液が用いられる。
【0020】
さらに電池蓋3には、ガス排出弁10が設けられている。ガス排出弁10は、電池容器内の圧力が上昇した場合に開いて電池容器内部のガスを排出し、電池容器内部の圧力を低減させるための弁であり、このガス排出弁10により角型二次電池1の安全性が確保される。
【0021】
図2は、本角型二次電池1の分解斜視図を示す。
図1及び
図2からも明らかなように、電池缶2は、長方形の底面2Aと、底面2Aの各長辺からそれぞれ立ち上がる一対の幅広側面2Bと、底面2Aの各短辺からそれぞれ立ち上がる一対の幅狭側面2Cと、これら幅広側面2B及び幅狭側面2Cの上端で上方に向かって開放された開口部2Dとを有する。この開口部2Dが上述のように電池蓋3により封口される。
【0022】
電池缶2には、樹脂製の絶縁性部材11に被覆された捲回電極群12が収容される。捲回電極群12は、電気を充放電する蓄電体であり、扁平形状に形成され、断面半円形状の互いに対向する一対の湾曲部12Aと、これら一対の湾曲部12A間を繋ぐ一対の平面部12Bとを有する。捲回電極群12は、捲回軸方向が電池缶2の横方向(y軸)に沿うように電池缶2内に配置される。つまり捲回電極群12は、かかる一方の湾曲部12Aが電池缶2の底面2A側に位置し、他方の湾曲部12A側が電池缶2の開口部2D側に位置するように電池缶2内に挿入される。
【0023】
捲回電極群12の幅方向(y軸)の一端側には、当該捲回電極群12の正極を構成する後述の正極箔露出部12Cが形成されており、この正極箔露出部12Cが正極集電板13と電気的に接続されている。また捲回電極群12の幅方向の他端側には、当該捲回電極群12の負極を構成する後述の負極箔露出部12Dが形成されており、この負極箔露出部12Dが負極集電板14と電気的に接続されている。
【0024】
実際上、正極集電板13は、電池缶2の幅広側面2Bに沿って底面2A側に向かって延出する正極側接続端部13Aを備えており、この正極側接続端部13Aが捲回電極群12の正極箔露出部12Cと対向して重ね合わされた状態で接続されている。また正極集電板13における長手方向の正極側接続端部13Aの反対側には、電池蓋3と平行な状態に屈曲形成された正極外部端子接続部13Bが設けられており、この正極外部端子接続部13Bに穿設された孔13BAに正極外部端子5のピン部5Bが嵌め込まれ、正極外部端子接続部13Bとピン部5Bとが溶接接合されて正極外部端子5及び正極集電板13が電気的及び物理的に接続されている。
【0025】
同様に、負極集電板14は、電池缶2の幅広側面2Bに沿って底面2A側に向かって延出する負極側接続端部14Aを備えており、この負極側接続端部14Aが捲回電極群12の負極箔露出部12Dと対向して重ね合わされた状態で接続されている。また負極集電板14における長手方向の負極側接続端部14Aの反対側には、電池蓋3と平行な状態に屈曲形成された負極外部端子接続部14Bが設けられており、この負極外部端子接続部14Bに穿設された孔14BAに負極外部端子7のピン部7Bが嵌め込まれ、負極外部端子接続部14Bとピン部7Bとが溶接接続されて負極外部端子7及び負極集電板14が電気的及び物理的に接続されている。
【0026】
このように捲回電極群12は、正極箔露出部12Cが正極集電板13を介して正極外部端子5と電気的に接続されると共に、負極箔露出部12Dが負極集電板14を介して負極外部端子7と電気的に接続されており、これにより正極外部端子5及び負極外部端子7を介して外部から捲回電極群12に対する充放電を行い得るようにされている。
【0027】
このため正極集電板13及び電池蓋3間には、これらを電気的に絶縁するための絶縁板15が配置されると共に、負極集電板14及び電池蓋3間にも、これらを電気的に絶縁するための絶縁板16が配置されている。また電池蓋3及び正極外部端子5間には、これらを電気的に絶縁するための上述のガスケット4が配置されると共に、電池蓋3及び負極外部端子7間にも、これらを電気的に絶縁するための上述のガスケット6が配置される。
【0028】
なお正極集電板13の形成素材としては、例えばアルミニウム合金を適用することができ、負極集電板14の形成素材としては、例えば銅合金を適用することができる。またガスケット4,6の形成素材としては、例えばポリブチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイド又はペルフルオロアルコキシフッ素樹脂などの絶縁性樹脂材を適用することができる。
【0029】
絶縁性部材11は、電池缶2と、当該電池缶2に収容される捲回電極群12、正極集電板13及び負極集電板14から構成される充放電体17との間を絶縁するための部材であり、一枚の絶縁シートを折り曲げて組み立てるようにして形成されている。この絶縁性部材11は、電池缶2への収容時に当該電池缶2の底面2Aの内側面と対向する長方形状の底面11Aと、底面11Aの各長辺からそれぞれ立ち上がる一対の幅広側面11Bと、底面11Aの各短辺からそれぞれ立ち上がる一対の幅狭側面11Cと、これら幅広側面11B及び幅狭側面11Cの上端で上方に向かって開放された開口部11Dとを有する直方体形状に形成される。捲回電極群12は、この開口部11Dから捲回軸方向が絶縁性部材11及び電池缶2の横方向に沿うように絶縁性部材11内に挿入されて当該絶縁性部材11に被覆された状態で電池缶2内に収容される。
【0030】
絶縁性部材11は、各幅狭側面11Cの幅方向(x軸)の中央位置に、高さ方向(z軸)に沿って開口部11Dから底面11Aにまで到達するように折り目11Eがそれぞれ設けられている。この折り目11Eは、充放電体17を構成する正極集電板13の正極側接続端部13Aと対向する絶縁性部材11の幅狭側面11Cについては、当該幅狭側面11Cが捲回電極群12から離反(より正確には、捲回電極群12の正極側接続端部13Aから離反)する方向に折れ曲がり、負極集電板14の負極側接続端部14Aと対向する絶縁性部材11の幅狭側面11Cについても、当該幅狭側面11Cが捲回電極群12から離反(より正確には、捲回電極群12の負極側接続端部14Aから離反)する方向に折れ曲がるようにそれぞれ形成されている。
【0031】
図3は、捲回電極群12の一部を展開した状態を示す。捲回電極群12は、それぞれ帯状に形成された第1のセパレータ20、負極電極23、第2のセパレータ22及び正極電極21をこの順番に重ね合わせ、正極電極21を内側にして平板状の軸芯(図示せず)の周りに捲回することにより扁平状に形成されている。この場合、第1及び第2のセパレータ20,22は絶縁材から形成されており、これにより正極電極21及び負極電極23は絶縁した状態で捲回される。
【0032】
正極電極21は、正極集電体である電極箔(以下、これを正極箔とも呼ぶ)の両面に、正極活物質(正極合剤)を塗布することにより形成された正極合剤層21Aと、正極箔の幅方向(y軸)の一端側に設けられた正極合剤を塗布していない正極箔露出部21Bとを備えて構成される。
【0033】
同様に、負極電極23は、負極集電体である電極箔(以下、これを負極箔とも呼ぶ)の両面に、負極活物質(負極合剤)を塗布することにより形成された負極合剤層23Aと、負極箔の幅方向(y軸)の他端側に設けられた負極合剤を塗布していない負極箔露出部23Bとを備えて構成される。
【0034】
正極箔露出部21B及び負極箔露出部23Bは、それぞれ負極箔又は正極箔の金属面が露出した領域であり、これら正極箔露出部21B及び負極箔露出部23Bがそれぞれ捲回軸方向の一方側及び他方側に位置するように正極電極21及び負極電極23が捲回される。
【0035】
負極電極23の負極合剤層23Aは、正極電極21の正極合剤層21Aに対して幅方向(y軸)の両側がそれぞれ僅かにはみ出す程度の広さに形成されており、これにより正極電極21及び負極電極23を捲回した状態において、正極電極21の正極合剤層21Aが常に負極電極23の負極合剤層23Aに挟まれた状態に位置するようになされている。また正極箔露出部21B及び負極箔露出部23Bは、それぞれ一体に束ねられて溶接等により接続される。この場合において、第1及び第2のセパレータ20,22は、幅方向で負極合剤層23Aよりも広いが、正極箔露出部21B及び負極箔露出部23Bで端部の負極箔や正極箔の金属面が露出する位置に捲回されるため、束ねて溶接する際の支障とはならない。
【0036】
なお正極電極21の正極合剤は、正極活物質としてマンガン酸リチウム(LiMn2O4)100wt%に対して、導電材として鱗片状黒鉛10wt%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン10wt%をそれぞれ添加し、これに分散溶媒としてN-メチルピロリドンを添加して混練することにより作製することができる。この正極合剤を厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔(正極箔)の両面に正極箔露出部21Bとなる部分を残して塗布し、この後、このアルミニウム箔を乾燥、プレス及び裁断することにより、アルミニウム箔を含まない正極合剤層21Aのみの厚さが90μmの正極電極21を作製することができる。
【0037】
ただし、正極活物質として、マンガン酸リチウムではなく、スピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウムや一部を金属元素で置換或いはドープしたリチウムマンガン複合酸化物、又は、層状結晶構造を有するコバルト酸リチウム、チタン酸リチウム、若しくは、これらの一部を金属元素で置換或いはドープしたリチウム-金属複合酸化物を適用するようにしてもよい。
【0038】
また負極電極23の負極合剤は、負極活物質として非晶質炭素粉末100wt%に対して、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)10wt%を添加し、これに分散溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を添加及び混錬することにより作製することができる。この負極合剤を厚さ10μmの帯状の銅箔(負極箔)の両面に負極箔露出部23Bとなる部分を残して塗布し、この後、この銅箔を乾燥、プレス及び裁断することにより、銅箔を含まない負極合剤層23Aのみの厚みが70μmの負極電極23を作成することができる。
【0039】
ただし、負極活性物質としては、非結晶質炭素に限定されるものではなく、リチウムイオンを挿入、離脱可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料、SiO又はTiSといったSi若しくはSnなどの化合物、又はこれらの複合材料であってもよく、その粒子形状においても鱗片状、球状、繊維状、塊状など、特に制限されるものではない。
【0040】
さらに正極電極21及び負極電極23における塗工部の結着剤としてポリフッ化ビニリデンではなく、ポリテトラフルオロチレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン、アクリル系樹脂などの重合体及びこれらの混合体などを用いることができる。
【0041】
また捲回電極群12の軸芯としては、例えば、正極箔、負極箔、第1及び第2のセパレータ20,22のいずれよりも曲げ剛性の高い樹脂シートを捲回して構成したものを用いることができる。
【0042】
一方、
図4は、絶縁性部材11の構成を示す。上述のように、絶縁性部材11は、一枚の絶縁シートを折り畳むようにして形成されており、
図4(A)はその展開図、
図4(B)は組立図を示している。
【0043】
絶縁性部材11は、
図4(A)に示すように、底面11A、一対の幅広側面11B及び一対の幅狭側面11Cに加えて、各幅狭側面11Cの外側にそれぞれ設けられ、組み立て時に幅広側面11Bに熱溶着される熱溶着対象部11F(
図4において斜線を付した部分)と、底面11Aの長手方向の両側にそれぞれ設けられた羽部11Gとを備えている。
【0044】
羽部11Gは、絶縁性部材11を電池缶2に挿入する際、絶縁性部材11の山折りにされた幅狭側面11Cの底面11A側が電池缶2の開口部2D(
図2)に引っ掛かることによる絶縁性部材11の電池缶2への挿入性が低下するのを防止するための部位である。
【0045】
実際上、絶縁性部材11は、
図4(B)に示すように、各羽部11Gが絶縁性部材11の外側に位置するよう組み立てられる。そして羽部11Gは、絶縁性部材11が電池缶2に挿入される際、当該電池缶2の開口部2D(
図2)の縁部により押されて絶縁性部材11の対応する幅狭側面に近づくように折り畳まれる。
【0046】
この際、羽部11Gは、対向する幅狭側面11Cの底面11A側を当該絶縁性部材11に収容されている充放電体17の正極集電板13の正極側接続端部13A又は負極集電板14の負極側接続端部14Aに寄せる方向に押し戻すことで、かかる幅狭側面11Cの底面11A側の部位が外側に出っ張って電池缶2の開口部2Dに引っ掛かるのを抑制する。
【0047】
この絶縁性部材11は、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂製の原反シートをピナクル(登録商標)刃などの刃物によって打ち抜くことにより製造される。この際、絶縁性部材11における外形部分をピナクル(登録商標)刃によってフルカットで打ち抜き、絶縁性部材11における折曲げ部分(
図4において破線又は二点鎖線で示した部分)にピナクル(登録商標)刃の刃先を鈍角にしてハーフカットの深さまで切れ目を入れることで当該折曲げ部分に折り目(折り目11Eを含む)を形成することができる。
【0048】
なお、ここでのハーフカットは、絶縁性部材11を一面が開口した直方体形状に折り畳み易くするための折り目を形成することが目的であるため、ピナクル(登録商標)刃の刃先は、連続した実線状であっても、破線や鎖線のように不連続の線状であってもよい。
【0049】
また折り曲げによって一面が開口した直方体形状に形成するためには、原反シートの厚みは100μmよりも厚いのが望ましい。原反シートの厚みがこれよりも薄い場合、折り曲げは可能であるが、直方体形状を保持するためには強度が不足する。
【0050】
(1-2)捲回電極群の電池缶への挿入手順
図5は、捲回電極群12を絶縁性部材11で被覆した後に電池缶2に挿入する作業の手順を示す。ここでは、絶縁性部材11を
図2のような開口部11Dを有する直方体形状に組み立てた後に、その絶縁性部材11の開口部11Dから捲回電極群12を挿入するようにして絶縁性部材11により充放電体17を被覆し、その後、この充放電体17を電池缶2に挿入する際の手順について説明する。
【0051】
まず、第1の工程として、ポリプロピレンなどの絶縁性材料からなる原反シートからピナクル(登録商標)刃などの刃物によって絶縁性部材11を
図4(A)の形状にフルカットで打ち抜く。この際、絶縁性部材11における底面11A及び幅広側面11Bの各境界と、幅広側面11B及び幅狭側面11Cの各境界と、幅狭側面11C及び熱溶着対象部11Fの各境界と、底面11A及び羽部11Gの各境界と、各幅狭側面11Cの幅方向の中央部とをそれぞれ鈍角な刃先をもつピナクル(登録商標)刃などの刃物でハーフカットすることによって、これらの位置に折り目(折り目11Eを含む)を同時に形成する(S1)。
【0052】
なお、このとき打ち抜く絶縁性部材11の形状は、
図4(A)の形状に限らず、組み立てたときに底面11Aとなる面と、それぞれ幅広側面11Bとなる一対の面と、それぞれ幅狭側面11Cとなる一対の面とを最低限度有する形状であれば、種々の形状を広く適用することができる。
【0053】
続いて、第2の工程として、第1の工程で打ち抜いた絶縁性部材11を、各折り目に沿って折り畳むようにして、開口部11D(
図2、
図4(B))を有する直方体形状に組み立てる(S2)。この際、絶縁性部材11の各折り目(折り目11Eを含む)にそれぞれ治具を宛がい、その治具に添わせて折り目に沿って折り曲げるようにして絶縁性部材11を折り畳んでいく。また絶縁性部材11を
図4(B)の形状に折り畳んだ後に、直方体形状を保持したまま上述の各熱溶着対象部11Fを当該熱溶着対象部11Fと重なる箇所(
図4(A)の例では幅広側面11B)に熱溶着する。
【0054】
なお熱溶着する箇所としては、本実施の形態のように充放電体17における正極電極21(
図3)の正極合剤層21A(
図3)や負極電極23(
図3)の負極合剤層23A(
図3)が接触し、又は、これら正極合剤層21A及び負極合剤層23Aと対向する箇所を避けることが望ましく、熱溶着による樹脂の糸引きや溶着部の凹凸による厚みのばらつきの影響を受けない領域、例えば、充放電体17における正極電極21の正極箔露出部21B(
図3)や負極電極23の負極箔露出部23B(
図3)と接触又は対向する箇所でかかる熱溶着を行うことが望ましい。
【0055】
次いで、第3の工程として、第2の工程で組み立てた絶縁性部材11に、充放電体17を挿入するようにして収容する(S3)。上述した特許文献1(特許第6092108号公報)では、有底箱型形状の絶縁性部材の幅狭側面に本願の折り目11Eのような折り目が設けられておらず、絶縁性部材の幅狭側面と、充放電体17の正極集電板13の正極側接続端部13Aや、負極集電板14の負極側接続端部14Aとの間にクリアランスが確保されないために、充放電体17の挿入後、絶縁性部材における開口部の幅狭側面側の側縁部分に充放電体17の挿入時の干渉に伴う変形が生じ、絶縁性不良による歩留まり悪化が生じる問題があった。
【0056】
これに対して、本実施の形態の絶縁性部材11は、各幅狭側面11Cの幅方向の中央部に折り目11Eが設けられ、各幅狭側面11Cがこれらの折り目11Eに沿って充放電体17から離反する方向に折り曲げられているため、絶縁性部材11の幅狭側面11Cと、充放電体17の正極集電板13の正極側接続端部13Aや、負極集電板14の負極側接続端部14Aとの間にクリアランスが確保され、充放電体17の絶縁性部材11への挿入性が向上すると共に、充放電体17の絶縁性部材11への挿入時に絶縁性部材11における開口部11D(
図2、
図4(B))の幅狭側面11C側の側縁部分に充放電体17の挿入時の干渉に伴う変形が生じ難く、この第3の工程における不良品の発生頻度を抑制することができる。
【0057】
この後、第4の工程として、絶縁性部材11に挿入した充放電体17をそのまま電池缶2に挿入するようにして収容する(S4)。以上により充放電体17を絶縁性部材11で被覆した状態で電池缶2に収容することができる。
【0058】
(1-3)本実施の形態の効果
以上の構成を有する本実施の形態の角型二次電池1では、絶縁性部材11の両幅狭側面11Cがそれぞれ充放電体17から離反する方向に折り曲げられているため、これら正極側接続端部13Aや負極側接続端部14Aと、絶縁性部材11の各幅狭側面11Cとの間にクリアランスを確保することができる。
【0059】
これにより本角型二次電池1では充放電体17を絶縁性部材11に挿入する際、正極集電板13の正極側接続端部13Aや負極集電板14の負極側接続端部14Aが絶縁性部材11の開口部11Dにおける幅狭側面11C側の縁部に干渉することを抑制することができるため、絶縁性部材11への充放電体17の挿入性を向上させることができる。従って、本角型二次電池1によれば、充放電体17を絶縁性部材11に挿入する際の挿入不良に起因する歩留まり低下を抑制することができる。
【0060】
また本角型二次電池1では、上述のように正極集電板13の正極側接続端部13Aや負極集電板14の負極側接続端部14Aと、絶縁性部材11の各幅狭側面11Cとの間にクリアランスを確保することができるため、充放電時における捲回電極群12の膨潤に伴って絶縁性部材11に発生する各幅狭側面11Cへの引張応力を緩和することができる。従って、本角型二次電池1によれば、絶縁性部材11の長期信頼性を向上させることができる。
【0061】
よって、本実施の形態によれば、歩留まり低下を抑制しながら絶縁性部材の長期信頼性をも向上させ得る角型二次電池1を実現することができる。
【0062】
(2)第2の実施の形態
図4との対応部分に同一符号を付して示す
図6は、第1の実施の形態による絶縁性部材11に代えて、
図1の角型二次電池1に適用される第2の実施の形態による絶縁性部材11´の展開図を示す。この絶縁性部材11´は、幅狭側面11Cの幅方向の中央部に形成された折り目11EAが開口部11D(
図2、
図4(B)参照)から底面11Aにまで到達しておらず、当該折り目11EAにおける底面11Aに近い側の端部から幅狭側面11Cにおける底面11Aと隣接する辺の両端部に向けて折り目11EBがそれぞれ設けられている点が第1の実施の形態の絶縁性部材11と相違する。
【0063】
この場合、これらの折り目11EA,11EBは、挿入される捲回電極群12の正極集電板13(
図2)の正極側接続端部13A(
図2)と対向する絶縁性部材11´の幅狭側面11Cについては、当該幅狭側面11Cが充放電体17から離反(より正確には、捲回電極群12の正極側接続端部13Aから離反)する方向に折れ曲がり、充放電体17の負極集電板14(
図2)の負極側接続端部14A(
図2)と対向する絶縁性部材11´の幅狭側面11Cについても、当該幅狭側面11Cが充放電体17から離反(より正確には、捲回電極群12の負極側接続端部14Aから離反)する方向に折れ曲がるようにそれぞれ形成されている。
【0064】
これにより本実施の形態の絶縁性部材11´では、
図4(B)のように組み立てた状態において、各幅狭側面11Cにおける底面11A側の端部に、底面11Aとの境界に向けて傾斜する三角形状の傾斜面が形成されるようになされている。
【0065】
以上の構成を有する本実施の形態の絶縁性部材11´では、各幅狭側面11Cにおける底面11Aと隣接する縁部分に傾斜面が形成されるため、この傾斜面によって各幅狭側面11Cの底面11A側の端部の膨らみが抑制される。
【0066】
この結果、絶縁性部材11´を電池缶2に挿入する際、電池缶2の開口部2D(
図2)と、絶縁性部材11´の各幅狭側面11Cにおける底面11A側の端部との間のクリアランスとして折り目を設けていない場合と同様のクリアランスを確保することができ、これにより絶縁性部材11´の電池缶2への挿入性を確保することができる。
【0067】
よって、本実施の形態の絶縁性部材11´によれば、第1の実施の形態により得られる効果に加えて、電池缶2への挿入性を向上させ得るという効果をも得ることができる。
【0068】
(3)第3の実施の形態
図7は、充放電体17を絶縁性部材11で被覆した後に電池缶2に挿入する作業の第3の実施の形態による作業手順を示す。本実施の形態では、充放電体17を絶縁性部材11により被覆する前に絶縁性部材11を
図2のような開口部11Dを有する直方体形状に組み立てることなく、絶縁性部材11を充放電体17に巻き付けるようにして充放電体17を絶縁性部材11により被覆しながら組み立てた後に、充放電体17及び絶縁性部材11を電池缶2に挿入する。
【0069】
まず、第1の工程として、ポリプロピレンなどの絶縁性材料からなる原反シートからピナクル(登録商標)刃などの刃物によって
図4(A)の形状を有する絶縁性部材11をフルカットで打ち抜く。この際、
図5のステップS1について上述した第1の工程と同様にして、絶縁性部材11の各幅狭側面11Cの幅方向の中央部に折り目11Eをそれぞれ形成する(S10)。
【0070】
続いて、第2の工程として、第1の工程で打ち抜いた絶縁性部材11を、各折り目(折り目11Eを含む)に沿って折り曲げるようにして直方体形状に折り畳む(S11)。なお、本実施の形態においては、この第2の工程において、絶縁性部材11の各折り目に癖付けをするだけで、熱溶着対象部11F(
図4(A))の熱溶着は行わない。
【0071】
次いで、第3の工程として、第2の工程において癖付けした絶縁性部材11上に、充放電体17を絶縁性部材11で被覆した後の位置関係と同じ位置関係となるように載せ、この後、絶縁性部材11の各折り目を第2の工程で癖付けした通りに折り曲げていくようにして充放電体17を絶縁性部材11により被覆する(S12)。
【0072】
この後、第4の工程として、絶縁性部材11で被覆した充放電体17を電池缶2に挿入する(S13)。充放電体17の電池缶2への挿入は、設備機構などにより充放電体17を絶縁性部材11で被覆した状態を維持しながら行う。この際、絶縁性部材11を直方体形状に保持するのは、電池缶2に挿入する際の設備機構又は電池缶2への挿入工程作業者が行えばよく、例えば第1の実施の形態のように絶縁性部材11における上述の熱溶着対象部11Fを幅広側面11Bなどに熱溶着する必要はない。
【0073】
以上のように本実施の形態では、絶縁性部材11の熱溶着対象部11F(
図4(A))を幅広側面11Bに熱溶着するようにして絶縁性部材11を組み立てることなく、単に絶縁性部材11で充放電体17を包むように被覆した状態で充放電体17を電池缶2に挿入するため、本角型二次電池1の生産設備の簡略化や製造作業の容易化を図ることができる。
【0074】
よって、本実施の形態による角型二次電池1の製造方法によれば、第1の実施の形態により得られる効果に加えて、角型二次電池1の生産の簡易化を図ることができるという効果をも得ることができる。
【0075】
(4)他の実施の形態
なお上述の第1~第3の実施の形態においては、本発明を
図1及び
図2のように構成された角型二次電池1に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成の角型二次電池に広く適用することができる。
【0076】
また上述の第1~第3の実施の形態においては、絶縁性部材11,11´の幅狭側面11Cの幅方向の中央位置に折り目11Eを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、幅狭側面11Cの幅方向の中央位置以外の場所に当該幅狭側面11Cの高さ方向に沿って折り目11Eを形成するようにしてもよい。この場合、折り目11Eの数は1つに限らず2つ以上であってもよい。
【0077】
さらに上述の第1~第3の実施の形態においては、絶縁性部材11,11´の両方の幅狭側面11Cに折り目11Eを形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら幅狭側面11Cの一方のみに折り目11Eを形成するようにしてもよい。このようにしても絶縁性部材11の幅狭側面11Cと、正極集電板13の正極側接続端部13Aや負極集電板14の負極側接続端部14Aとの間に僅かながらもクリアランスを確保することができる。
【0078】
さらに上述の第1及び第3の実施の形態においては、絶縁性部材11の折り目11Eを幅狭側面11Cの高さ方向に沿って開口部11Dから底面11Aまで到達するように形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、開口部11Dから、開口部11D及び底面11A間の途中まで、底面11Aから、底面11A及び開口部11D間の途中まで、又は、開口部11D及び底面11Aを含まない、開口部11D及び底面11A間に、かかる折り目を11Eと同様の折り目を形成するようにしてもよい。このようにしても第1及び第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、種々の構成の角型二次電池に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1……角型二次電池、2……電池缶、2A,11A……底面、2B,11B……幅広側面、2C,11C……幅狭側面、2D,11D……開口部、3……電池蓋、11,11´……絶縁性部材、11E,11EA,11EB……折り目、12……捲回電極群、13……正極集電板、14……負極集電板、11F……熱溶着対象部、11G……羽部、17……充放電体、21……正極電極、21B……正極箔露出部、23……負極電極、23B……負極箔露出部。